Blog. NIKKEI STYLE「1日2食、鉄人の流儀 久石譲さん」インタビュー内容

Posted on 2017/04/01

3月31日付、NIKKEI STYLE「あの人が語る 思い出の味」にて、久石譲のインタビューが掲載されました。普段あまり語られることのない音楽以外のお話、私生活の一面をのぞかせる興味深い内容です。

 

 

あの人が語る 思い出の味
1日2食、鉄人の流儀 久石譲さん
食の履歴書

妥協は絶対に許さない。他人にも厳しいが、自分にはもっと厳しい。常に全力投球。そんなストイックで孤独な音楽活動を支えてきたのが普段、意識していなかった妻の家庭料理。「1日2食」と決めてから43年。「小さな病気一つしない」と健康の原動力になっている。

 

■深夜まで仕事場にこもる夜型人間

音楽の鉄人の朝は遅い。

「深夜まで仕事場にこもってひたすら作曲に取り組む夜型人間」だから、家族と一緒に朝食を取ることはほとんどない。妻が作り置いてくれた朝・昼兼用の手料理を電子レンジで温め直し、自宅のキッチンで独りで黙々と食べる。

食卓にのぼるのは繊維質や海産物が多いメニュー。ワカメやホウレンソウがたっぷり入った味噌汁に七分づき米のご飯、そして焼いたシャケやサバの味噌煮が添えられる。

ゴボウやニンジン、シイタケなどを酢飯に混ぜたちらしずしも大好物。「余計な塩分や油分をなるべく減らした健康食材ばかり。特にこだわりはないので食卓に出されるまま何も考えることなく料理を食べてきた」と振り返る。

1歳下の妻とは国立音大で出会った。生まれ育った環境の違いから価値観が衝突することも多かったが、売れない時代を支えてくれた恩人だ。卒業と同時に結婚。それ以来、「1日2食」というリズムはまったく変えていない。

 

■「食事のことを考えている余裕はない」

「音楽というのはそんなに生易しいものじゃない。正直、食事のことなんて考えている余裕はほとんどないよ」

「しっかり食べれば1日2回で十分。3回も食べていたら過食になってしまう」

84年の「風の谷のナウシカ」から「となりのトトロ」「魔女の宅急便」などアニメ映画の音楽をずっと任せてくれた宮崎駿監督とも一度も食事をしたことがないそうだ。

自分を究極まで追い込み、絞り出したメロディーを鍛え、全身全霊で1つの作品に磨き上げる。そんな求道者のような音楽活動が続けられるのは「毎日、健康食を食べてきたおかげ」と実感している。

長野県北部で生まれ育った。少年時代を過ごした中野市はリンゴやエノキダケなどの有名な産地。「シャボン玉」「あの町この町」を作曲した中山晋平や「故郷」「朧月夜」を作詞した高野辰之らの出身地としても知られている。

実は筆者も少年期を中野市で送った信州人である。だが故郷の話に触れると即座に不愉快そうな表情を浮かべ、こちらをジロリとにらんだ。

「僕の音楽を信州と結びつけたがる記者が多くてね」

母の料理もやたらに味が濃くて好きではなかったという。野沢菜やたくあん、煮詰めた濃い味噌汁、焼き魚とご飯……。子供心にあまりおいしいとは思えなかったらしい。

 

■小学校時代に見た膨大な映画、音楽活動の原点

だがこの時期に映画やジャズ、バイオリンなど音楽と出合う。高校教師の父に連れられて映画館によく出かけた。

「小学校時代はまさに映画の黄金期。公開される映画はほとんど見ていた。東映のチャンバラ劇も日活のアクション映画も大好きだった」

このころ見た膨大な映画の蓄積が今の音楽活動の原点になっている。4歳から習い始めたバイオリンで楽器に目覚め、ピアノ、吹奏楽、ギターを学び、高校時代には月2回、作曲家を目指して東京の先生のもとへ和声学や対位法などのレッスンに通い続けた。

体力的にはかなりきつかったが、信越線の横川駅で買った駅弁の釜めしの味が何とも懐かしい。列車の旅の中間点でちょうど腹がすく時刻。ウズラの卵、鶏肉、シイタケ、タケノコ、紅ショウガ……。益子焼の容器にしょうゆで味付けした炊き込みご飯に舌鼓を打った。「青春の味。懐かしいから今でも時々、食べている」と顔をほころばす。

2016年に長野市芸術館の芸術監督を引き受けたのは「自分の音楽経験をそろそろ故郷に還元してもいいかな」と感じたから。国内外で活躍している演奏者約40人を集めて「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」を立ち上げた。目下、7月15.17日予定の演奏会の準備に余念がない。

2月の演奏会では本番直前に転倒して左手を骨折するアクシデントに見舞われた。「結構痛かった」が、2時間も指揮棒を振り続け「気がついたら左手がパンパンに腫れ上がっていた」と豪快に笑う。

頑固でコワモテ。理屈屋で負けず嫌いのへそ曲がり。だが決して冷たくはない。この記事を読んだら本人は怒るかもしれないが、音楽の鉄人にはやはり典型的な信州人の血が流れている気がする。

 

■焼き鳥で仲間と乾杯

30年近く通っているのが東京・西麻布の交差点に近い焼鳥屋「鳥とも」(電話03・3409・9808)。22席のこぢんまりとした店だが「気取らない雰囲気が気に入っている」。

ねぎま・ぼんちり・つくね・ぎんなん・手羽先・かわ・砂肝の7本の「焼き鳥コース」(1750円税抜き)、錦サラダ(1050円)、煮込み(700円)が必ず頼む定番メニュー。

キュルキュルした食感のかわや焦げ目が香ばしいぼんちりなどが美味。紀州備長炭を使い「1981年の開店以来、メニューはほぼ変えていない」と店長。

カウンターの一番奥が久石さんの指定席で仕事仲間や友人らと愉快に酒杯を傾け、最後は鳥スープめん(500円)で締める。店内にはビルの所有者だった写真家、故・秋山庄太郎さん直筆の看板も飾られている。

 

久石さんお気に入りの錦サラダ、焼き鳥(東京都港区の鳥とも)

 

■最後の晩餐

もちろん洋食も嫌いじゃないけど、日本人だからやはり最後は和食がいいかな。頭に浮かぶのは、いつも食べ慣れている女房の手料理。豆腐と薄味の味噌汁に温かい白米か炊き込みご飯、そこにお新香や焼き魚、煮魚が付いているような普通の朝食が落ち着きます。

(編集委員 小林明)

(NIKKEI STYLE より)

 

Blog. 「久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団」コンサート・レポート

Posted on 2017/03/25

3月20日開催「久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団」コンサート・レポートです。久石譲が初めて訪れる地、本公演前にはロビーコンサートが開催されるなど、開演前から並々ならぬ熱気と期待感に包まれたコンサート会場でした。

 

まずは演奏プログラムのセットリスト・アンコールから。

 

久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団

[公演期間]  
2017/03/20

[公演回数]
1公演
宮崎・都城市総合文化ホール 大ホール きりしま

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:九州交響楽団

[曲目]
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
チェロ/長谷川彰子(九州交響楽団 首席奏者)

—-intermission—-

久石譲:TRI-AD ~for Large Orchestra~
久石譲:Symphonic Poem NAUSICAÄ (交響詩「風の谷のナウシカ」2015)

—-encore—-
久石譲:Kiki’s Delivery Service for Orchestra

 

 

さて、個人的な感想やレビューはあとまわし、当日会場で配られたコンサート・パンフレットから、本公演を紐解いていきます。

 

 

都城の皆さん、こんにちは。
都城は初めて訪れますが、ここで演奏することを心より楽しみにしています。本日は自作曲を2曲と、ドヴォルザークを演奏します。まず私から、自作曲の解説をさせていただきます。

 

久石譲 TRI-AD ~for Large Orchestra~
作曲にあたって、最初に決めていたことは3つです。まず祝典序曲のような明るく元気な曲であること、2つめはトランペットなどの金管楽器でファンファーレ的な要素を盛り込むこと。これは祝祭感を出す意味では1つめと共通することでもあります。3つめは6~7分くらいの尺におさめたいと考えました。

そして作曲に取りかかったのですがやはり旨くいきません。コンセプトが曖昧だったからです。明るく元気と言ったって漠然としているし、金管をフィーチャーするとしてもどういうことをするのかが問題です。ましてや曲の長さは素材の性格によって変わります。

そんなときに思いついたのが3和音を使うことでした。つまりドミソに象徴されるようなシンプルな和音です。それを複合的に使用すると結果的に不協和音になったりするのですが、どこか明るい響きは失われない。ファンファーレ的な扱いも3和音なら問題ない。書き出すと思ったより順調に曲が形になっていきました。そこで総てのコンセプトを3和音に置きました。それを統一する要素の核にし、約2週間で3管編成にオーケストレーションしました。

「TRI-AD」とは3和音の意味です。曲は11分くらいの規模になりましたが、明るく元気です。この曲は2016年5月8日に長野市芸術館のグランドオープニング・コンサートで世界初演されましたが、その後関西フィルハーモニー管弦楽団などで演奏されています。今回、九州交響楽団のみなさんと演奏する事をとても楽しみにしています。

 

久石譲 Symphonic Poem NAUSICAÄ (交響詩「風の谷のナウシカ」2015)
1984年に公開された『風の谷のナウシカ』は宮崎さんのために最初に書いた音楽です。ですから人一倍思い入れがあります。1997年アルバム「WORKS・I」として初めて交響組曲にまとめ、ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団でレコーディングしました。2015年に宮崎作品を全曲組曲化するプロジェクトをW.D.O.(ワールド・ドリーム・オーケストラ)と開始してこれがその第2弾となりました。以下は今回の音楽ディレクターK氏の書いたコメントですがおもしろいので以下に掲載します。

「2015年夏に久石が音楽監督をつとめるワールド・ドリーム・オーケストラのため、自身の手で交響詩として生まれ変わらせた。地雷のごとく叩かれる冒頭のティンパニ。ピッコロの悲痛な叫びは大地を焦がす大爆発を導く。その後におとずれる後悔と悲しみは弦楽器に引き継がれ大地の嘆きを奏でる。トランペットのファンファーレに続き、バロック風モチーフが木管楽器と低音楽器群で奏でられる。まさにナウシカへのレクイエムである。最後はナウシカの再生を喜び合う人々が「生きている」ことを実感する壮大な音楽で結ばれる」

なるほど、人それぞれの感じ方があります。聞いていただいた人の中で新たなストーリーができたら幸いです。

久石譲

 

ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
チェロ協奏曲としてはもっとも多く演奏され、もっとも愛されている曲である。作曲技術においても内容面においても非常にすぐれており、ブラームスをして「こんなチェロ協奏曲が人間の手で書けるということを、私はどうして気がつかなかったのだろう」と嘆息せしめた。

ニューヨーク・ナショナル音楽院校長としてのアメリカ滞在中(1982-95)の作品である。アメリカの黒人音楽やネイティヴ・アメリカンの音楽から想を得た親しみやすい旋律が多く、それらは主題としてだけでなく、主題間のつなぎのためのパッセージなどにおいても現れる。このことは同じアメリカ時代の作品《交響曲第9番「新世界より」》においても同じである。

第1楽章はロ短調、アレグロ、協奏的ソナタ形式(提示部が管弦楽のみとそれに独奏が加わった2つの部分から成る)。冒頭、クラリネットで演奏される第1主題は、多様な変奏に耐え得る明確な特徴を持つきわめて魅力的なものである。第2楽章はト長調、アダージョ、三部形式。冒頭の木管合奏による主旋律が美しい。その対比で中間部での管弦楽総奏による短調の主題が情熱的に迫ってくる。第3楽章はロ短調、アレグロ・モデラート。独奏チェロによって提示される主要主題が何回か循環的に現れる点でロンド形式と見なすことができる。が、そうした形式把握よりもこの主題を含むいくつかの主題の多様で魅力的な音楽に耳を傾けたい。

[解説] 中村滋延(作曲家・九州大学名誉教授)

(「久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団」コンサート・パンフレット より)

 

 

さて、冒頭でもお話したように本公演前のロビーコンサートの様子からお伝えします。

本公演に入場できない小さなお子さん向けに企画された無料ロビーコンサートにしてオール・ジブリ・プログラム。もちろん誰でも聴くことができ、たくさんの方が早くから来場しにぎやかな空間となっていました。

 

特別企画 九響の弦楽アンサンブルによるロビーコンサート

14:00~14:30 1Fマルチギャラリー

久石譲 となりのトトロ (「となりのトトロ」より)
久石譲 風のとおり道 (「となりのトトロ」より)
久石譲 もののけ姫 (「もののけ姫」より)
木村弓 いつも何度でも (「千と千尋の神隠し」より)
久石譲 いのちの名前 (「千と千尋の神隠し」より)
久石譲 君をのせて (「天空の城ラピュタ」より)
木村弓、久石譲 世界の約束~人生のメリーゴーランド (「ハウルの動く城」より)

第1ヴァイオリン/扇谷泰朋、齋藤羽奈子
第2ヴァイオリン/佐藤仁美、荒川友美子
ヴィオラ/猿渡友美恵、田邉元和
チェロ/石原まり、重松恵子
コントラバス/井上貴裕

 

広い1Fロビー空間の奥にステージが準備されていました。

 

 

何がすごかったか。通常ロビーコンサートは本公演前のウェルカムコンサート、来場した観客をお出迎えといった感じの雰囲気なのですが、今回の特別企画はもうひとつのコンサートと言ってもいいくらい熱気と拍手に包まれた空間でした。

また、個人的にびっくりしたのは、その弦楽アンサンブルにコンサートマスターも参加されていたことです。通常ロビーコンサートは四重奏や五重奏などのアンサンブルが多いなか、9名で奏でる弦楽合奏なうえに第1ヴァイオリンにコンサートマスターというなんとも贅沢なもの。たくさんの人に音楽を楽しんでもらいたい、子供から大人まで本物の音を届けたい、そして本公演へのムードづくり。久石譲にとっても観客にとっても”お出迎え”となった、素晴らしい主催者企画ですね。

 

200人?300人?多くの説明を必要としない光景です。

 

 

 

ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
交響曲ばりの迫力ある作品です。紅いドレスに包まれたソリスト、小柄な可愛らしい印象とは対照的な重厚で流麗なチェロの響きでした。張りつめた緊張感と放たれたオーラで、一瞬にして観客を別世界へと誘ってくれました。

第1楽章後に観客からの拍手が起こるというハプニングもありましたが、それほどに拍手せざるを得ない空気があったのだと思います。地響きがするほどの臨場感で圧倒されてしまった。もちろん開演前のお決まりのアナウンス(楽章間の拍手はご遠慮ください)はありましたけれど、それを作法ととるのかルールとしてしまうのか。指揮者もオーケストラも楽章間の呼吸を整えるのに大変だったとは思いますが、何が起こるかわからない一期一会な演奏。お互いに空気を感じとりながらみんなで最高のコンサート空間をつくりあげていく、そんなことを感じた心あたたまる瞬間でした。

 

久石譲 TRI-AD ~for Large Orchestra~
よく響くホールに元気なオーケストラ。どの楽器セクションも浮き出るほどの大迫力な演奏。何度聴いても新しい発見のある作品です。オーケストラも変われば、座席も変わります。今回も目に耳に忙しく集中しながら、「あっ、ここでこの楽器たちはこんなことやってたんだ」と目に入ってこないと耳にも聴こえてこない音もたくさんあります。最後までワクワク感の止まらない万華鏡のようです。

 

久石譲 Symphonic Poem NAUSICAÄ (交響詩「風の谷のナウシカ」2015)
本公演では合唱なし編成、アルバム「The End of The World」でも聴くことができない貴重なヴァージョンです。たとえば「蘇る巨神兵」パート、管弦楽だけの迫りくるグリッサンドから醸される不協和音と鼓動も迫力満点でしたし、「遠い日々」のコーラスとはまた違った弦楽ピッチカートやグロッケンシュピールの響き。そこから金管楽器などに流れ発展していく様は、まるでバロック音楽のような一層の厳かささえ感じ、とても得した気分です。オーケストレーションは同じ、合唱なしでも成立してしまう音楽構成になっているというすごさです。久石譲と九州交響楽団による壮大なシンフォニー。大きな動きで演奏する管弦楽を見て、ナウシカを演奏することを心から楽しんでいる、そんな想いが十二分に伝わってきました。

 

—-encore—-
久石譲 Kiki’s Delivery Service for Orchestra
ナウシカの余韻で拍手喝采のなか、「もう1曲やる?」とジェスチャーで観客に合図を送り、笑顔で指揮台にあがる久石譲。コンサートプログラムとしてもアンコールとしても人気の「魔女の宅急便」です。弾むような躍るようなシンフォニー。今日というこの日の特別なお届けもの。会場全体がぱっと明るくなる響きに、指揮者もオーケストラも観客も笑顔のたえない至福の音楽でカーテンコールとなりました。

 

 

 

今年は海外公演も多く予定されている久石譲です。日本各地で久石譲音楽を久石譲コンサートを待ちわびている人がたくさんいる、改めてそんなことを感じた1日でした。学生服姿から普段着まで「うちの街に来るなら、そりゃー行くでしょ!せっかくなら聴きたい!よし行こうか!」と聞こえてきそうな日常生活の装い。音楽が身近にある風景、しかもそこで体感できるのは極上の音楽。これから今年一年、どんな土地でどんなプログラムを演奏してくれるのか、楽しみです。

 

コンサートに行かれた方!行けなかった方!次こそはと誓った方!どしどしコメントやメッセージお待ちしています♪ 響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

 

Blog. 「月刊ピアノ 2005年2月号」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2017/02/25

「月刊ピアノ 2005年2月号」に掲載された久石譲インタビュー内容です。

オリジナルアルバム『FREEDOM PIANO STORIES 4』を発表した時期になります。

 

 

 

こんな時代だから、作家はどうしても発言を”きちん”としたい。でも今回、なんかそれはちがうかなって予感はしていた。

2004年はまさに久石譲によって怒涛の1年となった。『ハウルの動く城』、無声映画『キートン将軍』、ポップス・オーケストラ”World Dream Orchestra”、『FREEDOM』ツアー、そしてソロアルバム制作。彼はこれからの活動や作品を通して、何を感じ、何を思い、そして何を我々に伝えようとしたのだろうか。日々進化を遂げる”久石ワールド”に深く迫った。

 

僕にとってこの『FREEDOM』は過渡期だったと思うんですよ

-新作『FREEDOM』のタイトルに込められた思いをうかがたいのですが。

久石:
「実は、サブタイトルに”心の自由を求めて”ってつけようかなって思ってたくらい、最近、なんとなく世の中に閉塞感があって生きづらくなってると思うんです。たとえば”なにかやろう”って思っても、結果がなんとなくわかっちゃうんですよね。そうすると”これやっても仕方がない””これもやっても先が見えてる”みたいな感じで自分のほうで壁を作っちゃってなにもやらなくなってきてる気がしてて。僕自身もそうだし、周りの人たちなんかを見ててもすごくそういうのを感じていて。だから、自分の中のそういうバリアをはずしてやったらもっと生きやすくなるんじゃないかなぁって。そんな思いからこういうコンセプトになったんです」

 

-前作の『ETUDE』は”夢はいつか叶う”というもっとシリアスなテーマでしたが。

久石:
「やっぱりね、『ETUDE』までいっちゃうと一般に聴いてくれる人たちとどんどん自分が離れていっちゃうんだよね。個人的にはあの延長が好きではあるんだけど、内面的に深くなりすぎるっていうことは作家の自己満足にも陥りやすいと思うから、一回きちんとコミュニケーション取れるラインまで戻す必要があったんだよね。だから、このアルバムのメロディアスで美しい感じとは裏腹に、制作現場は悲惨なくらい悩んだけどね。まあとにかく”肩の力抜いて!”っていう感じなんです。だから曲目も『伊右衛門』とか『進研ゼミ』とかすごくわかりやすいでしょ? 自分でもちょっと恥ずかしいなぁって思うくらい(笑)。今回は気楽に、朝とか昼間の光を浴びながら聴いてくれ!っていう感じかな」

 

-リリースも予定よりかなり遅れたそうですね。

久石:
「そう。予定ではツアーの前だから10月には出したかったんです。でも、いろんな仕事が重なってしまって。バスター・キートンの無声映画をやって、ワールド・ドリーム・オーケストラの夏のツアーがあって、アルバムも作って、『ハウルの動く城』でしょ? もう、はっきりいってくたびれ果ててしまって(笑)。それで、ふと我に返っちゃったんですね。こんなやり方でいいのかってね」

 

-結果的にはじっくり制作期間をもってよかったということですね?

久石:
「そうですね。僕にとってこの”FREEDOM”は過渡期だったと思うんですよ。いまの世の中みたいに価値観がボロボロに崩れだした時代は、作家ってどうしても発言をきちっとしたいんですよ。自分が感じる世の中だったりとか、僕もそうしたくなってたんですけど、でもなんかそれは違うなっていう予感だけがあって。それで悩んだんです。でも、結果的に宮崎さんの『ハウルの動く城』も、たとえば『もののけ姫』のときのような壮大な、”人間とは?”っていう問いかけはしていないですよね。決して重い作品ではないし。きっとこの時代に、シリアスな発言しても疲れきってる人間にそれ言ってなんになる? っていうことなんです。それだったら、隣の人とつながってるんだとか、一日一日の思いを大切にするんだとか、もっと身近なことを言うくらいがせいぜいかなって。だから僕にとっても、宮崎さんにとっても次のための準備期間でありオアシス的作品になったんじゃないかな」

 

-アーティストは、時代背景を意識するべきだとお考えですか。

久石:
「この時代に生きてるから影響は受けないはずないよね。ただ、その時代の断面を切り取って見せるだけだと、数年後に古びますよね。だからこの時代の状況をふまえて、そこからどう普遍的なモノを探すかっていうことなんですよ。なんかいまのちょっとカッコよかったね(笑)」

 

2004年はワルツの年だった。それが”ハウル”にも不思議とハマったんだね。

 

”芸術家”の生き方は、僕の性格に合ってなかったんだ(笑)

-映画『ハウルの動く城』では、公開に先立って制作されたイメージ・アルバムを10日間で書き上げられたと聞きました。

久石:
「はじめ、全然曲が書けなくて苦しんでたんですよ。でも、チェコ・フィルでやるのは決まってて日程は迫ってくるし。そこで、とりあえず八ヶ岳のスタジオにこもったんです。そうしたら、なんか急にパッと雲が晴れちゃって、100人編成のフルスコアが1日1曲、10日間で10曲書けちゃって。あれはちょっと異常でしたね。完全になにか降りてきたっていう感じ。なにがそうさせたのかは自分でもわからないんだ。ただ、あれを基準に考えないでってスタッフには言ってるよ(笑)」

 

-映画『ハウルの動く城』では、メインテーマ「人生のメリーゴーランド」の華麗なワルツが非常に印象的でした。

久石:
「あのね、僕にとって2004年はワルツの年だったんですよ。実は『ハウル~』だけじゃなくて、バスター・キートンもテーマがワルツだったし、ワールド・ドリーム・オーケストラでもショスタコーヴィチのワルツを演奏したし。すごくワルツに凝った1年だったなぁって。なんかね、ワルツのあのリズムっていうのが、前作の『ETUDE』なんかでちょっと行き過ぎちゃった自分をもう一回戻してくれたんだよね。それが『ハウル~』の映像にも不思議とハマったんだよね」

 

-そして、もうひとつ非常に驚いたのが、その「人生のメリーゴーランド」が、シーンごとにさまざまなバリエーションとなって流れてきたことです。

久石:
「あれは、実は宮崎さんの意図なんです。今回はソフィーというヒロインが90歳から18歳の間でどんどん表情が変わっていく。そこで一貫してこれはソフィーであるということを印象づけるために、そのときに必ず流れる音楽がほしいって要望があって。それは、宮崎さんの中でとっても重要だったんです。それで、実は劇中の全30曲中18曲がこのテーマのヴァリエーションなんです。これは作曲家にとっては、非常につらいんですよ。だって作曲の技術を駆使しなくちゃならないから(笑)。あるときは、ラブロマンス的なもの、あるときは勇壮で、あるときはユーモラスで。でも、大変ではあったけど仕上がりを観て、こういう意図を要求された宮崎さんはあらためてスゴイと思いましたね」

 

-宮崎さんとは、数多くの作品でご一緒されてますが、常に観客に新鮮さを与えてくれるのはなぜでしょうか?

久石:
「それはあくまで作曲家と映画監督という関係で、作ったものを中心に置いての対峙関係でずっとやってるから。たとえば、普段一緒にゴハンを食べたりも一切しないしね。でも、もう何十年も一緒にやってるからお互いの性格もよくわかるし、お互いに甘えとか妥協は絶対に許さないから。だから、一回そういう慣れ合ったやり方を提示したら次はないと思ってる。毎回まっさらになって取りかかるっていうことですよね。そして、2~3年後に宮崎さんの作品が来るころ、自分がどれだけ成長してるかなんだよね。だから大変ですよ(笑)。でも、宮崎さんは人間的にも素晴らしい人だから、一緒に仕事ができる喜びのようが強いんだよね」

 

-いまや、久石さんの音楽は世代を超えて幅広く愛されていますが、もともとは前衛的な現代音楽に傾倒されていたと聞きました。どんな心境の変化が?

久石:
「そう。もう観客なんてどうでもいいっていう音楽を死ぬほどやってましたから(笑)。20代は芸術家だったんですよ。聴衆とか関係なく、自分のやりたいこと、新しいことを求めてて。ただ、あるとき、理屈っぽい世界のありかたに疑問をもってしまって。でも、もちろん価値はあるんですよ。ただね、芸術家であろうという生き方と、大衆性をもった生き方があった場合、自分の性格が大衆性の方に合ってたんですよ。それが一番の理由かな」

 

-昨年も、本当に多忙を極めた1年となりましたが、今年はどんな活動を?

久石:
「ナイショ(笑)。いろいろやりたいことはあるけど、いつも先を決めちゃってこなさなきゃいけなくなるケースが多いから、今年は自分でまず何をやりたいかを見つめたい。だから、いまはいっさい宙ぶらりんって感じかな(笑)」

 

補)
掲載インタビューページ内、インタビュー撮影写真下のひと言コメントより。

久石:
「『ハウル~』のイメージアルバムは、自分で言うのもなんだけど後世に残らなきゃいけない作品だと思う。いつか絶対フルオーケストラでコンサートを実現させたいね」

久石:
「ワールド・ドリーム・オーケストラでは、世界中にある美しく素晴らしい曲を、どんどん皆さんに届けていきたいね」

(「月刊ピアノ 2005年2月号」より)

 

 

ちょうどこの頃の久石譲活動詳細は、書籍「35mm日記」にも綴られています。忙しい日々、『FREEDOM PIANO STORIES 4』の喧々諤々な制作現場、何が大変だったのか?!ぜひ本を手にとってみてください。

目次は下記作品ページでご紹介しています。

 

Book. 久石譲 「久石譲 35mm日記」

 

 

bonus photo

 

 

 

Blog. 「NCAC Magazine Opus.4」(長野市芸術館) 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2017/1/11

長野市芸術館 広報誌 「NCAC Magazine Opus.4」(2016年12月15日発行)にて、久石譲インタビューが掲載されています。巻頭2ページにわたって、「ナガノ・チェンバー・オーケストラ ベートーヴェン・シンフォニー・ツィクルス」について語られています。

定期演奏会のプログラムについて、ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)が追求するベートーヴェンとは、第1-2回公演を振り返って。そして2月に迫った第3回公演に向けて。読み応えあるだけでなく、メディアを通して語ることが少ないぶんだけ、久石譲のダイレクトなメッセージを受けとれる貴重なインタビューです。

 

 

作曲当時の編成で ロックのようなベートーヴェンを!
~ナガノ・チェンバー・オーケストラの比類ない魅力

文:柴田克彦(音楽ライター)

クラシックの最高峰を軸にしたかつてないプログラミング

長野市芸術館オープニング・シリーズの柱ともいうべき「ナガノ・チェンバー・オーケストラ ベートーヴェン・シンフォニー・ツィクルス」の第3回の公演が、2月に開催される。クラシック音楽の金字塔であるベートーヴェンの9曲の交響曲を、2年半・全7回で演奏するのがこのシリーズ。まずは、今なぜベートーヴェンなのか?を、ツィクルスの指揮者である当ホールの芸術監督・久石譲の口から語ってもらおう。

「ベートーヴェンはやはりクラシック音楽の最高峰。何をどう頑張っても最後はここに行き着くんです。別の音楽を何回か経験した後に挑む方法もありますが、最初にベートーヴェンの交響曲全曲演奏を経験し、あるときにまた挑戦すればいい — 僕はそう考えました。演奏者もベートーヴェンをやるとなれば気持ちが違いますし、新たにスタートしたナガノ・チェンバー・オーケストラでも、メンバーの結束の強さが変わってきます。これはとても重要なことだと思っています」。

大きな特徴は、毎回「現代作品」がカップリングされている点。そこには、”作曲家”久石譲の明確な意志が示されている。

「現代に作られた曲と古典的な音楽を組み合わせるのが、僕の基本的な考え方。これは長野でも変わりません。クラシック音楽は、ほっておくと古いものばかり演奏されてしまいます。しかしそれでは古典芸能になってしまう。そうしないための唯一の方法は、今日作られている作品を演奏して、未来に繋げていくことです。また自分が一生懸命取り組んでいる音楽を、皆に聴いて頂きたいとの思いもあります。多くの現代音楽は、一部のファンだけを集めた特殊なコンサートで演奏されていて、普通のクラシック好きには届いていませ ん。今我々が生活している世界の動きの中で作られている作品を、理屈抜きに感じる意味においても、通常のコンサートで必ず現代曲を演奏すべきだと考えています」。

清新なアプローチと 類のない豪華メンバー

2016年7月に行われた第1回(第2回も翌日に開催)の公演を聴いて、生気に充ちた演奏に感銘を受けた。プログラムは、前半がヴィヴァルディ(久石譲編曲)の「ラ・フォリア」 とグレツキの「あるポルカのための小レクイエム」、後半がベートーヴェンの交響曲第1番という、見たことのない組み合わせ。これ自体がすこぶる新鮮だ。「ラ・フォリア」のソリストを長野市出身のメンバー3名が務めるのも、第1回の開幕に相応しい配慮。前半は普段聴く機会のない、しかしそれでいて明快な音楽が、シリアスかつ優しく耳に届けられる。後半は、小綺麗に整った模範的な演奏ではなく、各奏者の表現意欲が束になって前進するような、ビート感やライヴ感のあるベートーヴェン。オーボエをはじめとする各楽器のソロも表情豊かで、メインに置かれることの少ない第1番が、エネルギーと躍動感に溢れた力作であることを再認識させられた。

このベートーヴェン演奏には、久石の音楽観が強く反映されている。

「我々の演奏は、日本の人たちが通常やっているベートーヴェンではないんですよ。アプローチは完全にロックです。さらに言うとベートーヴェンが初演したときの形態でもあります。現代のオーケストラは、ワーグナー以来の巨大化したスタイルであり、ドイツ音楽は重く深いものだと思われています。しかしベートーヴェンが初演した頃は、ナガノ・チェンバー・オーケストラくらいの編成なんです。巨大なオーケストラが戦艦やダンプカーだとすれば、ナガノ・チェンバー・オーケストラは、モーターボートやスポーツカー。小回りが効くし、ソリッドなわけです。我々は、ベートーヴェンが本来意図した編成を用いながら、現代の解釈で演奏します。なぜなら昔と違ってロックやポップスを聴いている今の奏者は、皆リズムがいいからです。そのリズムを前面に押し出した強い音楽をやれば、物凄くエキサイティングなベートーヴェンになる。我々のアプローチはそういうことです」。

奏者たちもそれに応えている。

「何十回もやって慣れてきたスタイルと全く違うので、メンバーも興奮していますよ。別に特別な細工をしたわけではありません。先に申し上げたように、編成はオリジナルに近づけて、リズムなどは現代的な解釈を採用しただけです。皆が色々な音楽を聴いている今は、その感覚で捉えなかったら、ベートーヴェンをやる意味はないと思うのです。ですから本当に、だまされたと思って一度聴きに来てください」。

ナガノ・チェンバー・オーケストラは、何しろメンバーが素晴らしい。第1、2回に続いて参加する主な顔ぶれをみても、コンサートマスターの近藤薫(東京フィル・コンサートマスター)をはじめ、ヴァイオリンの遠藤香奈子(都響首席)、水鳥路(東京フィル首席)、ヴィオラの中村洋乃理(N響次席)、加藤大輔(東京フィル副首席)、チェロの渡邉辰紀(東京フィル首席)、向井航(関西フィル特別契約首席)、コントラバスの弊隆太郎(シュトゥットガルト放送響)、オーボエの荒絵理子(東響首席)、ファゴットの福士マリ子(東響首席)、ホルンの福川伸陽(N響首席)、日比野美穂(ドレスデン国立歌劇場管)、トランペットの長谷川智之(N響)、ティンパニの岡田全弘(読響首席)等々、各楽器屈指の名手が目白押し。これに今回初登場となるフルートの荒川洋(新日本フィル首席)、ファゴットのチェ・ヨンジン(東京フィル首席)、ホルンの豊田美加(神奈川フィル首席)などを含めて、著名オーケストラの首席クラスの奏者がズラリと顔を揃え、海外一流楽団からも参加し、フリーの名手や長野県出身者も複数いる。しかも若い世代の実力者が中心を成しており、気力と意欲に充ちた奏者たちが、久石の清新なアプローチのもとで生き生きとした音楽を聴かせてくれる。実はこのオーケストラ、東京でも聴くことができない唯一無二の豪華精鋭アンサンブルなのだ。

本格化の幕開けを告げる傑作が登場

第3回のプログラムの「現代曲」にあたる部分は、久石譲の新作の世界初演。これもまた豪華メンバーゆえに実現した。

「本当は別の曲を予定していたんです。でもオーケストラが物凄く優秀で、次世代を担う人たちが結集している。夏の第1、2回のコンサートも、メンバーたちが喜んでくれて、僕も嬉しかった。なので作曲家たる自分がこのオーケストラのために作品を書かないのは間違いだろうと思い、今回新作を作ることにしました」。

まだ内容は未定だが、「おそらく弦楽を主体にした作品になるだろう」との由。ナガノ・チェンバー・オーケストラのサウンドと技量を想定した初の作品だけに、大きな注目が集まる。

ベートーヴェンの交響曲は、第4番と第3番「英雄」。第4番は、「二人の巨人(第3番『英雄』と第5番『運命』)に挟まれた美しいギリシャの乙女」というシューマンの形容で知られる佳品にして、第1楽章の加速しながら主部へ移る手法や第2楽章の幻想的なロマンなど、古典的造作の中に新たな方向性を見出した意欲作である。それに楽曲の性格上、ナガノ・チェンバー・オーケストラの編成や持ち味が生きるのは間違いない。ここは若干隠れた名作の真髄を体感する好機となるであろう。

第3番「英雄(エロイカ)」は、かつてない巨大な構成で、交響曲の歴史を変えた作品。第2楽章の「葬送行進曲」は広くおなじみだし、第1楽章の大胆な開始と無限の推進力、第3楽章のホルン3本の効果(強力メンバーを揃えた今回の演奏は期待大!)、第4楽章の変奏曲の採用など、画期的要素が満載されている。しかもこの曲は、2014年10月の長野市芸術館開館記念プレイベントで、久石が新日本フィルを指揮して披露した演目でもある。彼は「『エロイカ』は、“ 崇高さと下世話”が同居しているので、大変なんですよ。本当に立体的に届けようと思ったら、正月も休めないくらいです」と話すが、今回はそれを踏まえた久石のアプローチとナガノ・チェンバー・オーケストラの清新な熱演に期待がかかる。

久石は、こう語る。

「ナガノ・チェンバー・オーケストラを、”おらが街のオケ”と思ってもらえるよう、何とか努力したい。僕の理想は、駅前の飲み屋にチラシが置いてあって、『昨日行ってきたけど、これがいいんだよ』といった話が日常会話になること。自分の街がオーケストラを持っているのは自慢できることだし、『長野には善光寺プラスこういうのがある』といわれるためにも、『敷居は高くない。聴いたら絶対楽しい』ことをどんどん発信していきたいと思っています。それに ホールでの生の舞台には、格別な感動があります。とにかくこのオーケストラを、できる限り多くの人に聴いてもらいたいですね」。

ベートーヴェン中期“傑作の森”の幕開けを告げる名作を2曲聴ける今回は、ビギナーも音楽通も“おらが街のオーケストラ”に足を運 ぶ格好の機会だ。

(長野市芸術館広報誌「NCAC Magazine Opus.4」より)

 

 

◆長野市芸術館 広報誌 Vol.4(NCAC Magazine)12月15日発行
※広報誌は長野市芸術館の公式サイト内からどなたでもご覧いただけます。

長野市芸術館公式サイト>>>
https://www.nagano-arts.or.jp/ダウンロード/
こちらのページの「NCAC Magazine」の「ダウンロード」をクリック。
PDFファイルとして閲覧およびダウンロードできます。

 

 

Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016 in festival hall」 コンサート・レポート

Posted on 2017/01/07

毎年恒例の久石譲ジルベスターコンサート。2014年から3年連続、2016年も大晦日に開催されました。1年間の総決算であり、久石譲自身もこのジルベスターコンサートには特別な思い入れがあると思います。その年の書き下ろし作品やコンサート演目からの集大成、往年の名曲も盛りこまれ、さらには来年以降の方向性ものぞかせるような、とびきりスペシャルなコンサート、それが「久石譲ジルベスターコンサート」です。

 

まずは演奏プログラム・アンコールのセットリストから。

 

久石譲 ジルベスターコンサート 2016 in festival hall

[公演期間]
2016/12/31

[公演回数]
1公演
大阪・フェスティバルホール

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
ソプラノ:安井陽子

[曲目]
TRI-AD for Large Orchestra

Deep Ocean *世界初演
1.the deep ocean
2.mystic zone
3.radiation
4.evolution
5.accession
6.the deep ocean again
7.innumerable stars in the ocean

—-intermission—-

~Hope~
View of Silence
Two of Us
Asian Dream Song

Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE

—-encore—-
Dream More
My Neighbor TOTORO

 

 

例年にも増してスペシャルなプログラムですね。なかなかこれだけの過去(名曲)、現在(2016年発表)、未来(世界初演)が一堂に会することは、近年の久石譲コンサートでも稀です。1年間の締めくくりにふさわしい、出し惜しみなしの、サービス満点スペシャル・コンサート。

さて、個人的な感想やレビューはあとまわし、当日会場で配られたコンサート・パンフレットから、本公演を紐解いていきます。

 

 

一口コメント ~大阪ジルベスターコンサートに寄せる~

2016年の大晦日になりました。その大晦日に行われるコンサートをジルベスターコンサートといいます。これはドイツ語で大晦日(SILVESTER = 聖ジルベスターの日)から由来したとウィキペディアに載っています。どうりで英語の辞書を引いても出てこないわけです。

暮れは大阪で!もう僕の体内時計にはセットされています。
さあ1年を締めくくるコンサート、張り切っていきましょう、開演です。
が、そのまえに簡単な解説を。

一口コメント
前半はミニマル・ミュージック(僕のライフワークです)をベースにした祝典序曲と映像作品で、後半は最近あまり演奏していなかった曲を含めてメロディー中心の楽曲を選びました。

また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)に初挑戦します。そのためこのコーナーはすべて新しくオーケストレーションし直しました。

あれ、今までもピアノと指揮を同時に行っていたではないか?という声が聞こえますが、いや違うのですよ!今までは指揮をしている合間にピアノを弾いていたのです(笑)。その違いをぜひご覧ください。

二口コメント
その弾き振りの「HOPE」というコーナータイトルは長野パラリンピックのときに作った応援アルバムのタイトルからとりました。折しもフィギュアスケートの羽生結弦さんが今年の演目で採用している楽曲が2曲含まれます、お楽しみに。

三口コメント
「Deep Ocean」は今夏NHKでオンエアーされたドキュメンタリー番組のために書いた曲を今回のジルベスターのためにコンサート楽曲として加筆、再構成しました(リハーサルの10日前に完成、相変わらず遅い)。ですから世界初演です。7つの小品からできており、ミニマル特有の長尺でもないので聴きやすいと思いますし、ピアノ2台を使った新しい響きは僕自身ホールで聴いてみたかったのです。でも真冬になぜ深海?寒そうなどといってはいけない、あと半年で夏がきます。

かんたんなコメントのはずが長くなってきました。以下はCDまたは初演のときの解説などの抜粋を載せますが、そのまえに一口ではなく一言、関西フィルハーモニーの皆さん、ソプラノの安井陽子さん(今夏W.D.O.ツアーでも共演)と演奏するのがとても楽しみです。会場の皆さまにも楽しんでいただけたら幸いです。

久石譲

 

Program Note

「TRI-AD」 for Large Orchestra
タイトルの「TRI-AD(トライ・アド)」のとおり「三和音」をコンセプトに書かれた、シンプルで立体感あるミニマル作品。祝典序曲のような明るく華やかな曲調と、冒頭のファンファーレが、これからはじまる「何か」をそこはかとなく期待させてくれる。2016年5月8日、久石が芸術監督を務める長野市芸術館のグランドオープニング・コンサートにおいて世界初演された。

Deep Ocean *世界初演
2016年夏に放送されたNHKスペシャル『ディープ・オーシャン』のために書きおろした曲。2013年の「ダイオウイカ」に次ぐ新・深海シリーズ。

 

~HOPE~

View of Silence
1989年のアルバム「PRETENDER」に収録され、その美しいメロディーから、根強い人気を誇る名曲として知られている。
*ベスト盤「THE BEST COLLECTION」収録

Two of Us
1991年の大林宣彦監督作品『ふたり』より。思わず口ずさみたくなるような甘く切なく、どこか懐かしいメロディーは、聴く人の心に強い印象を与えてくれる。
*アルバム「My Lost City」(ピアノ&ストリングス版)、「WORKS・I」(オーケストラ版)収録

Asian Dream Song
1998年、長野パラリンピック冬季競技大会のテーマソングとして作曲された。「世界の中の日本」をイメージしてつくられ、アジアの風土を想起させる荘厳なメロディーと、日本の情緒的な音階の中に力強さが感じられる曲。
*「PIANO STORIES II」(ピアノ&ストリングス版)、「WORKS II」(オーケストラ版)収録

 

Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE
1997年公開、宮崎駿監督作『もののけ姫』より。アシタカが登場するシーンのメインテーマ「アシタカせっ記」からはじまり、タタリ神と死闘を繰り広げる「TA・TA・RI・GAMI」に加え、「旅立ち」「コダマ達」「シシ神の森」「もののけ姫」「レクイエム」、そしてラストは久石のピアノ・ソロが登場する「アシタカとサン」と、いずれも物語の印象的なシーンを彩るモティーフにより壮大な物語が紡がれる。

今回演奏される交響組曲は、宮崎監督作品の音楽を作品化するプロジェクトの第2弾として、「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2016(W.D.O.2016)」で初演された作品。主題歌でおなじみの「もののけ姫」と、「アシタカとサン」はソプラノ・安井陽子によって歌われる。

(一口コメント/楽曲解説 ~「久石譲ジルベスターコンサート2016」 コンサート・パンフレットより)

 

 

コンサート・パフレットを開演前の客席で読みふけりながら、オケの皆さんの直前音出しを耳にしながら(これはなんの曲のどこだろう?  ひとりクイズする感覚)、期待いっぱいに胸は高鳴っていきます。ここからは、感想・レビューを記していきます。

 

と、その前に、関西フィルハーモニーについて。「エンター・ザ・ミュージック」(毎週月曜日夜11時BSジャパン)に出演しています。クラシックから映画音楽、多彩なゲストや楽器とのコラボレーションと、趣向をこらした音楽番組です。つい先日は「ニューイヤースペシャル」特集、新年にふさわしい優雅なプログラムでした。「鍛冶屋のポルカ」では、鍛冶職人の鉄を打楽器として使い、見ていても楽しいユーモアな演出で、ぐっと音楽が身近になります。

次回(1月9日放送)は、「ピアノ協奏曲第3番/ラフマニノフ」特集です。ちょっとしたトークや楽曲解説もあるので、オーケストラや楽器のこと、クラシック音楽のことをわかりやすく学びたい、まさに私のような初心者でも楽しめる番組です。ぜひ興味のある人は、チェックしてみてください。

いつも観ているせいか勝手に親近感をもってしまい、そののびやかで勢いのある演奏、テレビで観るおなじみの皆さんに、客席から「毎週楽しいプログラムをありがとうございます!」と心のなかでお辞儀して強い拍手でお出迎え、いざ開演の時間です。

 

 

「TRI-AD」 for Large Orchestra
2016年に書きおろした作品のひとつです。「三和音」をコンセプトにしていますが、とても演奏難易度の高い曲だと思います。あらためて聴いてこの作品の末恐ろしさを感じました。ミニマル・ミュージックとしても大作ですし、祝典序曲のような華やかさと躍動感もすごいです。さらに今回、ひしひしと感じたのがうねりです。「音がまわる」立体音空間です。とりわけ、ラストの螺旋状に昇っていくような各セクションの音の織り重なりは圧巻です。ファンファーレ的な金管楽器に、弦楽器や木管楽器が高揚感をあおり、粒きれいに弾ける打楽器・パーカッション。オーケストラの音がステージから高くスパイラルアップして響き轟く立体的な音空間。これはぜひコンサートで生演奏を体感してほしい、臨場感を味わえる楽曲です。

オーケストラも対向配置なので各セクションが輪郭シャープに、メリハリある前後左右の音交錯を体感できます。近年久石譲コンサートはそのほとんどが対向配置をとっています。ただ、それに輪をかけて、秘めたる潜在パワーをもった作品のような気がします。長野公演から半年以上経って、今回新しく感じたこと。これは久石譲の楽曲構成とオーケストレーションの強烈なマジックなのかもしれない、と。独特なうねりです。

 

左が「対向配置」、右が「通常配置」です。主に弦楽器(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の楽器配置が異なります。コントラバスの位置や、管楽器・打楽器の配置は、「対向配置」においても「通常配置」においても、作品意図によってバリエーションはさまざまです。

超浅い知識で補足します。久石譲の緻密なオーケストレーションは、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが違う旋律やリズムを奏でることが多いです。なので、隣あわせの「通常配置」よりも、対称に位置する「対向配置」のほうが、それぞれのパートがくっきりシャープに、空間的にも立体的響きになる。かつ、管弦打楽器配置を活かした絶妙なパート構成やオーケストレーションの進化。そんな感じじゃないかなあ、わかりませんよ、でも弓の動きを見てると違います(超素人 笑)。

なんて、えらそうなことを書いていますが、ここ数年ではじめて知ったことです。せっかくの久石譲コンサート、最大限に満喫したいですよね!もっともっと教えてもらいたいこともたくさん、もっともっと学んで分かち合いたいこともたくさん、そんな心境です。余談でした。

 

Deep Ocean *世界初演
本公演のサプライズ的演目でした。まさかこの作品が聴けるとは、しかも小編成オーケストラとピアノ2台という大掛かりなステージ配置変更をしての演奏です。「ミュージック・フューチャー vol.3」でも別新作をピアノ2台と室内アンサンブル編成で聴かせてくれたばかりです。ここは小ホールとは違い大ホール。ステージ前面ギリギリのところでセッティング、指揮者も奏者も前面中央に密集、少しでも微細な響きが客席奥や2、3階席まで届くようにと配慮されてのことかもしれません。

ミニマル・ミュージックの心地よいグルーヴ感と、神秘的な世界観。多彩な打楽器や管楽器の特殊奏法などで、目をとじて耳をすませたくなる深海の世界が広がっていました。かなり忘れたくない余韻で気になったので、録画していたTV番組を見返してみました。「ダイオウイカ」シリーズからではなく、「ディープオーシャン」として新しく書きおろした音楽は、ほぼ演奏されたんじゃないかなあ、と記憶をふりしぼっています。2017年夏には第2回以降のTV放送も予定されています。サウンドトラック発売も待ち遠しい作品です、いやホントしてくれないと困る作品です(強く)。

 

~HOPE~
View of Silence
Two of Us
Asian Dream Song

約30名の弦楽オーケストラと久石譲ピアノの共演にて。往年の名曲たちが極上の響きとなって観客を陶酔させてしまったプレミアム・プログラムです。あまりにも素晴らすぎて、語ることがありません。

「View of Silence」や「Asian Dream Song」は、『a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos 2003 ETUDE&ENCORE TOUR-』での楽曲構成・ピアノパートをベースにしていると思いますが、9人のチェリストから約30人のストリングスへ、豊かな表現と奥ゆかしさで、たっぷりねかせた&たっぷり待ったぶん熟成の味わい。

「Two of Us」は、コンサートマスター(ヴァイオリン)&ソリスト(チェロ)&久石譲(ピアノ)を中心に、バックで弦楽が包みこむ贅沢なひととき。パンフレットにもCD紹介はされていましたが、どちらかというと楽曲構成・ピアノパートは、『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』収録バージョンに近いと思います。そこに弦楽(ストリングス)が大きく包みこむイメージです。

久石譲初挑戦の弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)。どの楽曲もピアノパートが多くほとんど弾きっぱなしです。ピアノ奏者として座ったままの状態で、オーケストラに目を配らせ、ときおり身振り手振りで指揮者の役割も果たす。なるほど納得です。

2016年は、フィギュアスケート羽生結弦選手が久石譲の楽曲を採用したことでも話題になりました。そんな羽生選手ファンもこのコンサートを楽しみに来られていたと思います。きっと大満足で久石譲の音楽に、羽生選手の残像に、胸いっぱいの余韻だったのではないでしょうか。

 

Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE
W.D.O.2016コンサートツアーで日本各地と台湾を湧かせたばかりの「交響組曲 もののけ姫」です。ソプラノ・安井陽子さんはW.D.O.2016【Bプログラム】のほうで共演していました。この作品はなんといっても弦楽器も管楽器も打楽器・パーカッションも、重厚です。関西フィルの演奏もパワフルでエネルギッシュ、この作品にふさわしい大迫力でした。

楽曲詳細やレビューは「W.D.O.2016」にて書いていますのでそちらをご参照ください。

 

—–アンコール—–

Dream More
W.D.O.2015、W.D.O.2016でも演奏されている「サントリー プレミアムモルツ マスターズ・ドリーム」CM曲です。すっかり定着してきた感のある優美なメロディーで、今年一年に乾杯!そして大晦日のこの日新年にむけて乾杯!そんな久石譲のサービス心を感じる艷やかで華麗なシンフォニー。
(アルバム「The End of the World」収録)

 

My Neighbor TOTORO
「もう1曲やるよ」とジャスチャーで合図して、舞台袖から再び指揮台にあがった久石譲。永遠のメロディー、トトロです。楽しそうに演奏するオーケストラも、自然にからだを揺らしてしまう観客も、みんなで音楽を楽しんでいると感じる瞬間です。中間部の久石譲によるピアノ演奏もあって、幸せと名残惜しさをかみしめながらのクライマックス。鳴り響く最後の一音とバズーカークラッカーによる紙テープで盛大にフィナーレ!
(アルバム「メロディフォニー Melodyphony」収録)

 

舞いあがったテープと総立ちスタンディング・オベーションはほぼ同時の出来事でした。久石譲も、オーケストラも、観客も満面の笑みで、至福の会場は包まれました。その決定的瞬間は久石譲オフィシャルFacebookで写真におさめられています。

公式サイト:久石譲オフィシャルFacebook | ジルベスターコンサート2016

 

久石譲も何回袖から出てきたでしょうか。そのたびに楽団をねぎらい、奏者たちから讃えられ、そして観客の拍手とブラボーの波は大きくなる一方。やむことのない拍手喝采に、久石譲は手で”静かに”と合図して、一瞬で会場は沈黙、そのとき久石譲の生声で「よいお年を」という一言、また割れんばかりの大喝采、最高潮のまま観客総立ちでコンサートは終わりをつげました。

 

会場客席に舞ったテープを記念にもらうお客さんも多かったですね。もちろん私も大切に持ち帰りました。

 

 

久石譲コンサートに足を運ぶことの多い近年、新しい作品を聴くことを楽しみに、それらが大変強く印象に刻まれます。が、不覚にも!?今回は往年の名曲たちが心からよかった。久石譲にしか出せないピアノの音ってあるんですよね。あれはテクニックや技術とはちがうところ、魔法です。そんな久石譲の魔法は「View of Silence」「Two of Us」「Asian Dream Song」、もののけ姫より「アシタカとサン」、そしてアンコール「となりのトトロ」の中盤で光輝き、すっかり酔いしれてしまいました。やっぱりいい、いいものはいい、としか言いようがないんです。

久石譲のピアノの音色でよみがえってくるもの、こみあげてくるものが、あまりにも大きすぎて、ちょっとやられちゃいましたね、ノックアウトです。これからも少しでもいいので、久石譲のピアノを聴かせてほしいと心から願うばかりです。あの手から紡ぎだされる音は唯一無二、みんなが待ちのぞむ音の魔法です。今回初挑戦の弾き振り(ピアノを弾きながら座って指揮もする)も、いつもの弾き振り(指揮台とピアノを往来する)も、どちらも大歓迎です!

「サイコー!ブラボー!」──これだけでコンサート・レポートとしたいところです(笑)が、そんな弾け飛びそうな気持ちを、少しずつほぐしてほぐして、書きおわりました。いつも読んでいただきありがとうございます。

 

コンサートに行かれた方!行けなかった方!次こそはと誓った方!どしどしコメントやメッセージお待ちしています♪ 響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントを残す” からどうぞ♪

 

Related Page:

 

 

Blog. 2016年「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」アクセス・ランキング

Posted on 2017/01/03

2016年「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」年間アクセス・ランキングです。

2016年も精力的活動を展開した久石譲、その大きな軸は多種多彩なコンサートでした。当サイトでもコンサートを追っかけ、最新情報を追っかけ、その合間に過去資料を整理しながら。1年間をバイオグラフィから振り返ってみましょう。

 

2016

  • コンサート:「久石譲&五嶋龍 シンフォニー・コンサート」(北京/上海)開催 C 1
  • コンサート:「題名のない音楽会」公開収録 C 1
  • コンサート:「長野市芸術館 グランド・オープニング・コンサート」開催  C 1 2 3 4 5 6 7 8
  • コンサート:「フィリップ・グラス来日公演 THE COMPLETE ETUDE」出演 1 2 3 4
  • コンサート:「善光寺・奉納コンサート」開催 C 1 2 3 4
  • コンサート:「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 第1回定期演奏会」開催 C 1 2 3 4 5
  • コンサート:「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 第2回定期演奏会」開催 C
  • コンサート:「W.D.O. 久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」ツアー開催 C 1 2 3 SP
  • コンサート:「久石譲プレゼンツ ミュジック・フューチャー Vol.3」開催 C D 1 2
  • コンサート:「久石譲 ジルベスターコンサート 2016 in festival hall」開催 C 1 2
  • CD:ソロアルバム「The End of the World」発売 D
  • CD:「家族はつらいよ オリジナル・サウンドトラック」発売 D
  • CD:ソロアルバム「MUSIC FUTURE 2015」発売 D 1 2
  • 映画:「家族はつらいよ」(監督:山田洋次) 1
  • 映画:「スイートハート・チョコレート」(監督:篠原哲雄) 1 2
  • CM:三井ホーム「TOP OF DESIGN」CM音楽 D 1 2
  • CM:エリエール「3日目の朝 篇」音楽「Life is」 D 1
  • GAME:「シノビナイトメア」テーマ音楽 D 1 2 3
  • TV:日本テレビ系「読響シンフォニックライブ」「コントラバス協奏曲」放送 D
  • TV:テレビ朝日系「題名のない音楽会」「LINKS」「Untitled Music」他 放送 C 1
  • TV:日本テレビ系「読響シンフォニックライブ」「TRI-AD」他 放送 1
  • TV:NHK「NHKスペシャル シリーズ ディープ・オーシャン」音楽 D 1
  • TV:NHK WORLD「Entertainment Nippon 2016 Joe Hisaishi」放送 1
  • ラジオ:ニッポン放送「父と娘と音楽と」出演(ナビゲーター:麻衣) 1
  • 書籍:「久石譲 音楽する日乗」出版 B
  • Topics:富士急ハイランド「富士飛行社」 音楽「Mt.Fuji」リニューアル 1
  • Topics:フィギュアスケート羽生結弦2016-2017 FS楽曲「Hope&Legacy」 1 2

Biography 2010- より)

 

 

さて、このなかからどんなトピックがランキングに。2016年以前の人気ページもたくさん入っています。今年2017年もさらなる久石譲活動に期待しながら、点と点をつなげるサイトとなるよう追いかけていきます。

 

2016年アクセス・ランキング -総合-

TOP 1

Info. 2016-2017 羽生結弦選手フリーFS楽曲 久石譲「Hope & Legacy」 について

ぶっちぎりの強さでした!2位以下に数倍の差をつけて。これをきっかけに新しい久石譲ファンが増えたら、それは素敵なことですね。この話題については、また別にお話する予定です。

 

TOP 2

Blog. 「かぐや姫の物語」 わらべ唄 / 天女の歌 / いのちの記憶 歌詞紹介

2014年、2015年と不動の1位だったのですが、それでも相変わらずの上位です。

 

TOP 3

https://hibikihajime.com/recentschedule/

久石譲の最新情報をリスト掲載しているページです。

 

TOP 4

Blog. 「ふたたび」「アシタカとサン」歌詞 久石譲 in 武道館 より

こちらも毎年上位のページです。2016年は「Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE」がW.D.O.2016にて世界初演されました。初のW.D.O.海外公演も台湾にて敢行されました。

 

TOP 5

https://hibikihajime.com/tag/concert/

このURLは、久石譲最新コンサート情報をまとめたインフォメーション・アドレスです。

 

TOP 6

Disc. 久石譲 『Dream More』*Unreleased

近年コンサートでも演奏機会が多く、CMもシーズンごとにオンエアされています。W.D.O.2015でのパフォーマンスが「The End of The World」CD作品に収録されています。

 

TOP 7

Info. 2016/12/31 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016 in festival hall」開催決定!!

こちらも上位常連の「ジルベスターコンサート」のニュースです。大晦日に一夜限りのスペシャルなコンサートです。年間コンサートのなかでも関心の高さと、恒例行事としての定着感があります。

 

TOP 8

Blog. 久石譲 初ジブリベスト 宮﨑駿×久石譲 30周年 CD発売決定!

「ジブリ・ベスト ストーリーズ」(2014)について2年前に書いたものです。うれしい反面、文章力に目を覆いたい気分です。でも、潔く書き直すことはしていません。

 

TOP 9

https://hibikihajime.com/score/

久石譲監修、オフィシャル・スコア、オリジナル・エディションの楽譜を紹介したページです。これから先もっとオフィシャル楽譜がふえていくといいですね。

 

TOP 10

Disc. 久石譲 『明日の翼』 *Unreleased

根強い人気と関心のある楽曲です。2011年に発表されてから今現在、未CD化であり、コンサートでも披露されたことのない幻の作品です。

 

TOP 11

Info. 2016/04/25 「題名のない音楽会」公開収録 観覧募集概要 久石譲出演

2週連続TV放送された久石譲出演回の、公開収録情報です。「LINKS」や「Untitled Music」などが新日本フィルハーモニー交響楽団との共演で披露されました。

 

TOP 12

Info. 2016/04/16 [CM] 三井ホームCM「TOP OF DESIGN」 久石譲音楽担当

2016年書き下ろしのCMテーマ曲。斬新かつ心地のよいミニマル・ミュージックです。美しいCM映像のロケ地も関心が高いようですね。

 

TOP 13

特集》 久石譲 「Oriental Wind」 CD/DVD/楽譜 特集

久石譲の代名詞のひとつです。1年のうちに数回は必ず聴きたくなるから不思議です。

 

TOP 14

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 コンサート・レポート

W.D.O.2015のコンサート・レポートです。なんで2016じゃないんだろう…?その答えのひとつは、W.D.O.2016がまだTV放送されていないからかなと、個人的には思ってます。

 

TOP 15

Disc. 久石譲 『Stand Alone』 坂の上の雲 メインテーマ 全ヴァージョン紹介

みなさんどこで演奏してるんですか?歌ってるんですか? 久石譲は近年コンサートでも演奏していない楽曲です。安定した人気なんですね。

 

TOP 16

特集》 久石譲 「ナウシカ」から「かぐや姫」まで ジブリ全11作品 インタビュー まとめ -2014年版-

ジブリ作品がTV放送されると、それに引っ張られるように上がってきます。そんなきっかけで、久石譲のジブリにかける想いや制作過程を知っていただけるなら、うれしい限りです。

 

TOP 17

Blog. 久石譲 箱根駅伝テーマ曲「Runner of the Spirit」 CD作品紹介

毎年秋頃からソワソワしだすページです。久石譲のオリジナルver.もいつかCDで聴いてみたいと夢みながら。

 

TOP 18

Disc. 久石譲 『Untitled Music』 *Unreleased

毎週日曜日にお茶の間に流れるテーマ曲。未CD化、日本ではまだコンサートでも披露されていないです。2017年こそは?!

 

TOP 19

Info. 2016/Jul. Aug. Oct. 久石譲2大コンサート「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2016」「ミュージック・フューチャーVol.3」開催決定!!

近年の久石譲コンサート活動の大きな軸となっている2大コンサート。過去最大規模のツアーで、日本全国暑い夏でした。芸術の秋にふさわしい上質な音空間も定着へ。

 

TOP 20

Info. 2016/05/08 『長野市芸術館 久石譲 グランド・オープニング・コンサート』 開催決定!

こけら落としコンサートから、夏のイベント「アートメントNAGANO」まで。さらに、2018年までつづくベートーヴェン全交響曲コンサート。芸術監督であり、ナガノ・チェンバー・オーケストラ(N.C.O)とともに、その活動ははじまったばかりです。

 

 

まんべんなく2016年の久石譲ニュースが盛り込まれ、久石譲ファンの関心の高いトピックがランクインしています。こう眺めると、CDになっていない作品や最新コンサートなど、旬の久石譲を知りたい人が多いことがわかり、うれしく思います。今年は当サイトも新しいコーナーをはじめます。久石譲音楽をもっともっと広く深く楽しんでいきましょう。

 

 

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Blog. 「ユリイカ 2004年12月号」 スタジオジブリ特集より 映画『ハウルの動く城』 音楽:久石譲 解読

Posted on 2016/12/6

雑誌「ユリイカ 2004年12月号」は、特集「宮崎駿とスタジオジブリ」が組まれています。ちょうど同年公開の映画『ハウルの動く城』についてがメインとなっています。そのなかから音楽を担当した久石譲に関する評論家の考察がとてもおもしろい内容です。

久石譲のオリジナル・アルバムやコンサート・パンフレットなどでの楽曲解説、近年ではそのほとんどでおなじみの前島秀国さんによる「ハウルの動く城」音楽紐解きです。こんな分析力や文章力がほしい!と思わず唸ってしまうほどの濃密な内容でした。

 

そのほかにも、いろいろな角度からハウルを読み解いたり、対談があったりと、映画『ハウルの動く城』が好きな人にはぜひ多角的に必読してほしい「ユリイカ 2004年12月号」となっています。(目次は最後に掲載しています)

前島秀国さんの項だけでも8ページにわたるぎっしりな内容、ハウルの音楽をイメージ交響組曲・サウンドトラック・Mナンバー・主題など音楽表にまとめたものもあったりと、かなり深く掘り下げて解説されてあります。これを読んだあとには、きっと映画をCDを再び手にとってみたくなるはずです。

 

 

「映画音楽の核心」への回帰
《人生のメリーゴーランド》の意味するもの 前島秀国

作曲家の久石譲が宮崎駿監督と初めてコンビを組んだ1984年の『風の谷のナウシカ』公開から、最新作『ハウルの動く城』の公開まで、ちょうど20年。この間、ふたりが手がけた作品は長篇8本と短編1本と本数こそ多くないものの、これだけの長期間に亘って監督と音楽家が共同作業を継続すること自体、すでに異例とも言うべき現象である。現役で作品を発表し続け、かつある程度の影響力を維持している例を他に探せば、スティーヴン・スピルバーグ監督とジョン・ウィリアムズ、ティム・バートン監督とダニー・エルフマン、デヴィッド・クローネンバーグ監督とハワード・ショア、ややマイナーなところでゴッドフリー・レジオ監督とフィリップ・グラスなどが並ぶ程度だろう。

これらコンビのフィルモグラフィーを見直してみると、コンビ第一作となる作品が監督か作曲家か、どちらかの劇場用長篇映画の第一作もしくは第二作にあたるという興味深い事実が明らかになってくる。つまり、監督か作曲家のどちらかが映画音楽制作の既成概念に捉われていない”処女作”こそが、長期の共同作業を維持するために不可欠な”コンビ固有の方法論”を懐胎するための必要条件となっているのだ。

このことを念頭に置きながら宮崎と久石のコンビを振り返ってみると、『ナウシカ』が宮崎の長篇第二作にして久石の長篇第一作だったという、誰もが知るところの事実が、いやが上にも重要な意味を帯びてくるだろう。宮崎の第一作『ルパン三世 カリオストロの城』での大野雄二の音楽は、あくまでもテレビ『ルパン三世』(第二シリーズ)の延長線上に位置するものであり、必ずしも映画音楽独特の表現や面白さを追及した作品とは言えない。一方の久石は国立音楽大学を卒業した1974年以降、スタジオ・ミュージシャンとして数多くのテレビ・アニメ音楽に関わるが、音楽監督として映像作品全体の音楽演出を采配する経験は全く積んでいなかった。つまり宮崎と久石双方にとって『ナウシカ』という作品は、好むと好まざるとにかかわらず、映画音楽の方法論の模索を余儀なくされた”処女作”だったのである。

 

よく知られているように、宮崎と久石のコラボレーションの始まりは1982年、久石のソロ・アルバム『インフォメーション』が徳間ジャパンより発売され、これを宮崎と『ナウシカ』のプロデューサーを務めた高畑勲、それに鈴木敏夫の三人が聴いたことがきっかけとなっている。当初、久石は『ナウシカ』公開を盛り上げるために制作されたイメージアルバムのみに携わる予定であり、スポンサーサイドの意向から本篇そのものの音楽は別の作曲家が担当することになっていた。しかし、イメージアルバムの出来上がりに強い感銘を受けた宮崎は、もはや久石以外の作曲家は本篇にあり得ないと判断、そのまま久石の続投を決めたというわけである。以後、『ハウルの動く城』に至るまでの宮崎の全長篇作品において、なんらかのイメージアルバムが本篇作曲前に録音・発売されるのが慣例となったが、これこそが宮崎=久石の共同作業の根幹をなす”コンビ固有の方法論”にほかならない。

アニメ文化を取り巻く市場原理を考えた場合、劇場用長篇や原作からインスパイアされた音楽作品を事前に録音・発売するのは、ごく自然な商業活動である。しかし映画音楽制作の現場の立場から見れば、”イメージアルバム”という秀逸なネーミングこそあれ、その実態は本篇の音楽に取って代わられることを運命づけられた”デモ音源”に過ぎない。常識的に考えれば、”デモ音源”はあくまでも未完成作品だから、これを本篇公開前に公表するのは作曲家にとって必ずしも好ましい事態とは言えないのである。久石がイメージアルバムの方法論をごく自然に受けいれることができたのは、映画音楽作曲家としてのキャリアをスタートさせた時点で、こうした常識に全く捉われていなかったためだろう。

ここで注目すべきは、久石が手がけた宮崎作品のイメージアルバムと本篇のサントラ盤を聴き比べてみた時、両者の間にそれほど大きな隔たりが存在していないという点である。もちろん、アレンジの仕方や楽器用法など細部において相違点はあるが、作品の中心(ハート)に位置するメインテーマの旋律的要素や楽曲構造において、両者が大きな食い違いを見せることは、ほとんどない。つまり、久石はイメージアルバムの段階で本篇の音楽の核心(ハート)となるべき主要部分の作曲を完了してしまっているのであり、これは久石が宮崎のメモ書きや絵コンテを参照しながら作曲を進めていく制作過程に起因するのではないかと思われる。誤解を恐れずに書けば、久石は宮崎作品の”映像”に音楽をつけているのではない。あくまでも宮崎の”世界観”に音楽をつけているのである。「僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく」という久石独特の映画音楽論は、このイメージアルバムの手法を前提にして培われたものと見るべきだ。

このような宮崎=久石独特の方法論は「イメージアルバム=デモ音源/本篇の音楽=作品の完成形」という従来の図式を切り崩すばかりか、本篇完成後も宮崎の世界観を音楽的に発展させる可能性を久石にもたらすことになるだろう。例えば『もののけ姫』公開の翌年に発表された交響組曲《もののけ姫》などは全八楽章、演奏時間は約50分の堂々たる大曲に仕上げられ、もはや”映画音楽のコンサート用アレンジ”の範疇を完全に逸脱してしまっているし、大掛かりな追加作曲が施された『天空の城ラピュタ』アメリカ公開版では、オリジナル版の音楽素材を用いながらも本篇に新たな意味づけを与える注目すべき試みがなされている。

もしもジョン・ウィリアムズが『スター・ウォーズ』を演奏会で指揮するたびに新たなアレンジを施したら、おそらく人々は奇異な印象を受けるに違いない。ある特定の映像と音楽の響きが、置換不能の強固なアマルガムを形成しているためである。これに比べれば、宮崎作品における久石の音楽は特定の映像との結びつきが(相対的に)より希薄だというべきだろう。だからこそ、監督の世界観を繰り返し音楽化する自由度も生まれてくる。久石がコンサートツアーのたびに自作に新たなアレンジを施すのは、宮崎との共同作業を通じ、”ワーク・イン・プログレスとしての映画音楽”という極めてユニークな考え方を徐々に形成していったためではないか。

 

以上が『ナウシカ』から『千と千尋の神隠し』までの音楽にほぼ共通して見られる原則論だが、『ハウルの動く城』においては、この原則論が大きく崩されることになった。本来ならば、本篇の中核(ハート)をなす音楽はすべてイメージアルバムに収められているはずなのに、『ハウル』のイメージアルバムに聴かれる楽曲はどれも本篇の中で副次的な役割を担うに留まり、メインテーマにふさわしい牽引力を獲得するに至っていない。より事態を正確に記すなら、イメージアルバム制作後、宮崎の意向でメインテーマが新たに作曲され、それによって『ハウル』全体の音楽設計が大きな変容を被ったのである。

Yomiuri On Lineに連載されている取材レポートによれば、宮崎と久石が本格的な音楽打ち合わせをおこなったのが03年8月。同年10月にイメージアルバム用の楽曲を完成させた久石は、これを三管編成の管弦楽スコアにまとめ、わざわざプラハまで出向いてチェコ・フィルとの録音を敢行した。この録音は翌04年1月『イメージ交響組曲』としてアルバム発売されるが、2月に持たれた音楽打ち合わせで宮崎から「(『ハウル』本篇のスコア全体を)ひとつのテーマ曲だけで(作曲してほしい)」との要請を受け、久石は新たに三曲のメインテーマ候補曲を作曲。久石自らが宮崎の前でピアノ演奏した結果、二番目に弾かれたワルツの楽曲を監督が選択し、このワルツを『ハウル』全体のメインテーマに据えて本篇の音楽設計が組み立てられていったとのことである。

多くの場合、作曲家が一度構想した音楽設計をボツにして新たに作曲を試みるのは大変な負担を強いられる作業であり、最悪の場合には(ハリウッドではしばしば見られるような)作曲家降板と代打登用という非常事態を招くことにも繋がりかねない。特に『ハウル』の場合は、イメージアルバム用の楽曲が管弦楽作品として非常に洗練された、完成度の高い音楽だったため、久石の苦労には並々ならぬものがあったと推察される。

だが冷静に考えてみれば、本来デモであるべきイメージアルバムを音楽的に”完成”させてしまうこと自体、久石がそれまで築き上げてきた”ワーク・イン・プログレス”的な宮崎作品の音楽の方法論を真っ向から否定する行為だったと見るべきではないか。あからさまに言ってしまえば、宮崎はこの『イメージ交響組曲』に不満を示し、より普遍的な表現を音楽に求めたのである。最終的に宮崎が選択したワルツのシンプルな旋律が、何よりもそのことを雄弁に物語っている。

このワルツのメインテーマは宮崎により《人生のメリーゴーランド》と命名されることになるが、この楽曲名が『ハウル』の物語構造と密接な関連を持っていることは後に詳述することとして、まずは《人生のメリーゴーランド》の最初の8小節をここに記しておこう。 *8小節記 省略

多少の歌心さえあれば誰でも口ずさめる素朴な主題であり、事実、この主題が本篇で最初に登場するのは指一本で弾けるピアノの単旋律の形であって、複雑な和声づけは一切施されていない。『イメージ交響組曲』に聴かれる豊穣なサウンドと、まったく正反対である。『ハウル』本篇の音楽で驚嘆すべきは、このあまりにもそっけないテーマ(以後、拙稿では《メリーゴーランド》主題と呼ぶ)に様々な変奏や展開を加え、愛のテーマだろうが大掃除の音楽だろうがアクション音楽だろうが、すべてこの《メリーゴーランド》主題から紡ぎ出してしまったところにある。別掲の表1に示したのは『ハウル』のロール1(最初の約17分間)に聴こえてくる音楽をMナンバー順(登場順)に列挙したものだが、これだけでも《メリーゴーランド》主題がいかに頻繁に登場するか、おわかりいただけるはずだ。 *表1 省略

これに対し、表2は《メリーゴーランド》主題以外に耳にすることができる特徴的な主題を一覧にしたものだが、いずれも使用場面や登場回数が限られており、特定のキャラクターや集団など、『ハウル』の世界観のごく一部をライトモティーフ的に指し示す用法に留まっている。本篇のなかで何十回となく繰り返される《メリーゴーランド》主題に比べれば、これらの主題が担っている役割は遥かに小さいと言わざるを得ない。 *表2 省略

となると、やはり興味の中心(ハート)は《メリーゴーランド》主題ただ一曲に向かうわけだが、この主題に込められた重層的な意義を明らかにするため、《メリーゴーランド》主題が初めて登場するM1の場面を細かく検証してみよう。M1において《メリーゴーランド》主題はピアノで2回繰り返されるが、この間、カメラはタイトルの題字から街の俯瞰図へとパンダウンし、帽子屋の一室にカットが切り替わって、主人公ソフィーを映し出す。ソフィーの背後から妹レティーとその友達の会話が聴こえてくるが、その会話では①ハウルの動く城が街に近づいていること、②ハウルが他人の心臓(ハート)を取ってしまう魔法使いであること(=すなわちハウルにとって心臓が重要であること)、③どうやらハウルが美人好みであること、といった話題が触れられている。《メリーゴーランド》主題が2回繰り返される、わずか2分間のあいだに伝えられる情報こそ、実は『ハウル』の物語の核心(ハート)をなす最も重要な要素にほかならない。音楽用語のアナロジーを用いれば、この2分間は物語的にも音楽的にも”主題提示部”の役割を果たしており、以後、『ハウル』本篇で展開される物語は、この主題を用いた”変奏曲”ということができるだろう。

このM1でもうひとつ注目すべき特徴は、観客がピアノ演奏によって《メリーゴーランド》主題を初めて耳にするという点である。このピアノという楽器の選択に関しては、久石自身がピアニストとしての演奏活動に非常に力を入れていること、さらに『ナウシカ』や『千と千尋の神隠し』などのメインテーマがピアノで演奏された前例などから、宮崎作品の音楽においてはごく当たり前のトレードマークだと、つい見過ごされがちである。

しかし『ハウル』本篇全体の音楽を俯瞰してみると、《メリーゴーランド》主題の演奏にピアノが使用されるのは、ある特定の場面に限定されていることが明らかになってくる。M1以後、二度目にピアノで《メリーゴーランド》主題が鳴らされるのは、表1のM4に示した《ときめき》だが、この場面ではハウルとの出会いの余韻に浸るソフィーが恋心を抱き始めたことが暗示されている。三番目にピアノが用いられるのは、ソフィーがハウルの城で眠りにふける場面だが、九十歳の老婆に変身させられていたはずのソフィーは、ハウルへの恋の気持ちの高まりから、十八歳の少女に姿が戻ってしまっている。

つまり《メリーゴーランド》主題のピアノ演奏は、ソフィーの恋愛感情と意識的に結び付けられており、ピアノという楽器が《メリーゴーランド》主題に”愛のテーマ”の性格を付与する機能を果たしているのだ。したがって、M1の冒頭から《メリーゴーランド》主題がピアノでわざわざ演奏されるのは、《メリーゴーランド》が究極的に”愛のワルツ”だと宣言しているようなものである。ある特定の主題論的要素を際立たせるため、こうした厳密な楽器用法を久石が試みた例は、これまでほとんどなかったのではないか。

 

男女がペアになって円環運動を繰り広げるワルツという舞踏の特性上、いま述べたような”愛”の要素に加え、”円環の運動性”もしくは”円環性”の主題が本篇のなかで深く掘り下げられた時、映画におけるワルツのリズムはより一層の輝きを増す。わかりやすい実例を挙げれば、『ドクトル・ジバゴ』でモーリス・ジャールが作曲した《ララのテーマ》のワルツがその典型であり、ここでのワルツはジバゴと愛人ララの関係を表徴する”愛のテーマ”の役割を果たしているばかりか、本篇全体がジバゴの異母兄の回想で始まり、終わるという物語上の円環構造とも厳密な対応関係を見せている。

宮崎作品のメインテーマがワルツの形式で書かれたのは今回の『ハウル』が初めてではなく、すでに『魔女の宅急便』のメインテーマにワルツが用いられた先例が存在する。しかし『魔女の宅急便』のワルツと『ハウル』のワルツのあいだには、本篇の中に”愛”の要素と”円環性”の双方が存在するかどうか、あるいは宮崎と久石のどちらかがこのふたつの要素を等しく意識していたかどうか、その決定的な違いが存在することをここで是非とも強調しておきたい。リコーダーやアコーディオンでほのぼのと演奏される『魔女の宅急便』のワルツは親しみやすい魅力を備えたテーマであり、ヒロインのキキとトンボ少年の淡い恋愛感情を反映していると言えなくもないが、こと”円環性”に関して言えば、視覚的なイメージからも、あるいは物語の構成要素からも、『魔女の宅急便』にワルツが用いられた必然性を見出すことは著しく困難である。『ハウル』において、宮崎がワルツの”円環性”にことのほか自覚的だったことは、わざわざ楽曲名に”メリーゴーランド”という単語を選んだ事実からも明らかだ。ここで宮崎は、単に舞踏形式としてのワルツの”円環の運動性”を”メリーゴーランド”という表現で言い換えたかっただけでなく、『ハウル』の物語の中心(ハート)をなす”円環性”の主題を”メリーゴーランド”というメタファーに込めているのである。それを筆者なりに解読すれば、呪いが解けたソフィーが元の十八歳の姿に”戻り”、失われていた心臓(ハート)をハウルが”取り戻す”という”回帰”もしくは”回復”の主題ということになるだろうか。

驚くべきことに、この”回復”の主題とワルツを関連付ける試みは、すでに『千と千尋』終盤の飛行シーンに最初の萌芽を見出すことができる。すなわち、竜の姿に変わっていたハクが元の少年の姿に”戻り”、自らの名前を”回復”すると《千尋のワルツ》と名づけられたテーマがオーケストラで壮麗に演奏されるのであるが、観客はこの場面で初めてワルツのテーマを耳にするため、いささか唐突に登場したという印象を拭いきれない。

これに対し、ソフィーがハウルにかけられた呪いを解く『ハウル』終盤のクライマックスでは、主題論的要素と音楽構造のあいだに、より有機的な関連付けが仕掛けられている。この場面全体を伴奏するのは当然のことながら《メリーゴーランド》主題だが、ハウルが心臓(ハート)を”取り戻す”瞬間、音楽はM1の冒頭部分、すなわち《メリーゴーランド》主題がピアノで鳴らされる前の短い序奏部に”回帰”してしまう。ただひとつの主題(=メインテーマ)が何度も反復し、最後にはメリーゴーランドよろしく”一回りして”音楽の始まりに”回帰”してしまう『ハウル』の音楽構造。これでは、久石がかつて音大生時代に心酔していたテリー・ライリーのミニマル・ミュージックの構造そのままではないか! これこそ、宮崎が「ひとつのテーマ曲」にこだわることで、久石の音楽の中に再び”回復”したかった心臓(ハート)なのではあるまいか。

ソフィーがハウルの心臓(ハート)を”回復”できた裏には、宮崎と久石というふたりの魔法使いが操る《人生のメリーゴーランド》のワルツの魔法が存在する。その魔法の秘密こそ、「映画音楽の核心(ハート)はメインテーマにあり」という大原則への”回帰”と、久石の音楽的原点たるミニマル・ミュージックの精神(ハート)への”回帰”にほかならない。そして、この魔法を可能にしたのは、ふたりが二十年の歳月のうちに育んできた”共同作業の愛”だったのである。

*表および註はすべて省略しています

(雑誌「ユリイカ 2004年12月号」より)

 

 

ユリイカ 2004年12月号 目次より

特集*宮崎駿とスタジオジブリ

ジブリの舵取りかく語りき
「動く城」の一言で、アニメは始まる 鈴木敏夫☓稲葉振一郎

エッセイ
宮崎アニメのコツ 藤森照信
無敵の少女戦争 やなぎみわ

『ハウルの動く城』解読
魔法使いは誰だ!? 小谷真理
スタンダードはお好き? 『魔法使いハウルと火の悪魔』の宮崎流アレンジ術 青井汎
文脈に抱かれ、自由を夢見ること 茂木健一郎
動く城の系譜学 心的ネットワークのトポスとして ドミニク・チェン
2004年アニメーション巡礼 『ハウル』と動かなかった城 大塚ギチ

ポストジブリの胎動
スタジオジブリとそれ以外!? 神山健治☓鶴巻和哉☓藤津亮太
「強度ある物語」を求めて 新海誠☓藤津亮太

宮崎アニメの構成要素
プロデューサーの正体 スタジオジブリ、宮崎駿と鈴木敏夫 氷川竜介
島本須美の系譜 ジブリ作品と声優 小川びい
「映画音楽の核心」への回帰 《人生のメリーゴーランド》の意味するもの 前島秀国
魂のジャンルのために 宮崎作品におけるアニメーションとアレゴリー 池田雄一

アニメーションの名匠による翻訳作法
プレヴェールというリアル 高畑勲訳および注解『ことばたち』をめぐって 高畑勲☓中条省平

社会体としてのスタジオジブリ
生きるということと、あたたかさの記憶。 宮崎駿のなかの「労働」と「仲間」 木村立哉
〈宮崎駿論〉解析攻略必勝ガイド 『千と千尋の神隠し』がソープランド映画だって!? 栗原裕一郎
ジブリ美術館の挑戦 幻想空間は何を誘発するか 高橋瑞木
ネズミとモンスター ポスト冷戦とソフトパワーの地政学 清水知子

年譜
スタジオジブリの歩み ハイコスト、ハイリスク、ハイリターンの二十年 藤津亮太

 

ユリイカ 2004年12月号 ハウルの動く城 ジブリ 久石譲

 

Blog. NHK WORLD 「Joe Hisaishi Special Program」 久石譲特番 放送内容

Posted on 2016/11/1

10月22日にNHK WORLDにて久石譲のスペシャル・プログラムが放送されました。

 

NHK WORLD
Entertainment Nippon 2016
Joe Hisaishi
Saturday, October 22 8:10/ 14:10/ 19:10
Sunday, October 23 2:10

In this episode we will be featuring Japan’s top composer, Joe Hisaishi.
In addition to creating music for movies, including many films from Studio Ghibli, Joe Hisaishi also composes symphonies and conducts orchestras, all the while continuing to push the limits of minimal music. His widespread appeal will no doubt resonate with music fans around the world.

(英文:NHK WORLD より)

 

NHKワールドとは、NHKの海外向けサービスで、日本とアジアの今を伝えるニュースや 番組を世界に発信しています。日本国内でも当日ライブストリーミングやスマホアプリとしても閲覧可能のようです。

海外向け全編英語および英語字幕、「Entertainment Nippon 2016」という番組枠で、日本から世界に向けたエンターテインメントを発信する番組です。その22日放送分が久石譲特集でした。約1時間のスペシャル番組、とても濃厚な内容でした。

約35年以上にも及ぶ久石譲の音楽活動をうまく組み立てた番組構成になっていました。もちろんジブリ作品、北野武作品から、オリジナル(コンテンポラリー)作品、最新コンサートまで、久石譲が凝縮された内容で、「久石譲とは?」と聞かれたら、『これを1時間見ればわかります!』と言えるほどの素晴らしいプログラム。

 

番組内容を要点のみご紹介します。

 

コンサート映像から

  • 「となりのトトロ」「メーヴェとコルベットの戦い」「遠い日々」「ふたたび」「タタリ神」「アシタカとサン」(2008 in 武道館より)
  • 「HANA-BI」「Asian X.T.C.」「Oriental Wind」(2006 コンサートツアーより)
  • 「Asian Dream Song」(2003 コンサートツアーより)
  • 「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~ 新版」「交響曲 第9番(ベートーヴェン)」(2015 第九スペシャルより)

などが、ほぼフルサイズや抜粋版など盛りだくさんに散りばめられていました。そのほかにも多くのコンサート映像・楽曲が使われていました。最新コンサートからも(これは後ほど)。

[ひとり言]
2006年のコンサート映像は、当時TV放送されましたが録画保存できていてもVHS?!DVD?!…DVD化もされていないなかで今回高画質・高音質で放送されたことはかなり貴重だったりします。「Orbis」と「第九」はTV放送もされていない蔵出し映像。「Orbis」は新版第1楽章(オリジナル「Orbis」を基とした)でした。記録用として各種コンサートは映像も音源も収録しているのだと思いますが、このコンサートも収録してたんだ!映像あるなら…これ以上は言わずもがな。

 

インタビュー

鈴木敏夫プロデューサー、秋元康さん、ガブリエル・プロコフィエフ(Gabriel Prokofiev)さんが登場していました。推測ですが、おそらく番組用の撮り下ろしではないかと。久石譲インタビューも随所にありました。(各インタビュー内容は、それだけで一記事になってしまいますので、いつか整理できたときに)

[ひとり言]
撮り下ろしインタビューなら、それはもちろんすごいのです。さらに、久石譲のインタビューがかなり直近だということに驚きと鮮度満点。インタビュー場所が「よみうり大手町ホール」の観客席だったからです。ということは、10月に撮影された可能性が高い、なんとも贅沢極まりない特番です。

 

その他紹介として、初期アルバム「MKWAJU」「INFORMATION」、長野パラリンピック総合演出(1997)、映画「Quartet カルテット」(2001 監督:久石譲)、、「MIDORI SONG」(2015 ミュージック・シェアリング委嘱)、フィギュアスケートの羽生結弦選手への楽曲提供(2016)など、多彩な紹介でした。

 

要約すると

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プロフィール

国立音楽大学在学中よりミニマル・ミュージックに興味を持ち、現代音楽の作曲家として出発。1981年「MKWAJU」を発表、翌1982年にファーストアルバム「INFORMATION」を発表し、ソロアーティストとして活動を開始。以後、「Minima_Rhythm」(2009)「Melodyphony」(2010)「Vermeer & Escher」(2012)「The End of the World」(2016)に至るまで数々のソロアルバムを生み出す。作曲だけでなく指揮・演奏・プロデュースも手掛け、ジャンルにとらわれない独自のスタイルを確立する。

1984年の映画『風の谷のナウシカ』以降、『風立ちぬ』(2013)まで宮崎駿監督の全作品の音楽を担当。このほか、北野武監督『HANA-BI』(1998)、滝田洋二郎監督『おくりびと』(2008)、李相日監督『悪人』(2010)、高畑勲監督『かぐや姫の物語』(2013)、山田洋次監督『小さいおうち』(2014) 『家族はつらいよ』(2016)など数々の映画音楽を手掛ける。

2001年には、初監督作となる『Quartet カルテット』を製作。音楽・共同脚本をも手掛けた本作品は、日本初の本格的な音楽映画として、モントリオール映画祭のワールドシネマ部門正式招待作品に選ばれた。

国内ではこれまでに数度にわたる日本アカデミー賞最優秀音楽賞をはじめ、数々の賞を受賞。海外においても、音楽監督を務めた韓国映画『トンマッコルヘようこそ』、中国映画『おばさんのポストモダン生活』などで、各国の最優秀音楽賞を受賞している。

演奏活動においては、ピアノソロや室内楽、オーケストラなどさまざまなスタイルのコンサートを精力的に開催。2004年には、第57回カンヌ国際映画祭オープニングセレモニーにおいて、バスター・キートンの無声映画『The General』のフィルムコンサートの音楽と指揮を担当。同年7月、新日本フィルハーモニー交響楽団と「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」(W.D.O.)を結成し、音楽監督に就任。2008年8月、「久石譲 in 武道館 -宮崎アニメと共に歩んだ25年間-」では管弦楽と混声合唱・児童合唱、吹奏楽、マーチングバンドを含む総勢1200名の大規模編成を指揮・ピアノ共演し大いなる成功に導いた。

また近年は、クラシックの指揮者としても国内外で活動の幅を広げるほか、《コントラバス協奏曲》や6弦エレクトリック・ヴァイオリンのための《室内交響曲》、《TRI-AD for Large Orchesta》、《THE EAST LAND SYMPHONY》などの作品づくりにも意欲的に取り組み、活躍の場は多岐にわたる。さらに2014年から、久石譲のプロデュースによるミニマル・ミュージックからポストクラシカルといった最先端の“現代(いま)の音楽”を紹介するコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」を始動させ、今年で3回目をむかえる。

2009年紫綬褒章受賞。国立音楽大学招聘教授。長野市芸術館・芸術監督。

-2016 ver.
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上記は、オフィシャル・プロフィール(2016年版)です。この活字を見事に映像化したようなスペシャル・プログラムと言ってしまえるほど、この表現が一番的確なような気がします。

 

[ひとり言]におさまらないこと
この番組のなにがすごいって、かなり鮮度が高い旬な編集ということです。「MUSIC FUTURE 2016」コンサートのリハーサル風景まで流れて、一番ホットな久石譲新作「2 Pieces for Strange Ensemble」がちょっとではありますが聴けてしまうという快挙。だから、久石譲インタビューもコンサート会場の「よみうり大手町ホール」で納得、収録もコンサート直前10月で納得、インタビュー内容もコンサート・パンフレット同旨で納得。さらには、前年Vol.2の「室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra」まで映像で見聴きできてしまったという。もちろんそれぞれ1分程度かもしれませんが、貴重すぎて開いた口がふさがらない。

「室内交響曲 for Electric Violin」は、つい先日「MUSIC FUTURE 2015」CD化されました。あのエレクトリック・ヴァイオリンという特殊楽器とその演奏姿を映像で見れるなんて、アメージングです。初回盤DVD付きにしてほしかったなー、なんて。

いや、真面目な話、久石譲が語るこういった”現代の音楽”コンサートこそ、映像で発信することも大いに意義があるような気がするのです。なんでもかんでもCD化・DVD化と言っているわけではなく、「こういった面白いことやってるよ!」と映像で魅せれることは、これぞまさに3本の矢、音楽(耳)で伝える、言葉で伝える、映像で伝える。

 

そして、一番肝心なことは、この特番を日本国内で放送してほしい!ということです。それが言いたくて今回つらつら書いたと言っても過言ではありません。

 

直近でいうと、フィギュアスケートで俄然注目を集めている久石譲(「Hope&Legacy」~View of Silence+Asian Dream Song~)です。この番組でも羽生結弦選手からの「Asian Dream Song」コンサート映像という流れで進んでいました。個人的にはこの紹介の仕方すら日本メディアでされていないのが残念です。

11月は3週連続ジブリTV放送ということで、またその波がきますね。その時々の断片で注目を集めるのも、マス媒体の波としては起伏があっていいのですが、やはりそこは断片。久石譲を多面的に知ってもらうには…こういった特集番組が放送されることでバランスよく「久石譲とは?」を知ってもらえるんじゃないかなと思います。

約35年の音楽活動、30年来20年来ファンもいれば、「Summer」や「Oriental Wind」を経ての10年来ファン、はたまた今回の羽生結弦さんがきっかけとなって、久石譲音楽に触れる新ファンもきっといるでしょう。多種多彩な音楽活動と作品群、収拾つかない領域です。

「久石譲ファン」とひと言に言っても、その長さや深さといった広がりには大きな差があります。それだけの積み重ねと培われてきた久石譲音楽の歴史があるからです。かくいう私も、久石譲のことは一番知っている!なんて思うはずもなく、”多くの久石譲ファンのうちの一人が、たまたまファンサイトをやっていて、多くの久石譲情報発信サイトのひとつに過ぎず”、まだまだ情報整理への道のりも程遠く。

 

「久石譲とは?」と聞かれたら、『これを1時間見ればわかります!』と言える本番組、このような久石譲紹介番組をもっとメディアで発信してほしいと切に願っています。『NHK WORLD Entertainment Nippon 2016 Joe Hisaishi』とても素晴らしい番組でした。海外に向けてもっともっとリピート放送してほしいです。そして、日本国内に向けてぜひ放送してほしい番組です。久石譲の過去から現在までをきれいにコンパイル、さすがNHK!そして期待していますNHK in Japan!

すっかり情報キャッチが遅くなってしまい、事前にインフォメーションできずにすいませんでした。

 

NHK WORLD

NHK WORLD Joe Hisaishi

(公式サイト:NHK WORLD | TV  Entertainment Nippon 2016 よりキャプチャ)

 

Blog. 「週刊 司馬遼太郎 8」(2011) 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2016/10/28

週刊朝日MOOK「週刊 司馬遼太郎 8」に掲載された久石譲インタビューです。NHK『坂の上の雲』の音楽担当にまつわるエピソードになります。

 

 

3部はコーラスを入れた「救済の音楽」

私が司馬さんの作品を徹底的に読んだのは1996年ごろだと思います。宮崎駿監督が映画「もののけ姫」の構想をしていたときに、司馬さんと小説家・堀田善衞さんの話を私たちに盛んにしていた。宮崎さんは、これからの日本はどうなってしまうのか心配されていた。何か社会的に意味のある仕事をやりたいと考えていたのだと思います。

私は司馬さんの作品に何かヒントがあるかもしれないと、1年間で司馬さんの作品を60冊ぐらい読みました。その中でいちばん衝撃を受けたのは『坂の上の雲』でした。幕末から近代国家としての日本がどうやって這い上がってきたのかよくわかった。当時、帝政ロシアは世界から反感を買っていた。日本のような小さな国がロシアと戦争をやって勝つとは思っていなかった。それが軍資金もないのに言うべきことを言って戦った。海外のほとんどが日本を応援していた。ロシアの国内事情も重なって、たまたま勝った。それを日本は勘違いして、太平洋戦争にまで突入する。司馬さんも最初はその後のノモンハン事件なども描こうとしたと思いました。

-久石さんは、宮崎監督の映画作品の音楽担当でも有名。司馬さんは宮崎作品が好きで、亡くなる前年に本誌で対談をしている。

私がNHKの知り合いのディレクターから「坂の上の雲」の音楽担当を依頼されたのは、もうずいぶん前のことです。大好きな作品だし、ぜひやりたいと思った。2011年で放映3年目。司馬さんは他の作品にも通じますが、秋山好古、真之兄弟のように、本当のエリートではなく2番手3番手に光を当てるのがとてもうまいですね。最初の第1部は青春期、第3部は二◯三高地の戦いと日本海海戦と決まっていましたから、第2部は少し心配していたんですが、子規の死にポイントをあててうまくいった。渡辺謙さんのナレーションと、よく合っていました。番組の最後に流れるテーマ曲「スタンドアローン」は、第1部はサラ・ブライトマンのスキャット、第2部は森麻季さんの歌、第3部はコーラスを入れました。第3部は「救済の音楽」。希望の見える音楽をテーマにしています。

-久石さんは東日本大震災のチャリティーコンサートを東京、大阪、パリ、北京で行った。

コンサートの前に、実際に現場を訪れないといけないと思って、宮城県石巻など被災地を4ヵ所回りました。福島第一原発のメルトダウンでは、日本政府や東京電力がほとんど情報を公開せずに、世界からあきれられてしまいましたが、コンサートでは各地から支援の声が上がり感動しました。それにしても復興は遅れていますね。まだ瓦礫の処理は3割です。日本は規模は小さいのだから、それに合った生活をすればいいのに、原発をはじめ、さまざまなところで無理をして、便利さや快適さを求めた。その結果がこの事態です。こんな状況を司馬さんが見ていたら、どのように思うでしょうね。福島のあの豊かな土地が十数年は使えないと思うと悲しいですよ。

(「週刊 司馬遼太郎 8」より)

(初出:週刊朝日 2011年8月5日 増大号)

 

週刊朝日MOOK 週刊 司馬遼太郎 2011年10月7日 発売

公式サイト:朝日新聞出版 | 別冊・ムック 週刊 司馬遼太郎 8

 

 

映画「もののけ姫」(1997)製作時期に、司馬遼太郎の関連本を読みあさったエピソードは過去にも語られていましたね。

 

「いま子供たちに向けて何をテーマに作るべきなのかが見えて来ない」という発言もしています。そんなとき、宮崎さんの尊敬する作家、司馬遼太郎さん、堀田善衛さんとの鼎談が実現しました。その鼎談によって、宮崎さんは今後、作家として何をやるのか、見えてきた部分があったのではないでしょうか。実は、僕は司馬さんの本をあまり読んでいなかったので1年間で100冊近く読みました。『もののけ姫』の奥深いところに司馬さんの見方、考え方があるのでは、と思ったからです。

Blog. 「文藝春秋 2013年1月号」 久石譲、宮崎駿を語る より抜粋)

 

「もののけ姫」では、当時宮崎さんと司馬遼太郎さんの対談集が出版されたこともあり、1年間で『坂の上の雲』他ほぼすべての本を読破した。宮崎さんがこの映画に込めた思考の過程を少しでも知るための参考になれば、と考えたからだ。で、そのことを宮崎さんに話したら「そんなに読まなくてもいいですよ」と苦笑いされた。

Blog. 宮崎駿 × 高畑勲 × 鈴木敏夫、久石譲音楽を語る 『久石譲 in 武道館』より より抜粋)

 

 

ほとんどTVドラマの音楽を手がけることがなくなった久石譲が、なぜこの作品は引き受けたのか、またひとつの作品に携わるときの姿勢など、いろんな面が垣間見れるインタビュー内容です。

 

週刊 司馬遼太郎 8

 

Blog. 「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」より EXILE ATSUSHI 久石譲 エピソード

Posted on 2016/10/23

2007年のスタートから、足かけ10年。大ロングラン中の人気番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(TOKYO FM含む全国38局ネット)から、ベスト・オブ・ベスト回を厳選して単行本化したのが書籍「ジブリ汗まみれ」です。その最新刊・第5巻(2016年3月刊行)のご紹介です。

 

本著に収められたエピソードその目次は、

▼第5巻収録 豪華ゲスト
○庵野秀明(監督・プロデューサー)+樋口真嗣(監督)「特撮の灯よ、永遠に…! <特撮博物館>開催秘話」[ポッドキャスト未配信]
○坂本美雨(ミュージシャン)「わたしと 父母と 音楽と」
○太田光(タレント)「拝任! 『かぐや姫』の特命コピーライター」
○吉岡秀隆(俳優)「ジブリ作品が、ぼくを助けてくれた」
○堅田真人(モバイル研究家)+依田謙一(日本テレビ)「携帯事情の最前線 ウェアラブルからインプラントへ」
○三浦しをん(作家)「『神去なあなあ日常』 小説と映画のあいだ」
○EXILE ATSUSHI(アーティスト)「伝えたい歌、日本のこころ」
○橋口亮輔(映画監督)+リリー・フランキー(アーティスト・俳優)「小豆島で語りあったこと」
○斎藤環(精神科医)+川上量生(カドカワ代表取締役社長)「ヤンキー vs. オタク —この日本的なるもの」
○追想・菅原文太(鈴木敏夫による“ひとり語り”)

 

 

ジブリネタ・久石譲ネタはもとより、さまざまな分野のバラエティ豊かなトーク満載で、見識が深まり毎号楽しみに読んでいます。この最新刊も、各ゲストを迎えてのエピソードそれぞれに書き残したいことはたくさんある、目からウロコなお話が盛りだくさんでした。

久石譲ファンサイトということで、そのなかから久石譲に関連するエピソードをご紹介します。抜粋になりますので、もしさらに深掘りしたい人、興味を持たれた人は、ぜひ本を手にとってみてください。

 

 

Guest 7
EXILE ATSUSHI 「伝えたい歌、日本のこころ」

日本の歴史からわかること

~略~

ATSUSHI:
「そうですね…。EXILEとしてのステージの時は、どっちかというとエンターテインメントで、バーンと派手は演出が多いので。ソロのツアーでは、わりと静かな曲も歌います。あと、この前、久石さんとご一緒させていただいたので…」

鈴木:
「そうですってね。さっきの奥さんも知ってたんですよ、そのことを(笑)。」

ATSUSHI:
「〈懺悔〉という曲なんですけど、ちょうど宮崎駿さんが引退を発表された日(2013年9月1日発表、6日引退会見)に、その曲のミックスダウンをしていて。久石さんは、宮崎さんと30年ぐらい一緒にやってきた仲間なので、やっぱりちょっと傷心されてる感じがありましたね。」

鈴木:
「あの日ですか!…ぼく、その日に、久石さんに2回電話をもらったんですよ。じゃあ、その作業の合い間を縫っての電話だったんですね。それで、最初は「引退にびっくりした」という話で、しばらくおいて、「何とか撤回できないのか」と…(笑)。」

ATSUSHI:
「ああ、そうおっしゃってたんですね? 相当ショックだったみたいですね、やっぱり。」

-あの曲(〈懺悔〉)は、詞よりも曲が先にあったんですか?

ATSUSHI:
「あれは、日本テレビが催した、「洛中洛外図」という大昔の何枚もの屏風を展示する記念式典というか、展覧会のためのテーマ曲だったんです。それでぼくも、一緒に行かせていただき、見たんですが──やっぱりそお屏風には、当時の”発注主”がいて、たとえば、徳川家と豊臣家の勢力図みたいなものが上手と下手みたいに描かれていたり、深い意味が込められている。日本人の民族性というか、当時の生活が描いてあったり。そういうものを見て、久石さんがインスピレーションを得て作られたメロディーをぼくに下さって、ぼくも、歌詞の案を先にメモしておいたんですけど、それに合わせて作詞させていただきました。

でも、音楽家としての信頼というんですかね…お任せして、最初に上がってきた時、すごく難しいメロディーだったんですけど、「とにかく久石さんだし、文句言わずにやってみよう」と。すごく難しかったけど、作詞をして、歌った時に、「ああ、やっぱりすごいな。こうなるんだ」と──自分ではイメージできないところまで行っているというか、信頼してやってみて良かったなと思いましたね。

その「洛中洛外図」を見て、昔から芸術作品というものは、ある思いがあって残されているんだなあと。その屏風にも、何か意図があって、発注主がいて、そして、今に残されている…。見ると、人間は、ずーっと同じことを繰り返しているんです。争いもするし、平和を願って篳篥(ひちりき)を吹いてた人たちの”昔”は、もう消えてしまったのか、とか。人間は同じ過ちを繰り返しているなと感じたし、作詞をしていて「これって、懺悔なんだな」と思い、〈懺悔〉というタイトルにさせていただいたんです。

その屏風には、喧嘩をはやし立てるお坊さんや、不倫をしに行く女性の姿や、お花見の帰りに酔っぱらってる集団が描かれていて、結局、やってることは今と変わらない。昔のことはどうしてもちょっと美化して捉えるけれども、昔はけっこう自由に芸術をやっていたんだなあ、とも思いましたね。」

鈴木:
「いつごろのものなんですか? 「洛中洛外図」って。」

ATSUSHI:
「室町時代から始まり、江戸時代まで描かれていたそうです。」

鈴木:
「室町なんですよねえ…日本のすべてが変わったのは。今、”家族”というものがあるじゃないですか。お父さん、お母さん、子供がいて、一つの家族を構成している。それ、室町時代に始まってるんですね。」

~略~

「やりたいことをやる」ことの是非

~略~

鈴木:
「だけど、この前、東京ドームのコンサートを初めて拝見して、思い知らされましたよね。最初から最後まで、目が離せない。やっぱり面白かったんだもの。何が良かったかというと、自分たちのことよりも、お客さんのことを考えていらした。そこらへんが、宮崎駿の考えかたにも通じるというか…。彼もね、そりゃ自分でやりたいこともあるんでしょうけど、それより先に、「今のお客さんって、何を観たがっているんだろう?」って、そっちですよ。」

ATSUSHI:
「宮崎さんって、そうなんですね?」

鈴木:
「はたから見ると好きなことやってきたように見えるかもしれないけど、しかし、誤解を恐れずに言っちゃうと──彼は、自分の好きなものは一本もやっていない。」

-そうなんですか!?

鈴木:
「そうですよ。だから、さっきの屏風の話じゃないけど、ぼくなんか、発注主なんですよ。「次、これをやってください」って。そうすると、だいたい二つ返事で引き受けてくれる。で、「今、この題材で何をやるとお客さんが満足してくれるだろう?」って、まず、先にそれですよ。彼が他の監督と一番違うのはそこで、非常に職業的にやる。だから引退の時に、「これからは好きなことやります」って言ったわけです。だって、一回もやってないんだもん、大げさに言うと。

変な言いかただけどね…もし、彼が好きなことだけやっていたら、30年ももたないですよね。いつもいつも、「お客さんが何を求めているか」。それを探るのが、彼がやってきたことなんです。」

ASTUSHI:
「なるほど、そうなんですね…。ぼくにとってのEXILEも、今おっしゃったことに近くて、自分自身のために作詞とかパフォーマンスをやったことは、あまりないですね。グループのため、お客さんのためというのが、やっぱり一番にある。」

鈴木:
「さっき、美空ひばりさんの話が出たけど、昔は、歌手のバックには、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、「この歌手に、次、何を歌わせようか」と考える。その時、彼らが考えるのは、お客さんのことですよね。歌手本人の希望うんぬんではなく、「これを歌え」と。それでうまくいくかどうか、でしょ? そういう時代のやりかたって、もう一度見直すべきじゃないかなという気がする。エンターテインメントというのは、やっぱり、需要と供給の関係の上に成り立っているから、ひとりよがりになっちゃダメでしょう。

いい機会だから、ちょっと話しちゃうと──宮さん(宮崎駿)は、引退のあと好きなことをやると言いながら、いざとなると、「何をやったらいいんだろう」と思っていますよね。」

ASTUSHI:
「長年、お客さんのためにやることによって、好きなことが変わってきちゃってるから、「本当にやりたいことって何だっけ?」という感じなんでしょうね。」

鈴木:
「そうそう。そのとおり!」

-そうなると、逆に、自分がただやりたいことだけをやっても、楽しくないんじゃないですか?

ATSUSHI:
「誰からも反応がないって思うと、やりたくなくなっちゃうんですよね。」

鈴木:
「結局、宮崎駿が、今何をやってるかというと──三鷹の森ジブリ美術館の展示替えが、毎年5月にるんですが、それを、目の色を変えてやっている。それで、ジブリが作った保育園の子供たちに楽しんでもらいたいと、去年からやってるんですけど、正月を越えて、「もう、どうしたらいいかわからない」って。ものすごく一生懸命やっていて、ある意味では、映画を作るよりも頑張ってる。「こんなことを頑張るんだったら、映画を作ってよ」と言いたいぐらいなんですけど(笑)、彼にとっては、お客さんの顔が見えてるんですよ、その子たちが喜んでくれなかったらダメと。~略~」

~以下略~

2014年3月11日収録 れんが屋/4月8日・5月13日放送分に、元音源より追加、再構成。

(書籍「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」 より)

 

 

当エピソードの半分も抜粋していません、話はあらゆる方面に展開し、ジブリのこと・EXILEのこと、多岐にわたっています。

個人的には、久石譲が宮崎駿監督の引退を耳にしたその日が「懺悔 EXILE ATSUSHI × 久石譲」のミックスダウンの日ということだけでも、感慨深い思いで同曲を聴き返してしまいました。映画「風立ちぬ」製作期間中、うすうすは感じていたことかもしれませんが、いざ公になったときの衝撃はやはり第三者には測りかねるものが存在するのだろうと思います。

芸術とは、芸術作品とは、作家とは。時代性や作家性もふまえて語られた対談はとても興味深いものがありました。村上春樹さんのエッセイなどを読んでいても、久石譲にも通じるのかなあ、同じようなこと思っているのかなあ、と置き換えてみることもるのですが、それはまた別の機会にご紹介できたらと思っています。

このあたりの「久石譲考察」については、ちょうど今年の5-6月にかけて深く掘り下げて記しました。共通項もあるような気もしますので、ご興味のある方はぜひ。

Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 1
Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2
Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 3

 

本書よりご紹介した楽曲「懺悔」にまるわる楽曲解説やエピソードなどは下記ご参照ください。

Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』
Blog. 「NHK SWITCH インタビュー 達人達 久石譲 × 吉岡徳仁」 番組内容紹介

 

EXILE ATSUSHI 久石譲 懺悔 通常盤

 

 

最後に。

この秋読んだ本に、「ジブリの仲間たち」(鈴木敏夫)[2016.6刊行]、「もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-」(木原浩勝)[2016.10刊行]などもあります。前著は、今、宮崎駿監督が何に取り組んでいるか、リアルタイムな情報を垣間見ることができます。

後著は、2016年今年が「ラピュラ公開30周年」にあたり、当時の制作現場がまぶしく記されています。かなりトリビア的な情報も多く、ジブリファン・ラピュタファンには、たまらない一冊になると思います。当時スタジオジブリでこの作品を一緒に作っていた人だからこそ語れる秘話満載です。おそらく蔵出しな情報ばかりで、鈴木敏夫・宮崎駿・高畑勲 各著書はほぼ読んでいる人としても、初めて知ることが多く驚きと感動の連続で一気に読み切りました。

私のふわっと感想よりも、Amazonレビューなんかを見ていただければ、手にとりたくなること間違いナシです。(リンク貼っていません検索してください)

 

ジブリの仲間たち 鈴木敏夫

もう一つのバルス

 

秋の夜長に、ぜひ1冊手にとってみてください。久石譲を聴きながら♪

 

ジブリ汗まみれ5 鈴木敏夫