Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート 【11/10 Update!!】

Posted on 2017/08/23

8月2日から8月16日まで国内5都市と韓国ソウルを廻る「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」コンサートツアー。2014年から2016年までの「鎮魂3部作」テーマが完結し今年は。久石譲による新作書き下ろし初演をふくむAとBふたつのプログラムを引きさげ壮大なスケールで各地を魅了しました。宮崎駿監督作品の楽曲を交響組曲にするプロジェクトは第3弾「交響組曲 天空の城ラピュタ」、さらに「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」も披露するなど、今年のW.D.O.も出し惜しみなしの熱い夏。

 

 

2017.11.10 追記
スカパー!放送後、レビューを追記しました。主に交響組曲「天空の城ラピュタ」の構成についてです。文末に記しています。(BSスカパーは11/11放送です)

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まずは演奏プログラム・アンコールのセットリストから。

 

久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017
Joe Hisaishi & World Dream Orchestra 2017

[公演期間]  
2017/08/02 – 2017/08/16

[公演回数]
7公演
8/2 広島・上野学園ホール A
8/3 大阪・フェスティバルホール A
8/4 神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール B
8/6 福岡・アルモニーサンク北九州ソレイユホール B
8/8 韓国 ソウル・ロッテ コンサートホール B
8/9 韓国 ソウル・ロッテ コンサートホール A
8/16 東京・東京国際フォーラム ホールA A

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ

B オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」ナレーター
養老孟司(解剖学者)(神奈川)
鈴木敏夫(スタジオジブリ・プロデューサー)(福岡)
藤井美菜(女優)(ソウル)

[曲目]
【Program A】 All Music by Joe Hisaishi
TRI-AD for Large Orchestra

ASIAN SYMPHONY
1. Dawn of Asia
2. Hurly-Burly
3. Monkey Forest
4. Absolution
5. Asian Crisis

—-intermission—-

【mládí】for Piano and Strings
Summer
HANA-BI
Kids Return

交響組曲「天空の城ラピュタ」
Original Orchestration by Joe Hisaishi
Orchestration by Chad Cannon

【Program B】 All Music by Joe Hisaishi
TRI-AD for Large Orchestra

Deep Ocean
1. the deep ocean
2. mystic zone
3. trieste
4. radiation
5. evolution
6. accession
7. the origin of life
8. the deep ocean again
9. innumerable stars in the ocean

—-intermission—-

【Hope】for Piano and Strings
View of Silence
Two of Us
Asian Dream Song

オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」

—-encore—-
Dream More (大阪・韓国A・東京)
World Dreams

 

 

さて、個人的な感想はひとまず置いておいて、会場にて販売された公式パンフレットより紐解いていきます。

 

 

W.D.O.の夏がきた

W.D.O.の夏がきました。今年のテーマはエンターテインメントです。2014年から始まった鎮魂3部作が去年の「THE EAST LAND SYMPHONY」をもって完結し(いや、心情としては続いていますが)次は楽しいコンサートにしたいと思ったわけです。

前半はミニマル・ミュージック(僕のライフワークです)をベースにした楽曲ですが楽しめるものを、後半は最近あまり演奏していなかった曲を含めてメロディー中心の楽曲を選びました。

また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)もおこないます。これは昨年の大阪ジルベスターコンサートで初めて実践し、今年もチェコのプラハ等で好評だったのでW.D.O.としても初めて試みます。ちなみに今までは指揮の合間にピアノを弾いていたのですが今回はピアノの合間に指揮をする? ややこしいですね、その違いをぜひご覧ください。以下は各楽曲についての一口コメントです。

A・Bプロ共通の「TRI-AD」は3和音を基本コンセプトにした祝典序曲です。金管楽器のファンファーレは幾十にも重なって微妙なハーモニーを作り出します。とにかく元気な楽曲です。タイトルの「TRI-AD」は3和音という意味です。

「ASIAN SYMPHONY」は2006年におこなったアジアツアーのときに初演した「アジア組曲」をもとに再構成したものです。新たに2017年公開の映画『花戦さ』のために書いた楽曲を加えて、全5楽章からなる約28分の作品になりました。一言でいうと「メロディアスなミニマル」ということになります。作曲時の上昇カーブを描くアジアのエネルギーへの憧れとロマンは、今回のリコンポーズで多少シリアスな現実として生まれ変わりました。その辺りは意図的ではないのですが、リアルな社会とリンクしています。

「Deep Ocean」は同名のNHKドキュメンタリー番組のために書いた曲をコンサート楽曲として加筆、再構成したものです。去年の大阪ジルベスターコンサートで初演しましたが、今年の夏に最終シリーズとしてオンエアーされる楽曲を新たに加えてリニューアルしています。ミニマル特有の長尺ではないので聴きやすいと思いますし、ピアノ2台を使った新しい響きをお楽しみください。

弾き振りの「HOPE」はフィギュアスケートの羽生結弦さんが昨シーズンの演目で採用していた楽曲が2曲含まれています。また「mládí」は北野武監督映画に作った楽曲を構成したものです。チェコ語で青春という意味でヤナーチェクにも同名のタイトル曲があります。

オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」の目玉はナレーターです。僕が最も敬愛する養老孟司先生、ジブリの鈴木敏夫さん、それに若手の藤井美菜さんというなんとも豪華な顔ぶれです。同じ楽曲がナレーターによって別の世界が生まれる。個人的には一番楽しみなコーナーです。

最後に「天空の城ラピュタ」について。先日高畑勲監督と『かぐや姫の物語』の上映前にトークイベントをおこなったのですが、このラピュタについての話題がもっとも長かった。それだけ思い入れがあったわけです。考えてみれば宮崎監督、高畑勲プロデューサーという両巨匠に挟まれてナウシカ、ラピュタを作っていたわけですから、今考えれば恐ろしいことです。

今回すべてのラピュタに関する楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。

以上、長くなりましたが、楽しいコンサートになれば幸いです。そしてコンサート会場を出たあと、満面の笑顔があらんことを。

久石譲

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」コンサート・パンフレット より)

 

 

 

さて、久石譲本人による楽曲解説で充分にコンサートの雰囲気は伝わると思います。補足程度に感想や参考作品、アンコールもまじえてご紹介していきます。いや、とことん長い!はりきっていきましょう。今回はBlog.とOvertone.のはざまのテンションで書き進めていきます。(Blog.は「久石譲、私」、Overtone.は「久石さん、僕」、文章の書き方やくずし方など微々たる線引きがあったりします。)

 

各会場特設販売コーナー、今年は久石譲最新ソロアルバム「ミニマリズム3」とパンフレットのセット販売ということで、いつもCDを手にとらない人も聴くきっかけになったかもしれませんね。ファンのなかには、先にCDを買っていて2枚になっちゃったという人も!?(はい、僕もその一人です)。そんな人は、久石譲音楽を聴いてほしい人にCD1枚プレゼントしてはいかがでしょうか♪

 

 

 

TRI-AD for Large Orchestra 【A / B】
全公演でオープニングを飾った曲です。「トライアド」と読みます。”3和音を基本コンセプトにした祝典序曲”とあるとおりとても華やか幕開けにふさわしい快活な管楽器の咆哮が印象的です。最新CD作品「Minima_Rhythm III ミニマリズム3」にもレコーディング音源初収録されています。演奏しているのは本公演と同じ新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラです。フル・オーケストラの魅力がつまったこの作品は、これから始まるオーケストラ・イントロダクションとしても期待を高める圧巻の響きと臨場感。CDやコンサートで聴けば聴くほど、いろいろな音が新しく顔を出してくるおもしろさ。ぜひいつの日かスコアを眺めながら聴き楽しみたい作品です。読めません、でも耳では聴こえてこなかった楽器やパートを総譜で追いながら耳をすませる。そんな至福の音楽時間です。

「TR-AD」のもう少し詳しい久石譲解説、また2016年長野初演から計4-5回コンサートで聴いてきた立体音空間(音がまわる・音がうねる)、オーケストラ楽器配置(対向配置)の魅力など感想も一緒に下記CD作品ページにて記しています。ぜひ最新の久石譲を感じとってください。

 

 

ASIAN SYMPHONY 【A】
1. Dawn of Asia / 2. Hurly-Burly / 3. Monkey Forest / 4. Absolution / 5. Asian Crisis
2006年初演から長い沈黙をまもってきた大作、ついにその封印が解けた瞬間でした。久石譲解説に「メロディアスなミニマル」とあります。当時の言葉を補足引用すると「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味でも久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的な、わずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捉える旋律を表現できないか…」(「Asian X.T.C.」CDライナーノーツより)、久石譲が現代の作曲家として強い意志をもって創作した作品「アジア組曲」改め「ASIAN SYMPHONY」です。

めまぐるしいアジアの成長と魅惑を時代の風でかたちにした2006年版「アジア組曲」、それはまさに天井知らずのエネルギーの放出であり同時に先進国が辿ってきた発展後にある危機(Crisis)を警鐘したものとなっていました。それから11年、現代社会におけるアジア、世界におけるアジアは、今私たちがそれぞれ感じとっているすぐ隣にある現実です。

久石譲が「ASIAN SYMPHONY」への進化でリコンポーズしたもの。既出4楽曲は大きな音楽構成の変化はありません。それでも当時の「アジア組曲」の印象とは変わった空気を感じる。溢れ出るエネルギーのなかに無機質な表情で鼓動する怒涛のパーカッション群、パンチの効いた鋭利な管楽器群。躍動的で快活なのに決して手放しで笑ってはいない。そんなシリアスな変化を感じとったような気がします。

そしてもうひとつ注目すべきは、映画『花戦さ』のために書かれた音楽から「4. Absolution」として組み込まれた楽曲。映画サウンドトラック盤では「赦し」(Track-21)として収録されています。そっと手をさしのべられるような、言葉少なにそっと寄り添ってくれるような、慈愛に包まれた楽曲。悠々と感情たっぷりに歌うのではなく、弦楽の弦のすすりが聴こえる涙腺の解放。”罪を赦す”というように、過去の過ちをも包みこみ苦しまなくていい安らかな気持ちで生きていきなさい、そんな意味あいになるのかなあと思います。”相手を赦す・自らを赦す”、そして前向きに未来へ歩んでいく。映画音楽のために書き下ろされた、誤解をおそれずにいえば「エンターテインメントのための楽曲」がこうして「久石譲オリジナル作品の一部」として組み込まれる。これはこれまでにはなかったことで、とても重要なポイントなのかもしれません。それだけに「4. Absolution / 赦し」という楽曲に対する久石譲の納得と確信すら感じます。見方をかえれば、映画音楽の一楽曲としては時とともに流れてしまう可能性のあるものが、オリジナル作品の一楽章として新しい命を吹きまれた、そして未来へとつながっていくもうひとつの機会を得ることのできた楽曲。そう思いめぐらてみるとこの楽曲が加えられたことに深い感慨をおぼえます。

そして、赦しのあとの警鐘。同じ過ちをくり返す危機(Crisis)、今までになかった新しい危機(Crisis)。そんな現実を僕たちは力強く生きていかなければいけない。久石さんは、当時のインタビューで「危機(Crisis)の中の希望」というフレーズを口にしています。危機を警鐘するだけではない、その中から希望をつかんで切り拓いていく、そんなエネルギーを強く打ち響かせる作品です。

壮大な大作「ASIAN SYMPHONY」の「アジア組曲」からの変遷は、時系列でまとめていますので、ぜひ紐解いてみてください。どんな音楽が気になった人はCD作品「Asian X.T.C.」でアンサンブル版を聴いてみてください。2016年「THE EAST LAND SYMPHONY」につづき2017年「ASIAN SYMPHONY」。こうやって久石さんの”シンフォニー”がひとつでも多く着実に結晶化している喜びをひしひしとかみしめながら聴きいっていました。そして1年後には…CD化が実現してくれることを強く願っています。

  • Disc. 久石譲 『アジア組曲 ~ ASIAN SYMPHONY』 *Unreleased

 

久石譲 『 Asian X.T.C.』

 

 

Deep Ocean 【B】
1. the deep ocean / 2. mystic zone / 3. trieste / 4. radiation / 5. evolution / 6. accession / 7. the origin of life / 8. the deep ocean again / 9. innumerable stars in the ocean
2016年から2017年にかけて全3回シリーズで放送される「NHKスペシャル シリーズ ディープオーシャン」のために書き下ろされた楽曲を演奏会用にまとめたものです。2016年大晦日ジルベスターコンサートで事前予告なく初披露されサプライズとなりましたが、今回「3.trieste」「7.the origin of life」が追加され9つの小品からなる作品へと再構成されています。久石譲の最も旬ソリッドなミニマル・ミュージックが堪能できる作品です。

小編成オーケストラとピアノ2台という大掛かりなステージ配置変更をしての演奏は、楽器ひとつひとつの微細な音、普段なかなか見聴きできない打楽器群、特殊奏法による音色のおもしろさ、ミニマル特有のズレをあますことなく体感できる贅沢な音空間です。冒頭から一瞬で神秘的な深海の世界へと誘ってくれます。

気になる追加された2楽曲は、どうもコンサートで初めて聴くような。7月にオンエアされたばかりの第2集からの音楽ではなく、8月にオンエア予定の第3集からのものかもしれません。「3.trieste」は明るく清らかなミニマル音楽だった印象で、「7.the origin of life」は生命の起源にふさわしく音楽の起源バロック音楽まで遡ったような優美な旋律だった印象。第2集はTV放送後何回もリピートしています、たぶん流れていなかったと思います。

その答えは8月27日放送、第3集「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」(NHK総合21:00)で確認したいと思っています。それまで曲の印象を覚えていられるか心配ですけれども。

エンターテインメント音楽(TV番組メインテーマ)としては贅沢なほどに作り込まれた完成度、楽器編成としても意欲作。久石譲オリジナル作品という位置づけでもまったくおかしくない最新の久石譲がたっぷりつまったメインテーマをはじめ、久石譲独特のミニマル・グルーヴを感じる楽曲群。TVでなんとか耳をすませ、コンサートで臨場感たっぷりに体感し、それでファンとして終われるはずがありません。もしオリジナル・サウンドトラックが発売されたとき、それは久石譲ミニマルアルバムという肩書きでもおかしくない逸品ぞろいです。「これサントラのクオリティ超えてるよね!久石さんのオリジナルアルバムかと思った!」なんて言いたい、そんな日がきっと訪れますように。

久石さん、サントラ出してくれますか? NHKさん、尽力してくれますか? どうかよろしくお願いします!

 

 

【mládí】for Piano and Strings 【A】
Summer / HANA-BI / Kids Return
久石譲弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)コーナーです。Aプログラムでは北野武監督作品からおなじみのメインテーマをセレクトし久石譲ピアノと弦楽オーケストラによる演奏です。おなじみでありながらここ数年のコンサートでは聴く機会のなかった「HANA-BI」「Kids Return」というプログラムには多くのファンが歓喜したはずです。

「Summer」はピアノとヴァイオリン・ソロの掛け合いがみずみずしく爽やかで、弦楽もピチカートではじけています。きゅっと胸をしめつけられるような思い出の夏、日本の夏の代名詞といえる名曲です。この曲が生演奏で聴けただけで、今年の夏はいいことあった!と夏休みの絵日記に大きなはなまるひとつもらえた、観客へのインパクトと感動は超特大花火級です。

「HANA-BI」は一転して哀愁たっぷりでしっとりななかに内なるパッションを感じる演奏。特に後半はピアノで旋律を弾きながら、低音(左手)で重厚に力強くかけおりる箇所があるのですが、今回それを弦楽低音に委ねることでより一層の奥深さが際立っていたように思います。ピアノも同フレーズ弾いていましたけれど、従来のようなメロディを覆ってしまうほどの激しい低音パッションというよりも、ぐっとこらえたところにある大人の情熱・大人の覚悟のようなものを感じるヴァージョンでした。渋い、貫禄の極み、やられちゃいます。

「Kids Return」は疾走感で一気に駆け抜けます。弦のリズムの刻み方が変わってる、と気づきかっこいいと思っているあっという間に終わってしまいました。そして今回注目したのが中音楽器ヴィオラです。相当がんばってる!このヴァージョンの要だな、なんて思った次第です。ヴァイオリンが高音でリズムを刻んでいるときの重厚で力強い旋律、一転ヴァイオリンが歌っているときの躍動感ある動き、かなり前面に出ていたような印象をうけます。管弦楽版にひけをとらない弦楽版、フルオーケストラ版では主に金管楽器の担っている重厚で高揚感あるパートをストリングス版ではヴィオラが芯を支える柱として君臨していたような、そんな気がします。これはスカパー!放送でじっくり確認してみたいところです。

ピアノとストリングスで3曲コーナーか、なんて安直なこと思ったらいけません。こんなにも楽曲ごとに色彩豊かに表情豊かにそれぞれ異なる世界観を演出してくれる久石譲音楽。メロディは違っても楽器編成が同じだからみんな同じように聴こえる、そんなことの決してない三者三様の巧みな弦楽構成。清く爽やかで、憂い愛のかたち、ひたむき疾走感。それは誰もが歩んできた「mládí」(青春)のフラッシュバックであり、少年期・円熟期・青年期いつまでも青春そのもののようです。

 

【Hope】for Piano and Strings 【B】
View of Silence / Two of Us / Asian Dream Song
約30名の弦楽オーケストラと久石譲ピアノの共演にて。往年の名曲たちが極上の響きとなって観客を陶酔させてしまったプレミアム・プログラムです。あまりにも素晴らすぎて、語ることがありません。

「View of Silence」や「Asian Dream Song」は、「a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos 2003 ETUDE&ENCORE TOUR-」の楽曲構成・ピアノパートをベースにしていると思いますが、9人のチェリストから約30人のストリングスへ、豊かな表現と奥ゆかしさで、たっぷりねかせた&たっぷり待ったぶん熟成の味わい。

「Two of Us」は、コンサートマスター(ヴァイオリン)&ソリスト(チェロ)&久石譲(ピアノ)を中心に、バックで弦楽が包みこむ贅沢なひととき。楽曲構成・ピアノパートは「Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~」収録バージョンに近いと思います。そこに弦楽(ストリングス)が大きく包みこむイメージです。

(【HOPE】レビュー 「ジルベスターコンサート2016 in festival hall」コンサート・レポートより)

 

Bプログラムでの3曲もまた往年ファンにとってはたまらない選曲です。そして2016年フィギュアスケート羽生結弦選手が「Hope&Legacy」というフリープログラムで「View of Silence」と「Asian Dream Song」を採用したことは大きな話題となり一躍注目を浴びました。そんなきっかけで久石譲ファンになった人もいるでしょうし、懐かしい名曲へのスポットライトに感動をおぼえたかつての久石譲ファンも。久石譲ファンが時代を越えてクロスオーバーするエポック的作品になっていくのかもしれません。楽曲としてもファンの広がりとしても、間違いなく過去と現在をつないだ記念碑的な象徴。いい音楽は何度でも甦る、いつでも命をふきかえす、おそらく立ち会えない未来においても、廻りつづける尊いサイクル。そんな音楽のもつ力を肌で感じ、まざまざと証明してみせた名曲です。コンサートではオリジナル・フルサイズをいまの久石譲の音楽構成とピアノによって演奏された、そのことに大きな価値がある、そんな楽曲たちです。

 

【A・B】あわせて「for piano and Strings」について。近年のコンサートを振り返ると「ジルベスターコンサート2016」から初の試みとなり観客の反応と久石譲の手応えでW.D.O.としてもプログラミングされたコーナー。フルオーケストラコンサートのなかに久石譲ピアノ+弦楽オーケストラ、バラエティ豊かというより、それは音世界のコントラスト変化を感じとることができる至福のときです。一気に会場の空気がかわる。管弦楽と弦楽でこんなにもオーケストラってかわるんだと観客はひとつのコンサートで二度得したような気分に陶酔してしまいます。なんとも贅沢なコンサート構成、ぜひこれからもつづいてほしいコーナーです。

【A・B】あわせて久石譲ピアノについて。やっぱりいい、としか言いようがないんです(って、これどこかでも同じ言い回しを使った記憶)。論理で解決できること、それは作曲家自らによる演奏だから。でもそれだけじゃ到底説明することができないなにかがあるんです。特に最近の久石さんの奏でるピアノの音色は円熟味を感じます。とてもやわらかい、凛とたった、ピュアで無邪気な、悟ったような慈しみのある、いくつもの矛盾する表現が浮かびますでもそれが音を多面的につくっている。

プログラムが前後します「となりのトトロ」から「まいご」も「Dream More」もピアノが旋律を奏でます、W.D.O.楽団奏者によるたしかな演奏です。あっ、ピアノの音が鳴っているなと思います。でも、このコーナーでたっぷり聴くことができるピアノや、「天空の城ラピュタ」から「君をのせて」、「風のとおり道」「となりのトトロ」で顔をのぞかせるピアノ、それは仮に目をつぶって聴いていたとしても、久石さんが弾いてるんだとわかる。あっ、久石譲の音が鳴っているなと思います。音を聴くだけで誰が弾いているかわかるピアニスト日本に何人いるんだろう? と僕なんかは思います。そのくらい指揮をする手も音を紡ぎ出す手も、かけがえのない宝物です。同じ時代に生きて同じ空気のなかで聴けてほんとうによかった。

久石譲 『Shoot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

 

 

交響組曲「天空の城ラピュタ」 【A】
ジブリ交響作品シリーズ第3弾です。どんなイントロで始まるのかなと楽しみにしていました。CD「天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹」から「プロローグ~出会い」をベースとした導入部になっていました。ほかにも「Gran’ma Dola」などがたっぷり聴けました。

ちょっとわかりやすく解説するのが難しいのです。

1.「交響組曲 天空の城ラピュタ」はストーリーの展開に大枠では即したラピュタ音楽のダイジェスト、いやオールハイライトのような贅沢な音楽構成になっています。

2.オーケストラ+シンセサイザーで編成され本編シーン尺にあわせた「サウンドトラック盤」からではなく、オーケストラ編成で音楽作品として制約なしに成立している「シンフォニー編」をベースにしているパートもあります。

3.2002年北米公開に合わせてリコンポーズ、リオーケストレーションされた「天空の城ラピュタ USAヴァージョン・サウンドトラック」からの楽曲やオーケストレーションがふんだんに盛り込まれています。

この大きな3つの土台があり、久石譲解説に「今回すべてのラピュタに関する楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。」という、巨渦に入り乱れ再構築された大迫力のラピュタの世界が姿を現していました。約28分ですか、あっという間だったな。

さて、話を冒頭に戻すと、どんなイントロからはじまるのか楽しみにしていた本作品。シンフォニー編の「プロローグ~出会い」をベースとしながらも、オープニングのクライマックスはUSA盤が踏襲されていました。どういうことかというと…USA盤では「シータが空から降ってきて飛行石が光るその瞬間」に音楽が盛り上がってバーンッ!といくようにオリジナルサントラ盤にはない数小節のタメが加筆されはさまれていますそのヴァージョンを聴くことができて超感動!86年公開ラピュタは飛行石が光る瞬間と音のピークが数秒ずれていますでも数小節をはさむほどの長い秒数ではないそうUSA盤はそこにいくまでの前半のテンポが微妙に速くなっているそして映像と音楽が見事にシンクロする最高潮へ向かうべく計算しつくされたっぷりためた(rit.)高揚感でもってこのバーンッ!とメロディが解き放たれる(息つぎしていない)…ふうっ、トランペットをフィーチャーしたW.D.O.版のクライマックスもこれが継承されています…そうお祭り状態です。

ストーリーを再現しているパートもあるので、たとえばシータを救出するシーンも、音楽ステージを見ているのか劇場スクリーンを見ているのか錯覚するほどありありと目に浮かぶわけです。そしてオリジナルサントラ盤ではオーケストラ+シンセサイザーとなっていたものが、USA盤をベースにしたフルオーケストラで聴ける、そうお祭り状態です。

USA盤は久石譲が加筆・楽曲追加してオーケストレーションも手を加えたラピュタファンにはたまらないCDです。ですが、指揮が久石譲自らによるものじゃないんです。だからちょっと淡白な印象を持っていた僕としては、シンフォニー編+USA盤が継承されフルシャッフル・パワーアップしたラピュタ完全版、久石譲指揮によってコンサートで聴けること、音源化されるであろうことに、「ここに極まる!」このひと言につきます。

はじめて耳にするオーケストレーションももちろん随所にありました。これはもうスカパー!で確認するまでは全貌を語ることができません(覚えている箇所だけしゃべってこの量か、これは大変なことになる)。

 

音楽作品として成立した楽曲で構成されているので、純粋にストーリの展開にそった(曲の長さとしての尺度/曲の順番)ものにはなっていません。だから「交響組曲」なんですね。振り返れば「風の谷のナウシカ」は《交響詩 Symphonic Poem》、「もののけ姫」「天空の城ラピュタ」は《交響組曲 Symphonic Suite》、シリーズ開始前でいうと「となりのトトロ」は《オーケストラストーリーズ》、「かぐや姫の物語」は《交響幻想曲 Symphonic Fantasy》などなど。このあたりの作品ごとの立ち位置というか音楽構成のコンセプトについても、いつか久石さんから聞いてみたいですね。

そうです!大切なことを忘れていました!

「君をのせて」が久石譲ピアノでフルコーラス堪能できます。しっとりとしたピアノをオーケストラが優しく寄り添うイメージ。これはもう抜粋してアンコールピースなど聴ける機会をふやしてほしい、そう思ってやまないラピュタの結晶です。そしてクライマックス「大樹」ダイナミックなオーケストラサウンドへつづいていきます。ここのティンパニもかっこよかった!どっしりと根をおろした鼓動。

回想。

「天空の城ラピュタ」それは僕が久石譲音楽に出会った特別な作品です。9歳くらいの頃、お小遣いを握りしめてはじめて買ったCDが主題歌「君をのせて」のシングルCDです。はやる気持ちで自転車駆けた行き道帰り道、町の小さなCD屋さんの店内、家に帰ってその日ずっとスピーカーの前から離れず何回も聴いていたあの日。ありありと思い起こせます。なんてないCDショップの包装袋までいっとき大切にしまっておいたくらい、おもちゃよりも目を輝かせた子どもの大切な宝物です。

約30年の時をこえて、同じ曲が今こうやって目の前で奏でられている。久石譲という作曲した人自らの指揮とピアノで。ステージから「ここまでがんばって生きてきたね」と言われているような、からだ全体を包みこむ音楽から抱きしめられているような、おおげさかもしれませんがそんなかけがけのない瞬間。ファンサイトのペンネーム「ふらいすとーん」と名乗っています、やっぱりラピュタは順位づけできない選ぶ選択肢を超えたところにある特別な存在です。

僕の話はここまで、ぜひ久石譲ファンのみなさんに、久石譲ファンだからこそ、そんな自分だけのとっておきの久石譲音楽、歩んできた人生をやさしく包んでくれるようなやさしく認めてくれるような、そんな感覚におそわれることができる(日本語がおかしい)久石譲音楽に出会ってほしいなあと思います。コンサートで聴ける日を夢みてほしいなあと思います。

久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック』

久石譲 『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

 

 

オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」 【B】
大人から子供まで楽しめる「となりのトトロ」オーケストラの世界。「さんぽ」ではオーケストラ各楽器紹介をまじえた音楽構成になっていて、はじめて生のオーケストラに触れる子供はきっと好奇心旺盛に身をのり出し体を動かすそんな光景が浮かんできます。この作品版としてCDにもスコアにもなっているので、多くの人に聴かれ演奏され愛されつづけている永遠のスタンダード作品です。

スタジオジブリ作品交響組曲化シリーズとして、第1弾「風の谷のナウシカ」(2015)、第2弾「もののけ姫」(2016)、第3弾「天空の城ラピュタ」(2017)となりました。今回「となりのトトロ」を聴きながら、もうこの作品は交響作品化としても完成しているじゃないか!と改めて納得させられる完成度の高さです。合唱あり、ソプラノあり、多彩な交響作品が新しい輝きで命を吹きこまれていますが、ナレーションありの交響作品というバリエーションとインパクトとしても充分、スタジオジブリ×久石譲のコラボレーションとしてこれだけジブリカラーをおしあげ作品世界の相乗効果その最高峰はない、と言い切れてしまうほどです。

じゃあCD作品「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」(2002)のままでいいのか、と言ったらそんなことはないんです。音楽構成は変わっていませんが、オーケストレーションは緻密大胆豊かに変化しているからです。CDを聴く回数が多いせいか、すぐに気づいてしまいます。「五月の村」も軽快なメロディに管楽器の明るいフレーズが呼応し一層のこれからはじまる新しい生活と冒険に胸わくわくさせてくれます。そして今回コンサート後も耳から離れないのが「ネコバス」。あのおなじみのメロディを管楽器が歌っているんですが、その後ろで弦楽が楽しそうにかけ合っています。タラ、ラタタタタタタタ~♪というふうに。あれっ、こんな好奇心くすぐる旋律あったかな?とCDを聴き返すとやっぱりない。ほかにもネコバスの愛らしくもどっしりしたキャラクター、金管楽器の厚みでパワーアップしていたような印象もあったり。

満場一致拍手喝采!圧巻の「となりのトトロ」を聴いて、音楽再構成の必要ない交響作品完成度の高さを感じながら無邪気に音を楽しみストーリーの世界に浸っていました。映画と同じくらい聴き終わったあとにトトロにふれあえた満足感、これはすごいことですね。そして、最新のオーケストレーションでCD盤が届けられる日が待ち遠しいなあとも思いました。いつもなら”久石譲の緻密なオーケストレーションは見事”と言いたいところです、「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」は大人も子供もピュアな心になれる”久石譲の童心オーケストレーション”です。絵本ならぬオーケストラによるトトロ読み聴かせタイム。ぐっすり眠れていい夢がみれそうですね。また会いたい、また聴きたい。

久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

 

 

—–アンコール—-

Dream More 【大阪・韓国A・東京】
サントリービール「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム(Master’s Dream)」のために書き下ろされた楽曲をコンサート用に再構成したフルオーケストラ版です。久石譲のノスタルジックかつ心躍る旋律美に、今の久石譲だとこうなるというソリッドで立体的なオーケストレーション。華やかでつややかな気品をまとった作品です。

直訳すると「もっと夢をみる」(になるのかな?)、本公演が終わって夢見心地の観客へ夢の余韻のプレゼント。はたまた、コンサートでいっぱいのエネルギーをもらった僕たち観客へ、新しい夢を追い求めることへ背中をおしてくれるような。コンサートの前と後で、自分のなかでなにかが変わったそんな変化を感じとれるなら、そのコンサートは一生ものですね。

 

 

World Dreams 【全公演】
久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラのアンセムです。プログラム予定を見ながらこの曲がアンコールかな?とうっすらわかっていても、やっぱり聴いてたちまちうれしい不朽の名曲です。聴けないとしたらその落胆は大きく、これを聴かないとW.D.O.コンサートは終われない、大きな声で「コンサートごちそうさまでした!」と言えないそんな楽曲です。2004年に発足したW.D.O.、ファンのなかにはもう十数回コンサートで聴いた人もいるかもしれません。それでも飽きたという声を聞いたことがない。今年もここに帰ってきた、今年もまた会えた、そんなシンボルとして高らかに悠々と響き流れつづけるW.D.O.と観客のかけ橋です。

久石譲 『WORLD DREAMS』

 

 

 

今年は例年以上にコンサートパンフレットの写真をよく見たような気がします。コンサート後のSNS書きこみでツイッター、インスタグラム、フェイスブックなどパンフレットをコンサートのアイコンとして被写体にしているものが多かったです。ということは、CDもコンサート余韻にひたりながら聴いた人もたくさんいますね。知って楽しむ音楽、聴いて楽しむ音楽。生音で楽しむ音楽、個人空間で楽しむ音楽。音楽の楽しみ方っていろいろあるからこそパーソナルでありコミュニティなんですよね。

今年は例年以上に海外の人を会場で見たような気がします。そりゃあもう日本にいるんだから久石譲のコンサート行かないとバッドだよね!なんてことかもしれませんし、はるばる日本旅行のプランのなかにコンサートを組みこんだ!なんてクールな人もいるかもしれません。ワールドツアーとしては「ジブリコンサート」が2016年パリ公演からスタートしたばかりですが、W.D.O.公演としてもきっと世界各国で待ち望まれているでしょう。中国公演のリベンジもふくめて、久石譲コンサートがもっと世界中で平和に開催されますように!そしてコンサートに行けないけれど待ち焦がれている日本国内・世界中の人へ、久石譲音楽があらゆる機会・メディア・パッケージを通じて響きわたりますように!

 

 

お礼が最後になってしまいました。

W.D.O.2017 特別企画&連動企画としてはじめてファンサイトで参加型イベント「久石譲ファンのためのチャット」「久石譲ファンのためのアンケート」を開催しました。多くの人に参加してもらって充実したものになりました。このファンサイトへ日々数百・数千のアクセスがあったとして、多くの人に見てもらっているうれしさは日々あります。それにくわえて、つながったと実感できるチャットのひと声、アンケートの一票は、その”1”がまた違ったものとして心の底から染みわたる喜びを感じていました。気軽に楽しく参加ご協力してくれた久石譲ファンのひとりひとりに心から感謝します。本当にありがとうございました。

特集「久石譲ファンのためのチャット」「久石譲ファンのためのアンケート」についてはまた近いうちに結果をまとめて書き記したいと思っています。

⇒ ⇒  2017.8.30 追記

 

 

そして10月には「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」東京公演の模様が早くもTV放送されるうれしいニュースです。このコンサート・レポートもスカパー!後に追記追記の嵐になるかもしれません(うーん、それも良し悪しかな)。コンサートだけではかなわない気づきや発見がきっとたくさんあると楽しみにしています。こうやって映像として記録に残してくれることも、コンサートの感動再びも、コンサートに行けなかった人のためにも、とてもうれしい収録映像です。音楽はいろんな楽しみ方でどんどん豊かにつながっていきますね。

リアルに共感共鳴できるコンサート数千人規模の感動体験。これが一番大切です。でも、これだけにとどめておくのはもったいないのが久石譲音楽。記録として刻まれ発信されること、それは感動が数千人から数十万人、あるいはボーダレスに数億人規模に届けられる可能性を秘めているということです。いま現在でも日常生活のなかで「2008年武道館コンサート」のDVD映像を見ながら感動し日々のエネルギーや勇気をもらっている人たくさんいます。SNSをみわたせば日本で海外でごくごく日常的パーソナルなワンシーンとして。こんなに素晴らしいたしかな幸せ、稀有な現象ってないですよね。より多くの人がそれぞれの日常においてもっと豊かに久石譲からの感動ギフトにふれる機会にめぐまれますように。

 

 

 

2017.11.10 追記

スカパー!放送にてコンサートの感動ふたたびです。完全ノーカット、アンコール含む完全版で「W.D.O.2017」最終日東京公演の模様が映像美と音響美で甦ります。コンサートではわからなかったこと気づかなかったことも、こうやって多数のカメラによる複数アングルと、多数の収録マイクによる各楽器の鮮明なステレオ音響で、あの日の感動がより深く広く溢れますね。

さて、各楽曲ごとに記したい発見や思いもあるのですが止まらなくなりますので、それはコンサート直後上のレビューに譲りたいと思います。多くのカメラとそのアングルのおかげで、どの楽曲も今演奏している楽器にカメラがよってくれて、まるで視覚的に譜面を見ているようで、目と耳が喜ぶひとときです。

 

交響組曲「天空の城ラピュタ」について

ようやくその全貌をつかむきっかけができましたので、しっかり紐解いていきたいと思います。思っていた以上にほぼ映画本編ストーリーに沿ったパート構成になっていました。おそらくコンサートで聴いたときには、あ、この楽曲はシンフォニー編だな、これはUSA盤だな、と頭の記憶が入り乱れていたので、ストーリーに関係なく音楽的に再構成した度合いが強いのかなと思ってしまっていました。

この傾向から「サウンドトラック盤」を基にして、便宜上パート名もサントラ楽曲名に準ずるかたちで整理しました。そして「サウンドトラック」「シンフォニー編」「USA盤サウンドトラック」それぞれどの楽曲にあたるかを挙げ、交響組曲版の音楽構成・オーケストレーションに近いものに下線をしました。

 

~~~~~~~~~~

ちょっとわかりやすく解説するのが難しいのです。

1.「交響組曲 天空の城ラピュタ」はストーリーの展開に大枠では即したラピュタ音楽のダイジェスト、いやオールハイライトのような贅沢な音楽構成になっています。

2.オーケストラ+シンセサイザーで編成され本編シーン尺にあわせた「サウンドトラック盤」からではなく、オーケストラ編成で音楽作品として制約なしに成立している「シンフォニー編」をベースにしているパートもあります。

3.2002年北米公開に合わせてリコンポーズ、リオーケストレーションされた「天空の城ラピュタ USAヴァージョン・サウンドトラック」からの楽曲やオーケストレーションがふんだんに盛り込まれています。

この大きな3つの土台があり、久石譲解説に「今回すべてのラピュタに関する楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。」という、巨渦に入り乱れ再構築された大迫力のラピュタの世界が姿を現していました。

~~~~~~~~

と、コンサート直後のレビューに記していましたが、その理由と今回改めて整理できた結果を見て、なんとなく伝わっていただけたら幸いです。

 

交響組曲「天空の城ラピュタ」

O:『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』
S:『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』
U:『Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~』

A. 空から降ってきた少女
O:1.空から降ってきた少女
S:1.プロローグ~出会い ※前半
U:2.The Girl Who Fell from the sky (Main Theme) ※後半

B. 愉快なケンカ(~追跡)
O:3.愉快なケンカ(~追跡)
S:6.大活劇
U:7.A Street Brawl 8.The Chase ※オーケストレーション

C. ゴンドアの思い出
O:4.ゴンドアの思い出
S:4.ゴンドア(母に抱かれて)
U:9.Floating with the Crystal 10. Memories of Gondoa

D. 失意のパズー
O:5.失意のパズー
S:4.ゴンドア(母に抱かれて)
U:12.Disheartened Pazu

E. ロボット兵(復活~救出)
O:6.ロボット兵(復活~救出)
U:13.Robot Soldiers 〜Resurrection – Rescue〜

F. タイガーモス号にて
O:9.タイガーモス号にて
S:2.Gran’ma Dola
U:14.Dola and the Pirates

G. 天空の城ラピュタ
O:12.天空の城ラピュタ ※後半部
S:8.時間(とき)の城
U:18.The Forgotten Robot Soldier

H. 君をのせて
*「サウンドトラック盤」に準ずれば「11.月光の雲海」「13.ラピュタの崩壊 (合唱/杉並児童合唱団)」「14.君をのせて (歌/井上あずみ)」で聴かれるメインテーマ。(USA盤「15. Confessions in the Moonlight」「22. The Destruction of Laputa (Choral Version)」)交響組曲の構成と並べてみたときに、ここは久石譲ピアノをフィーチャーした「君をのせて」交響組曲版スペシャルパート、と、思っています。

I. 天空の城ラピュタ
O:12.天空の城ラピュタ ※前半部
S:5.大いなる伝説
U:23.The Eternal Tree of Life

 

 

 

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

Info. 2017/11/09 文春ジブリ文庫「ジブリの教科書 15 崖の上のポニョ」発売

宮崎駿が原作・脚本・監督の全てを担当した『崖の上のポニョ』は、人間になることを願うさかなの女の子ポニョと、人間の男の子の宗介の物語。藤岡藤巻と大橋のぞみの歌う主題歌の大ヒットも話題となる。海を舞台に、波の表現などの高い技術が求められた作品を、吉本ばなな、横尾忠則、のんなどの多彩な顔ぶれが読み解く。 “Info. 2017/11/09 文春ジブリ文庫「ジブリの教科書 15 崖の上のポニョ」発売” の続きを読む

Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.4」 コンサート・レポート

Posted on 2017/10/31

10月24,25日に開催された「久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vol.4」コンサートです。2014年から始動した同コンサート・シリーズ(年1回)、今年で4回目を迎えます。

今年も意欲的なプログラムと久石譲新作、初の試みとなる若手作曲家の新作オリジナル作品の公募、選ばれた優秀作品の演奏という、まさに今を走り抜ける現在進行系の音楽たちの響宴です。

 

まずは、コンサート・プログラム(セットリスト)および当日会場にて配布されたコンサート・パンフレットより紐解いていきます。

 

 

久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.4

[公演期間]  
2017/10/24,25

[公演回数]
2公演
東京・よみうり大手町ホール

[編成]
指揮:久石譲、太田弦
チェロ:古川展生
バンドネオン:三浦一馬
管弦楽:フューチャー・オーケストラ、西江辰郎(コンサートマスター)

[曲目]
デヴィット・ラング:pierced (2007) *日本初演
David Lang:pierced *Japanese premiere
(チェロ:古川展生)

『Young Composer’s Competition』優秀作品受賞作
門田和峻:きれぎれ (2017) (10/24)
Kazutaka Monden:Kiregire
(指揮:太田弦)

フィリップ・グラス / 久石譲 編:Two Pages (1968) (10/25)
Philip Glass / Arranged by Joe Hisaishi:Two Pages

—-intermission—-

ガブリエル・プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番 (2006)
Gabriel Prokofiev:String Quartet No. 2

久石譲:室内交響曲第2番《The Black Fireworks》〜バンドネオンと室内オーケストラのための〜 *世界初演
Joe Hisaishi:The Chamber Symphony No.2 “The Black Fireworks” Concerto for Bandoneon and Chamber Orchestra *world premiere
1. The Black Fireworks
2. Passing Away in the Sky
3. Tango Finale
(バンドネオン:三浦一馬)

 

 

ご挨拶

今年で4回目をむかえるミュージック・フューチャー(MF)は内容を充実させるべく、より深いあるいは衝撃力のある作品を選びました。

例えば、デヴィッド・ラングの《pierced》における執拗にくり返されるリズムとフレーズはまるでストラヴィンスキーの《春の祭典》のように原始的な力を感じさせる一方、強い人間の性、衝動、哀しみといった人間的な感情をも刺激します。フィリップ・グラスの《Two Pages》も加算されていくフレーズ(これも執拗にくり返します)の向こうに人間的な感情の起伏を感じます。それは去年彼の日本でのコンサートで、僕が彼のピアノ曲を演奏したときにも強く感じました。ミニマルはエモーショナルでもいいんだ!そう思ったものです。同時に音楽を変えよう、あるいは新しい音楽に出会いたいという強い信念もこの曲にはあります。このような楽曲が1968年に書かれていたことは奇跡です。そして今でも斬新です。

ガブリエル・プロコフィエフの《弦楽四重奏曲第2番》もクラブシーンの影響を受けながらも祖父譲りの強い音の構成力と感情を揺さぶる強い力があります。そう、今年は「くり返す」ということと「揺さぶられる感情」あるいは「揺れ動く感情」がテーマです。

このお三方とは今年ニューヨークやロンドンで直接お会いしてそれぞれの楽曲へのアドバイスをいただきました。また作曲家どうしの話題はとても刺激的で至福の時間でもありました。

そしてもうひとつ今年の挑戦としては「Young Composer’s Competition」として若い作曲家の作品を公募したことです。期間が短かったにもかかわらず海外を含め約20作品の応募がありました。到着順にすべて番号を振り(年齢、国籍、出身学校などの付加情報に左右されないためです)足本憲治氏と僕で5作品に絞り込み、それを審査員の先生方に採点していただきました。だから選ばれた優秀作品の《きれぎれ》の作曲家が門田和峻さんという名前であることは最近知ったわけです(笑)

またこのようなコンペでは作曲関係者が審査員を務めるケースが多いのですが、MFでは映画監督の高畑勲氏、作家の島田雅彦氏のように異分野の先達に審査をお願いしました。もちろん音楽にも詳しい方々です。これは作曲関係者のごく狭い世界だけで完結するのではなく、広く創作に関わるアーティストの目を通すことで、観客との接点を大切にしたいという思惑です。もちろん日本を代表する作曲家西村朗氏と音楽評論家の小沼純一氏にも加わっていただき、たくさんの助言をいただきました。諸先生方には心より感謝いたします。

さて、今年のMF 多少の忍耐はいると思いますが、聴き終わって何かを感じていただければ幸いです。

久石譲

 

 

PROGRAM NOTES

デヴィッド・ラング (1957-)
pierced 約15分
《pierced》はチェロ、パーカッション、ピアノのリアル・クワイエット(Real Quiet)というアンサンブルと弦楽合奏のための協奏曲として委嘱された。伝統的なスタイルにならないよう、ソリストと弦楽合奏が関連性を持つよう工夫した。両者間にある正反対な性格はいいアイデアだと思ったが、伝統的な協奏曲スタイルによくあるソリストがオーケストラと戦うような競い合いは避けたかった。私が思いついたアイデアは、両者を隔てる透明な布のような壁があり、各々の世界にあるすべての音・音符・調がしばしば自由にその壁を行き来し、音が片方から他方へ移動するときに、演奏家たちを分ける布が穴を開けられたり、切り裂かれたりすることだった。

初演は2007年6月12日にリアル・クワイエットとミュンヘン室内管弦楽団、クリストフ・アルフテッドの指揮。ソロ弦楽バージョンはリアル・クワイエットとフラックス・カルテット、アラン・ピアソン指揮によって初演された。

作曲者によるプログラムノートより

 

フィリップ・グラス (1937-)
Two Pages 約16分
調性のないリズミカルなミニマリズムと《1+1》(1967年フィリップ・グラス・アンサンブルにより初演)に見られる即興形態は、グラスに単旋律の主要構想をもたらし、彼の最初のミニマル作品として《Two Pages》は完成するに至った。最初の主題に音を足したり引いたりすることでメロディが伸び縮みし、曲全体の輪郭が作られていく。曲の構造を圧縮して表現できるシステマチックな乗数を用いた省略法で記譜した初の曲として《Two Pages(2つのページ)》というタイトルが付けられた。

参考文献:『フィリップ・グラス自伝 音楽のない言葉』ほか

 

ガブリエル・プロコフィエフ (1975-)
弦楽四重奏曲第2番 約17分
《弦楽四重奏曲第2番》はガブリエルの作曲形式の雄大さが顕著に表れている。メカニックなテクスチャーやテクノ音楽のエネルギーに多いに影響を受け、かの有名な作曲家である祖父のセルゲイ・プロコフィエフとは対照的な作曲形式である。

ガブリエルはあるインタビューの中で、「《第2番》のカルテットは《第1番》の残り香から始まった。より迫力があり、リズミカルでエッジが効いていてメロディックだ。《第1番》で引用したダンスミュージック(テクノ、ハウス、ヒップホップ)をさらに掘り下げたいと思った。目まぐるしく動くヨーロッパの大都会で生きるスピード感を与えたかった。」と語っている。

《弦楽四重奏曲第2番》は2006年、エリシアン・カルテットによって委嘱された作品で、《第1番》を初演した彼らによって、この《第2番》も引き続き初演された。

 

久石譲 (1950-)
室内交響曲第2番《The Black Fireworks》
~バンドネオンと室内オーケストラのための~ 約24分
バンドネオンでミニマル!というアイデアが浮かんだのは去年のMFで三浦くんと会ったときだった。ただコンチェルトのようにソロ楽器とオーケストラが対峙するようなものではなく、今僕が行っているSingle Trackという方法で一体化した音楽を目指した。Single Trackは鉄道用語で単線ということですが、僕は単旋律の音楽、あるいは線の音楽という意味で使っています。

普通ミニマル・ミュージックは2つ以上のフレーズが重なったりズレたりすることで成立しますが、ここでは一つのフレーズ自体でズレや変化を表現します。その単旋律のいくつかの音が低音や高音に配置されることでまるでフーガのように別の旋律が聞こえてくる。またその単旋律のある音がエコーのように伸びる(あるいは刻む)ことで和音感を補っていますが、あくまで音の発音時は同じ音です(オクターヴの違いはありますが)。第3曲の「Tango Finale」では、初めて縦に別の音(和音)が出てきますが、これも単旋律をグループ化して一定の法則で割り出したものです。

そういえばグラスさんの《Two Pages》は究極のSingle Trackでもあります。この曲から50年を経た今、新しい現代のSingle Trackとして自作と同曲を同時に演奏することに拘ったのはそのためかもしれません。

全3曲約24分の楽曲はすべてこのSingle Trackの方法で作られています。そのため《室内交響曲第2番》というタイトルにしてはとてもインティメートな世界です。

また副題の《The Black Fireworks》は、今年の8月福島で中高校生を対象にしたサマースクール(秋元康氏プロデュース)で「曲を作ろう」という課題の中で作詞の候補としてある生徒が口にした言葉です。その少年は「白い花火の後に黒い花火が上がってかき消す」というようなことを言っていました。その言葉がずっと心に残り、光と闇、孤独と狂気、生と死など人間がいつか辿り着くであろう彼岸を連想させ、タイトルとして採用しました。その少年がいつの日かこの楽曲を聴いてくれるといいのですが。

久石譲

(「ミュージック・フューチャー Vol.4」コンサート・パンフレット より)

 

Message for MUSIC FUTURE vol.4

夕食時、私の音楽が日本で演奏されることを家族に話しました。23歳、21歳、18歳の3人の子どもたちがいつも歌うのは大好きな久石譲さんのメロディ。それは美しくてとても幸せな瞬間です。今日のコンサートで私の曲が久石さんの指揮で演奏されるのを光栄に思います。ありがとう。皆さんに楽しんでもらえますように。

-デヴィッド・ラング

《弦楽四重奏曲第2番》はエッジの効いたリズムによって構成されています。エレクトロニックダンスミュージック(テクノ、ハウス、ヒップホップなど)からインスピレーションを得たほか、ヨーロッパの都市が急速に動いていることにも影響されています。現代的でありながらクラシックな方法でレイヤーを重ねています。

-ガブリエル・プロコフィエフ

(「ミュージック・フューチャー Vol.4」コンサート・パンフレット より)

 

注)
「きれぎれ」作曲者によるプログラムノート、および審査員評もパンフレットに掲載されていますが割愛しています。こちらでご覧いただけます。

受賞結果の詳細はこちら>>>
https://joehisaishi-concert.com/competition/

 

 

 

以上、ここまでがコンサート・パンフレットからの内容になります。

 

ここからは、感想をふくめた個人的コンサート・レポートです。

 

パンフレットの久石譲挨拶に「より深いあるいは衝撃力のある作品」、「”くり返す”ということと”揺さぶられる感情”あるいは”揺れ動く感情”がテーマ」とあるとおり、とてもディープで刺激的な作品たちばかりです。それでいて無機質ではないパッションやエモーショナルな躍動を感じる。10分以上にも及ぶくり返しが奏されたとしてもまったく飽きを感じることのない、どんどん引き寄せられていく感覚。それはおそらく作品の持っている力もあるでしょうし、今この場で生身の人間が演奏しているという生きた音楽を肌で感じることができたからかもしれません。

デヴィッド・ラング「pierced」のチェロの力強いフレーズと弦楽合奏やパーカッションが創り出す独特な世界観にはただただ圧倒されるばかり。覚醒的で揺れ溺れる危険なグルーヴ感。フィリップ・グラス「Two Pages」はエレクトリック・オルガンと木管四重奏、マリンバという編成。久石譲編となっていたのはこの編成によるところもあるのかもしれません。というのも、この作品いろいろな編成で演奏されることの多いようで、ピアノ2台(もしくは連弾形式)、バンド編成(ベースやギターなどさながらロックバンドのような)、あるいはマリンバ。いかなる楽器にも置換可能でありながら作品世界観を失わない究極のミニマル(最小)音楽とも言えるのかもしれません。久石譲編のそれは、オルガンと木管が不思議なほど溶け合い、ユニゾンを奏でる楽器が集まってひとつの音・旋律になり、なんともいえない揺らぐ音色の変化。ガブリエル・プロコフィエフ「弦楽四重奏曲第2番」は、コンサートマスター西江辰郎さんのヴァイオリン、体全体を使って大きなアクションでフレーズを体現するその姿や、弦楽四重奏の一糸乱れぬ合奏とリズム。

こんなにもクオリティの高い演奏を生で聴くこと目で見ること肌で感じることができるだけで幸せな時間です。まったく音楽専門知識がないなかで、作品のなにがすごいのかどこが聴きどころなのか、そんなことは正直わかっていません。作品や演奏から浴びせられる半分くらいも受け取れていないのかもしれませんが、新しい体験をしたという自信、これまでにはなかったものに出会えたという感動はしっかりとあります。

今回特に強く感じたのは「むきだしの音・むきだしの音楽」という感覚です。血がどくどくと脈うっているような音楽、生身の音楽。もしCD盤など録音されたものだけを聴いていたら、いくぶん耳に馴染まない音楽で終わっていたかもしれません。あるいは執拗なくり返しに飽きる。ちょっとした先入観やイメージで拒絶するのが「食わず嫌い」だとしたら、まさにミュージック・フューチャーで聴くことのできる音楽たちは「聴かず嫌い」をはらんだ濃い作品たちです。だからこそ、どれだけ言葉をならべても実際に生で聴かないと感じることのできないなにかがあります。

たとえば、フル・オーケストラ・コンサートであればその壮大な響きに大きく包まれ感動します。この小ホールで開催されどの作品も4人、7人、約15~20人という小編成アンサンブルおよび小編成オーケストラで構成されるコンサート。奏者一人一人の息づかいや鼓動がダイレクトに伝わる生身の演奏、生々しいほどのリアルな音楽と最高品質の演奏。畑に入って採れたての野菜をその場でかじる格別の美味しさと同じように、楽器そのものの音や今発せられたばかりの新鮮な音色と会場いっぱいに広がる響き。そんな贅沢な音楽空間こそこのミュージック・フューチャー・コンサートです。

 

 

1曲目「pierced」演奏後、ステージのセットチェンジの時間を使って久石譲MCがありました。一問一答形式インタビュー形式によるものです。主にパンフレットに書かれている各作品解説で10分もなかったかな5分くらいでしょうか。デヴィッド・ラングは今一番注目している作曲家であること、「Two Pages」とは実際に2ページの楽譜でできているということ、ガブリエル・プロコフィエフと会った時のエピソードなど、パンフレットを補完するような貴重な語りを聞くことができました。

そして、自作の新作については、興味深いコメントも。これは自分が勝手にそう思ったそう捉えたということだがとことわったうえで、サマースクールでの生徒の言葉が副題となった「白い花火の後に黒い花火が上がってかき消す」、東日本大震災を経験した彼の発したこの言葉にいろいろと思いずっと心に残っていた、というようなことをおっしゃっていました。また、パンフレットでは約24分となっていますが、おそらく27分くらいあります、とも。サマースクールについては下記インフォメーションも発信していますのでぜひご覧ください。

 

 

さて、久石譲新作「室内交響曲第2番《The Black Fireworks》~バンドネオンと室内オーケストラのための~」について。単旋律の音楽ということで、約27分全3曲一貫した単旋律で構成されています。

単旋律というキーワードを掘り下げたときに、「Single Track Music 1」(吹奏楽版・2014年)「Single Track Music 1」(サクソフォン四重奏と打楽器版・2015年/「Minima_Rhythm II」CD収録)があります。この作品を聴いたときに、なにか新しい挑戦がはじまった布石のような作品かもしれない、と少し時間が経過してから思った記憶があります。このSingle Track(=単旋律の音楽、線の音楽)が久石譲のなかでも大きなテーマのひとつになっていることを今回パンフレットでも感じとることができました。

単旋律について多くを語ることができません。なにが醍醐味でなにが組み立ての妙で、という専門的なことがまったくわからないからです。パンフレット久石譲解説と、「Singe Track Music 1」の吹奏楽版久石譲解説、CD作品「ミニマリズム2」評論家による専門的解説の項を読んでいただき、理解を深めていただければ幸いです。

 

今言えること。約27分にも及ぶ長大な単旋律にもかかわらず、決して単調とも単純とも思うことの絶対にない豊かで広がりのある作品。この先どんな展開をしていくのか気になって仕方のないあっという間の時間。単旋律ながら広がり奥ゆき厚みのある立体的な音楽。不思議な迫力です。

三浦一馬さんのバンドネオンも相当な演奏難易度だったと思います。張り詰めた緊張感と真剣なる熱演。久石譲指揮とオーケストラ奏者、ステージ全体が気迫に包まれそのエネルギーだけでも圧倒されてしまうほど。「今自分たちが届けたい音楽はこうだ!」と野心と確信にみなぎったオーラで、それはまさに狂気。

なにか不思議な魅力を感じます。とても個人的な解釈だけでもって言葉にすることを許されるならば。始点と終点がわからない魅力、待ちうける展開の魅力。単旋律ということはハーモニーがない、和声がないということですよね(ここが間違っていると根底から覆される)。どこまでも1本の旋律であり多声の伴奏や対旋律のない音楽。メロディやコード進行がはっきりしているということはその音楽の起承転結がわかりやすいということです。小学校の「起立・礼・着席」をピアノで伴奏することもコード進行のひとつです。全3曲ともにパートが展開しているはずなのですが、どこが始点かどこが終点かわからない。次につながる展開もよめない。フィリップ・グラス「Two Pages」は4-5音からなる基本音型(モチーフ)があってそれが伸縮展開していくわけですが、久石譲作品は単旋律が様々な装いでおり重なっているように聴こえます。実に入りくんでいる、実に難しい、としか言えないのです。

実際に鳴っている楽器や音色はとても緻密で細かく配置され豊かな世界を構築しているのだけれど、別の見方をすると全体を大きく太い線1本で貫かれているような。そして、普段耳にする多くの音楽が複旋律・多声音楽(ポリフォニー)であり、それぞれが独立した旋律をもつことで音楽三要素のメロディ・ハーモニー・リズムがつくられ、メロディと異なる伴奏や対旋律によって奏でられているとしたときに。これはすごい!と思うわけです。単旋律でメロディ(モチーフ)を奏でることはもちろん、分散和音のように音を散らすことやおり重なって交錯する単旋律がハーモニー的響きを錯覚させ、ズレや変化によってグルーヴ感のあるリズムを生み出す。もしあまりにも見当違いな勘違いをしていないのならば、これはすごい!と思うわけです。

こういう音楽って聴き飽きることがないだろうな、とまたすぐにでも聴きたい衝動にかられます。ループのようでありエンドレスのようであり、でも同じところをぐるぐる廻っているわけではなく螺旋のように上昇下降と展開をもった音楽。単旋律って日本固有の響きとしても親和性があるのかなあ、そんなことも頭をかすめたりしますが、今感覚だけで語るのはここまで。ぜひ1年越しにCD化されるならば、そのときにまたしっかり向き合って聴き楽しみたい作品です。

 

さて、三浦一馬さんについて。以前音楽番組で聴いた作品が強く印象に残っています。バンドネオン協奏曲「TANGOS CONCERTANTES」すぐにCDを探したのを覚えています。全3楽章からなる作品でテレビではたしか第3楽章(抜粋もしくは編集)でした。師匠でありバンドネオンの世界的権威でもあるネストル・ マルコーニ作曲とあります。これがすごくかっこいい!バンドネオンとオーケストラによるタンゴでありながら新しい響き。全楽章とおして聴いてみたいと探したのですが、まだ録音はされていないんですね。とても大切な作品なのだろうと思うのですが、いつの日かその全貌を聴いてみたいです。また11月には久石譲が芸術監督を務める長野市芸術館でもリサイタル公演があります。今回のミュージック・フューチャー・コンサートのリハーサル風景も公式Facebookに掲載されていました。ぜひチェックしてみてください。

 

 

コンサート終演後の観客の拍手も鳴り止むことがなく、何度も舞台袖から久石譲はじめ奏者の皆さんが再登場し大盛況で幕をとじました。決してポピュラーでも馴染みのある音楽でもない前衛的・実験的・意欲的なこのようなコンサートで、ここまでの拍手(もちろん満員御礼)って珍しいと思います。それだけに真剣勝負の選曲・演奏に感動し、そんな貴重な時間を提供してくれたことへの感謝と感動の拍手だったのかもしれません。言葉にならない感動、まだ消化できていないなにかを表すこと、それが体全体で表現する拍手しかなかったように。たしかに観客にも忍耐を必要とするプログラムかもしれません。とするなら忍耐を通って得た解放が、あの瞬間ステージとオーディエンスをつないだのだと思います。なにかが伝わった、なにかを受けとった、音楽のもつかけがえのない瞬間です。

コンサート会場には献花もたくさんありました。これから先の久石譲活動をうかがわせるような献花もあるのかなあと、ついつい順を追って見してしまいます。ただ札だけではわからないものもありますからね、なにつながりだろうと。そして、今年vol.4は例年以上に若い観客が多かったようにも思います。もし毎年恒例夏W.D.O.コンサートを聴いて、それとは異なる志向のコンサートがすぐ秋にあるなら行ってみたいと思ったり、いろいろな久石譲を感じとってみたいと思う人がふえているなら、とても素敵なことだと思います。またシリーズが定着し、今年こそはと楽しみにしていた音楽ファンもきっといると思います。

 

同コンサートの様子については、下記Webニュースでも詳しく取り上げられていますので、より音楽的な理解はこちらのほうが最適だと思います。ぜひご覧ください。

 

 

 

最後になんともうれしいサプライズ。コンサートにあわせて会場でのみ先行販売されたのが11月22日発売予定の新譜CD「MUSIC FUTURE II」。昨年2016年開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.3」ライヴ音源化です。なんの予告もなかっただけに会場に着いてのサプライズ、約1ヶ月以上も先行して手に取ることができる喜びです。

さらには「MUSIC FUTURE II」会場購入者の先着特典として、コンサート終演後久石譲によるサイン会参加券付き!久石譲がコンサートにあわせてサイン会を実施するなんてかなり希少です。両日あわせると80-100人以上はサイン会の列を作っていたのでは。終演直後の安堵と疲労のなか、この人数だとかなりの時間も要するなか、そんな機会に恵まれた観客にとってはうれしい記念です。

コンサートで新しい音楽を体感し、同じシリーズである昨年のCD盤をいち早く入手でき、さらにサインや握手までしてもらえた日には。もちろん来年以降、サイン会まで実施してもらえるかはわかりませんが、コンサート・シリーズがつづくかぎり、必ず毎回新しい音楽を受けとることができるミュージック・フューチャーです。なによりも回を重ねしっかりとその足跡を残しつづけていること、音源化され多くの人が聴くことができること、そしてCDとして未来へ手渡していけることが、素晴らしいことだと思います。

 

 

 

”現代(いま)の音楽”を伝える──ナビゲーターでありクリエーターである「久石譲 presents ミュージック・フューチャー」コンサートシリーズ。毎年1回2公演とはいえ、企画からプログラミング、自作創作から入念なリハーサルまで。とてつもないエネルギーと集中力をすでに4年間も続けている。そして観客もしっかり入り刺激的な大盛況でカーテンコール。来年以降も新旧入り乱れたディープな音楽を届けてくれることへ期待が高まります。うまく言えませんが、ミュージック・フューチャー・コンサートそれは「今を生きているんだ」と改めて感じさせてくれるのかもしれません。

 

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