Blog. 「キーボード・マガジン Keyboard magazine 1987年12月号」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2019/07/02

音楽雑誌「キーボード・マガジン Keyboard magazine 1987年12月号」に掲載された内容です。オリジナル・アルバム『Piano Stories』制作時期・準備期間にあたります。

 

 

久石譲
次のソロ・アルバムは全編ソロ・ピアノで現在制作中です

今やCM、映画音楽からアイドルものまで、さまざまなジャンルで超多忙なスケジュールをこなしている久石譲。1日15時間以上スタジオに入っているという久石氏にホーム・スタジオ、ワンダー・ステーションでインタビュー。最近の活動振りや準備を進めているソロ・アルバムの話をうかがった。

 

ー今年はどういった活動を主にやっていたのですか?

久石:
CM、映画、レコードと相変わらずまんべんなくやってますが(笑)、基本的には映画の方に力を入れてきました。今年これまでで4本やりましたからね。これは以前から考えてたんですけど、日本の映画っていろいろ問題を抱えてるんですよ。で、僕もその中で状況を変えていかなければ……と思って。

 

ー音楽サイドから見た映画の問題点というと?

久石:
簡単な話、サントラがあまり売れてない(笑)。すると、音楽予算はどんどん削られていくわけでね。だからもう一度サントラ、映画音楽は売れるんだ、という状況にしていかなければいけない。アメリカでは映画内の音楽と最後の主題歌が別だったというのは、もう10年くらい前の話なんですけど、今でも日本はそれを踏襲している。逆にアメリカでは「フラッシュダンス」以降、映画の中にいろいろな歌が入って、相乗りのような形で宣伝効果を高めて、それが若い人達にそれなりのアピールをするようになってるでしょ? この間の「トップガン」にしてもね。日本でもそういう状況が開発されればまたサントラが売れる可能性は出てくる。……そういったことも踏まえて、今年手掛けたものでは歌を起用するケースが多いんです。この前の僕の仕事で「この愛の物語」というのは、全11曲、歌なんです。ただ脈略もなく歌を並べるだけでは失敗しますよね、だから台本に即したところでそれに見合う作曲をして、さらに詞──特に日本の監督さんとかは詞をすごく気にしますからね、それがピッタリ合うもの、というふうにやっていくと、これは並大抵の労力じゃすみませんね。だけど、こうしていかないとただ単にBGMみたいに歌を流すというろくでもないものになっちゃう……最近あるでしょ、そういうの(笑)。そういった状況を誰かが破っていかないとね。だから、この前やった「漂流教室」の時、主題歌の歌手、今井美樹を起用したのは僕だし、12月公開予定の「ドン松五郎の大冒険」、これで立花理佐が歌っているメイン・テーマ(ニュー・シングル)の作曲もやって全体をコーディネイトしていってます。

 

ー例の「風の谷のナウシカ」あたいが突破口になった……?

久石:
結果としてはそういうことも言えるでしょうね。でも、あれで変に高尚だとかいうイメージもつきまとって、日本のヴァンゲリスなんて言われて(笑)……僕がソロ・アルバム『α-BET CITY』でやったような、アヴァンギャルドな聴くのもつらいというような(笑)音楽をソロでやってるといった部分が覆い隠されちゃってるのが、ちょっとね……(笑)。

 

ー次のソロ・アルバムの進行状況はどうですか?

久石:
実は去年からずっと準備してるんですけど(笑)。ソロ・ピアノをやっていまして、去年の11月にロンドンで4曲録ったんです。で、残りを東京で録ろうとしたら、音質が違いすぎて同じアルバムに入らないということになって……(笑)。何度かチャレンジしたんですけど、音も雰囲気も違っちゃって。だから、年が明けたらまたロンドンに行って録ろうかと言ってたらこんな状況でとても行けない。できれば12月に行きたい、そうすればちょうど1年振りになるし(笑)。まあ、どうにか年内に行ければいいなという感じですね。……ずっとインスト系の音楽をやってきて、一度ここで原点に戻りたかったんです。だから今回はエリック・サティのピアノ曲のようにね、虚飾を取り去ってシンプルにメロディを歌わせるというコンセプトなんですよ。曲はこれまでやった映画音楽が中心となります。「ナウシカ」も入ってれば「Wの悲劇」とか「早春物語」や、最近の「漂流教室」とかも入れて。今までの僕のソロの中では一番わかりやすいものになりますね(笑)。

 

ーロンドンではどこのスタジオで録られたのですか?

久石:
サーム・ウェストです、トレヴァー・ホーンで有名な。そこのピアノというのが、リズム録りとかに使っている、ちょっとガタガタのやつなんだけど、タッチがすごく重くて、どうしてかと思ったら、ベーゼンドルファーなんだけど、MIDI化してあるというたいへんなモノだった(笑)。懸命に練習してタッチに慣れましたけど。それは思った通りの感じで4曲録れましたが、あと5曲くらいはやらないと……ピアノでよかったと思うのは、フェアライトやなんかのギンギンのやつだと、1年も経つとコンセプト変わっちゃうけど、ピアノはあまりそういうことはないのでね。春先くらいにはどうにか出したい。それが終わったら、次は『α BET CITY II』というか、暴力的な、ギンギンのやつをやりたいを思っています。フェアライトIIとIIIを使ってできることとかも入れてね、超ドラマティックなものを。

 

ー久石さんの音楽というと、ずいぶんいろいろなとらえ方をされていると思うんですけど?

久石:
でもね、どんなタイプの音楽やっても、自分のメロディ、音というのは必ず出てくるんですよ。アレンジをやっていても、自分のスタイルは絶対崩さない。僕はフュージョンが大嫌いだから、LAっぽいサウンドみたいなのはやらなくて、どちらかというとブリティッシュ系の音をやりたい。注文に応じて何でもやるんじゃなくてね。今年になってアイドルものとかもやってるんですけど、初めの段階では、キュートでかわいいイメージに、とかいうところでもついエスニックな音入れたりして(笑)。最近では歌モノを素直にできるようになりましたけどね。

 

ー最近のメインの機材というと……?

久石:
やっぱりフェアライトのIIとIII、プロフィット5、DX7、DX7II……だいたいその辺ですね。そろそろ何か欲しいなとか思うんだけど、フェアライトIIIがどんどんバージョン・アップしていくんで追いつかないんだよね(笑)。もう、楽器と戯れてる時間がなくて……。今日は半日あいてるな、とかいってゴチャゴチャいじってるうちにいろんなこと発見していくていうのは重要なんだけどね。楽器にさわる時って全部仕事になっちゃってるから。……この間もIIIがバージョン・アップして、コマンドが全部変わっちゃったから、もうわからない(笑)。ただ、ある程度までいくと、楽器を客観視することというのが必要になってくるんですよ。だから今はオペレーターを通して楽器に接するようにしている。手弾きとかね、リアルタイムの打ち込みなんかは自分でやりますけど、その他の部分はオペレーターというフィルターを通してね。これまで、楽器の中でアイディアをふくらませていく場合が多かったけど、頭の中で一度構築してから置き換えていくというやり方に変わってきているんです。

 

ーフェアライトがIIからIIIにんったメリット、デメリットというのは?

久石:
まあ、やはり音質が良くなって、特に4リズム系、バスドラムやスネア、ベースなんかのヌケが良くなってリズムがしっかりしたというのがメリット。逆に容量を死ぬほどくうのが……ピアノひとつに8インチ・フロッピー6枚とかいうんだものね(笑)。IIIの方は音色が揃ってないから、IIもまだ手元に置いて使ってるんです。2台を連動させることもありますよ。弦なんかはね、III、II、それにプロフィットとか総動員していっぺんにMIDI弾きしちゃうから……豪華な音ですね、とよく言われますよ(笑)。何通りかの音の組み合わせを音楽に合わせてやりますよ。強めの弦をIIIで、IIはふわっとした音、ザラッとした感じをプロフィットで、とか……。4歳からバイオリンをやっていて、弦には思い入れがあるから、誰にも負けない自信があります。

 

ー今後、ハードウェアに期待する部分はどんなことですか? たとえばこんな機材が出てほしいとか……。

久石:
それはいろいろあるんですけどね(笑)。たとえば、ベースとか生で弾いているのをそのままシーケンサーとして記録して、それをあとからシンセやなにかの音色で差し換えられるようなものとか。MIDIじゃなくて、生でそのまま入れると変換できるもの。これは便利だと思うな(笑)。突拍子もないことを言っているようだけど、そういう思い付きがハードウェア関係者をてんてこまいさせて、それで新しいものが出てくるというのが正しいあり方だと思うんですよね。今は逆でしょ? 勝手に楽器が出てきて、ソフトウェア側が追いかけていく……これじゃいけない。もっと正常な状態になっていってほしいですね。

(キーボード・マガジン Keyboard magazine 1987年12月号 より)

 

 

久石譲 『piano stories』

 

 

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