Disc. 久石譲 『Untitled Music』 *Unreleased

2015年10月4日 TV初演

 

曲名:「Untitled Music」
作曲:久石譲
指揮:久石譲
ヴァイオリン:五嶋龍
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

 

 

世界一長寿のクラシック音楽番組『題名のない音楽会』(テレビ朝日系)。2015年秋、若き天才ヴァイオリニスト・五嶋龍さんを司会に迎え大胆リニューアルした。それにともない新テーマ曲「Untitled Music」を久石譲が書き下ろしている。

7月15日東京オペラシティでの公開収録にて、新司会者の五嶋龍による「題名のない音楽会」の初公開収録が行われ、作曲者である久石譲自らが指揮し日本フィルハーモニー交響楽団にて演奏された。記念すべきリニューアル第1回目(10月4日)にて放送。

番組内インタビューにて久石譲は、「伝統のあるクラシックの番組として、一番新しい才能の五嶋龍くんの強力な個性と、そのふたつを念頭において一生懸命書きました。」とコメントしている。

また演奏中のテロップ表示にて、【曲名は番組名から「題名のない音楽」。音楽会に向かうワクワク感を表現。】と紹介されている。

 

 

冒頭から華やかなオーケストラ・サウンドにて幕をあけ、ヴァイオリンの音色が心躍るように流れていく。クラシック音楽番組にふさわしい気品のある凛とした構成に、ヴァイオリンもバリエーションある奏法を駆使し、表情豊かな音色と響きで魅せる。

久石譲のミニマル・ミュージックをベースとした芸術性と、エンターテイメントで培われた大衆性、その両極性を凝縮させたような結晶化された作品である。近年の指揮活動によってさらに磨きかかったオーケストレーションと構成力によって、ヴァイオリンをいかに際立たせるか、そしてヴァイオリンという楽器の可能性を最大限に追求かつ表現した楽曲となっている。

高音域楽器のピッコロ、グロッケンシュピール、トライアングルなどを巧みにブレンドすることにより、キラキラと輝いた印象を受ける。高音域楽器の対比として、金管楽器をファンファーレ的に配置することで、格調高い華やかさがあり、ヴァイオリンの音域をとてもうまく浮き立たせている。と、個人的には感じます。また緻密でありながら余白のある音楽、主役を際立たせる巧みなオーケストレーションである。

いつもとは違うちょっとフォーマルな音楽会。いつもとは違うちょっとオシャレもして、今まで聴いたことがない音楽との出会いと体験に胸を踊らせて会場へと向かう。そんな心持ちを表現したような作品になっている。

テーマ曲としては約3分半の小品として完成されているが、ここからさらにヴァイオリン・コンチェルトとして発展させていってもおもしろそうな、そんな可能性を秘めた作品である。

 

番組オープニングでは、「Untitled Music」オープニング・パートが、番組エンディングでは同楽曲エンディング・パートがそれぞれ使用されている。これから番組の案内役として浸透していき、TVの向こう側の日常を華やかにしてくれるだろう。

披露された「Untitle Music」が久石譲コンサートで聴ける日はくるのか、久石譲 × 五嶋龍という夢のコラボレーションがCD化される日はくるのか、時間とともにこれからさらなる変化と進化を遂げていくであろうこの作品を、楽しみにその成長を見ていきたい。

 

 

2015.12 追記

久石:
「年によって比重が変わります。今年はどちらかというと、自分の作品が多いですね。でも、CMやゲーム音楽も作っていますね。あとは五嶋龍君が司会になった『題名のない音楽会』の新テーマ曲も書かせてもらいました。この「Untitled Music」という曲は自分でもすごく気に入っています。テーマ曲というだけでなく、作品としても聴いていただけると思うのですが、リズムが相当難しくて、絶対に自分では振りたくないなぁ(笑)と思ったくらい(実際は初回放送時に五嶋と共演)。でも、あの曲を書いたことで一つ吹っ切れたところがありました。」

Blog. 「月刊ぴあの 2015年12月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

2016.1 追記

2016年1月24日(日) 9:00-9:30 テレビ朝日系
「題名のない音楽会 -五嶋龍の音楽会-」

2015年10月番組リニューアル第1回にて発表された久石譲作曲「Untitle Music」も再びフルサイズにて放送される。

 

[五嶋龍 番組内インタビュー]

「(久石譲が)現代音楽というレッテルを貼って欲しくない、枠に入れて欲しくないとおっしゃっていた。リズムとハーモニー、そして音の並び方というのが非常にエッジー(流行の最先端)な音楽。前に進むような、音楽を過去から未来へ押していくようなイメージだと思います。」

 

[五嶋龍が語る「Untitled Music」 (演奏中画面テロップ表示)]

「冒頭からリズムが小節ごとに変わり、色々な進化を広げていくのがこの曲の特徴」

「『Untitled Music』とは『題名のない音楽』。これは無限の可能性があるというイメージにピッタリ」

「今 我々が新しい流行や新しい音楽を作っていると実感させてくれる楽曲」

「パターン化された音を繰り返す「ミニマルミュージック」も取り入れている」

 

題名のない音楽会 untitled music

 

 

2016.3 追記

2016年3月開催「久石譲&五嶋龍 シンフォニー・コンサート in 北京 / 上海」コンサート・ツアーにて、久石譲指揮、五嶋龍Vnによる「Untitled Music」が、中国にて5公演披露されている。

 

 

2016.6 追記

2016年6月5日TV番組「題名のない音楽会」にて、久石譲指揮、五嶋龍Vn、新日本フィルハーモニー交響楽団演奏にて、披露されている。リニューアル初回時の東京フィルハーモニー管弦楽団とはまた趣が異なり、ダイナミックで抑揚豊かな演奏となっている。「題名のない音楽会 久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち 前編/後編」というテーマで、2週連続でプログラムされた後編で披露されている。公開収録は4月25日。公開収録時には「Untitled Music」を録り直し、1回目の演奏に久石譲・五嶋龍のいずれかが満足できなかったのか、演奏後の短い会話を経て、その場ですぐに2回目の演奏となった。

 

(演奏中テロップ表示)

「ミニマルミュージックをヴァイオリン協奏曲のスタイルで表現した曲。」

 

 

2017.4 追記

五嶋龍から新司会者交代にともない、番組テーマ曲「Untitled Music」も3月をもって終了。今後は久石譲作品として発展していくのか、コンサートでプログラムされる機会が訪れるのか、五嶋龍との日本公演は実現するのか、いろいろな楽しみと可能性を秘めた作品であることに変わりはない。

 

 

題名のない音楽会 TOP

 

Disc. 久石譲 『Minima_Rhythm II ミニマリズム 2』

2015年8月5日 CD発売 UMCK-1518
2018年4月25日 LP発売 UMJK-9081/2

 

久石譲の真骨頂、ソリッドなサウンドで贈るミニマリズム・シリーズ第2弾。
”現代”(いま)を感じさせるアルバム、ついに登場。

ロンドン・シンフォニー・オーケストラとの『ミニマリズム』から6年ぶりのとなる本作は、よりソリッドで現代的なサウンドに生まれ変わった室内楽作品集。エッシャーのだまし絵からインスピレーションを得た「String Quartet No.1」や、マリンバ2台のための「Shaking Anxiety and Dreamy Globe」、すべて単音だけで構成された「Single Track Music 1」、そして戦後70周年を迎えたこの日本のために書かれた「祈りのうた for Piano」などを収録。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

久石譲 『Minima_Rhythm II』 に寄せて

”ミニマリズム” から ”アニマリズム” へ

「不協和音ばかりに偏重してしまった現代音楽の中でも、ミニマル・ミュージックには調性もリズムもあった。現代音楽が忘れてしまったのがリズムだったとするならば、それをミニマル・ミュージックは持っていた。(中略)もう一回、作品を書きたいという気持ちが強くなったとき、自分の原点であるミニマル・ミュージックから出発すること、同時に新しいリズムの構造を作ること、それが自分が辿るべき道であると確信した」。このように久石譲が宣言し、アルバム『Minima_Rhythm』(ミニマル・ミュージックのMinimalとリズムRhythmの造語)を発表したのは2009年のことであった。本盤『Minima_Rhythm II』は、前作から実に6年ぶりとなる続編だが、当然のことながら6年の間に久石の音楽はさらなる深化を遂げ、新しい方向を目指して現在進行形で深化を続けている。それがいったい何なのか、具体例を挙げてみたい。

本盤冒頭、ピアノソロによって収録された《祈りのうた》の最初のセクションを、久石はわずか6つの単音のモティーフで始める。天上からの呼びかけを思わせる「ド、ラー」という2音と、それに対する地上の応答のような「ミラドミー」の4音(音楽を少し勉強したリスナーなら、使われている「ラ・ド・ミ」が三和音だとすぐにわかるはずだ)。呼びかけと応答は、何度か繰り返されるうちに音程が変わったり、あるいは音符の数が足されていったりと、少しずつ変化を遂げていく。さらに、同じくピアノソロで演奏されている《WAVE》においては、「ラ・ド♯・ミ」という三和音から生まれた分散和音の波が、繰り返しを重ねながら少しずつ変化を遂げていく。この「少しずつ」という要素が、実はミニマル(最小限)ということに他ならない。

もしもリスナーが、同じ音形を機械的に繰り返していく音楽(いわゆるパターン・ミュージック)だけを「ミニマル・ミュージック」と考えておられるとしたら、《祈りのうた》や《WAVE》はそういう意味での「ミニマル・ミュージック」ではない。これら2曲で久石が重きを置いているのは、音の素材を最小限に限定し、その素材をあるシステムによって「少しずつ」発展させていく、そういう意味での「ミニマル」だ。筆者の知る限り、久石がここまで音の要素を禁欲的に限定して音楽を書いたことは、ほとんどなかったのはないかと思う。

急いで付け加えたいのは、この《祈りのうた》や《WAVE》のような作品は、あくまでも生身の人間が演奏してはじめて意味が生まれてくる音楽という点だ。つまり、漠然と流れる時間の中から《祈りのうた》という曲名に相応しいテンポ感を──広い意味での「リズム」と言っていいだろう──見つけ出し、もしくは《WAVE》という曲名に相応しい潮の満ち引きの「リズム」を見つけ出し、その結果、これ以上ありえないほどシンプルな音の動きに相応しい繊細な音色がピアノから紡ぎ出されることで、ようやく作曲意図が感じられるようになる。別の言い方をすれば、これは躍動感あふれる生命のリズムを持った人間でないと、演奏できない音楽なのだ。それは、本盤に収録された他の3曲についても共通して言える点である。筆者はそれを、ミニマリズムMinima_Rhythmから生まれたアニマリズムAnima_Rhythm──アニマはラテン語で「生命」「魂」の意味──の音楽と呼びたいのだ。

 

ミニマル・ミュージックからポストクラシカルへ

本盤は作曲家として、また演奏家としてミニマル・ミュージック(必ずしも自作に限らない)と積極的に関わり続けてきた久石の、現時点での最新活動報告的な意味合いも込められている。その意義を理解するためには、ミニマル・ミュージックの歴史についてある程度予備知識があったほうがよいと思うので、要点を掻い摘んで書いておこう。

広い意味でもミニマル・ミュージックは「曲の素材を最小限に限定した音楽」と説明されることが多いが、一般的には、1960年代に登場した4人のアメリカ人作曲家ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス(2015年現在、4人とも音楽活動を継続中)が、反復とズレを基に作り上げた音楽を指すことが多い(これら4人の音楽を、特に「アメリカン・ミニマル・ミュージック」と呼んで区別することがある)。一方、1970年代に入ると、旧ソ連政権下のエストニアやポーランドからも、やはり曲の素材を最小限に限定した音楽を書くアルヴォ・ペルトやヘンリク・グレツキのような作曲家が登場し始めた。この2人にイギリス人のジョン・タヴナーを加えた3人は、教会音楽と関係の深い音楽を多く書いていることから、現在では「ホーリー・ミニマリズム(聖なるミニマリズム)」と呼ばれている。これら7人をミニマル・ミュージックの第1世代の作曲家だとすると、それに続くジョン・アダムズ、マイケル・ナイマン、ルイ・アンドリーセンといった作曲家が第2世代ということになる(一時期、これらの作曲家の音楽は一括してポスト・ミニマリズムと呼ばれていた)。

第2世代よりやや若い世代に位置する久石は、学生時代に出会ったアメリカン・ミニマル・ミュージック(特にテリー・ライリー)に衝撃を受け、1981年作曲の《MKWAJU》や1985年作曲の《DA・MA・SHI・絵》(両曲の改訂版が『Minima_Rhythm』に収録されている)あたりまで、現代音楽作曲家としてミニマル・ミュージックを書いていた。ところが『風の谷のナウシカ』(84)以降、映画音楽を中心とするエンターテインメント側に活動の主軸が移ったため、たとえ本人が書きたくてもミニマルの新作を書く時間的・物理的余裕がまったくなくなってしまったのである。

この間、欧米ミニマル・ミュージックは先に述べたような作曲家を除くと、20世紀末まで後続の傑出した作曲家がなかなか芽を出さない状態が続いていた。この状況を、かつてフィリップ・グラスは「自分たちの名前があまりに大きくなり過ぎて、新人の出る余地がなくなってしまった」と筆者に説明していたが、そうした状況に大きな変化が見られるようになったのは、21世紀に入ってからである。具体的にはニコ・ミューリー、ガブリエル・プロコフィエフ、ブライス・デスナーといった若手作曲家がミニマルを基本としたクラシック作品を発表し、iTunes/You Tube世代のリスナーから大きな支持を獲得するようになったのだが、彼ら若手の音楽を総称して「ポストクラシカル」と呼ぶことが多い。

ポストクラシカルの作曲家たちに共通しているのは、ほぼ全員がミニマルの洗礼を例外なく受けていること、音楽大学などできちんとクラシックの教育を受けていること(つまりアレンジャーに頼らず自分でオーケストレーションが出来ること)、はじめはロックなりテクノなりのポップスフィールドで叩き上げられて才能を開花させていること、その後、改めてクラシックに戻って(ポップス的な感性を活かしながら)演奏会用作品を書いていること、という特徴である。察しのいいリスナーなら、そうした特徴が実は久石についてもそのまま当てはまることに気づくだろう。『風の谷のナウシカ』以降、四半世紀近くも現代音楽から遠ざかり、回り道をしてきたように思える久石だが、実際のところは誰よりも早くポストクラシカル的な道を歩み始めていたのだ。そうした意味において、2014年から久石が始めた『Music Future』というコンサートシリーズ──その第1回公演では本盤に収録された《String Quartet No.1》と《Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas》に加え、ペルト、グレツキ、ミューリーの作品も併せて演奏された──は、アメリカン・ミニマル・ミュージックからホーリー・ミニマリズムを経てポストクラシカルへと進化を続けている久石の軌跡そのものなのである。本盤に収録された5曲を注意深く聴いていくと、その軌跡──ミニマルからポストクラシカルに到る”単線の軌跡”と言い換えてもいい──から見えてくる、さまざまな風景が走馬灯のように流れていくのを確認できるはずだ。

 

躍動する生命(アニマ)のリズム

アルバム『ジブリ・ベスト・ストーリーズ』所収の拙稿にも少し書いたが、久石の音楽において、ミニマル的な表現は「根源的な生命(力)の存在」と結びつくことが多い。それはミニマル的な表現が、音楽の最も基本的な要素のひとつである「リズム」をどう捉えるか、という問題と深く結びついているからだ。音楽を時間芸術として見た場合、「リズム」「メロディ」「ハーモニー」「音色」という音楽の4大基本要素の中で最も重要なのは、言うまでもなく「リズム」である。リズムのない音楽、時間を感じさせない音楽は死に等しい。つまり「リズムが命」ということである。ミニマルは、そうした音楽の本質を書き手・聴き手の双方に意識化させる、文字通りの最小限の表現手段なのだ。そういうところから久石が音楽を始めている以上、彼の音楽にある種の強度──生命力の強さ、生命力の多様さ──がもたらされるのは、当然の結果と言えるだろう。

先に触れた《祈りのうた》や《WAVE》とは逆に、《String Quartet No.1》 《Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas》それに《Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion》には複雑な変拍子が用いられているが、久石の目的は何も作曲上・演奏上の超絶技巧的な凄さを開陳することではない。シンプルなフレーズがズレを見せ、変容を見せ、時にはまったく異なった相貌を見せることで、いかに多様な生命力を獲得し得るか。つまり「リズムの躍動=生命の躍動」を表現したいがために、そうした手法を用いているのである。必ずしも正確な喩えではないかもしれないが、たったひとつの細胞が増殖し、それが重なり集まることで組織が生まれ、器官が生まれ、総体としてひとつの生命が生まれていくダイナミックな過程を「生命の躍動」とするならば、久石の音楽はまさにそうした意味での「生命の躍動」を表現していると言えるだろう。

幸運なことに、筆者は《Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion》の録音リハーサルに居合わせることが出来たが、そこで間近に見たものは、久石の音楽が持つ「生命の躍動」に4人のサクソフォニストとパーカッショニストが文字通り「息を吹き込む」、崇高な誕生の瞬間だった。単音から24音まで増殖していくフレーズ(音列)がユニゾンで提示された後、そこから特定の音が残り、引っ掛かり、強調されていくことで、得も言われぬグルーヴ感が生まれてくる。それは時にはジャズ的であったり、琉球音楽的であったり、あるいはロック的であったりするのだが、演奏者たちはそうしたさまざまなリズムの風景──曲名を踏まえて言えば、単線の軌道を走る列車の車窓から見えてくるさまざまな音風景──を目ざとく見つけ、それを楽しみながら生き生きと表現すべく、あらん限りのテクニックとエネルギーを演奏に投入していく。これをPlay(演奏=遊戯)の醍醐味と呼ばずして、何と呼ぼうか。

それは、ミニマリズムMinima_Rhythmという原点を持つ久石の音楽が、高度な技量を備えた本盤の演奏家たちという理解者を得て、躍動する生命(アニマ)のリズムを讃えるアニマリズムAnima_Rhythmの高みに到達した瞬間でもあった。

文:前島秀国

(以上、CDライナーノーツ 寄稿文より)

 

 

【楽曲解説】

1. 祈りのうた for Piano (2015)

初演(予定):2015年8月5日、ザ・シンフォニーホール
「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.) 2015」

2015年1月作曲。三鷹の森ジブリ美術館の展示室用音楽として、一足先に聴かれたリスナーも多いかもしれない。世俗の日常を超越した崇高な時間感覚を紡ぎ出す、拍節感の希薄なテンポ。”祈り”の余韻をいっそう純化する、息の長いペダルの使用。久石自身が「僕が初めて書いたホーリー・ミニマリズムの曲」と述べているこの楽曲は、機能和声や調性システムからいったん脱却し、シンプルな三和音という最小限(ミニマル)の構成要素に回帰したアルヴォ・ペルトのティンティナブリ様式(鈴鳴り様式)との親近性を強く感じさせる。本盤に収録されたピアノ版の構成は、ごく大まかに(1)透明感あふれる三和音のモティーフを右手が導入する最初のセクション、(2)悲しみに満ちた和音からなる中間部のセクション、(3)左手の伴奏を伴った最初のセクションの再現、という三部形式と見ることが可能である。

《祈りのうた》という曲名に関して、久石は具体的に誰のための「祈り」か明言していない。ただし2014年暮、すなわち本作作曲直前の時期にW.D.O.2015公演のプログラミングを練っていた久石は、東日本大震災の悲劇について何らかの音楽的ステートメントを盛り込みたいと構想していたので、それが作曲の間接的なきかけになった可能性はある。

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2015年1月、三鷹の森ジブリ美術館オリジナルBGM用のピアノソロ曲として作られた。久石の作家人生の中でも初のホーリー・ミニマリズム作品として書かれたこの曲は、極めてシンプルな3和音を基調とし、極限まで切りつめられた最小限の要素で構成されている。今回演奏される《祈りのうた》は、核をなすピアノに加え、チューブラベルズ、弦楽合奏が加えられた。厳かな鐘の鳴り響く中、静かに訥々と語りかけるように始まるピアノの旋律が印象的である。久石が敬愛するホーリー・ミニマリズムの作曲家ヘンリク・グレツキに捧げられている。
Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 コンサート・レポート
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毎年正月、三鷹の森ジブリ美術館で使うために宮崎(駿)さんに曲を贈っているのですが、今年出来たのがこれだったんです。昨年、ヘンリク・グレツキやアルヴォ・ペルトに代表されるような教会旋法を使ったホーリー・ミニマリズムを演奏してきた影響もあり、シンプルでありながらエモーショナルであることを追求したくなっていたんです。人間は前進しようとするとより複雑なものを求めがちですが、あえてシンプルにいきたかった。そうして出来上がったら自然と《祈りのうた》というタイトルが浮かびました。
Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 コンサート・パンフレットより
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2. Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas (2012-2014)

初演:2014年9月29日、よみうり大手町ホール 「Music Future Vol.1」

原曲は、2台のギターのために書かれたHakujuギター・フェスタ委嘱作 《Shaking Anxiety and Dreamy Globe》(2012年8月19日Hakuju Hallにて初演)。曲名は、ダグラス・ホフスタッターの古典的名著『ゲーデル、エッシャー、バッハ』20周年記念版の序文に出てくる「揺れ動く不安と夢の球体」というフレーズに由来する。このフレーズは、著者のホフスタッターがアメリカの詩人ラッセル・エドソンの詩「The Floor」の一節を引用した部分「teetering bulb of dread and dream」を訳したものだが、「揺れ動く不安と夢の球体」という日本語表現を気に入った久石は、敢えて原文の文脈にとらわれず「shaking anxiety(揺れ動く不安)and dreamy globe(夢の球体)」という英語に逆変換し、新たな造語を作り上げた。久石自身はこの造語の意味するところを「生命が生まれる瞬間」と説明している。躍動感あふれるミニマル音形の反復と複雑な変拍子を用いた原曲の構成を踏襲しつつ、本盤に収録されたマリンバ版では第1奏者がグロッケンシュピールを、第2奏者がヴィブラフォンを兼ね、より多彩な音色を獲得。特に「dolente(悲しみを込めて)」と記されたセクションでは、繊細かつ精麗な響きを奏でるグロッケンとヴィブラフォンが印象に残る。

 

3. Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion (2014-2015)

初演(予定):2015年9月24日・25日、よみうり大手町ホール「Music Future Vol.2」

原曲は、毎年ウィンド・アンサンブルの新作を委嘱初演する浜松市の音楽イベント「バンド維新」のために書かれた吹奏楽曲(2015年2月22日アクトシティ浜松にて初演)。久石自身の解説によれば、単音から24音まで増殖するフレーズがユニゾンで演奏され、その中のある音が高音や低音に配置されることで別のフレーズが浮かび上がってくるという、シンプルな構造で作られている。

アメリカン・ミニマル・ミュージックの作曲家たち、特にスティーヴ・ライヒはミニマル特有のズレ(とそこから生まれる変化のプロセス)を生み出すため、バッハ以来おなじみのポリフォニック(多声音楽的)な書法、具体的にはカノンのような手法で声部を重ね合わせる実験を試みたが、本作において久石は、そうしたポリフォニックな手法に頼らず、あくまでも単旋律のユニゾンにこだわりながらズレを生み出す試みにチャレンジしている。つまり多声という”複線”を走るのではなく、あくまでもユニゾンという”単線”を走り続けるわけだ。鉄道の”単線”を意味する《Single Track》という曲名はそこに由来しているが、その際、フレーズ内の音が高音や低音に配置されることで生まれる別のフレーズは、車窓から見えるビルの窓ガラスや川の水面に映る自分の反射した姿(の変形)と考えると、分かりやすいかもしれない。

本盤に収録された演奏において、パーカッショニストがヴィブラフォンを演奏するセクションから中間部となるが、そこに聴かれる和音らしき響きは、あくまでもフレーズの持続音(サステイン)が伸びた結果生まれたものであって、決して意図したものではないという。喩えて言うならば山間部を走る列車の走行音や警笛がこだまし、それが偶発的なハーモニーを生み出すようなものである。

ユニゾンのフレーズの音が時間軸上でズラされることで生まれるさまざまな音風景は──久石は本作を鉄道の標題音楽として書いているわけではないが──車窓から見える多種多様な光景が自分の中のさまざまな記憶を呼び起こしていく、そんな自由連想的な聴き方をリスナーに許容している。最初のユニゾンのフレーズが、民謡のようにもジャズのようにも、あるいはわらべ唄のようにも聴こえてくる面白さ。そういう面白さを実現するためには、最初のフレーズが思わず口ずさみたくなるような親しみやすさを持ちながら、同時に高度な可塑性に耐えうる可能性を潜在的に秘めていなけれなならない。こういうフレーズは、ポップスフィールドで感性を徹底的に鍛え上げられた、久石のような作曲家でなければ絶対に書けないフレーズだと思う。そういう意味で本作は、久石のポストクラシカル的な在り方をこれまでになく明瞭に示した楽曲と言えるだろう。

 

4. WAVE (2009)

初演:2009年8月15日、ミューザ川崎シンフォニーホール
「久石譲 オーケストラ コンサート 2009 ~ミニマリズム ツアー~」

アメリカン・ミニマル・ミュージック(特にフィリップ・グラス)の功績のひとつは、西洋音楽において単なる伴奏音形とみなされていた分散和音(アルペッジョやアルベルティ・バス)に音楽表現の主体を置くことで「旋律=主、分散和音=従」の関係を逆転させ、分散和音から旋律が発展してく手法を確立・普及させた点である。本作の場合、イ長調の主和音から始まる分散和音は、《WAVE》という曲名が示す通り、寄せては返す波のように何度も繰り返されていくが、渚を洗うひとつひとつの波が決して同じではないように、ひたひたと寄せる分散和音は繰り返しごとに色あいを微妙に変えていく。そして、その色あいの変化の中から、ちょうど波間に浮かぶ小舟のように、1本の旋律がくっきりと上声部に浮かび上がってくるのである。ミニマル作家としての久石譲と旋律作家としての久石譲が、高度な次元で融合した名曲というべきであろう。2009年1月に作曲後、三鷹の森ジブリ美術館展示室用音楽の形で初めて公にされたが、この作品に格別な思い入れを抱く久石は、これまでアンコールなど特別な機会のみに演奏を限定してきた。リリースは本盤が初となる。

 

5-8. String Quartet No.1 (2014)

初演:2014年9月29日、よみうり大手町ホール「Music Future Vol.1」

2012年に東京で開催された「フェルメール光の王国展」のために久石が書き下ろした室内楽曲《Vermeer & Escher》から4曲を選び、弦楽四重奏曲として新たに構成・作曲し直した作品。作曲活動の初期から、オランダの画家マウリッツ・エッシャーのだまし絵(錯視絵)がもたらす錯視効果と、ミニマル・ミュージック特有のズレがもたらす錯聴効果の類似性に強い関心をいだいていた久石は、1985年に《DA・MA・SHI・絵》という作品を発表しているが、それから約30年、弦楽四重奏だけで構成された本作では、エッシャー特有の線的構成がいっそう強調されることになった(ただし久石は、エッシャーの作品を標題音楽的に表現しているわけではない)。参考までに、作曲にあたって久石がインスパイアされたエッシャーの原画のデータを以下に挙げておく。※割愛

第1楽章:Encounter
冒頭のユニゾンで提示される主題を基にした、ユーモアにあふれるズレの遊戯。

第2楽章:Phosphorescent Sea
グリッサンドの弦の波、それに夜のミステリアスな音楽で表現された「燐光を発する海」の情景。

第3楽章:Metamorphosis
厳格かつ対位法的な音楽で表現される、ズレの「変容」の過程。

第4楽章:Other World
13/8拍子という珍しい拍子を持ち、オクターヴを特徴とする反復音形が中心となる終楽章。オリジナル版では全音階の希望に満ちたモティーフが静かに登場した後、コーダを迎える形をとっていたが、本盤に収録された弦楽四重奏版ではそのモティーフを中心とする新たなクライマックスが築き上げられ、その後、反復音形が再現して余韻を残したコーダを迎える形に改訂されている。

 

2015/06/18
前島秀国 サウンド&ヴィジュアル・ライター

(【楽曲解説】 ~CDライナーノーツより 抜粋)

 

補足)

近年の久石譲オリジナル・アルバム(ベストアルバム含む)のほとんどのライナーノーツを手掛けている前島氏。本作品でも「久石譲 『Minim_Rhythm II』に寄せて」と題し、楽曲解説以外にも4ページにわたって、久石譲を紐解いている。本盤に至る経緯、久石譲の現在地を独自の視点で捉えていてより一層引き込まれる。楽曲解説項から溢れた収録曲の解説もそこで述べられており、本作品を聴くための手引きとなるにふさわしい。そして聴覚から得る印象と視覚から得る言語、まさに感覚性と論理性によって本作品の真髄を受け止めることができる。

耳でも、そして言葉でも、久石譲を、久石譲の現在(いま)を、『Minima_Rhythm II』を深く味わいたい方は、ぜひ本作品CDを手にとってほしいと願いを込めて。

 

 

 

「2曲とも宮崎駿監督の誕生祝いとして書いた作品です。〈WAVE〉(2009年作曲)は”メロディ”と”ミニマル”という2つの要素をシンプルな形で結びつけた曲ですが、当初収録を予定していたピアノ・ソロアルバムがなかなか完成せず、リリースの機会を逸してしまいました。一方の〈祈りのうた〉(2015年作曲)は、戦後70年の節目を意識して書いた曲。以前から音数(おとかず)の少ない、内省的な作品を書きたいと思っていたのですが、これもなかなか機会に恵まれなくて。ところがここ数年、ペルトやグレツキの作品を(指揮者/ピアニストとして)演奏したことで、ホーリー・ミニマリズムと呼ばれる彼らのスタイルから刺激を受けました。”なるほど、できるだけ切り詰めた要素で作曲していくには、こういう方法もあるのか”と」

Blog. 雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「宮崎駿監督とはもう長い付き合いですからね。年に一回、宮崎さんのために正月に曲を書いて持って行くんです。持って行かない年は1年を通して調子が悪くて(笑)。ゲン担ぎみたいなものですね。「祈りの歌 for Piano」は今年の正月に持って行った曲です。正月の3日に作って、4日にレコーディングしてその日に持って行って。なんだか出前みたいですけど(笑)。この年頭の習慣が、意外と大事なんですよ。お正月だから、暗い曲を持って行くことはしないし(笑)、新年最初に心休まる曲を一曲作る、というのは、すごくいいなと思っていて。ジブリ美術館では、僕の曲を今でも使ってくれているみたいですね。」

Blog. 「月刊ぴあの 2015年12月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「結局、音楽って僕が考えるところ、やはり小学校で習ったメロディ・ハーモニー・リズム、これやっぱりベーシックに絶対必要だといつも思うんですね。ところが、あるものをきっちりと人に伝えるためには、できるだけ要素を削ってやっていくことで構成なり構造なりそれがちゃんと見える方法はないのかっていうのをずっと考えていたときに、単旋律の音楽、僕はシングル・トラック・ミュージックって呼んでるんですけれども、シングル・トラックというのは鉄道用語で単線という意味ですね。ですから、ひとつのメロディラインだけで作る音楽ができないかと、それをずっと考えてまして。ひとつのメロディラインなんですが、そのタタタタタタ、8分音符、16分音符でもいいんですけど、それがつながってるところに、ある音がいくつか低音にいきます。でそれとはまた違った音でいくつかをものすごく高いほうにいきますっていう。これを同時にやると、タタタタとひとつの線しかないんだけど、同じ音のいくつかが低音と高音にいると三声の音楽に聴こえてくる。そういうことで、もともと単旋律っていうのは一個を追っかけていけばいいわけだから、耳がどうしても単純になりますね。ところが三声部を追っかけてる錯覚が出てくると、その段階である種の重奏的な構造というのがちょっと可能になります。プラス、エコーというか残像感ですよね、それを強調する意味で発音時は同じ音なんですが、例えばドレミファだったらレの音だけがパーンと伸びる、またどっか違う箇所でソが伸びる。そうすると、その残像が自然に、元音型の音のなかの音でしかないはずなんだが、なんらかのハーモニー感を補充する。それから、もともとの音型にリズムが必ず要素としては重要なんですが、今度はその伸びた音がもとのフレーズのリズムに合わせる、あるいはそれに準じて伸びた音が刻まれる。そのことによって、よりハーモニー的なリズム感を補強すると。やってる要素はこの三つしかないんですよね。だから、どちらかというと音色重視になってきたもののやり方は逆に継承することになりますね。つまり、単旋律だから楽器の音色が変わるとか、実はシングル・トラックでは一番重要な要素になってしまうところもありますね。あの、おそらく最も重要だと僕が思っているのは、やっぱり実はバッハというのはバロックとかいろいろ言われてます、フーガとか対位法だって言われてるんですが、あの時代にハーモニーはやっぱり確立してますよね、確実に。そうすると、その後の後期ロマン派までつづく間に、最も作曲家が注力してきたことはハーモニーだったと思うんです。そのハーモニーが何が表現できたかというと人間の感情ですよね。長調・短調・明るい暗い気持ち。その感情が今度は文学に結びついてロマン派そうなってきますね。それがもう「なんじゃ、ここまで転調するんかい」みたいに行ききって行ききって、シェーンベルクの「浄夜」とか「室内交響曲」とかね、あの辺いっちゃうと「もうこれ元キーをどう特定するんだ」ぐらいなふうになってくると。そうすると、そういうものに対してアンチになったときに、もう一回対位法のようなものに戻る、ある種十二音技法もそのひとつだったのかもしれないですよね。その流れのなかでまた新たなものが出てきた。だから、長く歴史で見てると大きいうねりがあるんだなっていつも思います。」

 

(Single Track Music 1について)

「この時、シングル・トラックをやろうって、そんなひとつの自分の方法をまだ全然考えてなかったんですよね。なんでかっていうと、ミニマルって必ず二つ以上ないと出来なかったんですよ。ズレるってことは元があってズレるものがないといけない。そうすると必ず二声部以上必要になりますね。大元のパターンがある、一緒にやってるが一個ずつズレていく、それがだんだん一回りして戻ると。そうするとね必ず二ついるんですよ。僕もそれが一拍ズレ、半拍ズレた、二拍ズレたとかってよくやるんですが、必ず元に対してズレがあるっていう方法をなんとか打破できないかと。単純に。ミニマルっていうのはこうやってもう何かがズレるんだと、いやこんなことやってたら永久に初期のスティーヴ・ライヒさんとかフィリップ・グラスさんとかがやってた方法と変わんだろうと。なんか違う方法ないかっていうときに、自分でズレるっていうか、二つがあって相対的にズレるじゃなくて、自分自身がズレていくような効果を単旋律で出来ないかって作った実験的なのがこれが最初でしたね。」

 

(Shaking Anxiety and Dreamy Globeについて)

「地球ですね。これね、自分で付けたタイトルなんだけど、今でも言えないんですよ。シュールなタイトルなんですけどね。音が一個一個こう生まれていって、それが一つの有機的な作品になるっていうことは、ちょうどこう細胞が分裂していって一つの生命が宿る、それと同じということでちょっとシュールにこういうタイトルを付けてみました。」

「はい、もともとはギター2本で書いた曲なんですね。それをこう、非常にアップテンポで構造が見えるようにやりたいなと思ってマリンバに直したんですね。」

Blog. NHK FM「現代の音楽 21世紀の様相 ▽作曲家・久石譲を迎えて」 番組内容 より抜粋)

 

 

同日、ショット・ミュージックより「弦楽四重奏曲第1番 – String Quartet No.1」 オフィシャル・フルスコアおよびパート譜も発売されている。

 

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9081/2
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

 

Minima_Rhythm II

1. 祈りのうた for Piano (2015)
2. Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas (2012-2014)
3. Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion (2014-2015)
4. WAVE (2009)
String Quartet No.1 (2014)
5. I. Encounter
6. II. Phosphorescent Sea
7. III. Metamorphosis
8. IV. Other World

All Music Composed & Produced by Joe Hisaishi

Piano:Joe Hisaishi 1. 4.

 

<<M1>>
Piano: Joe Hisaishi

<<M2>>
Marimba / Glockenspiel: Momoko Kamiya
Marimba / Vibraphone: Mitsuyo Wada

<<M3>>
Soprano Saxophone: Kazuyuki Hayashida
Alto Saxophone: Wataru Sato
Tenor Saxophone: Yui Asami
Baritone Saxophone: Ryota Ogishima
Percussion: Mitsuyo Wada

<<M4>>
Piano: Joe Hisaishi

<<M5~8>>
Violin 1: Kaoru Kondo
Violin 2: Satoshi Morioka
Viola: Hironori Nakamura
Violoncello: Wataru Mukai

 

Recorded at
Bunkamura Studio [Track-1]
Victor Studio [Track-2,3,5-8]
Wonder Station [Track-4]

 

Minima_Rhythm II

1.Song for Prayer for Piano
2.Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas
3.Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion
4.WAVE
5.String Quartet No.1 – I. Encounter
6.String Quartet No.1 – II. Phosphorescent Sea
7.String Quartet No.1 – III. Metamorphosis
8.String Quartet No.1 – IV. Other World

 

Disc. 久石譲 『MIDORI Song』 *Unreleased

2015年7月23日 発表 (寄贈先公式HP)

 

認定NPO法人 ミュージック・シェアリングに寄贈された楽曲。

「MIDORI SONG」
作曲:久石譲
編曲:Chad Cannon
演奏:USC Thornton School of Music

 

 

五嶋 みどり公式コメント

「全世界の子供たち、ボランティア、先生方、お父さん、お母さん、みんな大きな声で歌いたくなる、みんなの前で弾きたくなる「MIDORI Song」がミュージック・シェアリングに届けられました。」

「作曲者は何と、“久石 譲”。この場で公開することができませんが、お待ちください、もうすぐこのメロディーを、今度は私が貴方に届けます。」

 

 

 

約4分の小品。上記コメントにもあるとおりクラシカルでシンプルなメロディーをもった清らかな作品である。ハ長調で書かれたこの作品はまさに音楽の教本ともいうべき親しみやすい旋律と響きをもっている。

4小節のモチーフにこの作品の気品が凝縮されており、様々なかたち(楽器/調性)で展開していくが、決して奇をてらうことのない、まっすぐで正統な作品構成となっている。

中間部転調に向かう箇所がいかにも久石譲らしい躍動感を生んでいるが、楽曲全体は編曲者が他者となっているため、どこまでを基本構成として根幹を担ったのか、どこまでを編曲者に委ねたのかは不明である。

一同に介したホール録音というよりも、おそらくこの音源のためにレコーディングおよびパート録音をミックスしたであろう響きがうかがわれる。

小編成オーケストラ、チェンバロ、バイオリンソロなど、バロック音楽を思わせる、快活で弾むような晴れやかさと気品をそなえた小品である。当NPO法人の活動理念にふさわしい「子供たちが音楽を楽しむ」情景が微笑ましく浮かんでくるような、ミュージック・シェアリングを象徴する楽曲となっている。

 

 

2015年12月、一部(限定)公開された公式動画を視聴しての感想であり、活動プロモーションフィルムのように、静止画スライドショーで活動履歴や紹介映像として構成されていた。

CD作品化されていない楽曲である。

 

 

MUSIC SHARING

 

Disc. 福田進一×荘村清志 『DUO』

2015年6月24日 CD発売 COCQ-85265

 

久石譲が2012年「第7回 Hakuji ギターフェスタ」のために書き下ろした、ギターデュオのための委嘱作品『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』を初CD化。今年2015年「第10回 Hakuji ギターフェスタ」でも再演予定で、もちろんオリジナル・プレーヤーである2大ギタリストによる録音。

 

 

あたたかな円熟のアンサンブル、自在の境地が生み出す「大人の音楽」!

ギター界を牽引してきた第一人者による珠玉の共演アルバム誕生です。演奏のスタイルも奏でる音色も、それぞれに際立つ個性を持つ二人が、雄弁な自己主張を刻みながら、その個性を競い合うのではなく、互いをリスペクトし引き立て合う演奏は音楽への真摯な姿勢とギターへの愛に満ち溢れています。自在の境地から生み出された円熟のアンサンブルは、まさに「大人の音楽」というに相応しいもので、聴き手の心に深く染み入る、滋味溢れる名演と言えます。二人が共同プロデューサーを努めるHakujuギター・フェスタの第10回を記念したアルバムです。

 

寄稿

音楽を聴いて、演奏家の”人生”に思いを馳せるというのは、些か野暮な話なのかもしれない。しかし、本作《DUO》には、なにかそうした類の感慨を抱かせずにはいない、格別の味わいがある。日本のギター界を、それぞれに違ったかたちで牽引してきた荘村清志、福田進一両氏。その共演は、ギターファンのみならず、このせわしない世の中で、決して消費されることのない豊かな才能に憧れるすべての人々を、束の間、夢見心地にさせることだろう。

音楽そのものであると同時に、音楽についての、言葉を超えた対話。お馴染みの〈ニュー・シネマ・パラダイス〉に始まり、〈スペイン舞曲〉、〈カヴァティーナ〉と、ゆったりとした雰囲気で始まる前半の、そこばくの慎みが心地良い。そこから、次第にエモーショナルな部分に触れていって、〈エディット・ピアフを讃えて〉のような、リリカルでチャーミングな演奏に至る。終盤の三曲の委嘱作品は、さすがの聴き応えで、思わず身を乗り出し、息を呑む。二人の演奏家としての歩みに思いを馳せ、その音の説得力に打たれ、最後は〈星に願いを〉が、静かな挨拶のように、名残を惜しむ私たちを、元の日常世界へとそっと見送ってくれる。

この楽曲の多彩さにして、なんという構成の妙だろう!同時代に、この美しい共演を体験できる私たちは、幸福な音楽ファンだ。

平野啓一郎(小説家)

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

名匠同士、妙味尽きぬ音の対話
話題のギターデュオ、待望のレコーディング

荘村清志と福田進一。共に日本のギター演奏界を代表する2人の名匠が、腕を組んでデュオを聴かせる-なんとも素晴らしい企画だが、実はこの「名匠デュオ」は、もはや10年来、ギター・ファンの心を惹きつけ、満足を与えつづけてきた歴史を持っている。荘村と福田が、株式会社白寿生科学研究所の運営するHakuji Hallの全面的援助を受け、同ホールを舞台に、夏の「ギター・フェスタ」を発足させたのは2006年。これは、かねがね声望高く豊かな人脈を持つ両名匠が、内外から実力者アーティスト(多くはギタリストだが他ジャンルの人びとも)を招いて催す通例3日間の演奏会シリーズだが、その中で、両主宰者によるスーパー・デュオは、ひとつの呼び物であってきたのだ。この2015年、「ギター・フェスタ」が10周年を迎えるに当たり、それを記念するためにも2人のデュオを本格的なCDとして残したい、ということになったのは、当然の成行きではあるものの、極めて喜ばしいことである。レパートリーは、これまでこのデュオが手がけてきた曲目、あるいはここに新しく取り組んだ曲目、いずれにしてもたいへん楽しめる高度な楽曲が並んでいるが、とりわけ注目すべきは、この「フェスタ」から、著名作曲家に特別に委嘱されたオリジナル・ギター・デュオ曲が3篇ほど含まれたことである。「フェスタ」の、国際的にも注目される存在意義を、これらの価値高い委嘱作は、如実に証明すると言えよう。

このたびの録音は、往時の「フェスタ」における録音を再使用するようなことはなく、すべて新規に行われた。それに際しては、このたびもHakuji Hall側の快い協力があり、演奏者たちは、ギターのためには理想的なものである同ホールの個性的でデリケートな音響効果を心ゆくまで活用することができた。演奏者たちは、これに関し、同ホールへの深い感謝の念を表明している。

福田進一の述懐によると、このデュオは「荘村さんと僕という、生い立ちも違えば留学先(スペインとフランス)の音楽的・文化的環境も違い、したがっていわゆる芸風も、ふだんの活動状況も異なっている2人が、両者の個性を互いに生かしたまま、歩み寄って行なった共演」であるというところにユニークな意義を持つ。芸風・音楽性の類似、テクニック上の共通性を基盤とする一般の常設デュオとは、ひとつ別な演奏がここには誕生しており、そこにユニークな価値が生じているとは、確かに言えよう。

いずれにせよ、この非凡なデュオが生み出す奏楽としての奥行き、味わい深さは尋常ではない。名手同士の顔合わせという話題性には終らず、演奏芸術というものの果てしない妙味を満喫させる、これはまたとなく貴重なレコーディングである。

濱田滋郎

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
2012年度の委嘱は、日本の作曲家に対して行われた。「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」ほか、数多くの映画音楽を手がけて知らぬ者もない久石譲(1950-)である。彼はまた「ミニマル・ミュージック」の手法を用いても日本の第一人者と呼ばれる作曲家で、この委嘱作をも、ミニマル的に書き上げている。特筆すべきなのが拍子の独創性で、4分の13拍子(3+3+3+4拍子)をとり、しかも2人の奏者は1小節たりとも同じ動きの拍子を共有しない。そのことが生み出す一種幻覚的な音空間の魅力を味わわれたい。

(【楽曲解説】 CDライナーノーツより)

 

 

曲名 “Shaking anxiety and Dreamy Globe”は、アメリカのシュルレアリスムの詩人、ラッセル=エドソンの詩にある、[生命が生まれる瞬間」を表した一節を引用した造語。ミニマルの手法とフラメンコギターのエッセンスを取り入れた作品。複雑な変拍子と躍動感あふれる久石ならではの技巧的な楽曲。

 

 

公式譜も同時発売されている。

 

 

 

 

DUO

1 モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス (鈴木大介 編曲)
2 ファリャ:スペイン舞曲 ― オペラ「はかなき人生」より (E.プホール 編曲)
3 マイヤース:カヴァティーナ (鈴木大介 編曲)
4 アルビノーニ:アダージョ (A.ラゴヤ 編曲)
5 プーランク:エディット・ピアフを讃えて ― 「15の即興曲」より (福田進一 編曲)
6 グラナドス:オリエンタル ― 「スペイン舞曲集」より (荘村清志 編曲)
7 ディアンス:ハジュ・パルス (2014)
8 ファジル・サイ:リキアの王女 (2009)
9 久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
10 ハーライン:星に願いを (江部賢一 編曲)

★7、8、9:Hakujuギター・フェスタ委嘱作品

【録音】
2015年2月17 -19日、Hakuju Hall、東京

 

Disc. 麻衣 『空みあげて』

2015年4月8日 CD発売 WRCT-1014

 

麻衣のミニアルバム。父・久石譲の出身地でもある長野県中野市イメージソング「空みあげて」などを収録。

 

久石譲作品では、1987年11月に発表されたアルバム『となりのトトロ イメージソング集』に収録された「小さな写真」が本作品に収められている。映画では使われなかったが、後に上条恒彦が「お母さんの写真」としてカバーし、シチューのCMソングに使われ、ジブリファンの間では隠れた人気曲となっている。オリジナル盤では久石譲が歌っていた曲を、麻衣の透き通るような声で朗々と歌い上げる。

今作のジャケットは、元スタジオジブリのアニメーター 百瀬義行による書き下ろし。中野市の自然風景を描いた、どこか懐かしくもあり、優しさに包まれたジャケットとなっている。他にも中部電力のCMソングとして地元では知られた「Dreamland」など、全6曲が収められている。信州の、日本のうたがいっぱい詰まった一枚。

 

 

なお「小さな写真」は本作に先駆けて2014年に配信限定シングルとしてリリースされている。

 

2014年7月9日 配信限定シングル

 

 

 

1.空みあげて (長野県中野市イメージソング)
作詞:麻衣 作曲:松本俊明
2.Dreamland (中部電力CMソング)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
3.ゴンドラの唄
作詞:吉井勇 作曲:中山晋平
4.つなぐ (テレビ信州冬の祭典テーマ)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
5.小さな写真
作詞:宮崎駿 作曲:久石譲
6.故郷
作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一

 

Disc. 『柘榴坂の仇討 特装限定版』

2015年4月3日 DVD/Blu-ray発売 BCBJ-4659

 

2014公開 映画『柘榴坂の仇討』
監督:若松節朗 音楽:久石譲 出演:中井貴一・阿部寛 他

 

 

通常版と特装限定版、それぞれDVD/Blu-rayと計4形態にて発売された「特装限定版」の映像特典に、「監督 若松節朗×音楽 久石譲 対談」が収録されている。約30分にも及ぶスペシャル対談で、本映画の音楽について、随所にそして具体的に語られている。

 

 

【「雪」を音楽にする】

若松:
最初にオーダーしたのは、「雪」を音楽にするということ。いろいろな雪がイメージできるが、久石さんがどのような雪の音楽を作ってくるのか楽しみだった。

最初に聴いた本編冒頭のM1で驚いた。夢の中で起こる事件の話だったが、サスペンス的な音楽かなと想像していたら、久石さんの楽曲は、とても温かい音楽でまさに雪の音楽だった。

久石:
メインテーマは別にもあるが、この映画ではM1がすごく重要だったかもしれない。

いわゆる時代劇のような音楽ではないほうがこの映画にはいいと思った。時代劇とするよりは、たまたま設定が時代劇で、現在の自分たちととても近いものとしたほうが。

 

【秋元邸で金吾が涙を流すシーン】

若松:
音楽の止める場所とかものすごく学ぶことが多かった。

久石:
構成の問題もあって、あのあと最後の決闘シーンが控えている。登場人物たちの心情を表現するとしても、音楽はそこにとっておく必要がある。なのでこの場面はあえて突き放して音がないほうがいいと思った。

 

【映画音楽の作り方】

久石:
今ハリウッドでやっている映画音楽は「効果音楽」。そのシーンごとに切り取ったらぴたっとはまるけれど、全体としては残らない。そこには全体の構成がないから。

これはあまりにもデジタル技術が発達したため、つまりシュミレーションが簡単にできるようになったために起こっている現象だと思っている。

 

【俯瞰した音楽をつくる】

久石:
映画音楽は一般的に「状況に音楽をつける」「登場人物の心情に音楽をつける」という大きく二つの方法がある。最近はそのどちらでもなく、もう一歩引いたところから、「俯瞰して音楽をつける」ということをしている。そうすることによって作品が言いたいことがより伝わりやすくなったり、より立体的になるように思っている。

(インタビュー内容一部抜粋書き起こし)

 

 

<本編盤>
本編119分+映像特典3分(特報/予告編/TVスポット集)
<特典収録盤>
監督 若松節朗×音楽 久石 譲 対談
メイキング映像
イベント映像(完成報告会見/プレミア試写会舞台挨拶/豪徳寺大ヒット祈願/初日舞台挨拶)
<特製小冊子(21p)> 封入特典
キャストインタビュー集
原作・浅田次郎インタビュー
撮影地&緑の地 紹介
歴史年表
用語集

 

Disc. 久石譲 『みずほ』 *Unreleased

2015年3月20日 TVCM放送

 

みずほフィナンシャルグループ
音楽:久石譲 曲名:みずほ(仮)*
*JASRAC登録名

 

みずほ 〈ハートフルアクション〉
みずほの丘(ハートフルアクション)篇 15秒
みずほの丘(ハートフルアクション)篇 30秒

2015年5月~
みずほの丘(東京2020)篇 15秒
みずほの丘(東京2020)篇 30秒

 

 

公式サイトにてCM動画試聴可能 (2015.3月現在)
公式サイト〉〉みずほフィナンシャルグループ ブランド広告

※公開終了2016.3

 

 

CM音楽らしい印象的な旋律。15秒、30秒という尺のなかで、その世界観を表現するとともに、いかにひっかかりやインパクト、印象を残すかという匠の技において、久石譲はやはりさすがである。

小編成のオーケストラ楽器で構成された楽曲は、めずらしくもピアノは登場しない。弦楽器、金管楽器、木管楽器と、そのメロディーを引きついていく展開となっている。CM映像のイメージ同様、とても新鮮で清潔で爽やかな印象を受けつつも、ただ軽快なメロディというわけでもなく、そこには落ち着いた風格すら感じられる。映画「風立ちぬ」のサウンドトラックに見られたような、品格のある小編成オーケストラサウンドに通じるものがある。

30秒版でも後半楽曲が展開されるなか終わるが、もちろん楽曲として完成されているであろうその先の展開が気になる。

未発売曲、CD作品化が期待される上質な作品である。

 

 

 

Disc. 久石譲 『Dream More』*Unreleased

2015年3月17日 TVCM放送

 

サントリービール新商品 「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム」
CM曲 『Dream More』 音楽:久石譲

 

 

発表会見にて久石譲は制作秘話を語っている。

「ビールのCMというと、明るい、みんなで乾杯!というような曲をつくることが多いと思うが、このCMでは心にしみるというかノスタルジックな、感傷的な部分も入れた メロディを書こうと思った。試飲をしてすごく美味しかったので、これもふくめて多重奏というかいろんな味わいのある楽曲にしようと思った」

 

 

弦楽とピアノによる上品な楽曲。そこから他の管楽器も加わっていき、厚みや深みのます展開。まさに多重奏、アンサンブルの極みが味わえる作品である。

CM音楽とは別に、プロモーション用のスペシャルムービでは、CM音楽とはまた違ったBGMを書き下ろしている。チェロによる多重奏の刻んだリズムが心地よいものや、ピアノの粒と小編成アンサンブルが流れるように奏でるものなど、決してメロディが展開するのではないが、短いモチーフで少しずつ展開させて空気感を生み出している。

未発売曲、CD化が期待される上質な作品である。

 

 

下記公式サイトよりCMおよびスペシャルムービー試聴可能。

 

2016年3月15日~ 『マスターズドリーム2016篇』O.A.開始
※映像/ナレーションは変更あり、音楽は変更なし。

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム2016』篇 30秒 サントリー CM 

2015年6月14日~ 『お中元篇』O.A.開始
2015年11月8日~ 『お歳暮篇』O.A.開始
※映像/ナレーションは変更あり、音楽は変更なし。

New! 『お歳暮』篇 (2015.11.8現在)

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム』篇 30秒 サントリー CM

ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム『スペシャルムービー』 4分21秒 サントリー

 

 

 

2015.8.14 追記

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」(2015/8/5-13)にて初お披露目されることとなり、同公演のプログラムによって曲名が『Dream More』であることが公となった。

 

Dream More
2015年3月から放送を開始した、サントリービール「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム(Master’s Dream)」のための委嘱作品。小編成のソリッドなサウンドながらも、夢のビールにふさわしい華やかさと気品に溢れ、心に沁み入るオーケストラ作品として仕上げられた。フルバージョンは今回のコンサートで初披露となる。

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」公式パンフレット 楽曲解説 より)

 

CMでも聴くことのできるあの旋律が、多重奏、いろいろなオーケストラ楽器によって奏でられ、中間部も構成された作品に。気品のあるオシャレで上品な楽曲へ。しっとり聴かせるヴァイオリン・ソロまで、テンポも緩急ありの、キラキラと輝くような色彩豊かな夢見心地。軽やかなんだけれど、軽くはない、やはりメロディの力と構成の巧みさ。心踊るようで、ノスタルジックに酔いしれるような。いろいろな表情をもった楽曲。跳ねるような踊るリズムはオーケストラ奏者にとっては難曲たらしめているだろう。が、それこそがこの楽曲の味となっている。サントリー伊右衛門CM曲「Oriental Wind」につづいて、この楽曲も定着しさらにいろいろなCMバージョンも聴いてみたい逸品。もちろん本コンサート版はぜひCD作品化してほしい、華やかにシンフォニー・ドレスアップされた楽曲。

 

 

2016.7追記

こちらのヴァージョンはLIVE盤として、CD作品『The End of The World』/久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(2016/7/13 Release)に収録されている。

 

The End of the World LP A

 

 

2016.11追記

2016年11月2日~ 『お歳暮(無濾過)』篇」 O.A.開始

ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム『お歳暮(無濾過)』篇 30秒 サントリー CM

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム<山崎原酒樽熟成>』スペシャルムービー 3分36秒 サントリー

 

 

 

Disc. 久石譲 『弦楽オーケストラのための《螺旋》』 *Unreleased

2010年2月26日 世界初演

 

2010年2月26日開催コンサート「久石譲 Classics Vol.2」にて初演。

2011年9月7日開催コンサート「久石譲 Classics Vol.4」にて披露。

2014年10月12日開催コンサート「久石譲×新日本フィルハーモニー交響楽団」長野公演にて披露。

2015年2月25,26日開催コンサート「世紀音樂大師-久石譲 Maestro of the Century – Joe Hisaishi」(台北/台南)にて改訂初演。

 

 

 

久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」

弦楽オーケストラのための「螺旋」は、2010年2月16日に行ったコンサート《久石譲 Classics Vol.2》のために書いた作品である。作曲は、2010年1月20日より2週間という短い期間で一気に書き上げ、その後直しを含めて時間の許す限り手を加えた。ミニマル・ミュージックの作家としてコンテンポラリーな作品を書きたいという思いが強かったのかもしれない。

曲は、8つの旋法的音列(セリー)と4つのドミナント和音の対比が全体を通して繰り返し現れる。もちろんミニマル・ミュージックの方法論で作曲したが、その素材として上記の12音的なセリーを導入しているため結果として不協和音が全体の響きを支配している。

心がけたことは、感性に頼らず決めたシステムに即して音を選んでいくことだった。もちろんそのシステムを構築する土台は(それが良いと決めたこと自体)個人的な感性である。

曲の構成は日本の序・破・急(※)の形をとり、第1部は遅めのテンポの中で様々なリズムが交差し、第2部では同じセリーのスケルツォ的躍動感を表現している。第3部の前には、もう一度基本セリーによる静かな神秘的な部分があり、その後、急としての激しい空間のうねりが展開される。

曲のタイトルとして Spiral という言葉を最初考えていたが、この急の部分を作曲したときに「螺旋」という日本語が最もふさわしいと確信した。

(※)序・破・急 = 音楽・舞踊などの形式上の三区分。序と破と急と。舞楽から出て、能その他の芸術にも用いる。

(2011年9月7日《久石譲 Classics Vol.4》 曲目解説より一部補筆し転用)

Blog. 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」(長野) コンサート・レポート

 

 

 

約14分の作品。3.11に大きな影響を受け、本名の藤澤守として発表した「5th Dimension」と同時期に書き下ろされた作品もあってか、現代音楽、芸術性という、大衆性とは表裏一体の一面をのぞかせた久石譲の意欲作。

本人による楽曲解説にもあるとおり、”不協和音が全体の響きを支配している”なか、ミニマル・ミュージック特有のリズム、躍動感と神秘性をかねそなえた、弦の響きが360度まさにスパイラルしている響きがそこにはある。

渦を巻いた弦楽オーケストラの響きには圧倒される。コンテンポラリーな久石譲作品として後世に残るべき重要な作品である。

2010年の世界初演から、2015年の改訂初演まで、これまでにコンサートで数回披露されたのみで未音源化作品である。

 

 

Disc. V.A. 『バンド維新 2015』

2015年2月18日 CD発売 UCCS-1173

 

「バンド維新」とは

2008年2月に「音楽のまち・浜松」から新たに発信する芸術文化事業としてスタートしました。 学生たちが日頃の研鑽の成果を披露する場を提供するとともに、若手作曲家の育成、日本の音楽文化の振興、こどもたちが純粋に音楽を楽しめる環境づくりを推進することを目的としています。

作曲家は『吹奏楽』の枠にとらわれないウィンド・アンサンブル作品の可能性に チャレンジし、演奏者は、いわゆる『吹奏楽』曲とはひと味違う世界に触れ、さらに作曲者から直接指導を受ける。 「音楽のまち・浜松」ならではのイベントです。

2015年も日本を代表する8人の作曲家が参加

【委嘱作曲家】
北爪道夫 久石譲 前田憲男 ボブ佐久間 真島俊夫 中川英二郎 三宅一徳 猿谷紀郎

(メーカーインフォメーションより)

 

 

久石譲 「Single Track Music 1」

【楽曲解説】
この作品はとてもシンプルな構造でできています。全編ユニゾンで、その中のある音が高音や低音に配置させることによって別のフレーズが浮かび上がるようになっています。

僕自身はミニマル・ミュージックのスタイルを取っていますが(正確にはその後のポストクラシカルといいますが)そのスタイルではズレが重要になり、2つ以上の声部が必要になるわけですが、あえて単旋律にすることで時間軸上でのズレを考えたわけです。そのフレーズは単音から始まり、24音まで増殖していって一区切りです。また中間部からは和音らしき響きが聞かれますが、これはあくまでフレーズの中の最初と最後の音のサステイン(持続音)であって意図的に作った和音ではない。後半ではそのサステインが単旋律のリズムと同期して分化されているだけです。

全編ユニゾンということはある意味で理解しやすいように思われますが、演奏する側から考えるとピッチやリズムの違いが誰にでもわかることであり案外難しいとも言えます。またリズムのグルーヴ感(例えばロックやジャズのような)もとても大切です。

このような実験をさせていただいて感謝しています。
尚タイトルは鉄道の単線の意味からとっています。

(久石譲)

(楽曲解説:CDライナーノーツより)

 

 

 

 

久石譲による新作書き下ろし委嘱作品。吹奏楽作品としては「Runner of the Spirit」(箱根駅伝テーマ曲)以来の2作品目となる。

 

 

2015.8追記

久石譲オリジナルアルバム『Minima_Rhythm 2 ミニマリズム 2』に、「Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion」として収録された。タイトルとおり[サクソフォン四重奏と打楽器版]での編成として再構成されている。自身のコンサートでもプログラムされ、スコアも販売されている。

 

 

バンド維新2015 ウィンドアンサンブルの現在

01. 前田憲男: 花のワルツ~組曲「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)
02. ボブ佐久間: Selection from“THE EPITOME”for Wind Orchestra
03. 久石譲: Single Track Music 1
04. 猿谷紀郎: Dawn Pink 2
05. 三宅一徳: Dance EGO-lution
06. 北爪道夫: リズムクロス
07. 真島俊夫: 月山 -白き山-
08. 中川英二郎: Field of Clouds

演奏:航空自衛隊 航空中央音楽隊
指揮:水科克夫(4,5,7,8)、前田憲男(1)、ボブ佐久間(2)、北爪道夫(3,6)
ソロ・トロンボーン:中川英一郎(8)
録音:2014年11月26日&27日 ひの煉瓦ホール