Blog. 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第276回 定期演奏会」コンサート・レポート

Posted on 2023/10/15

2023年10月13日、「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第276回 定期演奏会」が開催されました。久石譲は2021年に日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任して以来数多くの定期演奏会・特別演奏会を精力的に行っています。本公演では世界的活躍で脚光を浴びているヴィオリストのアントワン・タメスティを迎えての華やかな公演となりました。

 

 

日本センチュリー交響楽団 定期演奏会 #276

[公演期間]  
2023/10/13

[公演回数]
1公演
大阪・ザ・シンフォニーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴィオラ:アントワン・タメスティ

[曲目]
シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120
久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

—-Soloist Encore—-
バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007より プレリュード (ヴィオラバージョン)
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 第1番 Op.25より 第4楽章

—-intermission—-

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

—-Orchestra Encore—-
Kiki’s Delivery Service

[参考作品]

 

 

まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。

 

 

Program Notes

首席客演指揮者の久石譲が2023-24シーズンでは初登場となる定期演奏会です。自身の作品を軸に交響曲2曲の名作が組み合わされました。久石指揮の日本センチュリー交響楽団は、この定期演奏会の直後に第35回マカオ国際音楽祭に参加し、2公演に出演します。本日の定期のプログラムは『久石譲360 非凡傳奇』と題され、10月21日にマカオ文化センターでの開催が予定されています。

 

シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120

(*割愛)

 

久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

久石譲(1950-)の《Viola Saga》は下記の作曲者自身の言葉にあるように、2022年10月に紀尾井ホールで開かれた『Music Future vol.9』で初演された作品を、2023年7月に東京オペラシティコンサートホールと長野市芸術館メインホールで開催された『Future Orchestra Classics vol.6』でオーケストラ作品に書き換えて再演したもの。前者の独奏者がナディア・シロタで、後者の独奏者が本日演奏することになったアントワン・タメスティでした。

Viola Sagaは2022年のMusic Future vol.9で初演した作品だが、今回Violaとオーケストラの協奏曲として再構成した。タイトルのSagaは日本語の「性ーさが」をローマ字書きしたもので意味は生まれつきの性質、もって生まれた性分、あるいはならわし、習慣などである。同時に英語読みのSagaは北欧中世の散文による英雄伝説とも言われている。あるいは長編冒険談などの意味もある。仮につけていた名前なのだが、今はこの言葉が良かったと思っている。曲は2つの楽曲でできていて、I.は軽快なリズムによるディベルティメント、II.は分散和音によるややエモーショナルな曲になっている。特にII.はアンコールで演奏できるようなわかりやすい曲を目指して作曲した。が、リズムはかなり複雑で演奏は容易ではない。(久石譲)

 

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

(*割愛)

 

(「日本センチュリー交響楽団 第276回定期演奏会 2023年9,10月プログラム冊子」より)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

早々にSOLD OUTしていた人気公演です。当日は臨時席も設けられるほどの盛況ぶりで、いつもに増して多国籍な観客層でした。普段なら会場全体からやんわり感じるところですけれど、この日は座った席、前後左右を多国籍で囲まれた、それほどでした。いやほんとに半径3mをぐるっと切り取ってそのなかの日本人比率はよくて50-60%くらいだったかもしれません。たまたまもあるでしょうが、おそらく会場全体でも20%くらいは海外や国内から集った多国籍層だったのではと思わせるくらいの雰囲気を感じました。久石譲人気、さらにはタメスティ人気も加わって。

 

シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120

久石譲×日本センチュリー交響楽団でシューマン交響曲ツィクルスです。今シーズンは第2番とこの第4番です。来シーズンに第1番と第3番で完遂予定になっています。

第4番は全楽章が切れ目なく演奏されるうえに、共通の主題が各楽章で登場するので、いま何楽章が進んでいるんだろうと現在地がわからなくなりがちですが、おおむね約35分くらいで一気に駆け抜けます。シューマンの交響曲は込み入ったところがないので、とてもパワフルにエネルギッシュに進んでいく印象です。そして日本センチュリー交響楽団らしい演奏との相乗効果もあってとてもみずみずしい、フレッシュです。キメるところはキメて、リズム効果もわかりやすい勢いがありますね。SNSの書きこみには「第4楽章のくり返しもあって」とあったので、くり返す演奏は珍しい&久石譲は基本すべてスコアに忠実にくり返す、そういうことなんだろうと理解しているところです。

第4番は、シューマンの2番目に書かれた交響曲です。大きく改訂したときに3つの交響曲があったので、出版時に第4番となりました。例えば、久石譲でいうと「Orbis」は2番目に書かれたけれど、大きく改訂したときに4つの交響曲があったので、第5番とナンバリングされることになった、、例えばそんな感じでしょうか。そんな感じでしょうか。

 

 

久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

今世界で最も活躍しているヴィオラ奏者、クラシック界で注目を浴びている人、アントワン・タメスティを迎えての作品です。さらっと書いていますが、クラシックに疎い人ですが、えっ、タメスティさん迎えられるの?!と思ったほどでした。ヴィオラ・フリークとしては、この作品を演奏してくれるなんて望外の喜びです。

楽曲構成の基盤はそのままにオーケストラ編成に拡大したものです。同様のアプローチは過去に「Variation 57」や「2 Dances」といった作品があります。室内アンサンブル版とオーケストラ版、テンポ感もほぼ同じです。部分的に遅めな箇所もありますが、アンサンブルから大所帯になっているのに機動力とスピード感を失っていない。

室内アンサンブル版はシックでしなやかな印象、オーケストラ版は色彩感あってダイナミックな印象です。I.冒頭やII.後半のカデンツァなど、ヴィオラ独奏で聴かせるところは抑揚たっぷりに歌っていました。表現のニュアンスも異なるので印象も変わって聴こえるかもしれません。楽器が増え広がった高低の重厚感やパーカッションのアタックも効いたオーケストラ版です。より力強くよりリズミックに感じました。そしてオーケストラと対峙するソロ・ヴィオラ、全く埋もれることのない存在感とパフォーマンスは圧巻です。

あまりにも精緻すぎて、意図的にズレているのか、超難易度でそうなってしまっているのか、答えがわからない聴こえかたもします。この曲は聴く場所や位置によってはシビアに聴こえてしまうかもしれません。ちょっと入り込みすぎてて音の絡まりかたが正解なのかリスナーは判断しづらい、そのくらい難しい作品でもあります。そこに疑問符がついてしまうのがもったいないなとは思いました。とはいえ、風の噂でウィーンで録音したらしい、久石譲×タメスティで実現したらしい。セッション録音の正解を聴ける日を楽しみにしています。

ヴィオラがここまで主役で大活躍する作品ってそんなにないと思います。しかも、リズム主体でわくわくできてエモーショナルも感じる現代的な作品って、世界中にどのくらいあるんでしょうか。久石譲「コントラバス協奏曲」も、コントラバスってこんなに魅力的なんだと感じさせてくれる作品です。近い将来届けられるだろう「Viola Saga」の録音は、頻繁に聴くだろう自信があります。あわせて室内アンサンブル版も音源化してほしいですね。そうですね、室内アンサンブル版が銀のViola Sagaだとしたら、オーケストラ版は金のViola Saga、そのくらい印象も変わるし、それぞれにらしい輝きを放っている作品です。

 

 

ーソリスト・アンコールー

バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007より プレリュード (ヴィオラバージョン)

流麗で美しいひとときでした。バッハのこの作品はいろいろな楽器で演奏されていますが、ヴィオラの生演奏で聴けるなんて。タメスティさんは体全体で表現するので、おそらく体のバネが柔らかい印象、それが音にも現れている。

2012年に第1,3,5番を録音したアルバムが輸入盤やストリーミングであります。本公演ではこのときよりも熟成感のあるたっぷりな演奏でした。ヴィオラの音色だけに耳をすませる、ぜひ聴いてみてください。

 

Cello Suite No. 1 in G Major, BWV 1007: I. Prelude

from Official Audio

 

ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 第1番 Op.25より 第4楽章

バッハの大きな拍手に迎えられ、その喝采にたたみかけるようにアンコール2曲目です。一転して超絶な演奏でした。まるでエレキギターをかき鳴らしているような息つく暇もない約2分間です。人間は空いた口が塞がらない状態を約2分間キープできるでしょうか。

こちらは約5年前(2018年)のパフォーマンスです。百聞は一見に如かずです。

 

Hindemith: Sonate für Bratsche solo op. 25 Nr. 1 (4. Satz) ∙ Antoine Tamestit

from hr-Sinfonieorchester – Frankfurt Radio Symphony Official YouTube

 

本公演のハイライトを全部持っていっちゃったな、というくらいの圧巻のソリスト・アンコールでした。久石譲を目当てに行ったコンサートでもこんなギフトあるんですね。ヴィオラの生演奏をたっぷり聴ける機会もなかなかないですし、ほんとコンサートってどこに新しい出会いや感動ポイントがあるかわかりません。プログラムの予定と予想を超えたところにある、コンサートでしか味わえないおもしろいところです。

 

 

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

久石譲ファンのあいだでは、久石譲が振るベートーヴェンは演奏会や録音もふくめておなじみかもしれません。でも、初めてジブリ交響組曲をコンサートで聴けた人が感動するように、初めてこんなベートーヴェンを聴いたと新鮮感を味わう人も新定番となりそうなほどです。それほど久石譲版は個性がはっきりしています。SNSの書きこみに「センチュリーでは今まで聴いたことないようなベートーヴェンだった」というのを見ました。まさにすべてを表しているように思います。久石譲に染まるベートーヴェン。

本公演はプログラムそのままに10月21日マカオ公演が予定されています。すでにものすごい熱気とチケット争奪戦を繰り広げているようですが、きっとマカオでも久石譲&JCSOのベートーヴェン交響曲は度肝を抜くほどの注目を集めることでしょう。公演前からの熱気はさらに高まり膨れあがりフィーバーすることでしょう。大盛況をお祈りしています!久石譲指揮で録音されたベートーヴェン交響曲全集は賞を受賞し評価も高く人気を集めています。ぜひアルバムも聴いてみてください。ぜひコンサートで体感してください。マカオ会場で販売予定ならCD-BOXたくさんご用意したほうがいいかもしれませんね。『久石譲指揮 フューチャー・オーケストラ・クラシックス  ベートーヴェン:交響曲全集』です。

 

 

ーアンコールー

久石譲:Kiki’s Delivery Service

映画『魔女の宅急便』から「海の見える街」です。近年のコンサート・アンコールの定番のひとつになっています。そう言ってしまうと元も子もないんですが。でも、本公演のように多国籍な客層からしたらうれしいプレゼントです。やっぱり久石譲の曲をひとつでも多く聴きたいと思っている。本公演のように「Viola Saga」「ベートーヴェン交響曲」の全楽章間で拍手が入るほど初々しい客層からしたらうれしいプレゼントです。やっぱり久石譲の曲をひとつでも多く聴きたいと思っている。

もうどんなクラシック演奏会だったとしても、久石さんが振る演奏会で自身の作品をアンコールに演奏しないといけないのは、しょうがない、宿命です、天性の運命です。だから、このクラシック大曲のあとに、ジブリやるの?自分の曲やるの?とどうぞお気になさらずに、思いっきり響かせてください。気に悩む必要なんてないほど観客は強く大きく切望しています。

この曲は、『A Symphonic Celebration』で聴けるバージョンです。マニアックにいうと「Kiki’s Delivery Service 2018」としてWDOで演奏されたバージョンを継承したものです。『Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service”』とは少し違うので、どちらも聴き楽しんでください。

定期演奏会じゃなければもう1曲アンコールありそうなほどの大喝采でした。ベートーヴェンからアンコールへ、ピークに達したボルテージの行き場に困った観客たち。そんな興奮やまぬざわざわ感で幕をとじました。

 

 

リハーサル風景

ほか

リハーサル風景動画もみれます

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

 

リハーサル風景

1days

2days

3days

ゲネプロ

ほか

from 日本センチュリー交響楽団公式X(ツイッター)
https://twitter.com/Japan_Century

 

 

公演風景

from 日本センチュリー交響楽団公式X(ツイッター)/日本センチュリー交響楽団公式Facebook

 

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団は、2023年2月にオーケストラ団体の垣根を超えた九州交響楽団とのジョイントツアーも大盛況で迎えられたことも記憶に新しいです。

 

 

さらに、2025年4月には音楽監督就任も決定しています。プログラムの充実や海外戦略などますます目が離せません。が、その前に来シーズンのラインナップも発表されたばかりです。

 

 

世界中が久石譲の曲を聴きたい、その現象はさらに大きくなってくる。コンサートでもやってほしい、その期待はさらに大きくなってくる。

 

 

 

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