Blog. 「月刊ピアノ 2005年9月号」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/04/02

雑誌「月刊ピアノ 2005年9月号」に掲載された久石譲インタビュー内容です。

 

 

”ハウル”も含む最新アルバム完成!自ら監督するオケをもつ意味を語る

理想があるんだ。だからもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)

組曲「DEAD」はいかにして生まれたのか? 音楽監督と指揮を務める新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの次なるステージは? アメリカの映画音楽の巨匠J・ウィリアムズと久石の音楽性の違いは? などなど。どんな質問にも、穏やかに笑いながら鋭い答えを返してくる久石譲。揺るぎない確信から生まれた大きな余裕。そんなものを感じた。

 

オケのメンバーは”久石のフォルテはこれだ!”ってわかってる

ーやはり『WORKS III』で特筆すべきは、組曲「DEAD」だと思うのですが。これは数年前にご自分がメガホンを取る予定だった映画のために書いた曲だそうですね。

久石:
「そう。4、5年前ですね。でもその映画の内容が、人が死んだりとか、ちょっときついものだったので、時期をみようということになって、先に『カルテット』を撮ったんです。でもテーマ曲はできていて、そのときは2曲だけだったけど、僕の頭の中では4楽章の組曲にしようと思っていまして。今年こそは完成させたくてね。やっと発表できました。今回のアルバムはこの曲のために作った、といっても過言じゃないくらい(笑)」

ーDEADのスペルD,E,A,Dを音名に置き換えた、レ、ミ、ラ、レを主に使った作りになってるんですね、どの楽章も。おもしろい。

久石:
「映画の内容を考えながら、最初に思いついたアイデアだったんだけど、明快でしょう。明快だから音のインパクトも強い。だからどうしても弦楽オーケストラでやりたかったんです。フルだといろんな音色がありすぎちゃって派手になっちゃうから。弦だけの方がきっと深い世界が表現できるなあと思ってね」

ー元々久石さんがやってらっしゃった、現代音楽的なアプローチの作品ですよね。特に3楽章なんか、バリバリ、ミニマルですね。

久石:
「やっぱりそれは僕の本籍地みたいなものだから。すごく真剣になるとスタンスがそこに戻っちゃうんだよね、どうしても。でもね、もう一歩踏み込んじゃうと、ほんとうに現代音楽の作品になっちゃうんだけど、僕がいまやってるフィールドで考えると、それをポップスという世界の中に留める、ということが大事になってくるんです。僕は特別な人たち相手に音楽を作る芸術家じゃないからね。宮崎映画とか北野映画から僕の音楽を知ってくれたような多くの人たちと、コミュニケーションできる音楽でなくちゃいけないんです。今回はそのギリギリ(笑)。だいぶ挑戦的なことはしたなと思いますけどね」

ーところで、ワールド・ドリーム・オーケストラの音楽監督に就任されて1年経ちますが、オーケストラとの活動はいかがですか?

久石:
「作家としては最高に幸せなオケとの関係ができてると思いますね。おもしろいのはね、譜面にあるフレーズ、たとえばチェロなんて、譜面通りに弾けば、フォルテであっても、タ~ラ~ラ~って、上品に弾くんだけど、僕の楽譜にこういうフレーズでフォルテなんて書いてあると、なんの指示も出さないのにみんなガンガン弾きだすの(笑)。久石のフォルテはこれだって、もうわかってるんだよね」

ー確かに、記号のフォルテが、作曲家の頭の中に鳴ってるフォルテのイメージと同じというわけではないですもんね。

久石:
「譜面は表現できる範囲が意外と狭いですね。どんなに精密に書いて、その通りに演奏したっていい演奏になるわけじゃない。譜面の後ろにある世界というか、それぞれの演奏家が解釈できる範疇、そこに音楽家の個性が生まれるわけでね。そういう意味では自分が監督してるオーケストラがあるというのは本当に素晴らしいです。誰よりも僕の好きな音を出してくれるからね。今年の冬、ワールド・ドリーム主体のコンサートをやるんですけど”12月の恋人たち”というタイトルで、『白い恋人達』『シェルブールの雨傘』『男と女』……フレンチ・ムービーの曲を僕がアレンジします。あとコール・ポーターを、外人シンガーを呼んでやろうと思っていて。恋人同士で来るには最高のコンサートだと思うよ」

ー本当にハイペースに、次々とアイデアが湧いてくるんですねえ。

久石:
「ワールド・ドリームが好きだから、どんどんアイデアが出てきちゃうんです。だってもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)。あとね、僕には理想があって……僕のコンサートの次の日にフルオケでマーラーを聴きに行く、なんていう人はあんまりいないと思うんですよ。そういう人たちに、クラシックの敷居はそんなに高くないんだって知ってもらいたくてね。だから冬のコンサートでも、フレンチムービー音楽とコールポーターと一緒に、ラヴェルのボレロもやるんです。別にクラシックの入門編をやりたいわけじゃなくて、クラシックにもポップスにも、こんなにいい音楽があるんだよって、垣根なくみんなに知ってもらいたいんだよね。たとえば『シェルブールの雨傘』のあとにブラームスの3番の3楽章なんかをやって、これっていい曲だなあって、先入観なしに聴いてもらえれば嬉しいじゃない。ワールド・ドリームではそういうことをどんどんやっていきますよ」

ーここまでたくさんの大作映画の音楽を次々に手がけていらっしゃる久石さんを”日本のジョン・ウィリアムズ”と呼ぶ声も多く聞かれます。ご自分では嬉しいことですか? 不本意なことですか?

久石:
「やっぱりオーケストラを扱って映画音楽をやってるから比べられるのはしょうがないと思うし、昨年、ワールド・ドリームでスター・ウォーズのテーマを自分で振ってみてよくわかったんだけど、あれだけのクオリティと内容のオーケストレーションをやれる人はいないですよ。すごく尊敬してるし、僕なんかまだまだだな、と思います。でもね、実際の音楽でいうと、僕と彼の作るものはまるで違うんですよ。僕は東洋人なので、5音階に近いところでモダンにアレンジしてやったりするものが多いんです。でもJ・ウィリアムズはファとシに非常に特徴がある。正反対のことをやってるんです。それはすごくおもしろいなあと思いますね。音楽の内容も方法論も違うけど、僕もあれくらいのクオリティを保って作品を発表し続けたいですね」

(月刊ピアノ 2005年9月号より)

 

 

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