Blog. 「Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~」(LP・2021) 新ライナーノーツより

Posted on 2021/12/27

2021年11月27日、大好評 “スタジオジブリ×久石譲‘’ 作品のアナログ盤シリーズに、いよいよ特別編とも言うべき 「Castle in the Sky~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン~」のサウンドトラック、 「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」、そしてジブリ美術館でしか観る事のできない『パン種とタマゴ姫』のサウンドトラックが登場しました。

各イメージアルバム、サウンドトラックとはまた異なる編曲で楽しめる作品です。こちらもリマスタリング、新絵柄のジャケットと豪華な仕様、解説も充実、ライナーノーツも楽しめる内容です。しかも、この3作品のアナログ盤は、これまで発売されたことがありません。ジャケットの美しさ、アナログならではの、音の豊かさを、お楽しみ下さい。

(メーカーインフォメーションより・編)

 

 

アメリカ版『天空の城ラピュタ』スタッフ日記について
前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

別掲の久石自身のライナーノーツにあるように、本盤はアメリカ版『天空の城ラピュタ』のために、久石が1999年に追加作曲したスコア(以下、アメリカ版と表記)を収録したものである。現在のようにインターネットが広く普及していなかった当時、久石の公式サイト(joehisaishi.com)では、ワンダーシティのスタッフが日々の業務をレポートするスタッフ日記を頻繁にアップしていた。アメリカ版の制作期間も例外ではなく、実際の作業の進行状況が制作スケジュール(右表)に沿いながら、きわめて詳細にレポートされていた。

その後、公式サイトの変更に伴い、このスタッフ日記は閲覧できなくなっているが、今回、アメリカ版制作期間中のスタッフ日記が以下に再掲載されることになった。当時の空気や久石の作曲手法を知る上でも、また(新作映画の場合はほとんど明らかにされることがない)久石の作曲ペースを知る上でも、きわめて貴重な第一級の資料である。

 

 

制作スケジュール

1999年
2月25日(木)
制作スタート

4月29日(木)
アメリカ、シアトルへ出発

4月30日(金)~ 5月3日(月)
St.Thomas Chapel (Bastyr University Chapel) にてオーケストラ・レコーディング

5月4日(火)~ 8日(土)
トラックダウン

5月10日(月)
帰国

 

アメリカ版(※1)『天空の城ラピュタ』スタッフ日記
当時のワンダーシティスタッフ(※2)によるweb日記を抜粋

1999年2月26日(金)
社内での打ち合せ。アメリカ版「ラピュタ」の制作進行をよりスムーズにするため、あらゆる方法を検討します。13年前の作品とは思えない、この素晴らしい映像をどうやって生まれ変わらせるのか、久石さんの腕の見せどころになります。しかし、いざ作業を始めてみると日本とアメリカの文化的な相違は大きな壁となり、予想はしていましたが、やはり苦労が絶えません。今後も試行錯誤が続きそうです。

2月27日(土)
ワンダーステーション(※3)の第3スタジオにて、アメリカ版「ラピュタ」の制作です。オリジナル版とアメリカ吹き替え版を見比べながら、前回のデータ整理の残りを仕上げてしまおう、というのが今日の作業内容。「ラピュタ」の挿入曲は全部で40曲前後にも及ぶのですが、すでに半分以上はデータの整理が完了しているので気分も楽なものです。時折、「ラピュタ」制作時(13年前)の思い出話やウラ話、冗談などが飛び出して、久石さんを筆頭にスタジオの中は爆笑の渦と化していました。

3月3日(水)
アメリカ版「ラピュタ」レコーディング(※4)。1曲目の制作にいよいよ入ります。出だしの音楽皆さん覚えていらっしゃいますか? そうです、あのドーラ達が飛行客船を襲うシーンで流れてくる曲ですが、これがアメリカ版になるとさらにド迫力。これからが楽しみです。

3月4日(木)
引き続き「ラピュタ」レコーディング(※4)。1曲目の続きです。ということは…。そうです。大幅に曲が延びているのです。これが見事にはまっていて実にすごい。また違った感覚で映像が見れて面白かったですね。

3月8日(月)
「ラピュタ」レコーディング(※4)。今日は2曲目以後の制作を行います。すでにオープニングの曲からタイムが延びていて、音の厚さもオリジナルの倍以上! ということは、予想以上に挿入曲が増えることにもなります。もうすでに久石さんの頭の中にはイメージが完成し、次から次へといろんなアイデアが出てきてしまうとか。今日はサクサクッと3曲ほど完成させてしまいました。ウーン、恐るべし久石譲!!

3月9日(火)
引き続きレコーディング(※4)。昨日の続きを始める前に、完成した部分を再度チェックします。アニメは大量のセル画を1枚ずつ送っていくことにより構成されているので、曲を挿入する場合は「秒」以下のカウント(フレームと言います)で合わせていかなくてはなりません。時間のかかる仕事だけに、時間の使い方がとても重要なのですが、さすがに長年映画音楽に携わっている久石さんはツボを押さえていますね。その効率の良い仕事ぶりに、スタッフ一同改めて感心してしまいました。

3月11日(木)
「ラピュタ」レコーディング(※4)。1日空いてしまいましたが、リズムを崩すことなく「ラピュタ」制作にとりかかる久石さん。ワンダーステーションの第3スタジオにも完全に馴染み、良い雰囲気で仕事を進めています。今久石さんが一番に考えていることは、オリジナルの素材を大切にするのはもちろんのこと、多民族国家アメリカで十分に通用するような音創りをするということです。

3月15日(月)
さて、今週は月曜日から金曜日まで続けてスタジオに入る、まさに「ラピュタ週間」です。このアメリカ版「ラピュタ」の制作は、お昼頃にスタジオ入りして夜の10時頃に終了するという、非常に規則正しいスケジュールが組まれているのですが、実はこれ、久石さんの提案によるものなのです。毎日10時間も薄暗いスタジオにいては不健康だし、みんなも疲れるだろう、とスタッフに気を使ってくださっているのです(久石さん! ありがとうございます!!  byスタッフ一同)。お陰様で現在のところ仕事は順調そのもので、今日の音付けは、パズーがトランペットを吹くシーンからドーラ達がシータを捜しに来るまでのシーンを一気にやってしまいました。ウ~ン、この音楽がまた素晴らしい! ファンの皆さんにも出来るだけ早くお聴かせしたい、と思う今日この頃です。

3月16日(火)
今日は炭鉱街の親方と海賊が腕比べをするシーン。これがすごく楽しい曲に仕上がり、映像と合わせて見ると大笑いしてしまうのです。エンジニアやスタッフも笑いをこらえて作業する、といった前例のない出来事。「良い音楽と良い映像は繰り返し聴いても見ても飽きることはない」ということをあらためて実感した1日でした。

3月17日(水)
昨日が大作であったにもかかわらず今日も大作になりました。今日のシーンはドーラとのおっかけっこのシーン。アメリカ版用に大幅にリアレンジされてかなりド迫力になりました。同じ曲でもこうも変わるものかと思いましたね。順調に進んでおります。

3月18日(木)
今日は炭鉱にパズーとシータが落ちていくところから。新たに2曲ほど作られて、また新鮮な感じになりました。久石さんやはりハリウッドを意識してか、かなりの曲数になっています。

3月19日(金)
今日はついにパズーとシータが捕まってしまいました。ここからシータを助け出すまではきっかけあわせが多いので大変です。昔のシーケンスが残っている曲がこのあたりは比較的多いのでそれを助けに進められます。しかし昔の曲をなぞるだけでなく全く新しい感じにすべてを変えていくので、作業的には昔の曲を復活させる分大幅に増えてしまうのです。

3月23日(火)
今週もスタジオ作業が詰まっています。今日はティデスの要塞でシータを助け出すシーンまで。曲のテンポを上げた曲が多いのでスピード感がかなり増しました。その分作らなくてはいけない部分が増えるのですが。きっかけ合わせが昔と違ってパソコンでかなり正確に出来るので、1フレ単位でずらしながら何度も画面に合わせて一番気持ちいいきっかけを探っていきます。時代は進歩したものです。

3月24日(水)
今日のシーンはタイガーモス号でラピュタを捜しに行く部分。タイガーモス号内で繰り広げられる人間模様にどんな音楽を付けるのか、久石さんの腕の見せ所です。アクションシーンと比べれば数段地味になるこのシーンを、アメリカの観客にも受け入れられるようにするにはどうすればいいのか? と以前から考えていたそうですが、時間をかけて温めてきた構想は大成功! このシーンはぜひ見てもらいたいものです。

3月25日(木)
今日はゴリアテにタイガーモス号が襲われるシーン。ここは竜の巣の曲までつながって大幅に長くなりました。生の弦も大幅に追加され、これまた大迫力。そしてこの曲が出来あがったところで、ディズニーからプロデューサーが来社。ここまでを通して見てもらったところ、かなり気に入ってくれた様子でした。その後打ち合せでいろいろな意見が交わされました。ここまでかなり曲を入れてきていたつもりでしたが、そのプロデューサーはもっと増やして欲しいとのこと。さすがアメリカです。

3月26日(金)
皆さん、「大樹」のテーマを覚えていますか? 今日はこの壮大なテーマを新たに生まれ変わらせる作業です。オリジナルを創った頃よりもコンピューターやキーボードが進化したため、新「大樹」のテーマには今までにない数多くの音が追加されました。しかしその反面、昔使った音を再現するのに一苦労するという場面も…。作業終了後はビールを飲みつつ「ラピュタ」の思い出や今後の展開などについて話を弾ませて、無事1日の作業を終了しました。

3月29日(月)
今日からは気分を入れ替えて再び「ラピュタ」の制作にとりかかります。先日完成させた「大樹」のテーマに手直しと追加をしたのですが、その中には対位法を取り入れたスゴイ曲もあります。しかしなんと言ってもこれからのシーンが山場。新たなスゴイ曲が続々と登場することでしょう。

3月30日(火)
今日からはクライマックスシーンの連続となります。軍隊に捕えられたドーラ達を救い出そうとするパズーとシータ。彼らのちょっとした動きにも音を付けていくわけですから、自然と変拍子の曲になってしまいます。苦労しながらリズムをとっているスタッフを尻目に、久石さんは一気に曲を書き上げてしまいました。実は久石さん、リズム系にはとても強いんです。でもこの曲を弾くオーケストラの方々は、だ、大丈夫なのでしょうか?!

3月31日(水)
シータとムスカがラピュタの中心部へ入っていくシーン。神秘性を出すためにオリジナルでは曲をつけなかったのですが、アメリカ側の要望はその正反対で、神秘性を出すために劇的な曲をつけてくれ! とのことです。日本とアメリカの感覚の違いをまざまざと感じさせられたスタッフでしたが、久石さんは最初から予想していたらしく「まかせておけ!!」とばかりに、ムスカが本性を明かすシーンまで一気に書き上げてしまいました。曲の感じはかなりダイナミックなのですが一連のシーンにとてもよく合っているので、ファンの方々は要チェックですよ!!

4月1日(木)
今日はエープリルフール!! ですが「ラピュタ」制作班には全く関係ありません。締め切りが迫っているせいでしょうか? 冗談を言い合うこともなく、黙々と作業に没頭していきます。今日はロボットが兵隊達を襲い始めるシーンから。今回は以前使った曲にアレンジを加えた上で、低音域を重視したリズム系のサウンドを強調してみました。実はこの手法、現在のハリウッドで最先端をいくものだとか…!?

4月2日(金)
最後の山場! パズーとシータが禁断の呪文を唱えることにより、ラピュタが崩壊していくシーンです。オリジナルでは児童合唱団がアカペラでテーマを歌いましたが、今回はオーケストラがバックにつくことで荘厳な雰囲気をかもし出し、まるでレクイエムのような仕上がりになりました。あの憎々しいはずのムスカがどこか悲劇的に見えてしまうのは、音楽の持っている「魔法」のせいなのかもしれません。この後、パズーとシータがドーラ達と再会するシーンにも曲を付け、1ヶ月以上に及んだアメリカ版「ラピュタ」の制作を一応終了しました。やや疲れ気味の久石さんでしたが、今回のアメリカ版「ラピュタ」の制作にはかなり満足している様子でしたよ。

4月3日(土)
完成したアメリカ版「ラピュタ」を再度見なおす作業。音を追加したり、タイムを伸ばしたりするのが中心となりますが、少し時間がたつとより客観的に見れるので、これは重要な工程になります。納得いくまではOKを出さない、という久石さんの物創りに対する姿勢がここでも垣間見ることができましたね。そして今日、若干の手直しを経てアメリカ版「ラピュタ」がついに完成しました。久石さん、本当にお疲れ様でした! ゆっくりお休みになって…と言いたいところですが、55曲分のスコア書きと本場シアトルでのオーケストラレコーディングが今後控えているのです!! 久石さんもスタッフも当分休みなしのハードスケジュールが続きそうです。

4月5日(月)
アメリカ版「ラピュタ」のオーケストラレコーディングについて、社内でスケジュール調整をします。今回のレコーディングはアメリカのシアトルが選ばれ、オーケストラもディズニーの映画音楽には定評のある、地元のシアトルミュージックです。本場の音でアメリカ版「ラピュタ」を創りたい! というのが今回の久石さんのこだわり。一応5月上旬を予定しているのですが、久石さんもスタッフも今から楽しみにしています。ファンの皆さん、シアトルについて何か知っていることがあれば(おいしいレストランなど)ぜひ教えてくださいね!!

4月7日(水)
夕方より社内で打ち合せ。シアトルでのレコーディングスケジュールを再度チェックします。何せアメリカ版「ラピュタ」の曲数は全部で55曲!! 限られた時間でレコーディングするには緻密なタイムテーブルを用意しておかなくてはなりません。1日のセッション数からオーケストラの楽器編成まで、久石さんの意見やアドバイスを聞きながらスタッフも必死!! イタリアの時みたいな事件が起きずに、なんとか無事にレコーディングを終えられればいいのですが…

4月9日(金)
今日は「ラピュタ」に挿入されているピアノの部分をレコーディングします。ピアノソロはもちろん久石さんです。現在では、全ての楽器の音をコンピューターから呼び起こすことができますが、久石さん曰く「生きている音を求めるのならば生の楽器の音が一番!!」とのこと。これが実際に比べてみると本当に生の音の方がイイんですよね。今日のレコーディングは3時間ほどで終了。さあ、明日からは地獄のスコア書き(55曲分)です!!

4月10日(土)
今日から地獄の譜面書きがスタートです。曲数から考えて今回もぎりぎりのスケジュールになる予感がします。かなりキツイ作業になりそうです。

4月12日(月)
ひたすらスコア書きの1日。今日は海賊達と炭鉱町の親方が腕比べをするシーンの曲にとりかかったのですが、曲に厚みが出た分だけ楽器編成も増えたので、書く譜面の量はとにかくスゴイのです。休みもとらず、食事もとらず、久石さんは部屋から一歩も出ずにひたすら、ただひたすら書き続けています。

4月14日(水)
都内は強風に煽られた昨日でしたが、今日は快晴も快晴、もう暑いくらいです。「どこかに遊びに行きたいなぁ」と誰もが思っているこの季節、もちろん久石さんも同感です。が…アメリカ版「ラピュタ」のレコーディングは刻々と迫り、スコア書きも白熱しています。昼間から夜中までほとんど休まずにひたすら書きまくっていますが、フルオーケストラ55曲分というのはスゴイ量ですね。当分はこんな生活が続きそうです。

4月15日(木)
スコア書き。今日はパズーとシータをドーラ達が追いかけるシーンです。今回のアメリカ版「ラピュタ」の中ではフルオーケストラ編成で最も音の厚い曲の1つなので、スコアにしていく作業は並大抵ではありません。シーンを見直しながらの楽器と音域の配分調整や、ピアノを使った構成和音のチェックなど、楽譜に音符を書き込む以外の作業も同時に行わなくてはならないのです。昼過ぎに始めて気が付けば外は真っ暗。久石さんは休みも取らずに、ただ黙々と書き続けています。

4月16日(金)
最近ハードな生活が続いているので風邪をひいてしまったのか、ノドが少しいがらっぽいという久石さん。しかし休みもせずにスコア書きに集中しています。完成したスコアは写譜屋さんの手で各パート譜にされ、その後スタッフによってオーケストラ用とマスター用(いざという時の為の控え)に分けられるのですが、これだけの曲(しかも55曲分)をコピーするだけでスタッフはてんてこ舞いになってしまいます。

4月17日(土)
ひき続きスコア書きです。とにかくひたすら机に向かって書き続けているので、腕も肩もこってしまっている久石さん。途中1時間ばかりマッサージに行きましたが、あまりの肩こりにマッサージの先生も驚いていました。今日は3曲ほど仕上げて終了。明日は自宅で静養するそうです。

4月19日(月)
今日はレコーディングが2本ほど。タイガーモス号が夜空を飛行しているオープニングシーンに、今回はケーナという南米の縦笛を使ってみました。

4月20日(火)
スコア書き再開です。あまりに曲数が多いため(全55曲)、終わりはまだ遥かかなたで、まだまだ見えそうにありません。

4月21日(水)
今日もスコア書き。1度ベーシックをマッキントッシュに打ちこんではいるものの、スコアにして書くとまた違った形で上がってきます。久石さん曰く、頭で鳴ってしまっているので変えざるをえないとのこと。時間がかかるわけです。

4月22日(木)
さらにスコア書き。一体いつ終わるのでしょうか。予定では、27日の予定になっております。しかし予定は未定。

4月23日(金)
まだまだスコア書き。久石さんは1曲書き終わるごとにM表のMナンバーをピンクのマジックで塗りつぶしていきます。すこしピンクが目立ってきた感じです。

4月24日(土)
スコア書き。今回用におろした鉛筆達もだいぶ短くなってきました。

4月25日(日)
久石さんは今日はひとまずスコア書きは休み。さすがにぶっとおしは体によくありません。でも家に居たら居たでなにかしらやっていることでしょう。スタッフも写譜屋さんから上がってきたパート譜のチェックや、マルチテープの整理などに追われています。

4月26日(月)
そしてスコア書き。ここまで来るとだいぶ見えてきました。今日終わった時点で残り2曲!! もうひとふんばりです。

4月27日(火)
久石さんまず会社に来てから2曲をあげてしまいました。これでスコア書き終了。本当にお疲れさまでした。今回はあまりに曲数が多いため、三宅一徳さんと長生淳さんにも何曲か手伝っていただきまして、なんとか終えることができました。本当にありがとうございました。しかしさらに今日はリュートという中世のギターのような楽器のレコーディングもありました。まさかあの曲にこの楽器がダビングされるとは!? でもとってもいい感じにあがりました。

4月28日(水)
いよいよ明日アメリカへ発つということで最終準備におおわらわ。今回はアメリカ、シアトルのオーケストラでレコーディングされます。譜面の量は半端じゃありません。これだけの量をスタッフ3人で運べるのかどうか不安がよぎります。さらにぎりぎりで最後のパート譜も上がってきてそのチェックも同時進行です。間違いなく今日も徹夜です。夜中の3時に久石さんから超高級焼肉弁当の差し入れあり。これがほんとにうまかった。ご馳走さまでした。

4月29日(木)
結局譜面チェックが終わったのは朝の6時半。荷物の梱包はだいたいすんでいたのですが、後は昼に来てからということで一時退散です。そして昼に来てみるとなんとか荷物もまとまっていました。これなら運べそうです。そして成田へ。ここでトラブル発生! 荷物が重量オーバーだというのです。1つの荷物の許される最大の重量は32kgということなのですが、その荷物(マルチテープと譜面がまとまったもの)はなんと57kgもあったのです。なんとか荷物を散らしてその場を切り抜けました。そして3時55分の飛行機にてアメリカ、シアトルへ出発です。久石さんもあまり寝ていないにもかかわらず元気そうでした。日本残留組の私達は上手くレコーディングが進むことを祈るばかりです。

4月30日(金)~ 5月8日(土)
シアトルでレコーディングとTD(トラックダウン)。

5月10日(月)
10日間にわたるシアトルでの「ラピュタ」制作が無事に終了し、ついに久石さんが帰国しました。ややおつかれのようでしたが、いつも通りの笑顔で「ただいま! みんな久しぶりだな」とそのまま空港でスタッフと簡単な打ち合わせを。10時間のフライト中も、ノート型PCを使いながら次の仕事についていろいろと考えていたらしいのです。久石さんは24時間、本当にパワフルなんですね! スタッフもあらためて実感しました。とにかく今日は自宅へ直帰。今晩ぐらいはゆっくり休んでほしいものです。

6月1日(火)
今日はスタジオジブリへ。アメリカ版「ラピュタ」完成の報告と、シアトルミュージックによるサントラの試聴です。徳間インターナショナルの武田さんにアルパート氏も交え、生まれ変わった「ラピュタ」を最新型のサウンドシステムで聴きいったとか。どうやら宮崎監督も喜んでいらっしゃったようです。

6月9日(水)
会社の近くにある行き付けのマッサージへ。「ラピュタ」と「はつ恋」のスコア書きが続いたこともあってか、久石さんの肩こりはハンパじゃありません。マッサージの先生も唖然としていたとのことですが、ゆっくり時間をかけた甲斐もあって随分楽になったとのことです。さて、身も心もリフレッシュした後は…もちろん仕事です。スタッフと共に今年のツアースケジュールの詰めを入念に行いました。

 

注釈
※1 制作当初、正式なタイトルが決まっていなかったため、「アメリカ版」の仮タイトルで作業が進められた。
※2 ワンダーシティは、久石譲の音楽事務所。
※3 ワンダーステーションは、久石譲のフランチャイズ・スタジオ。
※4 ここでの「レコーディング」は、デモトラックの録音の意。

( LPライナーノーツより)

 

 

 

 

Castle in the Sky~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~

品番:TJJA-10042
価格:¥4,800+税
※2枚組ダブルジャケット(SIDE-A,B,Cに音楽収録 SIDE-C裏面はキャラクターのレーザーエッチング加工)
(CD発売日2002.10.2)
音楽:久石譲 全23曲

2003年に全米DVDリリースされたUSAヴァージョンのサウンドトラック。「天空の城ラピュタ」のオリジナル・スコアを基に、新曲も加えてシアトルにて新録音。

アメリカ版『天空の城ラピュタ』スタッフ日記(当時のワンダーシティスタッフによるweb日記を抜粋)所収

 

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