Blog. 「クラシック プレミアム 7 ~チャイコフスキー1~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/06/14

「クラシックプレミアム」第7巻は、チャイコフスキー1です。

3大バレエ音楽「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」がおさめられています。

毎号同様、作品ごと各楽章ごとの解説はさることながら、「演奏家の肖像 -音楽の交差点」という特集では、本マガジンCDに収録された作品を指揮したサイモン・ラトルのことから、ベルリン・フィルの首席指揮者選びの舞台裏が紐解かれています。カラヤン、アバド、ラトル、そして2018年以降の次期首席指揮者のことまで、ベルリン・フィルの歴史を垣間見ることができます。

 

【収録曲】
バレエ音楽 《白鳥の湖》 作品20より
第1幕より〈ワルツ〉
第2幕より〈情景〉〈4羽の白鳥の踊り〉
第3幕より〈ハンガリーの踊り〉〈スペインの踊り〉〈ナポリの踊り〉〈マズルカ〉
アンドレ・プレヴィン指揮
ロンドン交響楽団
録音/1976年

バレエ音楽 《眠れる森の美女》 作品66より
第1幕より〈ワルツ〉
第3幕より〈長靴をはいた猫と白い猫〉〈青い鳥のパ・ド・ドゥ〉
アンドレ・プレヴィン指揮
ロンドン交響楽団
録音/1974年

バレエ音楽 《くるみ割り人形》 作品71より
序曲
第1幕より〈行進曲〉〈クララとくるみ割り人形〉
第2幕より〈ディヴェルティスマン〉-チョコレート(スペインの踊り)/コーヒー(アラビアの踊り)/お茶(中国の踊り)/トレパーク(ロシアの踊り)/葦笛の踊り
〈花のワルツ〉〈こんぺい糖の精の踊り〉〈終幕のワルツとアポテオーズ〉
サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/2009年

 

 

また岡田暁生さんによる「西洋音楽史」連載では、なぜ交響曲が第4楽章からなるのか?第1楽章から第4楽章までを通して味わう意味とは?このあたりのことが”コース料理と単品料理” ”短編小説と長編小説”などの例えを絡めてわかりやすく解説されています。なるほど、交響曲とは起承転結のあるひとつのストーリーなのだな、と思います。

また交響曲の4つの楽章がどう配置されているのか。ソナタ形式、スケルツォ、などの専門用語の解説もあり、とてもわかりやすかったです。

ちょっと引用抜粋します。

「シェークスピアの『マクベス』の各幕を、あるいはトーマス・マンの『魔の山』の各章を、順番をばらばらにして読むとか、好きな章だけ読んで、他のところは眼を通さないなどということはありえない。じっくりと最初から丁寧に読んでいかないと、すぐに筋がこんがらがってくる。登場人物の誰が誰か分からなくなってくる。だから長編は寸劇や短編小説よりはるかに読むのに根気がいる。だがじっくり時間をかけてこそ初めて味わえる感動の深さというものが、そこにはある。だからこそ数々の偉大な作曲家たちは、交響曲をあらゆるジャンルの金字塔と考えた。」

なるほど、すごくわかりやすいですよね。

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第7回は、作曲家兼指揮者の有利な点

今回も読み応え満載でした。一部抜粋してご紹介します。久石譲著書でも語られている名言も登場します。

 

「「直感の神秘」、まさにそのとおりである。このことは拙著『感動をつくれますか?』、養老孟司氏との共著『耳で考える』でも繰り返し書いた。作曲家が楽曲を作り出す最後の判断は、論理性でも感性でもなく経験を含めたその本人の直感であると僕は考える。直感と書くと何だかやはり感覚的なものと捉えられるおそれがあるので、別の言葉に置き換えると「無意識下の判断」ということになる。」

「ブーレーズが指揮するストラヴィンスキーの《春の祭典》に出会ったのは高校生の終わりか大学生の頃だった。衝撃を受けた。全く新しい解釈だった。リズムの構造が手に取るように分かり、スコアの欠陥の部分(どの楽曲にもある)をそのまま聴こえるように突き放している。楽曲のダイナミズムはスコアが指し示したとおりで余計な解釈がない。結果、リアルなストラヴィンスキーの《春の祭典》がそこにあった。後年、作曲者自身が指揮する同曲を聴いたがこれは何故か違和感があった。あまり指揮の技術がうまくなかったといわれている問題もあったと思うが、作曲者自身が振る場合の欠点も実はある。このことはまたいつか書こうと思う。」

「ブーレーズが行った原始リズムを中心とした《春の祭典》の徹底分析は凄まじい。ほんのかすかな弦のトリルからこの楽曲の本質を感じ取り(インスピレーション)、さまざまなリズムと和音を解剖しながら全体の構造に迫るその迫力において、この楽曲はまさにブーレーズの作品にもなっている。つまりこれが、作曲家兼指揮者の規範なのだ。この原稿に何度も彼が登場するのはそのせいである。」

 

だいぶん具体的な、専門的な話になってきましたが、難しいので何回も読み返しながらゆっくり咀嚼していました。そしてこのレビュー(過去号含む)をご覧の方はお気づきかもしれませんが、久石譲連載コラムは、毎号の特集作曲家/収録作品CDとはリンクしていません。

独自の展開をしています。ですから、今号でいえば、「チャイコフスキー」が主役なわけですが、久石譲のそれには、チャイコフスキーも、バレエ音楽もキーワードとして出てきません。それはそれで楽しいのですが、同時に、コラムで初めて目にする耳にする作曲家や作品も出てくるので、いろんあ意味で追いかけるのが大変!といううれしい悲鳴です。

今回はチャイコフスキーを聴きながらこのレビューを書いていますが、同時に「ブーレーズ」のCDを調べたりしながら。そしてまた”聴く予定リスト”も増えていくわけです。

クラシック三昧です。

 

クラシックプレミアム 7 チャイコフスキー1

 

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