Info. 2023/04/19-21 「Joe Hisaishi in Concert」久石譲コンサート(シンガポール)開催決定!! 【4/5 update!!】

Posted on 2022/12/16

2023年4月20,21日、久石譲コンサートがシンガポールで開催されます。2020年に初登場して以来、3年ぶり2度目になります。共演オーケストラはふたたびシンガポール交響楽団です。 “Info. 2023/04/19-21 「Joe Hisaishi in Concert」久石譲コンサート(シンガポール)開催決定!! 【4/5 update!!】” の続きを読む

Info. 2023/04/04 ローレンス・オリヴィエ賞で6冠 舞台『となりのトトロ』は「演劇として完成された」歴史的な作品(Web SPICEより)

Posted on 2023/04/04

ローレンス・オリヴィエ賞で6冠 舞台『となりのトトロ』は「演劇として完成された」歴史的な作品

スタジオ・ジブリの名作アニメ映画を舞台化した、舞台『となりのトトロ』。2022年10月8日から2023年1月21日まで、イギリス・ロンドンのバービカン劇場で上演された本作は、2月12日に発表された演劇賞「第23回WhatsOnStage Awards」で最優秀演出賞など最多の5冠を獲得するなど、今なお大きな話題を呼んでいる。さらに、英国演劇界で最も権威のある「ローレンス・オリヴィエ賞」には、演出賞など最多9部門にノミネートされ、最多の6冠という快挙を成し遂げた。日本での上演については何も発表されていない状況であるが、世界的に高い評価を得ている作品ということもあり、関心を寄せている日本の演劇ファンは多いのではないだろうか。そこで、今回は、2022年末にロンドンで本作を観劇した、イープラスの牛田直人氏に観劇を通して感じた本作の魅力を聞いた。

 

 

本作は、映画で音楽を手がけた作曲家の久石譲が舞台化を提案し、宮﨑駿監督がこれを快諾したことで始まったプロジェクト。久石がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、イギリスの名門演劇カンパニー、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)と日本テレビが共同製作した。

まず、牛田氏は「正直にいうと“アニメ作品の舞台化”を想像して観に行ったので、全く違う仕上がりの作品に驚き、素直に感激したというのが最初の感想です」と話す。

「アニメや漫画などを舞台化した作品というのは、舞台を観ていてもその原作の“絵”が浮かぶものだと僕は思っています。ですが、『トトロ』はそれが全くなかった。もちろん、映画の象徴的なシーンは登場しますし、そこへのリスペクトは感じるのですが、一つの演劇として全編楽しめたというのが素晴らしいと思いました」。

そう感じたのは、長い歴史を持ち、常にクオリティーの高い作品を作り続けてきたRSCが製作したということも大きかったようだ。

「僕自身は、RSCについてそれほど予習をしていたわけではないのですが、それでも作品から演劇に対するリスペクトを強く感じました。『トトロ』には表現するのが難しいようなシーンも出てきますが、それも演劇として成立させている。“舞台化”“実写化”と簡単に言ってはいけないなと思いました。これまでもいわゆる2.5次元作品やアニメ原作の舞台は観てきましたが、それは初めての感覚でした」。

2022年に日本で上演されたジョン・ケアード演出の舞台『千と千尋の神隠し』も演劇的手法を多用し、高い評価を得たが、それともまた違うと牛田氏はいう。

「もちろん『千と千尋の神隠し』も素晴らしい作品でしたが、僕は『ああ、あのシーンはこう表現するんだ』と、舞台表現と映画のそのカットをすり合わせながら観ていた感覚がありました。ですが、それが『トトロ』にはなかった。しかも、僕は英語のセリフを全ては理解できていなかったと思いますが、それでも細かな心情表現まで芝居で理解できた。それは、演劇的な演出と演者さんの力なのではないかと思いました。それから、これは『千と千尋の神隠し』も同じだとは思いますが、日本に対するリスペクト、原作に対するリスペクトも非常に感じました」。

演出という点で気になるのは、やはりトトロやネコバスの表現だ。

「ネタバレになるので詳しくはお話ししませんが、小トトロも中トトロも大トトロも見事に再現されています。特に、メイが草むらを抜けた先で大トトロに遭遇するシーンやバス停でトトロに傘を渡すシーンなどは、そのまま舞台で表現されています。すごいの一言ですし、ぜひ観ていただきたいシーンです」。

そうしたシーンを実現することができたのは、「操演(そうえん)の技術の高さがあったから」。作品世界を作り上げるため、本作ではパペットを多用しているが、それが大きな感動を呼んでいるという。

「現代の技術であれば、工夫をすれば映像や照明などで表現できることも、演劇で表現することにこだわり、人の力を使っています。ステージ上には、いわゆる“黒子”が登場し、彼らがさまざまな操作を行なっていますが、この方たちが、とにかくすごい。カーテンコールで、彼らに対する観客の反応が一番大きかったのですが、それほど彼らの役割が大きかった」

 

 

ほかにも、「天井の高いバービカン劇場のステージを利用した壮大な美術」や「生演奏と歌」など見どころは数多いと牛田氏は話す。

「久石さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務めているだけに、音楽も非常に効果的に使われていたと思います。転換シーンには歌唱もあり、映画の楽曲を聞くことができました」。

さらに、日本の昭和30年代の文化を色濃く描いた原作をイギリスで舞台化するにあたって、「心情面でのすり合わせがあり、それがまた見事だった」とも明かす。

「日本の文化は、そういうものとしてそのまま描かれていましたが、心情面ではより現地の人たちが感情移入しやすいよう表現されている部分もありました。映画と舞台を見比べて答え合わせをすれば違いは多く見つかると思うのですが、それは違う。やはりこの作品単体で演劇作品として完成されているからだと思います。舞台を観ていても映像が思い浮かばないので、そのまま目の前で起こっているひとつの作品として観ることができるのです」。

日本で舞台スチールが公開された際には、メイやサツキを大人の役者が演じたことも話題となったが、役者陣の演技について尋ねると「メイとサツキそのものでした」という。

「彼女たちはオーディションで選ばれたと聞いていますが、当然、頑張って子どもを演じているという印象は全くありませんでした。そこに居たのはトトロとメイとサツキでしかない。純粋にひとつの物語として観ることができましたし、素晴らしい演技でした。これはもう見ていただくしかない。」。

昨年5月17日にが発売開始されると、初日だけで約3万枚を販売し、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『ハムレット』(2015年)の数字を抜いてバービカン劇場の初日販売記録を更新。連日万雷の拍手とスタンディングオベーションで迎えられたというが、実際に現地で感じた観客たちの様子はどうだったのだろうか。

「僕が観劇したのは土曜日のソワレでしたが、30代から40代が中心で、ファミリー層は多くありませんでした。むしろ、目の肥えた演劇ファンが中心だったと思います。当然スタンディングオベーションでしたが、演劇を見慣れている方々もこの作品を評価しているのだとその熱狂を見て感じました。実は、ロンドンでは原作映画を知っていて観劇をした人というのは20パーセントほどしかいなかったと聞いています。『となりのトトロ』自体は、それほど多くの人が知っている作品ではないんです。日本人の僕たちからしたら『あのジブリのトトロが舞台になる』という思いが先に立ちますが、現地の方にしてみれば、『原作はよく分からないけど、とりあえず舞台を観てみよう』という感覚のようで、純粋に舞台・演劇として評価された結果が今の快挙に繋がっていると思います」。

日本での上演は現在決まっていないが、牛田氏は「RSCのカンパニーの公演をぜひ1度現地で観ていただきたい」とオススメする。

「今年11月からのバービカン劇場での再演も発表されました。あの感動は生で観ていただかなければきっと伝わらないと思います。僕はたまたま機会をいただいて、初演をロンドンで観ることができましたが、これはきっと生涯、自慢できることになる思っています。日本のコンテンツが海外で初演されて、こうした記録を作るというのは、それくらい歴史的なんです!」

 

 

詳細情報

My Neighbour Totoro ローレンス・オリヴィエ賞2023 受賞一覧

◆Best Entertainment or Comedy(最優秀作品賞エンタテインメント部門)- My Neighbour Totoro
◆Best Director(最優秀演出賞)- Phelim McDermott(フェリム・マクダーモット)
◆Best Set Designr(最優秀舞台美術賞)- Tom Pye(トム・パイ)
◆Best Costume Design(最優秀衣装デザイン賞)- Kimie Nakano(中野希美江)
◆Best Lighting Design(最優秀照明デザイン賞)- Jessica Hung Han Yun(ジェシカ・ハン・ハンユン)
◆Best Sound Design(最優秀音響デザイン賞)- Tony Gayle(トニー・ゲイル)

 

My Neighbour Totoro 再演
会場:ロンドン・バービカン劇場日程:2023年11月21日(火)~2024年3月23日(土) 

 

舞台「となりのトトロ」について

本作は映画で音楽を手掛けた作曲家の久石譲が舞台化を提案し、宮崎駿監督がこれを快諾したことで始まったプロジェクト。久石譲のもと、イギリスの名門演劇カンパニー、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)と日本テレビが共同製作し、舞台化しました。昨年10月から今年1月までロンドンのバービカン劇場で上演した舞台は、久石譲の音楽、原作を尊重した世界観、そしてRSCならではの作劇力で観客の心をつかみ、13万3,000枚のは完売、連日万雷の拍手とスタンディングオベーションが続きました。

初演 メインスタッフと上演データ
エグゼクティブ・プロデューサー:久石譲
原作:宮崎駿「となりのトトロ」
音楽:久石譲
脚本:トム・モートン=スミス
演出:フェリム・マクダーモット
製作:ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー/日本テレビ
美術:トム・パイ、衣装:中野希美江、照明:ジェシカ・ハン・ハンユン、ムーブメント:山中結莉、舞台にはバジル・ツイストによって創られたパペットが登場。さらに誰もが知る久石譲の音楽をウィル・スチュアートが新たにオーケストレーションし、ライブ演奏の音響デザインをトニー・ゲイルが担当。
会場:ロンドン・バービカン劇場
日程:2022年10月8日(土)~2023年1月21日(日) ※全118回で133,000人を動員(完売)

となりのトトロ/My Neighbour Totoro
1988年公開、宮崎駿監督のアニメーション映画。音楽は久石譲。病気の治療で病院にいる母親の近くに住むため、郊外へ引っ越してきたサツキ、メイの姉妹が森で出会った不思議ないきものトトロとの交流を描く物語。

ロイヤルシェイクスピアカンパニー/ Royal Shakespeare Company (RSC)
シェイクスピア生誕の地、英のストラットフォード・アポン・エイボンを拠点とする英国の代表的な演劇カンパニー。
シェイクスピア作品のほか、現存の劇作家による新作の上演や、演劇プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュの共同製作したヒット作品「レ・ミゼラブル」や「マチルダ・ザ・ミュージカル」など、世界中で愛される良質な作品を産み続けている。

フェリム・マクダーモット/Phelim McDermott(演出)
1963年、イギリス・マンチェスター生まれ。「真夏の夜の夢」をはじめとしたシェイクスピア作品のほか、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場でのオペラ作品「アクナーテン」(音楽=フィリップ・グラス) 、ブロードウェイミュージカル「アダムス・ファミリー」などを手がけている。「となりのトトロ」で第23回WhatsOnStage Awards最優秀演出賞受賞

 

出典:SPICE – エンタメ特化型情報メディア スパイス|ローレンス・オリヴィエ賞で6冠 舞台『となりのトトロ』は「演劇として完成された」歴史的な作品 
https://spice.eplus.jp/articles/316840

 

 

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となりのトトロが今秋ロンドンに戻ってくる
完売した作品をもう一度見れるチャンス!

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Overtone.第91回 「ANGEL DOLL」をめぐる不思議 ~北野武監督作品~

Posted on 2023/03/20

ふらいすとーんです。

北野武監督作品について、その音楽についてふれるのは初めてかもしれません。

 

◇ワールドベスト収録曲「ANGEL DOLL」
◇映画『キッズ・リターン』
◇映画『HANA-BI』
◇映画『菊次郎の夏』
◇(1)~(6)をめぐって
◇サウンドトラック(国内盤/海外盤)
◇久石譲:【mládí】for Piano and Strings

 

 

ワールドベスト収録曲「ANGEL DOLL」

世界同日リリースのベストアルバム第二弾『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』(2021)の1曲目を飾るのが「ANGEL DOLL」です。なんでこの曲??と思ったファンはけっこういるとかいないとか。僕も不思議でした。もっとたくさんいろんな曲あるのに…あえてのこの曲…あえての1曲目…。映画『キッズ・リターン』メインテーマのアレンジ・バージョンです。これを?と不思議に思ってしまうところです。……キッズ・リターンのサントラから入れるにしたってもっとほかに……はいストップ。

リリースから少し時間が経ったあたり、もしかしてと思うようになりました。北野武監督作品って”天使をモチーフにしたもの”がいっぱい出てくる、「ANGEL DOLL」は北野作品のコンセプトや象徴的なものかもしれないと。ワールドベストだし、北野映画の欧米人気もあるし、選曲したのはデッカはじめ海外スタッフが中心という情報もあった気もする。

 

 

そうです。「ANGEL DOLL」は『キッズ・リターン』のアレンジ違いを収録したかったわけじゃない。北野作品のなかで「天使」をテーマに据えた『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』の3作品、その象徴的なものとして収録した。意図したコンセプトがあることを明示するように1曲目に置いた。

先にこれも言っちゃおう。「Kids Return *初収録ver.」も収録されているのに同曲アレンジ違いの「ANGEL DOLL」を同じディスクに入れるほうが不自然な気がしてきます。ファンゆえにごっちゃになってしまうところ、ワールドベスト第1弾・第2弾をまたいで同曲異編(バージョン違いのこと)はあります。例えば、「Summer」は第1弾『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』にはオーケストラ・バージョンが収録されていて、第2弾『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』にはアンサンブル・バージョンが収録されています。ほかの曲を見比べてもそうです。そこへきて、どうしてキッズ・リターンのメロディが同じディスクに2曲入ることになったのか。不思議。

 

さて、答えはどうでしょうか?

いっしょに見ていきましょう。

 

 

 

 

映画『キッズ・リターン』

この作品には「天使の絵」や「天使の人形」が登場します。「天使の絵」は北野武監督が描いたものでオープニングロゴのように、「天使の人形」は主人公らとは異なるサイドストーリーとして並走しています。天使というモチーフに何を込めているのか、カットごとに見ていくと10~12シーンくらい映っています。

 

[オープニング]
あの有名な「Kマーク」オープニングロゴが誕生する以前の映画です。映画『キッズ・リターン』ではこのカットがオープニングロゴのように使われています。この時流れているのは「Track1. MEET AGAIN」で、メインテーマのアレンジ・バージョンです。

 

[シーン 喫茶店]
初めて天使の人形が登場するシーンです。主人公の二人とは異なる、サイドストーリーが始まっていきます。この時流れているのは、今回のお題にもなっている「Track3. ANGEL DOLL」です。

 

[シーン タクシー]
主人公たちとは別の、青春時代の恋愛・就職・結婚その紆余曲折の果て。並走する物語のシーンにその登場人物らと一緒に天使の人形がよく登場しています。

 

 

映画『HANA-BI』

この作品には「天使の絵」が登場します。北野武監督が描いたもので、オープニングとエンドロールの2回です。本編には病院に飾られている別の絵が2回映っています。「天使の人形」はありません。またオープニングロゴ「Kマーク」が初めて使用された作品です。(このことは『菊次郎の夏』で詳しくやります)

 

[オープニング]
オープニングロゴのあとにキャストロールです。この時流れているのは「Track5. Ever Love」で、「Angel」のアレンジ・バージョンです。

 

[シーン 病院]
病院の廊下に飾られている絵です。

 

[エンドロール]
この時流れているのはメインテーマ「Track11. HANA-BI (reprise)」です。

 

[エンドロール]
最後は少しずつズームアップして終わっていきます。オープニングとも違う天使のイメージです。翼ももがれ、手の位置を追うとまた深く考えさせられます。

 

 

映画『菊次郎の夏』

この作品には「天使の絵」や「天使の鈴」が登場します。「天使の絵」は北野武監督が描いたもの、「天使の人形」は主人公らと物語を共にするキーファクターになっています。加えて主人公の男の子がからっているリュックにも羽がついています。それだけにカットごとに見ていくと天使にまつわるもの約25シーンも映っています。

 

[オープニングロゴ]
映画『HANA-BI』のときに誕生しました。実はそのときまだ音はついていません。映画『菊次郎の夏』からオープニングロゴ+サウンドロゴ(久石譲作曲)の組み合わせが生まれ、以降も北野映画の象徴として使われています。ポイントは、サウンドロゴを北野映画の象徴とみたときに、映画『キッズ・リターン』『HANA-BI』のときにはまだない、ということです。

 

[オープニング]
オープニングロゴのあとにキャストロールです。この時流れているのはメインテーマ「Track1. Summer」です。ポイント1は、映画『HANA-BI』と同じ絵が使われるということです。線のコンセプトを感じます。ポイント2は、映画『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』3作品とも「天使の絵」が映るオープニングやエンドロールに、メインテーマ曲が流れているということです。『キッズ・リターン』はアレンジ曲「MEET AGAIN」。あれ?『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』にはこの3作品のメインテーマが全て収録されている。(あとに詳しくやります)

 

[オープニング/エンディング]
オープニングシーンに、映画エンディングシーンから先にもってくるのは、北野武監督作品にも見られます。過去『キッズ・リターン』もそうでした。主人公の男の子が背負っているリュックにも翼があります。そして「天使の鈴」もしっかりぶらさがっています。エンディングシーンからですがアングルの違うカットを映画冒頭にもってきています。

 

[シーン バス停]
バスを待っているシーンで、行きかう車を止めようとコミカルにやりとりするシーンです。この時流れているのは「Track6. The Rain」です。そういえばこの曲も『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』に収録されていますね。

余談です。過去インタビュー・エピソードから推察すると、当初のメインテーマはこの曲だった可能性あります。久石譲はそのつもりで想定していたけれど監督は「Summer」を選んだ。サブテーマのつもりだった「Summer」がメインになったけれど、結果この曲は重要シーンにサブテーマとして使われることになった。それが「The Rain」であり「Mother」であり。心を通わせる、雪解け、大切なシーンに。

 

[シーン 天使の鈴]
物語の中盤から「天使の鈴」が登場してきます。

 

[シーン 浜辺]
砂で作った天使です。この時流れているのは「Track8. Angel Bell」で、メインテーマ「Summer」の中間部にあたるパートそのアレンジ・バージョンです。

 

[エンドロール]
オープニングと同じ天使をモチーフにした絵です。この時流れているのは、もちろんメインテーマから「Track12. Summer Road」です。

 

 

映画『BROTHER』

天使にまつわるものは登場しません。

久石譲が音楽を担当した作品『あの夏、いちばん静かな海。』『ソナチネ』にも登場しません。

 

映画『Dolls』

[シーン 天使の人形]
この作品には2,3シーンだけ「天使の人形」が登場します。映画『キッズ・リターン』とはまた別物です。物語と絡み合うことはなく、過去作品へのオマージュや残像のような印象です。共通する何かは込められていると思います。

 

 

 

(1)北野武×久石譲

『あの夏、いちばん静かな海。』『ソナチネ』『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』『BROTHER』『Dolls』の7作品です。

(2)天使にまつわるもの

『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』の3作品で象徴的に登場します。「天使の人形」「天使の鈴」そして「天使の絵」です。

(3)天使の絵

『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』で唯一共通しているのは「天使の絵」です。オープニングやエンドロールに映っています。北野武監督の描いた「天使の絵」こそ3作品をつなぐコンセプトだとしたら。

(4)オープニングロゴ

北野武監督作品を象徴するオープニングロゴは映画『HANA-BI』から。

(5)オープニングロゴ+サウンドロゴ

北野武監督作品を象徴するオープニングロゴ+サウンドロゴの組み合わせは映画『菊次郎の夏』から。久石譲とのコラボレーションを離れて以降も使用されていました。

(6)北野作品ベスト盤

『 joe hisaishi meets kitano films』は久石譲選曲によるベストアルバムです。『あの夏、いちばん静かな海。』『ソナチネ』『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』『BROTHER』までの6作品から等しくセレクトされています。『Dolls』はこのあとの映画になります。

 

(1)~(6)をめぐって

北野映画を象徴する楽曲だったら「INTRO:OFFICE KITANO SOUND LOGO」が適しているとも思います。でも、それじゃダメだとわかりました。作品群を時系列に並べるとサウンドロゴは『菊次郎の夏』からになっています。15秒の曲です。ワールドベストにもってくるのは、、ってなるかもしれません。またこの曲を1曲目にしてしまうと北野フィルムベストのようになってしまいます。反転して、サウンドロゴは『 joe hisaishi meets kitano films』にしか収録されていない、アルバムの価値を大きく高めている1曲です。ちなみにこのとき「ANGEL DOLL」は収録されていません。

(3)北野武監督の描いた「天使の絵」こそ『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』をつなぐコンセプト、と書きました。『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』には、この3作品のメインテーマ曲がきちんと収録されています。そしてまた「天使の絵」が映っているシーンに流れています。『キッズ・リターン』オープニング「MEET AGAIN」後半はほぼメインテーマと同じアレンジ、『HANA-BI』エンドロール、『菊次郎の夏』オーニング/エンドロール。

さらにズーム見ていくと、『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』に収録されているDsic1「ANGEL DOLL」「Summer」「Kids Return *初収録ver.」、Disc2「The Rain」「HANA-BI *初収録ver.」は、いずれも映画のなかで「天使にまつわるもの」が登場しているときに流れる曲たちです。もっと言います。このワールドベスト第2弾には、『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』の3作品からしか収録されていません。

ワールドベスト第1弾『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』には、『あの夏、いちばん静かな海。』「Silent Love」『BROTHER』「Ballade」が収録されています。おお!と思いきや、『キッズ・リターン』『HANA-BI』からもメインテーマのアンサンブル・バージョンやピアノ・ソロが収録されています。きれいに整合性はとれないものですね。

 

 

曲名から眺めてみます。

『キッズ・リターン』には「ANGEL DOLL」、『HANA-BI』には「Angel」、『菊次郎の夏』には「Angel Bell」といった曲があります。「ANGEL DOLL」はメインテーマのアレンジです。「Angel」はサブテーマです。「Angel Bell」はメインテーマの中間パートからです。さて、もしANGELの名をもつ3曲から北野作品=天使のコンセプトで選ぼうとしたらどれにしますか? 映画に漂うテーマ、儚さや刹那的なもの、この3曲からコンセプチャルにどれか1曲選ぶとしたら?(….「Angel」とても好きな曲です。でもメインテーマじゃない、映画でも主人公ではない主要人物のシーンでよく流れていた記憶あります)

 

 

 

サウンドトラック(国内盤/海外盤)

サウンドトラックのジャケットやイラストも見てみましょう。国内盤と海外盤での違いから浮かびあがってくることもあるかもしれません。

 

『Kids Return』(国内盤)

久石譲 『Kids Return』

ジャケットにもちゃんと天使はいました。

 

トレイ面

 

 

映画『HANA-BI』(国内盤)

HANA-BI サウンドトラック

ジャケット

 

トレイ面

 

 

映画『HANA-BI』(海外盤)

ヨーロッパ盤のジャケットです。映画エンドロールで描かれていた天使や、本編にもたびたび登場する顔を花にみたてたモチーフにつながるようです。

 

 

映画『菊次郎の夏』(国内盤)

ジャケット

 

トレイ面

 

 

『菊次郎の夏』(海外盤)

アメリカ盤のジャケットです。浜辺のシーンと天使の鈴が描かれています。

 

トレイ面も天使の鈴になっています。

 

 

『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』の3作品、サウンドトラック日本国内盤のジャケットかトレイどちらか必ず天使は描かれていました。そして海外盤もまた同じもの、あるいはヴィジュアルを差し替えて天使は描かれていました。北野映画の欧米人気はスタジオジブリ作品人気を上回ると評されることもかつてあります。サウンドトラックを手したファンが、映画と同じようにそして余韻のように、天使のモチーフがいつも手元にあってずっと印象に残っていても不思議じゃないですよね。

 

 

 

 

久石譲:【mládí】for Piano and Strings

2017年に演奏会用作品として誕生しました。北野作品から「Summer」「HANA-BI」「Kids Return」のメインテーマを久石譲ピアノ&ストリングス版でまとめたコーナーです。もちろん全曲フルバージョンで1曲終わるたびに大きな拍手の渦です。”チェコ語で青春という意味でヤナーチェクにも同名のタイトル曲があります。”と久石譲解説にあります。くしくも世界初演はチェコ・プラハでの久石譲コンサートでもありました。

北野武監督作品の象徴として天使が重要だから、久石譲もこの3楽曲を選んだんだ、、なんて乱暴なことを言うつもりはありません。ここは映画視点と監督目線vs音楽視点と久石譲目線、しっかり切り離します。

「青春」、、ずっと考えていました。個人的に思う候補は4つあります。1.青春をテーマにした映画、『キッズ・リターン』は言うまでもない、『HANA-BI』は大人な生き方ができない不器用な主人公、『菊次郎の夏』は大人になりきれていない大人もしくは大人の青春。2.キタノブルーをイメージさせる青。3.北野武×久石譲の中期にあたる3作品。初期2作品を少年期、後期2作品を成人期として中期3作品を青春期、鋭いガチンコで火花バチバチの熱いコラボレーションの時代。4.「ブルーピリオド」というピカソの20代前半の画風を指した言葉があります。「青の時代」とも言われます。そこから転じて孤独や不安を抱える青春時代を表す言葉として用いられています。

……

うーん。個人の解釈だから羽をのばすのは自由なんですけれど、もう一度ヤナーチェクに振り戻ってみます。”『青春』は1924年に作曲した木管六重奏曲で、晩年の作品ながら「若々しい気分」の産物と看做されている”とウィキペディアにあります。深堀りしていくとさらに面白い発見がありました。

この作品の出発点となっているのは少し前に作曲された『青い服の少年たちの行進』という約2分の作品です。ピッコロと大太鼓、チューブラーベルズ(もしくはピアノ)というデュオ編成のようですが、ピッコロ&ピアノ版を聴くことができました。少年時代に所属していた合唱団を回顧した曲といわれています。その2ヶ月後に作曲されたのが『青春』という約20分の作品で楽器も6つに楽章も4つにと大きくなっています。そして、その第3楽章に聴けるモチーフや曲想こそ『青い服の少年たちの行進』です。曲尺は1分くらい伸びていて、モチーフは変容したり曲想は発展していますけれど、ふたつの曲を並べて聴いたときに、同じ曲をベースにしていることはしっかりわかると思います。大胆な言い方をすれば、『青春』という作品のなかに『青い服の少年たちの行進』はモチーフもテーマも包括されている。ヤナーチェクの室内楽作品は晩年に多く、また若い頃の出来事を思い浮かべたものが多いこともあってか、たしかに瑞々しい溌剌とした曲が多い。ウィキペディアの「若々しい気分」という表現をよくされているようです。もうひとつ付け加えるならば、この時代のヤナーチェックは、モチーフやメロディを執拗にくり返す作風で、切りつめられた素材で楽曲がつくられています。

『青い服の少年たちの行進』、つまりキタノブルー、つまり北野映画、そして行進していた少年たちには久石譲も含まれるのかもしれない。若かった頃のまぶしい回顧、北野武×久石譲の『青春』の結晶。【mládí】for Piano and Stringsは、久石譲海外公演でも人気のあるプログラムです。WDO2017で日本初演されたときの音源「Kids Return」「HANA-BI」は『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』に初収録されることになります。

 

ぐるっと一周しました。

それではまた。

 

reverb.
ひょんなきっかけから広がったテーマでした♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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