Disc. V.A. 『アニメピアノデュオ ~2台のピアノのためのアニメ曲集~』

1983年1月 LP発売 CX-7083
1983年1月 CT発売 CAY-601

 

ANIME PIANO DUO
ANIMATION THEME SONGS ARRANGED FOR TWO PIANOS

 

久石譲が編曲を担当した「キャンディ キャンディ」「宝島」「キャプテンハーロック」の3楽曲が収録されている。

 

楽曲解説

『What is Anime Piano Duo?』

ピアノという楽器は、現在われわれの生活に最も密着した《芸術的な》楽器だと言うことができるでしょう。聴く側の立場から見れば、その音質、音量、表現力の巾は、殆どすべてのジャンルの音楽に適応することができ、多種多様なテクニックを駆使することにより、音楽に様々な色彩を与えることができます。また、演奏する側の立場から見れば、弦楽器や管楽器とは異なり、初心者でもまず弾くことができ、さらにテクニックが向上するに従い次第にその音楽性の巾を拡げていくことができるという点で、実に多くの弾き手に対応することが可能な楽器だと言うことができるでしょう。

しかしながら、いくらピアノが様々な音楽に適応し多くの弾き手に対応できる有能な楽器であるといっても、弾き手の好みに合う楽曲がなければそれはただの《雑音箱》にすぎません。つまらない練習曲ばかりレッスンさせられてピアノ嫌いになった人も多いのではないでしょうか? また、聴く側にしても、ジャンルが違うというだけで、豊かなピアノ曲に耳を傾けずに終っている人が多いのではないでしょうか?

そんな人たちに──このアルバムに収録されているアニメ主題歌のピアノヴァージョンはまさにピッタリの楽曲ではないでしょうか。収録されている10曲は、アニメファンにはなじみの深い曲ばかりだと思います。青木望、久石譲、風戸慎介、宮川泰、宮川晶、以上五氏によるピアノ編曲は、ピアノの持つ魅力、表現力の巾の広さを最大限に引き出しています。アニメ主題歌の楽しさ、そしてピアノ音楽の素晴らしさをこのアルバムで存分に味わって下さい。

 

Side 1
1.銀河鉄道999
人間は誰もが「永遠の生命」という青い鳥を求め人生を旅する。しかし、永遠の生命を得れば人間は本当に幸福になれるのだろうか? 限りある生命と永遠の生命、人間にとって本当の幸福とは何なのだろうか……。999号に乗り旅をする主人公鉄郎とメーテルの果てしない旅を歌うこの曲は、平尾昌晃の作曲によるもので、テレビシリーズのオープニング用に作られた。今回のピアノヴァージョンは原曲と同じく青木望によって編曲されており、原曲では、弦が担当した部分を中心に比較的原曲に忠実にアレンジされている。流れるようなイントロ部分はテレビのオープニングでは残念ながら時間数の制限でカットされていた。

2.青い地球
今回、ピアノヴァージョンの編曲を担当した青木望は、銀河鉄道999テレビシリーズ及び映画盤第1作のBGMの作曲者で、銀河鉄道の音楽世界には欠かせない存在である。テレビシリーズのエンディング用に作られたこの曲の原曲も青木望がアレンジを担当していた。(作曲は平尾昌晃)原曲では杉並児童合唱団によるバックコーラスが印象的だったが、今回のアレンジではささきいさおが歌うメロディラインとバックのコーラス部分が2台のピアノにわかれて奏されている。また、2コーラス目からは原曲でピアノが担当レパートを第2ピアノ(ステレオの右チャンネルから聞こえるピアノ)が担当している。

3.SAYONARA
映画盤第2作「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-」のラストシーンで、鉄郎と別かれ、閉ざされた時間の中に帰っていくメーテルの心情が、この曲に託して切々と歌い上げられていた。この曲を歌ったメアリー・マッグレガーが作曲も手がけ、女性特有なナイーブなメロディラインがとても印象的だった。今回のピアノヴァージョンでは、この美しいメロディラインを活かして、比較的シンプルなアレンジがなされている。

4.キャンディ キャンディ
いがらしゆみこ原作によるイギリスを舞台とした大河ドラマをテレビアニメ化した「キャンディ キャンディ」の主題歌。作曲は「アルプスの少女ハイジ」などの名作物を数多く手がけている渡辺岳夫が担当し、物語に大きな広がりを見せた。原曲ではチェンバロで演奏され非常に印象的だったイントロは、そのままピアノに移されてこの曲の冒頭を飾っている。今回、アレンジを担当した久石譲は、テレビアニメーション「ハローサンディベル」(作曲はキャンディ キャンディと同じく渡辺岳夫)の主題歌のアレンジを担当しており、少女アニメ及び渡辺岳夫の曲も手なれた感じで、2コーラス目後半からのジャズ風アレンジなど、「キャンディ キャンディ」のメロディが持っている魅力を、実に様々な手法で引き出し、新しいキャンディ キャンディの世界を創り上げている。

5.花の子ルンルン
キャンディ キャンディの後番組としてスタートしたこの番組は、前作とは雰囲気をガラリと変え、ルンルンという少女が幸福を与えてくれるといい、「七色の花」を求めて旅をするという、どちらかというと「魔法物」的な作品になっていた。主題歌の作曲は「魔法使いサリー」以後少女物を数多く作曲している小林亜星が担当している。原曲では、イントロに続き堀江美都子の「ルルルン・ルン・ルン」というリフレインで曲が始まるが、このアレンジでは、何かを期待させるような第2ピアノのリズムパターンの中からメロディが歌い出される。1コーラス目は原曲に近い形で演奏され、2コーラス目はスローテンポになり、様々な装飾音を伴ってメロディが美しく歌い上げられてゆく。3コーラス目は転調し、再び冒頭のテンポに戻って、軽やかに爽快にこのアルバム前半の幕を閉じる。

Side 2
1.宝島
このアニメーションは、東京ムービー製作の名作シリーズとして「家なき子」に続いてテレビ放映された。出崎統の演出により原作が持つ陰湿な雰囲気はなくなり、海賊シルバーのキャラクター像と共にまったく新しい「宝島」という作品を作り上げることに成功した。また、主題歌・BGMの作曲にピアニストとしても著名な羽田健太郎を起用し、音楽的な面でも新鮮な世界を展開している。久石譲によるこのピアノヴァージョンでは、原曲の堂々としたイントロとは全く逆に、静かなスローテンポのイントロからメロディが歌い出され、それが次第に高まっていくという形をとっている。2コーラス目ではジャズワルツのリズムパターンの上に第1ピアノが単音でメロディを奏で、その後半ではバロック風の部分が挿入されるなど、非常に多彩な編曲がなされている。

2.愛の惑星
コンピューターに統括され管理された母なる星地球(テラ)は超能力者ミュウの物か、それともメンバーズエリートたち人類の物か……ジョミーとキース2人の人間を中心にくりひろげられる竹宮恵子原作のSFアニメーション映画「地球へ…」のエンディングにこの曲は使用された。ゴダイゴのキーボード奏者ミッキー吉野が作曲を担当しているためか、原曲はピアノを中心にアレンジされていた。このピアノヴァージョンの編曲を担当した風戸慎介は、アニメーション映画「FUTURE WAR 198X年」の主題歌「愛ゆえに哀しく」などを手がけている作曲家で、様々な変化に富む伴奏形の上に、「愛の惑星」の美しいバラードをピアノで存分に歌わせている。

3.キャプテンハーロック
外宇宙からの侵略者マゾーンと自由に生きる宇宙海賊キャプテンハーロックの戦いを描いたテレビアニメーション「キャプテンハーロック」(松本零士原作)の終了後も、主人公ハーロックは映画版銀河鉄道999に登場したり、この作品の続編であるアニメーション映画「わが青春のアルカディア」、テレビアニメーション「わが青春のアルカディア 無限軌道SSX」で活躍しているが、やはり「キャプテンハーロック」という名称からはこの曲が一番連想されやすい。作曲は、「銀河鉄道999」と同じく平尾昌晃が手がけている。海岸に打ちよせる波の音で始まる原曲は横山菁児によりシンフォニックなアレンジがなされているが、今回の久石譲のアレンジでは、第1ピアノのカデンツァに続き第2ピアノで呈示される特徴的なリズムパターンに見られるように、現代曲的なアプローチがなされている。

4.真赤なスカーフ
宇宙戦艦ヤマト第1作のエンディングとしてこの曲が流れた時、何か不思議な感動に襲われた人は多いのではないだろうか? 赤サビたヤマトが夕日に映えるラストシーンに引き続き流れてきたこのメロディに……。当時アニメソングのエンディングといえば、オープニングテーマと同じく、明るくテンポの速いマーチ風の曲が多くあったなか、ささきいさおが歌うスローバラード調の、この曲は主題歌とは別の意味で私たちに新鮮な感動を与えてくれた。今回の編曲は、作曲者宮川泰自身の手によるもので、原曲とは全く異なり、ある時は力強く、またある時は抒情的に、ポピュラーピアノの精髄とも言える印象的なアレンジで、この曲の持っている魅力を十分に引き出している。

5.宇宙戦艦ヤマト
10年前、この曲と共に14万8千光年の彼方にあるイスカンダルへ旅立っていった宇宙戦艦ヤマトも、いよいよ今年完結編をむかえようとしている。その間、この曲ほど数々のアレンジがほどこされ、数々のカバーヴァージョンが作られた曲はないのではないだろうか? 交響曲に、ディスコヴァージョンに、合唱組曲に、バイオリン曲に、ピアノ曲に……このヤマトのメロディは様々な形で私たちの前に現われるたびに、音楽を通してヤマトの世界を広げていった。宮川晶によるこの2台のためのアレンジは、ピアノが持つ広い音域と合計20本の指を駆使することにより、交響曲に負けない迫力で、「宇宙戦艦ヤマト」のメロディの持つ躍動感、悲愴感、そしてリリシズムを余すところなく私たちに伝えてくれる。

解説/中村学

(楽曲解説 ~LPライナーノーツより)

 

 

(LPジャケット / LPライナーノーツ)

 

Side 1
1.銀河鉄道999 テレビアニメーション「銀河鉄道999」から
作曲:平尾昌晃 編曲:青木望
2.青い地球 テレビアニメーション「銀河鉄道999」から
作曲:平尾昌晃 編曲:青木望
3.SAYONARA アニメーション映画「さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅」-」から
作曲:メアリー・マッグレガー、ブライアン・ウィットカム 編曲:青木望
4.キャンディ キャンディ テレビアニメーション「キャンディ キャンディ」から
作曲:渡辺岳夫 編曲:久石譲
5.花の子ルンルン テレビアニメーション「花の子ルンルン」から
作曲:小林亜星 編曲:風戸慎介

Side 2
1.宝島 テレビアニメーション「宝島」から
作曲:羽田健太郎 編曲:久石譲
2.愛の惑星(All We Need Is Love) アニメーション映画「地球へ…(TOWARD THE TERRA)」から
作曲:ミッキー吉野 編曲:風戸慎介
3.キャプテンハーロック テレビアニメーション「宇宙海賊キャプテンハーロック」から
作曲:平尾昌晃 編曲:久石譲
4.真赤なスカーフ テレビアニメーション「宇宙戦艦ヤマト」から
作曲・編曲:宮川泰
5.宇宙戦艦ヤマト テレビアニメーション「宇宙戦艦ヤマト」から
作曲:宮川泰 編曲:宮川晶

演奏:浦山しおり/前村京子

*東京音楽書院より同内容の楽譜を同時発売

 

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