Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2017/08/14

プロフェッショナルクリエイターのための情報誌「Director’s MAGAZINE ディレクターズマガジン 2001年11月号」に掲載された久石譲インタビューです。

久石譲監督作品 映画「Quartet カルテット」についての話が中心ですが、久石譲が定義する音楽映画とは? 久石譲が折にふれて語るポップフィールドに立つ音楽家としての「売れてなんぼ」の真意とは? とても興味深い内容で理解が深まります。

ぜひ久石譲の言葉の表面的な部分だけではない、深く紐解くためにも読んでもらいたい内容です。時代を生きる作家の大衆との共鳴や葛藤が見え隠れしてくるような気がします。そして生み出される大切な作品のひとつひとつ。

 

 

プロデューサー列伝 No.48
久石譲が提示する、音楽映画という名のエンターテインメント。

久石譲監督作品/音楽映画『Quartet カルテット』

久石譲監督作品『Quartet カルテット』が公開されている。若手音楽家たちが、同じ大学で学んだ仲間と巡業旅行を経験し、コンテスト出場をめざす青春映画。日本では初めての本格的音楽映画として注目を集める作品だ。

「『ここに泉あり』という、群馬交響楽団が再生するまでを描いた映画がありました。とても良い作品でしたが、あまり注目されなかった。そして、日本ではその作品くらいで、本格的な音楽映画はほとんどありませんでした。実は、世界的にも数は少ない。『レッドバイオリン』などが、数少ない音楽映画といえる作品ですね」

音楽映画の定義とは?

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

音楽が台詞の代わりになるというのは、どういうことなのか?

「たとえば『もののけ姫』の戦闘シーン。戦闘シーンですから、ジョン・ウィリアムズ調の勇壮な管弦楽を構想するのが普通だと思います。ですが私は、あのシーンを山神たちの集団自殺だと解釈しました。そしてレクイエム(鎮魂曲)を作曲しました。たとえば、そういうことです」

 

音楽映画を成立させるために脚本も共同執筆

音楽に関する造詣も深い映画。ということは、観る側を選ぶということになるのであろうか?

「そんなことはありません。テレビシリーズ『ER』を思い浮かべてください。あの作品では登場する医師たちが専門用語を使いまくりますね。でも、だからといって医学知識のある人にしか楽しめないドラマなのかというと、まったく違う。会話の内容は理解できなくても、登場人物が怒っている、困っているということはちゃんとわかります。音楽映画の構造は、あれによく似ています」

「今回の作品でも、クラシックがアッパーカルチャーとして描かれていたら観客の共感など得られません。共同執筆した脚本では、そのことを重視しました。さらに言えば、脚本がしっかりしていなければ音楽映画は成立しないと考えていたんです」

できあがった脚本をベースに、もちろん全曲、約40のオリジナル曲を自ら書き下ろした。

「作曲をしながら考えたこと。一音楽プロデューサー、作曲家として受けた依頼なら、たぶん断っていただろうなあ(笑)です。想像以上にたいへんな作業だった。オペラの作曲を依頼されたら、たぶんこんな仕事量になるのだろうと感じました。たいへんでした」

監督はもちろん、脚本、音楽をひとりで手がけた経験は貴重なものだったはずだ。

「もちろんそうですね。つくづく感じたのは、脚本づくりと音楽づくりがまったく別物だということ。この2つを同時にこなすことなんて、まず無理な話ですね」

苦労した点は?

「まったく誰も、音楽の心配をしてくれなかったこと!(笑)。当然と言えば当然ですが、音楽プロデューサーである私が撮る映画ですから、『久石に任せる』ということになる。誰ひとりとしてアドバイスも苦言もくれません。本当に孤独な作業がつづきました」

「通常の映画は、映像の編集が終わってから音楽をつくります。でも、今回は、脚本をもとに作曲し、録音を完了させ、撮影はそのスコアに合わせて進めました。ほかの現場と決定的に違っていて、役者もスタッフも、もちろん監督も、もっとも労力を費やしたのはそこでしょうね。各シーンは録音された音楽の長さに即して◯分☓秒と時間まで決まっていますから、スクリプターが楽譜を絵コンテ代わりに現場をコントロールすることになりました」

 

なぜ音楽家は映画のメガホンを取ったのか?

ところで、『Quartet カルテット』の公開で私たちの多くは今、心の奥底に”音楽家/久石譲が映像作品をつくった”ことの相関関係に思いをめぐらせている。それを唐突に感じる者は、なぜ彼が異ジャンルに進出するのか?という動機、いきさつを知りたくなる。

結論から言うと、それはいたく自然な流れに乗って行き着いた場所だということ。さらに言えば、1998年には長野パラリンピックの総合演出を手がけ、『Quartet カルテット』のあとには福島県/うつくしま未来博・ナイトファンタジアの総合プロデュース&演出を手がけ、同イベント上映用の短編作品『4 MOVEMENT』も監督している。これらの経緯を見知っている者には、大きな違和感のある話ではない。つまり、総合クリエイター/久石譲の可能性に期待する関係者が多くいて、それに応えた新たな取り組みは『Quartet カルテット』以前から始まっていたのである。

「映画監督に関しては、自分から積極的にアクションをおこしたわけではありません(笑)。ずいぶん前から期待してくださる方、やってみないかというお話があり、次第に機が熟していった結果こうなったということですね。幸いにして私の中に、具体的なアイデアもあった」

「もちろん、宮崎駿さん、北野武さん、大林宣彦さん、澤井信一郎さんといったそうそうたる監督たちの作品に参加させてもらったことの意義は大きい。諸監督たちと仕事をごいっしょさせていただいているうちに映画に対する造詣、興味が深まり、それが『Quartet カルテット』を手がける動機のひとつになったことは事実です」

疑問への答えは、こんなコメントでも返ってきた。

「パラリンピックの総合演出を手がけたころ、自分の中に、音楽だけでは解決できないこと、欲求があると気づきました」

手がけるチャンスを得たときに、ふさわしい準備、あるいは蓄積がなされているか?それが異分野に進出するクリエイターに問われることだと思う。久石氏の場合、それは十分になされていたようだ。

「『Quartet カルテット』の成否のひとつは、登場人物の演奏シーンにかかっていると確信しました。ですから役者のトレーニング、そしてシーンのトリックには力を入れた」

「まず演奏トレーナーには役者が楽器を弾けるようにするのではなく、”弾いているように演じる”ことを教えてもらいました。役者たちは彼のもとで最低1ヵ月間のトレーニングを積んで、撮影に挑んでいます」

「たとえば、役者が演奏しているふうの表情をアップで見せ、切り返しでプロの演じている手元だけを見せるというカット割では、観る人誰もが『編集で見せていますね』と興ざめしてしまう。ワンカットで登場人物が演奏するシーンを成立させるためには、まず役者のトレーニング。しかし、それでも追いつかないほどの演奏技術が必要なパートがあることもわかっていましたから、そこは撮影のトリックを入れる計画を立てました。技法は複数。完全な種明かしをしてはつまらないので、たとえば2人羽折り、たとえば合わせ鏡、そんな技法を用いているということだけお伝えしておきます。時間をかけた創意工夫ばかりで、その分できばえも良かったと自負しています。ぜひ、映画館で演奏シーンを堪能していただきたいですね」

 

ポップフィールドに立つ音楽家の創作モチベーション

久石氏は、自らを「芸術家ではない」と公言している。

「私は、自分のいる場所をポップフィールドだと思っています。芸術家は、自分のことを掘り下げて、それを表現できればOK。でも、ポップフィールドでの創作活動は、ビジネスです。『売れてなんぼ』という言葉そのものですね。ただし、大衆に迎合するという意味ではない。言い方を換えれば、人に受け入れられるのが最低条件だけれど、受け入れた人が救われたり、何かを学べるクオリティを兼ね備えていなければならない。とても難しい目標です。でも、難しい目標だからこそ、やっていて面白いんです」

芸術家を否定しているわけでも、拒否しているわけでもない。

「私は、20代で芸術家としての活動をし尽してしまいました。音楽大学在学中からミニマル・ミュージシャンという前衛芸術に没頭していて、乱数表を用いて作曲する(笑)なんていうラジカルなことをやっていた。30代が近づいたある日、『もういいかな』と思って、それを機に、芸術とはきっぱり手を切りました」

そんな久石氏は今、『Quartet カルテット』、『4 MOVEMENT』という演出作品のリリースを一区切りに、本来の”ポップフィールドに身を置く”音楽家に戻ろうとしている。10月30日に名古屋を皮切りにスタートした『JOE HISAISHI SUPER ORCHESTRA NIGHT』がその第1弾だ。

「思い返せばここ数年、プロデュース、演出という仕事のラッシュの中にいました。もちろんその途中で『BROTHER』、『千と千尋の神隠し』といった映画音楽の仕事もこなした。そういう時期を過ごした後、湧き上がってきたいちばんの欲求がピアニスト/久石譲としての仕事でした。ずいぶん長いことプレイヤーを休んでいたなあ、というのが率直な感想。ピアノレッスンとともに体力づくりにも取り組んで、ツアーを心から楽しむための準備をしています」

今後の予定は?

「まずは目前の『JOE HISAISHI SUPER ORCHESTRA NIGHT』に全力投球します。それ以降は、これまでのように映画音楽にも取り組みますし、チャンスがあれば映像作品も手がけたい。仕事への意欲はますます高まっていくでしょうね」

一連の監督経験を経て、特に映画音楽のしごとには新たな視界が開けているという。

「まず、脚本の読み方が変わりましたね。これまでも十分に読み込んで取り組んでいたつもりでしたが、メガホンを取ってみて、監督という立場でかかわってみて、まだまだ読み込みと理解が足りなかったことを痛感しました」

「もうひとつは、映画監督は音楽監督にもっと要求してもいいんじゃないかということ。音楽が映画でできることは、もっとあるのだと実感しました。映画監督が要求すれば、もっと良くなるはずです。あるいは音楽監督が映画監督から引き出せる部分もあるかもしれませんね」

音楽というフィールドを媒介に映画への情熱を育てた作家の次回作に期待したい。そして、監督という貴重な体験をたずえさた音楽家の今後の活動にも興味が尽きない。そして何より、ここから先、既成の枠や肩書きにとらわれない総合クリエイター/久石譲氏の繰り出す創作の数々を心待ちにしていよう。

 

人に受け入れられるのが最低条件だけれど、受け入れた人が救われたり、何かを学べるクオリティを兼ね備えていなければならない。とても難しい目標です。

(ディレクターズマガジン 2011年11月号 より)

 

 

Info. 2017/08/11 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」 予約開始

レベルファイブ、百瀬 義行(元スタジオジブリ)、久石譲が再び結集!

ゲーム「二ノ国 II レヴァナントキングダム」(2018年1月19日発売)の予約が開始されました。販売元・通販オリジナル特典や価格はそれぞれご確認ください。 “Info. 2017/08/11 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」 予約開始” の続きを読む

Info. 2017/07/16,08/27 [TV] NHKスペシャル「ディープ オーシャン 第2集・第3集」放送決定 【8/10 Update!!】

Posted on 2017/06/26

NHKスペシャル「シリーズ ディープ オーシャン」第2集・第3集のTV放送が決定しました。なお放送に先駆けて2016年放送第1集も再放送されます。 “Info. 2017/07/16,08/27 [TV] NHKスペシャル「ディープ オーシャン 第2集・第3集」放送決定 【8/10 Update!!】” の続きを読む

Info. 2017/08/14,19 [TV] NHK WORLD「Direct Talk」 久石譲 再放送決定

今年2月に放送されたNHK WORLD「Direct Talk」の再放送が決定いたしました。
世界160国・地域同時放送となります。

NHK WORLD -The Spirit of Melody Joe Hisaishi-
2017年8月14日(月)20:45-
2017年8月19日(土)12:35- / 23:40-
※いずれも上記時刻は日本時間です。 “Info. 2017/08/14,19 [TV] NHK WORLD「Direct Talk」 久石譲 再放送決定” の続きを読む

Disc. 久石譲 『Minima_Rhythm III ミニマリズム 3』

2017年8月2日 CD発売 UMCK-1580
2018年4月25日 LP発売 UMJK-9083/4

 

「ミニマル × 管弦楽」久石譲の真髄がここに宿る。

スケールも迫力も全開!刺激的なミニマリズム・シリーズ第3弾!

全世界に熱狂的なファンを持つ「ミニマリズム」シリーズ第3弾!! 久石譲が本格的に書き下ろした長大な交響曲「THE EAST LAND SYMPHONY」の世界初演音源を完全収録!W.D.O.2016の感動が蘇ります。イントロダクションには、久石が芸術監督を務める長野市芸術館の柿落し公演で発表された祝祭感満載の「TRI-AD」を初音源化。ミニマル・ミュージックと管弦楽を融合させた久石作品の魅力を余すことなく詰め込んだ1枚。

(CD帯より)

 

 

TRI-AD for Large Orchestra

作曲にあたって、最初に決めたことは3つです。まず祝典序曲のような明るく元気な曲であること、2つめはトランペットなどの金管楽器でファンファーレ的な要素を盛り込むこと。これは祝祭感を出す意味では1つめと共通することでもあります。3つめは6~7分くらいの尺におさめたいと考えました。

そして作曲に取りかかったのですがやはり旨くいきません。コンセプトが曖昧だったからです。明るく元気といったって漠然としているし、金管をフィーチャーするとしてもどういうことをするのかが問題です。ましてや曲の長さは素材の性格によって変わります。

そんなときに思いついたのが3和音を使うことでした。つまりドミソに象徴されるようなシンプルな和音です。それを複合的に使用すると結果的に不協和音になったりするのですが、どこか明るい響きは失われない。ファンファーレ的な扱いも3和音なら問題ない。書き出すと思ったより順調に曲が形になっていきました。そこですべてのコンセプトを3和音に置きました。それを統一する要素の核にしたのです。

2016年3月末からの中国ツアーの前にピアノスケッチを作り、帰ってきてから約2週間で3管編成にオーケストレーションしました。

「TRI-AD」とは3和音の意味です。曲は11分くらいの規模になりましたが、明るく元気です。2016年5月に長野市芸術館こけら落としのコンサートで初演されました。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

THE EAST LAND SYMPHONY

「THE EAST LAND SYMPHONY」は全5楽章で約42分かかる規模の大きな作品です。3管編成でソプラノも入ります。以下、各楽章について解説していきます。

1.The East Land」は5年前に作曲しました。そのときは、自らの交響曲第1番とマーラーの交響曲第5番を演奏する予定でしたが、この楽曲しか発表することができませんでした。今回若干の手直しをして演奏します。核になっていることはセリー(音列)*的な要素とミニマルを合体することでした。全体を覆う不協和音はそのためです。中間部を過ぎてからアップテンポになるのですが、そこで炸裂する大太鼓はまるでクラブのキックドラムのようで個人的には気に入っています。

2.Air」は鍵盤打楽器が大気の流れのように止め処なく、くり返されます。少し抽象的な表現をすると「時間の進行を拒否した」ような佇まいです。5年前に作曲し大方のオーケストレーションもできていたのですが、そこから進まなかった。何度も書き直しをしているのですが、まったくフォームを変えようとしない。そこで気がついた、このままでいい! そういう曲なんだと。全5曲の中でもっとも時間がかかり、最後まで手を入れていた楽曲です。

3.Tokyo Dance」はソプラノが入ります。自分と自分の周りだけが大切、世界なんかどうでもいい! というような風潮のガラパゴス化した今の日本(東京)を風刺したブラックなもの、そして日本語で歌うというコンセプトで娘の麻衣に作詞を依頼しました。何回か書き直しをしていく中で数え歌というアイディアが浮かび、いわば「東京数え歌」ともいえる前半ができました。ロンド形式のように構成しましたが、中間部、後半部は英語とミックスしながら『平家物語』のような諸行無常を歌っています。何故こういう曲を書いたのか?あるいは書こうとしたのかわかりません。たぶん数年後には腑に落ちるかもしれません。

4.Rhapsody in Trinity」は当初「東京ダンス」という仮のタイトルで作曲を始めたのですが、前曲にタイトルを譲りました。日本語で書くと「三位一体の狂詩曲」ということですが、前曲と同じくブラックな喜遊曲です。実は悲劇と喜劇は表裏一体です。本当の悲哀や慈しみはチャップリンの映画や山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズを観れば一目瞭然、喜劇が適しています。ただしそれを作るのは本当に難しい。音楽も同じです。悲しい曲はまあ誰でも作れますが(作れない人もいますが)楽しく快活に音符が飛び回っている向こう側で何かただならぬものを感じていただく、ということはいわば俯瞰、ある意味で神の視点が必要です。いや、そういう哲学的知恵が必要だということです。僕はまだそこに至っていないので(到底無理なのかもしれませんが)チャレンジし続けるしかないと思っています。11/8拍子という何とも厄介なリズムが全体を支配しています。

5.The Prayer」は今の自分が最も納得する曲です。ここのところチャレンジしている方法だいうことです。最小限の音で構成され、シンプルでありながら論理的であり、しかもその論理臭さが少しも感じられない曲。すべての作曲家の理想でもあります。もちろん僕ができたということではありません。まあ宇宙の果てまで行かないと実現できそうもないことなのですが、志は高く持ちたいと思っています。ソプラノで歌われる言葉はラテン語の言諺から選んでいます。もちろん表現したかったこと(それは言わずもがな)に沿った言葉、あるいは感じさせる言葉を選んでいます。後半に現れるコラールはバッハ作曲の「マタイ受難曲第62番」からの引用です。このシンフォニーを書こうと考えたときから通奏低音のように頭の中で流れていました。

タイトルの「THE EAST LAND」は「東の国つまり日本」であり、その日本の中の東の国は、「東北地方」を指します。もちろん社会的な事象を表現しようと思って作曲した訳ではありません。ありませんが、あれから5年、本質は何も変わっていない、我々はどこに行くのだろうか?という思いはあります。それでも生きる勇気と力を表現したい。世界のカオス(混沌)の中でも自分を見失わない日本人であってほしいという思いもあります。奇しくも5年前に作り出した楽曲をこの夏、完成できたことは、あのときから「あらかじめ予定されていたこと」だったのかもしれません。

久石譲

*セリー:音列のこと。特に十二音技法においては、すべての音を1回ずつ用いて構成する。

注)この文章は2016年の夏に行われたW.D.O.コンサートのパンフレットに書かれた本人の文章を再構成しています。

(CDライナーノーツ より)

 

 

なお「TRI-AD for Large Orchestra」「THE EAST LAND SYMPHONY」の上述久石譲楽曲解説はCDライナーノーツにて英文テキストも収載されています。「THE EAST LAND SYMPHONY」はオリジナル日本語詞とあわせて英訳詞も収載されています。

中島信也氏(東北新社取締役/CMディレクター)による寄稿文は現時点で割愛しています。ぜひCDを手にとってご覧ください。

 

 

 

「これはすごく悩みます。シンフォニーって最も自分のピュアなものを出したいなあっていう思いと、もう片方に、いやいやもともと1,2,3,4楽章とかあって、それで速い楽章遅い楽章それから軽いスケルツォ的なところがあって終楽章があると。考えたらこれごった煮でいいんじゃないかと。だから、あんまり技法を突き詰めて突き詰めて「これがシンフォニーです」って言うべきなのか、それとも今思ってるものをもう全部吐き出して作ればいいんじゃないかっていうね、いつもこのふたつで揺れてて。この『THE EAST LAND SYMPHONY』もシンフォニー第1番としなかった理由は、なんかどこかでまだ非常にピュアなシンフォニー1番から何番までみたいなものを作りたいという思いがあったんで、あえて番号は外しちゃったんですね。」

「そうですね。EAST LANDっていうのは東の国ですから、日本ですね、はっきり日本ですね。なんかねえ、これを作ってた時にずっと「日本どうなっちゃうんだろう」みたいな思いがすごく強くて。第三楽章の「Tokyo Dance」っていうのは、ほんとにちょっとブラックな、風刺ですよね、ちょっと「こんなに日々良ければそれでいいみたいな生き方してていいのか」みたいな、そんなような思いもあって。」

「第三楽章は僕の娘の麻衣が書きまして。第五楽章は自分でラテン語の辞書あるいはラテン語の熟語集の中から「祈り」にふれてる言葉をいろいろ選びまして、それを組み合わせて作りました。」

「この『THE EAST LAND SYMPHONY』を作ってる間、ずうっと合間に聴いてたのがマタイ受難曲だったんですね。なんかあれを聴くと、音楽の原点という気がして。はい。」

Blog. NHK FM「現代の音楽 21世紀の様相 ▽作曲家・久石譲を迎えて」 番組内容 より抜粋)

 

 

 

THE EAST LAND SYMPHONY
例えば、マーラーは交響曲の中に世俗曲や民謡の要素を盛り込んでいる作品が多くあります。久石譲が西洋音楽/古典音楽に対峙するとき、”現代作曲家”として”日本の作曲家”として、ひとつの導き出した答え、それが「THE EAST LAND SYMPHONY」という作品なのかもしれません。『現代の音楽』として響かせた記念すべき大作です。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

「TRI-AD」 for Large Orchestra
2016年に書きおろした作品のひとつです。「三和音」をコンセプトにしていますが、とても演奏難易度の高い曲だと思います。あらためて聴いてこの作品の末恐ろしさを感じました。ミニマル・ミュージックとしても大作ですし、祝典序曲のような華やかさと躍動感もすごいです。さらに今回、ひしひしと感じたのがうねりです。「音がまわる」立体音空間です。とりわけ、ラストの螺旋状に昇っていくような各セクションの音の織り重なりは圧巻です。ファンファーレ的な金管楽器に、弦楽器や木管楽器が高揚感をあおり、粒きれいに弾ける打楽器・パーカッション。オーケストラの音がステージから高くスパイラルアップして響き轟く立体的な音空間。これはぜひコンサートで生演奏を体感してほしい、臨場感を味わえる楽曲です。

オーケストラも対向配置なので各セクションが輪郭シャープに、メリハリある前後左右の音交錯を体感できます。近年久石譲コンサートはそのほとんどが対向配置をとっています。ただ、それに輪をかけて、秘めたる潜在パワーをもった作品のような気がします。長野公演から半年以上経って、今回新しく感じたこと。これは久石譲の楽曲構成とオーケストレーションの強烈なマジックなのかもしれない、と。独特なうねりです。

Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9071/2
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

 

2018.10 追記

 

 

 

 

1. TRI-AD for Large Orchestra
  THE EAST LAND SYMPHONY
2. I.The East Land
3. II.Air
4. III.Tokyo Dance
5. IV.Rhapsody of Trinity
6. V.The Prayer

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Track 1 《TRI-AD for Large Orchestra》
Conducted by Joe Hisaishi
Performed by New Japan Philharmonic World Dream Orchestra
       Yasushi Toyoshima (Concertmaster)

Recording Engineer:Tomoyoshi Ezaki (Octavia Records)
Assistant Engineer:Takeshi Muramatsu (Octavia Records), Keiji Ono (Octavia Records)
Recorded at Sumida Triphony Hall, Tokyo (16 May, 2016)

Track 2-6 《THE EAST LAND SYMPHONY》
Conducted by Joe Hisaishi
Performed by New Japan Philharmonic World Dream Orchestra
       Yasusi Toyoshima (Concertmaster)
       Yoko Yasui (Soprano)

Recording Engineer:Suminobu Hamada (Sound Inn)
Assistant Engineer:Takeshi Muramatsu (Octavia Records), Keiji Ono (Octavia Records)
           Hiroyuki Akita, Tomotaka Saka

Live Recorded at
Niigata-City Performing Arts Center “RYUTOPIA” (Concert Hall), Niigata (30 July, 2016)
Fukuoka Symphony Hall, Fukuoka (2 August, 2016)
Suntory Hall, Tokyo (5 August, 2016)
Sumida Triphony Hall, Tokyo (6 August, 2016)
Aichi Prefectural Arts Theater (The Concert Hall), Nagoya (8 August, 2016)

Mixing Engineer:Peter Cobbin, Kirsty Whalley
Mixed at:Abbey Road Studios (UK), Sweet Thunder Studio (UK)
Mastering Engineer:Christian Wright (Abbey Road Studios)
Mastered at Abbey Road Studios (UK)
Coordination in London:Hideaki Takezawa (BlicKingUK)

and more…

 

特集》 W.D.O.2017 特別企画!『久石譲ファンのためのチャット』

 

 

2017.8.30 追記
このイベントは8月20日に終了しました。下記ご覧ください。

 

 

 

コンサートの感動をリアルタイムに ♪

みんなの感想で久石譲ファンを楽しみましょう  ♪

コンサートの記念と思い出にあしあとを ♪

登録・メアド不要のオープンチャット ♬

久石譲コンサート、久石譲音楽への想いを綴る

久石譲ファンのためのチャットルーム

Let’s Enjoy!   Let’s Join Worldwide!! 

 

開放期間:8月1日~8月20日

 

楽しく自由に開放するために☆

1.コンサート予定プログラムで発表されていない曲(変更・追加・アンコール)の書き込みはしないでね。演出上言わないほうがいいこともね。
「W.D.O.2017」プログラム予定曲一覧

2.昨年「W.D.O.2016」ではTwitterに書き込まれた感想を集めました。どんな感想が溢れていたのかな? これを見たらきっとあなたも書きたくなってくる。
「W.D.O.2016」コンサートへの想い ~Twitter編~

3.チャットのかんたんな使い方 

 

 

[quick-chat room=”for fan chat”]

 

 

チャットのかんたんな使い方

① 名前も自由に替えれます
② テキスト最大400文字 / 画像添付なし
注!「送信ボタン」ありません
注!【ENTERキー/ 改行キー】で送信確定されます (^^;)
③絵文字で楽しく伝えましょう

 

 

久石譲ファンみんなの感想をオープンにすることで共感して盛り上がってつながりましょう。

ひとりの大切な声、ひとりでも多くのたしかな声、そんな具体的なファン(観客)の声こそ、久石さんへの久石譲音楽への「ありがとう!」のしるしです。

 

 

お願い

ひとりでも多くのリアルな声を集めることが充実したチャット、ファンの共感を呼びなにかを動かすきっかけになるかもしれません。Twitter/Facebook SNS紹介・拡散希望です。あなたの力をかしてください!よろしくお願いします♪

Please RT (Retweet) ♪

 

 

同時開催♪

 

 

ご意見、ご要望などありましたら 響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Blog. 「ショパン CHOPIN’ 1991年3月号」ソロアルバム『I am』久石譲インタビュー内容

Posted on 2017/08/01

音楽誌「ショパン」1991年3月号に掲載された久石譲インタビューです。内容は当時発売されたばかりのオリジナル・ソロアルバム「I AM」についてです。制作過程の記憶が新しいとても貴重なインタビューです。

 

 

風の流れを感じさせる

この2月22日に発売される東芝EMIソロ移籍の第1弾アルバムのタイトルは『I AM』。今までに自分のやってきたものの代表作にしよう、これこそ久石譲──This is HISAISHI JOE──といった意味で、名づけた。

彼の名をポピュラーにしたのは、おそらく宮崎駿のアニメーション映画「風の谷のナウシカ」の音楽だろう。それ以後、宮崎さんの映画の音楽は彼が手がけている。その他昨年は「タスマニア物語」、今年はこの4月公開の「仔鹿物語」。だが今回の作品は、そういったフル・オーケストラの音楽から離れて、よりシンプルなピアノとストリングスを中心とした作品に仕上がっている。

「ストリングスはロンドン・シンフォニーとロンドン・フィルのメンバーに協力してもらいました。ロンドンの──特に弦の音は、僕の求めている音に合うんです。録音はアビー・ロード・スタジオ。あそこはね、ルーム・エコーが非常にいいんですよ。ピアノのパートは日本で録音しました。ピアノはベーゼンドルファー・インペリアル。低音部分にこだわってみたので」

今後のアルバムでは、”ピアニスト・久石譲”という部分を追求してみたのだという。だがもう少し、よく聴いてみて欲しい。さり気ないフレーズの中に、”アレンジャー・久石譲”の小憎らしいまでの閃きが見えてくる。

「結構ね、難しいことやってるんですよ。普通だったら使わないような手法とか。でもさすがに向こうの人たちはその意図をわかってくれて、のってやってくれた。イギリス人のユーモアというか、あけっぴろげなアメリカとはまた違って、楽しい共同作業になりました」

久石さんのサウンド──というとやはり注目するのがメロディだ。耳に心地よく、覚えやすく、ついつい口ずさんでしまう。そのメロディに絡み、隠れ、時には主導権を握るリズムは、異国的であり、そしてどこか懐かしい気持ちさえ呼び起こす。「風の流れを感じさせる音楽家」だという。しかしその風は、砂と岩の間を吹き淀む乾いた赤道の風ではなくて、旅行記を記すように、草原の羊の群を追い、沢を走り、砂を巻いて吹き抜ける季節風なのだろう。そこに留まらず、でもすべてを見霽(はる)かし、孕んでいる。

久石譲の”代表作”『I AM』。あなたも、風の流れを感じて欲しい。

文:渡邉さゆり

(音楽誌「ショパン 1991年3月号」より)

 

 

 

特集》 W.D.O.2017 連動企画!『久石譲ファンのためのアンケート』

 

 

2017.8.30 追記
このイベントは8月20日に終了しました。下記ご覧ください。

 

 

 

オープンアンケートで久石譲ファンを楽しみましょう ♪

選んで、書いて、回答するボタンを押すだけ ♪

気になるみんなの回答もリアルタイム ♫

気になる質問だけ回答できる ♬

久石さんにめぐりめぐって届く!かもしれない

久石譲ファンのためのアンケート

Let’s Enjoy!   Let’s join worldwide!! 

 

設置期間:8月1日~8月20日

 

回答後も期間中パソコン・スマホ「ページ更新(ページ再読み込み)」でみんなの回答がリアルタイムに更新されてるよ。

 

 

*複数回答可
[democracy id=”14″]

 

 

[democracy id=”15″]

 

 

[democracy id=”16″]

 

 

 

*一番下「あなたの回答を入力する」で曲全部を欄に入力してね
[democracy id=”17″]

 

 

*一番下「あなたの回答を入力する」で曲全部を欄に入力してね
[democracy id=”18″]

 

 

*一番下「あなたの回答を入力する」で曲全部を欄に入力してね
[democracy id=”19″]

 

 

*一番下「あなたの回答を入力する」をクリックしてね
[democracy id=”20″]

 

 

コンサート感想、一番印象に残った曲、久石さんへの想い伝えたいことなど

*一番下「あなたの回答を入力する」をクリックしてね
[democracy id=”21″]

 

 

 

ご協力ありがとうございました。

久石譲ファンみんなの回答をオープンにすることで共感して盛り上がってつながりましょう。普段なかなか伝える機会のない想いもファンなら受けとめてくれる。

ひとりの大切な声、ひとりでも多くのたしかな声、そんな具体的なファン(観客)の声こそ、久石さんへの久石譲音楽への「ありがとう!」のしるしです。

 

 

お願い

ひとりでも多くのリアルな声を集めることが充実したアンケート、ファンの共感を呼びなにかを動かすきっかけになるかもしれません。Twitter/Facebook SNS紹介・拡散希望です。あなたの力をかしてください!よろしくお願いします♪

Please RT (Retweet) ♪

 

 

同時開催♪

 

 

ご意見、ご要望などありましたら 響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪