Disc. 久石譲 『炎のアルペンローゼ 音楽編』

久石譲 炎のアルペンローゼ 音楽編

1985年5月25日 LP発売 25AGL-3007
1985年5月25日 CT発売 25AGC-2007
1987年6月25日 CD発売 30ATC-151
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71917

 

1985年放送 TVアニメ「炎のアルペンローゼ」
原作:赤石路代 音楽:久石譲

 

「夢のつばさ ~アルペンローゼ~」

1985年4月25日 EP発売 7AGS-2

夢のつばさ アルペンローゼ LP

夢のつばさ アルペンローゼ LP 2

(EPジャケット / EP盤)

 

 

久石譲 炎のアルペンローゼ 音楽編

1. 夢のつばさ~アルペンローゼ~ (オープニング・テーマ) (コニー)
2. 少女 (ジディのテーマ)
3. どんなときにも… (ランディのテーマ)
4. 追跡者
5. 変らぬ愛に (アルペンローゼの歌)
6. 過去をさがして
7. ひそかな不・思・議たち (夢のつばさ~アルペンローゼ~インストゥルメンタル)
8. レオンハルト=アッシェンバッハ
9. ハーケンクロイツ
10. 今はおやすみ
11. 僕がみた天使は…
12. 夢見心地で (やんちゃなエンジェル・インストゥルメンタル)
13. やんちゃなエンジェル (エンディング・テーマ) (コニー)

「夢のつばさ~アルペンローゼ~」
作詞:及川恒平 作曲・編曲:久石譲 歌:CONY

「やんちゃなエンジェル」
作詞:及川恒平 作曲:長沢ヒロ 編曲:久石譲

音楽制作クレジット表記なし

 

Disc. 梓みちよ 『いらっしゃい』

1985年5月2日 EP発売 07SH1638

 

A面「いらっしゃい」の編曲を久石譲が担当している。

 

梓みちよ いらっしゃい

(EPジャケット)

 

 

なお、同楽曲は、ベスト盤CDなど複数にて収録されている。

 

『ゴールデン☆ベスト 梓みちよ ニュー・シャンソン』

2005年3月24日 CD発売 MHCL-531

梓みちよ ゴールデンベスト

 

『エッセンシャル・ベスト 梓みちよ』

2007年12月19日 CD発売 MHCL-1259

エッセンシャル・ベスト 梓みちよ

ほか

 

 

梓みちよ いらっしゃい

1.いらっしゃい
作詞:伊藤薫 作曲:岡本朗 編曲:久石譲
2.サファイア色の午後
作詞:安井かずみ 作曲:加藤和彦 編曲:国吉良一

 

Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集』

1985年4月20日 LP発売

 

久石譲が吹奏楽アレンジを担当した「今夜はビート・イット」が収録されている。

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第6集からつづいた、一連の編曲ワークスはこの第13集にて終了している。ニュー・サウンズ・イン・ブラスのために吹奏楽アレンジを担当した楽曲は全13曲である。

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集 LP 1

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集 LP 2

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集 LP 3

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集 LP 4

(LPジャケット  / LP盤)

 

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス 第13集

1. マジック (編曲:岩井直溥)
2. ドント・セイ・ザット・アゲイン (編曲:岩井直溥)
3. 航海 (編曲:小六禮次郎)
4. 心の愛 (編曲:中川賢二)
5. スターダスト (編曲:小六禮次郎)
6. 松田聖子ヒット・メドレー (編曲:岩井直溥)
ハートのイアリング~赤いスイートピー~Rock’n Rouge~SWEET MEMORIES
7. 今夜はビート・イット (編曲:久石 譲)
8. ケアレス・ウィスパー (編曲:岩井直溥)
9. ランデヴー (編曲:中川賢二)

【ゲスト&ソロ・ミュージシャン】
猪俣 猛(Drs.)
荒川康男(E.B.)
津村泰彦(E.G.)
市川秀男(Pf.)
佐野正明/佐野博美(A.S.&S.S.)宮沢 昭(T.S.&S.S.)
数原 晋(Tp.)
鍵和田道男(Tb.)
山口弘治(Hr.)

 

Disc. 久石譲 『ふたり鷹 音楽編 2 MUSIC SELECTION 2』

1985年2月5日 LP発売 C25G0376
1985年2月5日 CT発売 25P-7366

 

フジテレビ系列アニメーション「ふたり鷹」
1984年9月27日~1985年7月12日 放送

原作:新谷かおる 音楽:久石譲

 

主題歌
オープニングテーマ – 『ハートブレイクCrossin’』
エンディングテーマ – 『サヨナラを言わないでくれ』

両曲
作詞 – 売野雅勇 / 作曲・編曲 – 芹澤廣明 / 歌 – 陣内孝則

 

 

(LPジャケット / LP盤)

 

 

A1. レッドゾーン ダンシング Red Zone Dancing (挿入歌)
A2. コンクリート トライアル Concrete Trial
A3. 母子ゲンカ Family Conflict
A4. カントリー ロード Country Road
A5. 特訓 Special Training
A6. ディスコ フィーバー Disco Fever
A7. アクシデント Accident
A8. ロンリネス Loneliness
A9. ハートブレイク Crossin’(ショートバージョン) Heartbreak Crossin’ (Short Version) (主題歌)

B1. ロッカバラードに針を Listen for a Rock-a-ballad (挿入歌)
B2. レセプション Reception
B3. 沢渡鷹イメージテーマ 2 TAKA SAWATARI Image Theme 2
B4. ワンウェイ ラブ One-way Love
B5. 緋沙子の涙 HISAKO in Tears
B6. 固い決意 Firm Resolution
B7. ファイト Fight
B8.ウイリー フィニッシュ Wheelie Finish
B9. サヨナラを言わないでくれ(ショートバージョン) Don’t say good-bye (Short Version) (主題歌)

A2-A8. 作曲・編曲:久石譲
A1. 作詞:四辻たかお 補作詞:荒井まゆみ 作曲:芹澤廣明 編曲・歌:Medical Soap
A9. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

B2-B8. 作曲・編曲:久石譲
B1. 作詞:四辻たかお 作曲:芹澤廣明 編曲・歌:Medical Soap
B9. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

 

Disc. CHAGE and ASKA 『Z=One』

1985年1月25日 LP発売 L12563
1985年2月25日 CD発売 YCCR-00028

 

チャゲ&飛鳥(CHAGE and ASKA)6枚目のオリジナルアルバム『Z=One』(ゾーン)。

久石譲が編曲を担当した2楽曲「メゾンノイローゼ」「マドンナ」が収録されている。なお同楽曲はSynthesizer Programmedとしても参加している。使用されているシンセサイザーは、DX-7、KURZWEIL、FAIRLIGHT CMI、PROPHET 5、JUNO-105、PRO ONE、PPG、MOOG、OVERHEIMであり、これからのなかから久石譲がいくつかを使用して楽曲編曲を担当している。

 

chage and aska Zone LP1

chage and aska Zone LP2

chage and aska Zone LP3

(LPジャケット / LP盤)

 

 

chage and aska zone

1.TWILIGHT ZONE
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三・飛鳥涼
2.棘
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:平野孝幸
3.J’s LIFE
作詞:松井五郎 作曲:CHAGE 編曲:Light House Project
4.標的(ターゲット)
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:平野孝幸
5.メゾンノイローゼ
作詞:松井五郎 作曲:CHAGE 編曲:久石譲
6.誘惑のベルが鳴る
作詞:松井五郎 作曲:CHAGE 編曲:瀬尾一三
7.マドンナ
作詞:松井五郎 作曲:CHAGE 編曲:久石譲
8.オンリー・ロンリー
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:平野孝幸
9.星屑のシャンデリア
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三
10.マリア (Back To The City)
作詞:松本一起 作曲:CHAGE 編曲:平野孝幸
11.さようならの幸せ
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三・飛鳥涼
12.真夜中の二人
作詞:松井五郎 作曲:CHAGE 編曲:平野孝幸
13.SHAKIN’ NIGHT
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:Light House Project

 

Disc. GARI 『金に捧げるビのバラード』

1985年1月21日 EP発売 7A0461

 

A面は映画の主題歌のようである。

 

(EPジャケット / EP盤)

 

1.金に捧げるビのバラード
作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬尋一 編曲:川村栄二
2.ソイヤソイヤ金塊巻
作詞:高田ひろお 作曲:久石譲 編曲:久石譲

 

Disc. 田中真弓 『美・銀座・Begin』

1984年 LP発売 JBX-25051

 

声優、田中真弓のオリジナルアルバム。久石譲は「噂のロマンス」「GINZAランデヴー」の2楽曲を作曲、楽曲提供している。また全10曲の編曲を担当している。

 

 

田中真弓 美 銀座 Begin 1

田中真弓 美 銀座 Begin 2

田中真弓 美 銀座 Begin 3

田中真弓 LP 5

(LPジャケット / LP盤)

 

side-1
1.銀座らぷそでい
作詩:荒木とよひさ 作曲:古田喜昭
2.夢売りキッド
作詩:荒木とよひさ 作曲:古田喜昭
3.雨のみゆき通り
作詩:荒木とよひさ 作曲:津田義彦
4.噂のロマンス
作詩:荒木とよひさ 作曲:久石譲
5.有楽町で逢いましょう
作詩:佐伯孝夫 作曲:吉田正

side-2
1.美・銀座・美・銀
作詩・作曲:津田義彦
2.二人の銀座
作詩:永六輔 作曲:The Ventures 歌:田中真弓/三ツ矢雄二
3.GINZAランデヴー
作詩:荒木とよひさ 作曲:久石譲
4.午前0時のシンデレラ
作詩:荒木とよひさ 作曲:津田義彦
5.銀座ワルツ ~愁いの人~
作詩:荒木とよひさ 作曲:古田喜昭

全編曲:久石譲

 

Disc. 井上陽水 『9.5カラット』

1984年12月21日 LP・CD・CT発売
2001年5月30日 CD発売 FLCF-3855
2009年3月25日 CD発売 FLCF-5008
2019年6月26日 UHQCD発売 FLCF5077

 

井上陽水が他のアーティストに提供した作品を自分で歌い直したセルフカバー・アルバム。久石譲が「ダンスはうまく踊れない」「飾りじゃないのよ涙は」の2曲で編曲を担当している。

 

オリジナル歌唱は下記のとおり。

「はーばーらいと」水谷豊
「ダンスはうまく踊れない」石川セリ
「TRANSIT」小林麻美
「A,B,C,D,」沢田研二
「恋の予感」安全地帯
「いっそ セレナーデ」井上陽水
「飾りじゃないのよ 涙は」中森明菜
「からたちの花」樋口可南子
「ワインレッドの心」安全地帯

 

1990年、2001年(デジタル・リマスター盤)、2009年(SHM-CD仕様)、2019年(UHQCD仕様)にCDが再リリースされている。

 

井上陽水 9.5カラット LP1

井上陽水 9.5カラット LP2

(LPジャケット / LP盤)

 

井上陽水 9.5カラット カセット 1

井上陽水 9.5カラット カセット 2

井上陽水 9.5カラット カセット 3

(カセットテープ)

 

 

井上陽水 9.5カラット

1.はーばーらいと
作詞:松本隆 作曲:井上陽水 編曲:星勝
2.ダンスはうまく踊れない
作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 編曲:久石譲
3.TRANSIT
作詞:松任谷由実 作曲:井上陽水 編曲:星勝
4.A.B.C.D.
作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 編曲:星勝
5.恋の予感
作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二 編曲:萩田光雄
6.いっそ セレナーデ
作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 編曲:星勝
7.飾りじゃないのよ涙は
作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 編曲:久石譲
8.からたちの花
作詞:流れ星犬太郎 作曲:井上陽水 編曲:星勝
9.ワインレッドの心
作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二 編曲:萩田光雄

 

Disc. 久石譲 『吉祥天女 イメージアルバム』

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1984年12月21日 CD発売 32ATC-4
1984年12月21日 LP発売 ANL-1038
1984年12月21日 CT発売 25AN-38
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71916
2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

 

「吉祥天女」
原作:吉田秋生 音楽:久石譲

第29回小学館漫画賞を受賞した名作コミックに久石譲がオリジナル音楽を書き下ろしたイメージアルバムの先駆的作品。

 

 

吉祥天女 音楽解説

一、天女伝説
「七宝充満の宝を降らし、国土にこれを施し給ふ」という、能楽「羽衣」の引用から物語は始まる。「天女の羽衣」を代々受け継ぎ、地上に降りた天女の末裔であるヒロイン。物語のベースに流れる「天人女房伝説」からイメージした、このアルバムのメインテーマ。

二、叶 小夜子
春の嵐に散る桜とともに、麻井由似子の通う高校に転校してきた少女・叶小夜子。彼女の不思議な魅力が、学園に静かな波紋のように広がっていく。「気になる転校生」をめぐって、なにかがゆっくりと動きはじめる。

三、遠野 涼
「春日高の浮世雲」の異名をとる軟派中の軟派、遠野涼はクラスのなかに難なくとけこんでいる小夜子に、ただひとりなにか異質なものを感じとる。自分をとりまくすべてのことを呪っていると言い放つ小夜子。一見、軽薄で明るい学園生活を送る涼は、今まで目をそらしてきた自分の過去に、ふたたび対峙する。

四、天女飛翔
今井久子や暁の指図で、小夜子を襲う不良グループ。男の暴力に対して、翔ぶかのように危機を脱していく小夜子。羽衣を血に染めて飛翔する天女のイメージ。

五、遠野 暁
叶家の莫大な財を手に入れるため、小夜子に近づく涼の従兄、遠野暁。ワナをはり小夜子と婚約にまでもちこむが、彼女の魅力にひきこまれ、微妙に変化していく。スノップな現実を象徴するキャラクターとしてイメージした曲。

六、魔性の女
国語教師の根津、暁の手下の大沢真、伯母の浮子、そして暁の父と、次々と葬りさっていく小夜子。血が流れるごとに彼女の魅力は妖しく増していく。幼時に受けた暴行から「女性であることの屈辱」を味わった彼女は、すべての男性に報復するかのように、その魔性を超常的なまでに発揮していく。

七、血の抗争
小夜子の祖父、叶泰造の死により、叶家の財産をねらう暁をはじめとする遠野家の計略。私欲にくらむ魑魅魍魎(ちみもうりょう)の中で、秘かに刃をとぎすます小夜子。

八、小夜子と涼
小夜子の魔性を目のあたりにして、むしろ畏敬の念をもつ涼。最初に会ったときから、涼の中に自分と同じ「傷つきやすい魂」を感じた小夜子。ふたりの心はつかの間、通いあうかにみえるが、暁の死に至り、涼は小夜子を葬ろうと銃を手にする。破滅の色調を帯びた、小夜子と涼のラブソング。

九、予感
暁の死により彼女の報復は終った。が、その魔性は、唯一、わかりあえる存在かもしれなかった涼をも殺してしまう。女性としての業を一身に背負ったかのような小夜子の精神(こころ)が孤高の涙にゆれる。

十、転生
”天女を妻にした男は幸福だったと思う?それとも……”

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

2018年Lag Recordsからアナログレコードが再発売されている。

2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

吉祥天女 イメージアルバム (アナログレコード)
KISSHO TENNYO [LP] [Analog]

 

 

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1. 天女伝説
2. 叶 小夜子
3. 遠野涼
4. 天女飛翔
5. 遠野暁
6. 魔性の女
7. 血の抗争
8. 小夜子と涼
9. 予感
10. 転生

プロデューサー:久石譲
作曲・編曲:久石譲
演奏:久石譲・福岡保子

録音スタジオ:
サンライズスタジオ
ジョーズステーション
59年9月10日~10月9日

使用楽器:
フェアライトCMI、プロフィット5、ヤマハDX7、リンドラム、ローランドMC-4、ハモンドオルガン、ローランドSH-101、ローランドTR-808

 

Disc. 久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

1984年12月1日 LP発売 WTP-90308
1984年12月1日 CT発売 ZH28-1466
1984年12月21日 CD発売 CA35-1098
1998年7月25日 CD発売 CPC8-3006
2013年9月18日 CD発売 TOCT-11604

 

1984年公開 映画「Wの悲劇」
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:薬師丸ひろ子 他

 

「あんた、いま、女優になるのよ」「顔ぶたないで、女優なんだから!」などの名言。役を得るためには、純潔も恋も犠牲にするドロドロの世界を見事に描いたバック・ステージものの傑作。そんな内容とは裏腹に久石譲による美しいピアノが流れる。大ヒット曲「Woman~Wの悲劇より~」も、もちろん収録。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

今こそ見直すべき澤井信一郎と久石譲の出発点

夏樹静子の同名ベストセラー小説を下敷きにしたユニークな”バックステージ・ドラマ”『Wの悲劇』(1984)は、その絶妙な脚本の構成とアンサンブルのいい役者陣の演技、そして計算と感性の行き届いた演出によって、今も胸を打つ逸品となった。劇中の劇団研究員さながらに、アイドル女優という枠から徐々にはみだし、大人の香りを醸し出していく薬師丸ひろ子は『メイン・テーマ』(1984・森田芳光監督)に続いての好演。誠実なる不動産屋の青年役で世良公則がさわやかな風を吹かせば、三田佳子が劇団『海』の看板女優を貫禄たっぷりに見せつける。役者稼業にすれた感じを違和感なく出す先輩役の三田村邦彦、初々しさ漂う新人・高木美保、そして舞台演出家を地で行く蜷川幸雄と、脇の固めもスキがない。アーウィン・ショウの『愁いを含んで、ほのかに甘く』からのアイデア借用という事実があったにせよ、荒井晴彦による脚本(澤井信一郎と共同)の説得力は光を失うことなく、まして『野菊の墓』(1981)で松田聖子に輝きを与えた澤井信一郎の昇り竜のごとき充実の監督第2作である。後の『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)などの実績を思えば、すべては当然の結果だったといえるだろう。

同時上映だった大林宣彦監督作品『天国にいちばん近い島』(1984)のニューカレドニアの南国ムードとともに、公開当時の麗しい記憶に包まれるファンも多いであろう同青春&人間ドラマには、しかし今こそ注目しなければならない人物がいた。当時、薬師丸ひろ子が歌う主題歌《Woman~Wの悲劇~より》ばかりが目立ち、その男の存在が何かと稀薄に扱われていた事実はひたすらに口惜しい。音楽担当の久石譲である。

1950年12月6日、長野県は信州中野に生まれた久石は、4歳からヴァイオリンを習い始め、高校時代より作曲を学んでいる。程なく現代音楽の作曲家になることを夢見て、国立音楽大学へ入学。在学中には前衛音楽の演奏会を数多く開き、卒業後はミニマル・ミュージックの世界へと没入していく。紆余曲折の末、やがて現代音楽の分野に限界を感じると、つぎに一転してポップスのフィールドへと身を投じていくわけだが、その際に「売れなければ正義ではない」と肝に銘じたという逸話は彼らしい性分の表れだろう。その辺りをインタビューの席で水を向けると、本人は笑ってうなずいていたものだが、そういった強い意志が結果となって大きく実を結んだのが、1984年という年だったのではないか。

そこからさかのぼること2年。1982年10月に久石は『インフォメーション』というオリジナル・アルバムを作った。その発売元であるジャパン・レコードが徳間グループの系列の会社であったことから、準備段階にあった『風の谷のナウシカ』(1984)のイメージ・アルバム制作への参加が決まったという。結局、それが宮崎駿、高畑勲両氏の納得のいく仕事となり、やがて映画本編の音楽も担当。周知の通り、大ヒットとなった。80年代の初頭から映画、TVの仕事をこなしてきた作曲者であったが、世間一般に広く名前が広まったのはこの作品の成功からである。久石自身も出発点としての認識が強いのだろう。これ以前の映像作品についての記載が作品リストから外れることが多いのも象徴的である。

『風の谷のナウシカ』の成功は、何より久石自身の自信を呼びさました。当然各方面から押し寄せた依頼を、作曲者は慎重に検討する段にはいっていった。成功を成功に、自信を自信に結び付けるためである。その辺りの意識については、自伝的エッセイ集『I am/遙かなる音楽の道へ』(1992・メディアファクトリー刊)に詳しい。いわく「下からコツコツ上がっていくのは面倒、やるからにはトップから仕事をしていきたい、僕はそう思っていた」。そして「薬師丸ひろ子の映画の仕事がやれたらいいな」と考えているところへ来たのが『Wの悲劇』だった。澤井信一郎との出会いである。

とにかく久石譲といえば、宮崎駿、北野武、大林宣彦という”御三家”との仕事が取り沙汰される。確かに、彼らとの共同作業によって、作曲者は映画音楽の可能性を切り開くことができ、同時にその成功によって名声を獲得してきた。だが、そればかりではない。そればかりで判断してはいけない。特に実写作品の仕事という点からいえば、北野武や大林宣彦よりも早く久石に映画的な目覚めを誘ったのは、澤井信一郎にほかならないのだ。

久石の登板の背景は明らかにされていない。無論『風の谷のナウシカ』の成功に事が起因していることは確かだろうが、恐らく角川春樹事務所、ないしは配給の東映サイドからの推薦によるものだろう。久石は澤井信一郎の第一印象を「小柄でやさしそうな印象」とし、映画については「オーソドックスな作品」「映画のイロハがちゃんとある」と前述の自伝に書いている。幼少のころより映画館通いを欠かさなかった作曲者は、てらいのない伝統的な手法の演出による作品を歓迎した。澤井のスタイルに敬意を払いつつ「僕の作曲も、オーソドックスな正統な姿勢」で臨むことにし、「奇を衒った入れ方をしたり、ファッション的なBGMにしたりするのではなく、きちんとドラマに参加した音楽にする」(自伝の記述より抜粋)と決める。作曲者なりの澤井とその作品への”正義”だろう。

久石のそんな方法は、まさに的確であった。ムダの少ない音楽の付け方だ。必要とされるべきところへ必要なだけ盛り込む。ことさらに音に厚みをつけない。ミニマル、エスニック、ロック、オーケストラ音楽など、さまざまなスタイルが並んだ『風の谷のナウシカ』と比べて、それはある種地味ではある。しかし、そんな宮崎作品の後だったからこそ、映画の基本に立ち返る澤井との仕事は、必要な”リハビリテーション”ではなかったか。大きな仕事を待っていた作曲者が『Wの悲劇』という題材に巡り合ったのは、偶然的な一方で、運命的にして必然的な事の次第だったと思わずにいられない。フェアライト(サンプリング・マシンの一種)によるサウンドをフィーチュアしながら、ストリングス、ハープ、ピアノ、それにいくらかの木管と打楽器を絡めた劇中の音楽が、やがてクライマックスのカーテンコール場面でダイナミックな感動の爆発を迎えるには、そういった久石の背景を思えば、なおのこと納得できる部分があろうというものだ。

また、フェアライトという”楽器”を得たという意味では、その後の久石の映画音楽作品の”原型”ともいうべき音色の数々が見受けられるのも興味深い。例えば、冒頭の三田静香(薬師丸ひろ子)と五代淳(三田村邦彦)の暗がりの会話場面で流れるヴォイス・サンプリングによるサウンドは、『ふたり』(1991)や『はるか、ノスタルジィ』(1992)といった大林作品に有名だろう。フェアライトを初めて使った『風の谷のナウシカ』と合わせて考えれば、やはり1984年という年は作曲者にとって重要な分岐点だったといえる。

自伝で久石は続ける。「澤井さんは非常に音楽に対してもこだわりのある人で、たとえば、劇中の喫茶店や舞台で流れる音楽と、映画音楽というのをはっきり分けて考える。そうしないと、差が出てこないという。ほとんどの人は、そういうことにはこだわらない。そういう意味でのこだわりを最初に教えてくれたのは、澤井さんなのだ」。現実音と劇中音楽の使い分けは、基本中の基本である。そういうことを現場で一から知ることになった経験は、作曲者にさらなる飛躍を約束したといっても過言ではない。何よりもそれは、その後の活動が物語っているだろう。良き信頼関係に結ばれた澤井と久石は、以後も『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)、『福沢諭吉』(1991)へとコンビをつなげていった。ジャンルの差こそどうあれ、そのすべてが青春映画である。虚構の青春ドラマの中で、飽くことなき音楽的試行を繰り返してきた名手二人にとって、『Wの悲劇』はまさに輝ける旅立ちのモニュメントとなった。

1998年5月27日 賀来卓人

(1998年再販盤 CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

(オリジナル・ジャケット)

 

Wの悲劇 再販

(1998年7月25日 CD再販 ジャケット)

 

※2013年再販盤はオリジナル・ジャケットが採用されている

 

1. プロローグ
2. 野外ステージ
3. 冬のバラ 歌:薬師丸ひろ子
4. 女優志願
5. 劇団「海」
6. Wの悲劇
7. Woman~Wの悲劇~より 歌:薬師丸ひろ子
8. 危険な台詞
9. 静香と摩子
10. ジムノペディ第1番~レクイエム~サンクトゥス~カーテンコール I
11. カーテンコール II

音楽:久石譲

「冬のバラ」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

「Woman~Wの悲劇~より」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

ジムノペディ第1番
作曲:エリック・サティ 編曲:久石譲
レクイエム
作曲:ヴェルディ 編曲:久石譲