Disc. 『太王四神記 ナビゲートDVD』

2007年6月20日 DVD発売 AVBF-26400

 

韓国テレビドラマ「太王四神記」
監督:キム・ジョンハク 音楽:久石譲 出演:ペ・ヨンジュン 他
放送期間:2008年4月5日~2008年9月27日 (全24回) NHS総合
(韓国では2007年9~12月放送)

 

ドラマの常識をはるかに超えた、太王四神記の世界とは!?
巨大セット、コンピューターグラフィクス、精巧な小道具、キルギスロケ、フルオーケストラによる音楽、多彩な登場人物など、歴史ファンタジードラマ「太王四神記」の魅力を余すことなく紹介する、ナビゲートDVD!

 

 

「プレビューDVD 金盤/銀盤」につづくナビゲート。前2作品DVDから制作期間が経過していることもあり、ここで聴かれる久石譲音楽は本編でも使用されているフルオーケストラ完成版が中心である。

ただし、その中でもシンセサイザーによるデモ音源や、本編およびサウンド・トラックには収録されていない別バージョンが多く収録されている。実際にオーケストラとレコーディングした音源、かつ、未使用バージョンである。

本作品ではチェロ独奏によるメインテーマや、「ヒョンゴのテーマ」のピッチカート・バージョン(オリジナルは木管アンサンブル)が要所要所にて使用されている。

 

DVD収録内容には、2日間行われたホールでの音楽収録の模様も収められている。数曲の演奏録音風景をカットされた短い時間ではあるが、確認することができる。また監督はこのレコーディングのために来日、録音に立ち合っており、久石譲とのやり取りも観ることができる。

 

 

太王四神記 ナビゲートDVD

DVD収録内容
・オープニング
・イントロダクション ~キム監督&撮影監督 新撮インタビュー~
・登場人物紹介 ~壮大な物語の始まり~
・制作日誌 ~太王四神記が出来るまで~ パート1
・アート ~美しい太王四神記の世界~
(小道具編/セット編/済州 国内(クンネ)城セットツアー)
・制作日誌 ~太王四神記が出来るまで~ パート2
・完成 ~CG/音楽の最終作業~ (CG編/音楽編)
・制作日誌 ~太王四神記が出来るまで~ パート3
・密着 ~ある制作スタッフの1日~
・ポスター撮影現場 ~伝説の始まり~

特典映像:スタッフ・フォトギャラリー

*収録されている音源は、5.1ch用の音源をナビゲートDVD用として2chにMIXしたものです。

本編132分

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O. BEST』

久石譲 WDO 『BEST』

2007年6月20日 CD発売
CD+DVD(初回限定盤)UPCI-9022
CD(通常盤)UPCI-1066

 

新しいポップス・オーケストラとして誕生したニュープロジェクト「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」 3年間の活動集大成。

 

 

【楽曲解説】

あれからまだ1年も経っていないのか…久石譲が2004年夏に新日本フィルハーモニー交響楽団とともに新しいプロジェクトとしてスタートさせた”久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”の3年間の活動を集大成したベスト・アルバムを聴きながら、僕は思った。

「アヴェ・マリア」が流れてきた時にフラッシュバックしてきた。2006年8月13日に東京・錦糸町のすみだトリフォニー・ホールで行われた一夜限りのコンサート「真夏の夜の悪夢」の圧倒的な素晴らしさ。久石さんが曲の間のMCで「サスペンス映画やホラー映画の曲というのはコード進行も含めて非常に精密で複雑、奥が深いものが多いので、オーケストラで演るにはいいものがたくさんあるんです」と話しながら『エクソシスト』や『サイコ』『殺しのドレス』…といった曲をカール・オルフの代表作である「カルミナ・ブラーナ」などと同列線上に並べて聴かせるという離れ技を軽々とこなして見せたが、その間にいろいろなことをやっているので、記憶がぼやけてしまっていたのである。

少し例をあげてみると、2006年10月には、久石譲というアーティストがアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンと並んで世界でもトップクラスの現代音楽の作曲家であることを証明したソロ・アルバム『Asian X.T.C.』が発表された。また、その直後から2007年3月まで全国ツアーとアジア・ツアーも行い、大成功させている。TVから流れてくるCFの音楽も、担当する映画音楽の話題もとぎれることがない。

だから、本当にもったいないことに、久石さんが「システムの壊れかけた世界で、僕たち音楽家は、音楽ができることは何なのか…」という熱い想いをもとにスタートさせたW.D.O.のプロジェクトは、作り出された音楽が素晴らしくクオリティが高く、唯一無二の魅力を持ちながら、久石譲の旺盛な仕事の中に埋没してしまっている感がある。そう考えると、このベスト・アルバムは久石譲というアーティストの才能の深さ、広さを知るには絶好のものであり、選曲と曲のつながりは、いわゆる人気のある曲、聴きたいだろう曲を集めた一般的な意味での”ベスト・アルバム”という範疇を完全に超えたアルバムと言える。

久石さんはW.D.O.について「これは僕のコンサートでもなければ、新日本フィルのコンサートでもない。新日本フィルの音と自分の2つが1つになって、別の新しいユニットを創る。それを何かいい形で世に出したいというお互いの思いがワールド・ドリーム・オーケストラとなって実現した。僕は基本的にアレンジはやらない人間だ。作曲家だから興味がない。だが、自分がアレンジをすることによって、作品となって初めて発表できるものになる。1つの楽曲やメロディーやリズムのエッセンスを基に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。僕にとってアレンジは翻訳みたいなものかも知れない。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、他の人の楽曲でも、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくる。世界中にはいい曲が山ほどあるので、それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ」とコメントしているが、W.D.O.のために久石さんが書き下ろした「World Dreams」からショスタコーヴィチの「Waltz II」までの14曲は、過去3枚のアルバムと3回の公演で、その思いが結実したことをはっきりと示している。久石さんが最初のアルバムに寄せた文章をもう一度ここで紹介し、そこから全曲を紹介していくことにしよう。

 

1.World Dreams
「新日本フィルハーモニー交響楽団とのこのニュープロジェクトは、色々考えて「ワールド・ドリーム・オーケストラ」と命名した。そして、まずこのCDの制作を決めた。目玉は「ハードボイルド・オーケストラ」という組曲だ。例えるなら「夏場のラーメン」。暑い夏に熱いラーメンを食べて汗を掻き切ると清々しくなる。それと同じで暑い夏に暑苦しいブラスセクションが大汗を掻いて鳴りまくって!という男らしいコンセプトなのだ。そして、あまり今までやった事のなかった自分の楽曲でないもののアレンジに取り掛かった。「Mission Impossible」とか「007」とか、しかし、何か物足りなかった。何をやりたいんだろう、このオーケストラと?

何のために……。そんな中でこのオーケストラの為に曲を書き下ろした。もともと祝典序曲のようなものを、と思っていた。作曲している時、僕の頭を過ぎっていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。「何で……」そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国歌のような格調のあるメロディーが頭を過ぎった。「こんなことをするために我々は生きてきたのか?我々の夢はこんなことじゃない!」まるで憑かれたように僕は作曲し、3管フル編成のスコアは異様な早さで完成した。タイトルは「World Dreams」以外なかった。漠然と付けた名前、「ワールド・ドリーム・オーケストラ」ということ事体がコンセプトそのものだった。レコーディングの当日、まさにこれから録る!という時に僕は指揮台からオーケストラの団員にこれを伝えた。「感情的な昂りは音楽事体には良くない」といつも心がけていたが、込み上げてくるものを押さえることが出来ないまま僕は腕を振り続けた…。そしてホールに響いたその演奏は、今まで聞いたことがないくらいすばらしいものだった。 その瞬間、僕らは「ワールド・ドリーム・オーケストラ」として1つになった。」

この文章を読みながら曲を聴くと、様々な映像が頭を過り、映像を喚起する音楽を書かせたら、久石譲という作曲家が世界でも5本の指に入る存在であることを改めて実感させられる。W.D.O.の出発点であると同時に、これは永遠のテーマ曲であり、オープニングを飾るにふさわしい名曲、名演である。

2.パリのアメリカ人
ジャズの自然さをブロードウェイとコンサート・ホールに結合させた作曲家ジョージ・ガーシュインの代表作の1つに、オープニング・ナンバーは時の流れを超えてつながっていく。1951年に同名のミュージカル映画が作られ、大当たりをとった名曲がフル・オーケストラ用管弦楽曲として書かれたのは1928年ガーシュウィンが30歳の時。名曲が4分の3世紀の時を超えて感応しあっている。

3.男と女
”映像と音楽が合体した最高の成功例”として評価され、1966年のカンヌ映画祭グランプリに輝いたクロード・ルルーシュ監督の名作の主題曲で、数え切れないほどのカバー・バージョンが作られているが、有名な”ダバダバダ”のフレーズより、オーケストレイションに趣向をこらしたこのバージョンは本当に個性的だ。

4.白い恋人たち
ルルーシュの名パートナー、フランシス・レイとピエール・バルーのコンビの曲が続く。1968年にフランスのグルノーブルで開催された第10回冬季オリンピックの模様を収めたルルーシュ監督のドキュメンタリー映画の主題曲だが、「イージーリスニングではなく、どうしたらオーケストラになるか」を考えてアプローチをしている久石さんならではの仕上がりになっている。

5.風のささやき
スティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイが共演した粋でお洒落な犯罪映画『華麗なる賭け』の主題歌。1968年のアカデミー主題歌賞を受賞した名曲で、久石さんはミシェル・ルグランのメロディーを”華麗なるオーケストラ”に仕立て上げている。

6.ロシュフォールの恋人たち
フランスの名監督ジャック・ドゥミ監督がミシェル・ルグランと組み、カトリーヌ・ドヌーヴと姉のフランソワーズ・ドルレアックをメインにジーン・ケリー、ジョージ・チャキリスといったアメリカのスター俳優をキャスティングして作ったフランス製ミュージカルの決定版『ロシュフォールの恋人たち』。リズミカルなアンサンブルが夢の世界へと誘ってくれる。

7.The Pink Panther
ミシェル・ルグランなどとともに映画音楽の世界に輝ける足跡を残している名匠ヘンリー・マンシーニが書いたユーモラスな主題曲が軽快な調子で演奏される。ドジなクルーゾー警部の活躍ぶりをコミカルに描き、1963年のシリーズ第1作から93年の7作まで30年間にわたり、人気を呼んだ「ピンクの豹」を選ぶあたりは、久石さんの遊び心か…。

8.China Town
雰囲気はいきなりダークなハードボイルドの世界へと変わる。『チャイナタウン』は60年代のポーランド映画界を代表するロマン・ポランスキーがアメリカで製作したハードボイルド映画の傑作。デカダンなムード漂う30年代のロサンジェルスの風俗を克明に映し出したカメラも出色だったが、ジェリー・ゴールドスミスの書いた音楽を久石さんはさらに深く掘り下げている。アレンジひとつで音楽は本当に色々な表情を見せてくれることを実感して欲しい。

9.Ironside
作曲家としてもアレンジャーとしてもプロデューサーとしても、ジャズからポップスの分野まで幅広く、かつ長いこと一線で活動し続けているクインシー・ジョーンズが書き下ろした曲を久石さんが信頼しているアレンジャー山下康介さんが、変幻自在という言葉がぴったりとはまる感じでW.D.O.バージョンに仕立て上げた。本当に良く鳴っているオーケストラ。W.D.O.はイージーリスニングのオーケストラではないから出来るだけ音量を上げてその魅力を堪能して欲しい。

10.映画『殺しのドレス』よりテーマ曲
ラルフ・ボードの官能的なカメラワークが光っていたブライアン・デ・パルマ監督の『殺しのドレス』は非常にファンの多いサスペンス映画の傑作だ。製作は1980年。デ・パルマとは何本か一緒に仕事をしているイタリア人作曲家、ピノ・ドナジオの書いた楽曲も素晴しく、それをさらに美しく昇華させたW.D.O.の魅力的な音の響きを味わうことが出来る。

11.シェルブールの雨傘
再びジャック・ドゥミとミシェル・ルグランが組んで作られたフランスの有名なミュージカル映画の主題曲が登場する。唸らされるのは前曲とのつなぎの絶妙さ。ストリングスの美しいゆれ方もW.D.O.ならではの魅力という感じで、7分近い音の芸術が楽しめる。

12.Mission Impossible
人気テレビ・シリーズをトム・クルーズが映画にして大ヒットさせた。一度聴いたら忘れられないリフが最高にキャッチーな楽曲を書いたのはラロ・シフリン。『スパイ大作戦』から『ミッション・インポッシブル』と変わっても、名曲だけはきちんと引きつがれたが、久石さんは「どのくらい緻密なアレンジが出来るかを考え」ストリングスの人たちに音楽的な冒険をさせた。それが成功していることは言うまでもない。

13.アヴェ・マリア
たくさんのバージョンが存在する「アヴェ・マリア」だが、W.D.O.は16世紀イタリアの作曲家ジュリオ・カッチーニの手によるものを2006年の8月にすみだトリフォニーホールで演奏した。美しいコーラスとストリングスの融け合い方は言葉にならないほど素晴しい。この「アヴェ・マリア」を聴きながら、久石さんはこのベスト・アルバムを作りたいために前3作を作ったのではないかと言ってしまいたくなるほどの出来映えであり、また曲順としてもぴったりとはまっている。

14.Waltz II  Suite for Jazz Orchestra No.2
ショスタコヴィチの作品で、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』で使われて有名になったこの曲で、久石さんが「女の子が夜聴ける感じ…」とさらりと言ってのけた美しい世界は完結する。「W.D.O.でこのワルツを振ったので、ハウルのメインテーマにつながった」という言葉を聞くと、本当に音楽というのは不思議な魔力を持っているものだと思う。

2007年5月 立川直樹

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような格調あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら…。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

The Pink Panther
ヘンリー・マンシーニのこの作品は、ワンフレーズ聴いただけで何の曲かはっきりわかる、とても個性的な曲。これほどユーモアがあって、しかもしっかり創られている曲は少ないので、これはのちのち、我々にとっても大事な曲になっていくと思う。だからぜひやりたかった。ところで、この曲はたいがい、ブラス・サウンドが中心になる。しかし今回は、「隠し味」とも言える、弦のちょっと色っぽい音がすごく重要な要素。それがたぶん、僕のアレンジの特色になるだろう。

 

China Town
同名の映画は1930年代を舞台にした、情ない探偵の話で、僕の大好きな映画。主演のジャック・ニコルソンも好きな俳優だ。曲はジェリー・ゴールドスミス。この曲のテーマが頭にこびりついていたので、今回、ティムさんというトランペット奏者を得て、どうしてもこの曲を入れたいと思った。ティムさんのジャジーな雰囲気も素晴らしい。その演奏からは、音楽性の幅の広さがわかる。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

Mission Impossible
あまりにも有名な、「スパイ大作戦」のテーマ曲。この曲を創ったラロ・シフリンも大好きな作曲家だ。変型のはずなのに、心地いい5拍子。このリズムの凄さが、オーケストラのダイナミック・レンジを表現するのにぴったりだ。「ハードボイルド・オーケストラ」のシメの曲としてもピッタリではないか?

 

ジャズ組曲第2番 ワルツ (ショスタコーヴィチ)
僕が今年、最もはまった曲。映画「アイズ ワイド シャット」の曲だけれど、とにかく見事にはまっている。他人の曲で、今年一番好きになった曲はこれだ。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

 

「World Dreams」 (2004)、「パリのアメリカ人」 (2005)、 「真夏の夜の悪夢」 (2006)の3枚のアルバムから選曲した初のベストアルバム。未発表音源として 『Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2』をボーナストラックとして収録。

 

 

 

久石譲 WDO 『BEST』

1. World Dreams
2. パリのアメリカ人
3. 男と女
4. 白い恋人たち
5. 風のささやき
6. ロシュフォールの恋人たち
7. The Pink Panther
8. China Town
9. Iron side
10. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
11. シェルブールの雨傘
12. Mission Impossible
13. アヴェ・マリア
14. Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2 *未発表音源

【初回限定盤DVD収録内容】
001. 天空の城ラピュタ
002. Raging Men
003. HANA-BI
004. ロミオとジュリエット

except
Arranged by Kousuke Yamashita 6. 9. 13.
Arranged by Chieko Matsunami 10.

 

W.D.O. BEST

1.World Dreams
2.American in Paris
3.Un Homme et Une Femme
4.Treize Jours en France
5.The Windmills of Your Mind
6.Les Demoiselles de Rochefort
7.The Pink Panther
8.China Town
9.Ironside
10.”Dressed to Kill” Main Theme
11.Les Parapluies de Cherbourg
12.Mission Impossible
13.Ave Maria
14.Waltz II Suite For Jazz Orchestra No.2

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O.』

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2006年12月20日 DVD発売 UPBI-1014

 

久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ、ついに初映像作品発売!

2004年にリリースした1枚目のアルバム「ワールド・ドリームス」を受けて行われた”ハードボイルド”をコンセプトにした全国ツアー、2005年12月にリリースした2枚目のアルバム「パリのアメリカ人」を受けて30名の女性コーラス「リトルキャロル」を従えたツアー「12月の恋人たち」、そして今夏「真夏の夜の悪夢」と題して100人を超える合唱団を迎えて一夜限り行われた”背筋が凍るような熱い特別な夜”の3つの異なるコンサートを収録。珠玉の名演が1枚のDVDにコンパイルされた、これ以上ないほどの大満足の内容!

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような格調あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら…。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

 

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

本作品には、久石譲インタビューもおりこまれている。インタビュー内容は各公演コンサート・プログラムや雑誌インタビューなどで活字化されているものとほぼ同内容である。

 

 

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2004 | World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ
1.World Dreams 2004 / 久石譲
2.風の谷のナウシカ (風の伝説) / 久石譲
3.天空の城ラピュタ / 久石譲
4.アイアンサイド TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』より / クインシー・ジョーンズ
5.Raging Men 映画『BROTHER』より / 久石譲
6.HANA-BI 映画『HANA-BI』より / 久石譲
7.風のささやき 映画『華麗なる賭け』より / アラン・バーグマン, マリリン・バーグマン & ミシェル・ルグラン
8.ロミオとジュリエット / セルゲイ・セルギーヴィッチ・プロコフィエフ

2005 | 12月の恋人たち
9.男と女 / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
10.白い恋人たち / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
11.キャロル・オブ・ザ・ベルズ / ミクロ・レオントヴィッチ
12.ロシュフォールの恋人たち / ミシェル・ルグラン, ジャック・デミ & レイモンド・ルイス
13.ボレロ / M.ラヴェル

2006 | 真夏の夜の悪夢
14.カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
15.ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ パート1 映画『エクソシスト』より / マイク・オールドフィールド
16.映画『殺しのドレス』より テーマ曲 / ピノ・ドナジオ
17.レクイエム「怒りの日」 / ジュゼッペ・ヴェルディ
18.「もののけ姫」組曲 / 久石譲
19.カルミナ・ブラーナ「アヴェ、この上なく姿美しい女」〜カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
20.World Dreams 2006 / 久石譲

All Produced & Conducted by JOE HISAISHI

Orchestra:JOE HISAISHI & NEW JAPAN PHILHARMONIC WORLD DREAM ORCHESTRA

2004 World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ 〈2004.7.27 Sumida Triphony Hall〉
2005 12月の恋人たち 〈2005.12.5 Yokohama Minato Mirai Hall〉
2006 真夏の夜の悪夢 ~Psycho Horror Night 〈2006.8.13 Sumida Triphony Hall〉

Iron Side:Arranged by Kosuke Yamashita
The Windmills of Your Mind:Arranged by Joe Hisaishi
Un Homme et Une Femme:Arranged by Joe Hisaishi
Treize Jours En France:Arranged by Joe Hisaishi
Carol of The Bells:Arranged by Yasuo Minami
Les Demoiselles De Rochefort:Arranged by Kosuke Yamashita
The Orchestra Tubular Bells Part 1 “The Exorcist”:Arranged by Kosuke Yamashita
“Dressed to Kill” Main Theme:Arranged by Chieko Matsunami
“PRINCESS MONONOKE” Suite:Scoring by Kenji Ashimoto

Recording & Mixing Engineer
2004: Satoshi Inoue (VIVIA) Mixed at TV-Asahi Surround Audio Edit ROOM

2005: 5.1ch Mixed by Suminobu Hamada (Wonder Station) at Wonder Station
Music Sheet Preparation: Kouchi Baba (Wonder City Inc.), Kenji Ashimoto, Chieko Matsunami

2006: Tomoyoshi Ezaki, Takeshi Muramatsu (Octavia Records Inc.) Mixed at EXTON Studio, Yokohama

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『真夏の夜の悪夢』

久石譲 WDO 『真夏の夜の夢』

2006年12月20日 CD発売 UPCI-1054

 

2006年8月13日、すみだトリフォニー・ホールにて、『真夏の夜の悪夢』と題して行われた、久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラによる一夜限りの貴重なコンサートの模様を収録したライヴ・アルバム。

 

 

楽曲解説

2006年8月13日、「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」は、東京・錦糸町のすみだトリフォニーホールにて一夜限りのコンサートを行った。このアルバムは、そのスペシャル・コンサート「真夏の夜の悪夢」の模様を収録したものである。

コンサートは、久石自身の手による楽曲およびマーラーの「交響曲第五番第四楽章”アダージェット”」を取り上げた第1部と、”サイコ・ホラーナイト”なるテーマを掲げた第2部とで構成。久石作曲の『男たちの大和/YAMATO』や『もののけ姫』の楽曲を組曲にしたもの、そして、『サイコ』、『エクソシスト』、『殺しのドレス』等、映画史に残る名画のスリルとサスペンスを大いに盛り上げた映画音楽や、クラシックの名曲が演奏された。総勢100人を超える混声の「栗友会合唱団」も参加しており、「カルミナ・ブラーナ」、レクイエム「怒りの日」、「アヴェ・マリア」等、合唱の醍醐味が味わえる楽曲も取り上げられている。

ちなみに久石は、サイコ・ホラー映画の音楽の魅力を、「非常に精密なスコアが多く、オーケストラ向きのいい曲がたくさんある。また西洋の映画の場合、神の問題をも扱うシリアスな作品が多い」と分析。「サイコ・ホラー映画に登場する人物はしばしば、この世で遂げられなかった思いを、あの世に行っても抱き続ける。現世へのそのような思いは、究極の愛の形ではないか」と語っている。そんな思いを踏まえてここに収録された楽曲を耳にするのもまた味わい深い。

 

1. カルミナ・ブラーナ 「おお、運命の女神よ」
20世紀ドイツの作曲家、カール・オルフの出世作にして代表作である「カルミナ・ブラーナ」は、19世紀初頭、バイエルンにあるベネディクト会ボイレン修道院で発見された中世ラテン語の詩歌集に曲をつけた世俗カンタータ。テレビ番組やコマーシャル、はたまた映画音楽としてたびたび使われているのを耳にした方も多いことだろう。全24曲から成り、プロローグ、第一部、第二部、第三部、エピローグという構成で、プロローグに置かれたNo.1「おお、運命の女神よ」では、運命の女神フォルトゥーナへの恨みの念が歌い上げられる。

2. プレリュード 映画『サイコ』より
”サスペンスの神様”、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督作の中でもひときわ名高い『サイコ』(1960)。音楽を手がけたアメリカ人作曲家バーナード・ハーマンは、『知りすぎていた男』(1956)、『めまい』(1958)、『北北西に進路を取れ』(1959)等、数々のヒッチコック作品に楽曲を提供したほか、『市民ケーン』(1941)や『タクシー・ドライバー』(1976)等でも知られる映画音楽の巨匠である。1998年、ガス・ヴァン・サント監督により『サイコ』がリメイクされた際にも、ハーマンの音楽がベースに使われていた。

3. ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ・パート1 映画『エクソシスト』より
イギリス出身のプログレッシヴ・ロックの鬼才、マイク・オールドフィールドのソロ・デビュー作である「チューブラー・ベルズ」(1973)は、パート1、パート2の2曲から成る壮大な作品。発表後、少女に取り憑いた悪魔と神父との壮絶な戦いを描いたオカルト映画の名作『エクソシスト』(1973)のテーマ曲として使用され、大ヒットを記録、オールドフィールドの名を世界に知らしめることとなった。

4. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
四年ぶりの新作『ブラック・ダリア』がこの秋封切られたブライアン・デ・パルマ監督が1980年に手がけた映画『殺しのドレス』は、ヒッチコック作品の影響を色濃く受けたサスペンス映画。楽曲を担当したイタリア人作曲家、ピノ・ドナジオは、『キャリー』(1976)や『ミッドナイトクロス』(1981)、『ボディ・ダブル』(1984)などでデ・パルマと組んでいるほか、『死海殺人事件』(1988)や『法王の銀行家~ロベルト・カルヴィ暗殺事件~』(2002)等、数々の映画音楽を手がけている。

5. レクイエム「怒りの日」
「椿姫」「アイーダ」等のオペラで名高い19世紀イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディの手による「レクイエム」の第二章。ヴェルディが敬愛していたイタリアの文豪、アレッサンドロ・マンゾーニの追悼のため作曲されたこの作品は、モーツァルト、フォーレの楽曲と並んで”世界三大レクイエム”の一つに数えられる。

6. 操り人形の葬送行進曲
「アヴェ・マリア」やオペラ「ファウスト」で知られる19世紀フランスの作曲家、シャルル・フランソワ・グノーの手によるこの楽曲は、ヒッチコック本人も番組の初めと終わりに姿を見せていたテレビドラマ・シリーズ『ヒッチコック劇場』のテーマ音楽として知られる。このドラマ・シリーズは日本でも放映され、人気を博した。

7. 「もののけ姫」組曲
スタジオジブリの宮崎駿が監督を手がけた長編アニメーション映画『もののけ姫』(1997)は、生と死をテーマに、人間と、”もののけ”と呼ばれる山神や山の獣たちとの戦いを描いた作品。1420万人もの観客を動員、興行収入193億円は当時の日本映画の歴代1位となる記録だった。久石が手がけたサウンドトラック、カウンターテナーの米良美一が歌った主題歌も共に大ヒットしている。

8. カルミナ・ブラーナ 「アヴェ、この上なく姿美しい女」~「おお、運命の女神よ」
カール・オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」のエピローグを成す2曲。女性の美を讃えるNo.24「アヴェ、この上なく姿美しい女」では、ブランツィフロールとヘレナ、ヴィーナスの”世界三大美女”の名が挙げられる。楽曲をしめくくるNo.25「おお、運命の女神よ」は、1曲目のNo.1「おお、運命の女神よ」と同じ曲であり(全24曲構成なのにNo.25まであるのはそのためである)、物語の最後に再び運命の女神へと呼びかけるものである。

9. アヴェ・マリア
シューベルトやグノーの有名曲をはじめ、「アヴェ・マリア」には数多くのバージョンが存在するが、ここで取り上げられているのは16世紀イタリアの作曲家、ジュリオ・カッチーニの手によるもの。最近では、世界的に活躍するカウンターテナー、スラヴァが、1995年の日本デビュー作「ave maria」で取り上げ、話題となった。

10. YAMATO組曲 第一楽章
11. YAMATO組曲 第二楽章、第三楽章
12. YAMATO組曲 第四楽章
13. YAMATO組曲 第五楽章
久石作曲の「YAMATO 組曲」は、第二次世界大戦終戦60周年を記念して制作された映画『男たちの大和/YAMATO』(2005)のために書いた楽曲を組曲にした作品。作家・辺見じゅんの原作を、『人間の証明』(1977)の佐藤純彌監督が映画化したこの作品は、世界最強の戦艦と言われながらも東シナ海に散った戦艦大和の運命と、その乗務員たちの生き様を描き出す。反町隆史、中村獅童、鈴木京香、仲代達矢、渡哲也ら、豪華出演陣も話題を呼んだ。

文 Oct. 2006 藤本真由

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

久石譲は本作品ライナーノーツにて、「サイコ・ホラー映画の音楽は非常に精密なスコアが多く、オーケストラ向きのいい曲がたくさんある。また、西洋の映画の場合、神の題材をも扱うシリアスな作品が多い。」と語っている。そこから、サイコ・ホラー映画を「究極の愛の物語」とし、名曲たちがセレクトされている。

自身の映画音楽作品からは、(2) 「もののけ姫」組曲 アシタカせっ記~タタリ神~もののけ姫 を組曲にしたもの。主題歌『もののけ姫』は、ピアノやヴァイオリンがメロディーを奏でるインストゥルメンタルとなっている。

(10)~(13) 「YAMATO組曲」第一楽章 – 第五楽章 映画「男たちの大和/YAMATO」で使用された楽曲を組曲にしたもの。もともと劇中でもコーラスがふんだん効果的に用いられた映画音楽だっただけに、今回の合唱団の編成が、この演目を可能にしたとも言える。

確かに本作品に収録されている映画音楽やクラシック音楽を聴いていると、サイコ・ホラー映画のおどろおどろしさや恐怖というよりは、まるで恋愛映画の世界にいるような、美しい旋律が多いことがわかる。

讃美歌やレクイエムといった、西洋の宗教を象徴し色濃く反映した楽曲たち。映像と音楽とのコントラスト、いい意味で対比している。格式高いオペラやミュージカルのようであり、劇舞台のドラマティックさがある。

 

 

 

久石譲 WDO 『真夏の夜の夢』

1. カルミナ・ブラーナ 「おお、運命の女神よ」
2. プレリュード 映画『サイコ』より
3. ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ・パート1 映画『エクソシスト』より
4. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
5. レクイエム「怒りの日」
6. 操り人形の葬送行進曲
7. 「もののけ姫」組曲
8. カルミナ・ブラーナ 「アヴェ、この上なく姿美しい女」~「おお、運命の女神よ」
9. アヴェ・マリア
10. YAMATO組曲 第一楽章
11. YAMATO組曲 第二楽章、第三楽章
12. YAMATO組曲 第四楽章
13. YAMATO組曲 第五楽章

初回:デジパック仕様

except
Arranged by Kenji Ashimoto 2.
Arranged by Kousuke Yamashita 3.
Arranged by Chieko Matsunami 4.
Scoring by Kenji Ashimoto 7. 10. 11. 12. 13.

 

PSYCHO HORROR NIGHT

1.Carmina Burana “O Fortuna”
2.Prelude “Psycho”
3.The Orchestra Tubular Bells, Pt. 1 “The Exorcist”
4.”Dressed to Kill” Main Theme
5.Requiem “Dies Irae”
6.Funeral March of a Marionette
7.”PRINCESS MONONOKE” Suite (from ‘Princess Mononoke’)
8.Carmina Burana “Ave Formosissima” / “O Fortuna”
9.Ave Maria
10.YAMATO Suite: 1st Movement
11.YAMATO Suite: 2nd & 3rd Movement
12.YAMATO Suite: 4th Movement
13.YAMATO Suite: 5th Movement

 

Disc. 久石譲 『久石譲 meets “THE GENERAL” キートンの大列車追跡』

久石譲 meets “THE GENERAL” キートンの大列車追跡

2006年12月8日 CD&DVD発売 DXDS-0055

 

バスター・キートンの最高傑作にして映画史に残る傑作。久石譲がスコアをつけたスペシャル・ヴァージョン

久石譲 meets “THE GENERAL” キートンの大列車追跡<80周年記念リマスター・ヴァージョン>としてサントラCDと本編DVDの豪華2枚組仕様

 

チャップリン、ロイドと並ぶ3大喜劇王のひとり、バスター・キートンのアクションコメディ『キートンの大列車追跡』の製作80周年を記念した特別版。最新の技術でリマスターされた本編と久石譲の新しいスコアによって映画史に残る傑作が蘇る!!

 

 

2004年第57回カンヌ国際映画祭にて特別上映(リアルタイム生演奏)された。

特典映像に登場する久石譲レコーディング風景は4分程度である。

 

本作品のサウンドトラックは、フランス盤オリジナル・サウンドトラックCD盤と同一である。

 

the general import

 

 

 

久石譲 meets “THE GENERAL” キートンの大列車追跡

Original Sound Track CD

Le mecano de la general joe hisaishi

1.Les deux amours de Johnnie Gray
2.Mobilisation
3.Abandonné
4.Un train pour cible
5.L’amour kidnappé
6.Face Au Canon Mobile
7.Poursuites et obstacles
8.Train enfumé
9.Manœuvres Autour de Chatanooga
10.La fôret
11.Les retrouvailles de Johnnie et Annabelle
12.Une marchandise délicate
13.La redoutable général
14.Cavale Ferroviaire I
15.Cavale Ferroviaire II
16.Un train sans maître
17.Le pont piégé
18.Retour Au Sud
19.La Bataille de la Rivière
20.Derniers coups de Canon
21.Héros du Jour
22.La ballade d’annabelle et Johnnie

 

【特典映像】
●INTRODUCTION(デヴィット・ロビンソン)
●レコーディング2004(久石譲/Anna Mouglallis&Moustaki)
●リマスター作業
●オリジナル予告編

本編DVD+サントラCD 二枚組仕様/1926年/アメリカ映画/75分+特典映像/モノクロ/サイレント/片面1層/ドルビーデジタル5.1ch/4:3スタンダードサイズ/クリアケース付きトールサイズ仕様

 

Disc. 久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

2006年10月4日 CD発売 UPCI-1052

 

2005年公開 映画「トンマッコルへようこそ」
(原題:Welcome to Dongmakgol)
監督:PARK Kwang-hyun パク・クァンヒョン 音楽:久石譲

日本公開日:2006年10月28日

 

久石にとって初めて手がけた韓国映画となる本作で日本人として初となる第四回大韓民国映画大賞最優秀音楽賞を受賞。もちろん日本人としては史上初の快挙。さらに、韓国のアカデミー賞ともいわれている権威ある映画賞である大鐘賞でも最優秀音楽賞にノミネートされた。

 

 

対談:パク・クァンヒョン監督 × 久石譲

2005年の韓国映画界で最大の収穫になった『トンマッコルへようこそ』。神に祝福されたような成功ぶりだが、実は製作時点では問題が山積し、公開されるまでは”呪われたプロジェクト”とさえ陰で呼ばれていたという。監督自身、3年におよぶ製作のどの段階でも苦労が絶えず、何度も「もうあきらめたい」と思った、と語る。だが、それほどの難産だったデビュー作で、音楽監督を久石譲が引き受けてくれたことは、何よりの奇跡だった。2人のコラボレーションの成果は、完成作品が何よりも証明している。久しぶりに再会する2人の嬉しそうな笑顔、つきない話に、周囲の空気まで温かで穏やかなオーラに満たされた。

 

パク・クァンヒョン:
大学時代から久石先生の音楽の大ファンでした。『菊次郎の夏』の美しい旋律も、『ソナチネ』のエネルギーに満ちた音楽も、もちろん宮崎駿作品の音楽も、本当に心酔しています。最初にお会いしたときはファン丸出しで、持っているCDすべてにサインしてもらいました(笑)。すごく緊張して行ったのですが、とても優しい笑顔で迎えてくださって、そのことにまた感動しました。一瞬、目の前にいる人が本当の巨匠であることを忘れてしまうほど、心優しい笑顔だったんです。

久石譲:
僕がまず思ったのは、「俳優になってもいいぐらいかっこよくて若い人だ」でした(笑)。でも、いざこの作品のビジョンを話し出すと、止まらない。細部にいたるまで明快なアイディアを持っている。これぐらい強い思いを持っている作品なら絶対にいい映画になると確信しました。それに、監督も新人だし、スタッフもみんな若いと聞いて、それなら予定調和な作業ではなく、エネルギーに溢れた現場になるだろうというワクワクする期待感も持ちました。

パク・クァンヒョン:
今回一緒に作業してわかったんですが、どうやら私たちはどちらもビジネス感覚に欠けていて(笑)、確か事前の打ち合わせでは、「だいたい17曲ぐらいでしょう」ということだったはずですが、やっていくうちに曲数がどんどん増えていきました。久石先生が「ここにも曲をつけようか」とおっしゃって、私も「いいですね」と答える、そんなやりとりをしていくうち、結果的に34曲になりました。最初はオーケストラも小規模なものを考えていましたが、先生が70人編成にしたいと提案してくださったんです。以前に宮崎作品のDVDの特典映像で、久石先生がオーケストラを指揮していて、それを宮崎監督が後ろに座って見ている場面がありました。それを見て以来、「宮崎監督みたいに後ろに座って久石先生が僕の映画のために指揮するところを見る」というのが夢の一つになったんです。目の前で久石先生が汗をかかれて何度もTシャツを着替えながら指揮しているところを眺めていたら、「ああ自分の夢が今かなっているんだ」と思って、鳥肌が立つほど感激しました。

久石譲:
映画は、どこに音楽を入れて、どこには入れないか、それを判断することも大事な作業です。この作品の場合、戦争の話ではありながらファンタジーの要素があるわけで、場面場面を引き立てたり雰囲気を伝えるために音楽を入れる場所を考えていったら、結果的に34曲になりました。オーケストラの規模にしても、作品の内容が要求したからですよ。これだけの話になるとスケール感も必要だし、より深い感情を表現するために二管編成は必然でした。重厚さ、弦の優しさがほしかったし、特殊な楽器を使うことで不思議感を出すことも狙いました。この作品の曲は、沖縄のスタジオに10日間ぐらいこもって集中してつくりました。毎日、海を眺めながら、真冬の戦闘シーンに曲をつけていたわけです(笑)。例えばチョウチョのシーンの旋律は、実は沖縄の音階を取り入れているんです。不思議な感じが出せて、いい効果になったと思います。

パク・クァンヒョン:
一方で、例えばイノシシのシーンは、原始的なリズムで力強いエネルギーを感じるとともに、胸が高鳴るような喜びの気持ちも表現されています。どの曲も大好きですが、どしゃ降りの雨の中ヨイルが自分の汚い靴下を脱いで少年兵の顔を拭う場面がひときわ好きです。胸に響くと同時に、気持ちがよくなります。本当に、音楽のおかげで作品全体に神秘性と深みが増しました。

久石譲:
イノシシのシーンは、実をいうとね、送られてきた映像を見たとき、てっきり未編集バージョンだろうって思ってたんですよ(笑)。スローモーションがずっと続く長いシーンだったから、きっと途中でノーマルスピードに変えて編集するんだろう、と。だけど、待てども待てども送られてこない。「送ったものが最終バージョンです」って言われて、正直なところぞっとしましたよ。これは大変だって。あそこが一番苦労しましたね。ところが、完成作品を見ると、監督の狙いがぴったり当たって、ものすごく力強いシーンになっていた。おかしかったのは、韓国での完成披露試写会で質問がイノシシのシーンに集中してしまって、俳優さんが「俺のことも聞いてくれよ」って(笑)。

パク・クァンヒョン:
チョン・ジェヨンさんですね。「自分は主役だと聞いていたのに、出来上がってみたら自分の場面は少なくて、イノシシやチョウチョのほうが目立ってるじゃないか」って、最初はちょっとスネてました(笑)。私が最後まで編集の判断に迷ったシーンが3つあって、イントロの部分とイノシシのシーン、それからラストの戦闘シーンでした。ずっと悩みつづけて、久石先生にもスケジュール的にずいぶんご迷惑をおかけしてしまいました。

久石譲:
確かに時間的にはきつかったけど、逆にいうと今回はそれ以外の部分での葛藤や摩擦がまったくなくて、心から気持ちよくできました。僕自身、韓国映画という初めての場にチャレンジして、自分の可能性を広げられたと思っています。監督やスタッフから、作る情熱がものすごく伝わってきて、気持ちが燃えました。

(取材・文 片岡真由美)

Blog. 映画『トンマッコルへようこそ』(2005) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより

 

 

 

 

 

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

1. Welcome to Dongmakgol
2.Opening
3.Butterfly
4.トンマッコルの村
5.村への行進
6.N. Korea vs S. Korea
7.おばあちゃん
8.Love and Grande
9.対立
10.イノシシ
11.友情
12.ソリのワルツ
13.悲しい過去
14.バタフライの逆襲
15.アメリカ軍
16.Invasion
17.ヨイルの死
18.村人との別れと戦いへ
19.戦闘
20.男たちは…
21.Paradise

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
Vocal:麻衣 / Mitsuko

 

Disc. 久石譲 『HISAISHI meets MIYAZAKI Films』

2006年9月25日 CD発売 399 055-2 (FR) ※輸入盤  (2006年7月21日)
2008年4月8日 CD発売 M2-36354 (US)
2014年12月8日 CD発売 399 613-2 (FR)

 

スタジオジブリ宮崎駿監督作品からのコンパイル。日本国内盤で既出の複数のCDアルバムからセレクトされたもの。

なお、LP盤もリリースされているが、SIDE-A「もののけ姫」より、SIDE-B「千と千尋の神隠し」より「紅の豚」よりが収録されている。(「風の谷のナウシカ」よりは未収録)

 

 

 

NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WINDS
Nausicaä Symphonic Poem
1. First Movement
2. Second Movement
3. Third Movement

PORCO ROSSO
4. Madness

PRINCESS MONONOKE
5. The Legend of Ashitaka
6. Princess Mononoke Theme Song
7. TA.TA.RI.GAMI
8. Ashitaka and San

SPIRITED AWAY
9. One Summer’s Day
10. The Dragon Boy / The Bottomless Pit
11. The Sixth Station
12. Reprise

All Composed, arranged and produced by Joe Hisaishi

Track 1,2,3 and 4
from WORKS I

Track 5,6,7,8
from WORKS II

Track 9,10,11,12
from SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001

 

Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

2006年6月7日 CD発売 UPCI-1048

 

久石譲が主宰するレーベル ワンダーランドレコードからのベスト・セレクション。レーベル・テーマ「EVERGREEN」を象徴した、本人自らの選曲、リマスタリング音源で構成されたセレクト・アルバム。

 

 

音楽の”WONDERLAND”の素晴しき城主、久石譲

日本を代表する、というより今や世界的にその名を知られている作曲家であり、ピアニストである久石譲は、その知名度と、多くの人に作品が愛されているのと対照的に意外なほど、その実像と本質が一般的には伝わっていないアーティストではないだろうか。

僕は久石譲がプロデュースするレーベル”Wonderland Records”からリリースされたアルバムのベスト盤『THE BEST COLLECTION』を聴いて、改めてそのことを思った。初のピアノ・ソロ・アルバムとして1988年にリリースされた『Piano Stories』でもオープニングを飾っていた「A Summer’s Day」からNHKドラマ「風の盆から」のテーマ曲「風の盆」までの見事なまでの音の連なり。”いい音楽”が時代や流行を超えて人々に愛され、存在していることは周知の事実だが、”EVERGREEN”をテーマに、久石譲の音楽観を投影させたレーベルとして、2000年に設立され、その年の12月6日に『Piano Stories』を第1弾としてリリースした”Wonderland Records”からリリースされた8枚のアルバムからの選曲に、今年リリースされる新曲3曲を加えて作られた『THE BEST COLLECTION』は単なるベスト盤というより、久石譲という稀有な才能と音楽的魅力を兼ね備えたアーティストの音楽の旅のドキュメントなのである。

それはジョエル・マイヤーウィッツという知る人ぞ知る写真家の美しい写真をカバーにした『Piano Stories』からの2曲に、久石譲の映画音楽家としての評価を決定的なものにした「あの夏、いちばん静かな海」のメインテーマ曲が続いていくあたりで明らかになる。4歳の頃からヴァイオリンを学び、国立音楽大学作曲科に入学した久石譲が最初に感化されたのが”ミニマル・ミュージック”で、出発点が現代音楽の作曲家だったということは久石譲というアーティストの本質を理解する上では非常に重要なポイントであり、「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味での久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的なわずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捕らえる旋律を表現できないか…」という言葉を聞くと、「風の谷のナウシカ」から始まった宮崎アニメの一般的なファンが例外なく口にする”美しく優しいメロディー”の深みが理解できるだろうし、久石譲が作曲家としてだけでなく、アレンジャー、プロデューサーとしての才能も傑出していることがよくわかる。映像と音楽のコラボレーションの素晴しさが公開当時、評判をとった北野武監督の映画「あの夏、いちばん静かな海」から、久石譲とは何作もタッグを組んでいる大林宣彦監督の映画「ふたり」からの曲への切り返しの見事さはもはや魔術的領域にすら達している。

そう、本当にいろいろなところに連れていかれてしまうのだ。1984年の「風の谷のナウシカ」を始まりに、20年と少しの間に何と43本もの映画音楽を手がけてきた久石譲は「僕にとって、音楽は生きている上で一番好きなことで、映画は2番目に好き。その両方をいっぺんにできるのが映画音楽。映画音楽を作る場合、映像と音楽は必ず対等であるように心がけている。映画には大もとには脚本があって、そこからイマジネーションを膨らませて、片方は映像に、もう片方は音楽になる。勿論、音楽は映像に関連しているわけだけど、たいがいの場合、追随し過ぎてしまう。泣くシーンでは悲しいメロディーとかね。逆に映画のコンセプトから考えたら、音楽はそうする必要がなかったりもする。映像と音楽をもっと戦わせてもいいのではないかと…」と語っているが、その音楽のイマジネイティブな広がりとスケールの大きさは、間違いなくこのクリエイティブな視点と姿勢が反映されたものといえるのではないだろうか。

そして、Wonderland Recordsからリリースされている大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のサントラ盤に添付されたブックレットに久石譲が書いた文章の一節が、映像と音楽の世界を、また音楽の多くのジャンルの世界を、自由奔放に往き来している久石譲というアーティストの思考回路の深さを僕に教えてくれた。

「この映画に音楽を付けるに当たって色々と悩み、最初はロマンティックな曲を色々考えたりしましたが、結果的にテーマ的には”過去に対面して行くサスペンス”という括りでの音楽にしようと考えました。これはある時ヒッチコックの「めまい」(1958年)をレンタルビデオでたまたま見た時に、出だしがサスペンス調に作られているという事に気がつき、「はるか、ノスタルジィ」も自分の過去に対面するサスペンスなのだという共通項の発見から考えついた事です。このようにすることで最終的に出会った所に本当のロマンがあるというような作りにすればこの映画は行けると考え、大林監督にこの話をし”それは最高にいい”という事になり、テーマのメロディーをロマンにもサスペンスにも取れるような複雑なものにして、短いモチーフ風な扱いをすると完全にサスペンス音楽になってしまうようなものに仕上げました。その後この「追憶のX.T.C.」というテーマ曲は「MY LOST CITY」の「Tango X.T.C.」という曲に発展していくことになりました」

やや長い引用になったが、久石譲の物作りに対する考え方やアプローチを知るには非常に興味深い文章であり、このアルバムの中盤からエンディングに至るまでの流れとどこかで通底しているようにも僕には思える。日本映画界に大きく貢献してきた今までの実績とその功績が評価され、久石譲は2002年淀川長治賞を受賞しているが、先にも書いたように多くの人の記憶に残っている美しいメロディーと壮麗なサウンドは驚くべき計算と準備とテクニックがあって初めて成立しているのである。

だが、それにしても、1989年に6枚目のソロ・アルバムとしてリリースされた『PRETENDER』の中から選び出された「VIEW OF SILENCE」のアレンジの見事さはどんな言葉を使って形容すればいいのだろうか。どの曲を聴いても、久石譲の楽器の鳴らし方のうまさには改めて唸らされ、今回のアルバムでいくつもの新しい発見をしたのはうれしい驚きだったが、ふるえるようなストリングスがピアノと絡み合い、ひとつずつの楽器が知的な会話をして、全体としては官能的に匂いが漂う「VIEW OF SILENCE」はアレンジャーとしてもその時代に既に久石譲が世界的レベルに達していたことの証であり、続く『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』から選ばれた「千と千尋の神隠し」組曲の2曲も、自身の作品をオーケストラ用にアレンジしてここまで昇華できるということに素直に脱帽させられてしまう。久石譲が、”戦友”と呼び、”Wonderland Records”に初のオリジナル・アルバム・アーティストとして迎え入れたチェリスト、近藤浩志のソロ・アルバム『Arcant』から選び出された「風の谷のナウシカ」組曲(改訂版)「風の伝説」の素晴しさも特筆すべきものがあるし、続く2曲と合わせて絶妙なレーベルのプロモーションになっている。

あとは全16曲の収録曲のうち、唯一のヴォーカル・ナンバーである「さくらが咲いたよ」と、久石譲を”楽界の魔王”と形容して讃えている脚本家、市川森一の依頼による仕事となったNHKドラマ「風の盆から」のサントラ盤から選び出された2曲について書いておけばいい。

久石譲が坂口安吾の名作「桜の森の満開の下」にインスピレーションを受けて書き下ろし、1994年のソロ・アルバム『地上の楽園』に収録した曲を、久石譲の愛娘、麻衣が全く新しい楽曲としてリメイクした「さくらが咲いたよ」は、ただ桜の表面的な美しさだけではなく、桜が持つ妖しさや狂おしさ、儚さが見事なまでに表現されているところが実に久石譲らしいし、続く「彷徨」は本人がニヤリと笑いながら原点回帰をしているようなところにある種の凄みすら感じられる。

でも、それが久石譲というアーティストの唯一無二なところだろう。例えば「ポップスの分野に入ったけれど、音楽の可能性を追求する精神は前衛音楽と同じ。常に新たな音楽につながるものをと考えながら作曲している」という言葉ひとつとっても、久石譲がかつて”ニューエイジ・ミュージック”という言葉つきで紹介され、ちょっと耳ざわりのいい音楽を聴かせたものの気がついたら姿を消してしまったような人たちとは全く違うレベルのところに存在していることがわかるだろうし、しばらく前に久々に久石譲本人と会話を交わした時に、僕は彼がアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンときて、日本の久石譲というような関係性をみてとったのである。

そして、この『THE BEST COLLECTION』を聴いて、それを確信した。また、こうして自分自身の音楽作品をきちんと整理し、世に送り出していこうという姿勢に心からの拍手を贈りたい。映画音楽から自身のソロ・アルバム、さまざまなアプローチによるコンサート活動、はたまたイベント・プロデュースに至るまで、久石譲の旺盛なまでの創作意欲は全くとどまるところを知らないが、「ピアノは、僕にとってはとても大事な楽器。以前は作曲の道具でしたが、コンサートを行うようになって、表現の道具にもなりました。ピアノとの対話が、自分の別の可能性を引き出してくれる。作曲においては極めて理性的である自分がピアノを通してメンタルな面で人に訴えかけることができる」と語る純粋さが僕はまた好きだ。

立川直樹

(CDライナーノーツより)

 

 

誰もが耳にしたことのある、久石譲の旋律が集約されてはいるが、同レーベルから発表された8枚のアルバムの中からセレクトという趣向のため、オールタイムベストではない。

1980年代後半~1990年代前半の廃盤作品を自身レーベルより再発売した作品から、そして2000年以降の作品からという構成になっている。そういった意味では時代や流行を超えた色褪せることのない、音楽の旅。

それでも、(2)はアニメ「アリオン」からの美しい叙情的なピアノ曲だし、(3)~(7)は北野武監督作品や大林宣彦監督作品から、(9)~(10)は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」より、コンサートライブ音源から、(14)は1994年CD作品「地上の楽園」に収録されていた同曲を、麻衣のヴォーカルによって新しくリメイク、本作だけに収録された楽曲となっている。

 

以下のオリジナル収録作品のリストもご参考。

 

「Piano Stories」(1988年) ・・ (1) (2)
「あの夏、いちばん静かな海」(1991年) ・・ (3) (4)
「ふたり」(1991年) ・・ (5) (6)
「はるか、ノスタルジィ」(1993年) ・・ (7)
「PRETENDER」(1989年) ・・ (8)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」(2002年) ・・ (9) (10)
「Arcant / 近藤浩志」(2003年) ・・ (11)
「Winter Garden / 鈴木理恵子」(2006年) ・・ (12)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」(2005年) ・・ (13)
※本作品初収録 ・・ (14)
「風の盆」(2002年) ・・ (15) (16)

 

 

 

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

1.A Summer’s Day
2.Resphoina
3.Silent Love
4.Clifside Waltz
5.風の時間
6.少女のままで
7.出会い ~追憶のX.T.C.~
8.VIEW OF SILENCE
9.あの夏へ
10.6番目の駅
11.風の伝説 「風の谷のナウシカ」組曲 (改訂版)から
12.For You
13.Fragile Dream
14.さくらが咲いたよ Vocal:麻衣
15.彷徨
16.風の盆

 

Disc. 久石譲 『A Chinese Tall Story 情癲大聖 Original Film Soundtrack』

久石譲 『chinese tall story』

2005年12月20日 CD+iVCD発売 CGM0169 ※輸入盤のみ

 

2006年香港公開 映画「情癲大聖」
(英題:A Chinese Tall Story 邦題:西遊記リローデッド)
監督:Jeff Lau Chun Wai ジェフ・ラウ 音楽:久石譲

 

 

西遊記を題材にしたSFファンタジー。音楽的にもアジアンテイストあり、ハリウッド映画を彷彿とさせるダイナミックさ、とりわけハリー・ポッターの世界観を思わせるファンタジーさなどバラエティーに富んだ内容になっている。

それは編成やアレンジにも現れていて、フルオーケストラ、シンセサイザー、民族楽器など多数混在するなか、うまく融合した独特な異次元、SFファンタジーの世界へ連れて行ってくれる。

主題歌(1)は、アジアの響きのするメロディアスな旋律。デュエットにより歌われ、民族楽器も絡みあう壮大な世界観を演出している。その主題歌でもありメインテーマをモチーフとしたものは、(6) (7) (11) (18) (20) などでも聴くことができる。美しい旋律をピアノや胡弓が悠々と奏でている。

 

日本では映画「西遊記リローデッド」として、DVDなどで鑑賞することができる。

 

また、主題歌/メインテーマ曲は、オリジナル・ソロアルバム「Asian X.T.C.」にて「A Chinese Tall Story」として収録。サウンドトラック用とは別に、原曲の持ち味をそのままに、ピアノと二胡、そしてストリングが叙情的に流れる、完成された1曲として聴くことができる。

 

 

 

久石譲 『chinese tall story』

1.情聖 Sacred Love – 謝霆鋒/ 蔡卓妍 (情癲大聖主題曲)
2.佛光初現 Prologue / The Triumphant Entrance
3.妖夜 Dogfight Over Shache
4.奪命煩音 Words Are Lethal
5.天王有難 Rout Of The Four Heavenly Knights
6.你跳我跳/ 愛情笨豬跳 Lover’s Gambit
7.“等” Longing For You
8.在下唐三藏 Yours Truly, Tripitaka
9.大陰謀 The Conspiracy
10.棄明投暗 Capitulation
11.雪中送外 Twirling Snow
12.君臨天下 Alien Invasion
13.美-艷 I Can Fly!
14.戰役愛你萬年 Help is On The Way
15.世界的終末 Annihilation of The Tree Spirit
16.秘密 The Princess’s Secret
17.再鬧大宮 Storming of The Celestial Court
18.我知道I Know
19.回頭是岸 Divine Manifestation
20.無限的愛 A Journey West

iVCD
1. 唐僧取情经
2. 莎车城大影院 (I)情圣 MV (II)爱 MV (III)情癫大圣 制作特辑 (IV)情癫大圣 剧场版第一版预告片 (V)情癫大圣 剧场版第二版预告片
3. 一切从癫开始
4. 造妖者
5. 免费唐僧肉尽情下载
6. 唐僧棒打妖精游戏
7. 西域圣诞 e Card

Music Composed and Produced by Joe Hisaishi

Piano:Joe Hisaishi

Performed by The China Philharmonic Orchestra
Conducted by Joe Hisaishi

二胡 Er-hu:Chen Jun
Kena:Takashi Asahi

Recorded at 北京電影廠録音室(中国), Wonder Station(日本)

 

Disc. 久石譲 『男たちの大和/YAMATO サウンドトラック』

久石譲 『男たちの大和 オリジナル・サウンドトラック』

2005年12月14日 CD発売 FLCF-4088

 

2005年公開 映画「男たちの大和/YAMATO」
監督:佐藤純彌 音楽:久石譲 出演:反町隆史 渡哲也 他

 

“勇敢”と“悲壮”の二つの雰囲気に魅了

 

 

PRODUCTION NOTE

精力的に画と音と対峙し続け、今や日本映画音楽界のみならず国際的にも活躍している巨匠・久石譲。実は彼、若き日に映画音楽の大家である故・佐藤勝の恩恵を受けており、かつて『陸軍残虐物語』や『敦煌』など何本も佐藤勝と共に名作を連打してきた佐藤純彌監督の感慨もひとしおであった。

本作の音楽を作曲するにあたり、久石は「大和」「青春」「戦闘」「レクイエム」「癒し」そして「再生」といった6つの大きなモチーフを構築し、シーンに応じてそれらを巧みに使い分けながら1曲1曲を奏で上げ、作品に多大な成果をもたらしている。それぞれが明確なメロディと繊細な音色に気を配った素晴らしい楽曲ばかり。また悲劇が連鎖していくストーリー性にも関わらず、すべての画と音を堪能した後の印象は、涙を流した後のさわやかさにも似てどこか明るく晴れやかである。それは未来への希望を示唆する作品の意図を十分汲みとった、久石譲の映画音楽作曲家としての卓抜したセンスも当然挙げられるが、同時に彼が生来持ち得ている音楽的純粋性と、劇中の特年兵たちが醸し出す純粋性とが気持ちよく呼応しているからでもあろう。ラストを壮麗に刻印する「再生」のモチーフ曲は、デモテープを聴いた角川春樹プロデューサーから「もうひといき粘ってみないか」との要望に久石が熱く応え、全く新しい発想で作り上げた渾身の仕上がりともなった。録音は2005年10月3、4日、かつしかシンフォニーヒルズにて、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団およそ80名に、コーラスの栗友会60名という大編成。そこで、初めてオーケストラで奏でられた新たな「再生」に接した角川プロデューサーは、涙を拭う暇もないまま久石のもとへ駆け寄り、堅い握手を交わしたのであった。それを見守る佐藤監督の表情も実に満足げだ。その後も久石は、佐藤監督と0.1秒レヴェルの音と画の細かい打ち合わせを終始和やかに行いつつ、録音を続けていく。

自ら指揮台に立って棒を振る久石は、演奏が終わるためび自分の曲を具現化してくれるオーケストラの面々に感謝の意を表することを忘れない。「ありがとう」「素晴らしい」「最高!」それらの言葉を発する久石の子供のような笑顔は、音楽に対する純粋性を巧みに物語っている。そしてその純粋性こそは『男たちの大和/YAMATO』にふさわしいものでもあるのだ。

(映画「男たちの大和/YAMATO」劇場用パンフレット より)
(CDライナーノーツ より)

 

以上、ふたつの資料より重複箇所などを再構成している

 

 

 

久石譲 『男たちの大和 オリジナル・サウンドトラック』

1.YAMATO 唄:長渕剛
2.大和の海
3.男たちの大和
4.光る海
5.兵士のエチュード
6.青春の碑(いしぶみ)
7.海の墓標
8.沈みゆく太陽
9.生きる覚悟と死ぬ覚悟
10.英霊たちの旅立ち
11.愛の無常
12.花の降る午後
13.名残りの雪
14.女たちの大和
15.特攻の海
16.惜別の賦
17.男たちの挽歌
18.帰らざる海
19.青春の巡礼
20.明日に生きる
21.大和よ永遠に
22.CLOSE YOUR EYES 唄:長渕剛

 

All Score Composed, Arranged and Conducted by Joe Hisaishi

Performed by The Tokyo Philharmonic Orchestra / Ritsuyukai

Produced by Ko Ishikawa
A&R: Isao Okada (FLME)
Recorded & Mixed by Suminobu Hamada
Assistant Engineers: Hiroyuki Akita, Tomotaka Saka & Akihiro Tabuchi
Co-operatred by Octavia Record, SCI, Psy Corporation & Hibino
Recorded at Katsushika Symphony Hills & Wonder Station
Mastering Engineer: Hiroyuki Hosaka
Jacket Design: Daisuke Suzuki

Special Thanks Toei Company, OFFICE REN, Tatsuya Masutou & Wonder Staff

M1
Lyrics, Composition, Arrangement: Tsuyoshi Nagabuchi

M22
Lyrics, Composition, Arrangement: Tsuyoshi Nagabuchi Strings Arrange: Ichizo Seo