Blog. 「週刊 司馬遼太郎 8」(2011) 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2016/10/28

週刊朝日MOOK「週刊 司馬遼太郎 8」に掲載された久石譲インタビューです。NHK『坂の上の雲』の音楽担当にまつわるエピソードになります。

 

 

3部はコーラスを入れた「救済の音楽」

私が司馬さんの作品を徹底的に読んだのは1996年ごろだと思います。宮崎駿監督が映画「もののけ姫」の構想をしていたときに、司馬さんと小説家・堀田善衞さんの話を私たちに盛んにしていた。宮崎さんは、これからの日本はどうなってしまうのか心配されていた。何か社会的に意味のある仕事をやりたいと考えていたのだと思います。

私は司馬さんの作品に何かヒントがあるかもしれないと、1年間で司馬さんの作品を60冊ぐらい読みました。その中でいちばん衝撃を受けたのは『坂の上の雲』でした。幕末から近代国家としての日本がどうやって這い上がってきたのかよくわかった。当時、帝政ロシアは世界から反感を買っていた。日本のような小さな国がロシアと戦争をやって勝つとは思っていなかった。それが軍資金もないのに言うべきことを言って戦った。海外のほとんどが日本を応援していた。ロシアの国内事情も重なって、たまたま勝った。それを日本は勘違いして、太平洋戦争にまで突入する。司馬さんも最初はその後のノモンハン事件なども描こうとしたと思いました。

-久石さんは、宮崎監督の映画作品の音楽担当でも有名。司馬さんは宮崎作品が好きで、亡くなる前年に本誌で対談をしている。

私がNHKの知り合いのディレクターから「坂の上の雲」の音楽担当を依頼されたのは、もうずいぶん前のことです。大好きな作品だし、ぜひやりたいと思った。2011年で放映3年目。司馬さんは他の作品にも通じますが、秋山好古、真之兄弟のように、本当のエリートではなく2番手3番手に光を当てるのがとてもうまいですね。最初の第1部は青春期、第3部は二◯三高地の戦いと日本海海戦と決まっていましたから、第2部は少し心配していたんですが、子規の死にポイントをあててうまくいった。渡辺謙さんのナレーションと、よく合っていました。番組の最後に流れるテーマ曲「スタンドアローン」は、第1部はサラ・ブライトマンのスキャット、第2部は森麻季さんの歌、第3部はコーラスを入れました。第3部は「救済の音楽」。希望の見える音楽をテーマにしています。

-久石さんは東日本大震災のチャリティーコンサートを東京、大阪、パリ、北京で行った。

コンサートの前に、実際に現場を訪れないといけないと思って、宮城県石巻など被災地を4ヵ所回りました。福島第一原発のメルトダウンでは、日本政府や東京電力がほとんど情報を公開せずに、世界からあきれられてしまいましたが、コンサートでは各地から支援の声が上がり感動しました。それにしても復興は遅れていますね。まだ瓦礫の処理は3割です。日本は規模は小さいのだから、それに合った生活をすればいいのに、原発をはじめ、さまざまなところで無理をして、便利さや快適さを求めた。その結果がこの事態です。こんな状況を司馬さんが見ていたら、どのように思うでしょうね。福島のあの豊かな土地が十数年は使えないと思うと悲しいですよ。

(「週刊 司馬遼太郎 8」より)

(初出:週刊朝日 2011年8月5日 増大号)

 

週刊朝日MOOK 週刊 司馬遼太郎 2011年10月7日 発売

公式サイト:朝日新聞出版 | 別冊・ムック 週刊 司馬遼太郎 8

 

 

映画「もののけ姫」(1997)製作時期に、司馬遼太郎の関連本を読みあさったエピソードは過去にも語られていましたね。

 

「いま子供たちに向けて何をテーマに作るべきなのかが見えて来ない」という発言もしています。そんなとき、宮崎さんの尊敬する作家、司馬遼太郎さん、堀田善衛さんとの鼎談が実現しました。その鼎談によって、宮崎さんは今後、作家として何をやるのか、見えてきた部分があったのではないでしょうか。実は、僕は司馬さんの本をあまり読んでいなかったので1年間で100冊近く読みました。『もののけ姫』の奥深いところに司馬さんの見方、考え方があるのでは、と思ったからです。

Blog. 「文藝春秋 2013年1月号」 久石譲、宮崎駿を語る より抜粋)

 

「もののけ姫」では、当時宮崎さんと司馬遼太郎さんの対談集が出版されたこともあり、1年間で『坂の上の雲』他ほぼすべての本を読破した。宮崎さんがこの映画に込めた思考の過程を少しでも知るための参考になれば、と考えたからだ。で、そのことを宮崎さんに話したら「そんなに読まなくてもいいですよ」と苦笑いされた。

Blog. 宮崎駿 × 高畑勲 × 鈴木敏夫、久石譲音楽を語る 『久石譲 in 武道館』より より抜粋)

 

 

ほとんどTVドラマの音楽を手がけることがなくなった久石譲が、なぜこの作品は引き受けたのか、またひとつの作品に携わるときの姿勢など、いろんな面が垣間見れるインタビュー内容です。

 

週刊 司馬遼太郎 8

 

Blog. 「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」より EXILE ATSUSHI 久石譲 エピソード

Posted on 2016/10/23

2007年のスタートから、足かけ10年。大ロングラン中の人気番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(TOKYO FM含む全国38局ネット)から、ベスト・オブ・ベスト回を厳選して単行本化したのが書籍「ジブリ汗まみれ」です。その最新刊・第5巻(2016年3月刊行)のご紹介です。

 

本著に収められたエピソードその目次は、

▼第5巻収録 豪華ゲスト
○庵野秀明(監督・プロデューサー)+樋口真嗣(監督)「特撮の灯よ、永遠に…! <特撮博物館>開催秘話」[ポッドキャスト未配信]
○坂本美雨(ミュージシャン)「わたしと 父母と 音楽と」
○太田光(タレント)「拝任! 『かぐや姫』の特命コピーライター」
○吉岡秀隆(俳優)「ジブリ作品が、ぼくを助けてくれた」
○堅田真人(モバイル研究家)+依田謙一(日本テレビ)「携帯事情の最前線 ウェアラブルからインプラントへ」
○三浦しをん(作家)「『神去なあなあ日常』 小説と映画のあいだ」
○EXILE ATSUSHI(アーティスト)「伝えたい歌、日本のこころ」
○橋口亮輔(映画監督)+リリー・フランキー(アーティスト・俳優)「小豆島で語りあったこと」
○斎藤環(精神科医)+川上量生(カドカワ代表取締役社長)「ヤンキー vs. オタク —この日本的なるもの」
○追想・菅原文太(鈴木敏夫による“ひとり語り”)

 

 

ジブリネタ・久石譲ネタはもとより、さまざまな分野のバラエティ豊かなトーク満載で、見識が深まり毎号楽しみに読んでいます。この最新刊も、各ゲストを迎えてのエピソードそれぞれに書き残したいことはたくさんある、目からウロコなお話が盛りだくさんでした。

久石譲ファンサイトということで、そのなかから久石譲に関連するエピソードをご紹介します。抜粋になりますので、もしさらに深掘りしたい人、興味を持たれた人は、ぜひ本を手にとってみてください。

 

 

Guest 7
EXILE ATSUSHI 「伝えたい歌、日本のこころ」

日本の歴史からわかること

~略~

ATSUSHI:
「そうですね…。EXILEとしてのステージの時は、どっちかというとエンターテインメントで、バーンと派手は演出が多いので。ソロのツアーでは、わりと静かな曲も歌います。あと、この前、久石さんとご一緒させていただいたので…」

鈴木:
「そうですってね。さっきの奥さんも知ってたんですよ、そのことを(笑)。」

ATSUSHI:
「〈懺悔〉という曲なんですけど、ちょうど宮崎駿さんが引退を発表された日(2013年9月1日発表、6日引退会見)に、その曲のミックスダウンをしていて。久石さんは、宮崎さんと30年ぐらい一緒にやってきた仲間なので、やっぱりちょっと傷心されてる感じがありましたね。」

鈴木:
「あの日ですか!…ぼく、その日に、久石さんに2回電話をもらったんですよ。じゃあ、その作業の合い間を縫っての電話だったんですね。それで、最初は「引退にびっくりした」という話で、しばらくおいて、「何とか撤回できないのか」と…(笑)。」

ATSUSHI:
「ああ、そうおっしゃってたんですね? 相当ショックだったみたいですね、やっぱり。」

-あの曲(〈懺悔〉)は、詞よりも曲が先にあったんですか?

ATSUSHI:
「あれは、日本テレビが催した、「洛中洛外図」という大昔の何枚もの屏風を展示する記念式典というか、展覧会のためのテーマ曲だったんです。それでぼくも、一緒に行かせていただき、見たんですが──やっぱりそお屏風には、当時の”発注主”がいて、たとえば、徳川家と豊臣家の勢力図みたいなものが上手と下手みたいに描かれていたり、深い意味が込められている。日本人の民族性というか、当時の生活が描いてあったり。そういうものを見て、久石さんがインスピレーションを得て作られたメロディーをぼくに下さって、ぼくも、歌詞の案を先にメモしておいたんですけど、それに合わせて作詞させていただきました。

でも、音楽家としての信頼というんですかね…お任せして、最初に上がってきた時、すごく難しいメロディーだったんですけど、「とにかく久石さんだし、文句言わずにやってみよう」と。すごく難しかったけど、作詞をして、歌った時に、「ああ、やっぱりすごいな。こうなるんだ」と──自分ではイメージできないところまで行っているというか、信頼してやってみて良かったなと思いましたね。

その「洛中洛外図」を見て、昔から芸術作品というものは、ある思いがあって残されているんだなあと。その屏風にも、何か意図があって、発注主がいて、そして、今に残されている…。見ると、人間は、ずーっと同じことを繰り返しているんです。争いもするし、平和を願って篳篥(ひちりき)を吹いてた人たちの”昔”は、もう消えてしまったのか、とか。人間は同じ過ちを繰り返しているなと感じたし、作詞をしていて「これって、懺悔なんだな」と思い、〈懺悔〉というタイトルにさせていただいたんです。

その屏風には、喧嘩をはやし立てるお坊さんや、不倫をしに行く女性の姿や、お花見の帰りに酔っぱらってる集団が描かれていて、結局、やってることは今と変わらない。昔のことはどうしてもちょっと美化して捉えるけれども、昔はけっこう自由に芸術をやっていたんだなあ、とも思いましたね。」

鈴木:
「いつごろのものなんですか? 「洛中洛外図」って。」

ATSUSHI:
「室町時代から始まり、江戸時代まで描かれていたそうです。」

鈴木:
「室町なんですよねえ…日本のすべてが変わったのは。今、”家族”というものがあるじゃないですか。お父さん、お母さん、子供がいて、一つの家族を構成している。それ、室町時代に始まってるんですね。」

~略~

「やりたいことをやる」ことの是非

~略~

鈴木:
「だけど、この前、東京ドームのコンサートを初めて拝見して、思い知らされましたよね。最初から最後まで、目が離せない。やっぱり面白かったんだもの。何が良かったかというと、自分たちのことよりも、お客さんのことを考えていらした。そこらへんが、宮崎駿の考えかたにも通じるというか…。彼もね、そりゃ自分でやりたいこともあるんでしょうけど、それより先に、「今のお客さんって、何を観たがっているんだろう?」って、そっちですよ。」

ATSUSHI:
「宮崎さんって、そうなんですね?」

鈴木:
「はたから見ると好きなことやってきたように見えるかもしれないけど、しかし、誤解を恐れずに言っちゃうと──彼は、自分の好きなものは一本もやっていない。」

-そうなんですか!?

鈴木:
「そうですよ。だから、さっきの屏風の話じゃないけど、ぼくなんか、発注主なんですよ。「次、これをやってください」って。そうすると、だいたい二つ返事で引き受けてくれる。で、「今、この題材で何をやるとお客さんが満足してくれるだろう?」って、まず、先にそれですよ。彼が他の監督と一番違うのはそこで、非常に職業的にやる。だから引退の時に、「これからは好きなことやります」って言ったわけです。だって、一回もやってないんだもん、大げさに言うと。

変な言いかただけどね…もし、彼が好きなことだけやっていたら、30年ももたないですよね。いつもいつも、「お客さんが何を求めているか」。それを探るのが、彼がやってきたことなんです。」

ASTUSHI:
「なるほど、そうなんですね…。ぼくにとってのEXILEも、今おっしゃったことに近くて、自分自身のために作詞とかパフォーマンスをやったことは、あまりないですね。グループのため、お客さんのためというのが、やっぱり一番にある。」

鈴木:
「さっき、美空ひばりさんの話が出たけど、昔は、歌手のバックには、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、「この歌手に、次、何を歌わせようか」と考える。その時、彼らが考えるのは、お客さんのことですよね。歌手本人の希望うんぬんではなく、「これを歌え」と。それでうまくいくかどうか、でしょ? そういう時代のやりかたって、もう一度見直すべきじゃないかなという気がする。エンターテインメントというのは、やっぱり、需要と供給の関係の上に成り立っているから、ひとりよがりになっちゃダメでしょう。

いい機会だから、ちょっと話しちゃうと──宮さん(宮崎駿)は、引退のあと好きなことをやると言いながら、いざとなると、「何をやったらいいんだろう」と思っていますよね。」

ASTUSHI:
「長年、お客さんのためにやることによって、好きなことが変わってきちゃってるから、「本当にやりたいことって何だっけ?」という感じなんでしょうね。」

鈴木:
「そうそう。そのとおり!」

-そうなると、逆に、自分がただやりたいことだけをやっても、楽しくないんじゃないですか?

ATSUSHI:
「誰からも反応がないって思うと、やりたくなくなっちゃうんですよね。」

鈴木:
「結局、宮崎駿が、今何をやってるかというと──三鷹の森ジブリ美術館の展示替えが、毎年5月にるんですが、それを、目の色を変えてやっている。それで、ジブリが作った保育園の子供たちに楽しんでもらいたいと、去年からやってるんですけど、正月を越えて、「もう、どうしたらいいかわからない」って。ものすごく一生懸命やっていて、ある意味では、映画を作るよりも頑張ってる。「こんなことを頑張るんだったら、映画を作ってよ」と言いたいぐらいなんですけど(笑)、彼にとっては、お客さんの顔が見えてるんですよ、その子たちが喜んでくれなかったらダメと。~略~」

~以下略~

2014年3月11日収録 れんが屋/4月8日・5月13日放送分に、元音源より追加、再構成。

(書籍「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」 より)

 

 

当エピソードの半分も抜粋していません、話はあらゆる方面に展開し、ジブリのこと・EXILEのこと、多岐にわたっています。

個人的には、久石譲が宮崎駿監督の引退を耳にしたその日が「懺悔 EXILE ATSUSHI × 久石譲」のミックスダウンの日ということだけでも、感慨深い思いで同曲を聴き返してしまいました。映画「風立ちぬ」製作期間中、うすうすは感じていたことかもしれませんが、いざ公になったときの衝撃はやはり第三者には測りかねるものが存在するのだろうと思います。

芸術とは、芸術作品とは、作家とは。時代性や作家性もふまえて語られた対談はとても興味深いものがありました。村上春樹さんのエッセイなどを読んでいても、久石譲にも通じるのかなあ、同じようなこと思っているのかなあ、と置き換えてみることもるのですが、それはまた別の機会にご紹介できたらと思っています。

このあたりの「久石譲考察」については、ちょうど今年の5-6月にかけて深く掘り下げて記しました。共通項もあるような気もしますので、ご興味のある方はぜひ。

Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 1
Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2
Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 3

 

本書よりご紹介した楽曲「懺悔」にまるわる楽曲解説やエピソードなどは下記ご参照ください。

Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』
Blog. 「NHK SWITCH インタビュー 達人達 久石譲 × 吉岡徳仁」 番組内容紹介

 

EXILE ATSUSHI 久石譲 懺悔 通常盤

 

 

最後に。

この秋読んだ本に、「ジブリの仲間たち」(鈴木敏夫)[2016.6刊行]、「もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-」(木原浩勝)[2016.10刊行]などもあります。前著は、今、宮崎駿監督が何に取り組んでいるか、リアルタイムな情報を垣間見ることができます。

後著は、2016年今年が「ラピュラ公開30周年」にあたり、当時の制作現場がまぶしく記されています。かなりトリビア的な情報も多く、ジブリファン・ラピュタファンには、たまらない一冊になると思います。当時スタジオジブリでこの作品を一緒に作っていた人だからこそ語れる秘話満載です。おそらく蔵出しな情報ばかりで、鈴木敏夫・宮崎駿・高畑勲 各著書はほぼ読んでいる人としても、初めて知ることが多く驚きと感動の連続で一気に読み切りました。

私のふわっと感想よりも、Amazonレビューなんかを見ていただければ、手にとりたくなること間違いナシです。(リンク貼っていません検索してください)

 

ジブリの仲間たち 鈴木敏夫

もう一つのバルス

 

秋の夜長に、ぜひ1冊手にとってみてください。久石譲を聴きながら♪

 

ジブリ汗まみれ5 鈴木敏夫

 

Info. 2016/11 [TV] 「金曜ロードSHOW!」「3週連続 秋のジブリ」~となりのトトロ/紅の豚/猫の恩返し~ 放送決定

11月の「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系列)は「3週連続 秋のジブリ」と題して、ジブリ作品を3週連続放送されることになりました。最終日の18日には、あの作品の初放送も。

11月4日(金) 21:00-22:54
映画『となりのトトロ』(監督:宮崎駿 音楽:久石譲)
HD放送/ノーカット

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Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』

2016年10月21日 CD発売 OVCL-00620

 

『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』
久石譲(指揮) フューチャー・オーケストラ

久石譲が主宰するWonder Land RecordsとEXTONレーベルが夢のコラボレーション!未来へ発信する新シリーズがスタート!

現在、日本を代表する作曲家久石譲と、EXTIONによる夢のコラボレーション。久石譲が2014年に始動させ好評を博す現代の音楽のコンサート・シリーズ「ミュージック・フューチャー」より、2015年のコンサートから厳選されたライヴ・レコーディング盤です。ミニマル・ミュージックの代表的作曲家スティーヴ・ライヒ、彼に影響を受けたジョン・アダムズ、久石譲の3人の曲を収録。1970年代から現代にかけての音楽の軌跡、熱量を感じ取ることが出来るでしょう。まさに「新たなる音楽体験」を感じさせる楽曲たちです。また、日本を代表する名手たちが揃った「フューチャー・オーケストラ」の演奏も注目。難易度MAXのこれらの楽曲を、高い技術とアンサンブルで見事に芸術の高みへと昇華していきます。未来へと発信される新シリーズのスタートです。「明日のための音楽」がここにあります。

ホームページ&WEBSHOP
www.octavia.co.jp

(CD帯より)

 

 

解説 小沼純一

このアルバムは、久石譲によるコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」の「Vol.2」(2015)で演奏された作品3つによって構成されています。

コンサート・シリーズは2014年から始まり、「Vol.1」はアルヴォ・ペルトやヘンリク・グレツキなどのヨーロッパの作品を、「Vol.2」ではアメリカ合衆国の作品を中心にプログラムが組まれました。作品は20世紀から21世紀にかけてのものが中心で、いずれも久石譲という作曲家が関心を持ち、また影響を受けた作品です。しかしかならずしもコンサートで、ライヴ演奏でふれる機会は多くありません。録音をとおして知っているだけのおとも多々あります。そうした作品を、このようなかたちでステージにのせ、聴き手の方がたにじかにふれてもらおうという試みが、「MUSIC FUTURE」です。そしてはじめて聴いたけどおもしろい、あるいは、新しい体験となった、そんなことをおもってもらえればいい、そんな意図があるようにおもえます。

アルバムでは「Vol.2」で演奏された5作品のなかから、3曲を収録しています。CDはコンサートとはまたべつの提示ができるメディアです。この選曲は、ある意味、久石譲自身がたつ位置そのものを音楽的に要約しているようにみえます。つまり、1960年代から70年代にかけてアメリカ合衆国で「ミニマル・ミュージック」と呼ばれることになる音楽が生まれる。代表的な作曲家としてスティーヴ・ライヒ(1936-)がいる。つぎの世代はライヒの音楽にふれ、こうした音楽を書いてもいいんだと、ひとつの自由さを得る。それがジョン・アダムズ(1947-)であり、久石譲(1950-)だった──。ただライヒらの音楽をただ真似しているのではなく、次世代はミニマル・ミュージックを音楽的思考の土台にしながら新たな道へと歩み始めます。ここにある3曲は、ライヒの1979/1983年から1992年、2015年と、ある音楽スタイルの軌跡が、ほぼ10年間隔で、提示されている。そんなふうにみることができるでしょう。

 

 

久石譲
《室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra》

コンサート当日、前2014年にひらいた「MUSIC FUTURE Vol.1」でプログラムしたニコ・ミューリー作品でのエレクトリック・ヴァイオリンを自作でもつかってみようと考えた、と久石譲はMCで語っていました。結果的にこの楽器はとてもアメリカ的なひびきであること、それによってこのコンサートがアメリカの音楽を中心にプログラムされている、また同時に、久石譲が自身のうちのアメリカ、アメリカ音楽の影響を確認することになったのだ、とも。実質的には協奏曲(コンチェルト)であるのに、「室内交響曲」というタイトルであるのは、エドゥアール・ラロの有名な《スペイン交響曲》にならってとのことです。

ここで用いられているエレクトリック・ヴァイオリンはすこし特殊で、6弦からなっています。通常のヴァイオリンより低い音域が可能で、また、操作によってエレクトリック・ギターのようなひびきがだせるのが特徴です。エレクトリック・ギターをそのままオーケストラと共演させると、ときに両者のサウンドが調和しないことがあります。しかし、このエレクトリック・ヴァイオリンはアコースティックなところとエレクトリックなところを両方を持つハイブリットな性格によって、またさらにサクソフォンの音色の強調によって、「室内交響曲」を一歩拡張しています。

全体は急-緩-急の3楽章をとります。エレクトリック・ヴァイオリンは室内オーケストラのひびきを外からまわりこむかたちをとることが多く、またアンサンブルのなかではサクソフォンが時折クローズアップされます。特に第3楽章半ばからあとのところでしょうか、こまかい音型がゆきかうなかで息のながいサクソフォンの線は、そこに注目するなら、先のライヒやアダムズとは異なったものとして聴けるかもしれません。

 

スティーヴ・ライヒ
《エイト・ラインズ》

もともとオクテット(八重奏曲)というタイトルで1979年に発表されましたが、後により演奏しやすいかたちに手を加え、1983年に改訂、現在は《エイト・ラインズ》として知られています。全体が5つの部分に分かれたり、とか、70年代半ばくらいにライヒが学んでいたユダヤ教の唱法の影が落ちていたり、とか分析的なことはいろいろあります。ありますけれど、そんなことよりこの5拍子の途切れることないビート感、ドライヴ感をこそ、体感すべきでしょう。そして、2台のピアノそれぞれの短く上下するフレーズ、木管楽器のメロディックなフレーズ、弦楽器の息の長いフレーズ、それぞれどこに耳の視点(聴点?)を置くかで、音楽の聴こえ方が変わってくる、聴き方による音楽の変化をこそ知っていただければとおもいます。

 

ジョン・アダムズ
《室内交響曲》

1992年に作曲、翌年1月作曲者自身の指揮でオランダのデンハーグで初演された作品です。

オーストリア出身で、20世紀の音楽を大きく前進させ、「12音音楽」を創始した作曲家、アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)に《室内交響曲》作品9という20世紀初頭の名作があるのですが、その楽器編成をもとにしながら、金管楽器と打楽器、サンプラーを加えてより現代的なサウンドをつくりだしています。またシェーンベルクが単一楽章であるのに対し、アダムズは3つの楽章(古典的な急-緩-急)に分け、また各楽章にサブタイトル──〈雑種のアリア〉〈バスの歩行を伴うアリア〉〈ロードランナー〉──をつけてもいます。

アダムズ自身はこんなことを言っています。曰く、シェーンベルクのスコアを読んでいたとき、隣の部屋では当時7歳の息子が1950年代カートゥーン(アニメーション)をテレヴィでみていた。そのがちゃがちゃどたばたした音が整然としたスコアにオーヴァーラップしてきたのだ、と。コンサートで久石譲は「おもちゃ箱をひっくりかえしたような」と語っていましたが、打楽器のリズムやリズムと一体化した音色は、管楽器や原画機の複雑な音のうごきがありながら、しっかり聴き手をつなぎとめてゆきます。

ちなみにアダムズは2007年に《室内交響曲の息子(Son of Chamber Symphony)というのも作曲していて、ちょっと紛らわしいので、ご注意のほど。

(こぬま・じゅんいち)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

フューチャー・オーケストラ
Future Orchestra

2014年、久石譲のかけ声によりスタートしたコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」から誕生した室内オーケストラ。現代的なサウンドと高い技術を要するプログラミングにあわせ、日本を代表する精鋭メンバーで構成される。

”現代に書かれた優れた音楽を紹介する”という野心的なコンセプトのもと、久石譲の世界初演作のみならず、2014年の「Vol.1」ではヘンリク・グレツキやアルヴォ・ペルト、ニコ・ミューリーを、2015年の「Vol.2」ではスティーヴ・ライヒ、ジョン・アダムズ、ブライス・デスナーの作品を演奏し、好評を博した。”新しい音楽”を体験させてくれる先鋭的な室内オーケストラである。

(CDライナー・ノーツ より)

 

 

久石:
「エレクトリック・ヴァイオリンというのは実は6弦なんですね。ヴァイオリンはふつう4弦ですよね。ソ・レ・ラ・ミなんですけれども、一番低いソの音の五度下のド、そこからまた五度下のファ。ですからあと四度でほとんどチェロの帯域カバーですね。という6弦のエレクトリック・ヴァイオリン、どうしてもこの6弦使ったヴァイオリンと室内オーケストラの曲を書きたいと思って書いた曲です。」

西村:
「拝聴していて、前半の部分は第一期の後のいわゆるポスト・ミニマルわりに自由なストーリー性をもっていて、むしろミニマルで蓄えられたような非常に魅力的なエレメントがたくさんあるんですけれど、組み立てとしては自由なストーリー性があるような感じですよね。ところが、後半になると再び一種そのミニマルの縛りとしてのシングルラインが現れてきますよね。ここはだから、ポスト・ミニマルのさらにポストという感じが非常にするわけですよね。」

久石:
「いやあ、もうねえ、西村さんのようにすごく尊敬してる作曲家にこうやって一生懸命聴かれるととても緊張するんですけどね(笑)。」

Blog. NHK FM「現代の音楽 21世紀の様相 ▽作曲家・久石譲を迎えて」 番組内容 より抜粋)

 

 

 

「ミュージック・フューチャー Vol.2」のために書き下ろされた室内交響曲。6弦エレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーし、全3楽章で構成された作品(約30分)。

第1楽章の冒頭から衝撃が走る。まさにエレクトリック(電子的)な響き。ペダル式エフェクター/フットコントローラーを駆使して、音を歪ませるディストーションを利かせたり、それはまさにロックのよう。さらにはルーパーと言われる、今演奏したプレイをその場でループ演奏させる機能も使い、ループさせたフレーズに新しい旋律を重ねていくという技法も。これがヴァイオリンの音か、ヴァイオリンの演奏かと常識を覆される。エレクトリック・ヴァイオリンはひずませた音色のなかにもヴァイオリンならではの艶やかさがあるから不思議。尖った音色のなかにも心地よさをかねそなえた響き。ソロ奏者のすぐ後ろに置かれたギターアンプから響く硬質なヴァイオリンとアコーステックな管弦楽の音色とが、違和感なく絡みあう一体感を演出。

耳に残りやすい親しみやすい旋律やモティーフがある作品ではないが、そこは”調性とリズム”を重んじるだけあって、魅惑的な世界へと惹き込まれる。途中、管楽器奏者たちが、楽器からマウスピースだけを外し、口にくわえて吹くというおもしろい一面も。歌っているのか吹いているのか、声なのか音なのか、そんな演出も。

第3楽章ではリズム動機も際立っていて、例えば初期作品の「MKWAJU」収録楽曲たちを思わせるような、音が1つずつ増えていく減っていく、1音ずつズレていくというミニマル的要素もふんだんに盛り込まれ、クライマックスへと盛り上がっていく。

たとえば「DA・MA・SHI・絵」や「MKWAJU」という楽曲は、全体がリズムによって構成されている”動”なのだが、「室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra」で新たに魅せた久石譲のミニマル的手法は、”動”だけで突き進むのではなく、”静”パートもあり、緩急とメリハリがそこに生まれている。そのためより一層”動”パート(ミニマルなリズム動機)が浮き彫りになってくる、そんな新しい境地を開拓した作品ではないか。

ソロ奏者にとってはエレクトリック・ヴァイオリンを手(弦/弓)で足(フットコントローラー/エフェクター)で操るという難易度の高い演奏を求められる作品である。エレクトリック・ヴァイオリンという独奏楽器を主役にすえた実験的要素の強い斬新な野心作となっている。

 

 

 

 

 

 

久石譲 Presents MUSIC FUTURE 2015 CD

久石譲
Joe Hisaishi (1950-)
エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲 (2015)
Chamber symphony for Electric Violin and Chamber Orchestra
1. Mov.1
2. Mov.2
3. Mov.3

スティーヴ・ライヒ
Steve Reich (1936-)
4.エイト・ラインズ (1983) Eight Lines

ジョン・アダムズ
John Adams (1947-)
室内交響曲 (1992)
Chamber Symphony
5. 1 Mongrel Airs
6. 2 Aria with Walking Bass
7. 3 Roadrunner

久石譲(指揮)
フューチャー・オーケストラ
2015年9月24、25日 よみうり大手町ホールにてライヴ録音

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Future Orchestra
Live Recording at Yomiuri Otemachi Hall, Tokyo, 24, 25 Sep. 2015

Produced by Joe Hisaishi
Recording & Mixing Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineer:Takeshi Muramatsu
Mixed at EXTON Studio, Tokyo
Mastering Engineer:Shigeki Fujino (UNIVERSAL MUSIC)
Cover Design:Yusaku Fukuda

and more…

 

Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.3」 コンサート・レポート

Posted on 2016/10/18

10月13,14日に開催された「久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vol.3」コンサートです。2014年から始動した同コンサート・シリーズ(年1回)、今年で3回目を迎えます。コンサート趣旨・過去開催経緯など時系列での紹介は、下記コンサート・パンフレット解説にもありますのでご参照ください。

 

まずは、コンサート・プログラム(セットリスト)および当日会場にて配布されたコンサート・パンフレットより紐解いていきます。

 

久石譲プレゼンツ ミュジック・フューチャー vol.3
JOE HISAISHI PRESENTS  MUSIC FUTURE vol.03

[公演期間]久石譲 ミュージック・フューチャー Vol.3 チラシ
2016/10/13,14

[公演回数]
2公演
東京・よみうり大手町ホール

[編成]
指揮:久石譲
コンサートマスター/ソロ・ヴァイオリン:豊嶋泰嗣
管弦楽:Future Orchestra

[曲目]
アルノルト・シェーンベルク:室内交響曲第1番
Arnold Schönberg:Chamber Symphony No.1 in E major, Op.9 (1906)

久石譲:2 Pieces for Strange Ensemble *世界初演
Joe Hisaishi:2 Pieces for Strange Ensemble (2016)
1. Fast Moving Opposition
2. Fisherman’s Wives and Golden Ratio

マックス・リヒター:マーシー
Max Richter:Mercy (2010)

デヴィット・ラング:ライト・ムーヴィング
David Lang:Light Moving (2012)

スティーヴ・ライヒ:シティ・ライフ
Steve Reich:City Life (1995)
I. Check it out
II. Pile driver/alarms
III. It’s been a honeymoon – can’t take no mo’
IV. Heartbeats/boats & buoys
V. Heavy smoke

 

 

JOE HISAISHI
久石譲

-挨拶-
今年で3回めを迎えることができて、主催者として大変うれしい限りです。本来インディーズとして小さな集いでしか発表できない現代の楽曲をこの規模で行えることは、評論家の小沼純一さん曰く「世界でもあり得ないこと」なのだそうです。徐々に皆さんからの支持をいただいていることは、多くの優れた演奏家から出演してもいいという話をいただくことからも伺えます。新しい体験が出来るこの「MUSIC FUTURE」をできるかぎり継続していくつもりです。

-プログラムの楽曲-
シェーンベルクの「室内交響曲」、スティーヴ・ライヒの「シティ・ライフ」などの楽曲は、前島さんの解説をお読みください。

-自作について-
「2 Pieces for Strange Ensemble」はこのコンサートのために書いた楽曲です。当初は「室内交響曲第2番」を作曲する予定でしたが、この夏に「The East Land Symphony」という45分を超す大作を作曲(作る予定ではなかった)したばかりなので、さすがに交響曲をもう一つ作るのは難しく、それなら誰もやっていない変わった編成で変わった曲を作ろうというのが始まりでした。

ミニマル的な楽曲の命はそのベースになるモチーフ(フレーズ)です。それをずらしたり、削ったり増やしたりするわけですが、今回はできるだけそういう手法をとらずに成立させたい、そんな野望を抱いたのですが、結果としてまだ完全に脱却できたわけではありません、残念ながら。発展途上、まだまだしなくてはいけないことがたくさんあります。

とはいえ、ベースになるモチーフの重要性は変わりありません。例えばベートーヴェンの交響曲第5番「運命」でも第7番でも第9番の第4楽章でも誰でもすぐ覚えられるほどキャッチーなフレーズです。ただ深刻ぶるのではなく、高邁な理念と下世話さが同居することこそが観客との唯一の架け橋です。

ベートーヴェンを例に出すなどおこがましいのですが、今回の第1曲はヘ短調の分散和音でできており、第2曲は嬰ヘ短調(日本語にすると本当に難しそうになってしまう、誰か現代語で音楽用語を作り替えてほしい)でできるだけシンプルに作りました。

しかし、素材がシンプルな分、実は展開は難しい。どこまでいっても短三和音の響きは変わりなくさまざまな変化を試みるのですが、思ったほどの効果は出ない。ミニマルの本質はくり返すのではなく、同じように聞こえながら微妙に変化して行くことです。大量の不協和音をぶち込む方がよっぽど楽なのです。その壁は沈黙、つまり継続と断絶によって何とか解決したのですが、それと同じくらい重要だったのはサウンドです。クラシカルな均衡よりもロックのような、例えればニューヨークのSOHOでセッションしているようなワイルドなサウンド(今回のディレクターでもあるK氏の発言)を目指した、いや結果的になりました。

大きなコンセプトとしては第1曲は音と沈黙、躍動と静止などの対比第2曲目は全体が黄金比率1対1.618(5対8)の時間配分で構成されています。つまりだんだん増殖していき(簡単にいうと盛り上がる)黄金比率ポイントからゆっくり静かになっていきます。黄金比率はあくまで視覚の中での均整の取れたフォームなのですが、時間軸の上でその均整は保たれるかの実験です。

というわけで、いつも通り締切を過ぎ(それすらあったのかどうか?)リハーサルの3日前に完成?という際どいタイミングになり、演奏者の方々には多大な迷惑をかけました。額に険しいしわがよっていなければいいのですが。

1.「Fast Moving Opposition」は直訳すれば「素早く動いている対比」ということになり、2.「Fisherman’s Wives and Golden Ratio」は「漁師の妻たちと黄金比」という何とも意味不明な内容です。

これはサルバドール・ダリの絵画展からインスピレーションを得てつけたタイトルですが、すでに楽曲の制作は始まっていて、絵画自体から直接触発されたものではありません。ですが、制作の過程でダリの「素早く動いている静物」「カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽」が絶えず視界の片隅にあり、何かしらの影響があったことは間違いありません。ただし、前者の絵画が黄金比でできているのに対し、今回の楽曲作りでは後者にそのコンセプトは移しています。この辺りが作曲の微妙なところです。

日頃籠りがちの生活をしていますが、こうして絵画展などに出かけると思わぬ刺激に出会えます。寺山修司的にいうと「譜面(書)を捨てて街に出よう」ですかね(笑)

いろいろ書きましたが、理屈抜きに楽しんでいただけると幸いです。

久石譲

(「ミュージック・フューチャー vol.3」コンサート・パンフレット より)

 

 

MESSAGE
from Composers

私の作品である「シティ・ライフ」が久石譲の指揮によって演奏されることをとても嬉しく思います。80歳になった今年、世界中でこの作品を演奏するプログラムが組まれていますが、純粋な”ニューヨーク・ピース”として日本の観客のために演奏されるのはとても嬉しいことです。楽しい夜になりますように。

スティーヴ・ライヒ

 

私の音楽が日本で、しかも久石譲さんの手掛けるコンサートで演奏されることをとても嬉しく思います。私の子供たちは久石さんの映画音楽を聴いて育ってきました。残念ながらコンサートに伺えませんが、私の音楽が今回のプログラムに入ることはこの上ない名誉です。ありがとう。

デヴィット・ラング

 

「マーシー」は、ヒラリー・ハーンのアンコールとして書きました。作品の出発点は、シェイクスピアの『ベニスの商人』の有名な一節です。

”慈悲というものは強制されず、大地をうるおす恵みの雨のように降りそそぐ:
与えるもの、そして受けるものに神の祝福があるのだ:
それは偉大なものの中で最も偉大なもの:
冠に勝る王;その統治は畏怖と威厳の力となり王に対する恐れ;
しかし慈悲はこの支配を越えた存在である;
王のような心において授けられるもので、神自身に属するもの;
この世の力が神の力に似通うとすれば正義に慈悲が伴った時だ。”

マックス・リヒター

(「ミュージック・フューチャー vol.3」コンサート・パンフレット より)

 

 

「JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE vol.3」に寄せて

「MUSIC FUTURE」は、現代屈指のミニマル・ミュージックの作曲家であり、また指揮者でもある久石譲が、現代に書かれた優れた音楽を自らセレクトし、紹介していくコンサート・シリーズである。立ち上げに際し、久石が打ち出した方針は次の通り。まず”未来に伝えたい古典”というべき、評価の定まった重要作を紹介すること。併せて、久石より下の世代に属する注目の若手作曲家を必ず紹介すること。一人よがりの難解な語法で書かれた音楽ではなく、聴衆と高いコミュニケーション能力を持つ音楽を紹介すること。欧米で高い評価を受けながら、まだ日本で紹介されていない作品/作曲家を紹介すること。そして、作曲家・久石の作品を初演または演奏すること──。かくして、今回の「MUSIC FUTURE Vol.3」は5人の作曲家の作品を取り上げる。

新ウィーン楽派の創始者として知られるシェーンベルクは、一般的には”難解な現代音楽の作曲家”というイメージが強いかもしれない。だが、彼の《室内交響曲第1番》は、最小限(ミニマル)の手段による濃密な音楽表現を実現したという点で、久石を含む現代の作曲家たちにも大きな影響を与え続けている作品だ。今回は、「MUSIC FUTURE」の精神を100年以上も前に先取りした偉大な古典として演奏される。

今年10月3日に80歳を迎えたスティーヴ・ライヒは、アメリカン・ミニマル・ミュージックのパイオニアであり、また久石が敬愛する作曲家のひとり。今回は彼の代表作のひとつ《シティ・ライフ》が演奏される。この作品とシェーンベルクの作品が、編成や構成の点で類似しているのは、決して偶然ではない。日本では、プロの音楽家による《シティ・ライフ》の演奏は今回が初となる。

マックス・リヒターは、ライヒのミニマルや後述のラングのポスト・ミニマルに影響を受けて登場した、ポスト・クラシカルと呼ばれるジャンルの代表的作曲家。今年に入り、彼の代表作《ヴィヴァルディ「四季」のリコンポーズ》が日本でも初演され、がぜん注目度が高まっている。今回は、ヴァイオリンとピアノのための《マーシー》が演奏される。

ライヒより2世代ほど下に属するデヴィッド・ラングは、今年、彼が音楽を手掛けた映画『グランドフィナーレ』をご覧になった方も多いかもしれない。ラングがニューヨークで共同主催している現代音楽紹介のユニット「バング・オン・ア・キャン」は、いわば「MUSIC FUTURE」の先輩に当たる存在だ。今回は、ヴァイオリンとピアノのための《ライト・ムーヴィング》が演奏される。

そして久石が、本公演のために作曲した最新作を世界初演予定である。

開催3回目を迎えた「MUSIC FUTURE」を存分にお楽しみいただきたい。

前島秀国(「MUSIC FUTURE」アソシエート・プロデューサー)

(「ミュージック・フューチャー vol.3」コンサート・パンフレット より)

 

 

PROGRAM NOTES

アルノルト・シェーンベルク:室内交響曲第1番 (1906)
Arnold Schönberg:Chamber Symphony No.1 in E major, Op.9

編成:
フルート/ピッコロ、オーボエ、コーラングレ、クラリネット 2、バス・クラリネット、ファゴット、コントラ・ファゴット、ホルン 2、弦楽四重奏、コントラバス

後期ロマン派の音楽が19世紀末から20世紀初頭にかけて爛熟期を迎えた結果、調性システムは曖昧になって機能しなくなり、楽曲の演奏時間はひたすら長大化の一途を辿り、オーケストラの楽器編成は100人を超える四管編成まで登場した。ラ・フォンテーヌの寓話「ウシになろうとしたカエル」のように、腹を最大限(マキシマル)に膨らませた後期ロマン派は、いつ破裂してもおかしくない状態にした。そのような時代の趨勢に反旗を翻すように、シェーンベルクは本作を最小限(ミニマル)の楽曲構成と楽器編成で作曲した。

通常、交響曲は4楽章形式で構成されることが多いが、この作品にはたったひとつの楽章しか存在しない。その楽章の中に、スケルツォ楽章に相当するセクションとアダージョ楽章に相当するセクションを挿入することで、シェーンベルクは多楽章形式のような構成感を打ち出そうとした。作曲者自身の分析によれば、全体の構成は〈I.提示部〉-〈II.スケルツォ〉-〈III.展開部〉-〈IV.緩徐楽章〉-〈V.フィナーレ(再現部)〉となっている。

楽器編成は、やや変則的な一管編成。当時の管弦楽法の常識では、管楽器の数が弦楽器の数を上回ることはあり得ないとされていた。シェーンベルクはその常識を覆し、管楽器奏者10人に対して弦楽器奏者5人という、型破りの編成を採用した。そうすることで、室内楽のような透明感のある響きを保ちつつ、大編成のオーケストラに勝るとも劣らない濃密な表現を達成することに成功している。

1907年に作曲者自身がこの作品を指揮して初演した際、客席の中から凄まじい怒号の嵐が巻き起こり、乱闘寸前の騒ぎにまで発展した。その中で敢然と拍手を送り続け、シェーンベルクを積極的に擁護したのが、他ならぬ後期ロマン派の肥大化を推し進めた張本人のひとり、グスタフ・マーラーだったというエピソードが残っている。

 

マックス・リヒター:マーシー (2010)
Max Richter:Mercy

編成:
ヴァイオリン、ピアノ

曲名は「慈悲」の意。ヴァイオリン奏者ヒラリー・ハーンが、26人の作曲家に演奏時間5分以内のアンコール・ピースを委嘱するプロジェクトの1曲として作曲された。リヒター自身の解説は別ページを参照のこと。なお、リヒターが筆者に語ったところによれば、リヒターはかねてから久石の音楽を敬愛しており、今回の演奏を非常に喜んでいるという。

 

デヴィット・ラング:ライト・ムーヴィング (2012)
David Lang:Light Moving

編成:
ヴァイオリン、ピアノ

この作品も、ヒラリー・ハーンのアンコール・ピース・プロジェクトの1曲として作曲された。ラング自身の解説は次の通り。「アメリカ音楽の巨匠になるずっと以前、フィリップ・グラスとスティーヴ・ライヒは、然るべき評価も報酬も得られない新進作曲家だった。ニューヨークに住んでいた2人は、生活費捻出のためにチェルシー軽運送(Chelsea Light Moving)という引越会社を始めた。私は以前から、この社名が好きだった。チェルシー地区の明減する街灯のような、詩的なイメージが感じられたから。だが、この社名に込められたもうひとつの意味、『俺たちは作曲家だ!思い荷物運びはお断り!』も気に入っている。本作品の柔らかい推進力から、当時の2人の様子が感じられると思う」。

 

スティーヴ・ライヒ:シティ・ライフ (1995)
Steve Reich:City Life

編成:
フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ピアノ 2、サンプリング・キーボード 2、パーカッション 3または4、弦楽四重奏、コントラバス

第1楽章 「チェックしろ Check it out」
第2楽章 「杭打機/警笛 Pile driver/alarms」
第3楽章 「ハネムーンは終わりだ - もう我慢ならねえ It’s been a honeymoon – can’t take no mo’」
第4楽章 「心拍音/船舶とブイ Heartbeats/boats & buoys」
第5楽章 「濃い煙 Heavy smoke」

ガーシュウィンの《パリのアメリカ人》(1928)で使われたタクシーのクラクションをはじめ、楽器音以外の生活音(ノイズ)を、楽曲の中に使用した例は多い。ライヒの代表作のひとつとして知られる《シティ・ライフ》は、そうした生活音や人間の話し声を一種の楽器として扱い、都市の生活(=シティ・ライフ)を生き生きと表現した作品である。

ライヒが筆者に語ったところによれば、彼がミルズ・カレッジでルチアーノ・ベリオの授業を受けた時、ベリオは人間の声(スピーチ・サウンド)を用いた電子音楽の参考例として、いくつかのレコードをかけた。その中で、ライヒはベリオ作曲《テーマ(ジェームズ・ジョイスへのオマージュ)》(1958)と、シュトックハウゼン作曲《少年の歌》(1955-56)に大きな影響を受けたという。その後、彼自身もスピーチを音楽の構成要素として扱うような作曲を実験し始めた。《イッツ・ゴナ・レイン》(1965)や《カム・アウト》(1966)のような初期テープ作品、あるいは器楽がスピーチのイントネーションをなぞる形で作曲された弦楽四重奏曲《ディファレント・トレインズ》(1988)やオペラ《ザ・ケイヴ》(1993)は、いずれもスピーチに対するライヒの強い関心から生まれた作品である。ベリオを強く意識しながら作曲したという《シティ・ライフ》は、それまで彼が試みてきたスピーチと器楽の融合をさらに発展させ、サンプリング・キーボードを使用することによって、杭打機や汽笛のようなノイズ(のサンプル音)と器楽のアンサンブルを可能にしている。

全5楽章は続けて演奏されるが、奇数楽章のみスピーチのサンプル音を使用。第5楽章のサンプリング・スピーチは、1993年ワールドトレードセンター地下駐車場爆破事件発生時の警察・消防無線から採られた。

テキスト:前島秀国

(「ミュージック・フューチャー vol.3」コンサート・パンフレット より)

*コンサート・パンフレットに掲載された《シティ・ライフ》サンプリング・スピーチは省略

 

 

以上、ここまでがコンサート・パンフレットからの内容になります。

 

 

ここからは、感想をふくめた個人的コンサート・レポートです。

といいながら、上の公式パンフレットで各楽曲について詳細ありますので、補足と言えるものもないです。「Mercy」について、豊嶋泰嗣さんのソロ・ヴァイオリンは、ヒラリー・ハーンの演奏よりもとても線を細くしていたのが印象的でした。弓と弦の摩擦を浮かせる、やもすると音程も狂いそうな、長いフレーズも途切れてしまいそうな、そのくらいギリギリのところで音を生みだしていたのが強く印象に残っています。相当な集中力と筋肉運動を必要とするだろうと推測します。糸の張りつめた緊張感で、500席収容小ホールという空間だからこそできる、最上質なパフォーマンスだったと思います。「City Life」について、CDでしか聴いたことがないアナログとサンプラーの融合は、実演で聴いてこそ!と強く思った名演でした。

今回、最前列ほぼ中央で聴くことができた幸運にも恵まれ、久石譲の指揮はもちろん、指揮者の息づかい、奏者の息づかいや音の生まれる瞬間の音まで聴くことができたことは、贅沢極まりない体験でした。

 

久石譲作品について。

編成は、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ヴィブラフォン、パーカッション、ドラムス、ピアノ 2、サンプリング・キーボード、弦楽四重奏、コントラバス、だったと思います。こちらもスティーヴ・ライヒ作品にもあったような、アコースティック楽器(アナログ)とサンプラー(デジタル)の見事な融合で、至福の音空間でした。デジタル音は低音ベースや低音パーカッションで効果的に使われていたように思います。一見水と油のような特徴をもったそれらが、よくうまく溶け合った響きになるものだと感嘆しきりでした。CDならば、ミックス編集などでバランスは取りやすいかもですが、コンサート・パフォーマンスで聴けたことはとても貴重でした。

例えば、ピアノを2台配置することで、ミニマル・フレーズをずらして演奏している箇所があります。ディレイ(エコー・こだま)効果のような響きになるのですが、CDだと、コンピューターで編集すれば、ピアノ1の音色をそのまま複製して加工すればいい、などと思うかもしれません(もちろん割り振られたフレーズが完全一致ではないとは思いますが)。そういうことを、アコースティック・ピアノ2台を置いて、互いに均一の音価と音量で丁寧にパフォーマンスしていたところ、それを直に見聴きできたことも観客としてはうれしい限りです。

1.「Fast Moving Opposition」は、前半12拍子と8拍子の交互で進みます。これも指揮者を見る機会じゃないとおそらく聴いただけではわかりません。この変拍子によって久石譲解説にもあった今回の挑戦である「音と沈黙、躍動と静止、継続と断絶」という構成をつくりだしているように思います。中盤からドラムス・パーカッションが加わり、4拍子独特のグルーヴ感をもって展開していきます。

2.「Fisherman’s Wives and Golden Ratio」は、こちらも指揮者を見ても拍子がわからない変拍子でした。「黄金比率の時間配分で構成」についてはまったくわかりませんでした、難しい。管楽器奏者が口にマウスピースのみを加えて演奏するパートもありました。声なのか音なのか、とても不思議な世界観の演出になります。

言うなれば、贅沢な公開コレーディングに立ち会っている感覚すら覚えたほどです。アコースティック楽器とデジタル楽器、スタジオ・レコーディングならば、1パートずつ録音していくようなそれを、一発勝負で響かせて最高のテイクを奏でるプロたち。スコアを視覚的に見て取るように「あ、今のこの音はこの楽器か」とわかるところも含めて、贅沢な公開レコーディングに遭遇したような万感の想いです。

おそらくとても難解、いやアグレッシブな挑戦的なこと高度なことをつめこんでいる作品だろうと思います。一聴だけでは、第一印象と目に見えた範囲のことでしか語れないので、あまり憶測やふわっとした印象での見解は控えるようにします。1年後?CD作品化された暁には、聴けば聴くほどやみつきになりそうな、味わいがにじみ出てくるような作品という印象です。

 

素早く動いている静物
《素早く動いている静物》 (1956年頃) サルバドール・ダリ

カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽
《カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽》 (1928年頃) サルバドール・ダリ

 

 

今回の久石譲作品およびコンサートをひと言で表現するなら、「カッコイイな!」に尽きます。今の久石譲の立ち位置で、こんな作品を観客にぶつけることがとても前のめりで一切の守りを感じない。ご本人のコメントにもある「まだまだ発展途上」、これをはっきり言い切れる、その過程である今を披露できることは、やっぱり「カッコイイな!」のひと言です。もちろん聴き手として、本作品を発展途上だなと思うはずもなく、未知の体験に立ち会えていることの喜びを感じます。

「ミュージック・フューチャー」コンサート・シリーズは、いわば”純粋に音楽を聴く”コンサートです。今まで聴いたことのない(またはCDでしか)、新しい音楽体験の場だと思います。誤解を恐れずにいえば、そこに久石譲というネームバリューはいらないのかもしれません。”純粋に音楽を聴く”場所だからです。

ファンである久石譲が選んだ作品が並ぶことで、久石譲の音楽的思考の今を垣間見ることができます。指揮者としての作品構成力、作品表現力を目と耳と肌で体感することができます。そして最後に、久石譲の今がつまった自作をも聴くことができる、そんなコンサートのように思います。

久石譲ファンとしては、ふつう上に書いた逆からの流れを期待すると思うのですが、それとは一線を画する演奏会、それが「久石譲 presents MUSIC FUTURE」です。

いや、久石譲のネームバリューは大きい。このプログラムで観客を集めることができて、極上の音空間を演出し、観客を魅了することができるのは、久石譲だからこそ。楽曲プログラミングから実演までハイクオリティなその流れのすべてにおいて。日本音楽界の巨匠という権威と、相反する新進気鋭のような挑戦の姿勢、その拮抗したバランスで、vol.4以降も大きく期待したいコンサートです。

 

久石譲 ミュージック・フューチャー Vol.3 チラシ

 

Info. 2016/10/13 久石譲新譜「MUSIC FUTURE 2015」コンサート会場先行発売!!

新譜「MUSIC FUTURE 2015」の会場先行発売のお知らせ&ジャケットお披露目

【新譜「MUSIC FUTURE 2015」の先行販売のお知らせ】
21日の新譜発売までに待ちきれない、という皆さまに朗報です。

10月13日、14日とよみうり大手町ホール(東京)にて開催される
「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.3」の会場にて
新譜「MUSIC FUTURE 2015」の先行発売が決定致しました。

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Info. 2016-2017 羽生結弦選手フリーFS楽曲 久石譲「Hope & Legacy」 について 【10/2 Update!!】

Posted on 2016/09/14

フィギュアスケートの羽生結弦選手が、2016-2017年のプログラムを公開。今季の使用曲は、ショートプログラム(SP)がプリンスの「Let’s Go Crazy」、フリー(FS)が久石譲の「Hope & Legacy」と発表。

 

久石譲より:「Hope & Legacy」 について

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