Info. 2018/12/06 「東京・NYで公演 久石譲とデヴィット・ラング」(読売新聞 夕刊)掲載

12月6日、読売新聞夕刊に掲載された記事です。11月開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.5」コンサートを取り上げた内容になっています。

 

 

東京・NYで公演 久石譲とデヴィット・ラング

キャッチーな音作り共通

シンプルな音型の反復で成り立つミニマル音楽を追求する作曲家の久石譲が、最先端の音楽を紹介する演奏会「ミュージック・フューチャー」が5回目を迎えた。今回は東京に加え、ニューヨークでも公演。米国の作曲家デヴィット・ラングを迎えて豪華な舞台を展開した2人に聞いた。(清岡央)

ニューヨーク公演は11月11日、カーネギーのザンケルホールで行われた。「あなたのファンでいっぱいだった」とラングが久石に言えば、久石は「ニューヨークはミニマリストにとって本場。そこで最前衛のラングさんと一緒にできて心から幸せだった」と応じる。

ラングは「マッチ売りの少女の受難曲」でピュリツァー賞(音楽部門)を受賞し、映画「グランドフィナーレ」の音楽でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネートされるなど、最も注目されている作曲家の一人。久石はこれまでの演奏会でもラング作品を取り上げてきた。「非常に論理的。作曲ってこうやらなければいけない、と思わされる」と高く評価する。

今回の公演は、11月21、22日に東京都千代田区のよみうり大手町ホールでも行われ、2人の新曲などが久石指揮の室内オーケストラによって演奏された。

久石の曲は「The Black Fireworks 2018」。タイトルの「黒い花火」は、東日本大震災で被災した少年が久石に語った「白い花火の後に黒い花火が上がって、それが白い花火をかき消している」という言葉による。

単音の旋律を繰り返す中、いくつかの音を低音や高音で同時に鳴らすと、声部が複数あるように聞こえる、「シングル・トラック」と久石が呼ぶ技法だ。オーケストラが歯切れのいい音型を音色や強弱を変えて刻み、きらめいては消える花火を思わせる。その上をチェロのマヤ・バイザーによるソロがたゆたうように響く。

ラングの新作「prayers for night and sleep」が続いた。「人々が夜、寝る前に祈るのは、恐ろしいことから守ってもらうためで、根売はそれへの解決法。二つを対比した」。バイザーの妖艶なチェロに加え、ソプラノのモリー・ネッターが神秘的に歌う。前半の詞はインターネットで「夜になると」と検索し、続く言葉を「カタログ」にして作られた。後半の詞はユダヤの伝統的な祈りに基づく。平和のうちに眠り、目覚めることを願う。旋律は優美な子守歌のようだ。

久石は「僕もラングさんも基本のアイデアは明快。ベートーヴェンだって(交響曲第5番で)ババババーンってつかみますよね。キャッチーさはどんな音楽でも大切」と語る。難解な「現代音楽」には批判的な思いがあるのだ。「作曲家が頭の中で作る世界をそのまま表現して自分の世界に浸り過ぎた。新しさを追求しても、聴いてもらうんだ、という視点を忘れてはいけない」。そう久石が力をこめると、ラングは深くうなずいた。

 

掲載写真下コメント:
久石との共演について、ラングは「うちの子は(久石が音楽を担当した)宮崎駿映画で育ったので『すごい』と言われました」と喜んだ

(読売新聞 12月6日付 夕刊 より)

 

 

 

 

 

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