2018年5月23日 CD発売 UMCK-1599
2018年公開 映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III」
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 平松恵美子
音楽:久石譲
出演:橋爪功 吉行和子 西村まさ彦 夏川結衣 中嶋朋子 林家正蔵 妻夫木聡 蒼井優 他
久石:
(「家族はつらいよ」)「東京家族」と出演メンバーも同じで、最初1回かなあと思ってたらどんどんシリーズ化されて。喜劇というのはすごく難しいんですよね。喜劇の音楽の書き方は大変難しいんです。どちらかというと色の濃い映画のほうが書きやすいんです。ラブストーリーとか戦争ものとか超悲劇とかね。そうするとこれは音楽も非常に色のはっきりしたものが書けるんだけど、普通の家族をテーマにすると、色をできるだけ薄めなきゃいけないんですよ。でないと音楽が浮いちゃうからね。なので喜劇は映画として撮るほうもすごく難しいんですよ。音楽も非常に難しい、なぜなら陳腐になりやすい。映画のほうでいうと、喜劇と悲劇は同じなんです。たとえば悲劇は、目の前で起こっている大変なことを大変だねって撮れば悲劇になる。ところがこれを喜劇にするときは、同じことを俯瞰で見て、バカな人間どもがああだこうだやってるねって笑い飛ばす方法をとって作らないと、本当の喜劇ってできないんですよ。喜劇って笑わせるんじゃないんですよ。悲劇と同じぐらいなものすごい深いものを抱えてるのを、笑い飛ばして見せるんだけども、観る人は感じさせるっていうね。だから喜劇は最も技術と能力がいる分野じゃないでしょうかね。その意味では山田監督はもう傑出している。今年86歳になられるんですが、考え方がどんどん若くなってて、しかももっと精鋭化してるというかどんどん変化してますね、素晴らしいです。そのエネルギーにつられて、こっちが作ってるって感じかな。(中略)オープニングのタイトルバックを作っているのが横尾忠則さん、毎回アーティスティックなとても素晴らしいオープニングを作ってますよね。
(Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)
「家族はつらいよ」シリーズ一貫してのメインテーマ、シリーズ第3作では華麗なワルツに変身している。喜劇のコミカルさ、踊るような軽やかさ、弦楽の流れるような優美さとの対比に、ティンパニなどパーカッション群や低音金管楽器など、これから始まる家族のドタバタ劇を予感させるところもおもしろい。
本作のもうひとつの主要テーマ曲となっている”妻のモチーフ”も新たに書き下ろされ、随所に散りばめられている。「3.溜息」「4.創作教室」「7.この狭い家の中で」「8.史枝の日常」「10.妻の覚悟」「17.ごめんね」「18.夫の覚悟」「19.薔薇のスカーフ」「21.雨降って地固まる」「23.妻よ薔薇のように」、こう並べてみるといかに重要な役割になっていることか。情感たっぷりの切なくも温まるメロディは美しい。映画エンドロールに流れる楽曲もメインテーマではなくこちらが使われている。このことからも本作を彩る象徴的な楽曲。”妻のテーマ”の対となっているともとれる「14.可哀想な幸之助」の旋律、そういう聴き方をするとおもしろい。
細かい話だけれど「4.自転車に乗って」、映像での自転車に乗る速度、気持ちの抑揚の変化に合わせて音楽もテンポ感に変化をもたせている。こういった繊細な配慮はさすがである。
リアリティのある物語ということもあって、シリーズ一貫して本作も音楽の入る場所はそう多くない。シンプルな小編成アンサンブルになっているのも、過剰な音楽効果をおさえたものだろう。それだけに旋律のひとつひとつが、楽器の音色がとても鮮度高く、身近で生音を聴いているような音楽の呼吸をも感じとることができる上品さがある。
「家族はつらいよ」シリーズも第3作をむかえ、久石譲によるメインテーマもシリーズごとにカラーを打ち出している。本作ではワルツ(3拍子)となり、それはさながら輪舞曲(ロンド)である。音楽におけるロンド形式とは、異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式のこと。「家族はつらいよ」の物語もまた、おなじみの家族・主人公たちによる日常の喜劇と家族愛のくりかえし。
シリーズを重ねてストーリーや役者のアンサンブルは円熟味を増し、同じように音楽もアンサンブルが変化している。もし次回作を期待できるなら、新しいアンサンブルたちが楽しみな作品。
1. メインテーマ
2. 平和な朝
3. 溜息
4. 自転車に乗って
5. 創作教室
6. ミセス憲子
7. この狭い家の中で
8. 史枝の日常
9. 泥棒
10. 妻の覚悟
11. お兄ちゃん!
12. ダメおやじ
13. 二人のなれそめ
14. 可哀想な幸之助
15. 故郷
16. ボヤ騒ぎ
17. ごめんね
18. 夫の覚悟
19. 薔薇のスカーフ
20. おかえり
21. 雨降って地固まる
22. 憲子の想い
23. 妻よ薔薇のように
All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Conducted by Joe Hisaishi
Performed by
Flute & Piccolo:Hideyo Takakuwa
Oboe:Satoshi Shoji
Clarinet & Bass Clarinet:Hidehito Naka
Bassoon:Tetsuya Cho
Horn:Yuta Ono, Jo Kishigami
Trumpet:Hitomi Niida
Trombone:Nobuhide Handa
Trombone & Bass Trombone:Takahiro Suzuki
Percussion:Tomohiro Nishikubo
Timpani & Percussion:Akihiro Oba
Percussion:Mitsuyo Wada
Harp:Kazuko Shinozaki
Piano & Celesta:Febian Reza Pane
Strings:Manabe Strings
Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada (Sound Inn)
and more…
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そうなんですね♪発売してすぐに聴けるのはうれしいですね(^^)