Posted on 2021/04/12
毎日新聞 4月12日夕刊に、久石譲インタビューが掲載されました。同内容はWeb版にも掲載されています。
Interview 久石譲
新しいクラシックを
日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者に
スタジオジブリ作品など映画音楽の作曲を数多く手がけ、ピアニスト、指揮者としての顔も持つ久石譲が1日、日本センチュリー交響楽団(大阪府豊中市)の首席客演指揮者に就任した。「世界中で指揮をしてきたけど、一緒にやりたいオーケストラって実はそんなに多くはないんですよ。でも、このオケは新しいものに食いついてくる。肌合いがとてもいいんです」。10年以上にわたり協演を重ねてきた楽団と、より深い関係で深みのある表現を追求していく。
今年度は2回の定期演奏会などに登場予定。各プログラムには自身の作品の他、エストニアのスメラら現代の作曲家、そしてベートーベンやメンデルスゾーンなど「誰もが知るクラシックの作曲家」の作品が並ぶ。こだわったのは作曲家目線。自分の曲も含め、同時代の作品を伝える責任を感じている。その背景には、欧州の作曲家や古典作品に偏りがちな日本クラシック界への疑問がある。「ヨーロッパでは伝統がのしかかり、新しいものを作り出せていない。伝統のない中国や韓国、アメリカの方がすごいんです。そう考えたら日本にも可能性はすごくあると思う」。現代の日本ならではのクラシックを模索し、古典にも久石流の新しい風を吹き込むつもりだ。「動いていないように見えてクラシックの演奏も刻一刻と変わっている。10年後、20年後のスタイルを見据えて、新しいクラシックのあり方をきちんと提示します」
国内外で指揮者としての活動が増えても、原点である曲作りには「生まれ変わっても作曲家になる」と断言するほど情熱を注ぎ続けている。「創作の源、それが分かったら苦労しないんだよねえ」と笑いつつ、毎日作り続けることを心がけている。何もない状態から、悩みに悩んだ末に「音楽のかけら」が生まれる。そこからやがて一つの曲が出来上がり、それは世界中で歌われるかもしれないし、歴史に残るかもしれない。そこから得られる喜びは計り知れず、「本当に天職ですよ」と話す。
指揮活動は作曲に大きな影響を与えているという。曲作りが自分の中にあるものを外に出すアウトプットなら、指揮はインプット。「例えばブラームス。構成や展開はこうなっているんだなと考えながらタクトを振っていると、その時に書いている映画やエンタメ音楽で同じことをやっている」と明かす。
就任後の初お披露目は17日。大阪の4楽団がそれぞれ交響曲を奏でる演奏会「4大オケの4大シンフォニー2021」(大阪・フェスティバルホール)で、ベートーヴェンの交響曲第8番を指揮する。「一つ一つのオケが1等賞を取れるような演奏をしないと、どこも良くならない。その中で一番目立って勝たなきゃいけない」と、勝利のための秘策を三つ用意している。「言っちゃうとサプライズにならないから。楽しみにしていてください」
21~27日、新日本フィルハーモニー交響楽団とタッグを組む「ワールド・ドリーム・オーケストラ」として、京都、兵庫、東京を巡り、交響曲第2番を世界初演、交響組曲「もののけ姫」完全版などを披露する。
(毎日新聞 2021年4月12日 夕刊 より)
(写真:Web版より)