Posted on 2021/07/03
久石譲コンサートが、フランスのストラスブールで開催されます。共演はストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団です。 “Info. 2022/05/04 「Hisaishi Symphonique」久石譲コンサート(ストラスブール)開催決定!!” の続きを読む
Posted on 2021/07/03
久石譲コンサートが、フランスのストラスブールで開催されます。共演はストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団です。 “Info. 2022/05/04 「Hisaishi Symphonique」久石譲コンサート(ストラスブール)開催決定!!” の続きを読む
Posted on 2021/07/03
久石譲コンサートが、チェコのブルノで開催されます。共演はブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団です。 “Info. 2022/04/28,29 「HISAISHI DIRIGUJE HISAISHIHO」久石譲コンサート(ブルノ)開催決定!!” の続きを読む
Posted on 2021/06/30
久石譲が作曲家の視点でクラシックの新しい魅力を引き出すコンサートシリーズ「JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS」のライブ配信が決定しました。国内だけでなく、世界各地(一部地域を除く)からも視聴できます。 “Info. 2021/07/08 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」東京公演 ライブ配信決定” の続きを読む
Posted on 2021/06/20
ふらいすとーん。
ここ4回にわたって、ジョン・ウィリアムズ映画音楽を紹介してきました。約50年に近づいている音楽活動のなか、時代ごとにいろいろなベスト盤や企画盤があります。わりと新しいCD作品(2016-2020)から、ジョン・ウィリアムズが到達した偉業の集大成であり、かつ現在進行系でもある、そんなホットなアルバムを4枚選びました。
映画音楽がクラシックになる日
ここでおさらい。それぞれにしっかりとしたカラーやコンセプトのアルバム、ちょっと整理しましょう。
Overtone.第38回 「ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ」を聴く
時代の新しいスピルバーグ監督コラボ作品から、すべて演奏会用に新アレンジ・新スタジオ録音された曲たちは、映像になんの遠慮もいらない迫力あるサウンドでダイレクトに響きわたっています。ときに楽曲を彩る楽器たちはフルート/トランペット/合唱まで。多楽章で構成された大作は、ソリストにアルトサックス/ビブラフォン/ベースを迎えてジャジーなアメリカン・サウンドが大きく自由に展開しています。
Overtone.第39回 「ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション」を聴く
若手人気指揮者ドゥダメルによるジョン・ウィリアムズ演奏会。映画音楽を中心にオリンピック作品まで、代表作を網羅した作品集にもなっています。アンコールまで完全収録したライヴ録音は2CDのボリュームです。クラシック指揮者がリスペストを込めて、自ら《フライング・テーマ》でプログラム構成し、魅力的な選曲で配置、ひとつの大きな交響曲のようにかたちにした未来型クラシック演奏会です。
Overtone.第40回 「アクロス・ザ・スターズ ~ジョン・ウィリアムズ傑作選」を聴く
世界的ヴァイオリニストのムターを迎えて、ヴァイオリンとオーケストラのための珠玉の作品集です。主役ヴァイオリンの輝く選曲は、いつもなら隠れがちなジョン・ウィリアムズの名曲たちにもスポットを当てています。高度で多彩な表現力を追求した編曲は、原曲のイメージを広げ、ヴァイオリンの魅力を存分に楽しめる。新たな生命を吹き込まれた楽曲たちは、エンターテインメントの大衆性と高度な芸術性が出会った瞬間です。一流演奏家たちも喜ぶレパートリーの殿堂入り、そんな未来の切符をすでに手にしているかのようです。
Overtone.第41回 「ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン」を聴く
映画音楽の巨匠と世界最高峰のオーケストラによる世紀の共演です。最高の演奏は、最高の録音技術で聴く/観る 黄金ディスクの誕生です。単に有名メインテーマを並べたわけではない、抜群の選曲と配置で仕立てられ、ムターも華を添えた豪華なプログラムです。現代の大衆娯楽である映画、そのなかには伝統芸術なオーケストラ作品として生まれ変わることができる映画音楽がある。そしてコンサートは現代文化の宝物であると、今こそかみしめる歴史的公演です。
各Overtoneでは、そこからつながるかもしれない、久石譲話や久石譲音楽も登場しています。よかったら、ぜひのぞいてみてください。
たとえば。
久石譲がジョン・ウィリアムズについて語ったこと (2005)
“やっぱりオーケストラを扱って映画音楽をやってるから比べられるのはしょうがないと思うし、昨年、ワールド・ドリームでスター・ウォーズのテーマを自分で振ってみてよくわかったんだけど、あれだけのクオリティと内容のオーケストレーションをやれる人はいないですよ。すごく尊敬してるし、僕なんかまだまだだな、と思います。でもね、実際の音楽でいうと、僕と彼の作るものはまるで違うんですよ。僕は東洋人なので、5音階に近いところでモダンにアレンジしてやったりするものが多いんです。でもJ・ウィリアムズはファとシに非常に特徴がある。正反対のことをやってるんです。それはすごくおもしろいなあと思いますね。音楽の内容も方法論も違うけど、僕もあれくらいのクオリティを保って作品を発表し続けたいですね”
(Blog. 「月刊ピアノ 2005年9月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)
4つのアルバムに収録された楽曲はすべて、映画公開後にジョン・ウィリアムズ自ら演奏会用に編曲したものです。サウンドトラックからそのまま抜き出したのでは披露できないものを、音楽作品にしたものです。
久石譲も映画・TV・CMのために書き下ろした楽曲を、演奏会でプログラムできるように再構成します。サントリー伊右衛門「Oriental Wind」も初めはCMのために作った15秒・30秒ほどの曲です。弾きはじめたと思ったら、すぐに終わってしまう長さのものを、演奏会用に充実した起承転結パートを構成し、聴きごたえのある満足感ある作品へとなった。なったからこそ、CM音楽を飛び越えてコンサートで聴くことができています。
ジョン・ウィリアムズも久石譲も、原曲からオーケストラ編成をベースに曲づくりされていることが多いです。大中小いろいろな編成であっても、さらにアンサンブルであっても、オーケストラで使われている生楽器です。加えて久石譲の場合は、シンセサイザーや異色楽器が曲に色を足すこともあります。そんな原曲たちを前にしても、色が抜け落ちてしまうことなく遜色なく、華麗なオーケストレーションでアップデートしていきます。
例を挙げると。
映画『もののけ姫』は、主題歌やサントラ曲ではケーナや篳篥といった民族楽器を隠し味に使っています。のちの交響組曲やコンサートでは、民族楽器や電子楽器を排除し、伝統的なオーケストラサウンドだけで、もののけ姫の世界観を見事に表現しています。
映画『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』はじめ、映像やセリフのためにうすく書いた曲も、交響組曲は緩急豊かにダイナミックにドラマティックに。メロディにからまる旋律たちも増えて彩られ、音楽はさらに雄弁になって物語は進行しています。
映画『あの夏、いちばん静かな海。』「Silent Love」も、映画『キッズ・リターン』「Kids Return」も、シンセサイザー主体の原曲が、オーケストラ作品に生まれ変わるなんて。シンセサイザーだからこそできた曲だと思っていたものが、なんのその劣ることなく素晴らしいなんて。
いかなる原曲も、演奏会用オーケストラ作品へと昇華できる人。それがジョン・ウィリアムズであり久石譲です。クラシック音楽からの流れの上に立っているふたりです。純粋なオーケストラを使って、クラシックの語法を使って、音楽を建築的につくりあげていきます。壮大なシンフォニー、組曲、ソリストを迎えた小協奏曲、独創的な編成など、音楽的にも多種多彩な作品たちが誕生します。流行にぶれない普遍的な魅力をまとって愛されつづけることになっていきます。
”映画など他の仕事でつくった音楽を「音楽作品」として完成させる、という意図で制作しています。映画の楽曲であれば、台詞が重なったり、尺の問題があったりとさまざまな制約があるので、そうした制約をすべて外し、場合によってはリ・オーケストレーションして音楽作品として聴けるようにする。『WORKS』シリーズはそうした位置づけの作品です。”
(Blog. 久石譲 『WORKS IV』 発売記念インタビュー リアルサウンドより より抜粋)
“それはですね、映像の仕事の場合、基本的には監督にインスパイアされて、すごく一所懸命曲を書くわけです。ところがやはり映像の制約というものもある。『このシーンは3分です』だとか。だから映像の中のドラマ性に合わせなくてはいけなくて。映像と音楽合わせて100パーセント、もしくは音楽がちょっと足りないくらいがいいときもある。そこから解放されて音楽自体で表現、音楽だけで100に。つまり本来曲がもっている力を音楽的にすべて表現できる。そこが今作なんです。”
(Blog. 「週刊アスキー 2010年11月9日号」「メロディフォニー」久石譲インタビュー内容 より抜粋)
ジョン・ウィリアムズには、王道シンフォニックな「スター・ウォーズ組曲」や、個性光るジャジーな「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン組曲」などがあります。ひとつの映画作品をひとつの音楽作品に、映画の世界観を音楽的に広げ膨らませることで十分に楽しめる組曲たち。
久石譲も、2014年から本格的にスタジオジブリ作品の交響組曲化プロジェクトをスタートさせました。スタジオジブリ作品を音楽作品としてもきっちり残すこと。そして、年々高まる人気に裏打ちされたアンオフィシャルな演奏機会の急増、オフィシャル版を演奏したい要望に応えるためにも、公式録音と公式総譜という手引きを残すこと。
こういった一連の作業は、古典からあります。チャイコフスキーのバレエ音楽も、舞台のために書かれた劇音楽から演奏会用組曲として再構成されました。このおかげで、演奏会の定番レパートリーになり、そのなかからキャッチーな曲たちは、映画・TV・CMなどでも広く親しまれています。もし、バレエ公演でしか聴けない音楽のままだったなら…。「花のワルツ」も「あし笛の踊り」も、ディズニー映画『ファンタジア』に使われることもなく、ソフトバンクCMでお茶の間に流れてくることもなく…。
ジョン・ウィリアムズも久石譲も、映像がないともたないような音楽はつくっていません。作品の世界観に深く音楽をつけているから、たとえ映像がなくてもふっとイメージが立ち上がる。曲だけ聴いても、どのシーンかすぐにわかるくらい際立つ音楽たちがそこににあります。そして皮肉なことに(とてもいい意味で)、使い回しがきくように作った曲ほど汎用性がない、ピンポイントに射抜くように作った曲ほど可能性がある、これは真理です。作品を越えて使われる、時代を越えて残る。強いコアをもった曲たちからなる組曲化は、作曲家がその作品のもうひとつの照らしかたをしてみせたアナザー・ストーリーともいえます。
“だからシンフォニック・スイート(交響組曲)として20分ぐらいで、オーケストラがしっかりと演奏できるバージョンを、いままでにジブリで音楽を担当した10作品中、6作品ほど作っています。
比べるのはおこがましいですけど、チャイコフスキーが《白鳥の湖》や《くるみ割り人形》を組曲にしているのと同じ行為だと思っていて。オーケストラの能力を発揮できるコンサート・ピースとして成立できれば、凄く幸せですね。”
(Info. 2020/10/30 久石譲が続けてきた音楽を未来につなぐチャレンジ WEBインタビュー (ONTOMO) より抜粋)
ここまでそろえば未来は明るい。
ジョン・ウィリアムズの作品を集めるということは、アメリカ音楽史プログラムです。ハリウッド映画=アメリカ(たとえ映画がアメリカを描いていなくても、映画産業の象徴としてのハリウッド)。映画を巡る旅は、アメリカ音楽史を巡る旅です。これまでに、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」や、バーンスタインの「ウエスト・サイド物語」が定番曲となってきたように、これからは、同じアメリカ人作曲家のジョン・ウィリアムズ作品が、新しいレパートリーとなっていくでしょう。きっと。
久石譲の作品を集めるということは、日本音楽史プログラムです。スタジオジブリ作品や邦画のなかには、日本を舞台にした作品も多いです。おのずと日本を感じさせる音楽たちは、伝統的な音階のものからモダンな和を感じるものまで。琴や篳篥といった邦楽器を使っていなくても、西洋オーケストラ楽器だけで日本を響かせてしまう久石譲音楽。どこか懐かしいのに古くはない、時代を超越した原風景な日本を呼び起こしてくれます。
スタジオジブリ交響組曲をそのままプログラムすることもできるでしょう。はたまた、スタジオジブリ作品から《フライング・テーマ》(飛ぶシーン)を象徴する曲をセレクトして、作品をまたいでプログラムすることもできるようになるかもしれません。はたまた、手がけてきた数多くの映画・TV・CM音楽のなかから《海》や《日本》といったテーマでプログラムすることもできるようになるかもしれません。
パズルのピースが多ければ多いほど、その組み合わせは無限大に広がります。久石譲も、自身の指揮で演奏や録音を重ねて、公式スコアまで監修することに力を入れています。ニーズに応える環境は整い、他者の指揮による演奏会もふえ、これからは世界各地で新しいレパートリーとなっていくでしょう。きっと。
映画音楽ふたりの巨匠は、人気も芸術性もトップクラスです。かつて映画黄金期を支えたオーケストラサウンドは、時代が進むにつれてオールドスタイルと言われるようにもなりました。それを経てふと今見わたすと、伝統や手法をしっかりと受け継いだ作曲家、オーケストラで2時間の映画音楽を構成できる作曲家は、どのくらいいるでしょうか。ジョン・ウィリアムズと久石譲は、過去からバトンを渡された正統な継承者にして現在も走り続けるトップランナーです。
ある演奏家・ある楽器のために再構成するというコンセプトを得たならば、思いもよらない化学反応も起こります。作曲家の手によって新しい輝きをもち、そこへ演奏家のインスピレーションと表現力も加わり、予想を越えたものが生まれることもある。ヴァイオリンのための編曲という範疇には収まりきれなかった光、ムターとのコラボレーションなどは、まさにそんな結晶です。
あるいは。ドゥダメルは、独自の解釈で楽曲の新しい魅力を引き出し、新しい切り口でプログラム構成することで、マンネリズムから見事に脱却しています。作曲家と指揮者のあいだにも、思いもよらない化学反応は起こります。「こんな名曲ありました、懐かしいでしょう」、そういった回顧なスタンスはありません。同じように、過度に映像の余韻に浸るような、過度に記憶の残像の力を借りるような陶酔型もそこにはありません。真っ向から純粋に音楽と向き合い現代的にアプローチしていく。今聴く価値のある音楽として響かせています。
ベートーヴェンもモーツァルトの時代も、大衆文化のなかに音楽があり、演奏会は大衆娯楽のひとつでした。でも、一度に聴いてもらえるのは観客数百人。録音技術もない、演奏会を繰り返し楽譜出版を並行することで、なんとか忘れられずに今まで残ってきた音楽遺産です。
ジョン・ウィリアムズも久石譲の時代も、大衆文化のなかに音楽があり、映画は大衆娯楽のひとつです。そして、一度に聴いてもらえるのは映画館と観客のかけ算。国境を超えて公開されることもあれば、VOD配信というデジタルな選択肢も増え、世界中で広く認知される可能性をもっています。さらに、サウンドトラックはCD盤から配信やサブスクまでと、映画音楽にふれるアクセスポイントは広がっています。
“音楽を書くチャンスを与えられること、かな。もし映画が成功すれば、何万、何百万もの観客がその音楽を聴くことになる。より多くの人が楽しんでくれれば、より大きな喜びになるからね。このことは作曲家にとって今世紀でも新しいことのひとつだ。今世紀初めには千人、2千人だった観客が、今では世界中の人が対象になっているんだ”
(Overtone.第38回 「ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ」を聴く より抜粋)
“自分が想像してる以上に、世界はソーシャルメディアで変革されてきすぎっちゃってるんですね。そういうなかで結局、映画という表現媒体のなかで、アニメーションというものが持ってるものと、例えばゲームとかね、そういうものが持ってる力を、もう過小評価してはやっていけないだろうと。表現媒体に対する制作陣が昔のイメージで凝り固まって、作品とはこんなもんだっていうことで作っていくやり方が、もう時代に合わない。やはりアニメーションというのはある種の可能性があるわけだから、それをもっと若い世代の人とやっていく、あるいはその時に自分も今までの音楽のスタイルではないスタイルで臨む、今回みたいにミニマルで徹するとかね。そういう方法で新しい出会いがあるならば、これは続けていったほうがいいなあ、そういうふうに思います。”
(Info. 2019/06/14 映画『海獣の子供』久石譲メイキングインタビュー 動画公開 より抜粋)
“今年の2月にパリでコンサートを行った時、フランスメディアのインタビューを受けましたが、みんな『二ノ国』のことを知っていました。「今度映画化されるんですよね。音楽を担当するんでしょう」と質問された。日本国内のみではなく、海外でも認知されているタイトルが、『二ノ国』。それが映画化されるということで、みんな期待を持っているんだなと感じています。日本のみならず海外にも、この音楽が映画とともにみんなに聞いてもらえたら、僕にとっては何よりの喜びです。”
(Blog. 「映画「二ノ国」公式アートブック」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)
ちょっとアングルを変えて。
”とにかく今で言うところの、最も優れたキャッチーな作曲家である。ブラームスは「彼がゴミ箱に捨てたスケッチでシンフォニーが1曲書ける」というほどドヴォルザークのメロディを評価していた。が、それだけではなくスコアを追っていくとよくわかるのだが、とても緻密にオーケストラを書いている。色々なモチーフ(音型)を散りばめ、ポリフォニックに構築しながら全体の構成に気を配っている。ところが、幸か不幸か、あまりにもメロディがキャッチーなため、「タータータータータターン(第4楽章の10小節目)」と派手にホルンとトランペットが第1テーマを鳴り響かすと、聴衆の耳はそちらに集中するので、メロディの後ろの緻密さにはなかなか気づかない。”
”シューベルトの最も天才的な部分は、ハーモニー感覚の凄さにある。普通は、ある調からある調に移るには正当な手続きを踏んで転調するように書くのだが、シューベルトはたった一音で次の調に自然に移ってしまう。例えば、第1楽章の38小節目のホルンとファゴットが最後の2音だけで転調してしまうのだ。或いは、第2楽章の後半で、第1ヴァイオリンだけになり、その最後のたった一音で完全に転調してしまう(280小節、295小節など)。これほどの天才は他に見たことがない。”
(Disc. 久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 1 』 CDライナーノーツより 抜粋)
作曲家・指揮者の視点で楽曲解説した久石譲の言葉からです。ドヴォルザークやシューベルトといったクラシック作曲家について語っていることですが、ぐるっと反転して、これって久石譲音楽にも見受けられることじゃないか!そんなふうに思えてきます。あまりにもキャッチーなメロディは、甘美すぎると受けとられがちですが、メロディをささえるハーモニーやリズムはあらゆる手を駆使して緻密に構成されている。音楽専門的にはわからなくても、感覚的にわかる感触のようなもの。ああ、だから聴くたびにおもしろいのか!ああ、だからいくら聴いても聴き飽きないのか!ああ、だからコンサートで聴くたびに耳に飛び込んでくる旋律たちが新鮮なのか! と。
これもまた象徴的です。
”メロディは記憶回路なんですよ。記憶回路であるということは、シンプルであればあるほど絶対にいいわけです。メロディはシンプルでもリズムやハーモニーなどのアレンジは、自分が持っている能力や技術を駆使してできるだけ複雑なものを作る。表面はシンプルで分かりやすいんだけど、水面下は白鳥みたいにバタバタしてるんです。”
(Blog. 「キーボード・マガジン 2005年10月号 No.329」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)
映画音楽ふたりの巨匠は、親しみやすいメロディを生み出し、メロディが輝くオーケストレーションで作品をつくりあげています。映画を見終わって、『スター・ウォーズ』のメロディが頭から離れないほどに、『崖の上のポニョ』の歌を思わず口ずさんでしまうほどに。「ウィーンフィル ・ニューイヤーコンサート」の楽曲たちも、演奏に合わせて鼻歌できるほどのキャッチーなメロディに、自然と軽やかになるリズミックなポルカやワルツたちです。
未来は明るい。
未来から今を照らすとここも輝く。
今の久石譲コンサートは、大きくWDO*に代表されるエンターテインメント・コンサートと、大きくFOC*やMF*に代表されるクラシック・コンサートの両軸があります。海外公演も人気を博しているジブリコンサート*では、指揮者+ピアニストとして映像との共演でパフォーマンスの完成度も極めています。WDOコンサートでは、スタジオジブリ交響組曲や新作の世界初演も自らの指揮で果たしています。クラシック・コンサートでは、作曲家視点の新しい解釈で話題を集めています。今発信したい音楽を、古典作品から現代作品まで並列して意欲的にプログラムしています。
*
「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ(WDO)」,「久石譲&フューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)」,「久石譲 presents ミュージック・フューチャー(MF)」,「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」
これすべて今しかできないことです。未来のコンサート、久石譲の名曲たちがプログラムされるコンサートとは大きくちがう。きっと久石譲の音楽は未来でも愛聴され、多くの演奏機会に恵まれるでしょう。そこに不安はありません。そこは未来の音楽家のみなさんぜひ託されてください。どうぞよろしくお願いします。
でも、そこには指揮者久石譲もピアニスト久石譲もいません。ジブリ映像と一緒に作曲家本人の指揮とピアノで楽しめることもありません。久石譲がプログラムしたい古典作品や現代作品が並ぶこともありません。作曲家久石譲の視点でベートーヴェンが響くこともありません。久石譲の新作が自身の指揮で世界初演されることもありません。
そう思えばこそ、今の久石譲コンサートは強く輝いています。久石譲は今しかできないことをやっているんだと。久石譲のいるコンサート、久石譲のプロデュースするコンサートに足を運べるチャンスをもっている。聴衆もまた今しかない時間のなかにいます。
フルオーケストラによる映画音楽が、クラシックのメインストリームでも熱狂的に支持されるという、音楽史の新しいページを拓いているジョン・ウィリアムズと久石譲です。現代の大衆娯楽と伝統的な芸術の幸福なかたちといえる、品格のあるシンフォニックな作品たち。
シェーンベルクやショスタコーヴィチといったクラシック作曲家も、映画音楽を手がけています。『春の祭典』でセンセーショナルを巻き起こしたストラヴィンスキー。映画『ジョーズ』のジョン・ウィリアムズ音楽には、この作品からの影響が色濃くあります。そうして、今やクラシック音楽において人気レパートリーと高い評価を得ている『春の祭典』ですが、ストラヴィンスキーは2021年に没後50年を迎えたばかりです。
ジョン・ウィリアムズ音楽も久石譲音楽も、強引にプッシュしたり、無理やり割り込む必要もなく、これから自然とゆっくりなじんでいくことでしょう。未来のクラシックとなりうるふたりの作品は、それぞれ個性豊かに欧米とアジアの大衆文化、20~21世紀エンターテインメントをも表現しています。『ハリー・ポッター』や『千と千尋の神隠し』といった映画音楽を通して、西洋文化と東洋文化の世界観をあぶり出してみせたように。
クラシック音楽からの流れの上に立っているふたりが、伝統をつなぎながら今を体現しながら、映画音楽で果たしてきた功績は大きいと思います。もし、今世紀を代表する映画について語るなら、そこにはおのずとジョン・ウィリアムズと久石譲も引っ張られてきます。まちがいなく今世紀を代表する作曲家です。また、演奏家や指揮者によって、新しい表現が可能性がうまれつづける。映画音楽へのリスペクトが尽きないかぎり、新しい感動が生まれつづける。映画音楽がクラシックになる日は、もうすぐそこまできています。
それではまた。
reverb.
久石譲とジョン・ウィリアムズ、夢のプログラムあったらいいな♪
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪
Posted on 2021/06/19
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Posted on 2021/06/18
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緊急事態宣言を受け中止となった
「JOE HISAISHI&WORLD DREAM ORCHESTRA 2021」
4月25日(日)、27日(火)の2公演の振替公演が決定しました。 “Info. 2021/07/25,26 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」振替公演決定!!” の続きを読む
Posted on 2021/05/27
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