Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』

2017年11月22日 CD発売 OVCL-00640

 

『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』
久石譲(指揮) フューチャー・オーケストラ

久石譲主宰Wonder Land Records × クラシックのEXTONレーベル夢のコラボレーション第2弾!未来へ発信するシリーズ!

久石譲が“明日のために届けたい”音楽をナビゲートするコンサート・シリーズ「ミュージック・フューチャー」より、アルバム第2弾が登場。

2016年のコンサートのライヴ・レコーディングから、選りすぐりの音源を収録した本作には、“現代の音楽”の古典とされるシェーンベルクの《室内交響曲第1番》に加え、アメリカン・ミニマル・ミュージックのパイオニアであるライヒの人気作《シティ・ライフ》、そして久石譲の世界初演作《2 Pieces》が並びます。新旧のコントラストを体感できるラインナップと、斬新なサウンド。妖・快・楽──すべての要素が注ぎこまれた究極の音楽を味わえる一枚です。

日本を代表する名手たちが揃った「フューチャー・オーケストラ」が奏でる音楽も、高い技術とアンサンブルで見事に芸術の高みへと昇華していきます。レコーディングを担当したEXTONレーベルが誇る最新技術により、非常に高い音楽性と臨場感あふれるサウンドも必聴です。

「明日のための音楽」がここにあります。

ホームページ&WEBSHOP
www.octavia.co.jp

(CD帯より)

 

 

解説 小沼純一

2016年におこなわれた「MUSIC FUTURE」、久石譲が始めたこのシリーズ、第3回目のコンサートで演奏された3作品を収録したのがこのアルバムとなります。初回が2014年で、「Vol.1」はヨーロッパの作品を、「Vol.2」ではアメリカ合衆国の作品を、そして今回、「Vol.3」ではヨーロッパの20世紀音楽の「古典」と、20世紀の終わりから21世紀現在のアメリカ、そして久石譲の作品をプログラムしています。

「MUSIC FUTURE」では、コンサート・ステージにはなかなかのらない「現代」の作品がプログラムされています。もしかしたら動画サイトなどで聴くことができる音楽もあるでしょう。でも、たくさんの音源がならんでいるなかから、ひとつの楽曲を選び、聴く、ことは容易ではありません。いえ、聴くことはできるでしょうが、何らかの見取り図のなかで聴いてみる、ある歴史性のなかで聴いてみる、というのはコンサートだからできる、コンサートという90分から2時間の「枠」のなか、誰かコーディネイトをする人がいてこそ、単独の楽曲がランダムにならぶだけではない、立体的な構成ができることではないでしょうか。そして、演奏する人たちの表情、姿、しぐさ、ナマでむこうやこっちからやってくる音とともに、そばにいる人たちが感じているもの、反応が、空気を媒介にして肌に届いてくる、そんななかで「聴く」ことが新しい体験になる。「MUSIC FUTURE」にはそんな意図があるようにおもえます。そして、ただコンサートで終わるだけではなく、ひとつの記録としてのCDアルバムができ、そういえばこの前のコンサートでおもしろかったあの曲を、とホールで手にとることができ、自宅で聴くことができれば、どうでしょう。コンサートでとはまた異なった体験が得られるかもしれないし、はじめてではわからなかったことに気づけるかもしれません。コンサートがあり、録音がある、とは、こうした体験の輻輳化が可能になることです。

アルバムでは、「Vol.3」のコンサート当日に演奏された5作品のなかから、3曲を収録しています。演奏された楽曲の数と、CDでの録音の数とは、「Vol.2」とおなじです。

ちょっと耳にすると小難しい、とりとめがない、そんな「現代音楽」を最初につくったといわれているひとり、シェーンベルク(1874-1951)の初期の作品から、21世紀も10年代になって発表された久石譲(1950-)の新作、最後に、20世紀もすぐ終わりといった時期のライヒ(1936-)の作品へ。

小難しい、とりとめのなか、そんな「現代音楽」という言い方をしました。でも、このアルバムに収められているシェーンベルクの作品は、そうした小難しさやとりとめのなさはありません。そんなふうになる「以前」の作品なのです。そして、その意味では、ほぼ110年の広がりを持つヨーロッパ・アメリカ合衆国・日本で生まれた作品ではありますけれど、ひとつの調性システム、ドレミファを基本に据えた音楽のさまざまなかたち、ということができるでしょう。「現代音楽」と呼ばれながらも、その広がりもまたかなりある。そんなことがこのコンサート、アルバムから知ることができるのです。

 

シェーンベルク:
室内交響曲第1番 ホ長調 作品9

「室内楽」ということばがあります。「交響曲」ということばもあります。その両方がくっついたような「室内交響曲」がここにあります。それほど多くはありませんが、いまでは「室内オーケストラ(管弦楽団)」もあります。ところが、20世紀になるまで、このフォーマットの作品はなかったのです。いえ、ダンスの音楽やソングの伴奏などにはあったのです。しかし、シリアスな作品がならぶコンサートではありませんでした。シェーンベルクは「室内交響曲」を2曲つくっていますが、これはその「第1番」で、その意味では世界ではじめて「室内楽」としてはちょっと大きい、「オーケストラ」としてはかなり小さい楽器編成で、代替のきかない音楽作品を生みだしたのです。「MUSIC FUTURE」は、(1管編成の)室内オーケストラに拘ったプログラミングをしてきていますから、そうした室内オーケストラの原点といえるシェーンベルク《室内交響曲第1番》をとりあげているのはひじょうに意味があります。

編成はピッコロ/フルート、オーボエ、コーラングレ、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット、コントラファゴット、ホルン2、弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)、コントラバスの15人。ただ人数が少ない、というだけではありません。それぞれの演奏家はアンサンブルの一員であるとともに、ソリストとしての責任を課されています。そこも新しいところです。そして、作曲者自身というところの音色旋律(Klangfarbenmelodie)を用いて、通常のメロディーとは違った、音色の変化そのものがメロディーとして認識されるといった手法が用いられています。シェーンベルクがここまで試してきたさまざまな作曲上の技法が、ここでは綜合されている、とみる人もいます。

全体はひとつの楽章からなっていますけれども、提示—スケルツォ—展開—アダージョ—終曲の5つの部分からなっています。いわば、1楽章のソナタのかたちと多楽章のかたちとをひとつに集約したとみられ、モデルとしてはフランツ・リストの《ピアノ・ソナタ》を挙げられます。

作曲は1906年。翌1907年にウィーンで作曲者自身の指揮で初演。1913年にも自身が指揮し、そのときは弟子のアントン・ヴェーベルン《6つのバガテル》とアルバン・ベルク《アルテンベルク歌曲集》の一部もプログラムにあって、一種のスキャンダルになりました。またアメリカ合衆国に亡命後、1935年にはより大きな編成のオーケストラに改変、「作品9-b」としてロスアンジェルスで演奏しています。

 

久石譲:
2 Pieces for Strange Ensemble

「MUSIC FUTURE Vol.3」、2016年10月に初演された作品です。タイトルをみると、それだけで「?」となるかもしれません。「Strange Ensemble」って何だろう?と。2つの対照的な楽曲がならびます。はじめは休止のはいり方、音のなくなり方で、ちょっとどきっとします。休止符は、そう、ときに、とても聴き手を驚かせるものなのです。〈Fast Moving Opposition〉は、まさにそうした休止を、反復音型のあいまになげこむことで、「聴き始め」のショックを与えます。そこからふつうのリズム・パターンになりますが、すると逆に、変化のないパターンに足で1拍1拍をとりながら、べつの音型の出現や休止、音色の変化などに上半身で反応してゆく、といったふうになります。〈Fisherman’s Wives and Golden Ratio〉は、画家サルバドール・ダリの作品からタイトルをとっていて、しかも、曲そのものとはつながりがない、と久石譲はプログラムノートに記していました。ここでは複数のリズムと、楽器「以外」の音色とがないまぜになります。ある意味、先のシェーンベルク《室内交響曲第1番》での音色旋律を現代風に踏襲しているといえるかもしれません。

 

スティーヴ・ライヒ:
シティ・ライフ

1936年生まれのスティーヴ・ライヒは、ここであらためて紹介するまでもなく、現代アメリカ合衆国を代表する作曲家というだけでなく、1960年代に生まれた「ミニマル・ミュージック」の創始者のひとりです。振り子が行ったり来たりするなかでスピーカーがハウリングをおこす作品や、2人のピアニストがおなじ音型を反復しながら少しずつずれてゆく作品といった、ひじょうにラディカルな「ミニマリズム」から、ほぼ50年、その音楽は、反復性を基本としながらも、大きく変化してきました。そして《シティ・ライフ》は、狭義の「ミニマル・ミュージック」では測りきれない独自性をもった作品です。

タイトルどおり、この作品は、都市での生活がテーマになっています。作曲者自身が住むニューヨークの街の音、環境音がサンプリングされ、作品のなかでひびきます。ピアノやマリンバといった楽器によるリズムは人びとの歩いたり生活したりするリズムを、管楽器や弦楽器による持続音はビル街の存在感や活気のある街の空気を、そしてサンプリングされた音は、楽器音のなかにより具体的な都市間をつくりだす──そんなふうにみることもできるでしょう。でもそうだとしたら、サンプリングされた都市の音はただの素材にすぎません。それだけではなく、ここにあるのは、聴く人が、コンサートホールで演奏を聴いたり、自室のステレオで録音を聴いたりという環境と、一歩外にでて街のなかを歩くことがパラレルになっている、その二重三重の、いわばヴァーチャルな音環境が「作品」化されているところになります。《シティ・ライフ》は心地良い音楽です。他方、こういう環境があたりまえで、かつ心地良いというのはどういうことなのか、人が生きている、生活しているときにかかわる音や音楽はどうあったらいいのか、そんなことも作品は問い掛けてきます。つまりは、カナダの作曲家、マリー.R.シェーファーが提起した、「サウンドスケープ」という概念を、音楽作品をとおして、喚起している──そんなふうに言ったら、うがちすぎでしょうか。

1995年、3つの国の現代音楽アンサンブル(ドイツのアンサンブル・モデルン、イギリスのロンドン・シンフォニエッタ、フランスのアンサンブル・アンテルコンタンポラン)からの共同委嘱により作曲。全体は5つの部分からなります。奇数の楽章には声のはいったサンプリングが用いられるのも特徴です。

編成はフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ピアノ2、サンプリング・キーボード2、パーカッション3または4、弦楽四重奏、コントラバス、です。

(こぬま・じゅんいち)

(「MUSIC FUTURE II」CDライナーノーツ より)

 

 

~「MUSIC FUTURE Vol.3」コンサートプログラムより

挨拶 久石譲

今年で3回めを迎えることができて、主催者として大変うれしい限りです。本来インディーズとして小さな集いでしか発表できない現代の楽曲をこの規模で行えることは、評論家の小沼純一さん曰く「世界でもあり得ないこと」なのだそうです。徐々に皆さんからの支持をいただいていることは、多くの優れた演奏家から出演してもいいという話をいただくことからも伺えます。新しい体験が出来るこの「MUSIC FUTURE」をできるかぎり継続していくつもりです。

自作について

《2 Pieces for Strange Ensemble》はこのコンサートのために書いた楽曲です。当初は「室内交響曲第2番」を作曲する予定でしたが、この夏に《The East Land Symphony》という45分を超す大作を作曲(作る予定ではなかった)したばかりなので、さすがに交響曲をもう一つ作るのは難しく、それなら誰もやっていない変わった編成で変わった曲を作ろうというのが始まりでした。

ミニマル的な楽曲の命はそのベースになるモチーフ(フレーズ)です。それをずらしたり、削ったり増やしたりするわけですが、今回はできるだけそういう手法をとらずに成立させたい、そんな野望を抱いたのですが、結果としてまだ完全に脱却できたわけではありません、残念ながら。発展途上、まだまだしなくてはいけないことがたくさんあります。

とはいえ、ベースになるモチーフの重要性は変わりありません。例えばベートーヴェンの交響曲第5番「運命」でも第7番でも第9番の第4楽章でも誰でもすぐ覚えられるほどキャッチーなフレーズです。ただ深刻ぶるのではなく、高邁な理念と下世話さが同居することこそが観客との唯一の架け橋です。

ベートーヴェンを例に出すなどおこがましいのですが、今回の第1曲はヘ短調の分散和音でできており、第2曲は嬰ヘ短調(日本語にすると本当に難しそうになってしまう、誰か現代語で音楽用語を作り替えてほしい)でできるだけシンプルに作りました。しかし、素材がシンプルな分、実は展開は難しい。どこまでいっても短三和音の響きは変わりなくさまざまな変化を試みるのですが、思ったほどの効果は出ない。ミニマルの本質はくり返すのではなく、同じように聞こえながら微妙に変化していくことです。大量の不協和音をぶち込む方がよっぽど楽なのです。その壁は沈黙、つまり継続と断絶によって何とか解決したのですが、それと同じくらい重要だったのはサウンドです。クラシカルな均衡よりもロックのような、例えればニューヨークのSOHOでセッションしているようなワイルドなサウンド(今回のディレクターでもあるK氏の発言)を目指した、いや結果的になりました。

大きなコンセプトとしては、第1曲は音と沈黙、躍動と静止などの対比、第2曲目は全体が黄金比率1対1.618(5対8)の時間配分で構成されています。つまりだんだん増殖していき(簡単にいうと盛り上がる)黄金比率ポイントからゆっくり静かになっていきます。黄金比率はあくまで視覚の中での均整の取れたフォームなのですが、時間軸の上でその均整は保たれるかの実験です。

というわけで、いつも通り締切を過ぎ(それすらあったのかどうか?)リハーサルの3日前に完成? という際どいタイミングになり、演奏者の方々には多大な迷惑をかけました。額に険しいしわがよっていなければいいのですが。

1.〈Fast Moving Opposition〉は直訳すれば「素早く動いている対比」ということになり、2.〈Fisherman’s Wives and Golden Ratio〉は「漁師の妻たちと黄金比」という何とも意味不明な内容です。

これはサルバドール・ダリの絵画展からインスピレーションを得てつけたタイトルですが、すでに楽曲の制作は始まっていて、絵画自体から直接触発されたものではありません。ですが、制作の過程でダリの「素早く動いている静物」「カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽」が絶えず視界の片隅にあり、何かしらの影響があったことは間違いありません。ただし、前者の絵画が黄金比でできているのに対し、今回の楽曲作りでは後者にそのコンセプトは移しています。この辺りが作曲の微妙なところです。

日頃籠りがちの生活をしていますが、こうして絵画展などに出かけると思わぬ刺激に出会えます。寺山修司的にいうと「譜面(書)を捨てて街に出よう」ですかね(笑)

いろいろ書きましたが、理屈抜きに楽しんでいただけると幸いです。

(ひさいし・じょう)

(「MUSIC FUTURE II」CDライナーノーツ より)

 

 

フューチャー・オーケストラ
Future Orchestra

2014年、久石譲のかけ声によりスタートしたコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」から誕生した室内オーケストラ。現代的なサウンドと高い技術を要するプログラミングにあわせ、日本を代表する精鋭メンバーで構成される。”現代に書かれた優れた音楽を紹介する”という野心的なコンセプトのもと、久石譲の世界初演作のみならず、2014年の「Vol.1」ではヘンリク・グレツキやアルヴォ・ペルト、ニコ・ミューリーを、2015年の「Vol.2」ではスティーヴ・ライヒ、ジョン・アダムズ、ブライス・デスナーを、2016年の「Vol.3」ではシェーンベルクのほか、マックス・リヒターやデヴィット・ラング等の作品を演奏し、好評を博した。”新しい音楽”を体験させてくれる先鋭的な室内オーケストラである。

(CDライナーノーツ より)

 

 

 

久石譲:2 Pieces for Strange Ensembleについて

編成は、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ヴィブラフォン、パーカッション、ドラムス、ピアノ 2、サンプリング・キーボード、弦楽四重奏 チェロ、コントラバス、だったと思います。こちらもスティーヴ・ライヒ作品にもあったような、アコースティック楽器(アナログ)とサンプラー(デジタル)の見事な融合で、至福の音空間でした。デジタル音は低音ベースや低音パーカッションで効果的に使われていたように思います。一見水と油のような特徴をもったそれらが、よくうまく溶け合った響きになるものだと感嘆しきりでした。CDならば、ミックス編集などでバランスは取りやすいかもですが、コンサート・パフォーマンスで聴けたことはとても貴重でした。

例えば、ピアノを2台配置することで、ミニマル・フレーズをずらして演奏している箇所があります。ディレイ(エコー・こだま)効果のような響きになるのですが、CDだと、コンピューターで編集すれば、ピアノ1の音色をそのまま複製して加工すればいい、などと思うかもしれません(もちろん割り振られたフレーズが完全一致ではないとは思いますが)。そういうことを、アコースティック・ピアノ2台を置いて、互いに均一の音幅と音量で丁寧にパフォーマンスしていたところ、それを直に見聴きできたことも観客としてはうれしい限りです。

1.「Fast Moving Opposition」は、前半12拍子と8拍子の交互で進みます。これも指揮者を見る機会じゃないとおそらく聴いただけではわかりません。この変拍子によって久石譲解説にもあった今回の挑戦である「音と沈黙、躍動と静止、継続と断絶」という構成をつくりだしているように思います。中盤からドラムス・パーカッションが加わり、4拍子独特のグルーヴ感をもって展開していきます。

2.「Fisherman’s Wives and Golden Ratio」は、こちらも指揮者を見ても拍子がわからない変拍子でした。「黄金比率の時間配分で構成」についてはまったくわかりませんでした、難しい。管楽器奏者が口にマウスピースのみを加えて演奏するパートもありました。声なのか音なのか、とても不思議な世界観の演出になります。

言うなれば、贅沢な公開コレーディングに立ち会っている感覚すら覚えたほどです。アコースティック楽器とデジタル楽器、スタジオ・レコーディングならば、1パートずつ録音していくようなそれを、一発勝負で響かせて最高のテイクを奏でるプロたち。スコアを視覚的に見て取るように「あ、今のこの音はこの楽器か」とわかるところも含めて、贅沢な公開レコーディングに遭遇したような万感の想いです。

おそらくとても難解、いやアグレッシブな挑戦的なこと高度なことをつめこんでいる作品だろうと思います。一聴だけでは、第一印象と目に見えた範囲のことでしか語れないので、あまり憶測やふわっとした印象での見解は控えるようにします。1年後?CD作品化された暁には、聴けば聴くほどやみつきになりそうな、味わいがにじみ出てくるような作品という印象です。

 

素早く動いている静物
《素早く動いている静物》 (1956年頃) サルバドール・ダリ

 

カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽
《カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽》 (1928年頃) サルバドール・ダリ

 

Blog. 「久石譲 presents ミュージック・フューチャー vol.3」 コンサート・レポート より所感抜粋)

 

 

 

CD鑑賞後レビュー追記

全編をとおして、耳が喜ぶ刺激、そんな音楽です。レコーディングとしても非常にクオリティの高い最高音質には脱帽です。よくぞここまで刻銘に記録してくれました!という言うことでしか表現が浮かびません。

コンサートで聴いたときとはまた違う、収まりのいい録音という音響だからこそ、見えてくる緻密さや聴こえてくる前後左右からの音、新しい発見がたくさんあります。小編成コンサートのシャープでソリッドで立体的な響き、作品の特性もあるのかときにむきだしなほどに鋭利な楽器の音たちは、それだけでも一聴の価値があるほど、ふだんの日常生活ではまた日常音楽では聴くことのできないものです。

 

久石譲作品について。

重厚でパンチの聴いたサンプリング・ベースがかっこいい。この作品を支配する大きな軸になっていると思います。クラブ・ミュージックを彷彿とさせながらも、音と沈黙によって一筋縄ではいかない、踊り流れておわってしまうことのない不思議な世界観を醸しだしています。またこの作品で追求した構成やサンプリング音(低音や金属音の種)は、その後「ダンロップCM音楽」(2016)やNHK「ディープ・オーシャン」(2016-2017)といったエンターテインメント音楽へも派生していきます。そういう点においても、実験的な試みをしただけにとどまらず、今久石譲が求める音を追求したワイルドなサウンドまで。具現化した完成度の高さでこの作品が君臨したからこそ、その先へつながっていると思うと、重要なマイルストーンとなる作品です。なにはともあれ、理屈うんぬんかっこいい!聴けば聴くほどに味がでる、今までに聴くことのできなかった新鮮で刺激的な音楽に出会えたことはたしかです。これがこれから長い時間をかけて聴きなじみ自分のなかへ吸収されていくとしたら、それはまさに快楽といえるでしょう。

 

 

 

アルノルト・シェーンベルク
Arnold Schönberg (1874-1951)
1. 室内交響曲 第1番 ホ長調 作品9 (1906)
 Chamber Symphony No.1 in E major, Op.9

久石譲
Joe Hisaishi (1950-)
2 Pieces for Strange Ensemble (2016) [世界初演]
2. 1. Fast Moving Opposition
3. 2. Fisherman’s Wives and Golden Ratio

スティーヴ・ライヒ
Steve Reich (1936-)
シティ・ライフ (1995)
City Life
4. 1 Check it out
5. 2 Pile driver / alarms
6. 3 It’s been a honeymoon – can’t take no mo’
7. 4 Heartbeats / boats & buoys
8. 5 Heavy smoke

久石譲(指揮)
Joe Hisaishi (Conductor)
フューチャー・オーケストラ
Future Orchestra

2016年10月13日、14日、東京、よみうり大手町ホールにてライヴ録音
Live Recording at Yomiuri Otemachi Hall, Tokyo, 13, 14 October, 2016

 

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE II

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Future Orchestra
Live Recording at Yomiuri Otemachi Hall, Tokyo, 13, 14 October, 2016

Produced by Joe Hisaishi
Recording & Mixing Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineer:Takeshi Muramatsu
Mixed at EXTON Studio, Tokyo
Mastering Engineer:Shigeki Fujino (UNIVERSAL MUSIC)
Cover Desing:Yusaku Fukuda

and more…

 

“Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』” への2件の返信

  1. 현대음악은 처음 들을 때에는 어리둥절하지만, 여러번 반복해 듣다보면 어느순간부터 즐기게 되더군요. Joe Hisaishi 덕분에 현대음악을 접하게 됐습니다. 2 Pieces for Strange Ensemble 를 가장 기대하고 있습니다! Steve Reich의 City Life도 어떻게 공연됐는지 어서 듣고싶네요!

    1. ほんとそうですね。現代音楽は何度も繰り返し聴いていくと楽しめる瞬間がくるのかもしれませんね。

コメントする/To Comment