Posted on 2014/12/29
11月20日発売 雑誌「モーストリー・クラシック」2015年1月号(vol.212)第26回高松宮殿下記念世界文化賞の音楽部門受賞者アルヴォ・ペルト氏と久石譲の面会の様子が取り上げられました。
掲載記事内容をご紹介します。
第26回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式と記者会見
「栄誉に対し永遠に責任を持たなければいけない」とペルト
「ペルトさんは現代で最も重要な作曲家です」と久石譲
第26回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式が10月15日、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。今年の受賞者は音楽部門のアルヴォ・ペルト(エストニア)をはじめ、マルシャル・レイス(絵画部門、フランス)、ジュゼッペ・ペノーネ(彫刻部門、イタリア)、スティーブン・ホール(建築部門、アメリカ)、アソル・フガード(演劇・映像部門、南アフリカ)。
授賞式に先立って14日、ホテルオークラ(東京・虎ノ門)で合同記者会見と受賞者個別懇談会が行われた。
ペルトは「我々5人が東京に来て、そろって並んで座り、この栄誉に対し感謝を述べること、これは奇跡ではないでしょうか。栄誉とは何でしょうか。最大の栄誉は神に属しています。人が栄誉に浴すことは決して容易なことではありません。栄誉を与えられた者は、栄誉に対し永遠に責任をもたなければなりません」とあいさつした。
ほほからあごにびっしりと生えた白髪まじりのひげが特徴的なペルト。一言一言ゆっくりと英語でスピーチした。記者会見の後、部屋を変えて、個別に質問に答える懇親会が行われた。今度はロシア語の通訳付き。母国語はエストニア語だが、英語よりはずっとなめらかに話し始めた。
記者会見で「バッハは、作品はすべて神の栄誉のために作った、と言っている」と語ったことに関し、「私たちはバッハの子供たちでもあります。音楽家はみんなそうです。ベートーヴェン!私は何者なのでしょうか?口を開けるのもおこがましい。音楽の歴史の中の偉大な人々です。私たちはこの音楽の歴史の中で育ってきました」と補足した。
また自分の作曲の仕方について、「私はゼロから始めます。どこに行くか分からない。気球の砂袋を一つ一つ落として浮き上がるようなものです。作曲できないと、何か悪いことをしたのだろうかと思ってしまいます。一番甘い時間でもありますが、しんどい仕事なのです」と説明した。
15日の授賞式と祝宴の間の短いカクテルの時間に、作曲家の久石譲がペルトに会いに駆けつけた。9月に自作とペルト作品で演奏会をしたばかり。
「自然でとても素晴らしい人ですね、人間として持っている雰囲気が。ペルトさんの音楽は若い頃は、現代音楽的だったのですが、ある時期から普通の三和音に戻りました。おそらく、ペルトさんもこのままでは観客(の感覚)とずれてしまうという危機感をお持ちだったんじゃないでしょうか。とても共感する部分があります。誰でも親しめるスタイルをとりながら、ものすごくロジックがあります。聴くと、一見、癒し系の音楽で聴きやすいのに、見事なぐらいロジカル、なのに理屈っぽいものを聴く方に感じさせない、ペルトさんは現代で最も重要な作曲家です。僕はオーケストラの指揮をやりますので、できるだけペルトさんの曲をやろうと思います。第3交響曲はみんなに絶対聴かせなければいけない。来年か再来年にぜひやろうと計画を立てています」と話した。
(MOSTLY CLASSIC 2015.1 vol.212 より)
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