Blog. 「東京人 2022年4月号 no.452」久石譲インタビュー内容

Posted on 2022/03/28

月刊「東京人 2022年4月号」(3月3日発売)に掲載された久石譲インタビューです。本号特集「日本が生んだクラシックの名曲」のなかの「令和に活躍する作曲家に聞くコーナー」にて、カラー見開き2ページで登場しています。

 

 

『東京人2022年4月号 特集「日本が生んだクラシックの名曲」』

バロック、古典派、ロマン派……クラシック音楽といえば、古い時代の音楽が定番ですが、実は日本でもたくさんの作品が生まれているのです。〝日本らしいクラシック音楽″とは——童謡、歌曲、軍歌、交響曲、オペラ、映画音楽……明治・大正・昭和を代表する作曲家の近代音楽史を、音楽評論家の片山杜秀氏が語ります。池辺晋一郎、久石譲、野平一郎、細川俊夫、藤倉大、坂東祐大――いま国境を超えて活躍する人気作曲家も大集合!

(東京人公式サイトインフォメーションより)

 

 

令和に活躍する作曲家に聞く

クラシック音楽は、欧米だけのものではない!世界中から委嘱やコンサート依頼が絶えず、日本のクラシック音楽界をリードする久石譲さん、細川俊夫さん。そして、次世代を担う若手として注目を集める坂東祐太さん、小野田健太さん。人びとの心に届く、数々の作品を生み出す期待の作曲家たちに、音楽への想いと創作活動について伺った。

 

久石譲
僕は立ち止まらない
全盛期はこれからと信じて進む。

ー久石さんは長野県の出身ですが、長野にいらした若い頃に、東京というまちはどんなふうに見えていたのでしょう?

久石:
特別に「東京へ行きたい」という意識はなかったかな。NHKラジオで「現代の音楽」という歴史ある番組が放送されていて、高校時代にはそれをよく聴いていました。当時は武満徹さんとか三善晃さんとか、そういった作曲家の方々が活躍されていた時代で、現代音楽が華やかな時代でした。

 

ー作曲家を志されたのも、やはりその頃ですか。

久石:
中学校時代はブラスバンドをやっていて、楽器の演奏が得意ではあったのですが、実はその頃から自分で書いた曲を持っていって、みんなに演奏してもらうということが素直に嬉しかった。高校時代には月に二回程、作曲のレッスンのために東京に来ていました。音楽大学を卒業した後、映画音楽の仕事を始めたのが三十代、もちろんそのときよりも今のほうが、自分としてはずっと良い状況になったと感じています。昔は良かったな、とか、そういうふうに懐古することはないですね。

 

ーコロナ禍でも立ち止まることなく、「フューチャー・オーケストラ・クラシックス」など、さまざまな公演を企画されています。クラシック音楽の古典、例えばベートーヴェンとかブラームスの交響曲の新しい解釈を、盟友である演奏家の面々と練り上げつつ、同時に自分の新作なども披露されていますね。

久石:
ようやく自分の思い通りに作品が書けるようになって来たという実感はあります。このコロナ禍でもシンフォニーの新作を二曲書きましたし、大変な状況でも自分を見据えてやっていけば、この状況をプラスにすることはできます。世界に受け入れられるまで、この歳までかかったという想いもありますが。そういう意味でも、やはり今が自分にとっては一番良い時期です。いや、今よりも今年の夏のほうがさらに良くなると思うし、そうなるように努力するだけです。

 

ー久石さんは常にポジティブで、より良い未来を見ている人という感じがします。

久石:
作曲家というのは不思議なもので、僕よりも年上の作曲家の方に会っても、みんな前向きというか、基本的に明るく、人間として面白い人が多いです(笑)。話をしていても飽きないし、あえて言えば自己中心的というか。例えば、ベートーヴェンとゲーテが逢ったときのことを、ゲーテが回想して、とにかく「うるさい、自分のことばかり話す」と書いていますが、そのぐらい作曲家というのは自分のことばかり考えている人種かもしれません(笑)。

 

ー東京の音楽シーン、特に一九七〇年代以降の日本のクラシック音楽作曲家たちの活動は、大きな変化があったと思うのですが。

久石:
武満さんなどが活躍していた時代は、やはりバブルの前の時期で、新しい音楽にも光があたり、それに目を向ける企業なども多くて、音楽祭なども盛んに行われていました。それに比べると、バブル後は停滞しています。しかし、そこに留まっていてはどうしようもない。新しい音楽的な価値観をもっと世の中に広げなければいけないと感じていますし、もう一度〈王道〉を探求しなければならないと思いますね。

 

ー「ミュージック・フューチャー」(久石さんが現代の優れた音楽を紹介すべく立ち上げたコンサートシリーズ)もその一環ですね。

久石:
今年も十月に開催する予定ですが、そこでは海外の優れたミニマル・ミュージックを紹介しています。例えばニューヨークのメトロポリタン歌劇場でもオペラが上演されている作曲家のニコ・ミューリーに作品を委嘱したり、とか。そうした試みを通して、東京の音楽シーンをさらに活性化させていきたい。欧米では、新しい音楽がたくさん演奏されており、それが聴衆にもまれることによって、作曲家が演奏家も育っていく訳です。日本でもそういう意識を持って、作曲家や聴衆を一緒に育てていかないと、将来が見えて来ないと思っています。そこに関心を持ってくれる方が増えることに期待しているのです。

文・片桐卓也

(「東京人 2022年4月号 no.452」より)

 

 

from 東京人 公式ツイッター

 

 

目次

東京人4月号
april 2022 no.452

特集 日本が生んだクラシックの名曲

令和に活躍する作曲家に聞く
久石譲 僕は立ち止まらない 全盛期はこれからと信じて進む
細川俊夫 沈黙の中に消えていく 音もまた美しい
坂東祐大
小野田健太

【7つのキーワードで読み解く】
作曲家の近代音楽史
片山杜秀(音楽評論家)/小室敬幸(音楽ライター)
1.明治 「文明開花と日清戦争」 瀧廉太郎/シャルル・ルルーほか
2.大正 「第一次世界大戦とブルジョワジー」 本居長世/山田耕筰ほか
3.レコード、ラジオ、映画の誕生 中山晋平/服部 正/早坂文雄ほか
4.昭和戦前、戦中 「皇紀2600年と日本主義」 信時 潔/橋本國彦ほか
5.昭和戦後 「戦争経験とハイカルチャーの終焉」 池内友次郎/黛 敏郎/伊福部 昭/三善 晃ほか
6.テレビ、アニメーションの誕生 山本直純/冨田 勲ほか
7.ゲーム、サイバーカルチャーの誕生 すぎやまこういち/吉松 隆ほか

【座談会】“新しい音”をおもしろがろう!
藤倉 大(作曲家)×山田和樹(指揮者)×林田直樹(音楽評論家)

[演奏家に聞く 音楽のちから]
澤矢康宏(小平市立小平第三中学校吹奏楽部 顧問)
柳澤寿男(バルカン室内管弦楽団音楽監督、指揮者)
藤井隆太(フルート奏者、龍角散社長)
カーチュン・ウォン(指揮者)/海道弘昭(テノール歌手)/LEO(箏曲家)/成田 達輝(ヴァイオリニスト)

[多彩なコンサートホール案内]
東京文化会館 野平一郎(音楽監督、作曲家)
昭和女子大学人見記念講堂 坂東眞理子(理事長・総長)
サントリーホール 堤 剛(館長、チェリスト)/本條秀慈郎(三味線奏者)
東京芸術劇場
東京佼成ウインドオーケストラ
東京オペラシティ コンサートホール 東京オペラシティ リサイタルホール 池辺晋一郎(ミュージックディレクター、作曲家)
すみだトリフォニーホール 佐渡 裕(指揮者)
トッパンホール 西巻正史(プログラミング・ディレクター)
ミューザ川崎シンフォニーホール 原田慶太楼(指揮者)

2022年おすすめ公演情報

正確に再現された多彩な音色を車でも

谷川俊太郎、武満眞樹に聞く いま想う、私たちの武満徹 文・青澤隆明

東京音楽散歩 作曲家ゆかりの地を訪ねて 文・山崎浩太郎

日本で最初期の音楽カメラマン 小原敬司のコレクションより 昭和初期の歴史的音楽シーンを拝見

いま聴きたい! 女性の作曲家10人
三宅榛名/萩京子/挾間美帆/木下牧子/たかの舞俐/田中カレン/藤家溪子/望月京/牛島安希子/山根明季子

日本人作曲家を堪能するためのCD10選 選、文・麻倉怜士

「最高の感動度」で日本の名曲を オーディオシステムの決定版はこれだ!

オーディオショールームを訪問 「on and on」 こだわりの音に出会う喜び

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ほか

 

 

 

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