Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体III~遺伝子・DNA サウンドトラック Vol.1 Gene-遺伝子-』

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III〜遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1 Gene』

1999年4月28日 CD発売 PCCR-00300

 

1999年放送 NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体III 遺伝子DNA」
音楽:久石譲

 

 

 

寄稿

NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」パートIIIのメインタイトルが変った。”遺伝子”から”遺伝子・DNA”へと。久石譲さんとの最初の打合せの時、「遺伝子だけでは面白くない。DNAという言葉を入れないとNOWくない」という助言をいただいたのだ。

言うまでもなく、20世紀最大の生物学上の発見はDNA構造の解明である。研究の結果、生命の基本構造は地球上のあらゆる生物に共通しており、数の多さと働きが違うだけであることがわかってきた。ヒトの場合、生命の暗号は60億文字分に相当し、科学者たちはその全てを2003年までに解読しようとしている。「マンハッタン計画(原爆製造)」「アポロ計画(人類の月面着陸)」に次ぐビッグサイエンス、「ヒューマンゲノム計画」である。一方で最近は新聞を広げると毎日のように”遺伝子”の活字が躍る。「アルツハイマーや肥満遺伝子発見」「がんや難病の遺伝子治療始まる」「イヴ・モンタンの墓を掘り起こし、親子関係を調べるDNA鑑定」といった具合である。今や遺伝子・DNAは一般の人達の間でも知的関心事となっているのだ。

私が「人体」プロジェクトのプロデューサーを命じられたのが1986年。以来ずっと久石さんとのおつき合いが続いている。国際共同制作の大型NHKスペシャルで14年間もプロジェクトが続いているのは初めての事で、さらにシリーズ18本を全て一人の作曲家が手がけるのも極めて珍しいことになる。なぜ、それ程までに久石さんに惚れ込んでいるのか。最初の出会いは1989年の「人体」制作中、各レコード会社が推薦する作曲家の音楽を聴いていた時のこと、「風の谷のナウシカ」の音楽を耳にしたとき「これだ!」と直感した。私たちの番組はミクロの細胞にこだわり、その健気な働きを描いたが、60兆細胞トータルとしての人体、”いのち”も又素晴らしい存在であることを訴えたかったからだ。さらに「人体 II 脳と心」では番組に新風を吹きこんでくれた。

私たちは今、番組完成を目前に生みの苦しみの最中にいる。久石さんの、歴史に残るような音楽が番組に息を吹きこんでくれることを大いに期待している。

林勝彦 (エグゼクティブ・プロデューサー)

(CDライナーノーツより)

 

 

ドキュメンタリーの仕事はすごく好きなんです。このシリーズも3作目ですね。ただ、今回はテーマが遺伝子ということで非常に抽象的ですから、映像が浮かばなくて苦しみました。Iは「内臓」がテーマでしたし、IIは「脳と心」がテーマでしたから、割とイメージが膨らんだんですが、「細胞」と言われてもピンと来ないじゃないですか? そういった、最初のイメージ作りで苦しみましたね。でも、遺伝子についていろいろ調べるうち、利己的遺伝子(セルフィッシュ・ジーン)という言葉に出会ったんです。「人間は遺伝子の乗り物でしかない、生命が誕生して以来、人間という器は単なる乗り物でしかない」という内容なんですが、そういうことを考えていると、太古の時代と未来がつながっていて、それは音楽も同じだと思えるようになったんです。そこで、エスニックな要素をたくさん入れたりしました。

この作品では、打ち込みと生の弦を組み合わせています。こういう世界観だと、アコースティックが絶対にいいということはあり得ないんです。あまりにも具象音過ぎますからね。そうすると、もう少し神秘的な世界を出すにはやはりシンセサイザーがよくて、結果的に生と打ち込みの比率は50/50くらいになりました。ただ、今までのシリーズはもっとシンセサイザーが多かったので、今回は割とアコースティック楽器が増えていると言えますね。

このシリーズに関しては、映像に合わせて音楽を作っているわけではありません。「何月何日に映像をお渡しします」って言われても、その日に来ることは絶対にないですから(笑)。2、3ヵ月はズレます。これは映画もそうなんですが、CGを使うとその部分が圧倒的に時間を食うんです。特に、この番組は内容的にCGのウェイトがすごく大きいですから大変だと思います。でも、真剣に作ったら遅れるのはしょうがないですよ。

そんなわけで、基本的にはこのシリーズに関しては、こちらの方である程度世界観を作って大体12~13曲ほど仕上げ、さらに幾つかバリエーションを付けたものをお渡しして、そこから選曲してもらうというスタイルでやることにしているんです。僕の手掛けているサウンドトラックの中で、選曲のスタイルはこの番組だけです。

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

かつてコンピューター(正確にはICか?)が現れたとき、人間の思考のプロセスに発生する膨大な情報を処理することで、大きく社会の構造が変わった。いや、今でも変わりつつある。そして遺伝子、この人類に仕掛けられた2つのウィルスは人類を豊かにするかもしれないし、破壊する爆弾かもしれない。いずれにしても、もう人類は地雷を踏んでしまった。ここで止まることはできない。今現在の中途半端さではクローン牛を作ったり、癌の治療に使ったりするしかない。もっと凄まじいこと、例えばその研究が間違って人類を滅ぼすようなことがあるかもしれない。だから我々は全て知らなくてはいけない。

しかし、いくら遺伝子が解明されても人間の全てが解明されるとは思わない。例えば音楽が与える感動は解明されるのだろうか? 脳の中でどういう物質がどこに働きかけると感動するかは解明できても、何故良い音楽を聴いたらそういう物質が出るかまでは予測は出来ても解明されることはないだろう。全ての遺伝子、DNAが解明されてもまだ分からないもの、それが人間本来のアイデンティティーではないのだろうか?

後日、僕はテーマ曲を作った。それは第1シリーズと同じアプローチのヒューマンな人間賛歌だった。

Blog. 書籍「NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体3 遺伝子・DNA 6」久石譲 音楽制作ノート より抜粋)

 

 

1998年9月26~30日、バリ独特の楽器の音を採取することを目的に訪れている。録音スタッフも同行しガムランで使われている全楽器の音色やフレーズを録音。またバリの女性に昔から伝わる歌やラブソングを歌ってもらうなどし、それが本作品の多彩なリズム・パーカッションやサンプリング・ヴォイスに生かされている。

オーケストラ編成は、弦24人、2管編成の木管8人、ホルン4人、パーカッション2人という大編成。

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III〜遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1 Gene』

1. Gene
2. 遥かなる時を超えて
3. Mysterious Operation
4. History
5. Micro Cosmos
6. Cell Division
7. Children’s Whisper
8. Wonderful Life
9. A Gift From Parents
10. Choral For Gene

Producer:Joe Hisaishi
Compose & Arrangement:Joe Hisaishi

Recording Studio:
Wonder Station
AVACO CREATIVE STUDIO

 

Gene – Idenshi

1.Gene
2.Harukanaru Toki wo Koete
3.Mysterious Operation
4.History
5.Micro Cosmos
6.Cell Division
7.Children’s Whisper
8.Wonderful Life
9.A Gift From Parents
10.Choral For Gene

 

Disc. 久石譲 『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』

久石譲 『PIANO STORIES 3』

1998年10月14日 CD発売 POCH-1731

 

1988年から続くピアノ・ストーリーズ・シリーズ第3弾
北イタリアの情景をモチーフに作られた作品

 

 

イタリアには唄がある。
伸びやかなメロディーは人生の哀歓や、ユーモアをおりまぜひらすら唄う。
ふと、幸せという名前の思い出を数えてみた。
そのすきまからこぼれおちる哀しみの時間(とき)。
イタリアっ子は言うだろうな「Quel che sara sara -なるようになるさ」。
そして今日もまた唄っている。たぶん・・・・

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

久石:
「Nostalgia」は、イタリアで現地のオーケストラとレコーディングしましたけど、オケには機能性よりも『唄』を望みました。多少荒っぽくても、そこには『唄』があるというアルバムを作りたかった。だからイタリアにしたんです。

次に自分のソロアルバムを、と考えたとき、根底に『唄』を表現したいということがありました。それは、去年「HANA-BI」でベネチアへ行って、公式記者会見で外国人記者から「音楽がすごくイタリア的なメロディだ」と指摘されて、「ああ、そうなのかな」と思ったのがきっかけです。確かにベネチアで「HANA-BI」を観たとき、自分でも「この音楽、イタリア的に聴こえるなあ」と思いました。そのあたりですね。イタリア的な『唄』を表現しようと思ったのは。

それと、今回のアルバムでは、イタリアというテーマの中でカヴァーをやってみたいと思って、サン=サーンスのオペラ「サムソンとデリラ」の有名なアリア(アルバムでは「バビロンの丘」)とニノ・ロータの「太陽がいっぱい」を、最もイタリア的な香りのするメロディということで選びました。アレンジという部分も自分の中の大事な要素ですから、人のメロディを借りてきても自分の世界が作れるというところにチャレンジしてみたかったのです。

技術的な面でも現時点で可能な限りの最先端の技術で録るという、徹底的にハードディスク・レコーディングを行いました。ここが大事なところなんだけど、古臭いやりかたでノスタルジックな音を録ったら、本当に古臭くなってしまう。それは僕の欲してる音ではないんですよ。それで、オケがそのレコーディング方式に不慣れだったってこともあって、レコーディングの2日目からは予定外に僕がピアノを弾いて、オケをひっぱるという、同時録音に切り替えざる得なかったんです。でも、そのうちに現場の雰囲気が一変して、オケがピタッとついてくるのがわかりました。そういう意味では柔軟性のある若いオーケストラでよかったですね。

イタリアにはやっぱり、日本のオーケストラにも、またイギリスのオーケストラにもない、独特のおおらかなメロディーの唄い方がありました。結果をみても、これはイタリアに行かなかったら成立しないアルバムだったと、今、改めて思っています。

(久石譲インタビュー ~「久石譲 PIANO STORIES ’98 Orchestra Night」 コンサートパンフレット より)

 

 

「サウンドはガッチリと構築するスタイルなのですが、このスタイルを一回壊してみたい。メロディに集約し直してみたい。僕の場合、作曲もアレンジも演奏も自分でやってしまいますから、少し荒っぽくてもいいから原質が出るような、そういうアルバムを作ってみたいなというのが一番根底にありました。で、北野武監督『HANA-BI』ベネチア映画祭出品の間などでイタリアへ行って、イタリア的ニュアンスなんだというのが自分なりに分かりましてね。イタリアというとカンツォーネだとかオペラだとか、歌という感じがありますね。何かそういうところのアプローチをしたいなという……。

タイトルが『ノスタルジア』だからといって、郷愁といったニュアンスでは作っていないんです。われわれふだんレコーディングしていると、どうしてもドンカマで作っていく傾向がすごく多い。そればっかりだと、揺らぎのある音楽から遠ざかっちゃうんですね。歌のエスプリみたいなものが最近の音楽では、ほとんど聴くことが出来ませんよね。今、忘れがちになっているそういう重要な要素に、もう1回スポットを当ててみたい。それが最も新鮮なんじゃないか。そういうのが大まかなコンセプトです」

Blog. 「FM fan 1998 No.25 11.16-11.29」 『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

サウンドもアコーディオンやハーモニカがフィーチャーされイタリアンテイストたっぷりに仕上がっている。イタリア的な「唄」をコンセプトに、自身の作曲作品のみならず、イタリア名作映画からの映画音楽も選曲。

1998年、イタリアの古都モデナにて。「時代の波に流されずにひたむきに生き、個々それぞれの世界を築き上げた人々を描きたい」という久石譲はアルバムのイメージとしてこう語っている。

時代設定は「1930年台のイタリアを中心とするヨーロッパ」。そこでレコーディングはイタリアで行われることになった。「音楽の原点の”歌”に戻って」制作したというこのアルバムでは、ピアノが1930年イタリアという時空で交錯する人々の思いを、雄弁に語っている。

 

 

 

久石譲 『PIANO STORIES 3』

1. Nostalgia (サントリー山崎CF曲)
2. 旅情
3. Cinema Nostalgia (日本テレビ系列「金曜ロードショー」オープニングテーマ)
4. il porco rosso (映画「紅の豚」より)
5. Cassanova
6. 太陽がいっぱい
7. HANA-BI (映画「HANA-BI」メインテーマ)
8. Nocturne
9. バビロンの丘
10. la pioggia (映画「時雨の記」メインテーマ)

指揮:レナート・セリオ 演奏:フェラーラ管弦楽団

Composed by JOE HISAISHI , except 6. 9.

Piano:JOE HISAISHI
Orchestra:ORCHESTRA CITTA DI FERRARA
Conductor:RENATO SERIO

Piano,Rhodes:MASAHIRO SAYAMA 4.

(アコーディオン 2. / バンドネオン 6.)

Musicians
ORCHESTRA CITTA DI FERRARA
RENATO SERIO(Conductor)
Nobuo Yagi(Harmonica)
Fumihiko Kazama(Accordion)
Chuei Yoshikawa(Guitar)
Hideo Yamaki(Drum)
Kunimitsu Inaba(W.Bass)
Masahiro Sayama(Piano Rhodes)
Tomonao Hara(Flugel Horn)
Ryota Komatsu(Bandoneon)
etc.

Recorded at:
TEATRO STORCHI DI MODENA,KIOI HALL,Wonder Station
August-September, 1998

 

NOSTALGIA – PIANO STORIES III

1.Nostalgia
2.Sentimenti di Viaggio
3.Cinema Nostalgia
4.il porco rosso
5.Casanova
6.Plein Soleil
7.HANA-BI
8.Nocturne
9.A Hill of Babylon
10.la pioggia

 

Disc. 久石譲 『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』

久石譲 『PIANO STORIES 2』

1996年10月25日 CD発売 POCH-1604

 

 

【MEMORANDUM】

Friends
子供の頃思った。「お酒飲んでたばこ吸って、それにカウンターに座って寿司だっていつか食べてやる」気づいたらバーの片隅に一人座っていた。

Sunday
日曜日の午後、ふらっと画廊を訪れるのもよい。スコーンととびきり上等のアフターヌーンティーを飲みながら眺めるワッツの絵画は、本物の英国の香りがする。

Asian Dream Song
滔々と流れる黄河、人を寄せ付けないヒマラヤの山々、砂漠の民ベドウィン、インドの過去から未来に連なる永遠の時間の流れ、モダンでほんとうはヨーロッパよりも深い歴史と近代性をもっていた日本。僕はアジアの一員でしかも日本人であってほんとうによかった。

Angel Springs
6年間もあるウイスキーのコマーシャルにつき合った。何も足さない、何も引かない、このコンセプトは美しい。人が手を加えないことは現代では極めて難しい。例えばひとりの少年がいる。手を加えて型にはめるより、ほうっておいて発酵するのを待つ。もしかして天才が生まれるかも知れませんよ。

Kids Return
ミニマルミュージックの香りのする青春音楽。クールでどこか切なげ、ワイルドで繊細、淡々としているのに衝撃的、二律背反の世界、それが僕だ。僕の白は限りなく黒を連想させ、優しさは限りなく毒を含んでいる。見せかけのヒューマンは独裁者の心を隠し、愛と感動のメロディーは限りなく前衛の心の鎧となる。

Rain Garden
ふと、ラヴェルが弾きたくなった。その響きが心に微かな波紋となって広がっていく。フランス印象派は空ろいゆく時の陽炎(かげろう)。

Highlander
地図で見る英国は左の上の端にある。そのまた上の方にHighlanderがある。寒くて荒涼とした土地、手が届きそうに低く垂れ下がった天空。ケルトの里は何処か毅然としていて生きる厳しさと尊さを教えてくれる。

White Night
夕暮れ、密やかに闇が訪れ、家々の窓には灯がともる。空からは軽やかなダンスを踊っているかのような温かい(心の)雪が舞い降りている。もしかしたらマッチ売りの少女は幸せだったんだ。

Les Aventuriers
「冒険者たち」という映画があった。男はこの言葉が好きだ。冒険に乗りだす時の昂揚感、細心の注意と計画。大胆にも繊細な神経、思いがけない緊張感。でも実際の映画はふたりの男と一人の女の友情と愛情の物語り。はしゃぐ大人たちは幼稚な子供心を引きずったピノキオ。でもリノバンチュラだったら良いか?
PS.演奏が難しすぎた。プロのミュージシャンがほとんど弾けなかった。5拍子なんて人間の生理に合わないのか?でも「Take 5」や「Mission impossible」はとても心地良いのに…。ええい!一気の緊張、極限のスイードもありなんだよ。

The Wind of Life
日々の積み重ねの上に人の一生は成り立つ。淡々と繰り返される日々、でもその日々が大変だ。泣いたり怒ったり絶望したり歓喜の涙をこぼしたり誠に忙しい。でも同じ日は二度と来ないのだから日々を受け入れ真摯な精神で生きる事が肝心だ。生命の風、人の一生を一塵の風に託す。陽は昇り、やがて沈む。花は咲き、そして散る。風のように生きたいと思った。

(【メモランダム】 久石譲)

 

 

 

「難しかったんだよね。それまでガッチリとコンセプトを組んできたんだけれど、最後の最後で自分を信じた感覚的な決断をしたということです。あの弦の書き方って異常に特殊なんです。普通は例えば8・6・4・4・2とだんだん小さくなりますね。それを8・6・6・6・2と低域が大きい形にしてある。なおかつディヴィージで全部デパートに分けたりして……。チェロなんかまともにユニゾンしているところなんて一箇所もないですよ。ここまで徹底的に書いたことは今までない。結果として想像以上のものになってしまって、ピアノより弦が主張してる……ヤバイ……と(笑)。」

「僕は戻りって性格的にできないし、オール・オア・ナッシングなんですね。時代って円運動しながら前へ進んでいると思うんですが、自分にとってのミニマルとか弦とか、原点に立ち返るというのは前に戻るのではなく、そのスタイルをとりながら全く新しいところへ行くことだと。そうでなければ意味がない。単なる懐古趣味に終わってしまうでしょう。ピアノというコンセプトでソロアルバムを作るということに変わりはなかったけれども、思い切りターボエンジンに切り替える必要があったわけです。」

Blog. 「キネマ旬報 1996年11月上旬特別号 No.1205」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「8年前に出した時は、打ち込みを多用して音楽を作っていた時期だった。その時に、あえて「今自分ひとりで何ができるか」と立ち返ったのがピアノだったんです。つまり、いちばんピュアな音楽をやろうと思って作ったのが『Piano Stories』だった。そしてもう1度今、自分にとっていちばん原点になるべきものはなんだろうと考えたら、「ピアノとストリングスをメインにしたアルバム」だろう、ということになった。この1~2年ずっと考えていたことです。タイトルを『Piano Stories II』にしたのは、これが精神的に前作とつながるからです。」

「たとえば、クロノス・カルテットでジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」をやってますよね。僕もいろいろとリズムを作ってレコーディングをするからよくわかるんだけど、(リズムを)キープする楽器がない時って、実はすごく大変なわけ。でも、ドラムを入れてしまえばリズムがまとまるというものでもなくて、(そのドラムに)寄りかかってしまうわけだから、逆にそこからは細かいニュアンスって出てこない。弦楽カルテットとか今回のような編成の時は、そうとうしっかりしないとリズム・キープもまともにできない。だからみんな避けてしまうけど、あえて大変なところに今回は挑みました。ポップスの人がよく思い浮かべる弦楽カルテットは、ビートルズの「Yesterday」のバックとか(笑)そういう清らかなイメージかもしれない。でも、実は「Kids Return」のようにゴリゴリしていてすごく大変なリズムもある。中途半端にリズムが入っているものよりずっとワイルドな感じが出るんです。そういう方向でやってみたんですよ。」

「「Les Aventuriers」ですね。先日のリサイタルではやりませんでしたが、11月の赤坂Blitzではやりますよ。そうとう(演奏が)厳しいから(笑)。ソロ・アルバムの弦の音はずっとロンドンで録ってきていたので、日本で作ったのは本当に久しぶりなんです。それで、ちょっと”浦島太郎状態”になっちゃった曲です(笑)。つまり言い方はへんなんだけど、日本の(弦の)人たちはうまいけど、リズムが違うんですよ。僕が弦に託しているのは、打楽器扱いの弦みたいなリズミックな部分が大きいんです。そういうニュアンスが当たり前と思っていたんですが、それなりの訓練をしないと無理なわけで…。そのあたり、思いのままにはできなかったのでちょっと残念でしたけどね。」

「「Rain Gaeden」ですね。クラシックですよね。意外なんだけど、フランス印象派みたいなピアノ、ドビュッシーとかラベルとか、あのへんのラインを今まであまり自分の作品に取り入れていなかったんです。好きなんだけど、なぜかなかった。ただこのところ個人的に、練習のためにラベルとかクラシックをよく弾いているんです。ラベルのソナチネなんか弾いていると、自分がすごく好きだということがよくわかる。その中で出てきたアイディアで、たまたまこういう曲ができたんです。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1996年12月号 No.143」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

The Wind of Lifeは、「JOE HISAISHI PIANO STORIES 2000 Pf solo & Quintet」コンサートなどにおいて、原曲とは少し異なるアレンジ(和音)にて演奏されている。

 

 

 

 

久石譲 『PIANO STORIES 2』

1. Friends (トヨタクラウンマジェスタCMより)
2. Sunday (NHK「日曜美術館」テーマ曲)
3. Asian Dream Song (TOTATAカローラCMより / 1998年長野パラリンピックテーマ曲)
4. Angel Springs (サントリーウイスキー 山崎CMより)
5. Kids Return (映画「キッズ・リターン」より)
6. Rain Garden
7. Highlander
8. White Night
9. Les Aventuriers
10. The Wind of Life

Musicians
Pan Strings
Yuichiro Goto String Quartet
Daisuke Mogi(Oboe)
Takashi Asahi(Flute)
Masayoshi FUrukawa(Guitar)
etc.

Recorded at:
Wonder Station
Victor Studio
Sound City

 

Disc. 久石譲 『天空に夢輝き ~手塚治虫の夏休み~』 *Unreleased

1995年8月2日 TV放送

 

NHK大阪開局70周年記念ハイビジョンドラマとして制作された作品。マンガ界の巨人・故手塚治虫氏の少年時代のひと夏の出来事を鮮やかに描く。学業を理由に父により絵を描くことを禁止されてしまった手塚少年は、風来坊の時計修理士・中田と出会う。彼に虫取りを教わる手塚少年はやがて、昆虫の世界に引き込まれていく。数々の賞を受賞し、手塚治虫氏の少年時代の思い出を綴った青春ドラマ。

 

国際ワイドスクリーンフェスティバル「ル・ノンブルドール賞」 ベストサウンド賞受賞作品

第10回ハイビジョン国際映像祭 グランプリ・アストロラビウム賞/ユネスコ賞受賞作品

 

1995年8月2日 NHK BS-hi ハイビジョン版
1995年8月19日 21:00-22:30 NHK総合
NHKハイビジョンドラマ「天空に夢輝く~手塚治虫の夏休み」

<キャスト>
三浦友和、田中邦衛、松原千明、吉澤拓真、杜けあき、 塩見三省

<スタッフ>
作:下川博
音楽:久石譲
演出:大森青児

制作:NHK大阪放送局

 

 

メインテーマ曲をはじめ、本編BGMとして数曲書き下ろされている。メインテーマはなんとも幻想的で神秘的な楽曲である。手塚治虫の少年期を題材にした作品であるが、曲の核になっているのは手塚治虫が描く世界観を表現したようである。それは例えば「火の鳥」の作品に曲をつけたなら、というほど久石譲らしい旋律ながらも、いつもの久石譲音楽とは違う趣ものぞかせる。これが幻の作品となるには非常にもったいない楽曲である。

本編BGMはメインテーマをモチーフにしたものもふくめ、各場面に聴くことができる。全体的にはシンセサイザーを基調としたサウンドではあるが、リズムプログラミングなどもおさえて、シンプルな作風となっている。

 

ぜひなにかの節目に蔵出ししてほしい名曲である。

2008年11月3日待望のDVD化となったが、久石譲作品としては未音源化作品である。

 

 

 

Disc. 久石譲 『MELODY Blvd.』

久石譲 『MELODY BLVD』

1995年1月25日 CD発売 PICL-1088

 

久石譲の代表作を自らのプロデュースでセルフ・カバー
L.A.のトップ・ミュージシャンのサポートによるベスト・テイク・コレクション
歌詞がすべて英語に差し替えられたAOR的サウンド

参加ミュージシャン:
マイケル・ランドウ(Gu)/ブランドン・フィールズ(Sax)/トミー・ファンダーバーク(Vo)
ウォーレン・ウェイブ(Vo)/ジョーゼフ・ウィリアムズ(BGVo) …etc

 

 

「このアルバムの前に「地上の楽園」というアルバムを作ったんですが、これが2、3年もかかった労作でして。もう一枚今年中に作らなきゃならないといったときに、とにかく軽いものにしおう、気が楽なものにしようと思って(笑)。で、今年はすごくボーカルに興味があったんですね。「地上…」もボーカル曲が多かったし、じゃこれまたボーカルでいこうと。ただ映画音楽をリアレンジした程度だと面白くない。映画で作ったメロディだけど全く違うものになるような、つまりインストゥルメンタルである映画音楽に英語の詞を付けることによって全く別の曲に仕上げるという……。映画のシーンが思い浮かばない、それでいてメロディだけが際立つような、そんなボーカル・アルバムに仕上げたかったんです。」

「これは後付けというか、結果論的な言い方になっちゃうんだけどね。94年というのは「風の谷のナウシカ」が公開されてちょうど11年目になるわけです。84年以前の僕は前衛的なことをやってまして、メロディ作家と言われたのはその後なんですね。そのメロディメイカーと言われた10年分の区切りを付けるというか……。作るべくして作ったアルバムですね。あとはやっぱり1994年スタイル。アップ・トゥ・デイトなものをやりたかったんです。単なる企画ものでなく、ソロ・アルバムの中に組み込みたかった94年の音がしていないと意味がない。それにはこだわりましたね。」

Blog. 「キネマ旬報 1995年2月下旬号 No.1154」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「今回は自分のピアノをフィーチャーしていないし、自分で歌っているわけでもないでしょ?そういう意味で言うと、スタンスとしてはクインシー・ジョーンズとかデヴィッド・フォスター、アラン・パーソンズ・プロジェクトみたいな、そういうプロデュース・ワーク…つまりサウンドからコンセプトとか全部を含めたプロデュース・ワークがメインになって、なおかつそれで自分の個性をどこまで出せるんだろうかというのを、ちょっと実験したかったんです。今までの自分のソロ・アルバムの中では、とてもめずらしい形態ですよね。」

「要するに「久石譲とは何か?」という時、やっぱり「メロディ」だっていう部分があるわけですよね。だあら、そのメロディを1回きちんと切り取ってみて提出したらどうなるかな、みたいなところがあって…。現にLAでも、圧倒的にみんな「メロディがすごく好きだ」と言ってくれたので、僕はすごくうれしかったんですけどね。…誰も日本発売だって思っていなかったということも、笑えるんだけども(笑)。」

Blog. 「キーボードスペシャル 1995年3月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲 『MELODY BLVD』

1. I Believe In You (映画「水の旅人」より / あたなになら)
2. Hush (映画「魔女の宅急便」より / 木洩れ陽の路地)
3. Lonely Dreamer (映画「この愛の物語」より / 鳥のように)
4. Two of Us (映画「ふたり」より / 草の想い)
5. I Stand Alone (映画「はるか、ノスタルジィ」より / 追憶のX.T.C.)
6. Girl (CX系ドラマ「時をかける少女」より / メインテーマ)
7. Rosso Adriatico (映画「紅の豚」より / 真紅の翼)
8. Piano(Re-Mix) (NHK連続テレビ小説「ぴあの」より / ぴあの)
9. Here We Are (映画「青春デンデケデケデケ」より / 青春のモニュメント)

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

Musicians:
Curt Bisquera , Marilyn Droman , Sally Dworsky , Brandon Fields
Tommy Funderburk , Joe Hisaishi , Bunny Hull , Eri Kawai , Tom Keane
Michael Landau , Kevin McCormick , Tollak Ollestad , Lou Pardini
Vonda Shepard , Jackie Sheridan , Kenji Takamizu , Terry Trotter
Warren Weibe , Joseph Williams , Jai Winding

Recorded at Westlake Studios (L.A.), Comway Studios (L.A.)
Light house Studios (L.A.), Pacifique Studios (L.A.), Wonder Station (Tokyo)
Pre-produced at Jai Winding’s Studio, Tom Keane’s Studio
Mixing & Recording Engineers:
Daren Klein, Alan Abrahamson, Suminobu Hamada (Wonder Station)
Tohru Okitsu (Wonder Station), Eiichi Tanaka (Wonder Station)
Kazuyuki Masumoto (Humble Heart Music)
Mastering Engineer: Bobby Hata for DISC LAB (at ON AIR Azabu Studio)
Assistant Engineers:
Doug Michael (Conway Studio), Eddie Sexton (Light house Studio)
Chris Brooke (Westlake Studio)
Tomonori Yamada (Wonder Station), Tomoyuki Morikawa (Humble Heart Music)
Production Co-ordinator (L.A.): Chie Masumoto & SUsanne Marie Edgren
For Humble Heart Music, Hitomi Takemori (Assistant to Chie Masumoto)

 

Disc. 久石譲 『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』

1994年8月25日 CD発売 PICL-1084

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」テーマ・ソング「ぴあの」(純名里沙&JOE’S PROJECT)、挿入歌「ぴーかぴか」、「へんなまち」(唄:純名里沙)を含む全15曲収録。

 

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」挿入歌
「ぴーかぴか/へんなまち」 純名里沙

1994年8月21日 CDS発売 CODA-467

ぴーかぴか 純名里沙

1. ぴーかぴか 作詞:富永元文 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙(桜井ぴあの)
2. へんなまち 作詞:嶋田陽子 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙
3. ふしぎなポケット 作詞:まどみちお 作曲:渡辺茂 編曲:小森昭宏 歌:濱松清香
4. ぴーかぴか 作曲:久石譲 編曲:青木望 (オリジナル・カラオケ)

 

同作品収録のTrack.15「ぴーかぴか」とはバージョンが異なる。編曲者が違うためである。

 

 

 

「(映画などの)メイン・テーマやNHKのドキュメンタリー番組「人体」とか、作品として残る仕事以外は断っていたので、テレビの劇伴は10年ぶりなんです。ずっと映画だけやってきているから、テーマをもとに適当にセレクトしてやればいいところを、映画のようにきちんと合わせて作っちゃった(笑)。NHK側が思いっきり恐縮していましたけど(笑)。15分番組だと約5曲入れてるから、週に6本で30曲でしょ? 10週書くと300曲。もちろん決まったテーマはあるから全部新しいわけじゃないけれども、途中でハッと気づいたら、とんでもない量を作ってたんです(笑)。『オリジナル・サウンドトラック ぴあの Vol.2』(8月発売予定)と合わせてもその中の抜粋でしかなくて、5枚ぐらい出せるんじゃないかっていう(笑)。でも、しかたがないですね。流れ作業的なテレビのやり方が、僕はあまり好きじゃないから。」

「ええ。テレビのスタイルに合わせて小編成にしたんですが、基本的にシンセサイザーが中心で、最後に全部まとめて録った生と混ぜてます。全体的なことで言えば、今回は半年間、毎朝流れるので何度聴いても飽きがこないように配慮してました。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

ぴあの オリジナルサウンドトラック volume 2

1. ぴあの (純名里沙&JOE’S PROJECT)
2. South WInd ~南風
3. Regrets ~夕焼け
4. Music Box ~lost
5. Searching Time ~探しもの
6. Broken Whistle ~拾いもの
7. She Calls ~おむかえ
8. Side Wals ~草笛
9. Piano
10. Music Box ~found
11. Tears ~夜
12. No answer
13. ぴあの ~Instrumental
14. へんなまち (純名里沙)
15. ぴーかぴか (純名里沙)

Produced by Joe Hisaishi

Musicians
Keboards:Joe Hisaishi
Additional Keyboards:Haruki Mino
Drums:Yasushi Ichihara
Bass:Chiharu Mikuzuki , Makoto Saito
Guitar:Jun Sumida , Shuji Nakamura
Accoustic Guitar:Hironori Miyano
Strings:Shinozaki Group

 

Disc. 純名里沙 & Joe’s Project 『ぴあの』

1994年8月10日 CDS発売 PIDL-1134

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

テーマ・ソング「ぴあの」

1994年4月4日-1994年10月1日まで放送された同作品の後期オープニング主題歌である。

前期オープニング主題歌は「ぴあの」/JOE’S PROJECT として同楽曲であるがボーカルおよびアレンジが異なる。(『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 1』収録)

この純名里沙 & JOE’S PROJECT版は、シングル発売されたほか『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』に収録されている。

 

カップリング曲「Labyrinth of Eden」は、久石譲ソロアルバム『地上の楽園』にも収録された同楽曲である。「ぴあの」(オリジナル・カラオケ)では、JOE’S PROJECT、つまり久石譲のコーラスをたっぷりと聴くことができる貴重な音源でもある。

 

 

1. ぴあの 作詞:松本隆 作曲・編曲:久石譲
2. Labyrinth of Eden (Instrumental) (アルバム「地上の楽園」より)
3. ぴあの (オリジナル・カラオケ)

 

Disc. 久石譲 『地上の楽園』

地上の楽園

1994年7月27日 CD発売 PICL-1085

 

洗練された都会派ポップスとしてのテイスト
ゲストにビル・ブラフォードやビル・ネルソンらを迎え、
クオリティの高いスタンダードなシティポップ・サウンドに。

 

 

やっと君に手紙を書く気になったよ。
できたんだ。いや正確に言うともうすぐできそうなんだアルバムが。
覚えているかな? エクスワイアの連載
~それは漠然とした思いであったし、形のない意志でもあった。
「なにかを変えなければ…」。
不満があったわけでもないし(もちろんないわけでもないが)、
作曲家・アーティストとして大きな問題を抱えていたわけでもない。
でももう一人の自分が赤色の信号を点滅させる。
「昨日と同じ自分であってはならない。」と。
そして僕はロンドンに渡った。 (Esquire Paradise Lost 連載より)~

 

1992年夏の終わり、秋風が吹き始めた頃同時にソロアルバムもスタートした。楽勝だと思った、ほんとに。アルバムのコンセプトは前作の制作中にできていたしね。君が好きだった「マイ・ロスト・シティ」-根なし草の都市生活者、文明社会になじまないで生きる人間の孤独と魂を歌った-より一歩踏み出して、ニヒリズムに走らない前向きなアルバムを作りたかったんだ。「地上の楽園」というタイトルだってできていたんだから。でも、何かを変えようと思ったロンドン生活は返って自分の矛盾を拡大し、分裂しちゃって創作活動ができなくなった。もちろんその間、僕だって黙って何もしなかったわけじゃない。数本の映画を担当し、ロンドン・シンフォニー・オーケストラ(85名)やビッグ・セールスの歌手のプロデュースもやった。内容には満足しているし仕事の量も人の3倍はやったと思う。でもソロ・アルバムだけはできなかった。時として人は自意識が強くなり過ぎて本来しなければならない、あるいは力を発揮しなければならないときに空回りするもんだね。東京とロンドンの異常な往復がそれに拍車をかけたと思う。10数回は往復しているんだから、疲れたよまったく。

早いよね、あれから2年が過ぎ、今僕はロンドン・タウン・ハウス・スタジオにいる。今日は「The Dawn」のミックス・ダウンだ。遅れていたヴォーカルを録り、今リアル・ドラムとマシン関係のリズムの調整中だ。信じられるかい? あのビル・ブラッフォードだぜ!そう君が好きだったキング・クリムゾンのドラマーさ。夜の12時を少し回ったところ、これからミックスだ。そう、もう何日も寝てないんだ。今年に入ってからずっとさ。中毒のことをこちらではホリックっていうんだけど僕なんか正しくスタジオ・ホリックって呼ばれているよ。毎朝11時から明け方4時か5時まで、異常だよまったく、珍しく早く東京に帰りたいよ。でも、ふと考える、曲も書けずにロンドンの街を彷徨った日々を思うとどんなに幸せかと。もちろん今だってトラブル続きで頭に来る毎日だが、それだってあの寒々しい所を誰にも頼れず送った日々に比べたらまるで天国だ。でもやっとわかった。曲が書けなかったんではなくて頭の中で書きたかったテーマに対して僕がついていけなかったんだっていうことに。だから時間がかかった。バリ島にも行ったしアフリカのサバンナにも行った。そして僕は理解したよ。このアルバムは僕自身の楽園を目指すための試練なんだと、ちょっと大袈裟かな。もちろんこれは反意語だ。心の中の楽園を希求するアルバムであって楽園賛歌ではない。フォーク・ソングという言葉がすでに故郷を離れた人からしか言えないように楽園にいる人は楽園を歌うことはない。このアルバムには様々のスタイルの曲が収められて、それは3年かかった僕の心の軌跡であり変化でもある。でも94年の春、覚悟のレコーディングに入って数曲のBasic Recordingを終えたとき僕は悟った。すべては-DEAD 死-人間にとっての死をテーマにしていたと。それは決して恐れるものでも暗いものでもないし、むしろそれを身近に感じることによって死と隣り合わせの生を感じる、生を生きることなのだと。その意味でこれはコンセプト・アルバムだよ。といってもそんなに難しいものじゃない。むしろすごくポップだよ。例えば「HOPE」あのビル・ネイソンが詞を書いて歌ってもいるよ。すごくいい仕上がりだ。きっと君も気に入るはずだ。もともと「HOPE」は19世紀のイギリスの画家ワッツが描いたものなんだけど、地球に座った目の不自由な天女がすべての弦が切れている堅琴に耳を寄せている。でもよく見ると細く薄い弦が一本だけ残っていて、その天女はその一本の弦で音楽を奏でるために、そしてその音を聞くために耳を近づけている。ほとんど弦に顔をくっつけているそのひたむきな天女は、実は天女ではなく”HOPE”そのものの姿なんだって。いいだろう、だからほんとはその絵をこのアルバムのジャケットにしたかったんだよ。何故か無理だったけどね。他のも一見関係なさそうに見える曲がそのテーマのまわりをまるで走馬灯のように、音楽的に言えばロンドのようにぐるぐるまわっているんだ。ミルトンの「失楽園」や坂口安吾の「桜の森の満開の下」などから歌詞のコンセプトを得たのもその為だ。すべてはこの世紀末の価値観が崩れる時代だからこそ必要な表現だった。興奮するよ、僕が作ったんじゃなくて誰かに作らされたような気がする。でもそんなことは僕の問題でしかないのかも知れない。おそらく56分前後の長いアルバムになるはずだ。でもこれは僕と君とのロング・ディスタンスの後としてはあまりに短い。僕はもっと君に語りたい。取りあえずこのアルバムを聞くことから始めてくれないか? そしたら少しは僕たちの間は公園のベンチの隣どうし位は近い存在になれるかも知れない。君の返事を待ってるよ。又、会おうよ、いつかきっと…何処かで。

Joeより愛をこめて

(CDライナーノーツより)

 

 

HOPE 地上の楽園

『HOPE』(1885) George Frederic Watts

 

 

1. The Dawn
夜明け、魂が最も肉体から離れるとき。
地上をさす光と天井にともる星のイルミネーション。
やがて希望の光が地上を覆い現実の世界が白日のもとに晒される。
そして人々はそれから目を背ける。

2. She’s Dead
あの娘が死んだ。ディンドンとベルが鳴りオレは叩き起こされた。
刑事は疑っている。アリバイ? そんなものはない。
何も覚えてないんだ、何も・・・。
でもオレはやってない、がやってない証拠もない。記憶にないっていうことは・・・
とにかく-あの娘は死んだ。

3. さくらが咲いたよ
山賊は惚れた、女があまりに美しすぎて。やがて自分を失う。
7人の妻を殺し、京に上り毎夜女の為に首を取る。 (坂口安吾「桜の森の満開の下」より)

4. HOPE
その日、僕はテイトギャラリーにある「HOPE」の前に立った。1886年、WATTSが描いたそれはいつもと変わりなく僕を迎える。
地球に座った目の不自由な天女「HOPE」が奏でる音楽を聞きたいと君はいった。

5. MIRAGE
時々砂漠の夢を見る。
都会の(夜も更けた頃)汚れた歩道を歩いているとそれが果てしなく続き、やがては砂漠に辿り着く。
そして僕は口ずさんでいる。
金と銀の鞍をつけたラクダはすでに死に、焼けた砂を踏みしめながらゆっくり僕は歩く。
蜃気楼の地平線をめざして。

6. 季節風 (Mistral)
サウスイーストの季節風にのって君は現れた。
運命的な出会いは案外さりげなくやってくる。仄かな潮の香りが肌から立ち昇る。
忘れていた熱い情熱が蘇る。
いつか終わりが来て、けだるい孤独だけが残ることを僕は知っている。
でも賭けてみようか?

7. GRANADA
ざくろの実が割れたものをじっと見たことがありますか?
すごく鄙猥でいかがわしくて何だか吸い込まれそうで、まるで地獄だ。
その真っ赤な血のような汁の海に人間がのたうち回っている。芥川風に一本の糸が垂れて人々がそれに飛び付く。
それを遥か彼方の上空からたのしそうに見ている天使たち。笑顔の中の瞳は何の感情も浮かんではいない。
そこが世界の始まりかも知れない。

8. THE WALTZ (For World’s End)
「ねえ、一緒に逃げようよ。どこまでもさー、この世の果てまで、なんか追われるって素敵だよね。
そしたら俺達もう一度やり直せるかもしれない。二人しかいないんだ、他にはなにもない、物音一つしない・・・。
ねえ、踊ろうよそこでタンゴを。何なら・・・ワルツだっていいんだ、君さえよかったら」
タキシードの僕は一人で踊った、砂の上で・・・・。

9. Lost Paradise
ミルトンの失楽園は何を問いかけているのか? サタンは最も人間的な存在なのか?
東洋の阿修羅、西洋のサタン、伝説は人の心の裏返し。
「すべてはサタンの誘惑から始まった」

10. Labyrinth of Eden
迷宮への誘い(いざない)。
死-それは一つの終わりであって始まりでもある。

喜びは次に来る悲しみを産み、怒りは自己嫌悪を産む。
哀しみはいつまでも心の片隅に残り、楽しみは突然襲ってくる空しさを産む。
そのすべてから解き放たれたとき、魂は浄化され人間は初めて自由を得る。

永遠の罪を背負って砂漠を旅するアダムとイヴ。
ただひたすら、ラクダに揺られて・・・。
(僕は歩く、魂の砂漠を。たった一人で・・・・。)

11. ぴあの (English Version)
そこには音楽があった。
こわれたおもちゃのピアノ。
ソの音は低く、シの音は限りなくドに近い。
でもそこには音楽があった。やさしく哀しく、
そして、温もりをもって・・・。

(CDライナーノーツより)

 

 

 

「そうですね。今、僕といっしょにやってくれてるブルー・ウィバーは、ビー・ジーズのワールド・ツアーとかを死ぬほどやったひとりだから、歌の伴奏の極致のようなワザを持っていて、ロンドンでやる時は彼と相談しながら作っていったんです。歌モノが中心なので、アレンジは複雑なポリフォニックなリズムとかではなく、もっと直線的な扱いになりましたが、いわゆる日本の歌伴奏的なものではないエレメントが欲しかったので、とてもいい勉強になりましたね。メロディ・ラインをボーカル・ラインに切り換えたことにも通じるんですが、この数年間は弦とピアノのピュアな世界を作ってましたから、今度はカオス…混沌とさせるぐらいにいろんな要素が入ってるサウンドということで、限定する作業から開放する作業に切り換えたんです。」

「バンドネオンという楽器にこだわりがあって、前回の「タンゴ・エクスタシー」に引き続き、今回も1曲やりたいと思ってたんです。あれだけ色の濃い楽器はないでしょ? アコーディオンはシャンソンで象徴されるように比較的洗練された楽器だけれども、バンドネオンはアタックが想像以上に強くてキレがすごいから、鳴ってるだけで世界観がひとつできてしまうようなところがあるし…。ちなみに、この曲「THE WALTZ(For World’s End)」は映画「女ざかり」のテーマに使われています。」

「ドラムで言うと、みんなやっているようにパーセンテージで細かく見ていくとか、ハイハットもベロシティで変化が出るようにする。中でもドラムで難しいのはフィル・インなので、タムやシンバルはローランドのオクタパットでリアルタイムでやるようにしてますね。音に関しては、3、4種類のキックをうまく使い分けていくやり方。ただし、僕は生のシミュレートは時間のムダづかいと思ってるのでやりません。たとえば今回参加してもらったビル・ブラッフォード(キング・クリムゾン)にしても、彼独特のスネアの音とフィーリングが欲しければ彼に頼んだほうがよいわけだから。」

「漂った感じを出したい時やパッド的な扱いの時はシンセ・ストリングス。そのほうが奥ゆき感が出たりするんですよ。僕の場合、フェアライトの音源やK1000とかだけで成り立つぐらいのクオリティの音を作っておいたものに、生の弦を入れるやり方で、いつも両方コンバインしながら作っていくんですが、生弦に関しては今回はロンドン・シンフォニーということもあって、シンセはいっさい足してません。」

「フェアライトIIの時代のいちばん誰も使わない音を、あえて使ってるんです(笑)。ハダカで聴いたらクオリティの悪い音だけれども、実はその音が持ってる不思議なエキゾチックな世界観が僕にとってはすごく大切なんですよ。ただし、あの音を支えるためにかなりのストリングスがユニゾンで鳴っていて、ほとんど聴けないぐらいの状態でM1もなぞってるはず。何を際立たせるかによって、いろんなものを組み合せて考えていく方法を僕はとってます。」

[使用機材]
☆マスター・キーボード
AKAI MX76
☆シーケンサ
Macintosh Quadra 610/Vision Ver 2.02
☆音源
Fairlight SERIES III/SEQUENCIAL CIRCUIT Prophet-5/YAMAHA DX7/YAMAHA DX7 II FD/MIDI MINI/KORG i2/KORG WAVESTATION SR/KORG M1R/KURTZWEIL K1000/KURTZWEIL K1000PX Plus/E-MU Proformance/YAMAHA TX81Z

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「じつは3年前、今井美樹のアルバムのプロデュースが終わったあとロンドンのスタジオにこもって『地上の楽園』というコンセプトで何曲か創ったんですけど、どうも納得できない部分があってアルバム作りを中断したんです。あの時期は自分の中ではっきりと音への志向性が変わっていきつつあることが感じられて…一時期、ボクは完全にスランプに陥っていましたね。映画やテレビのスタッフワークの中からはいくらでもアイデアは出るんですけれど、ソロアルバムとなると自分の中にたまったものが勝負になる。それがあのときの自分には少なかった」

「歌メロをやっていく中で、これまでのインストゥルメンタルの活動がいかに重要だったか痛感させられましたね。というのも、たとえば歌詞で簡単に〈愛してる〉と歌うところをインストゥルメンタルだとかなり細かく、かつ量も豊富にメロディーを積み重ねて聴いてくれる人を説得するわけですよね。細かい音創りが求められるわけです。そうした経験がどんな内容の歌詞が乗ろうと十分に聴きごたえのある音創りに生かされる。ボクはつねづね日本でもデイヴィッド・フォスターやクインシー・ジョーンズのようなメロディー作家が出てくるべきだと思ってた。彼らは自分で作詞も演奏もしなくてもでき上がってきたアルバムには彼らの個性が貫かれている。ひとつにまとまったプロジェクトを組んでアルバム作りをしているからなんですけど、そうしたスタイルをボクは日本でも定着させたいんですよ」

Blog. 「テレパル TeLePAL 1994年 6.25-7.8」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

地上の楽園

1. The Dawn
2. She’s Dead
3. さくらが咲いたよ
4. HOPE
5. MIRAGE
6. 季節風 (Mistral)
7. GRANADA
8. THE WALTZ (For World’s End) (映画「女ざかり」より)
9. Lost Paradise
10. Labyrinth of Eden
11. ぴあの (English Version) (NHK連続テレビ小説「ぴあの」より)

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi
(except “Piano” Strings Arranged by Nick Ingman)

Musicians
Iain Ballamy,Bill Bruford,
Hugh Burns,Dabid Cross,Lance Ellington,
Motoya Hamaguchi,Mitsuo Ikeda,Rap Jonzi,
Michel Mondesir,Bill Nelson,Tessa Nile,
Jackie Sheridan,Kenji Takamizu
The London Session Orchestra,Gavyn Wright

Recorded at:
Townhouse Studio,London
Abbey Road Studio,London
Music Inn Yamanakako
Crescente Studio Tokyo
Wonder Station Tokyo

Pre-produced at Blue Weaver Studios, London
Mixing & Recording Engineer:Stuart Bruce
Alan Douglas(3,7)
Mastering Engineer:Tony Cousins(at Metropolice Studio)
Recording Engineer:Richard Evans(Real World)
Darren Godwin(Abbey Road Studio)
Suminobu Hamada, Tohru Okitsu, Eiichi Tanaka
(Wonder Station)
Assistant Engineer:Mark Hayley, Lorraine Francis
(Townhouse Studio)
Tomonori Yamada, Ayato Taniguchi
(Wonder Station)
Shinpachirou Kawade(Music Inn Yamanakako)
Mitsuo Sawanobori(Crescente Studio)

 

Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

1994年7月21日 CD発売 MRCA-20040

 

1993年放送 NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体II 脳と心」
音楽:久石譲

 

羊水の中で聴いた、あの音に似て…
限りなき脳宇宙への旅立ち

 

APO(高品質素材)、Qサウンド(3Dサウンド)デジタルリミックスによる人体IIベスト盤

 

 

Q SOUNDとは…?
Q SOUNDとは、現行の2チャンネルステレオシステムそのままでスピーカーの外側の空間に音を定位させることができる画期的なレコーディングシステムです。例えば、リスニングポジションの真横に音を定位させたり、耳元に定位させたりすることが可能で、そしてなによりも音楽にとって必要な空間スペース、ホールやルームの響きをリアルに再現することができます。

APO方式スーパーCD
APOは、アモルファス・ポリ・オレフィン(Amorphas poly Olephin)で光ディスク基盤用に研究・開発された新素材です。このAPOで作られたCDは、従来のCD素材に比べ、

◎高音の歪みが少なく、音抜けが良い。◎低音が豊かに響き、重量感がある。◎残響音の拡がりを、繊細に再現できる。◎光学特性がケタ違いに優れ、ピュアな音を再現できる。◎光弾性系数が良く、CDプレーヤーにセットするときに加わる、クランプ時の応力による複屈折率変化が小さいため、音に歪みが生じにくい。◎硬度が高く、キズがつきにくい。◎吸水性・耐熱性に優れ、真夏の車中でも安心。

など、数々の優れた特徴をもち、まさしく世界最高水準の、ケミカルテクノロジーから生まれたものです。

(音質解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

Posted on SNS, 2024

総集編は寄せ集めベスト盤にあらず。実は全曲でバージョンやミックスが違うnot重複。開封しよう!ゲットしよう!手元におこう!コレクション泣かせとは言わせない一枚だ!

 

BRAIN&MIND 未知の秘境へのいざない
総集編ver.はイントロ追加、ピアノやエレキギターの即興的フレーズが曲全体で大増量!!ボーカル久石譲

ETERNAL HARMONY ひらめきの瞬間
総集編ミックスは、音がぐるぐる回るステレオ感がとっても楽しい。左右のバランスチェックに、故障かなと思ったら?!

PRINCIPLE OF LOVE やさしさの芽生え
タイムは全く同じなのに、Vol.1と総集編の2つを並べたらバージョン違うとはっきりわかる。表記はないけど。スネアやシンバルもくっきり、個人的こっち一択

MYSTERIOUS NEURON きらめく神秘の世界
イントロからディレイ的チャンネルが1つ多いとか、2分くらいからのベースにドラムのキック重ねてないとか、3分くらいからシェイカー効いてるとか、分ごとに多々ある

COMPASSION はぐくまれた命
総集編ver.はメロディを切り気味なシンセサイザーに修正してる。エコーとかのミックスかな、弾き直しはしていないデジタルな調理法

IMAGINATION FACTORY 魔術師たちの部屋
総集編ver.はピアノもシンセストリングスも音の質感が違う、耳でころがすテイスティング

MEMORIES OF… 鮮やかな記憶の残照
総集編ver.はSEみたく歪んだ音加工したシンバルが曲の味ベース。左右にパンするスネアのフィル追加。シンセサイザーのアドリブ大増量。30秒長いED2コーラスループ

DREAM OF GAEA 懐かしき時夢
総集編ver.はイントロからこだましてる、トトロみたいな伴奏もこだましてる1:30くらいわかりやすい

EMOTION 永遠の春
曲名とおり春も感じる。総集編ミックスはストリングスもぐっと大きい

NEW GENERATION 未来人への予感
総集編ver.はイントロからこだましてる(この曲も!?)、16ビート感がアップしたリズム、2分くらいのブンッブンッSE

RETURN TO LIFE 驚異の再生能力
総集編ver.はメロディの笛の音が2種重ねてある、30秒くらいわかりやすい。曲全体のシンセピッチカートも硬質な肌ざわりに

WHY DO THE PEOPLE 長い旅路の果て
終曲。ここまできて一曲だけ同じバージョンってことはない。何が違うかな….総集編ver.はVol.1&2収録バージョンと全曲違う!マストな一枚!(ふらいすとーんの耳調べ)

 

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

1. BRAIN&MIND 未知の秘境へのいざない
2. ETERNAL HARMONY ひらめきの瞬間
3. PRINCIPLE OF LOVE やさしさの芽生え
4. MYSTERIOUS NEURON きらめく神秘の世界
5. COMPASSION はぐくまれた命
6. IMAGINATION FACTORY 魔術師たちの部屋
7. MEMORIES OF… 鮮やかな記憶の残照
8. DREAM OF GAEA 懐かしき時夢
9. EMOTION 永遠の春
10. NEW GENERATION 未来人への予感
11. RETURN TO LIFE 驚異の再生能力
12. WHY DO THE PEOPLE 長い旅路の果て

Compose&Arrangement:Joe Hisaishi
Producer:Joe Hisaishi

Singer:Jackie Sheridan / Without Sugar
Guitar:Clem Clempson

Synthesizer Operator:Peter Wielk / Blue Weaver

Recording Studio:
Battery Studios (London)
Matrix Studios (London)
The Townhouse
Wonder Station

 

Disc. 久石譲 『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 1』

1994年6月25日 CD発売 PICL-1082

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

 

「(映画などの)メイン・テーマやNHKのドキュメンタリー番組「人体」とか、作品として残る仕事以外は断っていたので、テレビの劇伴は10年ぶりなんです。ずっと映画だけやってきているから、テーマをもとに適当にセレクトしてやればいいところを、映画のようにきちんと合わせて作っちゃった(笑)。NHK側が思いっきり恐縮していましたけど(笑)。15分番組だと約5曲入れてるから、週に6本で30曲でしょ? 10週書くと300曲。もちろん決まったテーマはあるから全部新しいわけじゃないけれども、途中でハッと気づいたら、とんでもない量を作ってたんです(笑)。『オリジナル・サウンドトラック ぴあの Vol.2』(8月発売予定)と合わせてもその中の抜粋でしかなくて、5枚ぐらい出せるんじゃないかっていう(笑)。でも、しかたがないですね。流れ作業的なテレビのやり方が、僕はあまり好きじゃないから。」

「ええ。テレビのスタイルに合わせて小編成にしたんですが、基本的にシンセサイザーが中心で、最後に全部まとめて録った生と混ぜてます。全体的なことで言えば、今回は半年間、毎朝流れるので何度聴いても飽きがこないように配慮してました。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「たとえば『ぴあの』なんかは、3ヵ月ぐらいそれで悩んだ。アルバムを作る時はそれぞれ条件があるんですよね。『ぴあの』に関していうと、これはあくまで1日3回で月~土の半年間、膨大な量がテレビで流れるわけですよ。そんな時に飽きないメロディ、シングル・ヒットをねらうだけなら簡単だけど、そうじゃなくて日本のスタンダード曲になるくらいに、飽きないメロディを書こうというのが前提にあるでしょ。その条件の中で作ろうとするから、すごく時間がかかりましたね。」

「日本語の歌詞でも確か「Dream」だったよね。けっきょく言えるのは、僕のメロディには英語がすごく乗りやすいこと。音数がそれほど多くなくて動きがあるから、英語のように単語で入ってくる言葉のほうがいいんだよね。「I love you」でも音が3つあれば言えてしまうんだけど、日本語だと「わたし」しかいかないじゃない?(笑)」

Blog. 「キーボードスペシャル 1995年3月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「でも最初はね、主題歌を創るつもりはなかったんです。ピアノソロで押し通すつもりだった。それがなにかの拍子にインストゥルメンタルでも歌でも楽しめる曲もイイなぁと思ったのね。たとえば『ティファニーで朝食を』の〈ムーンリバー〉みたいな曲ね。インストゥルメンタルでも歌でも楽しめる曲って音楽の中でももっともインパクトをあたえるものなのに、最近めっきり少なくなっているでしょ。これは挑戦しがいがあると思い直して詞を付けて主題歌を創ったわけなんです」

「最初の10週間は収録画を見ながら付けるんです。細かい場面の音まで付けますからね…月曜から土曜までの分、1回15分が6回、1時間30分でしょ。それが10週間。これはもう毎週1本ペースで映画に音を付けるのと変わらない。しばらくたってからです、あっこれテレビの仕事だったんだ、と思ったのは(笑)。ノリは映画のときの、それも大林宣彦組に就いたときのようで、もう修羅場でした」

Blog. 「テレパル TeLePAL 1994年 6.25-7.8」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

1994年4月4日-1994年10月1日まで放送された同作品の前期オープニング主題歌は『ぴあの/JOE’S PROJECT』としてシングル盤発売されている。その2曲目「ぴあの スタンダード」は歌唱もコーラスも異なり、よりアコースティックなバンドサウンドとなっている。間奏パートも異なり、曲想としてはアメリカン・オールド・アットホーム的な印象を受ける。サントラ盤Volume 2をふくめてアルバム未収録の貴重なヴァージョンである。

ちなみに、後期オープニング主題歌は主演を務めた純名里沙による歌唱となっている。『ぴあの』/ 純名里沙 & JOE’S PROJECTとしてシングル盤が発売され、同サントラ盤Volume2にも収録されている。

 

 

 

1. ぴあの (JOE’S PROJECT)
2. Ripply Mind ~さざめく心
3. Run to Me
4. Gleam ~輝く瞬間
5. The Bonds of Love ~愛情の絆
6. Fortepiano ~心の機微
7. Suspicious
8. ぴあの ~かけがえのない妹
9. From Pianissimo ~小さな決心
10. Path to the Lights ~希望への道
11. White Lie ~罪のない嘘
12. Closed Fist ~閉じられた手
13. Twitter ~姉妹の喜び
14. Forenoon ~夜明け
15. Behind Backs ~ひそかな裏切り
16. Instrumental ~ぴあの

Produced by Joe Hisaishi

Musicians
Keboards:Joe Hisaishi
Additional Keyboards:Haruki Mino
Drums:Yasushi Ichihara
Bass:Chiharu Mikuzuki , Makoto Saito
Guitar:Jun Sumida , Shuji Nakamura
Accoustic Guitar:Hironori Miyano
Strings:Shinozaki Group