Disc. 久石譲 『天地明察 オリジナル・サウンドトラック』

2012年9月12日 CD発売 UMCK-1414

 

2012年公開 映画「天地明察」
監督:滝田洋二郎 音楽:久石譲 出演:岡田准一 宮﨑あおい 他

 

 

INTERVIEW

監督との共同作業は、音楽をつくるうえで理想的な環境でした

滝田洋二郎監督とご一緒するのは3作目になります。『壬生義士伝』(02)と『おくりびと』は自分にとっても大事な作品になりましたから、今回のお話をもらったときも、一も二もなくやらせていただきたいと思いました。

通常、音楽は撮影後に制作することが多いのですが、『おくりびと』のときに、主人公の弾くチェロの曲だけは先に必要で撮影前に書いたんです。滝田監督は、先にテーマとなる音楽があると現場で表現できることの幅が広がる、作品を象徴する世界観の全体像を掴むことができる、と喜んでくれて、今回も早い段階から曲づくりに取りかかりました。撮影の途中にピアノだけのサウンドスケッチを1曲つくり、お送りしたのですが、うえを見あげ跳躍するような、シンプルだけどメロディの出だしに特徴のある曲にしました。監督に気に入っていただいて、結局その曲がメインテーマになったんです。

今回は、時代劇というよりも、ひとつの夢を追い続ける人間が夢をかなえていく、青春ドラマの側面に焦点を当てて楽曲をつくりました。もちろんメインテーマのさびの部分には、日本音階的な雰囲気を入れていますが、滝田監督もいかにも時代劇風の音楽は望まれていませんでしたし、僕自身も、これは現代の人に見てもらう映画ですから、時代劇にはこだわらないようにしようと。スケール感や希望を感じさせることを大切にしつつ、オーケストラによって、あたかも全体がひとつのシンフォニーのようになればと思いました。

これまでに、さまざまな監督の作品に参加させていただいてきましたが、滝田監督はとても丁寧な演出をなさるので、僕の音楽がなくともお客さんを魅了できると思うところもあるんです。だから、僕の役割は一歩引いたスタンスから、滝田監督の撮られた映像を包み込む音楽をつけることだと思っています。僕は、芝居がよければ音楽は極力入れないほうがいいと思っているんですよ。芝居で伝えている感情を音楽でなぞる必要はないですから。芝居がよければ、引いた感じの音楽を載せるだけで相乗効果が生まれます。『おくりびと』のときはそれこそ引き算で、どれだけ音楽をつけないかというのが僕にとってのテーマだったりもしたんです。ただ『天地明察』は青春ドラマの要素もあるので、音楽の量は若干増やしましたけど、基本的には画角を支える存在でありたいというスタンスで音楽をつけていきました。

それから今回は、音楽で芝居のリズムに変化をもたらせないかと考えました。具体的に言うと、安井算哲が梅小路を走るシーンでラテン系の音楽が流れるのですが、クライマックスへの導入部分でもある場面なので、物語の句読点、アクセントになればと思い、提案させていただきました。

滝田監督は音楽を知り抜かれていますから、求められるハードルも高いんです。でも、音楽を大切に扱ってくださるからやりがいがあります。特に今回、いままでよりもさらに明確なビジョンを音楽に対しておもちでしたし、僕からも具体的な提案ができました。映画音楽をつくるうえでの共同作業としては、理想的な環境でしたね。

(映画「天地明察」劇場用パンフレット インタビューより)

 

 

 

 

全編フルオーケストラ。江戸時代という時代背景ながらも、天文学というストーリーからか、天を仰ぎ見るような、澄みきった音楽たち。

メインテーマの(25) (27)、(25)が純粋なフルオーケストラなのに対して、(27)はリズムパーカッションが加わる。そればかりかオーケストレーション・構成・編曲も異なる。メロディーラインを奏でる楽器が違うかと思えば、それに合わせてアレンジも変わっている。

どちらもしっかりと成立した芯のある2曲だけれど、どちらかと言われれば(27)のほうが起伏に富んだダイナミクスな構成にはなっている。少し聴いただけでは(25)と(27)のこまかい違いはわからない。聴き比べると、聴きこむと、そしてなぜ2曲を並べたのか考察するのもおもしろい。

メインテーマをモチーフにした(1) (3) (8) (9) (13) (14)、心温まる美しい旋律のラブテーマともいえる(6) (18) (21)、星空を天体観測しているような高音の旋律がまばゆく輝いている。

またこの作品ならではの佳曲(2) (4) (15)などは、天文学的、数学、そこからミニマル・ミュージックの要素が垣間見える。全面にではなく、アクセント、隠し味くらいのさじ加減。

 

 

久石譲 『天地明察 オリジナル・サウンドトラック』

1. プロローグ
2. 好奇心
3. 初手天元
4. 真剣勝負
5. 予感
6. えん
7. 北極出地-開始-
8. 星の申し子
9. 見事なる誤問
10. 北極出地-不穏-
11. 北極出地-建部-
12. 任命
13. 観測
14. 確信
15. 三暦勝負
16. 襲撃
17. 挫折
18. 祝言
19. 発見
20. 勅使
21. 約束
22. 最終勝負
23. 決断
24. 運命の刻
25. 天地明察
26. フィナーレ
27. TENCHI MEISATSU

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Tokyo New City Orchestra

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

 

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