Blog. 「レコード芸術 2018年9月号」ベートーヴェン:交響曲第7番&第8番 久石譲 NCO 特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽雑誌「レコード芸術 2018年9月号 Vol.67 No.816」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第7番 & 第8番 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。特選盤、楽器編成について、ヴァイオリンの両翼配置、舞台下手奥の低弦コントラバスという古典配置(対向配置)、その意図や効果、久石譲版のこだわりを浮き立たせる評になっています。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 特選盤
ベートーヴェン:交響曲第7番・第8番 /久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ

 

推薦 金子建志
左に3人のコントラバス、8人ずつのヴァイオリンを対向に置いた少数精鋭の集団を「ベートーヴェンはロック」と表明している久石が振ればこうなる、という予想どおりのライヴ。特に、ジャズ的オフビートの先駆になる第7番は臨界を越えている。その典型が第4楽章冒頭のリズム主題。16分音符をここまで鋭く詰めるには、指揮者の解釈に対する感性的な共感と、集団としての周知徹底がないと不可能だ。トゥッティを牽引しているのがティンパニ。第1楽章や第3楽章のトゥッティの頂点は(この小編成だと)当然にしても、例えば第4楽章の106小節 [1分32秒~] のsfの嵐では、盛り上げた後、瞬時に黒子にまわり、要所だけを強打していることが分かる。

リズムも尖鋭的で、ミニマルみたいに機械的な反復を徹底させた第1楽章のコーダは、ウィーンなどのヨーロッパ的な舞曲のリズム感とは明らかに違う。スケルツォ楽章のトリオで、バッカス的な頂点を築くトランペットとティンパニ [3分12秒~] は、アウフタクトの8分音符にアクセントが移動(特に2回目以降)。第8番の第1楽章70小節 [1分09秒~] もヘミオラよりも、2拍子が割り込んだデジタルの感覚だ。

構造的要所で思い切って弛める自在性(第8番第2楽章の [1分45秒~] )や、作曲家らしい低音部重視(第7番第1楽章コーダ [12分12秒~]、第4楽章の [7分07秒~] )も、味の濃さに繋がっている。

 

推薦 満津岡信育
このコンビによるベートーヴェンの交響曲全集の第3弾。”作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン”という久石のコンセプトは、当ディスクにおいても、ますます磨きがかかり、冴えわたっている。両曲ともにテンポ設定は速く、ヴァイオリンを両翼に、コントラバスを舞台下手奥に配した古典配置から繰り出される演奏は、痛快そのものだ。もっとも目立つ例は、第7番終楽章の11小節目の第2ヴァイオリンとヴィオラの扱いで、猛烈なビート感覚で強奏させることによって、電撃的な効果を生み出している。そのほかの楽章も、8型の弦楽セクションが、ここぞとばかりにダイナミックに駆けめぐる一方で、荒川洋、荒絵理子といった名うての管楽器奏者たちが、絶妙な対話を繰り広げている点も魅力的。躍動感に加え、しなやかなフレージングが保たれている。

第8番では、昔のドイツ流儀の弦楽主体のバランス感とはまったく無縁で、各声部が互いに拮抗しつつ、破天荒なパワーを生み出しているのが印象的。個々が巧いだけではなく、指揮者とメンバーが一心同体となって、音楽を愉しんでいることが伝わってくる。ベートーヴェンの豪快なユーモアも活かされている。もちろん、ピリオド系による成果を踏まえているとはいえ、久石とナガノ・チェンバー・オーケストラは、なにがしの模倣ではなく、独自の世界を鮮烈に築き上げていると言えるだろう。

 

[録音評] 神埼一雄
長野市芸術館での2018年2月12日のライヴ。オーケストラは長い残響を伴うが、その響きに華やかな色彩感が乗っているのが特徴的であり、なかなか強い印象を残す。ことに高域にそうした傾向が強い。残響は長めなのも特徴で、これはオーケストラ音場の展開に豊かなイメージを生み、ことに奥行き感の深さを醸成するように働いている。華やかな色彩感が印象に残る。

(レコード芸術 2018年9月号 Vol.67 No.816より)

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2018年8月号 Vol.67 No.815」では、いち早く「New Disc Collection」のコーナーでも紹介されています。

 

「ロックのように」進撃する久石譲のベートーヴェン第3弾

次は、チャレンジ精神に溢れたベートーヴェン演奏を聴かせている久石譲指揮ナガノ・チェンバー・オーケストラによる交響曲全曲演奏をライヴ録音したシリーズの第3弾となる第7番と第8番(今年2月12日、長野市芸術館で収録)。

これまでの第1&3番、第2&5番を聴いてきて、今回の2曲がこのコンビに最も適した作品ではと思っていたが、予想にたがわぬ聴きものだった。第7番では「神化したリズム」に新鮮な感覚で挑み、譬えれば、陸上100メートル競走の決勝を見るような疾走に興奮を覚えたが、多彩で豊かな曲想を持つ第8番で披露された沸き立つような歌とリズムの饗宴により魅了された。ナガノ・チェンバー管の若き俊才たちは相変わらず巧者だし、演奏を重ねるたびに、久石がベートーヴェンへの理解と共感を強めているように感じられるのが、嬉しく頼もしい。

(レコード芸術 2018年8月号 Vol.67 No.815より)

 

 

 

 

 

 

 

 

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