Disc. 久石譲 『あの夏、いちばん静かな海 』

久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』

1991年10月9日 CD発売 TOCP-6907
2001年6月28日 CD発売 WRCT-1002

 

1991年公開 映画「あの夏、いちばん静かな海。」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:真木蔵人 他

 

 

映画「あの夏、いちばん静かな海」 プロデューサー 森昌行

「物事の決め事を、一度ははずして考える」-これは、映画に限らずタレント・ビートたけし、そして北野武の活動において、一環した姿勢の一つです。従って、「映画に音楽はつきもの」という常識は北野作品には通用せず、それが全く音楽のない前作「3-4X10月」を生み出しました。このことは逆に言えば、映像と音楽の関係について、その必然性においても、クオリティーにおいても、音楽のもつ力を大変重要視しているということです。

今回の作品については、その企画の段階から、音楽をつけることを前提としてスタートしました。というのは、セリフのない主人公にニュアンスをつけていくのは、数々の具体的なエピソードを映像でつみ重ねていくのではなく、音楽によって表現しようという意図を、明確に演出的な手法として導入したかったからです。ただ、実際、どんな音楽かということについては、漠然としたイメージはあったものの、正直言って久石さんに作っていただくまで、確信を持てずにいました。そういう意味では、今回の作品は久石さんの音楽に随分と助けていただいたと思います。あらためて、その才能に感謝したいと思います。

北野映画の中における音楽の位置づけというのは、今後作ってゆく作品にあっても、常に大きなテーマでありつづけると思います。それは、久石さんにとっても、同じだと思いますが、それにつけても今回の出逢いは素晴らしかったと思います。

(CDライナーノーツ より)

 

 

〈episode 1〉
この作品に関しては、監督自身も認めているように、もともと主人公の2人(生まれながらの聴覚障害者)に台詞がないところへもってきて、後半は台詞も何もなく、この作品そのものをふり返るように、主人公たちの思い出が日記帳のごとく滔々と連ねられているわけですが、あそこはどう考えても音楽がないと成立しない部分といいますか、音楽にあれこれ語ってもらったカットなんですね。

つまり最初から音楽を入れ込むことを想定して意識的に撮ったシーンなんです。武さんが自らの映像にあれほど音楽を求めたことは珍しいんじゃないですかね。久石さんとのコラボレーションはこの作品が最初だったわけですけど、登場人物の台詞が極端に少ないぶん、音楽がもたらす効用への期待感は、ほかのどの作品よりも高かったと思いますし、それだけに久石さんは苦労されたんじゃないでしょうか。結果的に、言葉(台詞)以上に主人公の感情や作品自体の情感を雄弁に物語るかのような音楽をつけていただいて、作品のクォリティや価値を随分高めていただいたような気がします。

〈サウンドトラック制作進行ノート〉
1991年7月 ワンダーステーション六本木にてレコーディング。

(「joe hisaishi meets kitano films」CDライナーノーツより)

 

 

「あのときは、ニューヨークでレコーディングをしていたときにプロデューサーから電話がかかってきて。「ビートたけしさんの映画をお願いしたいんですが」って言われて、「あ、なにかの間違いです」って思わず言っちゃったという(笑)。基本的には好きな監督だったんですよ。ただ、『その男、凶暴につき』とか『3-4×10月』をみると、僕のところに話が来ると思わなかったんですね。でも帰国してから、『あの夏、いちばん静かな海。』のラッシュをみたら、「これなら分かる」と。もっときちんとみていたら見落とさずに済んだんだけど、北野さんの作品というのはすごくピュアなんですよ。表面的には暴力があったりとかいろいろあるんだけれども、その奥の精神とか出てくる人間たちって、中途半端な屈折をしていないんですね。だからその一点で考えると、自分の音楽がなぜ必要とされるかというのがよく分かったんです。

ただ、やっぱり最初はね、台詞が極端に少ないし、劇的な要素もないし、どうしようかなと思ったんです。そしたら、北野さんが、「通常、音楽が入る場面から全部、音楽を抜きましょうか」というので、「そうですね。面白いですね」って僕も答えちゃって(笑)。それで通常音楽が入るところを極力音楽を抜いたんですよ。それがすごくうまくいったと思うんですよね。あとね、「朗々とした大きな感じじゃなくて、シンプルな、寄せてはかえすようなメロディ」と言われていて、僕としては「それはミニマルの精神と同じだから」と理解しましたね。」

Blog. 「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」北野武映画 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

この映画の音楽制作にあたっては、当時コンサートツアーとスケジュールが重なっていた久石譲は一旦断ったという経緯がある。その時北野武監督はコンサートツアーが終わるまで一ヶ月間待つという決断をした。一般的にはあり得ない画期的なことで、音楽家のスケジュールのために映画スタッフをその間拘束することになり膨大な出費にもつながる。そこまでしての強いオファーだったことがうかがえるエピソードである。

当初想定していたメインテーマはサティ風のものだったが、「サイレントラブ」を聴いた北野武監督はこの曲をメインテーマにすえることを強く希望。結果こちらが採用され、サティ風の楽曲は映画のサブテーマにまわることになった。北野武監督は前作『その男、凶暴につき』でサティの楽曲を使用していて、そういう背景と監督の判断によるところも大きかったようだ。

 

 

久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』

1. Silent Love (Main Theme)
2. Clifside Waltz I
3. Island Song
4. Silent Love (In Search Of Something)
5. Bus Stop
6. While At Work
7. Clifside Waltz II
8. Solitude
9. Melody Of Love
10. Silent Love (Forever)
11. Alone
12. Next Is My Turn
13. Wave Cruising
14. Clifside Waltz III

All Composed by Joe Hisaishi
Produced by Joe Hisaishi
Arranged by Joe Hisaishi

Recorded at Wonder Station

Musicians:
Piano / Joe Hisaishi
Guitar / Hiroki Miyano
Bass / Makoto Saito
Violin / Masatsugu Shinozaki
Cello / Masami Horisawa
Vocal / Junko Hirotani
Fairlight Programming / Joe Hisaishi

 

 

なお発売後の経過により一度廃盤となった本作品は、2001年にワンダーランド・レコードより復刻・再販させることとなった。ジャケットが一新され、リマスター音源として復刻されている。収録内容はオリジナル盤と同一である。

 

2001年6月28日 CD発売 WRCT-1002

あの夏、いちばん静かな海 リマスター

 

 

Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.9』

1991年9月20日 CD発売

 

”ニュー・サウンズ・イン・ブラス”シリーズの中から特別によりすぐった名演奏の数々…。ダイナミックで一味違ったポップな演奏をお楽しみください。

指揮:岩井直溥
演奏:東京佼成ウィンドオーケストラ

ゲスト・ミュージシャン:
Drums 猪俣猛
Bass 荒川康男
Trumpet 数原晋 他

 

 

久石譲が編曲を手がけた「哀愁のアダージョ」が収録されている。オリジナルLP発売時(1978年 第6集)は本名名義となっているため、久石譲ではなく藤沢守名義となっている。

 

 

曲目解説

1.レッツ・ダンス
1819年、カール・マリア・フォン・ウェーバーの手によって作曲されたこの曲は、1934年、米国NBCの広告放送出演の為に作られた楽団のテーマ曲として使用された。もちろん使用に際しては当時のアメリカを反映させジャズ風にアレンジされた事は言うまでもない。この曲とは、ウェーバーの「舞踏への勧誘」op.65であり、この楽団こそ「スウィングの王様」として世界に知れ渡った、ベニー・グッドマン率いるベニー・グッドマン楽団であった。そして、この後もこの曲は、当楽団のテーマ曲として親しまれてきたのである。1909年生まれのベニー・グッドマン、テレビのコマーシャルに出演していたのを覚えている人も多いのではないだろうか。クラリネットをフューチュアーした、スムーズなサックス群のソリとメカニックなブラス群のアタック、リズムリフ等、グッドマン・サウンズをブラスに再現させたアレンジの見事さは、アレンジャー岩井直溥の独壇場である。又演奏においても、ドラム猪俣猛、ベース荒川康男、ギター中牟礼貞則というメンバーに、クラリネット佐野正明、トランペット数原晋、T.Sax宮沢昭という顔ぶれは、今日考えられる中でも最高のアーティストぞろい、という事になりそうだ。猪俣のドライブするドラミングを中心に、それぞれのセクションがトップのリードで一丸となりドライブする。佼成ウィンド・オーケストラの多才な一面がうかがえる。吹奏楽がこんなに活き活きしていると、聞いていて嬉しくなってしまう。スウィングの醍醐味を充分味わう事のできるレパートリーである。

 

2.ストレンジャー・イン・パラダイス
ミュージカル「キスメット」の主題曲として発表された曲だが、原曲のボロディン作、歌劇「イゴール公」のテーマからの編曲と言った方が正確である。吹奏楽コンクールでもしばしば「イゴール公、ダッタン人の踊り」は演奏されるが、この様な軽い編曲、気楽なスタイルも良いもので、全般に音の厚みがないので、プログラムの中間部で演奏すると良い。

 

3.インテルメッツォ・ナンバーワン
スウェーデンの人気ロックグループ、”アバ”が演奏しヒットした古典調の曲。ベニー・アンダーソンが作曲となっているが、大変クラシカルな和声と形式ながら、原曲が何んであるのか不明である。アバのレパートリーとしては珍しく楽器演奏中心の曲で、ポピュラーに不馴れなバンドでも入門曲として演奏できそうだし、編曲も吹奏楽向きで優れている。

 

4.サンバでミネルバ
ミネルバは武芸の女神のこと。作曲者の土井慶子はヤマハ音楽教育システムで勉強、「自ら創り、自ら演奏する」教育理念の中で育った若いエレクトーン奏者である。サンバ特有の細かく速いリズムに乗って、木管と金管群の掛合いで全編小気味よいテーマが流れる。技術的にも難しい曲でなく、又この様に単に演奏するだけでなく、自らが作曲しそれを演奏する姿勢は、今の吹奏楽界にはまだ例もなく、今後バンドメンバーの中から、この様な自作自演者が生まれて来ることを期待したいものである。

 

5.ボイジャー
ヤマハ音楽教育システムでは、沢山の小・中学生が音楽の総合力を身につける便局をしているが、この曲は13歳の少女(中学生)の作品である。題名の通り、宇宙の壮大さを表すようなスケールの大きな作品だ。既成曲を演奏するだけでなく、自らも音楽を作ると言う意味は何か、同世代の皆さんに是非演奏していただきたい曲です。

 

6.ドント・セイ・ザット・アゲイン
人気絶頂のイギリスのジャズ/ファンク・バンド、「シャカタク」が演奏した軽快なサンバ。にぎやかなラテン・パーカッションの連打が続く中、あくまで都会的に洗練されたセンスが、上品さを保つ軽快なサンバだ。

 

7.松田聖子ヒット・メドレー
なんとナント!、ニュー・サウンズに流行歌の登場、いや驚きました。それも問答無用の聖子ちゃんメドレーとは!!しかし面白い。ハートのイアリング、赤いスイートピー、Rock’n Rouge、それにペンギンとビールのコマーシャルで大ヒットのSweet Memories。これは編曲者の力量勝ち。皆んなで楽しもうよ。

 

8.ケアレス・ウィスパー
イギリス出身のジョージ・マイケルとアンドリュー・レッジレー組の作品。まるで日本の歌謡曲を思わせるような作風で、サックスを中心にウィットに歌い上げる。短調、スローロック調は日本調と言うのか、ヨーロッパ風と言うのか……。本編唯一のしっとりとした作品、聴衆にほのぼのとした感じを与えること受け合いだ。

 

9.ダンシング・クィーン
若者の間にファンの多い、スウェーデン出身グループ、”アバ”の演奏で大ヒットしたナウな曲。小気味より軽快なリズムに流れる構成の簡単な小品だが、メロディー、ハーモニーの味も上品で、木管と金管セクション掛け合いが見事。フルート、クラリネット等高音木管に細かな運指はあるが、うまくリズムに乗れれば、演奏も楽しくなるだろう。

 

10.燃える想い
恒例の世界歌謡祭の入賞曲(第8回、1977年度)。コーラスグループ、ラッグスの演奏で登場、見事入賞しましたが、歌謡祭当日よりむしろその後に評価が高まり、数ヶ月にわたりヒットパレード曲としておなじみとなった。いわゆる歌の編曲だがら、全編を通じて同テンポで快調に飛ばされているが、後半には転調もあり、アンコール曲などによい。

 

11.哀愁のアダージョ
スペインの作曲家ミカエル・バケスのクラシック曲をムード調ポップスに編曲したもの。まるでメロドラマを思わせる甘くせつないテーマだが、編曲は3/4拍子を少し速目のモデラートと快調なアレグロに交互に置きかえ、変化を求めている。リズム形に少しややっこしさもあるが、馴れてしまえば問題ない。全体のパートのバランスが鍵となるだろう。

 

12.ミュージカル”ソフィスティケイテッド・レディーズ”メドレー
1981年以来、ブロードウェイで大ヒットの作品だが、普通のミュージカルではない。バンドの演奏が主役なのだ。今は亡きジャズの巨匠デューク・エリントンの作品を抜萃したもので、この編曲もなつかしい”パーディド”ほか5曲のスイングから構成されたスケールの大きなもの。エリントンならではのピアノ、バリトン・サックスのソロ等、ジャズの片鱗に触れられる。演奏も見事、大編成の吹奏楽は腕達者揃、本家のビッグ・バンドも真青と言ったところだ。

[石上禮男]

※解説は発売当初のものを転用しました。

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.9

1.レッツ・ダンス Let’s Dance
2.ストレンジャー・イン・パラダイス Stranger in Paradise
3.インテルメッツォ・ナンバーワン Intermezzo No.1
4.サンバでミネルバ Samba de Minerva
5.ボイジャー Voyager
6.ドント・セイ・ザット・アゲイン Don’t Say That Again
7.松田聖子ヒット・メドレー
ハートのイアリング~赤いスイートピー~Rock’n Rouge~Sweet Memories
8.ケアレス・ウィスパー Careless Whisper
9.ダンシング・クィーン Dancing Queen
10.燃える想い Can’t Hide My Love
11.哀愁のアダージョ Adagio Cardinal
12.ミュージカル”ソフィスティケイテッド・レディーズ”メドレー
オーヴァチュア~昔はよかったね~ソフィスティケイテッド・レディーズ~パーディド~スイングがなければ意味がない~ロッキン・リズム
Overture~Things Ain’t What They Used to Be~Sophisticated Ladies~Perdido~It Don’t Mean a Thing~Rockin’ In Rhythm

編曲:
岩井直溥 1,3,4,6,7,8,9
小野崎孝輔 2,10
梶谷修 5
藤沢守 11
中川賢二 12

 

Disc. 久石譲 『NASA 未来から落ちてきた男』 *Unreleased

1991年8月23日 TV放送

 

フジテレビ系ドラマ
「金曜ドラマシアター 終戦記念スペシャル NASA ~未来から落ちてきた男~」
脚本:鎌田敏夫 音楽:久石譲 出演:三上博史、中井貴一 他

放送日:1991年8月23日 21:03~23:07

 

 

久石譲の映画・TV未発表テーマ曲を集めたアルバム『B+1 Original Movie’s Sound Track Themes』に、メインテーマ「As time passes」は収録されている。

本編ではほかにも、メインテーマ曲のリズムなし/スローテンポver.なども聴くことができる。ここではメロディの旋律もピアノではなくシンセサイザーのパンフルート系の音色になっている。またシーンのための短い場面音楽など、この作品のために書き下ろされたBGMがふんだんに使われている。

おもしろいのは、北野武監督映画「Sonatine ソナチネ」のメインテーマを彷彿とさせるモチーフを聴くことができる。時系列に見たときに、このモチーフがその後「ソナチネ」として発展していった可能性はあるのかもしれない。

 

1992年7月17日VHSにて発売されたが、その後DVD化もされていない作品。

 

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Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE / THE UNIVERSE WITHIN』

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1991年7月1日 CD発売 NACL-1038
1994年3月21日 CD発売 NACL-1513

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

 

~三次元 音が飛びかう 包み込む~
久石譲のファンタジック・インナースペースへの航海 スペシャル・ヴァージョン

 

 

楽曲解説

1.THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version
初めてCDをお聞きになった時、「おや?」と思われる方があるかもしれません。「一体どこが空間的な立体音響なのだろう?」でも他のCD(できれば”THE UNIVERSE WITHIN”に入っている同じ曲)と聞きくらべてみてください。こちらの方が格段に広がり感があるのがお分かりいただけるでしょう。つまり、3次元的な広がりがこのミックスのテーマです。

2.VOICE OF SILENCE
ヴォイスによって作られた大きな音空間の中でサックスが自由に動き回り遊んでいます。シンプルですが広い音場がよくわかる曲です。

4.TOUR IN CELL
この曲では、パーカッションのリヴァーブやピアノのリヴァーブを後方に飛ばして前進する感じを出してみたつもりです。ただ、音の世界では、前後の関係はよく間違えられる(普段は視覚のおかげで前後はほとんど間違えない)ので、あまりよく分からない時があるかもしれません。そんな時は、目をとじてリラックスした状態で聞いてみて下さい。ほら、あなたの回りを音が通りすぎてゆくでしょう。

5.MICROWORLD
この曲では、ベーシックなパートを担当するオルガンが空間的に配置され、その中をいろんな楽器が自在に動いています。ミクロの世界での分子の動きをイメージしてみました。

6.HUMAN WAVE
この曲では、ハープをダイナミックに動かしてみました。まるで竜巻のように、あなたの周りをぐるぐる回りながら、上昇下降をくりかえしているのがよくわかると思います。

7.ANIMA PORTRAIT
この曲では音につつみ込まれる感じ(囲にょう感といいます)を出してみました。ピアノとシンセの金属音だけのシンプルな曲ですが、これだけでも十分に音につつみ込まれる感じがします。

8.BIRTH
この曲も、特に奇をてらわず空間的な広がり感を追求してみました。

9.DÉJÁVU
この曲では、ドライな音場を基本として、シンセのメロの部分で急に音場がウェットになるようにしてみました。こうすることにより、後方に広がる大きな音場がよく知覚できるようになったと思います。

10.ONE NIGHT DREAM
この曲は、ドライな音場を基本とし、そこにヴォイスの「ハーッ」という音を空間的に配置しました。大きなひろがりはありませんが、ヴォイスがあなたの頭上を通り越して、反対側に消えてゆくのがよく分かるでしょう。

11.MIND SPACE
この曲では、小宇宙「人体」の広大な空間をイメージしました。イントロから出てくるカリンバの作り出す音場と、ヴォイス及びストリングスの作り出す空間の対比を聞いて下さい。

12.THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version
この曲は、このアルバムで唯一の生オケの曲です。ここでは、特に奇をてらわず、2000人程度のコンサートホールの音場をシュミレートしてみました。つまり反射音の到来方向を空間的に配置してみたわけです。目をとじると、あたかもホールの中央にいて、ステージ上の演奏を聞いているかのようです。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

※3.INNER VOYAGEは楽曲解説掲載なし

 

 

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1. THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~
2. VOICE OF SILENCE ~静寂の中の初声~
3. INNER VOYAGE ~内なる宇宙への航海(たびだち)~
4. TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
5. MICROWORLD ~10数ミクロンの遠景~
6. HUMAN WAVE ~60兆のさざなみ~
7. ANIMA PORTRAIT ~魂の肖像~
8. BIRTH ~生命の歓び~
9. DÉJÁVU ~わればかりかく思うにや~
10. ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
11. MIND SPACE ~永遠の亜空間物語~
12. THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~

COMPOSE & ARRANGEMENT by JOE HISAISHI
PIANO:JOE HISAISHI

PRODUCED by JOE HISAISHI

RECORDED at WONDER STATION, NIKKATSU STUDIO CENTER
MIXED at FREEDOM STUDIO

 

Disc. 神保彰 『GATHERING WELCOME TO ANIMATION WORLD』

神保彰 GATHERING

1991年6月25日 CD発売 TKCA-30301

 

カシオペア 神保彰のプロデュースによるジブリ・カバーアルバム
全曲英語詞、歌も外国人というヴォーカル・アルバム
オリジナルの久石譲編曲とは趣向の違う大人な企画盤

 

 

神保彰 GATHERING

1. MAUSICAÄ 〈風の谷のナウシカ〉 (風の谷のナウシカ)
2. GAZNIG ON 〈魔法のぬくもり〉 (魔女の宅急便)
3. LOST PARADISE 〈失われた楽園〉 (天空の城ラピュタ)
4. TOTORO 〈となりのトトロ〉 (となりのトトロ)
5. FRUITFUL LAND 〈遠い日々〉 (風の谷のナウシカ)
6. LAPUTA 〈君をのせて〉 (天空の城ラピュタ)
7. LITTLE LOST 〈まいご〉 (となりのトトロ)
8. SEASONS 〈めぐる季節〉 (魔女の宅急便)

プロデュース:神保彰
編曲:デクレ・ナカモト
訳詞:メアリー・スティックルス

全作曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『ふたり サウンド・シアター・ライブラリー』

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』

1991年4月21日 CD発売 NACL-1024
1995年2月21日 CD発売 NACL-1516
2001年10月30日 CD発売 WRCT-1003

 

1991年公開 映画「ふたり」
監督:大林宣彦 音楽:久石譲 出演:石田ひかり 他

 

 

音楽監督から 久石譲

ちょっと優しく

大林監督の声はとても魅力的だ。優しくて暖かで、モダンで、そう、男が男らしくいられた時代のカッコ良さがある。大林監督の手はとても大きい。その手でピアノも弾くし作曲もされる。そして驚くほど音楽が好きで信じられないほど音楽について詳しい。

大林監督にお会いしていると本当に楽しい。僕たちはこの都会の大人の社会で生活しているわけで、嫌なことや悲しいことが日々襲ってくる。でもそんなささくれだった心も、大林監督にお会いするとスッと身体の力が抜けて行き、少年の日の心が戻ってくる様な気がする。だから実は毎日でもお会いしたい。そうすればちょっと人に優しくなれるかも知れないから。

ある日、僕達はピアノの前に座っていた。すでにその映画のなかで使用するシューマンとモーツァルトの楽曲は録音を終えていた。そして僕が書いたメインテーマ用のデモテープを1~2回聞いた。ピアノで弾きだそうとした時には、すでに監督は歌い出されていた。それも音程一つ間違えないで。翌日、その歌詞が送られてきた。「昔人の心に、言葉、一つ生まれて……」映画『ふたり』の主題歌『草の想い』が誕生したのだ。

そして僕には歌手、大林宣彦さんのデビューが当然のことに思えた。でもシャイな監督は一人で歌うのを「ウーン…」と首をひねり、問わず語りの眼差しで、僕の方を振り向いたので僕も「ウーン…」と答えた。そこで奥様でありプロデューサーである恭子さんが「ふたり」なのだから「ふたり」で歌えば、という画期的な裁定を下した。大林宣彦&フレンズが歌う『草の想い』はこうして巷間に流れることになった。

映画『ふたり』との出会いはとても幸せだった。すばらしい作品を担当できるなんて音楽家にとって最高の喜びだ。中には8分台の長さの音楽が幾つかあって難しかったのだけれども、そのハードルを越えることにかえって燃えた。

クライマックスの後で、母親が父親に語りかけるシーンがある。「あなた…」「風呂はまだ…」変ロ長調のストリングスの和音が妻であり、母親である一人の女性の台詞と絡みながら徹かに聞こえてくる。静けさと優しさと愛に満ちたシーンだ。

人が人を許しあい、あるいは認めあい、喜びも悲しみも寂しさもすべてそのまま受け入れて生きていく。ほとんど宗教的とも言えるその深さは、この映画が真の傑作であることを決定的なものとしている。

僕はこの映画を3回見る事をお薦めする。1回目は友達と、そうすれば友情の有り難さが分かり、2回目は恋人と、そうすればかけがいのないものが分かり、3回目は父親と、そうすれば誰よりもあなたを愛している人が分かる。

大林監督とお会いしていると本当に楽しい。でも、忙しい監督に毎日お会いするわけにも行かないので僕は大林さんの映画を沢山見ることにした。そうすればちょっと、人に優しくなれるかも知れないから。

Blog. 映画『ふたり』(1991) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより

 

 

ふたり・音楽制作日記

1990年
5月21日:大林監督からお電話を頂き新しい音楽制作の依頼を受ける。
5月22日:台本が届く。
5月25日:大林氏の事務所PSCでの初顔合わせを行う。撮影前にいくつかのシーンに対して、音楽を作る必要があることが判明する。
6月2日:実加の弾く曲をシューマンの飛翔に決め監督にお伝えする。
6月12日:アバコスタジオにてアバコの林氏とPSC大島氏と打合せ、発表会のシーンの音楽と他のシーン用の音楽について、締め切りが7月1日に設定される。
6月16日:発表会のシーンのピアノ曲3曲を決定する。(モーツァルト・ソナタ、シューマン・ノヴェレッテ、シューマン・飛翔)
6月20日:アバコ・スタジオ302stにて18:00からピアノ3曲の録音を行う。
6月22日:大林監督からテーマ曲の「草の想い」(この時点では愛と哀しみのバラードというタイトルであった)の歌詞が届く。
6月24日:ワンダーステーション1stにて14時~21時までテーマ曲の録音。大林監督が仮歌を入れてくださる。
7月9日:ワンダーステーション1stにて13時~17時30分まで島崎和歌子さんによるテーマ曲の歌入れをする。
9月18日:ワンダーステーション1stにて13時から本編音楽制作の開始。
9月19日:ワンダーステーション1stにて13時から22時までレコーディング。
9月21日:ワンダーステーション1stにて13時から20時までレコーディング。最終的な監督との電話での打合せで全42曲に決定。
9月22日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。この日は8曲作る。
9月23日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。最終ロールのR-9が届く。
9月25日:テーマ曲、愛と哀しみのバラードの正式タイトルが「草の想い」となる。2番の歌詞も上がってくる。またこの曲を大林監督、久石氏のふたりで唄うということも決定。
9月26日:ワンダーステーション1stにて9時から中嶋朋子さんによるテーマ曲の歌入れ、大林監督も陣中見舞にいらっしゃる。
9月27日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までレコーディング。
9月28日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。オープニングとラストを仕上げる。
9月29日:ワンダーステーション1stにて13時から29時までレコーディング。午後8時より大林監督の唄入れ。
9月30日:ワンダーステーション1stにて13時から28時までと2stで13時~23時まで2つのスタジオを併用してトラックダウン。大林監督も駆けつけて下さる。
10月1日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までと2stで13時~23時まで昨日同様、2つのスタジオを併用してトラックダウン。これで全作業が終了。大林さんがワイン等のお土産を持ってきて下さり、作業の終了を祝う。午前3時に全員で「草の想い」を大合唱。

(ふたり・音楽制作日記 ~リマスター盤 CDライナーノーツより)

 

 

今度、NECアベニューから、今まであったレーベルの中に新シリーズ”サウンド・シアター・ライブラリー”を設けて、積極的に映画音楽のCDを出していこうと思っています。基本的に大きな柱が二つあって、一つは日本の良質な映画音楽を出していこうというもので、もう一つは、映画からイメージを受けた耳で聴くサウンドトラックみたいな形で、映像を抜いた新しいサウンド・シアターというか、そういう新しい試みが出来ればいいな、と考えているんです。もっと言えば、実際にサウンドトラックで作った曲ではなく、新たに歌で作り直したりという、そういったことも当然起こってくるでしょう。もちろんベーシックには映画というものを置いてありますけど、映像との関わり合いというか、そういった関係の中で起こり得る、これからのオーディオ・ヴィジュアル時代にあるべきいろんな試みが出来ればいいと思っています。

”サウンド・シアター・ライブラリー”の大きな特徴は、CDに脚本が全部ついてくることです。それによって自分達が映画に対して音との関係とか、映像があるために納得してしまうようなことを、見ないために、脚本を読んで音を聴いてイメージを喚起できることもあるし、その方がよほどイマジネーション豊かなわけ。とりあえず3月21日に「仔鹿物語」を出し、同時に大林宣彦監督自身が歌っている「ふたり」のシングルを、4月にそのサウンドトラックを出す予定です。このシリーズで大事なことは、単発で出してもあまり見向いてもらいないことを、こういったシリーズにして形にすることによって注目してもらうことであり、映画音楽にスポットを当てるという意味では非常に効果的なんです。今回脚本の中に音楽が入る箇所は示さなかったんですが、何かの作品ではやると思います。ただ、専門家用の企画になると困るので、もっと一般の人に楽しめるように、あまり細かい視点までは入れないつもりです。やはりこれ自体、エンターテインメントでありたいものですよね。

Blog. 「キネマ旬報 1991年4月下旬号 No.1056」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

かつて僕は多くの映画から沢山のことを学んだ。人が生きることで出会う様々な喜び、悲しみ、愛と憎しみ、映画は実生活では体験しえない程の人生を見せてくれた。そしてほんのすこし賢くなって僕は人に対してちょっぴり優しくなれた。

小さいころ僕の生まれた町では二つの映画館があり週変わりで3本づつ、月に24本以上の映画が上演され、僕はそのすべてを見た。アクション物から恋愛もの、西部劇から怪談物まで映画館の真暗闇のなかで息を殺してワクワクしながら見守っていた。そして映画館を出てきたとき、その映画の主人公になったつもりでさっそうと歩きながら、口をついて出てきたのが映画音楽だった。それは今でも変わっていない。

”タラのテーマ”(風と共に去りぬ)”ツナイト”(ウエストサイド物語)”アズ・タイム・ゴーズ・バイ”(カサブランカ)”ムーンリバー”(ティファニーで朝食を)今でもこのメロディーが流れて来たら映画のシーンが浮かんできてジーンとしてしまう。

そして今、音楽の道に進んで、それが映画と関わり合うなんて何てすてきなことだろう。僕は映画音楽が大好きだ。

しかし今映画音楽の現状は、日本の映画の現状と同じくらい悲惨だと思う。優れた監督もいれば優れたアクターもいる。また映画を作るための資金もある。なのに何故日本ではこうも閉鎖的で非創造的な環境になってしまったのか? ジリ貧の音楽予算と苛酷なスケジュール、そして劇伴と呼ばれるようなイージーな作曲家側の姿勢。言いだしたらきりがない。

だが、僕たちは現状を嘆いたり批判するだけで良いのだろうか? それでは何も変わらない。まず自分でやれることからやっていくべきなのだ。かつて映画館で見た夢を取り戻すためにも。

(サウンド・シアター・ライブラリー パンフレットより)

 

 

 

「昔、ひとの心に、言葉ひとつ、生まれて、……」
-久石譲さんとの、幸福な、対話

大林宣彦 91.1.6

久石譲さんと話していると、楽しい。こちらの目をきっちりと見て、選び抜かれた言葉を誠実に投げかけてくる。ひとつひとつの言葉が積み重ねられて、次第に、正確に、久石さんのチャーミングなお人柄が、目の前にくっきりと造形されてくる。その久石さんの姿に見惚れながら、こちらも己れの言葉を大切に紡いでいると、いつの間にやら久石さんの笑顔に誘われて、ぼく自身も良い人間になっていくようで、心が洗われるようで、とても気持が良い。そしてそれは、まるで久石さんの音楽を聴いているような心地なのだ。

人は誰でも、言葉でものを考え、言葉で自己を表現し、言葉で相手を受け止める。それを更に自分に似つかわしく、しかも相手に心地良く伝えるために、例えば絵を描き、例えば映画をつくり、例えば音楽にその想いを託する。久石さんの音楽は、久石譲さんの言葉が、最も幸福に表現されたものなのだろう。

そういう意味で、久石さんの音楽は、いわば、動詞だ。日本では、音楽とはどちらかといえば形容詞のようなものと考えられることが多いが、久石さんの音楽は、久石譲というひとりの人間の、想念を伝えるひとつの意志なのだ。そこに音楽というものが本来的に持つ力と美しさとがある。あらゆる芸術は、人間を幸福にするために生み出されてきた。久石さんはいつでもその幸福について考え、実行する。それが音楽となってぼくらの心を揺さぶる。幸福に生きるべく勇気を鼓舞する。そして例えば、あした、もう少しだけよい人間になろう、他人に優しく生きていこう、と決意し、自分自身に約束する。久石さんの音楽は、そのようにして、ぼくらの暮しに働きかけてくるのだ。

そういう久石さんの素晴らしさは、不平不満を一切口にしないという、日常の中での強い意志力にも表れている。この日本という国で、芸術家が幸福であることはまことに難しい。なにかにつけて愚痴も言いたくもなることばかりだ。しかし久石さんはいつでも幸福そうに微笑んでいる。「ぼくは大好きな音楽と一緒に生きていて、そして毎日、一歩ずつ、ぼくの理想の音楽に近づいている。だから、ぼくは幸福です」と久石さんは言う。そうなのだ。自らの幸福を信じる力こそが、創造の源なのだ。自らの幸福に感謝する心こそが、優れた芸術の温床なのだ。そういう幸福と共に暮すことへの畏れと誇りと責任感とが、例えば国際的な音楽家たちの、久石さんの音楽への共感を呼び起し、良き強力となって表れる。

ぼくの最新作の映画『ふたり』の音楽監督は久石さんである。ここには同じ言葉で語り合える二人の人間同士が、お互いの生きる証、愛そのものとしてその人生の中で選び取った、映画と音楽とが、幸福に対話している。この幸福感の中で、久石さんがほとんど即興的に生み出したメロディに、ぼくがほとんど反応するように手操り寄せた言葉たちは、思えば僕と久石さんとの対話のような詞となっていた。

-昔、ひとの心に、言葉ひとつ、生まれて、……聞かせてね、この声を、草の想い。

おまけに、この主題歌を、久石さんとぼくとで唄っちまったというのは、幸福過ぎてのハシャギ過ぎか、あるいはきっちりプロフェッショナルの仕事であるのか、そこのところは賢明なる諸姉諸兄の、判断に委ねるべきであるだろうが。

さあ、久石さんの音楽が、始まる。言葉が聞こえてくる。きょうもまた、幸福だ。

(久石譲シンフォニックコンサート・プログラムより)

 

 

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』

プロローグ
1. 風の時間 -オープニング・テーマ
2. モノクローム
すぐ近くで…
3. 北尾家の人々
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 白い指先
明るい日
7. 実加と真子
8. 少女のままで
追憶
9. 別れの予感
10. 揺れるボタン
11. 姉の初恋
友だち
12. 風になって
13. いま泣いたカラスが…
14. 石段の道
15. 海の見える風景
16. 命の糸
17. 拍手の中の二人
卒業・入学
18. ふたりと二人
19. きらめきの瞬間
悪意
20. 汚された台本
21. 黒い電話
22. 震え
23. いたわり
24. 独り暮し
ミュージカル
25. 宴の光と影
26. 痛み
家族の絆
27. 淋しいひとたち
28. 失ったもの
エピローグ
29. 白いページ
30. 草の想い-ふたり・愛のテーマ

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

Recorded and Mixed at Wonder Station

「草の想い -ふたり・愛のテーマ」
作詞:大林宣彦 作曲:久石譲 歌:大林宣彦&FRIENDS

 

 

なお発売後一度廃盤となった本作品は、2001年にワンダーランド・レコードより復刻・再販させることとなった。ジャケットが一新されただけでなく、曲目構成も変更になっている。

 

2001年10月30日 CD発売 WRCT-1003

ふたり 再販

1. 草の想い~ふたり・愛のテーマ~
2. 風の時間
3. モノクローム
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 少女のままで
7. 別れの予感
8. 揺れるボタン
9. 姉の初恋
10. 風になって
11. 海の見える風景
12. きらめきの瞬間
13. 震え
14. いたわり
15. 独り暮し
16. 宴の光と影
17. 淋しいひとたち
18. 失ったもの
19. 白いページ

 

Disc. 中嶋朋子 『草の想い -千津子のテーマ-』

1991年4月21日 CDS発売 PIDL-1019

 

映画「ふたり」
監督:大林宣彦 音楽:久石譲

 

主題歌「草の想い」は大林宣彦&FRIENDSであるが、本作品は主題歌の1ヶ月後にリリースされたカバー盤。サウンドトラックにも収録されていない。伸びやかな歌唱と、8ビートのリズム&ベースが印象的な仕上がりとなっている。※編曲者が異なる

 

カップリングに収録された「わたし、いないの」は、映画「ふたり」イメージソングとクレジットされている。アコースティックギターの伴奏とゆったりと流れる歌声。後半にかけて少しバンドサウンドが重なるくらいで、ほぼギターとボーカルというシンプルな楽曲になっている。

ただ、この楽曲がサントラに収録された、いずれかのインストゥルメンタル楽曲がモチーフになっているのかは未確認である。

 

 

中嶋朋子による同曲発売の経緯は下記文献をご参照。

 

この一度聴いたら忘れられない魅力的なメロディーの生みの親は、『風の谷のナウシカ』や『となりのトトロ』などの映画音楽で多くのファンの心を掴んだ久石譲。大林監督の前作『北京的西瓜』(89)を映画館で見、その手づくり映画のあり方に感動し「今度、ぜひ大林さんの手づくり映画に手弁当で参加したい」とラブコールを送り、それに監督がさっそく応え、久石氏はそのまま尾道に直行、二百人に及ぶ尾道の女学生の出演者たちのオーディションの審査席に座ってしまった。そして海や山のロケハンに参加、その感動がそのままメロディーとなったもの。こうしてクラインク・イン前にすでに主題曲がつくられていたので、映画本編中いわば唄うダイアローグとして効果的に使用されることになった。全編に渡る映画音楽は、これほど映像と音楽とが幸福に出会えたことはないと思われるほどの出来栄えであるが、これも尾道の空気を共に吸い、味わったことの成果ともいえるだろう。さらに言えば監督版CDでFRIENDとして監督とふたり、陰の声で唄っているのは久石氏である。

中嶋朋子版のCD製作は、この地道に女優の道を歩む一少女への、石田ひかりとは逆の形でのご褒美である。監督はさらに映画では唄われなかった”わたし、いないの”を新たに千津子のイメージ・ソングとして作詞、久石譲のメロディーを添えて中嶋へ『ふたり』の想い出として贈った。

Blog. 映画『ふたり』(1991) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

草の想い 中嶋朋子

1. 草の想い -千津子のテーマ- 作詞:大林宣彦 作曲:久石譲 編曲:椎名和夫
2. わたし、いないの 作詞:大林宣彦 作曲:久石譲 編曲:椎名和夫
3. 草の想い (オリジナル・カラオケ)

 

Disc. 久石譲 『仔鹿物語 サウンド・シアター・ライブラリー』

久石譲 仔鹿物語

1991年3月21日 CD発売 NACL-1022

 

1991年公開 映画「仔鹿物語」
監督:澤田幸弘 音楽:久石譲 出演:三浦友和 他

 

 

今度、NECアベニューから、今まであったレーベルの中に新シリーズ”サウンド・シアター・ライブラリー”を設けて、積極的に映画音楽のCDを出していこうと思っています。基本的に大きな柱が二つあって、一つは日本の良質な映画音楽を出していこうというもので、もう一つは、映画からイメージを受けた耳で聴くサウンドトラックみたいな形で、映像を抜いた新しいサウンド・シアターというか、そういう新しい試みが出来ればいいな、と考えているんです。もっと言えば、実際にサウンドトラックで作った曲ではなく、新たに歌で作り直したりという、そういったことも当然起こってくるでしょう。もちろんベーシックには映画というものを置いてありますけど、映像との関わり合いというか、そういった関係の中で起こり得る、これからのオーディオ・ヴィジュアル時代にあるべきいろんな試みが出来ればいいと思っています。

”サウンド・シアター・ライブラリー”の大きな特徴は、CDに脚本が全部ついてくることです。それによって自分達が映画に対して音との関係とか、映像があるために納得してしまうようなことを、見ないために、脚本を読んで音を聴いてイメージを喚起できることもあるし、その方がよほどイマジネーション豊かなわけ。とりあえず3月21日に「仔鹿物語」を出し、同時に大林宣彦監督自身が歌っている「ふたり」のシングルを、4月にそのサウンドトラックを出す予定です。このシリーズで大事なことは、単発で出してもあまり見向いてもらいないことを、こういったシリーズにして形にすることによって注目してもらうことであり、映画音楽にスポットを当てるという意味では非常に効果的なんです。今回脚本の中に音楽が入る箇所は示さなかったんですが、何かの作品ではやると思います。ただ、専門家用の企画になると困るので、もっと一般の人に楽しめるように、あまり細かい視点までは入れないつもりです。やはりこれ自体、エンターテインメントでありたいものですよね。

Blog. 「キネマ旬報 1991年4月下旬号 No.1056」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

かつて僕は多くの映画から沢山のことを学んだ。人が生きることで出会う様々な喜び、悲しみ、愛と憎しみ、映画は実生活では体験しえない程の人生を見せてくれた。そしてほんのすこし賢くなって僕は人に対してちょっぴり優しくなれた。

小さいころ僕の生まれた町では二つの映画館があり週変わりで3本づつ、月に24本以上の映画が上演され、僕はそのすべてを見た。アクション物から恋愛もの、西部劇から怪談物まで映画館の真暗闇のなかで息を殺してワクワクしながら見守っていた。そして映画館を出てきたとき、その映画の主人公になったつもりでさっそうと歩きながら、口をついて出てきたのが映画音楽だった。それは今でも変わっていない。

”タラのテーマ”(風と共に去りぬ)”ツナイト”(ウエストサイド物語)”アズ・タイム・ゴーズ・バイ”(カサブランカ)”ムーンリバー”(ティファニーで朝食を)今でもこのメロディーが流れて来たら映画のシーンが浮かんできてジーンとしてしまう。

そして今、音楽の道に進んで、それが映画と関わり合うなんて何てすてきなことだろう。僕は映画音楽が大好きだ。

しかし今映画音楽の現状は、日本の映画の現状と同じくらい悲惨だと思う。優れた監督もいれば優れたアクターもいる。また映画を作るための資金もある。なのに何故日本ではこうも閉鎖的で非創造的な環境になってしまったのか? ジリ貧の音楽予算と苛酷なスケジュール、そして劇伴と呼ばれるようなイージーな作曲家側の姿勢。言いだしたらきりがない。

だが、僕たちは現状を嘆いたり批判するだけで良いのだろうか? それでは何も変わらない。まず自分でやれることからやっていくべきなのだ。かつて映画館で見た夢を取り戻すためにも。

(サウンド・シアター・ライブラリー パンフレットより)

 

 

久石譲 仔鹿物語

釧路湿原・秋
1. 釧路湿原
2. 別海への道
3. 牧場のある風景
4. 夕映えの湖
出逢い
5. 恋するふたり
6. 流氷とエゾ鹿
7. 墓標
8. 花子との別れ
9. 出逢い(メインテーマ)
駅(ステーション)
10. 塘路駅にて
11. 初乳
12. 仔鹿のソネット
家族の肖像
13. 家族の肖像
恋人たちの渚
14. 恋人たちの渚
走れラッキー
15. 突然の出来事
16. 約束
17. 走れラッキー
父の背中
18. 父の背中
暗闇の中で
19. 行者葫
20. 日暮の雑木林
21. 暗闇の中で
エンジェル・ハート
22. 家族の絆
23. 誓い
ラッキーを救え
24. 愛のリレーPart 1
25. 愛のリレーPart 2
26. 愛のリレーPart 3
27. 愛のリレーPart 4
仔鹿と子供たち
28. 仔鹿と子供たち (メインテーマ)
老人と子供
29. 老人と子供
さよならの予感
30. 風立ちぬ
31. 野生のめざめ
32. さよなら列車
33. さよならの向こう側
希望へのUターン
34. 希望へのUターン
仔鹿物語〜メインテーマ〜
35. 仔鹿物語 〜メインテーマ〜

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

 

Disc. 大林宣彦 & FRIENDS 『草の想い』

1991年3月21日 CDS発売 NADL-1017

 

映画『ふたり』(監督:大林宣彦 音楽:久石譲)の主題歌。同作品サウンドトラックにも収録されている。大林宣彦監督と久石譲のデュエットという幻の楽曲。事の経緯としては大林監督の奥さんの発案である。

その後、この楽曲は久石譲オリジナル・インストゥルメンタル楽曲「Two of Us」としてさまざまなかたちで発展していくことになる。

 

 

草の想い 大林宣彦

1. 草の想い 作詞:大林宣彦 作曲・編曲:久石譲
2. 風の時間 「ふたり」オープニング曲
3. 草の想い (オリジナル・カラオケ)

 

Disc. 久石譲 『アニメージュ・ベスト・シンフォニー』

アニメージュ・ベスト・シンフォニー

1991年2月25日 CD発売 TKCA-30263
1991年2月25日 CT発売 TKTA-20119

 

スタジオジブリ作品 「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」まで
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

すべてオーケストラアレンジのシンフォニー・ベスト・アルバム

 

 

アニメージュ・ベスト・シンフォニー

1. 海の見える街 (魔女の宅急便 サントラより)
2. プロローグ~出会い (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
3. 五月の村 (となりのトトロ サントラより)
4. ウルスラの小屋ヘ (魔女の宅急便 サントラより)
5. 大いなる伝説 (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
6. Gran’ma Dola (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
7. パン屋の手伝い (魔女の宅急便 サントラより)
8. おじいさんのデッキブラシ (魔女の宅急便 サントラより)
9. 風の伝説 (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)
10. ねこバス (となりのトトロ サントラより)
11. 傷心のキキ (魔女の宅急便 サントラより)
12. よかったね (となりのトトロ サントラより)
13. 時間(とき)の城 (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
14. となりのトトロ (となりのトトロ サウンドブックより)
15. メイがいない (となりのトトロ サントラより)
16. はるかな地へ… (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)
17. デッキブラシでランデブー (魔女の宅急便 サントラよりより)
18. 谷への道 (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)

音楽/久石譲