Blog. 「FM fan 1998 No.25 11.16-11.29」 『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/03/15

雑誌「FM fan 1998 No.25 11.16-11.29」に掲載された久石譲インタビューです。オリジナルソロアルバム『Nostalgia ~Piano Stories III~』のリリースタイミングになります。

 

 

久石譲

”歌のエスプリ”にスポットをあてた
「揺らぎ」のある新作をリリース

「ピアニストは”体力”をつけろと、おすすめします」と久石譲は笑って言う。「長野パラリンピック冬季競技大会」の総合プロデュースや宮崎駿作品、北野武作品の音楽監督、他アーティストへの楽曲提供など多岐にわたる音楽活動。とりわけ『もののけ姫』(宮崎駿監督)の音楽から『HANA-BI』(北野武監督)の音楽へと続いた時期には相当なハード・スケジュールをこなしたという。「ところが現在はその三倍も忙しいんです」という彼。来年にむけて、また北野武監督作品を担当するという。この超ハードなスケジュールを「今だから出来る」とガッチリと受けとめている。

そのさなかから生まれた、みずからプロデュースのニュー・アルバム『ノスタルジア~ピアノ・ストーリーズIII』。

「サウンドはガッチリと構築するスタイルなのですが、このスタイルを一回壊してみたい。メロディに集約し直してみたい。僕の場合、作曲もアレンジも演奏も自分でやってしまいますから、少し荒っぽくてもいいから原質が出るような、そういうアルバムを作ってみたいなというのが一番根底にありました。で、北野武監督『HANA-BI』ベネチア映画祭出品の間などでイタリアへ行って、イタリア的ニュアンスなんだというのが自分なりに分かりましてね。イタリアというとカンツォーネだとかオペラだとか、歌という感じがありますね。何かそういうところのアプローチをしたいなという……。

タイトルが『ノスタルジア』だからといって、郷愁といったニュアンスでは作っていないんです。われわれふだんレコーディングしていると、どうしてもドンカマで作っていく傾向がすごく多い。そればっかりだと、揺らぎのある音楽から遠ざかっちゃうんですね。歌のエスプリみたいなものが最近の音楽では、ほとんど聴くことが出来ませんよね。今、忘れがちになっているそういう重要な要素に、もう1回スポットを当ててみたい。それが最も新鮮なんじゃないか。そういうのが大まかなコンセプトです」

そして北イタリアのモデナでオーケストラをレコーディング。日本の音楽プロジェクトが北イタリアでのレコーディングは極めて稀。モデナ文化評議会が賛同し、フェラーラ・オーケストラとストロキ・ホールが協力した。これには9月4日から16日にわたる現地の有力新聞14紙が、大々的に久石のレコーディングを報道した。

「行く前から、向こうのオケはいやというほど歌うからねと言われましたが、はたして!」

全曲新録の10曲は、『紅の豚』『HANA-BI』『時雨の記』の映画、CF、テレビでおなじみの曲のほかに書き下ろし曲、そして、ニーノ・ロータの「太陽がいっぱい」、声楽のアルトの歌手なら必ずといっていいほど歌うサンサーンスの「バビロンの丘」も含めて、久石譲のピアノの”うた”が満載だ。

ほかの仕事の合間をぬって、10月15日から12月16日まで全国主要9都市で、みずから構成・演奏する”久石譲ピアノ・ストーリーズ’98 -オーケストラ・ナイト-”。コンサートがあるとピアノに使う両の上腕が太くなるという生活は、まだまだ続く。久石の腕が太くなるにつれて、人々の心の体力がつく。

(インタビュー・文:三橋一夫)

(FM fan 1998 No.25 11.16-11.29 より)

 

 

久石譲 『PIANO STORIES 3』

 

 

 

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