Overtone.第34回 久石譲ベストアルバム「Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi」を聴く

Posted on 2020/08/13

ふらいすとーんです。

久石譲ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』が2020年2月に世界同日リリースされました。初めての世界共通盤、さらにストリーミングリリース、新たにミュージックビデオ公開など、これまでの活動集大成のような永久保存盤です。そして、ここからまた次の世界発信に向けて動き出す予感すら、記念すべき一枚です。

 

久しぶりに一曲一曲ゆっくり聴きました。ファンにとっても節目のような心持ちで、初めて聴いたときのあの感動や、懐かしさ、新しく抱く感情もあったりしながら、久石譲音楽と共に歩んできた時間に思い馳せる、そんなベスト盤です。

コンサートでプログラムされるときを除いて、昔の曲について振り返ること、今感じること、今記すこと。いい機会だと思って、このベスト発売当時ツイッターに一曲ごとコメントしていきました。今回はそれをまとめたものです。一般的な楽曲解説にはなっていないので、ぜひオリジナル盤やベスト盤のライナーノーツなどで、詳しくは紐解いてもらえたらなと思います。

 

いちファンが語るその曲のこと(魅力・思い出・解説)です。あなたが思うその曲のこと(魅力・思い出・解説)と少しでも共感することがあったならうれしいです。ツイートしたそのままをご紹介します。

 

久石譲の約40年間の名曲たち。

久石譲と歩んできたファンも40年・30年・20年・10年。

これから歩みはじめるファン。

ぐるぐる螺旋のように上昇気流にのって。

それは広がり、膨らみ、溢れ、つながり。

このベストアルバムは ” for ALL FANS”。

 

全体

DISC1はオーケストラを中心に、DISC2はピアノやアンサンブルを中心にまとめられています。宮崎駿監督・北野武監督の映画作品を軸にTV・CM音楽まで。ちゃんと聴いてみようかな、そんな人には涙モノです。オリジナル盤より音質も向上しているのでオススメ満点な永久保存盤!

往年ファンのみなさま。新鮮味はありません。でも音質は向上しております。さて、僕はこう思います。レコード会社の都合や予算からではない、世界リリースという大きな意味のある一枚です。応援してきたその人は、そういう人になったんだ。そんな証ですね。受け取りましょう。

オリジナル盤とゆっくり聴きくらべ。ファンにとっても節目のような心もち。『Melodyphony』からの曲は、より音がくっきりになった印象です。全曲ボリュームレベルきれいに統一コントロール、とおして聴いてもまったく古い新しい凹凸は感じない。1988-2016リリースCDから。

たとえば、”The Wind of Life”はオリジナル盤でレベル超えて音割れしてる箇所あるけれど(3:17-,4:00-)、『Piano Stories Best』でそこはキレイになっていて、もちろんベスト盤でもキレイな音質を引き継いでいます。CD盤愛聴、Apple音質やハイレゾ音源は未開拓です。

 

DISC 1

One Summer’s Day
淡い曲だと思った。でもそこに秘められたもの、奥ゆかしさ。時間とともに輝きをましていった曲。ハープ、グロッケン、弦トレモノの舞う光を反射したような音像(2:16-)も、よりくっきりきらめいている。

Kiki’s Delivery Service
おしゃれにドレスアップしたキキがまぶしい。ヴァイオリン・ソロやチェロ・ソロ、一歩前に出たように輪郭がさらに浮き立ち(3:19-)かけあう立体的空間がのびやかに広がっている。

Summer
日本の夏。夏休み。なつかしい夏。戻れない夏。楽しみな夏。この曲には聴いた人の数だけの”わたしの夏”がある。イントロからのピッチカートはこじんまりとかたまらず、高低豊かな弦たちでふくらみ(-1:07)、木管楽器たちの戯れ(3:14-)もみずみずしい。

il porco rosso
ジブリコンサート(世界ツアー中)をベースにストリングスを加えた短縮版。『Melody Blvd.』のサックス版もいい、『PIANO STORIES III』のフリューゲルホルン版もいい、コンサートでしか聴けない久石譲ピアノソロ版もいい。カッコイイとは、こういうことさ!

Madness
この曲を聴きにコンサートを楽しみにしていた時代がある。ソロ作品から提供するかたちとなったこの曲。スタジオジブリ作品に、久石譲の作家性が色濃く反映されるという巡りあわせ。それは、長いジブリ史のなかで大きな価値をもってくると思う。

Water Traveller
大きなメロディ、独特なハーモニーの流れ、咆哮する金管楽器、大きな水しぶきのようなシンバルやドラ。この曲を気に入って類型を見つけようと思ってもなかなか探せない。もし映画のためじゃなかったら、きっと壮大な序曲として絶対的ポジションにある曲。

Oriental Wind
口あたりがいいだけじゃのこらない。消えていくCM音楽はたくさんある。ふと手のとまる印象的なメロディに、現代的アプローチを盛りこみアート性を高めた音楽作品になっているからこそ、今でものこっている曲。○鷹じゃなくて伊右衛門です。

Silent Love
寄せては返す波と、短いサインの紡ぐ以心伝心。唯一、サントラからのオリジナル収録。『WORKS・I』にも壮大なフルオケ版はあるけれど、今ならまたちがったオーケストラ版や室内楽版を聴かせてくれそうな、そんな期待をしてしまう曲。

Departures
チェロの音域は人の声に近いという。チェロが歌っている、語っている。人が歌うように語るように。いや、言葉にならないこと想いをチェロが代弁しているのかもしれない。おくる人おくられる人の魂のふるえ。胸をつくものがある。

ハープ、マリンバなどの打楽器たちの隠し味がすごく効いているさまがよくわかる。ベスト盤を聴いて新鮮な感動だった。この曲だけじゃなく『メロディフォニー』から収録された曲たちは、ほんとみずみずしい鮮度あがっている。音質向上に感謝です。

“PRINCESS MONONOKE” Suite
久石譲が日本人作曲家であることに、そして同じ日本人であることに、喜びと誇り胸抱くのは、”Summer”よりも”Oriental Wind”よりも、この『もののけ姫』の音楽かもしれない。そこにはたしかなDNAの受け継がれがある。むしだしのドメスティック。

The Procession of Celestial Beings
高畑勲×久石譲のタッグでしか生まれなかった曲。監督からのオーダーを見事に結晶してみせた曲。竹取物語のひとつの答えがここにある。ふたりの作品コラボレーションがひとつだけでもあるかないか、あるという歴史的足跡は大きいと思う。

My Neighbour TOTORO
このオーケストラ版は誕生したときから完璧だった。オーケストラの魅力、ピアノの魅力、トトロの魅力、とびきり溢れてる。もっとこうしたほうが、そんな必要のない、誕生したときのまま。それから約20年。驚異的。

ずっと気になってたけど。ベストアルバムを公式見解とするなら、曲名のときは”Neighbour”(イギリス英語)になってて、作品名のときは”Neighbor”(アメリカ英語)になってる。でもまだ、コンサートプログラムとかごっちゃになってるの多い。その心は?

 

DISC 2

Ballade
こんな演奏を聴かせてくれるバーがあったなら。現実から隠れた光をおさえた空間と、お酒でゆっくりきれいに洗い流してくれる時間。そして少しタフになって、少しやさしくなってお店を出ていく。不純物だらけの日常を濾過するとき。

KIDS RETURN
サントラのシンセサイザー版は覚醒させる。フルオーケストラ版は解放させる。このアンサンブル版は青春の鋭利さやトゲをえぐってくる。挑発的に、痛々しいほどまっすぐに。表情もコロコロ変わる。そしてどのバージョンにも清々しい疾走感がある。

Asian Dream Song
歌曲版サビのないこちら原型。羽生結弦選手のおかげで新たな生命とファンを獲得した幸福な曲。そのスポーツとこの曲に共通するのは、芯の強さと芸術性の高み。いつまでも輝きを失わない。”View of Silence”も収録してほしかったですね。

羽生結弦選手「Hope&Legacy」”View of Silence”。『PRETENDER』CD収録曲ですが、2001年福島「うつくしま未来博」上映作品『4 MOVEMENT』(監督:久石譲)でも使われた曲。この曲には東日本大震災、東北への想いが込めれているのかも。”Asian Dream Song”はスケート始めた頃と夢。象徴的な2曲にのせて。

Birthday
名は体を表す。曲名がそうだから誕生日をイメージさせるのか。純粋無垢なメロディの調べがほわほわ温かさをイメージさせるのか。生まれてきた命への、そして幾度巡ってくる誕生記念日への祝福の曲。スイートな曲。

Innocent
いろいろなCDに、いろいろなバージョンで、いろいろな曲名で収録されている「君をのせて」。器楽版は”Innocent”、歌曲版は”Carrying You”となっているのも象徴的。数ある久石メロディのひとつのタイプ、初期からの原石、イノセントなメロディ。

Fantasia
シンプルなピアノ版を聴いても、そのスケールの大きさは伝わる。限られたハーモニーで紡ぐ壮大なメロディは、絵画的でもあり宇宙的でもある。これがアニメーション映画につけられた音楽か、過去・現在・近未来、時間をのみこむ旋律。ここからすべてがはじまった。

「風の伝説」をベースとしながらも、「遠い日々」もモチーフ(3:40-)や「ナウシカ・レクイエム」からも(4:30-)織りこまれたピアノ幻想曲。”Symphonic Poem NAUSICAA 2015″ [The End of the World収録]の4:00-,7:00-などで登場しています。

HANA-BI
HANA-BIとは生と死。刹那にエモーショナルにピアノは語る。すごく離れたものでもなく、隣り合わせでもなく、ひとつの表裏かもしれない。光と影。メロディをささえる重い低音が、生と死のたしかな存在感に胸を燃やす。咲くこと、散ること。

The Wind Forest
現代人が感じる日本の原風景。体験してきたこと、童心、ぬくもりのある光景。ふしぎと古さを感じさせない、昭和・平成・令和、世代を超えてつながる珠玉のメロディ。

Angel Springs
The Wind of Life
『Piano Stories II』は一緒に過ごした時間の一番長いアルバムかもしれない。毎日、365日。少しだけでも曲がらずに育ってこれたなら、感謝しなくちゃ。そういう一枚があるだけで、思い出は甘く切なくいつでも輝く。

Nostalgia
十代にもノスタルジーはある。年代ごとにその質感は変わっていく。昔の記憶で心と体を温める。郷愁たっぷり、ひたりたいときだってある。夕陽のようなぬくもりは、明日への熱源になっていく。

Spring
Summerの姉妹曲。それはタイトルだけじゃない。[ラレミファ(ミーレレー)]の”Summer”と、[ラファソラ(ミーレレー)]の”Spring”。ニ長調の同じモチーフから変奏された姉妹曲。軽やかで爽やかなふたつ。AutumnやWinterは?と待ちこがれた時代がなつかしい。

Ashitaka and San
エバーグリーンな曲。防ぎたかった破壊がある。防げなかった破壊がある。そこから学んだこともある。でも、失われたものの大きさを忘れてはいけない。どんな状況でも鎮魂の祈りを、どんな状況でも希望の願いを。そこからしかほんとうの再生はうまれない。

『銀河鉄道の夜』親和性のある楽曲ひとつ。宮沢賢治に造詣の深い宮崎駿・高畑勲 両監督。先に完成されたその曲を聴いて、とても気に入ったんじゃないかな、同じ空気感や雰囲気でとお願いしたんじゃないかな。真実はわからない。ひとつの空想です。

Ponyo on the Cliff by the Sea
すべての楽器が音をはじいて弾く、音符の粒たちがぷちぷちかわいく跳ねあう。ベストアルバムを聴きながら、ハッとよぎった。「あら、わたし達はもともと泡から生まれたのよ。」グランマンマーレの台詞。音の粒、泡、生命。

Cinema Nostalgia
古きよき映画の時代。それはサイレント映画か、白黒映画か、映写機まわすおじさんのいた時代か。僕らにはわからない。けれど、音楽が運んでくれる佇まい・味わい・香りは、あの時代を感じることができる。心のフィルムに焼きつける。

Merry-Go-Round
回転木馬のアップダウンと、長調と短調の交互する旋律。人生山あり谷あり、一喜一憂。メリーゴーランドから眺める景色は、まるで自分が世界の中心のように廻る廻る。踊るワルツ。宮崎駿監督が命名した”人生のメリーゴランド” タイトルもすごい!曲もすごい!

 

 

DISC 1
1. One Summer’s Day 映画『千と千尋の神隠し』より
2. Kiki’s Delivery Service 映画『魔女の宅急便』より
3. Summer 映画『菊次郎の夏』より
4. il porco rosso 映画『紅の豚』より
5. Madness 映画『紅の豚』より
6. Water Traveller 映画『水の旅人 侍KIDS』より
7. Oriental Wind サントリー緑茶『伊右衛門』CMソング
8. Silent Love 映画『あの夏、いちばん静かな海。』より
9. Departures 映画『おくりびと』より
10. “PRINCESS MONONOKE” Suite 映画『もののけ姫』より
11. The Procession of Celestial Beings 映画『かぐや姫の物語』より
12. My Neighbour TOTORO 映画『となりのトトロ』より

DISC 2
1. Ballade 映画『BROTHER』より
2. KIDS RETURN 映画『KIDS RETURN』より
3. Asian Dream Song 1998年「長野冬季パラリンピック」テーマソング
4. Birthday
5. Innocent 映画『天空の城ラピュタ』より
6. Fantasia (for Nausicaä)  映画『風の谷のナウシカ』より
7. HANA-BI 映画『HANA-BI』より
8. The Wind Forest  映画『となりのトトロ』より
9. Angel Springs サントリー「山崎」CMソング
10. Nostalgia サントリー「山崎」CMソング
11. Spring ベネッセコーポレーション「進研ゼミ」CMソング
12. The Wind of Life
13. Ashitaka and San 映画『もののけ姫』より
14. Ponyo on the Cliff by the Sea 映画『崖の上のポニョ』より
15. Cinema Nostalgia 日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニング・テーマ曲
16. Merry-Go-Round 映画『ハウルの動く城』より

 

 

 

 

そして、久石譲ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』発売とともに、新たに制作され公開されたMusic Videoたち。

 

Joe Hisaishi – One Summer’s Day

 

Joe Hisaishi – Summer

 

Joe Hisaishi – Nostalgia

 

Joe Hisaishi – My Neighbour TOTORO

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

オリジナル・リリース

DISC 1
Track.1,2,3,6,7,9,12
Disc. 久石譲 『Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜』

Track.4,5
Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『The End of the World』

Track.8
Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

Track.10
Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『真夏の夜の悪夢』

Track.11
Disc. 久石譲 『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』 *抜粋

DISC2
Track.1,7,13
Disc. 久石譲 『ENCORE』

Track.2
Disc. 久石譲 『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』

Track.3,9,12
Disc. 久石譲 『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』

Track.4,11,16
Disc. 久石譲 『FREEDOM PIANO STORIES 4』

Track.5,6,8
Disc. 久石譲 『Piano Stories』

Track.10,15
Disc. 久石譲 『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』

Track.14
Disc. 久石譲 『Another Piano Stories ~The End of the World~』

 

Also included in
DISC2 Track.5,6,8,9,12,15
Disc. 久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

DISC1 Track.1,2,12 & DISC2 Track. 6,8,13,14
Disc. 久石譲 『Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ』

 

 

 

世界盤をベースに、デザイン・円盤・英文ブックレットすべて共通です。国内盤は対訳ライナーノーツが封入されています。洋楽アーティストの日本盤に追加でブックレットが入っているのと同じ、世界仕様です。各国盤にも対訳がついてくるんだと思います。

サブスク解禁で久石譲音楽が手軽に聴けるようになりました。海外ファンも公式音源を迷うことなく探せて聴けるようになりました。海外コンサート会場でも文句なしにおすすめできる、ワールドワイド・ベスト。これは総決算・到達点ではなく、新しいはじまりの第一歩です、たぶん。

それではまた。

 

reverb.
次の世界リリースはオリジナルアルバムか、第二弾ベストアルバムか♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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