Info. 2015/09/19 [web] 「Music Voice」 久石譲インタビュー掲載

Music Voice(ミュージックヴォイス)に久石のインタビューが掲載されました。
8月にリリースされた新作アルバム「ミニマリズム 2」のことはもちろん、
直近のコンサートや作曲にかける熱い意気込みを語っています。
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Info. 2015/10/2,9 [TV] 金曜ロードショー 『秋のジブリ』2作品放送&オープニング映像限定復活!

スタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』(米林宏昌監督)が10月9日、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』(毎週金曜 後9:00)で、テレビ初放送される。30周年を迎える番組は今回、『秋のジブリ』と題して、2週連続でスタジオジブリ作品が放送されることとなり、1週目(10月2日)には宮﨑駿監督による『ハウルの動く城』を送る。

さらに30周年記念として、スタジオジブリが手がけた懐かしのオープニング映像も『秋のジブリ』限定で復活。久石譲作曲の音楽と映写機を回す可愛らしいおじさんのキャラクターが帰ってくる。

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Info. 2015/12/31 久石譲 「ジルベスターコンサート 2015 in festival hall」 開催決定!! 【9/19 update】

2014年につづき今年も久石譲ジルベスター・コンサート開催決定!!

今回の演奏曲目は、久石譲の作品に加えてベートーヴェンの第九を大編成の合唱団と共にお届けいたします。

 

久石譲 ジルベスターコンサート 2015 in festival hall

2015年12月31日(木) 17:00開演 (16:00開場)
フェスティバルホール(大阪)

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Info. 2016/春 RPGゲーム「シノビナイトメア」 久石譲メインテーマ曲担当

Fuji&gumi Gamesは、「東京ゲームショウ2015」において、新作モバイルゲーム2本『誰ガ為のアルケミスト』および『シノビナイトメア』を発表した。

Fuji&gumi Gamesの国内第3弾タイトル『シノビナイトメア』は、「アニメ×RPG」をコンセプトに、クノイチの少女たちが綴る青春群像劇を豪華クリエイター陣が描くダンジョン探索型”大河”RPG。クノイチたちは緻密に描かれた美しい3Dフィールドを縦横無尽に駆け巡り、古の「サムライ」たちの力を借りて強敵に立ち向かう。フィールド上には仕掛けやトラップが多数用意されており、謎解き要素も満載となっている。 “Info. 2016/春 RPGゲーム「シノビナイトメア」 久石譲メインテーマ曲担当” の続きを読む

Blog. 久石譲 「WORKS・I」 レコーディング日誌 (1997 コンサート・パンフレットより)

Posted on 2015/9/17

久石譲の過去のコンサートから。「PIANO STORIES ’97 CINEMA WORKS JOE HISAISHI -Ensemble Night-」1997年に開催されたアンサンブル構成の全国ツアーです。

 

公式パンフレットによる演奏プログラムや楽曲解説は

Blog. 「久石譲 PIANO STORIES ’97」 コンサート・パンフレットより

 

 

同パンフレットに特集掲載された『WORKS・I』のロンドン・レコーディング日誌をご紹介します。

 

 

Making in LONDON

10月リリースのNew Album 「WORKS・I」のレコーディングが、8月中旬にロンドンで行われた。現地での様子を、同行したスタッフによるレコーディング記と写真でお伝えしよう。

【レコーディング記】

8.14 第1日目
ロンドン着。さっそくスタッフミーティングを行う。今回は生の録音が中心であることをふまえ、音のポイント、曲順など、久石さんのアイディアをもとにスタッフの意見をまとめる。明日はエンジニア、指揮者を含めたミーティングを行う予定である。

8.15 第2日目
朝9:20、Air Studios入り。メインホールのコントロールルームでスタッフミーティングを行う。譜面上で重要なポイントを確認したり、マイキングの説明を受けたり。午後、久石さんはピアノに向かい約2時間のリハーサル。明日から本番が始まる。

8.16 第3日目
10:00ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団(LPO)のメンバーがスタジオ入り。緊張感が高まる。久石さんの紹介のあといよいよスタート。いきなり音の迫力に圧倒される。1曲目の「交響詩曲ナウシカ」は18分にもおよぶ大曲。久石さんは、コントロールルームから指示を出したり、譜面の確認や楽員からの質問があるたびに、コントロールルームとホールを何度も往復して、大変な様子。

8.17 第4日目
イギリスのSundayの習慣に合わせ、off。

8.18 第5日目
オーケストラ録り2日目。「ソナチネ」からスタート。しかし、譜面の一部が抜けてしまっていたために、急きょ「Two of Us」からのレコーディングに。スタッフのミスにより、アーティストに迷惑をかけてしまったことを深く反省。オーケストラが昼食の間も久石さんの音のチェックは続く。この日はほかに「Tango X.T.C.」「Silent Love」を収録。「Silent Love」の弦の美しさはとても魅力的だった。LPOとのセッションはこれで終了。

8.19 第6日目
Air Studiosメインホールでの作業最終日。LPO以外の楽器や歌のレコーディングを行う。久石さんのピアノも録る。音色、音の響き、ともにとても良い結果となった。「交響詩ナウシカ」のボーイ・ソプラノの録りもあったが、先生と一緒にやってきた12歳の少年がとてもかわいらしく、澄んだ歌声を聴かせてくれた。19:00全レコーディングを終了。

8.20 第7日目
本日よりTD(トラックダウン/音をまとめる作業)に入る。スタジオもメインホールよりTD用の第2スタジオに移動。まずは「交響詩ナウシカ」から。音の微妙なズレ、ノイズなどをデジタル技術で補整しながら編集しなおす。また、久石さん、プロデューサー、エンジニアが相談しながらベストテイクを選ぶ作業が続けられる。22:00TD初日は「交響詩ナウシカ」のみで終了。

8.21 第8日目
TD2日目。「ソナチネ」からスタート。ホールで得た、あの響きを逃さないよう何度も聴きなおし比べながら編集していく。長時間にわたる作業にも久石さんの集中力はまったく衰えない。真のプロの姿を目の当たりにした。続いて「Madness」「For You」を作業、22:00終了。時間のペース配分も予定通り。

8.22 第9日目
TD最終日。「Tango X.T.C.」「Two of Us」「Silent Love」の順でTD作業は進む。バランスのとりかたで意見が飛び交い、一時息が詰まるようなムードが流れたが、ディスカッションの成果は仕上がりに反映された。TD終了後、即マスタリングの準備に入る。23:00終了。

8.23 第10日目
The Townhouseにてマスタリング。16:00全て終了。

(久石譲 PIANO STORIES ’97 コンサート・パンフレットより)

 

 

この「WORKS・I」のレコーディング記は、当時の旧久石譲オフィシャルサイトでももっと詳しく見ることができました。今はすでに残っていなくて残念です。

 

久石譲 works レコーディング

(指揮者のNick Ingman(中央奥)と 古い教会を改築したAir Studiosにて)

 

Blog. 「久石譲 PIANO STORIES ’97」 コンサート・パンフレットより

Posted 2015/9/17

久石譲の過去のコンサートから。「PIANO STORIES ’97 CINEMA WORKS JOE HISAISHI -Ensemble Night-」1997年に開催されたアンサンブル構成の全国ツアーです。1997年という年が、久石譲の音楽活動においてどういう1年だったか。それはコンサートパンフレット冒頭に寄せた、久石譲のメッセージからわかります。

 

 

”「パラサイト・イヴ」にはじまり、「もののけ姫」、「HANA-BI」まで、とにかく今年は映画に明け暮れた。

うれしいことに、宮崎駿監督の「もののけ姫」は空前のヒットとなり、北野武監督の「HANA-BI」は、このほどベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得した。

すばらしい作品と出会え、かけがえのない1年になった。映画にかけてきた情熱とエッセンスを今夜は生の音楽で表現してみたい。”

久石譲

 

 

PIANO STORIES ’97 CINEMA WORKS JOE HISAISHI -Ensemble Night-

[公演期間]21 PIANO STORIES ’97
1997/10/02 – 1997/11/01

[公演回数]
10公演
10/2 長野・長野県県民文化会館中ホール
10/6 新潟・新潟テルサ
10/15 横浜・関内ホール
10/17 島根・島根県民ホール
10/19 広島・広島国際会議場フェニックスホール
10/24 栃木・鹿沼市民文化ホール
10/25 東京・ゆうぽうと簡易保険ホール
10/29 大阪・シアター・ドラマシティ
10/31 名古屋・名古屋市民会館中ホール
11/1 兵庫・神戸新聞松方ホール

[編成]
ピアノ:久石譲
ヴァイオリン:後藤勇一郎
ヴァイオリン:杉浦清美
ヴィオラ:桑野聖
チェロ:近藤浩志
コントラバス:斉藤順
木管:吉田治
パーカッション:福島優美

[曲目]
MKWAJU
TIRA-RIN
Modern Strings

アシタカせっ記 (映画『もののけ姫』より)
もののけ姫
アシタカとサン

Two of Us (映画『ふたり』より)
Tango X.T.C (映画『はるか、ノスタルジィ』より)

Sonatine (映画『ソナチネ』より)
Silent Love (映画『あの夏、いちばん静かな海。』より)
HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
Kids Return (映画『キッズ・リターン』より)

794BDH
Les Aventuriers
Asian Dream Song

—–アンコール—–
風のとおり道(Piano & Violin) (映画『となりのトトロ』より)
Parasite EVE (映画『パラサイト・イヴ』より)
Madness

 

 

 

【楽曲解説】 Ensemble Night Program

MKWAJUより
I. MKWAJU
IV. TIRA-RIN
Modern Strings
オープニングはアルバム「MKWAJU」(ムクワジュ)からの2曲。アフリカの多重的なリズムを取り入れ、その構造を”見せる”かのような仕上がりが特徴的だ。ミニマル・ミュージックの面白さも味わえるのが聴きどころ。ストリングスのカッティングが耳に残る「Modern Strings」はソロ・アルバム『I am』(1991)から。

アシタカせっ記
もののけ姫
アシタカとサン
ここでは、今年7月に公開され空前の大ヒットとなった宮崎駿監督の『もののけ姫』から3曲を演奏する。日本を舞台に繰り広げられる”一大冒険時代活劇”を彩るサウンド・トラックは、広大なスケールとその深いメロディ・ラインが印象的。冒頭で響くメロディはメインテーマの「アシタカせっ記」。おなじみの挿入歌「もののけ姫」、そしてラストシーンでは「アシタカとサン」のピアノの音色が感動的なストーリーをしめくくる。今回のスタイルでは、コンサート初演。

Two of Us
Tango X.T.C.
この2曲は、大林宣彦監督作品からの選曲。「Tango X.T.C.(エクスタシー)」(映画『はるか、ノスタルジィ』より)、「Two of Us」(映画『ふたり』より)は、いずれもソロ・アルバム『My Lost City』(1992)に収録されている。

Silent Love
Sonatine
HABNA-BI
Kids Return
『あの夏、いちばん静かな海。』『Sonatine』『Kids Return』そして来年公開の『HANA-BI』と、久石さんは北野武監督作品の話題作も担当した。「Silent Love」は、『あの夏、いちばん静かな海。』の主人公ふたりの”無音の世界”を包みこむような神秘的なサウンドが印象深い。コンサートでは「Kids Return」とともにストリングスなどで演奏され、人気が高いナンバーでもある。スリリングなメロディラインが耳に残る「Sonatine」は、今回のアンサンブルのスタイルでは初演。今年9月に開催されたベネチア国際映画祭でのグランプリ受賞作品「HANA-BI」は、来年の映画公開とサントラ発売に先がけてのタイムリーな初演。

794BDH
Les Aventuriers
Asian Dream Song
「Les Aventuriers」は昨年リリースのソロ・アルバム『PIANO STORIES II ~ The Wind of Life』から。ストリングス、木管、パーカッションによるアンサンブルが斬新なサウンドを聴かせてくれる。アコースティク・インストの魅力を充分に堪能できる構成。
「Asian Dream Song」は来年の長野パラリンピック冬季競技大会のテーマソングのインスト・バージョン。

(【楽曲解説】 ~コンサート・パンフレットより)

 

 

コンサート会場で販売されたこの公式パンフレットには、楽曲解説のほか小池聰行(オリコン社長)寄贈文なども収録されています。さらには映画『もののけ姫』の音楽レコーディング記が、レコーディング・スタジオの写真風景とともに記されています。

 

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このあたりの記録は、『もののけ姫は、こうして生まれた。』(DVD)にも収録されています。

 

 

もうひとつの特集は、『WORKS I』のロンドン・レコーディング日誌です。

Blog. 久石譲 「WORKS・I」 レコーディング日誌 (1997 コンサート・パンフレットより)

 

 

この時期の久石譲コンサートのスタイルは、ピアノ・ソロ、アンサンブル、オーケストラ、バンドなど、とてもバラエティに富んだ構成を循環していました。あらためてパンフレットを振り返って、「Silent Love」「Sonatine」の本公演構成での、アコースティック・アンサンブルは今となっては貴重ですね。

シンセサイザー基調のオリジナル版、オーケストラ・シンフォニーとして昇華した「WORKS・I」、そしてコンサートのみで披露されていたアンサンブル・バージョン。

楽曲解説を見ても、「HANA-BI」が当時公開前でのお披露目だったんです。とても新鮮な感覚で聴いていたということになります。1990年代後半を象徴するコンサートスタイルとその内容です。

パンフレットをパラパラめくっていたら、アンコールで披露された楽曲をメモしていました。懐かしい。でも、どの会場で聴いたんだろう、と思いながら。

 

 

久石譲 97 コンサート 3

久石譲 97 コンサート 2

久石譲 97 コンサート 1

 

Info. 2015/09/15 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 45 ~フォーレ/サン=サーンス~」 久石譲エッセイ連載 発売

2015年9月15日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 45 ~フォーレ / サン=サーンス~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税

「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。

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Blog. 宮崎駿 × 久石譲 対談(1996)コンサート・パンフレットより

Posted on 2015/9/14

1996年の宮崎駿×久石譲 対談より。

1996年開催「久石譲 PIANO STORIES II ~The Wind of Life」オーケストラ、アンサンブル、ピアノソロ、という3編成にて、3ヶ月間にわたって全国で開催されたコンサート・ツアーです。

Blog. 「久石譲 PIANO STORIES II Part.1-3」 コンサート・パンフレットより

 

同じパンフレット内での対談になります。

1996年というと映画「もののけ姫」(1997)の公開前年にあたり、イメージアルバムが完成した段階の頃です。この対談では「もののけ姫」の話というよりも、「となりのトトロ」制作当時の話や、その他ざっくばらんな内容になっています。

 

 

対談:宮崎駿 × 久石譲

音楽が映像を生かし、映像が音楽を生かした。
名作は、観る人すべでの心にしみて、送り手たちのもとを離れながら
いつまでも、いつまでも生きつづける。

久石:
はじめにお会いしたのは「風の谷のナウシカ」のときで83年ですから、もう13年も前ですね。以来、何本かやらせてもらってますけど、当時から宮崎さんのお仕事のスタンスって、基本的に変わらないですね。

宮崎:
そう、制作しながらなかなか結末が見えない。シナリオを作らないのは僕の悪いクセなんですよ。

久石:
最初お会いしたときも阿佐ヶ谷の仕事部屋に背景になるセルが張ってあって、で、宮崎さんはいきなり夢中になって説明をはじめて、僕はまだなにも把握してないんで、ハッ、ハッ、って言いながら全部聞いてる。それはもう、毎回同じ(笑)。

宮崎:
シナリオがないからこういう感じの世界ですって説明するしかないんですよね。本当ならアニメーションの場合は、とにかく絵コンテを全部揃えて、さぁこれを作るぞってみんなに示して、そこから準備期間がはじまるわけなんです。ある作業の段階を完結させてから次のステップにいくほうがたぶん生産性もいいし混乱もないでしょうけど、そうはいかないんですよね。

久石:
それはありますね。僕のケースだと、曲が全部書き終わってアレンジも決まって、それからレコーディングをスタートするのが理想なんですけど、たいがい1、2曲しか決まってないままワッと始めるんで、やりながら右往左往してるって感じです。その段階で僕が一番大切にすることは、”モノを作るときに視点がずれないように作りたい”ということなんですよね。日本では、アクションものの中にホームドラマ的要素が入ったりして、変わってしまうような映画やドラマが多いと思いますが、それだと本当の意味のリアリティがなくなっちゃうと思うわけです。だから音楽は絶対にそうならないようにしようと思っています。その場合、全体が見えないと5倍か10倍苦しむ感じがします。

宮崎:
ましてやこっちの方向でいいだろうと思ってレールを敷いて、方向を間違えてたらこれは深刻だしね。だからこの方向で間違ってないかどうかってのは、日々さいなまれながらやってますよね。


久石:
「もののけ姫」のイメージアルバムを作ったんですが、いつもなら考えるのに1ヶ月、制作に1ヶ月だったのが、今年のアタマから考えて実際に3月からレコーディングに入って6月までかかってしまった。今の自分が提供できる音楽的なラインはこれだろうと決めて、日本的な要素などを考えながら視点がずれないように音楽を作っていくと、5、6曲まではすぐいけますが、残りが非常に厳しいんです。

宮崎:
それは、僕が思うにCDなんぞができたせいですね。つまりね、音楽を作るっていうのと、CDの容量と関係あるでしょ。

久石:
ええ、大いにありますね。

宮崎:
だからみんなレコード時代よりも量的にいっぱい作んなきゃいけないでしょ。漫画でいうと、週刊で描いてる人がホントにのめり込むとね、それでパーになっちゃう。眠くならないアンプル飲んで5日間寝ないで描いたっていうんですね。これはね、才能の”大根おろし状態”というかね、そういう感覚になるんじゃないかなと思いますね。

久石:
CDだと1枚の収録時間が今はもう70分くらいですし。このままDVDになったら、音だけならものすごい容量ですからね。

宮崎:
そんなもん作ったら死んじまうんじゃない? どんどん多消費になって、そのことがホントにいろんな人の才能を脅かしてるって思うんですね。

久石:
だからそういうものに使われちゃわないで、いろんなアイデア出すしかないんですね。たとえばDVDがコンピューターとうまく連動できるならば、素材の音をそのまま全部入れてしまってユーザーが自分でミックスできるとか、映像の方でも未編集のものを入れておいて、これは監督の考えた編集、あなたはあなたの編集で映画を作ってください、というように。みんないろいろ新しい手を考えるでしょうね。


久石:
今年ずいぶん宮崎さんの本を読ませてもらったんですが、「時代の風音」という対談集では司馬遼太郎さん、堀田善衛さんとお話されてましたね。

宮崎:
ええ。司馬さんと堀田さんってぜんぜん違う人なんですよ。堀田さんは、日本人という視点からじゃなくて人間とか歴史とかいう視点で世界を見ていて、その中で日本も見ている。でも司馬さんという人は逆に、日本人であるというところから世界を眺める。徹底的に日本人であろうとすることにこだわってきた人です。

久石:
僕がふっと思ったのは堀田さんと司馬さんと宮崎さん、どなたも私小説と縁のない人だなってことです。日本の文学ってどうしても私小説がメインで始まっているじゃないですか。そういう意味でいうと堀田さん、司馬さんの作品に日本的な私小説の感覚はないし、宮崎さんの作品も私小説じゃない。もしかしたら僕のやってる音楽もあんまり私小説的な世界にこだわってないな、と思ったんです。

宮崎:
音楽をそういうふうに見る努力を僕はぜんぜんしてないから、音楽に関して言葉がないですね。

久石:
でも言葉といえば音楽って抽象的すぎて、音で何か言いたいと思っても無理ですよね。僕のようにピアノだとか弦だとか、インストゥルメンタルでやっている人間が、たとえばこの時代に対して僕の意見を言いたいと思ったら、ベートーヴェンのように1時間ぐらいの作品を書かなきゃならない。でも、それはエンターテイメントやポップスというフィールドから逸脱して、芸術家の方にいってしまう。それは僕のフィールドとは違うと思ったときに、インストゥルメンタルで音楽をやっていくことにすごく限界を感じますね。

宮崎:
仕事に関していうなら、僕は自分たちの仕事を駄菓子屋の商売だと決めてるんです。それはどういうことかというと、子供に一瞬”買い食い”の楽しみを与えられればそれでいいんだということです。ただ、駄菓子屋といってもいろんなものがある。売れりゃなんでもいいんだって、いいかげんな色素とか保存料とかじゃかじゃかつっこんで作っちゃうんじゃなくて、とにかく”駄菓子屋として一生懸命作りました”という駄菓子屋です。そういうことじゃなくて、名の通った、うまくはないんだけどすごいんだっていう和菓子を作りたいのなら、この場所は違うって思うんですね。

宮崎:
若いときはもう少し青くさく、「この映画さえできれば世の中変わる」なんて本気で思ってましたけどね、出来上がってみると何も変わらないんですよ。そういうときに自分たちのつっかえ棒はなんだろうと考えたら、この仕事の過程で自分たちがどれだけのことを手に入れたかってことくらい。メッセージを伝えるために映画を作るんだったら、書きゃいいんですもんね。

久石:
あっ、そうですね。

宮崎:
久石さんもそうでしょうけど、インタビューなんかでね”この作品のメッセージはなんですか”なんて聞かれるでしょ、黙って見てくれとしか言いようがないですよね。つまんなかったら途中で帰っていいし。もし少しでも心にひっかかることがあったら、それはなんだろうと感じたり、ときどき思い出してみてくれたらいいわけで。「テーマは? メッセージは? どこが見どころですか?」って言うけど、見どころ以外のとこは見どころじゃないのかって(笑)。

久石:
どんなことを思って作られましたか、というたぐいの質問は僕もよく受けますけど、言葉で説明するんじゃなくて、音楽を聴いてわかってもらいたいですね。

宮崎:
「紅の豚」のときね、お金もいっぱいかけちゃったし、罪ほろぼしにキャンペーンに協力しますって、日本全国を歩いたんです。そうすると1日に何回も、「なぜ主人公は豚なんですか?」「いつも空を飛ぶんですね」って聞かれるんで(笑)、だんだんハラがたってきてみんな違う答えをしたりしてね。

久石:
ハハハハッ! 大きなお世話ですよね。


久石:
「となりのトトロ」では、”トトロ”が登場するシーンで7拍子の音楽から音を抜いたことがありましたね。宮崎さんが「ここもう少し音うすくなりませんか」とか「少なくなりませんか」とかおっしゃって。僕もなんだかちょっと、”too much”だと感じてて、あのときにそれを指摘する宮崎さんて、すさまじいなあと思いました。

宮崎:
いやいや、久石さんの技術ですよ。久石さんがあの機械がいっぱいならんでる部屋にすわって、「音を1個ずつ抜きましょう」って、ひとつおきに抜いたんでしたね。それでトトロが現れてくる絵にあわせたら、余韻があって不思議にピッタリだった。こんなこともあるんだって思いましたよね。

久石:
あのとき、いったんは”音楽なし”ってことになったのが、ミーティングの翌日に電話をいただいて、まだ悩んでいらしたんですよね。やっぱり音楽を考えてほしいって。でも入れない可能性もあるけどいいですか、とおっしゃってた。それだけすごく難しいシーンでしたね。

宮崎:
トトロでは、打合せのとき確か”子供たちが歌ってくれる歌をぜひ作りたい”って話をしたんでしたね。

久石:
ええ。実は「さんぽ」は教科書に載るようになったんですよ。僕の唯一の、子供公認曲です(笑)。

宮崎:
それはすごいなぁ。この前ね、僕が時々行く山小屋の近くで「ラピュタ」の映画会をやった人たちがいるんですよ。最後に「君をのせて」の大合唱になって主催者が感動してました。おまけに蛍が飛んできたりして!

久石:
うれしいですねぇ。僕は、自分の子供が小さい時期にギンギンの現代音楽をやっていて、3、4歳の自分の子を見ながらアイデアが出る一番重要なときに子供の曲を作れなかったんです。それを今でもすごく後悔してるんですけど、トトロをやらせてもらったことで、その世界の仕事を残せたことが特にうれしいんです。

宮崎:
子供のいい歌が作られて残っていくというのはいいことですよね。

久石:
はい。ぜひ「もののけ姫」もいいものにしたいです。その制作がピークのときに、こうしてお話させていただいて、今日は本当にありがとうございました。

(PIANO STORIES II ~The Wind of Life 1996 コンサート・パンフレットより)

 

 

Related page:

 

 

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Blog. 「久石譲 PIANO STORIES II Part.1-3」(1996)コンサート・パンフレットより

Poated on 2015/9/13

久石譲の過去のコンサートから

「久石譲 PIANO STORIES II ~The Wind of Lie」
Part.1 Orchestra Night (2公演)
Part.2 Ensemble Night (7公演)
Part.3 Piano Solo Night (11公演)

なんとこの1996年は、当時最新作ソロアルバム『PIANO STORIES II』を引き下げ、上のように3タイプでのコンサートが精力的に開催されました。オーケストラ編成、アンサンブル編成、ピアノ・ソロ、しかもこれが10-12月という3ヶ月間のなかで、怒涛のように全国で開催されていたわけで伝説的です。

演奏プログラムもそれぞれの編成を活かした当時の久石メロディー満載のラインナップです。当時は小ホールもそうですが、短大や学園祭でも演奏していたんですね。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 1 Orchestra Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/10/14-15

[公演回数]
2公演 Bunkamuraオーチャードホール(東京)

[編成]
ピアノ:久石譲
指揮:金洪才
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

[曲目]
タスマニア物語

『My Lost City』より
1920
冬の夢
Madness

『もののけ姫』より
アシタカせっ記
シシ神の森

DA・MA・SHI・絵

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends
Angel Springs
Highlander
Kids Return
Asian Dream Song

【Melody Fair】
魔女の宅急便
「水の旅人」より FOR YOU
「水の旅人」より THEME

—–アンコール—–
Two of Us
「ナウシカ組曲」より 鳥の人

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 2 Ensembles Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/11/1-22

[公演回数]
全国7公演
11/1 長野県民文化会館中ホール(長野)
11/9 山口芸術短期大学(山口)
11/15 赤坂BLITZ(東京)
11/20 シアタードラマシティ(大阪)
11/21 草津文化芸術会館(滋賀)
11/22 関内ホール(横浜)

11/3 国立音楽大学講堂大ホール [国立音楽大学芸術祭]

[編成]
ピアノ:久石譲
String Quartet
Contra Bass
Marimba
Wood Wind

[曲目]
794BDH
Venus

『MKWAJU』より
MKWAJU
SHAK SHAK
LEMORE
TIRA-RIN

Tango X.T.C
Modern Strings

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends<ピアノソロ>
Angel Springs
Kids Return
Highlander
Les Aventuriers
Asian Dream Song

DA・MA・SHI・絵

—–アンコール—–
君だけを見ていた<ピアノソロ>
Madness

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 3 Piano Solo Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/12/10-27

[公演回数]
全国11公演
12/10 柏崎市民会館(新潟)
12/11 砺波市文化会館(富山)
12/12 松本市文化会館(長野)
12/14 パナソニック・グローブ座(東京)
12/15 パナソニック・グローブ座(東京)
12/16 仙台電力ホール(仙台)
12/19 米子市文化ホール(鳥取)
12/21 広島アステールプラザ(広島)
12/24 中野市民会館(長野)
12/26 しらかわホール(名古屋)
12/27 いずみホール(大阪)

[編成]
ピアノ:久石譲

[曲目]
The Inners
Dream
君だけを見ていた

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends
Angel Springs
Kids Return (MIDI)

Fantasia for Nausicaä
Drifting in the City

Cape Hotel
Tango X.T.C
※東京公演のみゲスト。
2曲差し替え<ゲスト:茂木大輔(Oboe)>
Two of Us
DA・MA・SHI・絵

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
The Wind of Life
Les Aventuriers (MIDI)
Asian Dream Song (MIDI)

—–アンコール—–
風のとおり道
Labyrinth of Eden

 

 

この伝説的コンサートを紐解くべく、当時会場で販売されたコンサート・パンフレットから、いくつかご紹介していきます。

 

 

【message】
-これは、まるでトライアスロンのような、
刺激的で、かつ知的な『久石譲の世界』だ。
”Orchestra Night 〈10月〉”
”Ensemble Night 〈11月〉”
”Piano Solo Night 〈12月〉”
漕いで、泳いで、そして走る。
エネルギーをそそいだパワフルなステージから
”最高の音楽”を演出していく、音楽の”トライアスロン”そのものなのである。

10月は『DA・MA・SHI・絵』の初演など、シンフォニックなサウンドで贅沢な響きを、11月ではミニマルを中心とした前衛的なアンサンブルで斬新なステージ構成を、12月はじっくりと落ち着いた雰囲気を醸し出すピアノ・ソロ。それぞれに個性的な表情が新鮮だ。

あの『Piano Stories』のリリースから8年。新譜『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』で、再び”原点”であるピアノに戻った久石譲が、ピアノとストリングスによる”良質”のアコースティック・インストゥルメンタルを提案している。

新作・初演に、これまで親しまれてきた曲を加えた、その1曲1曲が、ポップでアヴァンギャルドなアレンジメント・センスによって、限りなくピュアなメロディを創り出していく。

 

【楽曲解説】

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 1 Orchestra Night

■オープニングを飾る”タスマニア物語”は映画「タスマニア物語」(降旗康男監督)のメインテーマ。3拍子のリズムによって醸し出される雄大なスケール感が印象的。

■1920年代、”アール・デコ”の時代にインスピレーションを得たアルバム「My Lost City」(1992)からは”1920” ”冬の夢” ”Madness”の3曲。シンフォニック・コンサートにおいてもたびたびプログラムに取り上げられ、その美しいメロディと重厚なオーケストレーションの響きがみごとな統一感を出している。

■「もののけ姫」は1997年夏に公開予定の宮崎駿監督作品。公開に先がけてすでにイメージアルバムが発売されており、コンサートでは初演となる。”アシタカせっ記”(メインテーマ)他が演奏される予定。-「もののけ姫」は日本にとどまらず、これから世紀末を迎える、世界中のすべての人々に向けて創られるものだと思う。その音楽を手がけることになって、いま一番考えていることは、日本人としてのアイデンティティーをどう保ち、どう表現するかということである。映画の公開まで、宮崎監督との豪速球のキャッチボールが続きそうだ。「もののけ姫 イメージアルバム」より

■アルバム「α-BET-CITY」に収録されている”DA・MA・SHI・絵”はオーケストラ・バージョンでは初演となる。サンプリングを使用したミニマル的な原曲を再構成、弦・管楽器の広がりのある響きと爽快なリズムのコンビネーションが小気味良さを生み出している。

■今秋10月下旬発売予定の新譜「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」より、5曲演奏される。オーケストラでの演奏はもちろん初演。”Friends”はトヨタ「クラウンマジェスタ」CMで、”Angel Springs”はサントリーウイスキー「山崎」CMで、それぞれなじみ深いメロディとなっている。また”Kids Return”は今年7月に公開された北野武監督の最新作「Kids Return」のメインテーマ。”Asian Dream Song”は、久石譲が総合プロデューサーを務める「長野パラリンピック冬季競技大会」(1998年開催)の大会テーマ曲として作曲された。

■Melody Fairでは、これまでに発表された数多くの作品の中から印象的なメロディ3曲を取り上げる。久石譲の魅力を再認識させてくれるような曲ばかりである。”魔女の宅急便”は1989年宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」のテーマ曲。「水の旅人」(1993年公開/大林宣彦監督作品「水の旅人 ~侍Kids~」)はオーケストラとピアノによって、よりシンフォニックに再現されたスケールの大きい作品。”THEME”は文字通り、この映画のメインテーマ、”FOR YOU”はエンディングで中山美穂が歌って話題になったが、インストとしてもとても美しい曲。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 2 Ensembles Night

■オープニングの”794BDH”はマツダ「ファミリア4WD」CM曲。後にCM曲を集めたアルバム「CURVED MUSIC」に収録。”Sonatine”は1993年公開の北野武監督の話題作「Sonatine」メインテーマ。スリリングなメロディラインが印象的。”Modern Strings”はアルバム「I am」(1991)の中でも、ストリングスの裏アップ・ビートのカッティングが耳に残る、過激な作品。センチメンタルなタンゴの響きが懐かしい”Tango X.T.C.”は1992年のソロアルバム「My Lost City」に収録。

■『MKWAJU(ムクワジュ)』と題したこのコーナーでは、1981年にリリースされたアルバム「MKWAJU」から4曲演奏される。パーカッション・グループ、ムクワジュ・アンサンブルのために書かれたこの組曲は、アフリカの民族音がうから得た音型をもとに、アフリカのリズムが持っている多重的なリズム要素を、構造として”見せる”ことを目的として作曲した作品。ミニマル・ミュージックのおもしろさも味わえる。

■この秋の新譜「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」は、ピアノ&ストリングスの編成を中心としたアコースティック・インスト・アルバム。このコンサートでは、久石譲のプロデュース&アレンジによるストリングス、木管等のアンサンブルが、斬新なサウンドを聴かせてくれる。『アンサンブルの魅力』を充分に堪能できる構成となっている。

■”DA・MA・SHI・絵”はアルバム「α-BET-CITY」の中の1曲。原曲は、ミニマル的なサンプリングによる弦楽器、管楽器の響きが心地よい、オーケストラ的な広がりを持つ作品。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 3 Piano Solo Night

Part 3 Piano Solo Nightでは、これまでリリースしてきた代表的なアルバムの中からセレクトした曲を、ピアノソロそして、ピアノプレーヤーとのジョイントによる演奏で構成していく。「MKWAJU」「I am」「PIANO STORIES」「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」等は、いずれも、その音のイメージひとつひとつが吟味され表現されたアルバム。久石譲の感性が光るメロディ・ラインが、独自のピアノ・ワールドを創り上げる。

■ピアノプレーヤーとの”協演”
〈ピアノ・ソロ・ナイト〉で独自の世界を表現するのは、一人と一台の織りなす美しいハーモニー。ピアノプレーヤーがひとつのテーマを繰り返し、そこに生で演奏されるピアノが絡んでゆく。”久石ワールド”が2台のピアノによって紡ぎ出される。

「ピアノプレーヤーは、人間の可能性をより拡大するシステム。たとえば同じテーマを、ずっと同じテンポで弾くという、難しい部分を担当させています」 -久石譲

(【message】【楽曲解説】 ~コンサート・パンフレットより)

 

 

楽曲解説からもわかるとおり、コンサート編成に合わせて楽曲を再構成するという、久石譲のスタンスの土台がつくられていった、そんな時代のような気もします。

これがのちの、オーケストラ作品であれば「WORKSシリーズ」「ミニマリズム・シリーズ」、アンサンブル作品であれば、「PIANO STORIESシリーズ」や「Shoot The Violist」など。

現在からこの20年近く前を振り返れば、簡単にそう言い表せてしまうのですが、やはり久石譲音楽活動において、コンサートというのは作品になる前段階もふくめた、重要な実験の場、創作活動の源、楽曲が成長していく場のような気がしてきます。

作品化されるまでに5年以上経過するものも常ですが、コンサートで披露(しかも幾度にわたって)された作品たちは、これからもいつか作品化されていくのではないか、と。。。

たとえば、「DA・MA・SHI・絵」。オリジナルが「α-BET-CITY」(1985)に収録されているわけですが、この1996年にオーケストラ初演されてから、その後も数々のコンサートで取り上げられてきて、オーケストラバージョンとしてCD作品化されたのは「ミニマリズム」(2009)。なんと13年という月日が流れています。

アンサンブル・バージョンもおそらくこのツアーあたりが原型だと思うのですが、コンサート演奏、修正・改訂を重ね、CD作品化されたのは…「Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~」(2000)。

久石譲の音楽と歩んでいくというのは、そういうことなんじゃないかと、そんな心境で当時のパンフレットを見返していました。久石譲のエネルギーが四方に爆発し、かつそれを収拾つけるかのように多種多彩な創作活動と演奏活動。そんな当時40代の走りつづける久石譲を感じます。

 

 

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Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 クラシックプレミアム編集部 ルポルタージュ

Posted on 2015/9/10

クラシックプレミアム第44巻は、ヤナーチェクとバルトークです。

いろいよ終盤は近代に突入しています。

 

【収録曲】
ヤナーチェク
《シンフォニエッタ》
クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1987年

バルトーク
管弦楽のための協奏曲 Sz.116
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
録音/1980年

《ルーマニア民俗舞曲》 Sz.68
エルネスト・アンセルメ指揮
スイス・ロマンド管弦楽団
録音/1964年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」 ルポルダージュ
久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015 リハーサルを取材

今号では久石譲によるエッセイ(音楽講義?)はお休みです。

ルポルタージュとして、8月に開催されたW.D.O.コンサートの、クラシックプレミアム編集部によるルポルタージュとなっています。前年(W.D.O. 2014)のルポルタージュにつづき今年も。うれしい限りです。

こちら ⇒ Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」 クラシックプレミアム編集部 ルポルタージュ

ルポルタージュでは、普段わからない舞台裏が垣間見れることが一番です。2日間のリハーサル風景や、楽曲が仕上がっていく過程が、たっぷりと語られています。今年はどんな舞台裏だったのでしょうか。

 

 

昨年に続いて、久石譲と新日本フィルハーモニー交響楽団による「ワールド・ドリーム・オーケストラ」のコンサートが8月に開催。今年は8年ぶりの全国ツアーで、大阪(8月5日)を皮切りに、広島(6日)、東京(8日・9日)、名古屋(12日)、仙台(13日)をめぐる。そのリハーサル(3日・4日)のようすを編集部が取材した。

今回の「ワールド・ドリーム・オーケストラ」のプログラムは、久石さんが昨年から構想を練り、ぎりぎりまで検討したプログラムだという。それは戦後70年の大きな節目の年に行う「ワールド・ドリーム・オーケストラ」に、特別の想いを込めていることの表れなのだろう。その結果、すべて自作品で構成され、その大半が世界初演だ。ツアーでめぐる都市に広島や仙台があることからも想いの強さが伺える。

挨拶をしようとリハーサル直前の楽屋に向かう。中へ招じられるとそこには楽譜に向かって集中している久石さんの背中が見えた。気安く声をかけられるような雰囲気ではない。が、一瞬の後、くるりと振り向くと笑顔だ。

 

【15時 リハーサル開始 セッション①】

演奏会は2部構成で、第1部は、久石さんのピアノとチューブラー・ベルと弦楽合奏による《祈りのうた》に始まり、4楽章からなる交響作品《The End of The World》、続けて1962年に発表されたスタンダードナンバー《The End of the World》(邦題「この世の果てまで」)を久石さんが再構成した作品で終わる。

リハーサルの最初は大曲《The End of The World》第1楽章だ(リハーサルでは曲の楽器の編成等で演奏の順を決める)。その冒頭から久石さんの指示が飛びリズムの刻み方のこまかいニュアンスを伝えていく。このリズムは曲全体を覆うことになる重要なモティーフなのだ。指示される前と後の演奏を比べると、アクセントの置き方の微妙な違いで、これほど表情が変わるのかと驚く。巨大な音の魂が押し寄せてくるような楽章だ。この《The End of The World》の原曲は、2008年、久石さんが「9.11」に衝撃を受けて作曲した作品なのだ。

第2楽章は、中東風のメロディーを歌うチェロのソロとティンパニの応答で始まる。濃厚でエキゾティックな香り。やがてアルト・サクソフォーンのソロでジャズ風の展開となり、オーケストラ全体がスウィングしてくる。それを先導して久石さん自身がスウィングしている。身体全体からリズムが溢れているようだ。16時15分に休憩。

 

【16時35分~17時45分 セッション②】

久石さんのピアノとオーケストラによる《紅の豚》から始まる。これは第2部で演奏される曲。そしてテレビCMで聴きなれた《Dream More》。メロディーは聴きなれた曲だが、久石さんの新たな書き下ろしによる豊饒な響きのオーケストラ作品になっている。速い分散和音の繰り返しを異なる楽器で分けて受け持つという離れ業を聴かせる。それが楽器を変えながらメロディーを支えていくのだが、ぴたりとリズムが合う時の爽快感は格別だ。1時間の食事休憩。

 

【18時45分~19時45分 セッション③】

ここからオーケストラに混声合唱とカウンターテナーが加わる。《Symphonic Poem “NAUSICCÄ” 2015》は、映画『風の谷のナウシカ』の音楽を演奏会用の作品として発表してきたもののいわば集大成ともいえる交響詩。演奏会では第2部の冒頭に演奏される。破壊と再生の叙事詩が、レクイエムのディエス・イレ(怒りの日)や壮大なフーガ、低弦が唸る不気味な音、清澄な女声合唱などで綴られていく。そして《The End of The World》の第3楽章。カウンターテナーの高橋淳さんの深く強靭な声が印象的だ。

 

【20時~21時 セッション④】

引き続き、オーケストラと混声合唱とカウンターテナー。《The End of The World》の壮大な第4楽章。次いで久石さん再構成版《The End of the World》で、オーケストラと混声合唱にカウンターテナーという珍しい組み合わせなのだが、心に強く訴えてくるものがある。そしてこの日の最後に《祈りのうた》。久石さんのピアノとチューブラー・ベルの応答に弦楽合奏が加わる静謐な音楽だ。今回の演奏会が、この曲から始まる意味は大きい。

 

翌日の4日のリハーサルにも顔を出した。前日と同じ《The End of The World》の第1楽章から始まる。するとオーケストラの音がまったく違う。音は厚く豊かになり、複雑なリズムもソリッドになっている。たった1日のリハーサルでここまで仕上がるのかと驚く。休憩時に垣間見た久石さんの表情も高揚したなかに確信がみなぎっていた。21時までリハーサルが続き、そのまま大阪入りするのだという。いよいよツアーが始まる。

(クラシックプレミアム 第44巻 より)

 

 

2日間にわたる濃厚なリハーサルだったようです。2日間ぶっ通しではあるものの、2日間で仕上げる集中力は、久石譲も新日本フィルも、さすがはプロだなと感嘆します。

さて、今年2015年の一大イベントとなった「W.D.O.2015」ですが、コンサート・レポートや、公式パンフレット内久石譲インタビューなど、興味のある方はそちらもぜひご覧ください。

そしてその歴史の1ページを刻んだコンサートの、WOWOW放送も日にちが迫ってきました。

 

WDO2015 Related page:

 

久石譲 コンサート 2015 W

 

クラシックプレミアム 44 ヤナーチェク バルトーク