Blog. 「クラシック プレミアム 14 ~バッハ2~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/08/24

「クラシックプレミアム」第14巻は、バッハ2です。

第8巻のバッハ1では、《トッカータとフーガ》 《G線上のアリア》 《無伴奏チェロ組曲》などが収録されています。今号は、音楽による小宇宙を現出させたバッハの精緻な管弦楽作品となっています。古楽演奏の先駆者アーノンクールと後継者たるコープマンで聴くバッハ。

「古楽」とは、作品の再現にあたっては、作曲者が聴いていたように演奏するのがベストであるという考え方に基づく演奏です。音楽作品を演奏するに際して、作曲者自身が念頭におき、また実際に演奏していた楽器で、しかもその時代の演奏技法と演奏習慣に基いて演奏するという考え方です。

時代ごとに、音楽の在り方も、演奏楽器も、ピッチ(音の高さ)も、オーケストラの規模も、演奏法も異なっていたわけで、それをその作品時代の姿に忠実に再現しようとするのが「古楽音楽」です。

 

【収録曲】
管弦楽組曲
第2番 ロ短調 BWV.1067
第3番 ニ長調 BWV.1068

ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェルトゥス・ムジクス
録音/1966年

ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV.1050
トン・コープマン(チェンバロ、指揮)
アムステルダム・バロック管弦楽団
録音/1983年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第14回は、
「演奏における自由度 -ジャズとクラシックの違い」

音楽の伝達方法としての譜面。前号はその究極の簡略された表記方法であるジャズのコードネームについてエッセイが進んでいました。

今回はそのコードネームの話から派生していき、ジャズとクラシックの違い、それぞれの約束事や自由度について。少し音楽をかじったことのある人ならわかる内容ですが、ちょっと長くて言葉だけでは難しいかもしれませんが、とても端的でわかりやすく書かれていましたので、一部抜粋してご紹介します。

 

「ジャズにおける簡略化された表記方法によって演奏者にはかなりの自由度が与えられる。例えばCというコードを弾く場合、構成音はド・ミ・ソなのだがどのような配置にするか音域にするかは奏者に委ねられる。もちろんド・ミ・ソを素直に弾くのはアマチュアでしかなく、プロのミュージシャンはそこに色々な音を加えていく。そのテンションコード(緊張感のある高い非和声を含む和音)や和音進行に伴うパッシングコード(経過的和音)のスリリングなやり取りがジャズの醍醐味である。」

「演奏者への自由度ということは実はクラシックでも重要だ。基本的には作曲者が書いた音符を演奏するのだが、そのまま音にしたのでは即物的でおもしろくない。その曲をどう聴衆に伝えるかということで解釈が生まれる。その解釈できる自由度がクラシックの醍醐味でもある。1時間を超すシンフォニーでも演奏頻度が多い場合は演奏者に余裕が生まれ解釈の範疇は広がる。日本における《第9》がそれに当たる。もちろん指揮者の意向も相当大きいが、直接音を出しているのは演奏者だからこの自由度は音楽を豊かにする。」

「またジャズとクラシックの大きな違い、あるいは特徴はその編成にも表れる。例えば四重奏(カルテット)で考えると、ジャズではリズム隊と呼ばれるドラム、ベース、ピアノにメロディー楽器としてサックス、あるいはトランペットなどが入る。この場合、どの奏者がどんなに好き勝手に激しく演奏しても各楽器の音色は聞き分けることができる。」

「他方、クラシックでの四重奏というと弦楽四重奏が最もスタンダードな編成である。~中略~ 大きな特徴は音色の均一化だ。2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという組み合わせは楽器の大小の違いはあるにせよ、同じ弦楽器で同質の響きを得られる。つまり音が混じるのである。そのため繊細なメロディーや微細なハーモニーの演奏でもお互い目まぐるしく入れ替わっても違和感はない。この自由度は大きい。」

「この混じらないが故の演奏の自由度と混じるが故の限定された表現の自由度が音楽を伝える上でのジャズとクラシックの差である。どちらがいいか良くないかという話ではない。それぞれ独自の表現があり、それ故の譜面上の自由度も違うのである。」

 

バッハの、規則正しい管弦楽組曲を聴きながらもあいまって、さながら音楽の授業のようです。

 

クラシックプレミアム 14 バッハ2

 

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