Posted on 2021/08/17
ふらいすとーんです。
久石譲人気を揺るぎないものにしたシリーズ、時代ごとにファンをぎゅっとつかんできたシリーズ、「ピアノ・ストーリーズ」です。
ピアノ・ストーリーズとは
映画・TV・CMのために書かれた音楽を、独立した音楽作品として書き直した楽曲が数多く収録されています。アルバムにはオリジナル楽曲も配置されています。エンタメ楽曲とオリジナル楽曲でテーマをコンセプチュアルにまとめたもの。その時代の指向性を色濃く反映した音楽制作になっています。ピアノを基調として、アルバム・コンセプトに即してリアレンジされることで、一枚とおして聴ける統一感と、人気曲も新しい魅力で聴かせてくれます。
メロディ親しみやすい楽曲も、クラシックから現代音楽までの語法によって精緻に構成されています。エンターテインメントな衣装をまといながら、そこには時代や流行に左右されないアート性が宿っています。まさに色褪せることのない洗練された響き。久石譲の大衆性と芸術性を絶妙にブレンド、気品のあるアコースティックな音楽作品へと昇華させたもの。それが「ピアノ・ストーリーズ」です。
久石譲コンサート活動と連動することも多く、過去にはアルバム引き下げてのコンサート・ツアーや、あるいはコンサートの楽器編成そのままにアルバム制作を並行して完成させた盤もあります。おのずと収録された楽曲たちは、演奏会用作品としてもしっかりと成立している。アルバムとコンサート、久石譲のライフワークであり、その時代ごとのマイルストーンや区切りの役割も果たしてきました。そして、忘れてはいけないこと。「ピアノ・ストーリーズ」人気とともに、ピアニスト久石譲の魅力もたっぷり届けてきた、大切なシリーズです。
数々の映画音楽をピアノソロ用にアレンジしたアルバム。シリーズ第1作であり代表作。シンセサイザー仕事の多かった当時、原点に戻りたいとシンプルな表現を目指したという。「Fantasia (for Nausicaä) 」「Innocent」「The Wind Forest」ほか収録。
ピアノとストリングス。映画・TV・CM音楽からはもちろん、珠玉のオリジナル曲たちで彩るアルバム。「Asian Dream Song」「Angel Springs」「Kids Return」ほか収録。
イタリア的な”唄”をコンセプトに、映画・TV・CM音楽からオリジナル曲・カバー曲まで。イタリアで現地オーケストラとレコーディングするほどこだわった、エスプリ香るアルバム。「il porco rosso」「HANA-BI」「Cinema Nostalgia」ほか収録。
ピアノとストリングスをメインに、映画音楽・TV・CM音楽が数多く収録されたアルバム。親しみやすいタイアップ曲とは対照的なオリジナル曲の内省性が”自由”に奥ゆきと深みを。「人生のメリーゴーランド 」「Oriental Wind」「Spring」ほか収録。
シリーズ4枚から久石譲自らセレクトしたベスト・アルバム。新しいファンのための入門編にもなるうれしい一枚は、宮崎駿監督作品から北野武監督はもちろんCM曲まで。「人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-」未発表音源も収録。
ピアノと12人のチェロにパーカッションらを加えた斬新な楽器編成によるアルバム。エンターテインメント音楽はもちろん作家性の色濃い自作品まで。シリーズのなかでもポップスとクラシックの二面性が拮抗した、独自性を放つ”Anoter”なアルバム。「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Departures」「The End of the World」ほか収録。
more!
2020年ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』に収録された曲も多いです。世代ごとに大きな螺旋を描いてきた久石譲ファン、また新たなファンを獲得するメモリアルな一枚になる愛蔵版です。
代表曲はもちろん久石譲のキャリアを一望できる2020ベスト盤は、待望の世界リリースでCD盤・デジタル配信・ストリーミングまで、さらに広がっています。ベスト盤を起点にして過去「ピアノ・ストーリーズ」シリーズを一枚ずつめくっていく、そんな逆スパイラルな楽しみ方も、これからはそっちが主流になっていくでしょう。
2016年頃から、久石譲作品をメインとしたコンサートのときに、「ピアノ&ストリングス」コーナーがプログラムに挙がることがでてきました。1990-2000年代の久石譲アンサンブルコンサートやピアノソロコンサートに足を運んできたファンには懐かしい、またオーケストラを指揮する姿しか見たことのないファンには新鮮な、美しい旋律と響きに心酔するコーナーです。
新しいピアノ・ストーリーズのかたち
- 弾き振りの一体感
- 新しいオーケストレーション
- ピアノの円熟味
これまでのピアノ・ストーリーズとの変化を、大きく3つに分けて進めていきます。名曲たちが時を越えてコンサート演奏される、そんな喜び満ちた面もありますが、今だからこそ聴ける新しさもいっぱいに届けてくれています。
どんな曲が演奏されてきた?
” ”で囲んだ久石譲コメントとともに。
【Hope】for Piano and Strings
View of Silence
Two of Us
Asian Dream Song
“また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)に初挑戦します。そのためこのコーナーはすべて新しくオーケストレーションし直しました。”
“その弾き振りの「HOPE」というコーナータイトルは長野パラリンピックのときに作った応援アルバムのタイトルからとりました。折しもフィギュアスケートの羽生結弦さんが今年の演目で採用している楽曲が2曲含まれます、お楽しみに。”
(Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016」 コンサート・レポート より抜粋)
【mládí】for Piano and Strings
Summer
HANA-BI
Kids Return
“また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)もおこないます。これは昨年の大阪ジルベスターコンサートで初めて実践し、今年もチェコのプラハ等で好評だったのでW.D.O.としても初めて試みます。ちなみに今までは指揮の合間にピアノを弾いていたのですが今回はピアノの合間に指揮をする? ややこしいですね、その違いをぜひご覧ください。”
“弾き振りの「HOPE」はフィギュアスケートの羽生結弦さんが昨シーズンの演目で採用していた楽曲が2曲含まれています。また「mládí」は北野武監督映画に作った楽曲を構成したものです。チェコ語で青春という意味でヤナーチェクにも同名のタイトル曲があります。”
(Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート より抜粋)
*【mládí】初演:2017年4月プラハコンサート「THE WORLD OF JOE HISAISHI」
The Path of the Wind 2018
(映画『となりのトトロ』より「風のとおり道」、ピアノ&ストリングス版の新たなオーケストレーションで演奏されました。同年夏NHK「ジブリのうた」でピアノ&ヴァイオリン版も初披露され歓喜しました。デュオ版と同じ楽曲構成にストリングスが極上に包みこむ芸術的な響きになっています。)
Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」 コンサート・レポート 参照
Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」BS日テレTV放送 レビュー 参照
[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings
Woman
Ponyo on the Cliff by the Sea
Les Aventuriers
“ここ数年挑んでいるピアノと弦楽オーケストラの形です。指揮者としてオーケストラと対峙する関係と違い、演奏者として一体感が高く、とても好きなスタイルです。一方、指揮者もやらなければならないので、とてもハードなスタイルでもあります。作曲家の久石譲さんは演奏家にとても厳しいので、ピアニストとしてはいつも大変です(笑)。
今回はハープともう一台のピアノ、パーカッションを入れました。「Woman」「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Les Aventuriers」の3曲とも「Another Piano Stories」というアルバムに入っていた曲です。12人のチェロとピアノ、ハープとパーカッションという特殊な編成のバージョンをベースにしながら、今回のツアーのために書き直ししました。”
(Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート より抜粋)
コンサートで披露した楽曲の多くは、過去「ピアノ・ストーリーズ」シリーズにも収録されています。楽曲構成(パート・時間)の大枠は変わない。けれども、すべての曲でピアノ&ストリングスのための新たなオーケストレーションが施されています。CD収録の原曲はどんな楽器編成なのか、どのあたりが違うのか、細かいことは各コンサート・レポートに記しています。興味あったら、ぜひ見てみてください。
弾き振りの一体感
久石譲コメントにもあったので、雰囲気は伝わるでしょうか。指揮者と演奏者をかねたプレイングマネージャーのポジションで、ぐいぐい全体をリードしていきます。時に身振り手振りでオーケストラを導き、ピアノ演奏中は目配せでお互いの呼吸をつかみあう。ピアノと弦楽器が融合し溶けあうことで生まれる一体感、それはコミュニケーションだけでなく演奏にもたしかに現れています。直球で言うと、より久石譲ピアノの表現に近づいたオーケストラ、久石譲ストリングスのような感覚のもの、”弾き振り”にはそれがあります。
新しいオーケストレーション
ピアノとストリングス。ストリングスとは、フルオーケストラ(管弦楽)から管楽器のいない弦楽オーケストラです。カラフルさは劣るはずなのに、楽曲ごとに色彩豊かに表情豊かに多種多彩な世界観を演出してくれています。弦のリズムの刻み方、ヴァイオリン・ソロ、主旋律から伴奏音型まで入れ替わり立ち替わる高低弦楽器たち。さらに、曲によっては、久石譲ミニマル・エッセンスに欠かせないマリンバやハープなどの打楽器群も色を添えている。こういった特殊な楽器編成だけをみても、古典クラシックにはないポップスにもない、先鋭的な現代作曲家久石譲が浮かび上がってきます。
やっぱり大きいのは、クラシックから現代音楽まで熟知している、モダンなオーケストレーションとアプローチでしょうか。対旋律やハーモニーが生みだす複雑な響き、不協和音すらも心地よい現代的な響きです。アップテンポからスローテンポまで、いかなる曲も決して失われることのない呼吸する現代的リズム。いかんなく発揮するソリッドなアプローチと、弾き振りによって緩急自在なピアノ&ストリングスの表現は、今の久石譲だからこそです。
久石メロディに、モダンなハーモニーとリズムでアップトゥデートです。セレクトされた楽曲たちは、メロディを強く打ち出したもの、メロディにこだわったもの、メロディを歌わせるものが並んでいます。そこへ施された新しいオーケストレーションは、エンターテインメント音楽として登場した原曲とは一線を画する、芸術性の息吹が芽生えています。
いま唯一、音源化されている「Woman」「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Les Aventuriers」この3曲だけでも、聴いてもらえたらなんとなく感じてもらえることあると思います(^^)♪
ピアノの円熟味
「ピアノ・ストーリーズ」シリーズを第1作から聴きかえしてみると、久石譲ピアノも変化していると気づくことできます。
久石譲にしか出せないピアノの音ってあるんです。やっぱりいい、としか言いようがないんです。それはテクニックや技術といったものを超えたところにある、魔法の音です。もし仮に目をつぶって聴いていたとしても、久石譲が弾いているピアノだとわかる。あっ、いま久石譲の音が鳴っているなあと。誰でも指tと触れれば鳴るピアノ。それなのに、音を聴いただけで誰が弾いているかわかるピアニストって日本に世界にどのくらいいるだろう? と思ったりします。
論理的に説明しようとすれば、それは作曲家自らによる演奏だから。でもそれだけじゃ到底説明することができないなにかがありますよね。特に、最近の久石さんの手から紡ぎだされるピアノの音色は円熟味を感じます。とてもやわらかい、凛と立った、ピュアで無邪気な、悟ったような慈しみ、優しくて強い、儚く切ない、芯の強さ、ぬくもり、いくつもの裏と表な表現が浮かびます。でもそれが多面的に音をつくっている。ピアニスト久石譲にしか出せない富んだニュアンスがある。熟成されたお酒のように、奥ゆかしい深みでいろいろな味わいを包んでくれます。今だからこそ録音してほしい音、封じ込めてほしい音がそこにはあるんです。
(ピアノの円熟味項は、これまでコンサート・レポートなんかで書き散らかしたものを引っ張りだして加えながら整えました。なんとなく気持ち的なもので…臨場感的なもので…。)
空想は止まらない。
もし、これからもコンサートで「ピアノ&ストリングス」コーナーがつづくなら。新しく選ばれる曲もきっとあるでしょう。北野武監督の初期作品から「Silent Love」「Sonatine」もぜひ聴いてみたいです。フルオーケストラ版はある二楽曲ですが、室内楽の響きもピカイチだろうなあと空想は止まりません。思いつくかぎり、White Night、EVE、太王四神記、おくりびと、この世界の片隅に、イザベラ・バードの日本紀行、海獣の子供、銀河鉄道の夜、遠い街から、、と個人的趣味のオンパレードになっていきます。ああ、この曲あの曲がピアノ&ストリングスのかたちになったらなんて素敵だろう。
人それぞれに、思い描く「ピアノ・ストーリーズ」がきっとありますよね。それは、わたしが・あなたが、久石譲ファンとして歩んできたストーリーそのものであるように。いい音楽は何度でも甦る、いつでも命をふきかえす。思い出と一緒に輝くエバーグリーンな名曲たちも、また新しい思い出を一緒につくってくれるために、装い新たに輝き変えて出会える日がくるかもしれない。
「ピアノ・ストーリーズ」、それは「WORKS」や「ミニマリズム」と同じくらい大切なシリーズだと思っています。新しいピアノ・ストーリーズのかたち。弾き振り、オーケストレーション、ピアノの3つで進めてきました。進化をつづける現代の先鋭性と、深化をつづける久石譲ピアノ。新しい久石譲の物語です。時代ごとに聴いてきた名曲たちが、今の久石譲によって語りはじめられたとき。それは、私たちにとっても、とっておきのマイ・ストーリーになる。そんな未来を楽しみにしています。
新しいピアノ・ストーリーズの候補曲たち(2016-)です。ちょっと売れすぎて困ってしまいそう。ぜひ、アップトゥデートしたものを届けるところまでいってほしい!
……
そう書きすすめていたところの新情報でした。
コンサートから2曲が初音源化されることに!
”日本の巨匠・久石譲が本格的に世界リリース!Deccaリリース第2弾となるベスト作品。海外での認知度も高い映画音楽を中心に、彼の音楽人生を代表する名曲ばかり。北野武映画曲 “Kids Return” “HANA-BI” の新規録音を含む、全28曲。2枚組みアルバム。”
久石譲が語ったこと
”映画のテーマを集めてはいるんですけど、その映画を見た人がああこの音楽はあの映画で見た時が懐かしかったね、と思うために作っているのではなくて、逆に映画で扱われた事を全然無視して、聞いた人が新たにストーリーを再構成するといいますか、新たに架空のサウンド・トラックみたいな感じでとらえて欲しい、ということで『Piano Stories』としたんです。”
”メロディこそが、送り手と聴き手の橋渡しになってくれるんです。どんなに複雑なアレンジの曲でも、しっかりしたメロディがあれば、それは人の心に残る。それはメロディが、時間軸と空間軸上の記憶回路だからなんですね。だから今はしっかりしたメロディを作ることを根本にしています。いいメロディさえあれば、バックがたとえどんなにアバンギャルドであっても許されると思うんです”
(『Piano Stories』CDライナーノーツより 抜粋)
New Piano Stories ~ My Story~
Music by Joe Hisaishi
【Hope】for Piano and Strings
1.View of Silence
2.Two of Us
3.Asian Dream Song
【mládí】for Piano and Strings
4.Summer
5.HANA-BI **初音源化
6.Kids Return **初音源化
7.The Path of the Wind
[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings *CD収録
8.Woman
9.Ponyo on the Cliff by the Sea
10.Les Aventuriers
ほか
……
このかたちで収録してみてバカ売れしてみてほしかった(^^) まだまだ、いろいろなかたちで収録してほしいコンプリートしてほしい希望は捨てていません。珠玉の名曲たちが、こぼれ落ちてしまうことなく、私たちの手元に大切に持っておける宝石箱のなかで、輝きつづけられる日がきますように。
久石譲人気を揺るぎないものにしたシリーズ、時代ごとにファンをぎゅっとつかんできたシリーズ、「ピアノ・ストーリーズ」です。そして、僕らは出口のない魅力へ彷徨する物語の登場人物です。
それではまた。
reverb.
記したい区切りがひとつつきました♪(下書きは春頃でした)
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪
[Hope]의 음원 계획이 잡히면 좋겠네요! 특히 ‘Two of Us’는 평생 잊을 수 없는 연주였습니다!