Posted on 2014/06/12
「クラシックプレミアム」 第6巻は、モーツァルト2です。今回取り上げられているモーツァルト作品は3大交響曲。モーツァルトや、モーツァルト音楽を生涯指揮したカラヤンの歴史もいつもながら内容濃く解説されています。
【収録曲】
モーツァルト
交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
交響曲 第40番 ト短調 K.550
交響曲 第41番 ハ長調 K.551 《ジュピター》
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1970年
「久石譲の音楽的日乗」第6回は、
作曲家兼指揮者とプロの指揮者の違いとは
折しもこの執筆およびコラム掲載の前に、久石譲は、今年2014年1月台湾にてコンサートを行っています。その自身のことや体験にもふれながら今号のお題について述べられています。とても貴重な、リアルタイムな久石譲を知ることができますので、一部抜粋してご紹介します。
「自作の《フィフス・ディメンション》は、ベートーヴェンの《運命》のリズム動機(有名なダダダダー)と音程を音列化し、ミニマル楽曲として作ろうとしたのだが、作曲していた最中に東日本大震災がおこり、それが影響したのか激しい不協和音とエモーショナルなリズムに満ちていて演奏がとても難しい。今回はさらに手を加えてより完成度を上げたのだが、難易度も計り知れないほど上がった。指揮していた僕が「この作曲家だけはやりたくない!」と何度も思った、本当に。」
「それで(リハーサル)2日目に臨んだのだが、不協和音にシンコペーション、テンポチェンジと変拍子の中で飛び交うパッセージに悪戦苦闘していた僕はあまりに余裕がなかった。指示を待つ団員の表情が彼ら自身に対する不安(リハ1日目)から、僕に対する不安に変わっていくようにすら感じた。さすがに一流のオーケストラの団員、最初は戸惑っていたが、僕の期待に応えるべく、パート譜越しに楽曲イメージを的確に摑んでいって、まだ如何に振るかで汲々としている僕を追い越していってしまったのだ。作曲家としてはありがたいが、指揮者としてはちょっと情けない。一般的に作曲家兼指揮者は、オーケストラを振るという経験値の少なさが、あるいはプロとしての技術力の不足が最大の問題になる。逆にいうと技術というものは経験の裏打ちによってしか獲得できない。実践からしかその先の技術は学べないのだ。」
コラムの中盤を抜粋していますので、前後の文脈や構成がわかりにくいかもしれません。(そこは本マガジンを実際にご覧ください)
コラムの結びでは、経験豊富で同じ作品を度々演奏するプロの指揮者、作品の特徴(優れた点や脆弱な点)を知ったうえで、難しい箇所を稽古するという、限られた時間の中で何を優先するか的確に見積もることができる、そんなプロの指揮者の優位性に対して、作曲家兼指揮者の優位性はないのか?
というところで結ばれていますので、次号以降の展開も楽しみです。
さて、今コラムで触れられている台湾コンサートは、2014年初のコンサート開催にして、海外コンサートだったわけですが、そのプログラム詳細やレポート内容は、すでに書いていますので興味のある方はどうぞ。
こちら ⇒ Blog. 久石譲 2013-2014 年末年始コンサートレポート (オフィシャルブログより)
「5th dimension(フィフス・ディメンション)」という楽曲は、久石譲が藤澤守(本名)名義で発表した現代音楽作品で、いわゆる映画/CMなどのエンターテインメント音楽の作曲家 久石譲とは、一線を画して発表した作品です。
2011年に発売された「JOE CLASSICS 4」に収録されています。それから3年後、上にあるようにオリジナル版を改訂したものが、台湾コンサートで改訂初演となったわけです。なかなか久石譲のコンサートプログラムにあがる機会は少ない楽曲かもしれませんが、ぜひ改訂された「フィフス・ディメンション」をいつか実際に聴いてみたいです。台湾コンサートは「ベートーヴェン」プログラムだったため、演奏リストとしてラインナップされたのだと思います。
それにしてもリハーサル風景とはいえ、鬼気迫る作曲家・指揮者とオーケストラ楽団との臨場感を、自ら語ったレアな掲載コラムだった今号です。これからもクラシック音楽・指揮者・作曲家という切り口だけでなく、今回のような「今の久石譲」が垣間見れる瞬間があるかもしれません。
とても楽しみです。