Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第7番&第8番』

2018年7月18日 CD発売 OVCL-00666

 

精鋭メンバーが集結した夢のオーケストラ!ベートーヴェンはロックだ!!

音楽監督久石譲の呼び掛けのもと、長野市芸術館を本拠地として結成された「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」は、日本の若手トッププレーヤーが結集し、ダイナミックで溌剌としてサウンドが魅力のオーケストラです。2年で全集完成を目指すベートーヴェン・ツィクルスは、作曲家ならではの視点で分析した、”例えばロックのように”という、かつてない現代的なアプローチが話題となっています。さまざまな異なる個性が融合し、進化を続ける久石譲とNCOのベートーヴェンをどうぞお楽しみください。

(CD帯より)

 

 

リズムとカンタービレの共存 柴田克彦

本作は、第1番&第3番「英雄」、第2番&第5番「運命」に続く、久石譲指揮/ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)のベートーヴェン交響曲シリーズの第3弾。長野市芸術館を本拠地とし、久石が音楽監督を務めるNCOは、在京オーケストラの首席奏者を多く含む国内外の楽団やフリーの奏者によって構成されている。彼らは、ホール開館直後の2016年7月から2018年7月にかけて、ベートーヴェンの交響曲の全曲演奏(全7回)及びライヴ録音を行っており、本作には2018年2月12日の第6回定期の2演目が収録されている。

当シリーズにおける久石のコンセプトは、「作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン」。弦楽器の編成(本作)は、ヴァイオリンが全体で16名、ヴィオラが6名、チェロが4名、コントラバスが3名とかなり絞られている。久石とNCOは、これを生かしたソリッドな響きで、細かな音の綾を浮き彫りにしながら、推進力と躍動感溢れる演奏を聴かせてきた。

さて第7番と第8番は同時期の作。サイズや曲想こそ違えども、リズムが強調されている点、純粋な緩徐楽章がない点など、双生児的な面をもっている。共にいわば”ビートが効いた、停滞しない音楽”だ。久石は当初から「ロックやポップスを聴いている今の奏者は皆リズムがいい。そのリズムを前面に押し出した強い音楽をやれば、物凄くエキサイティングなベートーヴェンになる」と語っていたし、これまでの演奏からみても、彼らのアプローチに最も適した作品であるのは間違いない。

実際に聴くと、まさしくその通り。快速テンポでビートの効いた躍動的な演奏が展開されている。だがここで重要なのは、第7番では”カンタービレ”、第8番では”ユーモアや和み”との共生が成就されていること。ベートーヴェンが狙ったのは、そこではなかったか? 本公演前、NCOのコンサートマスター・近藤薫(東京フィルでも同職にある)に話を聞いた際、「久石さんは、流行や世が求めるアプローチよりも、ベートーヴェンが交響曲で何をしたかったのか?との視点で考えている。作曲家ゆえに、音符を通して対話し、構造を読み解こうとしているように思う」との旨を語っていた。本作を聴くと、この言葉を思い出す。

もう1つ感心させられるのは、奏者たちの生き生きとした反応と積極性だ。短いフレーズの応答や合いの手における絶妙な会話と相まって、全体に覇気が漂っている。特に木管楽器の存在感が抜群。オーボエの荒絵理子(東響首席)をはじめとするNCOメンバーの妙技も、本作の魅力の1つだ。

第7番は、第1楽章の遅い序奏部からすでに駆動力が示され、何かが起こりそうな予感が漂っている。主部に入ると、「ターン・タタン」の基本リズムが明確に描かれ、前向きに進みながらも、音楽の流れはしなやかだ。この”リズムはくっきり、フレージングはなめらか”は、全曲に亘る特徴でもある。第2楽章は精妙なダイナミクスで奏される弦楽パートの室内楽的な絡み合いが見事。しかも「アレグレット」の歩調はキープされている。第3楽章は溌剌と進行し、トリオもレガートだが停滞はしない。第4楽章は超速テンポの畳み込みが凄まじい。「タンタカタン」のリズムや細部の動きは明瞭で、終盤のバッソ・オスティナートも通常以上の凄みを発揮する。

第8番の第1楽章は軽やか且つ力強い。ここもリズムが明確で、ティンパニ等の強烈なアタックも耳を奪い、圧倒的な推進力が第7番と双生児たることを明示する。第2楽章は木管の瑞々しい刻みとしなやかな弦楽器群の対比が絶妙。第3楽章は流動的な運びに添えられるアクセントが効果的で、ホルン2本を筆頭にしたトリオの美しさも特筆される。第4楽章はむろん軽快だが、やはり細部まで入念に表出され、勢い任せになることはない。

”爽快なエネルギーと高揚感”に充ちた本作を聴くと、残る3曲への期待がいやが上にも膨らむ。

(しばた・かつひこ)

(CDライナーノーツより)

 

※諸石幸生氏による3ページにわたる曲目解説は割愛。詳細はCD盤にて。

 

 

 

 

 

 

 

2020.02 Update

 

 

 

[ベートーヴェン・ツィクルス第3弾]
ベートーヴェン:交響曲 第7番&第8番
久石譲(指揮)ナガノ・チェンバー・オーケストラ

ベートーヴェン
Ludwig Van Beethoven (1770 – 1827)

交響曲 第7番 イ長調 作品92
Symphony No.7 in A major Op.92
1. 1 Poco sostenuto -Vivace
2. 2 Allegretto
3. 3 Presto
4. 4 Allegro con brio

交響曲 第8番 ヘ長調 作品93
Symphony No.8 in F major Op.93
5. 1 Allegro vivace e con brio
6. 2 Allegretto scherzando
7. 3 Tempo di menuetto
8. 4 Allegro vivace

久石譲(指揮)
Joe Hisaishi (conductor)
ナガノ・チェンバー・オーケストラ
Nagano Chamber Orchestra

2018年2月12日 長野市芸術館 メインホールにてライヴ録音
Live Recording at Nagano City Arts Center Main Hall, 12 Feb. 2018

 

Produced by Joe Hisaishi, Keiji Ono

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Nagano Chamber Orchestra
Concertmaster:Kaoru Kondo

Recording & Balance Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Recording Engineers:Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo

and more…

 

Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第2番&第5番「運命」』

2018年2月21日 CD発売 OVCL-00655

 

精鋭メンバーが集結した夢のオーケストラ! ベートーヴェンはロックだ!!

長野市芸術館を本拠地として結成したオーケストラ「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」は、音楽監督久石譲の呼び掛けのもと、日本のトッププレーヤーが結集してスタートしました。当ベートーヴェン・ツィクルスは、”音楽史の頂点に位置する作品のひとつ”と久石がこよなく愛する「第九」に至るまで、2年で全集完成を目指します。第1弾アルバムでは、作曲家ならではの視点で分析し”例えればロックのように”という、かつてない現代的なアプローチが好評を博しました。今回も高い演奏技術とアンサンブルと、圧倒的な表現力で、さらに進化したベートーヴェンを聴かせます。

(CD帯より)

 

 

エネルギーと駆動力に充ちたベートーヴェン 柴田克彦

本作は、第1番&第3番「英雄」に続く、久石譲 指揮/ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)のベートーヴェン交響曲シリーズのCD第2弾。NCOは、2016年に開館した長野市芸術館を本拠とする楽団で、長野県出身の久石は、同ホールの芸術監督とNCOの音楽監督を務めている。メンバーは在京オーケストラの首席奏者を多く含む国内外の楽団やフリーの奏者など、若い世代を中心とした名手たち。彼らがホール開館直後から行っている「ベートーヴェン 交響曲全曲演奏会」(全7回)は、2016年7月の第1番に始まり、本作の第2番は2016年7月17日の第2回定期、第5番「運命」は2017年7月15日の第4回定期のライヴ録音である。

当シリーズにおける久石のコンセプトは、「作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン」、「往年のロマンティックな表現もピリオド楽器の演奏も、ロックやポップスも経た上で、さらに先へと向うベートーヴェン」であり、演奏もそれを具現している。そしてもう1つ見逃せないのが、NCOの表現意欲の強さだ。

コンサートマスターの近藤薫(東京フィルのコンサートマスターでもある)に話を聞いた際、彼は「クラシックは、伝統と確信が両立しなければいけないと思う。その点NCOは、ベテランから伝統を教わると同時に、少し何かが見えて次の展開に胸躍らせている30代が中心。それゆえ両方を併せもち、誰もがそうした立場を楽しんでいる。いわば演奏家ではなう音楽家の集合体。多様性があって、何にもでなれる。NCOの特徴は、この”皆が生きている”ところではないか」との旨を語っていた。

本作はまさに、久石のアプローチと、その意を自己表現に昇華させ得る”音楽家たち”のパフォーマンスが融合した、きわめて”Live”なベートーヴェンである。

ここでは番号順に特徴をみていこう。

第2番は、緩やかな序奏からリズムとアタックや細かな動きが鮮明に打ち出され、すでにムーヴしている。主部に入ると、弦楽器の生き生きとした刻みが推進力を倍加させ、絶え間なく前進を続ける。木管楽器の瑞々しい表現やティンパニの激しい打ち込みも効果的。これは本作の2曲全体に亘る特徴であり、前記の表現意欲の具体例でもある。第2楽章も緩徐楽章といえど動きが躍動し、それでいてしなやかな歌が流れていく、そのバランスが絶妙だ。第3楽章もリズムと音の動きが明確で、第4楽章は元々動的な音楽がより鮮烈に表出される。特に後半のダイナミズムは圧巻。この演奏を聴くと、まだ初期に属する第2番が、第3番に繋がる英雄様式と、第5番に通じる激しさを内包していることがよく分かる。

第5番は、第2番より熟達した中期の傑作であり、しかも1年後の演奏だ。にもかかわらず、ここで聴く両曲に質的な違和感が全くない。これは、当シリーズのコンセプトの揺るぎなさを証明している。

第5番は、当然のことながら前進性抜群で、テンポの速さが際立っている。だがそれは、メトロノームの指定に拠るものではなく、曲がもつ駆動力やエネルギーを表すための必然的な速さと言っていい。第1楽章は、動機の連鎖が生み出す活力や推進力が通常以上に強調される。第2楽章も速いテンポで弛緩なく進行。第3楽章がこれほど生気に富んでいるのも珍しい。そして第4楽章は圧倒的な勢いと力が横溢し、大管弦楽を凌ぐ迫力で突き進む音楽が、熱い感動を呼び起こす。久石は「巨大なオーケストラが戦艦やダンプカーだとすれば、NCOはモーターボートやスポーツカー」と語っていたが、この第5番は、まさしく強力なモーターボートで疾走するかのようだ。

ベートーヴェンの交響曲は1曲ごとに違った顔をもつ。それはむろん確かだが、当シリーズを聴くと、第1番や偶数番号の曲にも清新なパワーが通底し、どれもが”先へ先へと向っている”ことに気付かされる。やはりベートーヴェンは”ロックに通じる音楽”なのだ。

(しばた・かつひこ)

(CDライナーノーツより)

 

※諸石幸生氏による3ページにわたる曲目解説は割愛。詳細はCD盤にて。

 

 

 

 

 

[ベートーヴェン・ツィクルス第2弾]
ベートーヴェン:交響曲 第2番&第5番「運命」
久石譲(指揮)ナガノ・チェンバー・オーケストラ

ベートーヴェン
Ludwig Van Beethoven (1770 – 1827)

交響曲 第5番 ハ短調 作品67 「運命」
Symphony No.5 in C minor Op.67
1. 1 Allegro con brio
2. 2 Andante con moto
3. 3 Allegro
4. 4 Allegro

交響曲 第2番 ニ長調 作品36
Symphony No.2 in D major Op.36
5. 1 Adagio molto – Allegro con brio
6. 2 Larghetto
7. 3 Scherzo. Allegro
8. 4 Allegro molto

久石譲(指揮)
Joe Hisaishi (conductor)
ナガノ・チェンバー・オーケストラ
Nagano Chamber Orchestra

2016年7月17日(5.-8.)、2017年7月15日(1.-4.)
長野市芸術館 メインホールにてライヴ録音
Live Recording at Nagano City Arts Center Main Hall, 17 Jul. 2016 (5-8), 15 Jul. 2017 (1-4)

 

Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Nagano Chamber Orchestra
Concertmaster:Kaoru Kondo

Recording & Balance Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineers:Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo

and more…

 

Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第1番&第3番「英雄」』

2017年7月19日 CD発売 OVCL-00633

 

長野市芸術館を本拠地として、2016年、新たなオーケストラ「ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)」が誕生しました。音楽監督久石譲の呼び掛けのもと、日本のトッププレーヤーが結集してのベートーヴェン・ツィクルスが開始。“音楽史の頂点に位置する作品のひとつ”と久石がこよなく愛する「第九」に至るまで、2年で全集完成を目指します。作曲家ならではの視点で分析する”例えればロックのように”、かつてない現代的なアプローチによる久石譲&NCOのベートーヴェン・ツィクルス、第1弾。

精鋭メンバーが集結した夢のオーケストラ!ベートーヴェンはロックだ!!

(メーカーインフォメーションより)

 

 

 

ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)は長野市芸術館(2016年にオープン)を本拠地とした新しいオーケストラです。若くて優秀なうえに経験も豊富です。

僕がそこの芸術監督として最初に取り組むプロジェクトをベートーヴェンの交響曲全曲演奏&CD化にしました。我々のオーケストラは、例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで誰にでも聴きやすく、それでいて現代の視点、解釈でおおくりすることができます。つまり新たなベートーヴェンです。今回お届けするのは第1回、第3回定期演奏会で演奏された楽曲です。

楽しんでいただければ幸いです。

2017年6月 久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

前進し躍動するベートーヴェン 柴田克彦

これは、聴く者の全身に活力を送り込み、五感を覚醒させるベートーヴェンだ。今回の交響曲全集プロジェクトにおける久石譲のコンセプトは、「作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン」。これに、著名オーケストラの首席クラスが集い、海外一流楽団やフリーの名手も加わった「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」が全力で応えたのが、本作の演奏である。

長野市芸術館で両曲のライヴを体験した際には、久石のソリッドなアプローチと、若い世代を中心とする精鋭たちの表現意欲が相まった、躍動感と生気あふれる音楽に感銘を受けた。”小回りの効く編成”ゆえに浮上する音やフレーズの綾も実感した。そしてリアルかつバランスの良いCD録音をあらためて聴くと、それらに加えて、細かなリズムの意味深さや、音塊一体で前進する強烈なエネルギーを再認識させられる。

両曲ともに速めのテンポでキビキビと運ばれ、緩徐楽章であろうと全く停滞しない。だが快速調であっても勢い任せではなく、各フレーズがこまやかに息づいている。第1番は、推進力と力感の中に、若きベートーヴェンの前向きの意志が漲っている。この曲は先達の進化形である以上に、未来を見据えた作品なのだ。第3番は、リズムが躍る鮮烈な音楽。特にシンコペーションや弦の刻みが効果を上げる。第4楽章前半部分での弦楽器陣の室内楽的な絡みも新鮮だ。そして重厚長大なイメージの「エロイカ」が、実は第7番を先取りするビートの効いた曲であることに気付かされる。

往年のロマンティックな表現や分厚い響きも、次のピリオド楽器演奏も、あるいはまたロックやポップスも経た上で、さらに先へと向うベートーヴェンの交響曲がここにある。

(しばた・かつひこ)

(CDライナーノーツより)

 

※諸石幸生氏による3ページにわたる曲目解説は割愛。詳細はCD盤にて。

 

 

 

久石譲インタビュー

「ベートーヴェンはやはりクラシック音楽の最高峰。何をどう頑張っても最後はここに行き着くんです。別の音楽を何回か経験した後に挑む方法もありますが、最初にベートーヴェンの交響曲全曲演奏を経験し、あるときにまた挑戦すればいい — 僕はそう考えました。演奏者もベートーヴェンをやるとなれば気持ちが違いますし、新たにスタートしたナガノ・チェンバー・オーケストラでも、メンバーの結束の強さが変わってきます。これはとても重要なことだと思っています」

「我々の演奏は、日本の人たちが通常やっているベートーヴェンではないんですよ。アプローチは完全にロックです。さらに言うとベートーヴェンが初演したときの形態でもあります。現代のオーケストラは、ワーグナー以来の巨大化したスタイルであり、ドイツ音楽は重く深いものだと思われています。しかしベートーヴェンが初演した頃は、ナガノ・チェンバー・オーケストラくらいの編成なんです。巨大なオーケストラが戦艦やダンプカーだとすれば、ナガノ・チェンバー・オーケストラは、モーターボートやスポーツカー。小回りが効くし、ソリッドなわけです。我々は、ベートーヴェンが本来意図した編成を用いながら、現代の解釈で演奏します。なぜなら昔と違ってロックやポップスを聴いている今の奏者は、皆リズムがいいからです。そのリズムを前面に押し出した強い音楽をやれば、物凄くエキサイティングなベートーヴェンになる。我々のアプローチはそういうことです」

「何十回もやって慣れてきたスタイルと全く違うので、メンバーも興奮していますよ。別に特別な細工をしたわけではありません。先に申し上げたように、編成はオリジナルに近づけて、リズムなどは現代的な解釈を採用しただけです。皆が色々な音楽を聴いている今は、その感覚で捉えなかったら、ベートーヴェンをやる意味はないと思うのです。ですから本当に、だまされたと思って一度聴きに来てください」

Blog. 「NCAC Magazine Opus.4」(長野市芸術館) 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

 

[ベートーヴェン・ツィクルス第1弾]
ベートーヴェン:交響曲 第1番&第3番「英雄」
久石譲(指揮)ナガノ・チェンバー・オーケストラ

ベートーヴェン
Ludwig Van Beethoven (1770 – 1827)

交響曲 第1番 ハ長調 作品21
Symphony No.1 in C major Op.21
1. 1 Adagio molto – Allegro con brio
2. 2 Andante cantabile con moto
3. 3 Menuetto. Allegro molto e vivace
4. 4 Adagio – Allegro molto e vivace

交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
Symphony No.3 in E-flat major Op.55 “Eroica”
5. 1 Allegro con brio
6. 2 Marcia funebre. Adagio assai
7. 3 Scherzo. Allegro vivace
8. 4 Finale. Allegro molto

久石譲(指揮)
Joe Hisaishi (conductor)
ナガノ・チェンバー・オーケストラ
Nagano Chamber Orchestra

2016年7月16日(1.-4.)、2017年2月12日(5.-8.)
長野市芸術館 メインホールにてライヴ録音
Live Recording at Nagano City Arts Center Main Hall, 16 Jul. 2016 (1-4), 12 Feb. 2017 (5-8)

 

Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Nagano Chamber Orchestra
Concertmaster:Kaoru Kondo

Recording & Balance Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineers:Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo

and more…

 

Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『天音』

2017年5月17日 デジタルリリース

 

2017年公開映画『たたら侍』(監督:錦織良成)主題歌

 

EXILE ATSUSHIと久石譲によるコラボレーションは2013年『懺悔』(日本テレビ開局60年「特別展 京都」テーマソング)につづく2作目である。

 

 

EXILE ATSUSHI コメント
■久石譲と楽曲を制作することになった経緯
以前、懺悔という作品でご一緒させていただいた時の衝撃が、いちアーティストとして胸の中にずっと残り続けていて、今回たたら侍の映画の主題歌のお話をいただいた時に、またもう一度、久石さんとご一緒させていただけたら、良いものができるのではないかという想いで、お願いすることになりました。

■久石さんの作った曲を最初に聞いたときの感想
前回の懺悔の時もそうだったのですが、音楽的に卓越し過ぎていて、僕の想像力を遥かに超えたところにゴールがある感じでした。信頼と確信の元に歌詞を綴り始め、その歌を歌ってみた時に初めて、こういう事だったのかと納得させられまして、久石さんの音楽家としての圧倒的な魅力に引き込まれていく感覚でした。

■歌詞に込めた想い
日本独自の文化や歴史など、いろいろなものからヒントを得ています。また音や言葉、記号やマークにはどんな想いが隠されているのか。それらに対する、人間の業や、人々の想い、嘆きは、またどんな意味を持つのか。そして最終的には、人間はどのようにして万物の霊長に成り得ることができるのかを問いかける意味にもなっています。そして何よりも、平和への願いが込めさせていただきました。

■主題歌に決まったときの率直な感想
題材がとても特別なものですし、日本独特なものでしたのですごく責任を感じましたが、同時に使命感みたいなものを感じ制作させていただきました。

■主題歌を通して、映画を観る方に何を感じてほしいか
いりいろなものが便利になった世の中で、僕たち人間たちが、肌で感じて、どんな想いで行動するべきなのか、それを考えなければならない時代が来ているのかもしれないということを、少しでも感じていただけたら、これ以上の幸せはありません。

(公式サイトコメントより)

 

 

 

楽曲を象徴するヴァイオリン。通常の4弦のよりも2本多い6弦エレクトリック・ヴァイオリンである。つややかさとあでやかさをもつその響きは、この作品の崇高で奥深い世界観の核となっている。特徴はアコースティック・ヴァイオリンの優美さに加え、アンプをとおしたディストーション(ひずみ)など表現の豊かさにある。また弦数が多いぶん音域も広くなり、通常のヴァイオリンよりも低い音域が可能となっている。

久石譲が最先端の”現代(いま)の音楽”を発信するコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE Vol.1」(2014)において、ニコ・ミューリー作曲「Seeing is Believing」がプログラムされた。日本では珍しい6弦エレクトリック・ヴァイオリンを独奏に用いた作品で、久石譲はこの演奏会のために楽器を調達している。

翌年「MUSIC FUTURE Vol.2」(2015)では、この楽器に刺激を受け自らの新作「室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra」を書き下ろし披露。こちらは同名CD作品としてLIVE盤となり、久石譲公式チャンネルでもその斬新な野心作を見て聴いて体感することができる。(※2017年5月現在)

そして、今回ポップス・ミュージックでも響きわたらせてしまった。2014年のそれは同楽器日本初演奏であり、2015年の自作をふくめ6弦エレクトリック・ヴァイオリンを使った作品は世界においても数少ない。ということは、今作「天音」によってPOPS音楽で同楽器をフィーチャーするのは日本初ということになる、と思われる。

 

そんないわくつきの楽器の紹介をしたうえで、「天音」に耳を傾けてみる。

イントロから優美なヴァイオリンの音色、通常のヴァイオリンではなし得ない低音域、そしてザラザラした硬質なディストーション。イントロ数小節で6弦エレクトリック・ヴァイオリンの魅力を伝えきっている。曲の展開は進み中間部ではエレクトリック・ギターと聴き間違うほどの魅惑的なディストーション、エンディングまで一貫して奏でられるその響きは、この作品のもうひとつのコラボレーションと言ってもいいほどである。

そして、対位法的というか対照的なのが、主役であるEXILE ATUSHIの透明感ある包みこむような澄んだ歌声と、久石譲のピアノ。6弦エレクトリック・ヴァイオリンの独特な響きが、結果ふたつの主役を一層引き立たせていて、まさにふたつの白い光のような”天音”を浮かび上がらせているようにすら思う。

付け加えると、6弦エレクトリック・ヴァイオリンはそのものが多重な響きを醸し出している。そのため通常のヴァイオリンと異なり、ビブラートを効かせる奏法をあまりとっていないと思う。太く厚みのある音をまっすぐにのばすことで、ヴォーカルの遠く広がるビブラートとぶつかりあうことがない。ゆっくりと深く波打つヴォーカルのビブラートに改めて感嘆しながら、それを気づかせてくれたのはこの楽器との響きあいゆえ。実は歌曲と相性がいいのか、もちろんそこには表現力に優れた歌い手であることが求められる。それをも見据えた久石譲の音楽構成か、見事である。

小編成アンサンブルも楽曲に彩りをあたえ、アコースティック楽器とエレクトリック楽器の融合は本来容易ではないはずなのだが、そこは上記コンサートもふまえた実演と響きを熟知した久石譲の妙技といえる。

 

ほとんど6弦エレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーしたレビューとなってしまったが、それだけの存在感と重要な役割を担っている。それは”あったから使ってみた”のではなく、この楽器でなければならなかった必然性と久石譲の確信を聴けば聴くほどひしひしと感じる。

6弦エレクトリック・ヴァイオリンの特性を知ることで、聴いたことのない響きだけれど得も言われぬ心地のよい響き、ときに尖りときにしなやかに奏でる音色、広がりと深さをもって大きく包みこむ世界観。今まで体感したことのない新しい響きをきっと受けとることができる。

卓越した表現力をもったヴォーカリストとピアノ、そこに拮抗し独特な距離感と溶け合いをみせるヴァイオリン。それぞれ個の個性が強いからこその凛とした絡み合い。共鳴しあう至福を感じる楽曲である。三位一体なのかもしれない。

 

 

2019.4.26 追記

本楽曲初CD化

『TRADITIONAL BEST / EXILE ATSUSHI』CDライナーノーツより

Word:ATSUSHI
Music, Arranged & Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi

Electric Violin:Tatsuo Nishie

Flute:Hiroshi Arakawa
Oboe:Satoshi Shoji
Clarinet:Kimie Shigematsu
Bassoon:Toshitsugu Inoue
Horn:Takeshi Hidaka
Trumpet:Kazuhiko Ichikawa
Trombone:Naoto Oba
Bass Trombone:Ryota Fujii
Percussion:Makoto Shibahara, Akihiro Oba
Piano:Febian Reza pane
1st Violin:Nobuhiro Suyama
2nd Violin:Tshkasa Miyazaki
Viola:Shinichiro Watanabe
Cello:Takayoshi Okuizumi
Contrabass:Tsutomu Takeda
Instruments Recorded by Hiroyuki Akita at Bunkamura Studio
Vocal Recorded by Naoki Kakuta at avex studio
Mixed by Suminobu Hamada at Sound Inn Studio
Mamipulator:Yasuhiro Maeda (Wonder City Inc.)

and more..

 

 

 

 

天音(アマオト) / EXILE ATSUSHI & 久石譲
作詞:EXILE ATSUSHI 作曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『栃木市民の歌 -明日(あす)への希望-』 *Unreleased

2015年11月13日 発表

 

市歌「栃木市民の歌 ~明日(あす)への希望~」
作曲:久石譲 作詞:麻衣

 

栃木市市制5周年記念式典にて発表。麻衣の歌唱により初披露、小学生との合唱も披露された。

 

麻衣は、太平山を何度も訪れたことがあったという。市歌の制作が決まってからはさらに構想を練るため、渡良瀬遊水地や市中心部の巴波川など市を3度訪問。「父とたくさん話し合い、栃木の人たちの地元への思いを表現した」と語る。

市長は市歌について「地元を離れた人の郷愁を誘う曲になるとうれしい」と期待を寄せている。

 

市歌はCDを市図書館などで貸し出すほか、市ホームページで試聴もできる。
https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/8/121.html

 

栃木市ホームページによって視聴・ダウンロードできるのは下記4項目である。

  • 栃木市民の歌~明日への希望~(歌:麻衣)
  • 栃木市民の歌~明日への希望~(ピアノ伴奏)
  • 譜面(メロディ譜)
  • 譜面(ピアノ伴奏)
  • 譜面(混声四部合唱)
  • 歌詞カード

 

 

老若男女が歌えるシンプルで清らかな歌曲である。

楽譜にも「Giocoso」と明記されているが、《陽気に、楽しく》という音楽用語であり、市民みんなで楽しく歌いあってほしいという表れであろう。

また珍しい点といえば、シンプルな旋律ながら付点8分音符が多く見られ、このことがリズミカルで快活な歌曲/合唱曲への一役を担っているといえる。(8分音符の連続の場合”タタタタ”となり、付点8分音符の連続の場合は”タータタータッ”となる)

これから先市民の歌として愛されるなかで、同市で久石譲コンサートなどが企画された際には、オーケストラと合唱での共演などの可能性もあるかもしれない。

 

 

 

2018.3 追記

 

 

 

栃木市

 

栃木市民の歌 アスへの希望 ジャケット 2

 

Disc. V.A. 『バンド維新 2015』

2015年2月18日 CD発売 UCCS-1173

 

「バンド維新」とは

2008年2月に「音楽のまち・浜松」から新たに発信する芸術文化事業としてスタートしました。 学生たちが日頃の研鑽の成果を披露する場を提供するとともに、若手作曲家の育成、日本の音楽文化の振興、こどもたちが純粋に音楽を楽しめる環境づくりを推進することを目的としています。

作曲家は『吹奏楽』の枠にとらわれないウィンド・アンサンブル作品の可能性に チャレンジし、演奏者は、いわゆる『吹奏楽』曲とはひと味違う世界に触れ、さらに作曲者から直接指導を受ける。 「音楽のまち・浜松」ならではのイベントです。

2015年も日本を代表する8人の作曲家が参加

【委嘱作曲家】
北爪道夫 久石譲 前田憲男 ボブ佐久間 真島俊夫 中川英二郎 三宅一徳 猿谷紀郎

(メーカーインフォメーションより)

 

 

久石譲 「Single Track Music 1」

【楽曲解説】
この作品はとてもシンプルな構造でできています。全編ユニゾンで、その中のある音が高音や低音に配置させることによって別のフレーズが浮かび上がるようになっています。

僕自身はミニマル・ミュージックのスタイルを取っていますが(正確にはその後のポストクラシカルといいますが)そのスタイルではズレが重要になり、2つ以上の声部が必要になるわけですが、あえて単旋律にすることで時間軸上でのズレを考えたわけです。そのフレーズは単音から始まり、24音まで増殖していって一区切りです。また中間部からは和音らしき響きが聞かれますが、これはあくまでフレーズの中の最初と最後の音のサステイン(持続音)であって意図的に作った和音ではない。後半ではそのサステインが単旋律のリズムと同期して分化されているだけです。

全編ユニゾンということはある意味で理解しやすいように思われますが、演奏する側から考えるとピッチやリズムの違いが誰にでもわかることであり案外難しいとも言えます。またリズムのグルーヴ感(例えばロックやジャズのような)もとても大切です。

このような実験をさせていただいて感謝しています。
尚タイトルは鉄道の単線の意味からとっています。

(久石譲)

(楽曲解説:CDライナーノーツより)

 

 

 

 

久石譲による新作書き下ろし委嘱作品。吹奏楽作品としては「Runner of the Spirit」(箱根駅伝テーマ曲)以来の2作品目となる。

 

 

2015.8追記

久石譲オリジナルアルバム『Minima_Rhythm 2 ミニマリズム 2』に、「Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion」として収録された。タイトルとおり[サクソフォン四重奏と打楽器版]での編成として再構成されている。自身のコンサートでもプログラムされ、スコアも販売されている。

 

 

バンド維新2015 ウィンドアンサンブルの現在

01. 前田憲男: 花のワルツ~組曲「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)
02. ボブ佐久間: Selection from“THE EPITOME”for Wind Orchestra
03. 久石譲: Single Track Music 1
04. 猿谷紀郎: Dawn Pink 2
05. 三宅一徳: Dance EGO-lution
06. 北爪道夫: リズムクロス
07. 真島俊夫: 月山 -白き山-
08. 中川英二郎: Field of Clouds

演奏:航空自衛隊 航空中央音楽隊
指揮:水科克夫(4,5,7,8)、前田憲男(1)、ボブ佐久間(2)、北爪道夫(3,6)
ソロ・トロンボーン:中川英一郎(8)
録音:2014年11月26日&27日 ひの煉瓦ホール

 

Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』

EXILE ATUSHI & 久石譲 懺悔 DVD付

2013年10月16日 CDS発売
CD+DVD RZCD-59456/B
CD RZCD-59457

 

日本テレビ開局60年 特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」
東京国立博物館 平成館 特別展示室 2013年10月8日(火) ~ 2013年12月1日(日)

テーマソング「懺悔」 作詞/歌:EXILE ATSUSHI 作曲/編曲:久石譲

 

 

新しい試みとして「弦楽四重奏がふたつ」という編成。コントラバスを中央にその両サイドに弦楽四重奏が対を成すように配置、低音を中心に高音楽器へ広がっていくという扇型、ふたつの弦楽四重奏を混在させるという試み。

第一ヴァイオリン(左)、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス(中央)、チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリン、第一ヴァイオリン(右)。この楽器編成で、中央のコントラバスを要に扇型にアーチを描いた配置。

「それぞれの弦楽四重奏だけでも音楽ができ、またそのふたつを対立されることで別の要素が生まれたり、というのがこの「弦楽四重奏がふたつ」という試みの狙い」と久石譲も語っている。そのふたつの弦楽四重奏をつなぐように、久石譲のピアノとハープが音楽世界に深みを持たせている。

時代を超えた芸術、日本の美を感じることができる、美しくも儚さの漂う叙情的な楽曲。ふたつの弦楽四重奏によるアコスティックな澄んだ音色と、呼吸しあうかのようなかけいあい。まるで「あうんの呼吸」という日本文化を象徴しているようでもあり、光と闇、希望と狂気、善と悪、過去と未来、西洋と東洋、文化と文明、対極する世界をものみ込んでいく。

官能的な旋律はクライマックスへと昇天していく。「太王四神記」や「女信長」にもある異国時代劇のような世界。

西洋の楽器を使い、古典・バロックより定着している楽器編成 弦楽四重奏、一方で日本古来の楽器、和楽器は登場しない。にもかかわらずその響きに「日本の和」を感じさせるのは弦の巧みな響き。

 

プロモーションビデオでは、京都の「東福寺 三解脱門」「大覚寺 石舞台」「伏見稲荷大社」など歴史的に貴重が場所での撮影が行われている。

 

 

2019.4.26 追記

『TRADITIONAL BEST / EXILE ATSUSHI』CDライナーノーツより

Word:ATSUSHI
Music, Arranged & Produced by Joe Hisaishi

Piano & Conducted by Joe Hisaishi
Performed by
1st Quartet:Yu Manabe, Masahiko Todo, Amiko Watabe, Masutami Endo
2nd Quartet:Tomomi Tokunaga, Naomi Urushibara, Hyojin Kim, Tomoki Tai
Contrabass:Jun Saito
Harp:Tomoyuki Asakawa
Instruments Recording & Mixing Engineer:Hiroyuki Akita
Vocal Recorded by Naoki Kakuta at avex studio
Manipulator:Yasuhiro Maeda (Wonder City Inc.)
Instruments Recorded & Mixed at Bunkamura Studio

 

(Music Video)

Special Thanks:
アンジェリカ・ノートルダム
大仙公園 日本庭園
大本山 東福寺
旧嵯峨御所 大覚寺門跡
伏見稲荷大社

 

 

 

EXILE ATUSHI & 久石譲 懺悔 DVD付

 

EXILE ATSUSHI 久石譲 懺悔 通常盤

1. 懺悔
2. 赤とんぼ
3. 懺悔 (Instrumental)
4. 赤とんぼ (Instrumental)

【CD+DVD盤のみ】 Disc.2 PV DVD
1. 懺悔 (Video Clip)

「懺悔」
Music, Arranged & Produced by Joe Hisaishi
Piano & Conducted by Joe Hisaishi
Performed by 1st Quartet/2nd Quartete/Contrabass/Harp
Instruments Recorded & Mixed at Bunkamura Studio

 

Disc. 久石譲 『イザベラ・バードの日本紀行』 *Unreleased

2013年10月1日 ラジオ放送

 

2013年10月1日~10月11日
ラジオ番組 J-WAVE 25th Anniversary Special
『UNBEATEN TRUCKS IN JAPAN イザベラ・バードの日本紀行』
企画・構成・演出・ナビゲーター:三谷幸喜 朗読:松たか子 音楽:久石譲

 

 

ピアノとヴァイオリンが織りなすクラシカルな音楽世界。明治維新、イギリス人、女性旅行作家、こういった時代背景。高貴で上品なタッチであり、軽やかでもあり優美さもあり、新しい時代の幕開けと、女性の社会的進出の加速も感じさせる曲調。

テーマ曲はピアノとヴァイオリンが跳ねるように響く。ヨーロッパな香り、女性イギリス人の主人公を表現しているかと思えば、明治時代という時代のうねりも顔を覗かせる。テーマ曲だけでもオープニングとエンディングで流れたメインテーマと、物語のなかでのヴァイオリンのソロ、そしてピアノとヴァイオリンがよりゆったりと優雅にアレンジされた、少なくとも3つのヴァリエーションは確認できた。

その他ストーリにそって、テーマ曲以外のシーン音楽も登場する。アイリッシュな旋律もあり、シンプルながらも躍動感や臨場感も感じさせる、イギリスと日本の文化が絡み合っているよう。

テーマ曲、およびテーマ曲のヴァイオリン・ソロ、テーマ曲の別アレンジ・ヴァージョン。シーン音楽も少なくとも3-4曲登場している。

全編にわたりピアノとヴァイオリンのみというシンプルなアコースティック構成。時に優雅に歌い、時に弾むように、時に激しいパッションを表現したピアノとヴァイオリン。ラジオ物語らしい心地のよいゆったりとした調べ。日曜日の昼下がりにとても似合う。叙情的にもなりすぎず、幾学的でもない、まさにクラシカルな室内音楽のような音楽世界。

ちなみに、この作品でのピアノ奏者は久石譲ではない。おそらくクラシック専門のピアノ奏者であり、久石譲の持ち味とはまた違った、この作品らしいクラシカルな規則正しい演奏が上品さを引き立てている。

クラシカルな響きな時代を問わず普遍的であり、聴く人の年齢によっても味わいや深みも変わって感じられる、成熟していく大人な香りのする作品。このような小品集を日常生活のなかで、ほんのひとときでも非日常な時間を体感できるならば、それはすごく価値のある尊い作品だと思う。

 

楽曲情報
・イザベラのテーマ
・MOUNTAIN HUT

 

 

 

Disc. 久石譲 『表現運動・創作ダンス いきいき動けるテーマ集』

2013年2月27日 CD発売 COCE-37830

 

授業で使えるテーマ別ダンス曲集!

2012年度中学校ダンス必修化で注目される「ダンス」、ダンスはHIPHOPだけをやるのではなく、「創作ダンス」「現代的リズムのダンス」「フォークダンス」3領域で授業が進んでいきます。このCDは「創作ダンス」「表現活動」に絞り、各テーマに合わせて、ダンス授業に活用できる内容となっています。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

※本CDは、1989年発売の「あなたの名場面を演出する効果音楽集 ミュージック・エフェクト・コレクション①~⑩」(監修・構成・解説:羽仁進/音楽:久石譲/演奏:コロムビア・オーケストラ)から、表現運動・創作ダンスのために曲を選択して、再構成したものです。

(CDライナーノーツより)

 

 

オリジナル盤は1978年発売のLPシリーズ「効果音楽ライブラリー ①~⑩」。1989年発売のCDはこれを8cmCD化したもの。

 

 

 

本作CDライナーノーツには、1曲ごとに曲に合わせた動きのヒントの解説(監修者)が掲載されている。

 

 

◆愉快な歩み、ゆっくりテンポ
1.たのしい集い
2.野山を行く
3.かわいい!
4.花のワルツ
◆ 軽快な様子、跳ねるように走る
5.若い喜び
6.さっそうと行く
7.アクションのテーマ
8.アクションのエンディング
9.暑い夏
10.銀世界
11.追跡
◆前向き、希望、展望
12.優しい少女
13.スポーツの喜び
14.サンバ
15.雄大な風景
16.美しい風景
◆ 不気味、ナゾ
17.神秘的な風景
18.あら不思議
19.怪しいものが来る
◆澄んだ時間の経過・時を忘れる熱中
20.愛のテーマ
21.愛のエンディング
22.誠実に
◆やすらぎ、眠りにつく
23.おやすみなさい
24.想い出
25.影の世界
◆和風、懐かしさ、郷愁
26.古都の場景
27.わらべ唄によせて
28.心やすらぐ時
29.なつかしいおじいさん
30.民話のテーマ
◆野生、激しいリズム
31.原始リズム 1
32.原始リズム 2
33.原始リズム 3
◆自然の広がりに入る、遥かかなた
34.宇宙音 1
35.宇宙音 2
36.宇宙音 3
◆暗い空間に潜る、何か湧き上がる
37.地底音
38.水中音 1
39.水中音 2
40.特殊音

 

Disc. 久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 4 』

JOE HISAISHI CLASSICS vol.4

2011年9月7日 CD発売 WRCT-2004

 

「久石譲 クラシックス・シリーズ」第4弾

生命のリズム、あふれるエネルギー、今ここに「運命」の扉が開かれる!

 

 

久石さんが指揮したベートーヴェンと藤澤守作品について

2011年2月11日、ある演奏会で偶然姿をお見かけした久石さんから、のちに《5th Dimension》と名付けられることになる新作の構想を伺った。「久石譲 Classics Vol.3」に《運命》がプログラミングされていることから、おそらく《運命》のリズム構造を土台にした作品になるだろう、というお話に僕はとても興奮し、4月の世界初演を心待ちにしていた。そのちょうど1ヶ月後、東日本大震災が日本を襲った──。

そして4月9日、久石さんは予定通り演奏会を開催し、《5th Dimension》とベートーヴェンの交響曲を指揮した。いつまた起こるやも知れぬ余震の恐怖。計画停電と節電と原発事故を口実に、文字通り灯火管制を敷いたように演奏会をキャンセルし続ける首都圏の音楽界。そうした異様の状況下でも──いや、そういう状況だからこそ──音楽家は音楽家としての責務を果たすべき、というのが久石さんの考えだった。その強い意志は、ベートーヴェンの書いた絶対音楽(Absolute Music)の楽譜の能う限り忠実たらんとした、久石さんの指揮にも色濃く反映している。

絶対音楽とは、久石さんが普段手がけているエンタテインメント音楽と異なり、ある特定のドラマや情景を標題的に表現したものではない。音楽の論理そのものに美を求め、価値を見出す音楽である。その論理とは、本盤に収められたベートーヴェンの交響曲の場合、粘り強く繰り返されていくリズムの集積体だ。《運命》の全曲にちりばめられた「ンタタタ・ター」の運命リズム。あるいは《第7番》第1楽章に聴かれる、「タータタ・タータタ」の付点リズム。それらひとつひとつの”小石”がコツコツと積み上げられた結果、最終的に築き上げられる大伽藍が、すなわちベートーヴェンの絶対音楽なのである。久石さんは、そのリズムの”小石”をどれひとつも疎かにせず、また、積み重ねの過程から注意を逸らすような恣意的なテンポ設定をとることもなく、忍耐強く丁寧に鳴らしていく。当然だろう。久石さんが長年手がけてきたミニマル・ミュージックは、何にも増してリズムの反復を大切に扱い、そこから生まれる”生命”の萌芽をムクワジュ(タマリンド)の大樹にまで育て上げていく音楽である。その成長の過程を、久石さんはベートーヴェンの絶対音楽の論理の中にも見出しているのだ。繰り返すが、絶対音楽は何か特定の事象や感情を具体的に表現したものではない。しかし、久石さんはベートーヴェンの絶対音楽の論理に徹底的にこだわることで、これからの復興における日本人の”精神”の在り方までも示唆し得るということを、逆説的に表現したのである。

その久石さんが本名の藤澤守名義で作曲した絶対音楽《5th Dimension》は、これまで久石さんが書いたミニマル・ミュージックを遥かに凌ぐ凝縮度をもって書かれた作品だった。かつてシェーンベルクがウェーベルンを評した言葉「このような集中力は、むやみに愚痴を口にしないような精神においてのみ、見出し得る」を彷彿とさせる凝縮度。その凝縮度こそが、実はベートーヴェンが「ンタタタ・ター」のリズムに仮託した《運命》の”精神”に他ならないのだ。

前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(CDライナーノーツより)

 

 

藤澤守/フィフスディメンション

今回の”久石譲 Classics Vol.3”でベートーヴェンを演奏することが決まり、ここで発表する新曲は何にしようかと考えたとき、やはりベートーヴェンをベースにしたミニマル曲にしようと思った。

つい先日、知人からジョン・アダムズという僕と同じミニマルのスタイルで管弦楽曲もたくさん書いているアメリカの作曲家がベートーヴェンをモチーフにした新作を発表すると聞いてすごく驚いた。時代の先端にいる世界を代表する作曲家が偶然にも同じ題材のミニマル作品を作ろうとしていたことがとても嬉しかった反面、とてつもなく大きなプレシャーにもなった。これは相当頑張らないといけないぞ、と。

僕はまず、ベートーヴェンの作品は非常にシステマティックに作られているので、ロマン派の情緒的なものや情景描写といった感性の部分よりもその構築性を題材にすることを最初のアイデアとした。しかし、何かのフレーズを選んでミニマル的に展開していくというにはあまりに個性が強過ぎる。なかなかアイデアと現実を一致させることが出来ずにいたのですが、それでもやはり自分の中で圧倒的にインパクトがあったのは、あまりにも有名過ぎるあの「運命」だったので、これを題材にしようと決心した。

次に、第5番の「5」という数字をキーワードに、全体を5つのパートに分けた5部構成にしようと。そこから試行錯誤を繰り返し、スケッチを書き足していく中で、コラージュの手法を用いながら、この曲の持つリズム、調性、音列の3つの要素を使うことを考えた。ところが、これらがなかなか有機的に結合しない。一体何が出来上がるのか全く予想がつかなかったけど、結果的にそれらを成立させたのは他でもない、あの「運命」のリズムだった。

それから、ベートーヴェンにはものすごく強力な構成美がある反面、非常に強いエモーショナルな部分があるということ。感情だけに流されるでもなく、論理的な理性の構造だけでもない。そこが成り立っているという次元がベートーヴェンの凄まじいところで、人間が破壊されてしまうかもしれないギリギリのところで作っている。自分にとっても、エモーショナルな部分と論理性をどれ程までに高く激しいレベルでぶつけ合えるかがテーマになった。そういったせめぎ合いをしながら作曲している最中に今回の震災があったので、それはやはり大きく影響している。より感情的になっているというか、論理性の部分はもう破たんしてもいいのではないかというまでに。音が持っているエネルギーや運動性といった瞬間的にその曲が要求していく自然な方向へ自分も一緒に行ってしまおうと思ったわけである。

あと、現代の交響楽曲における打楽器、特に僕の場合はミニマル的要素となるハープ、グロッケン、マリンバ、チェレスタといった辺りは欠かせないんだけど、今回はベートーヴェンの編成に準じるということで打楽器・鍵盤楽器類は一切使わず、なんとティンパニだけ。参った! という感じで、この禁じ手は堪えましたね。一番の得意技を使えないってことだから。

名義を本名の藤澤守にした理由は、作品を書く時にどうしても久石譲としてエンタテインメント音楽を作っていることを引きずってしまう、だから今回はそれをはっきりと「違う」と。もちろん同じ一人の人間だから別人格になるわけじゃないけど、聴いてくれる人を大事にし過ぎて言いたいことを言い切れなかった分、藤澤守でやるからにはまず作品をどう作るかということに集中し、そこに音楽がるならその音楽が求めることをきちんと形にしていこうという、自分の中での区切りとして。

結果的には、今まで作ってきた中で一番激しい作品になったのではないかと思う。出来上がったばかりでまだ音を出してみないとわからないけれど、とにかくチャレンジした。エンディングにかけて作り込んでいったところはやはり今の状況ととてもリンクしている気がするのでその辺りを聴いていただきたいし、もしかしたら半分以上の観客が受け入れないかもしれない、という覚悟もある。それでも今この時期だから、自分のフィルターを通して発信された音を作曲家として真摯に受け止め、自分に嘘がないように作ったのは事実、かな。

2011年4月 久石譲 談

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 作品67 《運命》

実は、交響曲第5番が休符で始まることはご存知だろうか。強拍(頭)におかれた休符で瞬時に溜められたエネルギーが、3音の連打と3度の下行ではじけるように解放される。いきなりユニゾンで「ンタタタター、ンタタタター」とくる衝撃的な開始はあまりにも有名だが、このような不安定な始まり方はまだ当時の常識にはなかった。まとまった旋律ではなく断片的な動機が提示され、その「運命動機」は第1楽章内だけで何百回も徹底的に使われ、さらには全楽章において重要なファクターとして用いられる。結果、交響曲は初めて全楽章を有機的に統合することに成功したのである。交響曲様式史上の一大転換点となる革新とも言えよう。

作品の愛称「運命」は、晩年の秘書アントン・シンドラーのベートーヴェン伝に由来する。ベートーヴェンは曲の冒頭について、「斯くの如く運命は戸をたたく」と彼に説明したというのである。一般にシンドラーの記述はそのまま信頼することはできないのだが、これほどまでに広く受け入れられてきた逸話も稀だろう。ただし、日本以外ではそれほど当たり前に「運命」とは呼ばれていない。

1804年頃よりスケッチを開始。1808年12月22日、アン・デア・ヴィーン劇場で行われたベートーヴェン演奏会にて、作曲家自身の指揮により「第6番」として演奏された。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ(速く活発に)ハ短調 2/4拍子 ソナタ形式
交響曲主題としては前代未聞の動機によって開始される。この動機が直接間接的に後続楽章にも用いられる。第2主題部は古典的な定石通りの平行長調をとるが、この主題部の引き金になっているのも「運命動機」である。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート(動きをつけて歩くような速さで)変イ長調 3/8拍子
アダージョではなく動きのあるアンダンテを設定しているのは、この楽章が歌謡三部形式による抒情楽章ではなく、変奏技法によって展開されるソナタ形式をとっているからでもあろう。低弦部に「運命動機」のリズム・ヴァリアンテが置かれている。

第3楽章 アレグロ(快速に、急速に)ハ短調 3/4拍子
終楽章への移行楽段を末尾に備えた複合三部形式によるスケルツォ楽章となっている。チェロとコントラバスの独立的な楽器用法がひとつの理想的頂点に達している。また、4楽章へ接続する長大なクレッシェンドも当時としては異例な用法であった。「運命動機」が楽章を通していたる所に聴かれる。

第4楽章 アレグロ(快速に、急速に)ハ長調 4/4拍子
確かに勝利を示すかのような力強く明るい行進曲調の主題呈示に始まる。ピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンがこの楽章の中で初めて登場してくる。伝統的な交響曲において珍しい楽器の参入は、フランス革命音楽(軍楽、救出オペラ)からの影響も考えられる。これらの楽器は交響曲ではこの作品が初めてではないが、この作品をきっかけとして、19世紀の交響曲で頻繁に使われるようになった。最も古い楽器の一つであるトロンボーンは古典派時代までは専ら教会所属の神聖な楽器として宗教音楽そして例外的に劇音楽だけに使われていたが、ベートーヴェンは大胆にもこの楽器を世俗音楽である交響曲の中に用いたのである。

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 作品92

第5番・第6番の完成からベートーヴェンが次の交響曲を完成させるまでに4年ほど経っている。ナポレオン率いるフランス軍の第二次ウィーン占領などの影響も考えられるが、1800年に第1番を完成させて以来ほとんど毎年のように交響曲の創作を続けてきたベートーヴェンが、1809年と1810年の2年間はスケッチさえも書かず全くの空白期を迎えていた。しかし、創造力が枯渇したのではなく、新しい語法の可能性について模索していたのである。

短い動機を展開して全曲を有機的に統合するという手法を極めたベートーヴェンは、もう一度「旋律性」を見直し、主題をある程度まとまったカンタービレな旋律形として維持することを試みる。一方で、交響曲としての力動性や構築性そして何よりも重要な緊張感を得るため「リズム動機法」を用いた。この楽曲は、ワーグナーが「舞踏のアポテオーゼ(神格化)」と評したように、全曲にわたってリズムが主要要素で、緩徐楽章さえも比較的テンポが速くリズミカルであり、楽章ごとに特徴ある魅力的なリズムで構成されている。

献呈はフリース伯に。また、ピアノ独奏用編曲がロシア皇后に捧げられている。初演は1813年12月8日にハーナウ戦役に従軍した傷病兵のための義援金調達慈善演奏会という名目でウィーン大学講堂にて行われた。

第1楽章 ポコ・ソステヌート(やや音を保って)4/4拍子~ヴィヴァーチェ(活発に速く)イ長調 6/8拍子
序奏付きのソナタ形式。序奏の終盤からヴィヴァーチェ6/8拍子のリズム動機を暗示的に示し、木管楽器が反復するリズム動機の中からフルートのソロによって第1主題が抜け出してくる。繰り返し反復される付点のリズム動機が、楽章内を通して支配する。

第2楽章 アレグレット(やや速く)イ短調 2/4拍子
大きな複合三部形式。変奏曲やフガートの技法なども加えられている。美しく和声的な第1主題も、葬送風の行進曲リズムの反復により構築されている。中間部はイ長調に転調。その性格は明るくなるも、低弦などによってリズム動機の断片は持続され、そのまま再現部に継続される。

第3楽章 プレスト-アッサイ・メノ・プレスト(急速に-より急速に)ヘ長調 3/4拍子
律動的で快活なスケルツォと、アッサイ・メノ・プレスト(ニ長調3/4拍子)のトリオを持つ。トリオはオーストリアに伝わる巡礼歌からの引用という。トリオは2度現れ、A-B-A-B-Aのロンド形式に近い。このトリオをニ短調で書くことによって、主調イ長調終楽章への伏線を作っている。

第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ(快活に速く)イ長調 2/4拍子
熱狂的なフィナーレ。強烈なリズム打撃による導入を受けて、アイルランド民謡から採られたという第1主題が呈示される。ロンド的性格を持つソナタ形式。コーダ部ではバス・オスティナート上に凄絶なまでの緊迫感が築かれ、やはり冒頭で呈示したリズム動機で饗宴を締めくくる。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

2014年、台湾コンサートにて改訂初演された。

「自作の《フィフス・ディメンション》は、ベートーヴェンの《運命》のリズム動機(有名なダダダダー)と音程を音列化し、ミニマル楽曲として作ろうとしたのだが、作曲していた最中に東日本大震災がおこり、それが影響したのか激しい不協和音とエモーショナルなリズムに満ちていて演奏がとても難しい。今回はさらに手を加えてより完成度を上げたのだが、難易度も計り知れないほど上がった。指揮していた僕が「この作曲家だけはやりたくない!」と何度も思った、本当に。」

 

 

 

(1)は、久石譲が本名の藤澤守名義で作曲した「5th  Dimension」。ベートーヴェンの第5番『運命』をベースに11分に及ぶミニマル・ミュージックを展開。エンターテイメント音楽の久石譲とは一線を画し、求められる音楽ではなく、純粋な作曲家として、絶対音楽・現代音楽を発表するかたちでの本名名義。

その作曲中であった2011年3月11日に東日本大震災が日本を襲い、それでもなお同年4月9日の演奏会にて世界初演。震災が大きく作品に影響しているとも本人は語っている。

 

 

 

JOE HISAISHI CLASSICS vol.4

Mamoru Fujisawa 5th Dimension
1. 藤澤守 / フィフス ディメンション
Beethoven Symphony No.5 in C minor Op.67
ベートーヴェン / 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
2. I.ALLEGRO CON BRIO
3. II.ANDANTE CON MOTO
4. III.ALLEGRO
5. IV.ALLEGRO
Beethoven Symphony No.7 in A major Op.92
ベートーヴェン / 交響曲第7番 イ長調 作品92
6. I.POCO SOSTENUTO -VIVACE
7. II.ALLEGRETTO
8. III.PRESTO- ASSAI MENO PRESTO
9. IV.ALLEGRO CON BRIO

指揮:久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
録音:2011年4月9日 東京・サントリーホール