Posted on 2019/08/13
ふらいすとーんです。
8月1日静岡を皮切りに国内8公演で開催された「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサートツアー。各会場ともにスタンディングオベーションの大盛況!
今回ご紹介するのは、久石譲ファンの一人、ふじかさんのコンサート・レポートです。初日公演、まさに世界初演幕開けの瞬間、とても臨場感あふれる詳細レポートです。
昨年に引き続き、WDO2019静岡公演の模様をレポートさせて頂きます。
2019年8月1日 静岡市民文化会館 18:30開演
ここ数年での久石さんと新日本フィルによるWDOツアー、静岡市内では初めての開催となりました。
早速会場に入ると、楽団の方がステージで練習をしており、いつものオーケストラの楽器はもちろん、今回はオカリナの音色も聴こえました。
開演時間を過ぎると楽団の全員がステージに集結し、チューニングが終わると束の間静寂。その後割れんばかりの拍手の中、笑顔の久石さんが登場しました。
組曲「World Dreams」
ⅰ.World Dreams
例年のコンサートだとアンコールでの演奏機会が多かった一楽章の「World Dreams」ですが、今回は1曲目。組曲化ということでしたが、この楽曲に関しては大きな変更等はなかったと思います。いつもよりメロディの抑揚が感じられ、最初からグッと心を掴まれてしまいました。
ⅱ.Driving to Future
某企業への書き下ろし曲がまさかの組曲の構成曲になるとは思いませんでした。楽曲自体も初めて聴くことなりました。マリンバの刻みに合わせて、メロディのような持続音のような音がチェロから紡ぎだされ、その後弦全体へと広がっていきました。ミニマルとメロディの融合を目指したようなこの楽曲は、近年の『二ノ国Ⅱ』や『海獣の子供』でも実践しており、今の久石さんを凝縮したような作品に仕上がっていました。
Ⅲ.Diary
皇室日記のテーマ曲へと書き下ろされたこの楽曲も組曲への衝撃参入でした。「ラーレー、レーミラー」とゆったりと奏でられるメロディは厳かな雰囲気もありつつ、一楽章と似た要素もあり三楽章にピッタリな楽曲となりました。中盤では一楽章を連想させるようなシーンもあり、終盤ではチューブラーベルズも響きわたり、組曲としての統一性も感じられました。
トータルで聴いてみると、この組曲は2016年WDOのテーマ「再生」の延長線上にある印象を受けました。「再生」から「希望・夢・日常」へ。今回がWDO二期の〆とパンフレットに書いてありましたが、テーマも集結へ向かった気がしました。
ad Universum
プラネタリウムの為に書き下ろされた楽曲達が再構成されて、コンサートで披露されました。ミニマルミュージックを軸に構成されており、反復で表現されていく様子はまさしく音のプラネタリウムでした。8曲から構成され、プラネタリウムで使用された楽曲はほとんど使用されていたのはないでしょうか? 絶え間なく演奏され、1曲ずつの感想は書けませんが、印象に残ったことを書いていきます。
冒頭(1.Voyage)では、ゆったりとしたストリングの調べから、突如マリンバのソロが入ります。そこから繰り広げられていくミニマルの刻み。『D.E.A.D』組曲の三楽章『死の巡礼』のように迫りくるリズムが続きます。
2.Beyond the Airでは『The East Land Symphony』の二楽章『Air』のような浮遊する雰囲気を感じられます。全体としてメロディの要素は少ないですが、途中で現れる「ラレド♯ー」のような特徴的なメロディの欠片からは流れ星の煌めきを連想させます。低音から高音へ、波の揺らぎのような部分からは『Deep Ocean』のような雰囲気も。
終盤(8.ad Terra)からは大迫力のミニマルワールド。ひたすら繰り返されるリズムの刻みに終始圧倒されました。大迫力のフィナーレのあと、マリンバのソロで静かに終わるのが印象的でした。
ここで前半終了です。
通常だと舞台替えでピアノがステージ中央に設置されますが、今回は設置されませんでした。
[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings
今回のストリングスとピアノのコーナーは久石さんは指揮に専念する形となりました。2008年のツアー以来演奏されて来なかった『Another Piano Stories』の楽曲がドレスアップして披露されました。ピアノパートの高橋ドレミさんが力強い演奏をしておりました。
Woman
レリアンのCM曲で、軽やかなリズムと優雅なメロディが特徴的な1曲。弦の伴奏に合わせて、ピアノから紡がれるメロディが聴いていてとても心地よかったです。演奏終了後、拍手が途切れてしまって、久石さんが客席に拍手をあおる場面も笑
Ponyo on the Cliff by the Sea
『崖の上のポニョ』のメインテーマで、公開から10年以上もたちますが、久石さんのポニョマジックは健在でした。ピアノがポニョのテーマを奏でるとともに、会場からはクスクスと笑い声が。非常にキャッチ-なメロディのこの楽曲ですが、演奏風景を見ていると伴奏隊は非常に複雑な動きをしているのを改めて実感しました。
Les Aventuriers
5拍子が特徴的で、スリリングなカッコよさがあるこの楽曲はファンの中でも人気曲なのでしょうか? マリンバが5拍子の刻みに輪郭をハッキリとして、近年の久石さんの表現の仕方と相まって、非常にキレのあるかっこいい演奏に進化していました。終盤にはピアノのグリッサンドも追加され、ズチャッという最後の〆も進化していました。
ここで再度舞台替えがあり、ピアノが指揮台横に設置され、マンドリンとアコーディオン用の音の返しスピーカーも設置されました。
Kiki’s Delivery Service Suite
宮崎駿監督作品の交響組曲化の第五弾は魔女の宅急便。
構成曲は
1.晴れた日に…
2.海の見える街
3.パン屋の手伝い
4.仕事はじめ
5.身代わりジジ
6.ジェフ
7.大忙しのキキ
8.パーティーに間に合わない
9.プロペラ自転車
10.とべない!~傷心のキキ
11.神秘なる絵
12.暴飛行の自由の冒険号
13.おじいさんのデッキブラシ
14.デッキブラシでランデブー
15.かあさんのほうき
会場でメモ書きしながら聴きましたが、抜けている可能性もあります…
全体的にヨーロピアンテイストを感じられる楽曲が多い作品で、サントラの雰囲気はそのままに壮大なシンフォニーに生まれ変わっていました。マンドリン、アコーディオン奏者も加わり、よりサントラの世界観に沿った形となりました。
1.晴れた日に…での「ファー、ソー、ラー♭」と一気にオケの音色が花開くところは圧倒されてしまいました。
2.海の見える街では、コンサートでの定番となっている『Kiki’s Delivery Service 2018』等でのアレンジがあまり継承されずに、サントラに沿った形になっていました。そのため後半のスパニッシュワルツのパートは若干短くなっていました。
5.身代わりジジでは、クラリネット、トロンボーン、トランペットのソロ奏者が立ち上がって演奏する場面も。
9.プロペラ自転車では、シンセサイザーメインの楽曲が見事にオーケストレーションされ、まったく違和感なく構成されていました。
10.傷心のキキでは、アコーディオンがキキの心を表現するようにしっとりと演奏されているのが印象的です。
11.神秘なる絵ではシンセの部分にオカリナが登場し、柔らかい音色が会場を温かく包み込みます。
13.おじいさんのデッキブラシは、オケの力強い迫力がピッタリの楽曲。映画終盤でのスリリングなシーンを彷彿とさせてくれました。
15.かあさんのほうきでは、久石さんもピアノ演奏も加わり、豊嶋さんの美しいヴァイオリンソロが会場を包み込みました。アレンジとしては武道館で披露されてものが近く、組曲の最後にふさわしい極上の仕上がりでした。
拍手喝采のなか、アンコールへと進みます。
il Porco Rosso (Pf.solo)
演奏前に久石さんが、さあ弾こうか!という感じでピアノに向かったのが印象的でした。今回は久石さんによるピアノ演奏が少ないコンサートでしたが、まさかのアンコールでたっぷり堪能できました。しかも今回は国内では初披露となるil Porco Rossoのピアノソロバージョン。左足でリズムを刻みながら、ジャジーな演奏に終始うっとりしてしまいました。
この演奏が終わると、数名が久石さんに花束を渡すシーンも伊右衛門を渡され、会場に笑いが起きる場面も。
Merry-Go-Round
コンサート最後の曲は、ハープから始まる人生のメリーゴーランド、長野チェンバーオーケストラの演奏会でのアンコールとして披露されていたアレンジがWDOでも組み込まれました。終盤の転調後は、オーケストラの迫力に会場も圧倒されて、会場も熱気で包まれました。
演奏終了後、割れんばかり拍手の中、次々と観客が立ち上がり、スタンディングオベーションに!楽団のみなさんも帰りはじめても鳴りやまない拍手と声援に久石さんも何度もステージに登場していました。
初日の静岡公演、最高潮の熱気のまま幕を閉じました。
今回のレポートは以上です。
会場での雰囲気を少しでも感じ取ってもらえれば幸いです!
ふじか
後日談) by ふじかさん
後日プラネタリウムをまた見ますので、楽曲聴いて改めて加筆あるかもしれないです。
8月1日 静岡公演風景
from 久石譲コンサート 2019-2020 公式ツイッター
https://twitter.com/joehisaishi2019
「行った人の数だけ、感想があり感動がある」。会場ごとにプログラムはもちろん、演奏や雰囲気も違う。公演を重ねるごとに修正やバージョンアップをくり返して磨きをかけていく。そう、CDのように全く同じ演奏ってないんですよね。
初日公演だからこその緊張感や集中力ってきっとあります。そんなところ気づかなかった、なるほどそういう見方もあるよなあ、そこが印象的だったんだ。自分にはなかった新しい発見があってうれしいです。そしていつもふじかさんのレポートや着眼点はとても具体的!
ふじかさんとは2018年7月にツイッターでつながりました。全国各地の久石譲ファンとSNSをとおしてつながれる。それをきっかけにコンサート会場でお会いすることもできました。いい時代です。
2年連続のコンサートレポート、ほんとうにありがとうございます!
reverb.
コンサートのときは、拍手のメモの交互に忙しいです(^^;)
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
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