Posted on 2021/07/15
久石譲の最新アルバム『Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4』、Webインタビューが公開されました。ソリストをつとめたお二人との鼎談になっています。ぜひご覧ください。 “Info. 2021/07/15 久石譲がコントラバス石川滋、ホルン福川伸陽と語る挑戦に満ちた協奏曲集『ミニマリズム4』(Web Mikikiより)” の続きを読む
Posted on 2021/07/15
久石譲の最新アルバム『Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4』、Webインタビューが公開されました。ソリストをつとめたお二人との鼎談になっています。ぜひご覧ください。 “Info. 2021/07/15 久石譲がコントラバス石川滋、ホルン福川伸陽と語る挑戦に満ちた協奏曲集『ミニマリズム4』(Web Mikikiより)” の続きを読む
2021年7月15日 発刊
久石 譲によるコントラバスのための協奏曲。日本テレビ委嘱作品。
Contrabass Concerto
コントラバス協奏曲
「Contrabass Concerto」は日本テレビの「読響シンフォニックライブ」という番組でカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」と一緒に演奏する楽曲として委嘱された。ソロ・コントラバスは石川滋氏を想定して作曲し、両曲とも僕が指揮した。
作曲に当たってコントラバスの音を実体験するために楽器を購入し、毎日作曲の前に15~30分練習した。そのことによって響きを身体で覚えることができた。
2015年の春先から作曲を開始し、夏にコントラバスのパートとピアノスケッチを作り、秋にオーケストラのパートを完成した。全3楽章からできており約30分の作品になった。
初演は2015年10月29日 東京芸術劇場 コンサートホールにて、ソロ・コントラバス 石川滋氏(読響ソロ・コントラバス)と読売日本交響楽団によって演奏された。その後2017年7月16、17日にわたって長野市芸術館 メインホールにて同石川氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって再演され同時にレコーディングもされた。
第1楽章
F#-B-E-Aの4つの音が基本モチーフとして全体を支配している。この4度音程はソロ・コントラバスのオープンチューニング(通常はE-A-D-G)なのだが、展開していくと演奏する上では大変難しい音程でもある(ヴァイオリンの5度音程のように)。もともと軽快なテンポで始まる自由な形式の楽曲だったが、後に序奏と中間部に遅めにテンポのパートを作り、全体を立体的にした。
第2楽章
冒頭のコントラバスのピッツィカートはもちろんジャズからの影響であり、それがもっともこの楽器の良さを発揮すると考えたからである。その上にクラリネット、ホルンが奏でる、モチーフが全体の要になっている。その後コントラバスが同じモチーフを演奏しながら盛り上がり、静かな中間部になる。ちょっと複雑だが大きくは3部形式からなり、後半はベースランニングのアップビートで始まる。個人的にはもっとも無駄なく構成できた楽章で気に入っている。
第3楽章
この楽章では7度音程のモチーフで全体を構成している。スケルツォ的な明るさと終楽章としての重みが出るように気をつけた。一番ミニマル的な方法論に近い楽章になった。
久石譲
(「Contrabass Concerto」スコア より)
補足)
上記文章は、英文併記されています
編成表 収載
including INSTRUMENTATION
初演:2015年10月29日、東京芸術劇場
演奏:久石譲(指揮)、石川滋(ソロ・コントラバス)、読売日本交響楽団
演奏所要時間:約29分/パート譜はレンタル
久石譲:コントラバス協奏曲
Joe Hisaishi: Contrabass Concerto
Movement 1, Movement 2, Movement 3
出版社:全音楽譜出版社
スコア:菊倍判/160頁
ISBN:978-4-11-899715-5
定価:税込 4,400円 (本体4,000円+消費税10%)
発売日:2021年7月15日
※レンタルパート譜の取り扱いは、全音までお問い合わせください。
全音 レンタル楽譜はこちら>>>
https://www.zen-on.co.jp/rent/flow/
◎音源は久石譲『Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4』(UMCK-1682)に収録されています。
2021年7月15日 発刊
久石譲による3本のホルンとオーケストラのための協奏曲のオフィシャル・スコア。
The Border
Concerto for 3 Horns and Orchestra
3本のホルンとオーケストラのための協奏曲
「The Border」はホルン奏者の福川伸陽氏から依頼されて作曲した。全3楽章、約24分の作品になった。
初演は2020年2月13日 東京オペラシティ コンサートホールで、ソロ・ホルン 福川伸陽、豊田実加、藤田麻理絵の諸氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって演奏され、同時にレコーディングもされた。
I. Crossing Linesは、16分音符の3、5、7、11、13音毎にアクセントがあるリズムをベースに構成した。つまり支配しているのはすべてリズムであり、その構造が見えやすいように音の構造はシンプルなScale(音階)にした。
II. The Scalingは、G#-A-B-C#-D-E-F#の7音からなる音階を基本モチーフとして、ホルンの持つ表現力、可能性を引き出しつつ論理的な構造を維持するよう努めた。
III. The Circlesは、ロンド形式に近い構造を持っている。Tuttiの部分とホルンとの掛け合いが変化しながら楽曲はクライマックスを迎える。以前に書いた「エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための室内交響曲」の第3楽章をベースに再構成した。ホルンとオーケストラによってまるで別の作品になったことは望外の喜びである。
久石譲
(「The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra」スコア より)
補足)
上記文章は、英文併記されています
編成表 収載
including INSTRUMENTATION
初演:2020年2月13日、東京オペラシティ コンサートホール
演奏:久石 譲(指揮)、福川伸陽、豊田実加、藤田 麻理絵(ソロ・ホルン)、Future Orchestra Classics(管弦楽)
演奏所要時間:約24分/パート譜はレンタル
久石譲:3本のホルンとオーケストラのための協奏曲
Joe Hisaisi: The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra
I. Crossing Lines, II. The Scaling, III. The Circles
出版社:全音楽譜出版社
スコア:菊倍判/136頁
ISBN:978-4-11-899714-8
定価:税込 4,180円 (本体3,800円+消費税10%)
発売日:2021年7月15日
※レンタルパート譜の取り扱いは、全音までお問い合わせください。
全音 レンタル楽譜はこちら>>>
https://www.zen-on.co.jp/rent/flow/
◎音源は久石譲『Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4』(UMCK-1682)に収録されています。
Posted on 2021/07/14
7月8,10日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサートです。
今回ご紹介するのは、久石譲ファンの一人、ふじかさんのコンサート・レポートです。東京公演(8日)、見ているだけでワクワク楽しいです。とてもわかりやすくて音がイメージが伝わってきます。そして深い。いろいろな音楽を聴きながら取り込みながら、自分のなかに消化している絡みあっている。ふじかさんの濃密な私的体験を、読んでいるだけなのにたしかに感じることができます。
久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3
[公演期間]
2021/07/08,10
[公演回数]
2公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール
長野・長野市芸術館 メインホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター:近藤薫
[曲目]
レポ・スメラ:交響曲 第2番
久石譲:I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~
—-intermission—-
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op. 73
—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第17番
JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS VOL.3の東京公演のレポートをさせて頂きます。
2021年7月8日 東京オペラシティコンサートホール 19時開演
2020年夏の開催から2度の延期を経て、ようやく開催された本公演。ブラームスの交響曲2番を軸にしたコンサートがようやく開催されました。
18:50ごろに会場に到着しました。
コロナ禍のため、入場の様子は様変わりしており、検温と手の消毒はもちろん、チケットは係員に見てもらったのち、もぎりは自分で行い、半券は箱の中に入れるという流れに変わっていました。
会場へ入ると、「コロナ感染症への対策へご協力ください。」というアナウンスが流れており、平常時ではないコンサートという雰囲気を感じられました。
19:00すぎに楽団員がステージに集結し、改めてメンバーを見ると、各オーケストラの首席レベルの奏者が次々と登壇し、スペシャルなオーケストラであると改めて認識しました。
チューニングが終わるとともに、黒いマスクをした久石さんが登場。お辞儀をし、しばしの沈黙ののち、コンサートが始まります。
1,Lepo Sumera 『Symphony No.2』
日本初演となった本楽曲。パンフレットには作曲者本人より解説も寄稿されていました。
『1楽章 Moderato tranquillo attaca』
ストリングスの序章から始まり、ステージ中央に設置された2台のハープよりモチーフの提示が行われます。通常のオーケストラだと、ハープの音色はステージ後方より音色が聞こえてきますが、今回は指揮者の目の前に設置されたことにより、より近くに感じられるとともに、より立体的な響きの印象を感じました。ミニマルミュージックのエッセンスを感じれる冒頭のモチーフを、音型とリズムを微妙に変容させながら、様々な形で提示していきます。音の増減の様子はフィリップ・グラスの『Two Pages』を連想させます。ハープのモチーフとともに、打楽器・金管群の演奏が加わっていきます。ハープのモチーフをなぞるように木管、弦楽器と音色が広がっていきます。中盤から後半にかけて入ってくるチューブラーベルズの音色が『The End of the World』のような警告の鐘のような雰囲気を感じ、今現在の世界の様子を表しているような印象を受けました。
『2楽章 Interludium』
ハープの前奏に続き、弦楽器がモチーフを繰り返していきます。途中で入ってくるフルート、オーボエの掛け合いのようなモチーフに浮遊感と不安定感を感じさせます。
『3楽章 Spirituoso』
1楽章の弦のモチーフの提示とともに、ハープが軸となる音型を奏でていきます。弦楽器による細かく、息の長いパッセージが全体を構成していくなか、金管・打楽器隊による力強い音がより強烈に印象を残していきます。個人的には日本人作曲家佐藤直紀さんの映画『永遠の0』のメインテーマのような雰囲気を感じました。終盤に行くにつれ、さらに力強くなってゆく金管・打楽器隊の音色には圧倒されました。フィニッシュは再度ハープ2台による演奏ののち、静かに幕を閉じていきました。
パンフレットには「アルヴォ・ペルトが静なら、スメラは動である」という久石さんからのコメントがありました。まさしくその通りで、さらには丁度コンサートの前後で発表になった4度目の緊急事態宣言に対する情勢の緊張・不安感を感じさせ、強く現状とを結びつける印象を受けました。
ステージの舞台替えが行われたのち、2曲目が始まります。
2、Joe Hisaishi『I Want to Talk to You~for string quartet,percussion and strings~』
3月の日本センチュリー交響楽団との初演で演奏された本楽曲が、今回のFOCのセットリストにも組み込まれました。本来は合唱編成で、2曲からなる構成ですが、今回はパンフレットから1曲のみの演奏と記載がありました。
冒頭、1st ヴァイオリンソロの「レラレラー、レラーシ♭」という短いモチーフが提示されます。それに答えるように2nd ヴァイオリンソロが同じモチーフを演奏します。このモチーフはミニマルミュージックのエッセンスを含んでいるため、徐々に音の増減が行われるとともに、音域が変化し、ヴィオラ、チェロも演奏に加わっていきます。音型の提示が進むとストリングスも演奏に加わり、全体を俯瞰していくような構成が組まれていきます。
その後、再びカルテットによる新たな音型の提示をします。このカルテットによるモチーフはなかなかユニゾンにならなかったり、ハーモニーとなって表現されていくことがあまり無く、その様子はまるで携帯電話ツールのコミュニケーションにより、直接顔を合わせずに事が進んでいく様子に警告を表しているような印象を感じ取ることができました。
中盤から後半にかけては大太鼓などのパーカッションも加わることによって、よりスリリングな緊張感を味わうことができ、『死の巡礼』のような弦楽による焦燥感を感じられます。終盤はカルテットにより、序盤のモチーフが再現されたのち、静かに幕を閉じます。
演奏後、カルテットメンバーと久石さんの何度かのカーテンコールが行われました。
休憩
3、Johannes Brahms『Symphony No.2 in D major Op.73』
『1楽章 Allegro non troppo』
序盤のチェロによる「レド♯レー」の提示から、「あっ、これがFOCなのか!」という印象を受けました。わずか3音ですが、早く、キレのある音色。力強く、優美な音に早速感動してしまいました。
(ちなみに補足ですが、この主音から半音さがり主音に戻るという音の流れは耳に残りやすいため、久石さんの楽曲でもメロディの冒頭に現れることがあり、映画『ウルルの森の物語』より『おかあさん』のテーマ(in D)、映画『おくりびと』より『KIZUNA』(in C)、映画『となりのトトロ』より『となりのトトロ』(in F)など様々あります)
有名な『ブラームスの子守歌』のメロディが紡がれる部分は、序盤と同じくチェロの音色から始まりますが、まるで男性が歌を歌っているような色っぽい雰囲気を感じさせてくれました。その後の激しいパッセージからはキレの良さが伝わってきて、わくわくが止まりませんでした。弦楽による『子守歌』のメロディを彩るフルートによる副旋律は遊び心と華やかな雰囲気が伝わってきます。通常省略されることの多い、提示部の繰り返しですが、FOCではきっちりと再現。1度目とはまったく音色が異なり、より輪郭をしっかりと感じれるとともに、主題の再認識と1回目で気になった部分を改めて復習することできました。終盤にはピチカートによる演奏も出てきますが、久石さんによるピチカートのアプローチはなぜかジブリの雰囲気をとても感じさせ、同じような印象はベートヴェンの『Symphony No.9』の『第3楽章』の途中でも感じられたことがありました。楽章の切れ間に拍手が入ってしまうハプニング(?)も本公演ではありました。
『2楽章 Adagio non troppo』
『1楽章』と同じように提示されるメロディはチェロの導入より始まります。事前インタビュー動画でも久石さん本人が述べられていましたが、今回のブラームスでは「歌う」ということを意識されていました。『2楽章』では特に感じられ、奏者からの身振りより伝わってきて、感情を揺さぶれる熱い楽曲ということを改めて認識しました。後半で演奏される暗い雰囲気を感じさせる部分も熱情的で重々しくなく、ある種清涼感すら覚えました。
『3楽章 Allegretto grazioso(Quasi andatino)』
オーボエによるキャッチャーなメロディから始まり、そのメロディが変奏されていきます。変奏の過程で大きくテンポが変わる部分がありますが、この部分は生で聴いていて本当に驚きました。まるで映画『ハリーポッターとアズガバンの囚人』の冒頭に出てくるロンドンバスのような印象をうけ、止まっているとき(ゆったりとした演奏)は優雅に、発進するともにキレッキレのスピード感。緩急のあるテンポ設定にスリルと高揚感を感じ、病みつきになっていました。世界初演の時にアンコールにて『3楽章』が披露されたのもわかる気がしました。冒頭で提示されたメロディが違和感なく短調へ変身する部分も自然で、ブラームスのオーケストレーションの巧さも際立って聴くことができました。
『4楽章 Allegro con spirito』
序盤から始まる激しいリズムとアップテンポで力強いメロディに圧倒されます。しかし、要所要所で奏でられる快活さ溢れるメロディはヴァイオリン奏者も身を乗り出すようような演奏に楽しさを覚えます。事前インタビューにて久石さんが、「我々はスポーツカー」という発言はしておられましたが、この楽章での最終盤でははまさしくスポーツカーの様子を感じさせてくれました。休符が現れる箇所ではまさしくバンクを高速で超えてジャンプしてゆくスポーツカーのよう!疾走感と爽快感と一気に感動のフィナーレへと向かいました。
前半の重いプログラムからは一転、優美で力強く、希望を感じさせるようなブラームスのメロディと構成。現在の情勢に一筋の希望の光を与えるような交響曲に終始感動してしまいました。そしてFOCというスーパーオーケストラの演奏はとても病みつきになります。
何度かのカーテンコールとともにアンコールへと進みます。
Encore
Johannes Brahms『Hungarian Dance No.17』
前回でのVol.2では『4番』が披露されましたが、今回は『17番』をセレクト。オーケストラ版ハンガリー舞曲はより緩急がはっきり目立つとともに、より華やかな雰囲気になります。中盤のいかにも踊りだしたくなるようなパートから、終盤の悲しげで力強いフィナーレまで。短い曲でありながら、ブラームスという作曲家の作曲のすばらしさとオーケストラという世界の奥深さを感じられました。
拍手喝采のなか、カーテンコールが行われ、弦楽のソリストと肘を合わせる久石さん。1年半ぶりのFOC第三回公演は感動と熱狂的な渦のなか、無事に開催を終了しました。
2021年7月13日 ふじか
こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。
「行った人の数だけ、感想があり感動がある」
当サイトでは、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。
今回、このふじかさんのコンサート・レポートが送られてきたとき、「はあ、こんなの見せられたら、もっといろんな人に書いてほしいな」ってまっさきにそう思いました。うん、そのくらいうれしかったし(突然送られてきたし)、すばらしいなって思いました。コンサートの感動をわかちあえる、コンサートの感想を共有しあえる、そんな日がまたこれから、少しずつふえていきますように。
過去2回のふじかさんコンサート・レポートもぜひお楽しみください。
reverb.
コンサート会場で楽しく話せる日がきますように(^^)
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪
Posted on 2021/07/12
7月8,10日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサートです。当初予定からの延期公演です。プログラムも新たにアップデートされ、長野は3年ぶりの凱旋公演(FOC前身のNCO誕生の地)ともなり、たくさんのお客さんがつめかけた熱い公演になりました。また東京公演はライブ配信もあり国内外からリアルタイムで楽しめる機会にも恵まれました。
先にまとめみたいなもの。
久石譲コンサートがあるたびに、「初めてのオーケストラ」「初めてのクラシック」というSNS書き込みを、ひとつふたつとは言わない数で目にします。ということは、実際には同じような人が数十人はいる。若い人を中心に。そのとき会場で体感して感動するのは、オーケストラの迫力、生楽器の音の良さ、目と耳では追いつかない情報量の多さ。
きっとまた行きたいと思いますよね。そこに、コンサートの瞬間ではわからなかったことの好奇心、知ることの喜びへつながっていったら。僕もそんな思いの連続です。コンサートごとに、なにかひとつ学ぶことができたらいいな、小さくレベルアップできたらうれしいなと思っています。
久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3
[公演期間]
2021/07/08,10
[公演回数]
2公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール
長野・長野市芸術館 メインホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター:近藤薫
[曲目]
レポ・スメラ:交響曲 第2番
久石譲:I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~
—-intermission—-
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op. 73
—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第17番
まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。
ご挨拶
FUTURE ORCHESTRA CLASSICSの第3回目が2度の順延を経てやっと実現しました。東京も世界も依然として先の見えない不安定な状況が続いていますが、FOCはクラシック音楽の将来を見据えて一歩一歩前に進む覚悟です。本日のプログラムは1年半かけて練り上げたもので、自信を持ってお勧めできます。どうぞ、お楽しみください。
FOC 本日の曲目についての私的コメント
Lepo Sumera: Symphony No.2
Lepo Sumeraは1950年生まれのエストニアの作曲家だ。エストニアにはArvo Pärtという世界的な作曲家がいるが、彼が静かならSumeraは動である。とてもエモーショナルで激しい。おそらく彼のこの作品が日本で演奏されるのは初めてだと思われる。なにぶん資料が少ないのではっきりと言えない。が、その分スコアのまちがい、あるいは不明なところも相当あり、エストニアのオーケストラに確認をしてもらったが完全にクリアになっていない。現代の音楽を演奏する場合はいつもこういう問題が起こる。だが曲は素晴らしい。強力なエナジーが最大の魅力である。僕は今年の秋にも日本センチュリー交響楽団の定期で彼のチェロ協奏曲の日本初演、MUSIC FUTURE Vol.8でピアノ曲など演奏していく予定だ。皆さんにもこの名前を覚えておいていただきたい。交響曲第2番は3つの楽章からできており、続けて演奏される。
Joe Hisaishi: I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~
2020年5月に行われる予定だった山形合唱連盟の記念コンサートで演奏するために委嘱されて、2019年10月から2020年3月にかけて作曲した。
作品自体は 1. I Want to Talk to You 2. Cellphone の2曲からなる約20分の作品になったが、作曲の過程で弦楽四重奏と弦楽オーケストラの作品にするアイデアが浮かび、比較的短期間でそれも完成した。
街中を歩いていても、店の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んだが、世界はCovid-19によって大きく変容した。人と人とのディスタンスを取らざるを得ないという状況では携帯電話がむしろコミュニケーションの重要なツールになった。この時期にこの曲を書いたことに何か運命的なものを僕は感じている。
日本センチュリー交響楽団によって今年の3月大阪で世界初演した。本日はその第1曲目を演奏する。
Brahms: Symphony No.2 in D major Op.73
どうアプローチするか目下思案中!
最もBrahms的な作品。
ロマン派的エモーショナルと古典派的フォームの重視をどう融合するか? スーパーオーケストラFOCならではの最速、感動のBrahmsをお届けしたい。
乞うご期待!
2021年7月 久石譲
(「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサート・パンフレットより)
コンサート・カウントダウンに入った開催9日前からは、公式ツイッターにて「一言インタビュー動画」も公開されました。上のコンサート・パンフレットの内容を補強する点でも、とても貴重な内容です。あらためてぜひご覧ください。そして公式SNSはぜひチェックしてくださいね。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと9日!一言インタビュー企画開始!
今日は「そもそもFOCとは?」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/hAPKGJUo6k— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) June 30, 2021
[日本語テロップ/書き起こし]
もともと長野市芸術館で芸術監督をやっていて、そこでキチンとした演奏団体が欲しいとNCO(ナガノ・チェンバー・オーケストラ)を作りました。それが前身で、今度は東京に活動を移してやりたい。それでFOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)という名前でやっている。今更そういうことを聞く?
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと8日!一言インタビュー、本日は「なぜFUTUREと名付けた?」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48Aw1Ts pic.twitter.com/CQPS7OVgBR— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 1, 2021
”現代”であるということを一番意識したプログラムを作りたいんです。古い作品ばかりやっていると古典芸能になっちゃう。古典を古典らしくやるんじゃなくて、リスペクトはしますが、もう一回洗い直すことで新しい可能性あるんじゃないか。それをやりたいから「FUTURE ORCHESTRA CLASSICS」なんですね。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと6日!一言インタビュー、本日は「FOCとはスポーツカーである・・・?」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/MeKCh3Oss5— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 2, 2021
(石川:)久石さんのストイックなところいろんなところに共感して集まってきている仲間だと思うので。FOCは機動力ありますよね。
(福川:)例えば僕が「こうしたい!」と言ったら「いいよ!やってみようよ」みたいな。
(久石:)普通のオーケストラはダンプカーや大型バスの感じなんですよ。ハンドル切ってもグ~ッと回っていく感じ。うちはスポーツカーなんですよ。ハンドル切るとギュイッと曲がるっていうかね。その機動性がめちゃくちゃ快感なんですよ。
(福川:)上手い!
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと5日!一言インタビュー、本日は「FOCの新たな挑戦」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/JZH3DmX68N— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 3, 2021
歌う。インテンポ(一定の速度)で歌う。そこを駆使しないと少しブラームスに対応するのが厳しくなる。ちょっといろいろ秘策を練っているところ。それをできたら怖いものないんじゃないかな、たぶん、うん。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと4日!一言インタビュー、本日は「今回のプログラムの魅力・・・のはずが?」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/3fl7BYtM3v— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 4, 2021
今回のプログラムはいいよ。「I. レポ・スメラ:交響曲 第2番」から始まって「II. I Want to Talk to You」やって、最後に「III. ブラームス:交響曲 第2番」。すごい個人的には大好きなプログラムになったね。チャレンジがいがある。あっ、ついでに言っとくけどもうじきCDと譜面が出る。石川さんにはContrabass Conertoを彼のために書いた。福川さんにはHorn Concerto (“The Border”) を書いて…買ってください。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと3日!一言インタビュー、本日は「レポ・スメラを選んだ理由」
チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/IWKBrSS8wV— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 5, 2021
レポ・スメラという人は知らなかった。すごく仲の良いデニス・ラッセル・デイヴィスという指揮者がいて、彼が推薦してきたのが「レポ・スメラ:交響曲 第2番」だった。レポ・スメラはエストニア出身で1950年生まれ。ものすごい情熱的ですよ。日本ではほとんど演奏されていないから、しばらくレポ・スメラの主な曲を日本に紹介したい。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと2日!一言インタビュー、本日は「今聴くべき曲」チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/nY22Em1Vne— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 6, 2021
山形のコーラス団体から委嘱されて作った曲。こういうパンデミックが起こる前にもう作っていたけど。I Want to Talk to You = あなたと話したい、この時期に書けてよかった。ほんとにこの時期の曲だったんだって。FOCできっちり演奏して、きっちりレコーディングする。そう思っている曲です。
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
公演まであと1日!一言インタビュー、本日は「ブラームスの2番にどう挑むか?」チケット残りわずかです。購入はお早めに!https://t.co/8WN48AequS pic.twitter.com/iezN2N0hDs— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 7, 2021
第2番は、僕はブラームのなかで一番難しい。ちょっと要素が多すぎる。だからリズムからのアプローチを新しくやる。それと”歌う”ことで、考えていることを全部クリアにできるかもしれない。
東京
長野
公演風景
会場の熱気が伝わってきます。
久石譲「また帰ってこれて本当にうれしいです。また会いましょう」
【FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3】
2年ぶりの長野公演、熱い拍手をありがとうございました!またお会いしましょう! pic.twitter.com/M14ua4UOUT— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 10, 2021
from 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF
@joehisaishi2019
ここからはレビューになります。
とは言いながら、当日の急なアクシデントで会場へ向かえませんでした(ほんとう残念)。ライブストリーミングのおかげでコンサート楽しむことができました。ありがとうございます。
レポ・スメラ:交響曲 第2番
予習で聴いていたときに、モチーフのくり返しにこだわった作品だとは思っていたのですが、まさかハープが2台も使われているとは思いませんでした。ステージ上のハープ2台は、いつもの奥端ではなく指揮者と向き合うように中央前面に配置されています。第1楽章冒頭から第3楽章終部まで。全体をとおして軸となりよく聴こえる音像からも重要性がわかります。
久石譲作品とも親和性のある現代作品です。FOCのためにプログラミングする作品としてもうなずけます。リズムやソリッドなアプローチを追求してきたFOC、相性も抜群と言えます。
ついついこういう作品を聴くと、反面教師じゃないんですけれども、久石譲作品との違いってなんだろうと考えてしまうクセがあります。レポ・スメラは映画音楽も手がけているようで、音楽による劇性や聴かせどころがしっかり出ています。スリリングで緊張感をキープした作品です。でも、僕はというと…(個人の感想です)ごにょごにょしててよくわからん、みたいなパートがあったりします。楽器たちがわりと狭い音域でひしめき合っている感じがあって見通しがあまりよくない。久石譲音楽の場合はどうだろう? と考えるクセがでる。たとえばひとつ、ピッコロやグロッケンといった高音域楽器がこの作品にはない、チューバやコントラバスの低音域楽器にどういう旋律を与えているか、こういったオーケストレーションの差異が見え隠れしだすと、とてもおもしろくなってきます。僕はちょっと変わった聴き方をしているのかもしれません。音楽が見通しよく立体的というのがどういうことなのか、何回でも聴きたい衝動はどこからきているのか、、などなど。他作品と並べることで、優劣ではない、違いを見つけられる。そこからそれぞれの良さがくっきりしてきたり、久石譲作品の魅力が跳ね返ってきたり。プラスな反面教師思考みたいなものでしょうか。
世界を見渡せばこういった現代作品を書いている作曲家がいること、その作品を知れること体感できること。久石譲が注目しているものに触れることができる機会はコンサートあってこそです。久石譲コメントにもあるとおり、レポ・スメラ作品は交響曲・チェロ協奏曲・ピアノ曲と今後も演奏予定とあります。この交響曲第2番は、海外公演も予定されています。
久石譲:I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~
作品については、久石譲コメントにあるとおりです。とても惹きつけられる作品です。ただ、いかんせん何回聴いても、わかるとっかかりもない。ただただ、無防備に浴びているだけでも満足してしまう。今は、それでいい作品なのかなとも思っています。たぶん、Covid-19に覆われた今聴くのと、これから3~5年後に聴くのとでは、印象も変化してくる作品なのかもしれません。複合的や重層的な受け止めかたしたりと、時間の流れとともに、歴史のなかでこれから起こることともに見つめていきたい作品です。いつの日か、久石譲本人や専門家によって楽想的なことについても大いに語ってもらいたい作品です。
3月初演時の感想は、わからないということを、わからないなりに、もっとたくさん書いています。よかったらご覧ください。
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op. 73
すごい迫力でした。こんなにエネルギッシュな作品だったんだと新鮮でした。ブラームスは交響曲第1番を発表したあと、とても解放的になったのか、この作品は伸びやかで快活です。でも、個人的には(一般的にも?!)第1番と第4番の影に隠れてしまうのが第2番と第3番です。
久石譲コメント(パンフレット/動画)にあるとおり、いろいろなことが探求され具現化されているんだと思います。第1楽章のくり返し含む演奏で通常45分くらいとして、久石譲FOC版は40分を切っています。たしかに速い。聴いていて退屈しない、とてもみずみずしい、スピーディーな躍動に快感! クラシックに馴染みの少ない人でも、ありきたりじゃない攻めの姿勢はびしびしと伝わってくるはずです。これはきっと凄い演奏なんだと直感するくらい。そして、ただ速ければいいってもんじゃない。速いだけを売りにしているつもりもない。ですよね。
「歌う」ことにこだわったアプローチとは、どういうものだったんでしょう。歌おうとすればするほど、気持ちも入りテンポは揺れ、遅れがちにもなります。今回、「インテンポ(一定の速度)を保って歌う」というのがコンセプトでありクリアしたいことでもあったとあります。
メロディの一音一音を区切り気味に演奏している箇所が多かったように思います。そして音価(一音ごとの長さ)をそろえる。こうすることでリズムは遅れないようにキープできます。管楽器などでは実現しやすい奏法かもしれません。
もうひとつ、弦楽器などで見られたのが、一音ごとにふっと力を抜くような奏法。なるべく同じ強さで音を伸ばさない。一音一音を区切り気味に演奏しようとしたときに、同じ強さで伸ばした状態で次の音に移るときに区切ろうとすると、ブツブツ切れた感じになって、たぶん歌っているようには聴こえなくなります。パッと音が立ち上がってスッと消えていく。管楽器であれば息で調整するものを、弦楽器は柔らかい筋肉でしなやかに。言うは易く行うは難し、けっこう大変な筋力と集中力をこめる必要があるように思います。
通常 ターターターター
FOC ター,ター,ター,ター
メロディの4つの音をなめらかにつなげて演奏する、伸ばしている間も音の強さは太いまま(通常)と、一音ごとに区切りを入れながらも、自然な切れ目となるように一音ごとの立ち上がりかたと消えかたを駆使する(FOC)。
風通し奏法、と勝手に呼びました。通常は、おおらかな弧を描くようにスラーで歌わせるとテンポが遅くなる。速いテンポをキープしながらこれをやると、たぶん走り急いでいるだけの印象になる。また音の密度や密集具合でかなり圧迫される。要は、息苦しいし窮屈な感じがするイメージです。ゆえに解! 音と音のすき間をつくって、フレーズごとの風通しをよくすることで、軽やかに駆け抜けるようなスポーティな推進力が得られる。…かな? 的外れだったらごめんなさい。それもあるかな、となったとしても、FOCがアプローチしていることの1/10も言えていないのはしかりです。ぜひCDになるときにでも、たっぷり秘技について語ってほしいですね。
第2楽章や第1楽章で気づきやすかったように思います。そういえば、扇子を広げたときって、小さな山谷があって(一音一音)、きれいな大きな弧を描いていますよね(メロディを歌うようにスラー)。
第4楽章に照準をあてたようなピークのもっていきかた爆発力もすごかったですね。どちらかというと小ぶりな作品というイメージのあった第2番に、ここまでのエネルギーが潜んでいたなんて。ちょっと好きがあがっちゃった。久石譲FOCは、速さを追求しながら駆動が空回りしてスピンしてしまうようなスポーツカーではなかったです。メリハリよく、フォルムが崩れることもなく。《古典を古典芸能にしない》という久石譲の言葉に多くが込められています。今このブラームスを聴いて、骨董品のような古びた印象をもったリスナーはいないと思います。
ここで終わらない。
プチお勉強しました。
FOCは立奏スタイルをとっているのは、もう久石譲ファンでは定着してきたでしょうか。また、FOCに限らずどの共演楽団でも、久石譲が古典作品を演奏するときはバロックティンパニが登場します。近年演奏されているベートーヴェン、ブラームス、モーツァルトの交響曲。小気味いい乾いた音でパンパンッと炸裂します。通常のオーケストラで使われているモダンティンパニは、ドンドンと重量感があるので、聴いた印象もずいぶん変わります。本公演でもレポ・スメラ作品とブラームス作品は、異なるティンパニが用意されています。棒(マレット)も使い分けているのでご注目。
よくティンパニとセットで扱われるのがトランペットです。…なんでかは聞かないでください…勉強が足りていない。実は、ティンパニが変われば、トランペットも変わるんです。変わっていました!
コルネットという楽器ではないみたい。ロータリートランペットかな、と調べている現時点での回答です。トランペットよりも音が柔らかく、音が大きくなりすぎない、弦楽器や木管楽器とも溶けこみやすい、とありました。ティンパニとトランペットは同じ音符の動きをすることがあります。旋律ではない、パン・ドン・ジャンのリズム的アクセントとして、とりわけ古典作品にはその役割が多いようです。重量級のドンから軽量級のパンに変わったティンパニ。だからトランペットも変わる。そして、この組み合わせのとき、ふたつの楽器は隣同士に配置されています。(レポ・スメラ作品のときは右側と左側に大きく離れています)。…ということだと思います。添削アドバイスお願いします。また勉強して帰ってきたいと思っています。
ブラームス:ハンガリー舞曲 第17番
アンコールです。全21曲ある「ハンガリー舞曲」から、どうして第17番なんだろう? と思って調べてみました。
ブラームスが4手のピアノ連弾用として作曲し、ドヴォルザークや自らのオーケストラ編曲版によってより広く親しまれるようになった「ハンガリー舞曲集」。ブラームスは3曲のみ管弦楽用に編曲をしていて、残り18曲はさまざまな音楽家によってオーケストレーションされている、という作品です。そして、第17番から第21番までの管弦楽編曲がドヴォルザークの手によるものなんですね。また「交響曲第2番」と「ハンガリー舞曲」は作曲時期も近いんですね。なるほど。
最後にプロフィール。
フューチャー・オーケストラ・クラシックス
Future Orchestra Classics(FOC)
2019年に久石譲の呼び掛けのもと新たな名称で再スタートを切ったオーケストラ。2016年から長野市芸術館を本拠地として活動していた元ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)を母体とし、国内外で活躍する若手トップクラスの演奏家たちが集結。作曲家・久石譲ならではの視点で分析したリズムを重視した演奏は、推進力と活力に溢れ、革新的なアプローチでクラシック音楽を現代に蘇らせる。久石作品を含む「現代の音楽」を織り交ぜたプログラムが好評を博している。2016年から3年をかけ、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏に取り組み、2019年7月発売の『ベートーヴェン:交響曲全集』が第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞した。現在はブラームスの交響曲ツィクルスを行いながら、日本から世界へ発信するオーケストラとしての展開を目指している。
本公演は、まさにこのプロフィールとおりですね。あらためてゆっくり読みながらそう思います。【日本から世界へ発信するオーケストラとしての展開を目指している】、いつの日か海外公演も実現するのかもしれません。そして今のFOCは、日本国内はもちろん海外でもリアルタイムでコンサートを楽しめる発信、ライブ・ストリーミングを実現しています。
これからのFOCは「Vol.4」(2022年2月)、「Vol.5」(2022年夏)と予定されています。残るブラームス交響曲 第3番と第4番もそれぞれ振り分けわれ、そこへ魅力的な現代作品もプログラムされるだろうと思います。もちろん久石譲作品も。楽しみが予定されていることはうれしいかぎりです。
まだ間に合うライブ配信のアーカイブ配信!
アーカイブ配信期間
7月15日(木)23:59まで
チケット価格
1,980円(税込)
※Streaming+、ローチケLIVE STREAMING、neo bridge、LINE LIVE-VIEWINGにて配信
チケット販売期間
2021年6月30日(水)12:00~7月15日(木)19:00
公式サイト:フューチャー・オーケストラ・クラシックス Vol.3 ライブ配信
https://joehisaishi-concert.com/foc-jp/foc-vol3-online/
Official Website for Oversea: FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3 LIVE STREAMING
https://joehisaishi-concert.com/foc-jp/foc-vol3-en-online/
2021.07.14 追記
2021.07.27 追記
プログラムから久石譲の新曲「I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~」が特別配信されました。
2021.10.01 追記
Posted on 2021/07/10
チョバニ(Chobani)の広告動画の音楽を久石譲が担当しています。チョバニは主にギリシャヨーグルトに特化したアメリカ乳製品企業です。2021年3月にコマーシャル動画「Eat today, feed tomorrow」(30秒)公開されました。 “Info. 2021/07/10 「Chobani : Dear Alice」チョバニ 久石譲音楽担当 広告動画公開” の続きを読む
Posted on 2021/07/09
日本の巨匠・久石譲が本格的に世界リリース!
Deccaリリース第2弾となるベスト作品。
海外での認知度も高い映画音楽を中心に、彼の音楽人生を代表する名曲ばかり。北野武映画曲 “Kids Return” “HANA-BI” の新規録音を含む、全28曲。2枚組みアルバム。
(メーカー・インフォメーションより) “Info. 2021/08/20 久石譲ベストアルバム『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』世界リリース決定!!” の続きを読む
Posted on 2021/07/09
久石譲オフィシャルYouTubeチャンネルに、新しいミュージックビデオ「HANA-BI」が公開されました。
ぜひご覧ください。 “Info. 2021/07/09 久石譲「HANA-BI」Music Video公開 新録音” の続きを読む
2021年7月7日 CD発売 UMCK-1682
待望の久石譲「ミニマリズム」シリーズ第4弾!!
「コントラバス協奏曲」「ホルン協奏曲」の2作品を豪華に収録。
「ミニマル×コンチェルト」新たな魅力に出会える1枚。
(CD帯より)
待望の久石譲「ミニマリズム」シリーズ第4弾!!
今作は「ミニマル×コンチェルト」がコンセプト。久石譲が書き下ろした協奏曲の中でも、際立つ存在の2作品を豪華に収録。世界でも稀有な存在である「コントラバス協奏曲」、そして「3本のホルンのための協奏曲」は、独奏楽器としての今までにない表現の可能性と限界に挑んだ意欲作。当代随一のソリストを迎え、今注目の久石譲指揮、フューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)の演奏で、コンチェルト×ミニマル・ミュージックの新たな魅力に出会える一枚。
日本テレビの音楽番組『読響シンフォニックライブ』の委嘱作品として2015年に発表されたコントラバス協奏曲。世界初演時のソリストとして観客を魅了した石川滋さんが、2017年に、久石譲と再びタッグを組み、FOC(旧NCO)の演奏によりレコーディングされた。低音域のコントラバス(故にコンチェルトとしては稀有な存在である)とオーケストラの緻密に計算された絡み合いは必聴です。
NHK交響楽団の首席ホルン奏者でもある福川伸陽さんからの依頼をきっかけに、構想から丸一年をかけて作り上げられ、3本のホルンによる協奏曲として、2020年2月に発表された作品。収録音源は、久石自身の指揮、FOCの世界初演によるライヴ演奏。福川伸陽、そして豊田実加、藤田麻理絵による見事なコンビネーションで奏でられるホルン協奏曲。
(メーカーインフォメーションより)
楽曲解説
Contrabass Concerto
「Contrabass Concerto」は日本テレビの「読響シンフォニックライブ」という番組でカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」と一緒に演奏する楽曲として委嘱された。ソロ・コントラバスは石川滋氏を想定して作曲し、両曲とも僕が指揮した。
作曲に当たってコントラバスの音を実体験するために楽器を購入し、毎日作曲の前に15~30分練習した。そのことによって響きを身体で覚えることができた。
2015年の春先から作曲を開始し、夏にコントラバスのパートとピアノスケッチを作り、秋にオーケストラのパートが完成した。全3楽章からできており約30分の作品になった。
初演は2015年10月29日 東京芸術劇場 コンサートホールにて、ソロ・コントラバス 石川滋氏(読響ソロ・コントラバス)と読売日本交響楽団によって演奏された。その後2017年7月16、17日にわたって長野市芸術館 メインホールにて同石川氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって再演され同時にレコーディングもされた。
第1楽章
F#-B-E-Aの4つの音が基本モチーフとして全体を支配している。この4度音程はソロ・コントラバスのオープンチューニング(通常はE-A-D-G)なのだが、展開していくと演奏する上では大変難しい音程でもある(ヴァイオリンの5度音程のように)。もともと軽快なテンポで始まる自由な形式の楽曲だったが、後に序奏と中間部に遅めにテンポのパートを作り、全体を立体的にした。
第2楽章
冒頭のコントラバスのピッツィカートはもちろんジャズからの影響であり、それがもっともこの楽器の良さを発揮すると考えたからである。その上にクラリネット、ホルンが奏でる、モチーフが全体の要になっている。その後コントラバスが同じモチーフを演奏しながら盛り上がり、静かな中間部になる。ちょっと複雑だが大きくは3部形式からなり、後半はベースランニングのアップビートで始まる。個人的にはもっとも無駄なく構成できた楽章で気に入っている。
第3楽章
この楽章では7度音程のモチーフで全体を構成している。スケルツォ的な明るさと終楽章としての重みが出るように気をつけた。一番ミニマル的な方法論に近い楽章になった。
The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra
「The Border」はホルン奏者の福川伸陽氏から依頼されて作曲した。全3楽章、約24分の作品になった。
初演は2020年2月13日 東京オペラシティ コンサートホールで、ソロ・ホルン 福川伸陽、豊田実加、藤田麻理絵の諸氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって演奏され、同時にレコーディングもされた。
I. Crossing Linesは、16分音符の3、5、7、11、13音毎にアクセントがあるリズムをベースに構成した。つまり支配しているのはすべてリズムであり、その構造が見えやすいように音の構造はシンプルなScale(音階)にした。
II. The Scalingは、G#-A-B-C#-D-E-F#の7音からなる音階を基本モチーフとして、ホルンの持つ表現力、可能性を引き出しつつ論理的な構造を維持するよう努めた。
III. The Circlesは、ロンド形式に近い構造を持っている。Tuttiの部分とホルンとの掛け合いが変化しながら楽曲はクライマックスを迎える。以前に書いた「エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための室内交響曲」の第3楽章をベースに再構成した。ホルンとオーケストラによってまるで別の作品になったことは望外の喜びである。
久石譲
(CDライナーノーツより)
久石譲の”ミッション・インポッシブル” ──『ミニマリズム4』について
コントラバスのための協奏曲と、ホルンのための協奏曲を、ミニマル・ミュージックの作曲家・久石譲が作曲する──。驚いた。あまりにも大胆不敵でチャレンジングな試み、ほとんど”ミッション・インポッシブル”と呼んでもよい試みだ。
なぜ”ミッション・インポッシブル”なのか?
まず、楽器という側面から見てみよう。そもそも、コントラバスのための協奏曲の数は少ないし、あったとしても、チェロ協奏曲の変種のように書かれている場合がほとんどだ。つまり、「この楽器でなければならない」という必然性を掘り下げる余地が、まだまだ多く残されている。ホルンのための協奏曲の場合は、まだコントラバスよりも作品が多く書かれているが、演奏頻度の高いレパートリーはモーツァルトやR・シュトラウスのような古典に偏り、20世紀以降の作品がなかなか演奏に恵まれていないのが実情である。
つまり、どちらの楽器も”協奏曲のスター”とは言い難いのだ。
そうした事情に加え、さらにミッションを困難にしているのが、それぞれの楽器の特性と、久石が得意とするミニマル的な音楽語法との相性である。
コントラバスは、和音の基音を鳴らしたり、あるいは低く呟くドローンのような持続音を演奏するのに適しているが、コントラバスが鳴らす低音は、音響学上、他の楽器の高・中音域に比べて到達が遅いというハンディがある。同様にホルンも、広大な空間を感じさせるロングトーンや印象深いメロディを演奏するのには適しているが、直接音を響かせる他の楽器と異なり、ホルンは壁の反射などを使った間接音を響かせる楽器なので、どうしても他の楽器との間にタイムラグが生じてくる。つまり、ピアノやヴァイオリンやマリンバがキレのあるミニマルのパッセージを弾くようには、コントラバスやホルンは弾けないのである。
だが、そうしたハンディに怯んでいては、作曲家としての久石の名が廃る。むしろ、誰も手を出したことのない領域にチャレンジするからこそ、久石の本領がいかんなく発揮されると言うべきだ。
では、久石は如何にして不可能なミッションを可能にしていったのだろうか?
《コントラバス協奏曲》(2015年作曲・初演)の場合、久石は現代のコントラバスの4度調弦を踏まえる形で4度音程の主要モチーフを導き出し、そのモチーフを展開していくという、いわば楽器そのものに寄り添ったアプローチで音楽を始めている。5度調弦を用いる他の弦楽器とコントラバスが異なる以上、まずは謙虚にコントラバスという楽器を見つめ、そこから音楽を始めていく──まさに最小限のアプローチと言い換えてもいい──というのが、《コントラバス協奏曲》での久石の方法論だ。
これに対して《The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra》(2020年作曲・初演)の場合は、曲名が示しているように、久石は独奏ホルン奏者を3人用意することで、ミニマル特有の素早いパッセージの演奏にもホルンを対応させ、3オクターヴ以上に跨るホルンの音域を存分に引き出しながら、オーケストラ作品にしばしば聴かれるホルン三重奏の美しい響き(たとえばベートーヴェンの《英雄》など)を独奏パートに付与することに成功している。「ホルン奏者を3人も用意するのか」と驚かれるリスナーもいらっしゃるかもしれないが、2管編成のオーケストラのために書かれた《The Border》の場合は、ホルン・セクションの奏者2人がそのまま独奏パートに加わるので、編成上、決して無理のない解決法となっている。
しかしながら、この2曲の協奏曲が真にユニークなのは、久石がこれらの独奏楽器をクラシックの文脈だけで扱うのではなく、それぞれの楽器に特有の伝統や楽器の起源といった、いわば”楽器の文化的な側面”まで作品の中に取り込んでいる点だ。
独奏楽器としてのコントラバスを考えた時、多くの人がイメージするのは、実はクラシックよりもジャズだろう(その場合は「ダブルベース」と英語読みにするのが適切である)。ダブルベースの名手たちが得意とする深々としたピッツィカート、つまりジャズ・ベースは、どんな楽器にも真似できないユニークで魅力的な音楽表現である。あたかもクライム・ストーリーを読むような”夜の音楽”として書かれた第2楽章のジャズ的な表現は、そうしたジャズ・ベースの伝統に由来している。
一方の《The Border》では、第2楽章冒頭のマーラー風の序奏、あるいは第3楽章最後に登場するアルペンホルンのようなカデンツァに、”角笛”から派生したホルンという楽器の出自がしっかりと刻印されている。山々や国々、ひいては文化圏や時空も超えて響きわたる”角笛”──それこれが曲名の《The Border》の意味するところなのかもしれない。
このように、久石はいくつもの困難なミッションをクリアし、コントラバスやホルンでなければならないという必然性を深く掘り下げながら、楽器そのものの魅力も充分に引き出し、しかも、どちらの協奏曲の終楽章もエネルギッシュなミニマル・ミュージックで締め括ることで、久石でなければ書けない音楽の必然性、つまり”ミニマリズム”を明確に打ち出している。久石の”ミッション・インポッシブル”が鮮やかに達成される瞬間の爽快感を、これ以上拙い文章で説明するような野暮な試みは敢えて慎み、あとは本盤に収録された演奏そのものに委ねたい。
例によって、リスナーもしくはその仲間が久石の”ミニマリズム”の魅力に捕らえられ、あるいは一生その魅力から抜け出られなくなっても、当方は一切関知しないので、そのつもりで。
2020年12月6日、久石譲の誕生日に
前島秀国 Hidekuni Maejima
サウンド&ヴィジュアル・ライター
(CDライナーノーツより)
プロフィール
フューチャー・オーケストラ・クラシックス
Future Orchestra Classics(FOC)
2019年に久石譲の呼び掛けのもと新たな名称で再スタートを切ったオーケストラ。2016年から長野市芸術館を本拠地として活動していた元ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)を母体とし、国内外で活躍する若手トップクラスの演奏家たちが集結。作曲家・久石譲ならではの視点で分析したリズムを重視した演奏は、推進力と活力に溢れ、革新的なアプローチでクラシック音楽を現代に蘇らせる。久石作品を含む「現代の音楽」を織り交ぜたプログラムが好評を博している。2016年から3年をかけ、ベートーヴェンの交響曲全曲演奏に取り組み、2019年7月発売の『ベートーヴェン:交響曲全集』が第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞した。現在はブラームスの交響曲ツィクルスを行いながら、日本から世界へ発信するオーケストラとしての展開を目指している。
(CDライナーノーツ より)
*CDライナーノーツ 全テキスト日本文・英文を収載
TV番組内インタビュー
久石:
音がこもりがちになる低域の楽器をオケと共演させながらきちんとした作品に仕上げるのはハードルが高かったです。僕は明るい曲を書きたかったので、ソロ・コントラバス奏者の石川滋さんには今までやったことないようなことにもチャレンジしていただく必要もありました。
石川:
久石さんに曲を書いていただくということは夢のような出来事でした。ましてやソロ楽器としてはマイナーであるコントラバスで協奏曲を書いてくださったのは自分にとってとても貴重な経験になりました。
石川:
最初に譜面を見たときはその曲の素晴らしさに感動して、「ぜひ弾きたい!」と思ったのですが、冷静に譜面を見てみると「これは弾けるのだろうか?」と思うほど難曲でした。音の数や跳躍の多さ、それに音域がとても広く短時間の間に弾かなければならないなど…大変でしたね。
石川:
今久石さんがなさりたい音楽というものがすごくわかる中で、今まで培ってきた映画音楽などのポップな音楽性も随所に見られて、とても素晴らしい曲です。
(公式サイト:読響シンフォニックライブ | 放送内容より 編集)
(Info. 2015/12/26 [TV] 「読響シンフォニックライブ」カルミナ・ブラーナ(12月) コントラストバス協奏曲(1月) より抜粋)
「コントラバスを独奏楽器としてイメージしてみた時、真っ先に思い浮かぶのがロン・カーターのようなジャズ・ベーシストなんですよ。そうすると、これも当然”アメリカ”になってくる。よくよく考えてみると、今年の作曲活動のポイントは、じつは”自分の内なるアメリカ”を確認し直すことだったのかと。それが必然的な流れならば構わないし、結果的に良い作品が生まれればいい。チェロ協奏曲の延長として作曲しても面白くないですから。これはすごく面白い曲に仕上がると思いますよ。期待してください」
(Blog. 雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」久石譲 インタビュー内容 より抜粋)
「協奏曲も、やはりオーケストラに向けた作品ということが、作品を作る上で半分を占める重要な要素になりますね。オーケストラ作品を書く場合は、オーケストラの機能を最大限発揮出来るように書きますが、協奏曲の場合は、ソリストとオーケストラはある意味で五分五分の立場です。単純にオケが伴奏に回るような作品は書きたくないし、ソリストはオーケストラと対峙して、その全部を引き受ける形にもなるので、その楽器の特性をすべて発揮してもらいたい。それを踏まえて書くのが魅力的だし、とても大事なことだと思っています」
「やはり実際にその楽器触れてみないと分からないことがたくさんあるし、コントラバスは大きな楽器なので、どういう振動が身体に伝わるかなども知りたかったのです。それから、この音とこの音の組み合わせだと、弓がこう引っかかってしまうなとか、そういう細かなことも実際にやってみないと分からないことが多いのです。そのために、石川さんを通して楽器を購入した訳です」
「それから3本にすると、経済的な効果もあるのです。というのは、ホルン奏者がひとりであるオーケストラに協奏曲を演奏しに行った時に、そこのオーケストラのホルン奏者たちと共演できるスタイルにすれば、演奏機会が少なくなるということはないだろうと。例えば、福川さんひとりで海外のオケに行った時に、そこのホルン奏者と共演も出来る。」
「我々、作曲家の立場から言えば、作品が演奏されてなんぼだと思うのですよ、作品を書いた以上は。演奏してもらう上で、ものすごくハードルが高かったら演奏機会も少なくなりますよね。そういうことも踏まえた上で、福川さんのような優れた演奏家が世界のどこでも演奏できる作品ということを考えた時に、このやり方は間違っていないなと思いましたね」
「いわゆる国境、リミット・ラインというような意味ですが、ホルンの音がパルスのように連なって行くのが、地平線だったり水平線だったり、そういうイメージがあって、そのラインを上がったり下がったりして行く、それをちゃんと計算されたものとして作って行く時に、キーとなる言葉としてBorderという言葉がずっと頭の中にありました。」
(Info. 2021/07/15 久石譲がコントラバス石川滋、ホルン福川伸陽と語る挑戦に満ちた協奏曲集『ミニマリズム4』(Web Mikikiより) より抜粋)
「どちらの楽器も、アンサンブルで他の人と演奏したときに能力を発揮する楽器なんですよ。例えば弦楽合奏にコントラバスがなければ、響かなくて音量が半分ぐらいに減りますし、ホルンのないオーケストラって想像できますか? でも今回はソロなので楽器をむき出しにして、この楽器の何が魅力なんだということを真剣に考え直したわけです。コントラバスは、ソロ楽器としてならやはりジャズのウォーキングベースが魅力的ですよね。それはなぜかといえば弦が長くて響くから。……ということはハーモニクスもきっちり使えば良い武器になるはず。でも、それらを十分に活用した楽曲はまだないんですよ。だから、どうやったらその部分が発揮できるのかを考えながら書きました」
「こちらもずっと意識してました(笑)。そのあとミュージック・フューチャー Vol.6(2019年10月25日)の前日か当日に、協奏曲のアイディアが急に浮かんだんですよ。パルスを刻んでいるところに、下から駆け上がってるラインと、逆に上から下へのラインが絶えずクロスしていく。ただそれだけしかない曲を書きたいと。それで2019年2月から構想を練り、およそ1年がかりで作曲しました。主要モティーフを頭に提示したら、それ以外の要素を使わないでロジカルに作ることを徹底した作品になったことで、ミニマル・ミュージックの原点に戻ってきたように聴こえるかもしれないですけど、そうでもないんです。この作品は個人的にとても大事なものになりましたが、それはいわゆる感性や感情、あるいは作曲家の個性に頼らないスタイルができたからです。第2楽章はフレーズのスケールが大きな福川さんだからこそできる音楽になっています」
(Blog. 「音楽の友 2021年8月号」久石譲&石川滋&福川伸陽 鼎談内容 より抜粋)
コントラバス協奏曲
もう一度『コントラバス協奏曲』をじっくり聴いていきました。するとそこには管楽器や打楽器・パーカッションの融合からくる独特な響きがありました。
コントラバスを主役に据えるということは、実はものすごく挑戦的なことなのかもしれません。音域も狭いし低音、なかなか前面には出にくい、つまり埋もれてしまいやすい。同じ弦楽であるヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、これらの弦楽合奏を一緒に濃厚に奏でようものなら、コントラバスはいつもの低音域に追いやられ負けちゃいます。でもソリストとして独奏となった場合は、縦横無尽に動き回ったり、ピッツィカートなどで最大限の存在感をしめしたい。
この作品で久石譲が巧みにオーケストレーションしているのは、弦楽合奏にかえて管楽器・打楽器・パーカッション各々の楽器特性を活かし、色彩豊かに配置していることです。全体としては音の塊を厚くしすぎることなく、余白のある音楽、輪郭のくっきりしたそぎ落とした音像になっています。さらに薄くならない、単調にならない、間延びしないよう、絶妙にオーケストレーションされているのが管楽器・打楽器・パーカッション。そこにコントラバスを主役として迎えているように感じます。
この作品では、管楽器+パーカッション、打楽器+パーカッションという旋律を数多く聴くことができます。パーカッションがリズムを刻んだり、拍子を打つ役割だけではなく、管楽器や打楽器と同じフレーズで重ねられているということです。音程のある管楽器群や打楽器群と、基本的には音程のないパーカッションを重ねることで、なんとも魅力的な広がりあるカラフルな構成展開を実現しています。パーカッションの種類も豊富だし、同じ楽器の奏法バリエーションも引き出し多く、聴くたびに新しい発見があります。弦楽合奏で厚みをもたせたり、コントラバス以外の弦楽器たちが前面に出てしまうと負けてしまうコントラバス、その解決策として導き出したものだと思います。
従来の壮大なシンフォニックではない、この手法はまさにアンサンブル的です。「ミュージック・フューチャー」コンサートでアンサンブルを進化させ、さらに新しいオーケストレーションを施すようになったからこそできた作品、それが『コントラバス協奏曲』なのかもしれません。とても気に入っている作品です。
よし!今回は木管楽器(フルート、ピッコロ、オーボエ、クラリネット、ファゴット、コントラファゴットほか)に意識を集中させて聴いてみよう、次は金管楽器(ホルン、トランペット、テナートロンボーン、バストロンボーン)に、次は打楽器(マリンバ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、シロフォンほか)に、次はいつもよりも奥に名脇役に徹しているピアノ、チェレスタ、ハープは? パーカッション(ドラムセット、カウベル、ウッドブロック、大太鼓、クラベス、トライアングルほか)だけを追いかけても、おもちゃ箱のようにいろいろなところから楽器が旋律が飛びこんでくる! そんな発見のできる作品です。
どこを切り取ってもいいなと思う作品です。なにが飛びすかワクワク楽しいおもちゃ箱のようです。そのくらい好きな作品です。
久石譲:The Border ~Concerto for 3 Horns and Orchestra~ *世界初演
ホルンのために書かれた協奏曲です。3人のホルン奏者がフィーチャーされ、ステージ前面中央で主役を演じます。その音色から悠々とした旋律を奏でるイメージのあるホルンですが、この作品では、とても細かい音符をあくまでもリズムを主体とした音型を刻む手法になっていました。ずっと吹きっぱなしで、ミュートを出し入れ駆使しながら、さらにそれなしでも、おそらくは口と管に入れた手だけを調節して。ホルンという楽器にはこんなにもバリエーション豊かな音色があるんだと、感嘆しました。第2楽章では、ホルンのマウスピースだけで音とも声ともつかない音色を奏でたり。第3楽章は「エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための室内交響曲 第3楽章」をベースにしているとあるとおり、エレクトリック・ヴァイオリンの独奏パートがホルンに置き換えられ、1管編成の室内楽だったものが、オーケストラへと拡大されています。
生演奏で体感し、ホルンを味わい、オーケストラの重みも伝わり。この作品は、レコーディングされて、ホルンをはじめ個々のパートがそれぞれ浮き立って配置されたものをしっかりと聴けたときに、またいろいろな発見がおもしろみが感じられる。そう思っています。ホルン3奏者の役割分担や絡み合うグルーヴ、ホルンとオーケストラとのコントラスト。エレクトリック・ヴァイオリンが担っていたディストーションや重奏やループ機能までを、ホルン(単音楽器)×3へ分散させた術などなど。そんな日を願っています。
(Blog. 「久石譲 フューチャー・オーケストラ・クラシックス Vol.2」 コンサート・レポート より)
本盤収録作品は公式スコアもあります。
Minima_Rhythm IV
Joe Hisaishi
Contrabass Concert (2015)
1. Movement 1
2. Movement 2
3. Movement 3
The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra (2020)
4. I. Crossing Lines
5. II. The Scaling
6. III. The Circles
All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Track 1-3
Contrabass Concerto
Shigeru Ishikawa (solo contrabass)
Joe Hisaishi (conductor)
Future Orchestra Classics (orchestra)
Kaoru Kondo (concertmaster)
Recorded at Nagano City Arts Center Main Hall (16-17 July, 2017)
Track 4-6
The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra
Nobuaki Fukukawa, Mika Toyoda, Marie Fujita (solo horns)
Joe Hisaishi (conductor)
Future Orchestra Classics (orchestra)
Kaoru Kondo (concertmaster)
Live Recording at Tokyo Opera City Concert Hall, Tokyo (13 February, 2020)
Recording & Mixing Engineer: Tomoyoshi Ezaki (Octavia Records Inc.)
Assistant Engineers: Takeshi Muramatsu (Octavia Records Inc.), Yasuhiro Maeda
Mixed at EXTON Studio Yokohama
Mastering Engineer: Shigeki Fujino (UNIVERSAL MUSIC)
and more…
Posted on 2021/07/03
久石譲コンサートが、フランスのパリで開催されます。共演はストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団です。この公演は2020年9月12-13日(当初予定)の延期公演にあたると思います。 “Info. 2022/05/06-08 「Hisaishi Symphonique – à la Philharmonie de Paris」久石譲コンサート(パリ)開催決定!!” の続きを読む