Blog. 「モーストリー・クラシック 2019年2月号 vol.261」久石譲 MF Vol.5 NY公演 記事

Posted on 2018/12/20

クラシック音楽情報誌「モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC 2019年2月号 vol.261」(2018年12月20日発売)に 久石譲コンサートの記事が掲載されました。

2018年11月開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.5」ニューヨーク公演です。毎号、海外の音楽情報を伝えるコーナーのひとつとしてカラーページで紹介されています。

 

 

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New York | November 2018 | USA

文=依田謙一(日本テレビプロデューサー)

久石譲の「ミュージック・フューチャー」がカーネギーホールに進出
自作、ラングやグラスの作品を指揮し満員のニューヨークの聴衆を魅了

久石譲が現代の優れた音楽を届けるために2014年に始めたコンサートシリーズ「ミュージック・フューチャー」(MF)が今年、5回目にしてニューヨーク進出を果たした。

久石はそのキャリアにおいて、ルーツであるミニマル・ミュージックの作曲に重点を置いてきた。また久石は、やや形式的になってしまった”現代音楽”と、ミニマル、ポスト・クラシカルなどによって今を反映し続ける”現代の音楽”を明確に分けて考えており、多くの観客に届けることに強い使命感を持っている。こうした久石の”核”を形にしたのがMFであり、聴衆もそれに応えるように完売を続けてきた。

今年のMFは久石の盟友であるデヴィット・ラングとのコラボレーションが実現したことから、東京だけでなくニューヨーク・カーネギーホール(ザンケルホール)での公演を決意。ともに”現代の音楽”に向き合う2人によるコンサートは注目され、満員の客席が迎えた。

久石は全4曲を指揮。演奏はラングが共同創設者を務めるニューヨークを拠点とするアンサンブル「バング・オン・ア・カン」。前半は久石と親交があるフィリップ・グラスの「Two Pages」を室内オーケストラ用にリ・コンポーズ(再構成)し、シンプルなフレーズの世界を掘り下げた。グラスはリハーサルにも参加し、新しいアプローチを喜んでいたという。続く「増加」を意味するラングの「increase」は、久石の作曲家ならではの解釈で、よりタイトに仕上げた。

後半は2人の楽曲による競演にふさわしい対照的なプログラミング。トークセッションを経て演奏された久石の「The Black Fireworks 2018」は、東日本大震災で被災した少年が話した「白い花火の後に黒い花火が上がって白い花火をかき消している」という言葉から着想を得た曲で、マヤ・バイザーのチェロをフィーチャー。最近重視しているというシングル・トラック(本来は線路の単線という意味で、それぞれの楽器が単旋律のユニゾンを演奏すること)の技法を駆使し、単旋律の音が低音や高音に拡散することで、フーガのように別の旋律が聴こえてくる中、チェロが光と闇、消えゆく煙のように表情を変えていく。

最後に演奏したラングの「prayers for night and sleep」は祈りの根底にある恐れの感覚を表現した曲。ソプラノにモリー・ネッターを迎え、チェロのバイザーも引き続き参加した。あえて平易な言葉を連ねた詩を支えるのは、弦楽による哀れみ深さとグランカッサ(大太鼓)による不安が同居するスコアリング。アンサンブルを強く連係させ、連なった言葉を埋没させない解釈で観客の集中力を引き出した久石の指揮は、”現代の音楽”にエンターテイメント性さえもたらす奇跡的な一夜を作り出した。

同公演は11月21日、22日、東京・よみうり大手町ホールでも開催した。

(モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC 2019年2月号 vol.261 より)

 

 

また本誌「新譜紹介コーナー」では、『MUSIC FUTURE III』(11月21日発売CD)も紹介されています。同コンサート・シリーズ Vol.4(2017年開催)より収録されたライヴ盤です。

 

「現代音楽」イヴェント MUSIC FUTURE からの第3弾

久石譲の主宰で、ミニマルの系譜上にある作品を採り上げる「現代音楽」MUSIC FUTUREからの第3弾。2017年10月によみうり大手町ホールで行われた録音のライヴ。ラング、ガブリエル・プロコフィエフ、久石自身の作品がフィーチャーされ、なかではプロコフィエフ作品が、パルス的な持続のなかで変形の度合いの大きな快作。緩急急の3楽章からなる久石作品も洒脱なノリの楽想が顕著だ。肩の凝らない現代作品。”

(モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC 2019年2月号 vol.261 より)

 

 

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE III』

 

 

 

 

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