Disc. 久石譲 『川の流れのように オリジナル・サウンドトラック』

2000年4月29日 CD発売 COCP-30887
2000年4月29日 CT発売

 

2000年公開 映画「川の流れのように」
監督:秋元康 音楽:久石譲 出演:森光子 田中邦衛 他

 

 

「川の流れのように 2000」美空ひばり

2000年3月1日 CDS発売 CODA-1816
2000年3月1日 CTS発売 COSA-1434

川の流れのように 2000

1. 川の流れのように 2000
作詩:秋元康 作曲:見岳章 編曲:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団 ピアノ:久石譲
2. 川の流れのように
作詩:秋元康 作曲:見岳章 編曲:宇崎孝路
3. 川の流れのように 2000 (オリジナル・カラオケ)
4. 川の流れのように (オリジナル・カラオケ)

封入特典:「川の流れのように」オリジナル版メロディー譜

 

シングル発売されたこちらの楽曲では、オリジナル・サウンドトラック収録盤とは異なるアレンジで、プログラミングされたリズムパートがある。本編エンドクレジットで流れた劇場版(サントラ盤)は、このリズムパーカッションを抜いたものであり、その他オーケストラによる伴奏は同一である。なおカップリングには、原曲オリジナル版が収録されている。

 

 

映画「川の流れのように」音楽制作を終えて

この映画音楽では制作にあたって注意したことが2つあります。美空ひばりさんというたいへんな天才と共演すること。もうひとつは秋元康監督が表現したいであろう老人達の世界観をどうだすか、この2つの点に最も注意をはらいました。最初の点については、すでにお亡くなりになった人と自分がどう関わるのか、それが大きなポイントでした。その時に閃いたのは、10年くらい前だとマルチ録音をしているはずだと、美空ひばりさんのボーカル・パートを抜き出して、それとこの映画の世界観に合う新しいアレンジをする。現在、美空ひばりさんと共演する新しい美空ひばりの「川の流れのように」を作ることが浮かんだわけです。もうひとつは、秋元監督が表現しようとした老人達の世界観について。海辺の小さな漁港で、もう必要とされない老人達が、実は最も知恵をもっていて生き生きと生きている。年齢が若い、あるいは年をとっているというところに問題があるのではない。長い間生きてきて、そこにはいつでも青春があるわけで、その時空を越えて人々は生きていく。そんな人間の根元的な声にしたいという思いをこめて、ブルガリアン・ボイスを起用しました。青春の時間というのが一瞬ではなく永遠であるということを音楽的に表現しようと思いました。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

久石さんを見ててプロだなと思うのは、音のこぼし方ですね。カットが変わった時の音のこぼし方。普通は、一つのシーンで音楽を入れるとすると、そのシーンとともに音楽は終わるじゃないですか。例えば次は外に出て車に乗るシーンだとしたら、そこには別の音楽が、あるいは車の騒音を入れるとか。でも久石さんはそこへ微妙に前の音楽を落とす。そうすることによって、絵がなめらかになるし、言葉は終わっているんだけど音楽が続いているから余韻が残るんですよね。またはせつなさが残ったり。(秋元康)

例えば秋元監督と『川の流れのように』という映画をやる。これは確かにいい話で、老人たちももっと元気が出る。そこでいい話だからいい音楽を書こうと普通は思いますよね。いいメロディーを書いて心温まる音楽を作ろうと。でもそうすると監督の視線と一緒になりすぎてしまって、単になぞるだけじゃないかと考えてしまうんです。例えば映画の冒頭のシーン、主人公が伊豆に何十年ぶりかに帰ってきた。そこに、いかにも帰ってきましたという美しくせつない音楽をつけてしまうと、全体のトーンがベタベタになってしまうんじゃないかと思うんです。台本を読んだ時から考えていたんですが、ブルガリアン・ヴォイスを使ってみたらどうだろうかというアイデアが浮かんだ。いったいどこの国の音楽だろうと観た人が不思議に思うような。ただそのまま使うと、よくありがちな奇を衒ったものになってしまう。それでオーケストラとブルガリアン・ヴォイスをミックスした。ある種のミスマッチなものは絶対ダイナミックに広がっていくし、もう一カ所ポイントになるものを使えば全体の音楽的な筋は通るんじゃないかと思った。まあ秋元さんとやらせてもらってるからこそ、そういうアイデアが出てくるんですけどね。(久石譲)

いや、それはプロの技ですよ。ブルガリアン・ヴォイスから嵐のシーンのオーケストレーションまで幅が広い。ブルガリアン・ヴォイスだけのアイデアを出せる人はブルガリアン・ヴォイスのテイストで最後までいっちゃうんですね。そうすると今度は映像と音楽が分離してしまう。それにしてもラッシュの音がない時に比べて数百倍良かったです。(秋元康)

日本映画としては本当にお金を出してもらったんですよ。ホールでオーケストラをきっちり録れるなんてまずないですから。これだけの規模でできたからこそなんです。(久石譲)

オーケストラというと、それだけの人数と楽器を集めて、ホールまで借りるのは、すごくお金がかかる。だから大抵みんな打ち込みでやるんですけど、久石さんがホールでモニータに映像を流して同時に録ろうとおっしゃった。すごく贅沢ですよ。アメリカではそういうシステムが整っているけど、日本ではなかなかできない。(秋元康)

設備が整ったところで録るわけではないので、レコーディング機材を全部運び込まなくてはいけなくて、ものすごく大変なんです。しかもいろいろトラブルがあるし。(久石譲)

我々も、いつもああいうことができると思ってはいけないんですね。(秋元康)

でもこの先デジタルになったら、もっとああいうやり方の重要性が出てきますよ。ホールのアンビエントがそのまま再現されるから、とても奥行きが深くなる。(久石譲)

迷ってたのは、ラストまで「川の流れのように」の曲を出していないんですよね。途中で一回インストで流して前振りを作ったほうがいいのかとずっと考えていた。でも結局やめた理由は、曲が始まった瞬間に観客が「川の流れのように」だと気づいて予定調和になってしまうから。ラッシュを観た時、出さなくて良かったと思いました。その分、森光子さんのツーハーフ、そしてラストのひばりさんの歌が生きた。(久石譲)

Blog. 「秋元康大全 97%」(SWITCH/2000)秋元康×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

 

久石譲 『川の流れのように』

1. Village Song(ブルガリアン・ソング)
2. Memories
3. ふれあい・I
4. 記憶の扉
5. ときめき
6. Old Fishermans
7. グラフィティ
8. ふれあい・II
9. 残された時間
10. Memories ~refrain~
11. The River
12. A Storm
13. Voice of the Sea(ブルガリアン・ソング)
14. 時は流れて
15. The River ~別れ~
16. 川の流れのように2000 (エンディング) 歌:美空ひばり

音楽:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
収録ホール:大田区民ホール・アプリコ 大ホール

ゲスト・ミュージシャン
Vocal:おおたか静流 Ikuko

 

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