Info. 2018/12/08 「久石譲 コワ心地いい新感覚」(毎日新聞 夕刊)掲載

12月8日、毎日新聞 東京夕刊および毎日新聞Webに掲載された記事です。11月開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.5」コンサートを取り上げた内容になっています。

 

 

久石譲 コワ心地いい新感覚

コンサートの楽しみは「聴いたことのない喜び」を体感することに尽きる。久石譲が主宰する「ミュージック・フューチャー」は、本人の新作を中心に現代音楽を紹介するコンサートシリーズで今回5回目。「聴いたことない」が満載である。

久石は、“ジブリ作品御用達”の映像作曲家として知られるが、本人にすれば「僕ね、ミニマルミュージック系の現代音楽作家だよ」と、にこりと笑って自己紹介。11月に開催した、米カーネギーホールでの同内容公演で高い評価を受けたことでさらにその自信を深めたと見える。「まず普通なら、客が来ない。でも、このコンサートはいつも満員」とさらに相好を崩す久石。

今回もフィリップ・グラスの古典を久石が再構成した作品。カーネギーでは、グラスも大いに喜んだと言う。そして目玉のデビッド・ラングと久石の新作。4曲のうち3曲が日本初演という緊張感漂うプログラムである。

ラングは「マッチ売りの少女の受難曲」でピュリツァー賞を受賞した前衛作家。すべての楽器が違うことをやっているようで、耳に届く頃には絶妙なアンサンブルと繊細な響きに変容し、不安をベッドにして官能の子守歌を聴くような、コワ心地いい体験ができる。

久石の新作「ザ・ブラック・ファイヤーワークス2018」は、福島の震災被災者の子供が発した「白い花火のあと黒い花火が消す」という言葉に想を得て書かれた作品。チェンバーオーケストラで演奏され、ラングと同じように不安と不信や疑義が底流にあり、光を求めてあがきもがく人間を描写するようである。どこか宮崎駿アニメとも通じると思うのは先入観か。B・メルドー、R・グラスパーなど先端ジャズのファンならすぐに共感できそうである。

全作品を通して、聴いたこともない典雅な響きが運ぶ音楽の意外性と不思議感が充満する。ちょっと濃いめの新酒と思えば、酒好きにはたまらない!? 

11月21日、よみうり大手町ホール。【川崎浩】

(毎日新聞 12月8日 東京夕刊 より)

 

 

 

 

 

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