Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第2番&第5番「運命」』

2018年2月21日 CD発売

精鋭メンバーが集結した夢のオーケストラ! ベートーヴェンはロックだ!!

長野市芸術館を本拠地として結成したオーケストラ「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」は、音楽監督久石譲の呼び掛けのもと、日本のトッププレーヤーが結集してスタートしました。当ベートーヴェン・ツィクルスは、”音楽史の頂点に位置する作品のひとつ”と久石がこよなく愛する「第九」に至るまで、2年で全集完成を目指します。第1弾アルバムでは、作曲家ならではの視点で分析し”例えればロックのように”という、かつてない現代的なアプローチが好評を博しました。今回も高い演奏技術とアンサンブルと、圧倒的な表現力で、さらに進化したベートーヴェンを聴かせます。

(CD帯より)

 

 

エネルギーと駆動力に充ちたベートーヴェン 柴田克彦

本作は、第1番&第3番「英雄」に続く、久石譲 指揮/ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)のベートーヴェン交響曲シリーズのCD第2弾。NCOは、2016年に開館した長野市芸術館を本拠とする楽団で、長野県出身の久石は、同ホールの芸術監督とNCOの音楽監督を務めている。メンバーは在京オーケストラの首席奏者を多く含む国内外の楽団やフリーの奏者など、若い世代を中心とした名手たち。彼らがホール開館直後から行っている「ベートーヴェン 交響曲全曲演奏会」(全7回)は、2016年7月の第1番に始まり、本作の第2番は2016年7月17日の第2回定期、第5番「運命」は2017年7月15日の第4回定期のライヴ録音である。

当シリーズにおける久石のコンセプトは、「作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン」、「往年のロマンティックな表現もピリオド楽器の演奏も、ロックやポップスも経た上で、さらに先へと向うベートーヴェン」であり、演奏もそれを具現している。そしてもう1つ見逃せないのが、NCOの表現意欲の強さだ。

コンサートマスターの近藤薫(東京フィルのコンサートマスターでもある)に話を聞いた際、彼は「クラシックは、伝統と確信が両立しなければいけないと思う。その点NCOは、ベテランから伝統を教わると同時に、少し何かが見えて次の展開に胸躍らせている30代が中心。それゆえ両方を併せもち、誰もがそうした立場を楽しんでいる。いわば演奏家ではなう音楽家の集合体。多様性があって、何にもでなれる。NCOの特徴は、この”皆が生きている”ところではないか」との旨を語っていた。

本作はまさに、久石のアプローチと、その意を自己表現に昇華させ得る”音楽家たち”のパフォーマンスが融合した、きわめて”Live”なベートーヴェンである。

ここでは番号順に特徴をみていこう。

第2番は、緩やかな序奏からリズムとアタックや細かな動きが鮮明に打ち出され、すでにムーヴしている。主部に入ると、弦楽器の生き生きとした刻みが推進力を倍加させ、絶え間なく前進を続ける。木管楽器の瑞々しい表現やティンパニの激しい打ち込みも効果的。これは本作の2曲全体に亘る特徴であり、前記の表現意欲の具体例でもある。第2楽章も緩徐楽章といえど動きが躍動し、それでいてしなやかな歌が流れていく、そのバランスが絶妙だ。第3楽章もリズムと音の動きが明確で、第4楽章は元々動的な音楽がより鮮烈に表出される。特に後半のダイナミズムは圧巻。この演奏を聴くと、まだ初期に属する第2番が、第3番に繋がる英雄様式と、第5番に通じる激しさを内包していることがよく分かる。

第5番は、第2番より熟達した中期の傑作であり、しかも1年後の演奏だ。にもかかわらず、ここで聴く両曲に質的な違和感が全くない。これは、当シリーズのコンセプトの揺るぎなさを証明している。

第5番は、当然のことながら前進性抜群で、テンポの速さが際立っている。だがそれは、メトロノームの指定に拠るものではなく、曲がもつ駆動力やエネルギーを表すための必然的な速さと言っていい。第1楽章は、動機の連鎖が生み出す活力や推進力が通常以上に強調される。第2楽章も速いテンポで弛緩なく進行。第3楽章がこれほど生気に富んでいるのも珍しい。そして第4楽章は圧倒的な勢いと力が横溢し、大管弦楽を凌ぐ迫力で突き進む音楽が、熱い感動を呼び起こす。久石は「巨大なオーケストラが戦艦やダンプカーだとすれば、NCOはモーターボートやスポーツカー」と語っていたが、この第5番は、まさしく強力なモーターボートで疾走するかのようだ。

ベートーヴェンの交響曲は1曲ごとに違った顔をもつ。それはむろん確かだが、当シリーズを聴くと、第1番や偶数番号の曲にも清新なパワーが通底し、どれもが”先へ先へと向っている”ことに気付かされる。やはりベートーヴェンは”ロックに通じる音楽”なのだ。

(しばた・かつひこ)

(CDライナーノーツより)

 

※諸石幸生氏による3ページにわたる曲目解説は割愛。詳細はCD盤にて。

 

 

極寒を吹き飛ばす久石譲のハレなベートーヴェン第2弾

今月の締めは、「ドラマ音楽の達人」久石譲が芸術監督を務める長野市芸術館をフランチャイズとしたナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェン/交響曲ツィクルスのライヴ録音シリーズの第2弾、第5&2番。デビュー盤の第1&3番については、本欄の昨年8月号で「勢いの勝った痛快な演奏」とご紹介したが、今回の2曲にも指揮者・久石が語る「例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで……」という基本姿勢が貫かれている。第1ヴァイオリン8の室内管編成の演奏は、すべての局面で陰もなく明快、シンプルな力感を添えながら超快速のテンポで運ばれる。ピリオドとモダンの要素を混合させながら、エッジを効かせた疾風怒濤のハレな表現は痛快すぎて、ベートーヴェン音楽の精神性などに思いを寄せる暇もないのだが、それはそれで心地よいのだ。

(「レコード芸術 2018年3月号 Vol.67 No.810」内 New Disc Collection項より)

 

 

 

 

[ベートーヴェン・ツィクルス第2弾]
ベートーヴェン:交響曲 第2番&第5番「運命」
久石譲(指揮)ナガノ・チェンバー・オーケストラ

ベートーヴェン
Ludwig Van Beethoven (1770 – 1827)

交響曲 第5番 ハ短調 作品67 「運命」
Symphony No.5 in C minor Op.67
1. 1 Allegro con brio
2. 2 Andante con moto
3. 3 Allegro
4. 4 Allegro

交響曲 第2番 ニ長調 作品36
Symphony No.2 in D major Op.36
5. 1 Adagio molto – Allegro con brio
6. 2 Larghetto
7. 3 Scherzo. Allegro
8. 4 Allegro molto

久石譲(指揮)
Joe Hisaishi (conductor)
ナガノ・チェンバー・オーケストラ
Nagano Chamber Orchestra

2016年7月17日(5.-8.)、2017年7月15日(1.-4.)
長野市芸術館 メインホールにてライヴ録音
Live Recording at Nagano City Arts Center Main Hall, 17 Jul. 2016 (5-8), 15 Jul. 2017 (1-4)

 

Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Nagano Chamber Orchestra
Concertmaster:Kaoru Kondo

Recording & Balance Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineers:Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo

and more…

 

コメントする/To Comment