Info. 2021/08/18 久石譲 現代曲同様のアプローチでクラシックを活性化したい (ぶらあぼ より)

Posted on 2021/08/18

クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ 2021年9月号」およびWeb版「eぶらあぼ」に久石譲インタビューが掲載されました。ぜひご覧ください。 “Info. 2021/08/18 久石譲 現代曲同様のアプローチでクラシックを活性化したい (ぶらあぼ より)” の続きを読む

Info. 2021/11/27 久石譲「Castle in the Sky」「となりのトトロ」「パン種とタマゴ姫」3タイトル 初アナログ盤発売

Posted on 2021/08/18

“スタジオジブリ×久石譲‘’アナログ盤シリーズに『パン種とタマゴ姫』サントラなど3作品登場

大好評発売中の “スタジオジブリ×久石譲‘’ 作品のアナログ盤シリーズに、いよいよ特別編とも言うべき 「Castle in the Sky~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン~」のサウンドトラック、 「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」、そしてジブリ美術館でしか観る事のできない『パン種とタマゴ姫』のサウンドトラックが登場します。 “Info. 2021/11/27 久石譲「Castle in the Sky」「となりのトトロ」「パン種とタマゴ姫」3タイトル 初アナログ盤発売” の続きを読む

Overtone.第48回 新しいピアノ・ストーリーズのかたち

Posted on 2021/08/17

ふらいすとーんです。

久石譲人気を揺るぎないものにしたシリーズ、時代ごとにファンをぎゅっとつかんできたシリーズ、「ピアノ・ストーリーズ」です。

 

ピアノ・ストーリーズとは

映画・TV・CMのために書かれた音楽を、独立した音楽作品として書き直した楽曲が数多く収録されています。アルバムにはオリジナル楽曲も配置されています。エンタメ楽曲とオリジナル楽曲でテーマをコンセプチュアルにまとめたもの。その時代の指向性を色濃く反映した音楽制作になっています。ピアノを基調として、アルバム・コンセプトに即してリアレンジされることで、一枚とおして聴ける統一感と、人気曲も新しい魅力で聴かせてくれます。

メロディ親しみやすい楽曲も、クラシックから現代音楽までの語法によって精緻に構成されています。エンターテインメントな衣装をまといながら、そこには時代や流行に左右されないアート性が宿っています。まさに色褪せることのない洗練された響き。久石譲の大衆性と芸術性を絶妙にブレンド、気品のあるアコースティックな音楽作品へと昇華させたもの。それが「ピアノ・ストーリーズ」です。

久石譲コンサート活動と連動することも多く、過去にはアルバム引き下げてのコンサート・ツアーや、あるいはコンサートの楽器編成そのままにアルバム制作を並行して完成させた盤もあります。おのずと収録された楽曲たちは、演奏会用作品としてもしっかりと成立している。アルバムとコンサート、久石譲のライフワークであり、その時代ごとのマイルストーンや区切りの役割も果たしてきました。そして、忘れてはいけないこと。「ピアノ・ストーリーズ」人気とともに、ピアニスト久石譲の魅力もたっぷり届けてきた、大切なシリーズです。

 

 

数々の映画音楽をピアノソロ用にアレンジしたアルバム。シリーズ第1作であり代表作。シンセサイザー仕事の多かった当時、原点に戻りたいとシンプルな表現を目指したという。「Fantasia (for Nausicaä) 」「Innocent」「The Wind Forest」ほか収録。

久石譲 『piano stories』

 

ピアノとストリングス。映画・TV・CM音楽からはもちろん、珠玉のオリジナル曲たちで彩るアルバム。「Asian Dream Song」「Angel Springs」「Kids Return」ほか収録。

久石譲 『PIANO STORIES 2』

 

イタリア的な”唄”をコンセプトに、映画・TV・CM音楽からオリジナル曲・カバー曲まで。イタリアで現地オーケストラとレコーディングするほどこだわった、エスプリ香るアルバム。「il porco rosso」「HANA-BI」「Cinema Nostalgia」ほか収録。

久石譲 『PIANO STORIES 3』

 

ピアノとストリングスをメインに、映画音楽・TV・CM音楽が数多く収録されたアルバム。親しみやすいタイアップ曲とは対照的なオリジナル曲の内省性が”自由”に奥ゆきと深みを。「人生のメリーゴーランド 」「Oriental Wind」「Spring」ほか収録。

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』

 

シリーズ4枚から久石譲自らセレクトしたベスト・アルバム。新しいファンのための入門編にもなるうれしい一枚は、宮崎駿監督作品から北野武監督はもちろんCM曲まで。「人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-」未発表音源も収録。

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

 

ピアノと12人のチェロにパーカッションらを加えた斬新な楽器編成によるアルバム。エンターテインメント音楽はもちろん作家性の色濃い自作品まで。シリーズのなかでもポップスとクラシックの二面性が拮抗した、独自性を放つ”Anoter”なアルバム。「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Departures」「The End of the World」ほか収録。

久石譲 『Another Piano Stories』

 

more!

 

 

2020年ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』に収録された曲も多いです。世代ごとに大きな螺旋を描いてきた久石譲ファン、また新たなファンを獲得するメモリアルな一枚になる愛蔵版です。

代表曲はもちろん久石譲のキャリアを一望できる2020ベスト盤は、待望の世界リリースでCD盤・デジタル配信・ストリーミングまで、さらに広がっています。ベスト盤を起点にして過去「ピアノ・ストーリーズ」シリーズを一枚ずつめくっていく、そんな逆スパイラルな楽しみ方も、これからはそっちが主流になっていくでしょう。

 

 

 

2016年頃から、久石譲作品をメインとしたコンサートのときに、「ピアノ&ストリングス」コーナーがプログラムに挙がることがでてきました。1990-2000年代の久石譲アンサンブルコンサートやピアノソロコンサートに足を運んできたファンには懐かしい、またオーケストラを指揮する姿しか見たことのないファンには新鮮な、美しい旋律と響きに心酔するコーナーです。

 

 

新しいピアノ・ストーリーズのかたち

  • 弾き振りの一体感
  • 新しいオーケストレーション
  • ピアノの円熟味

これまでのピアノ・ストーリーズとの変化を、大きく3つに分けて進めていきます。名曲たちが時を越えてコンサート演奏される、そんな喜び満ちた面もありますが、今だからこそ聴ける新しさもいっぱいに届けてくれています。

 

 

どんな曲が演奏されてきた?

” ”で囲んだ久石譲コメントとともに。

 

【Hope】for Piano and Strings
View of Silence
Two of Us
Asian Dream Song

“また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)に初挑戦します。そのためこのコーナーはすべて新しくオーケストレーションし直しました。”

“その弾き振りの「HOPE」というコーナータイトルは長野パラリンピックのときに作った応援アルバムのタイトルからとりました。折しもフィギュアスケートの羽生結弦さんが今年の演目で採用している楽曲が2曲含まれます、お楽しみに。”

Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

【mládí】for Piano and Strings
Summer
HANA-BI
Kids Return

“また弾き振り(ピアノを弾きながら指揮もする)もおこないます。これは昨年の大阪ジルベスターコンサートで初めて実践し、今年もチェコのプラハ等で好評だったのでW.D.O.としても初めて試みます。ちなみに今までは指揮の合間にピアノを弾いていたのですが今回はピアノの合間に指揮をする? ややこしいですね、その違いをぜひご覧ください。”

“弾き振りの「HOPE」はフィギュアスケートの羽生結弦さんが昨シーズンの演目で採用していた楽曲が2曲含まれています。また「mládí」は北野武監督映画に作った楽曲を構成したものです。チェコ語で青春という意味でヤナーチェクにも同名のタイトル曲があります。”

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート より抜粋)

*【mládí】初演:2017年4月プラハコンサート「THE WORLD OF JOE HISAISHI」

 

 

The Path of the Wind 2018

(映画『となりのトトロ』より「風のとおり道」、ピアノ&ストリングス版の新たなオーケストレーションで演奏されました。同年夏NHK「ジブリのうた」でピアノ&ヴァイオリン版も初披露され歓喜しました。デュオ版と同じ楽曲構成にストリングスが極上に包みこむ芸術的な響きになっています。)

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」 コンサート・レポート 参照
Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」BS日テレTV放送 レビュー 参照

 

 

[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings
Woman
Ponyo on the Cliff by the Sea
Les Aventuriers

“ここ数年挑んでいるピアノと弦楽オーケストラの形です。指揮者としてオーケストラと対峙する関係と違い、演奏者として一体感が高く、とても好きなスタイルです。一方、指揮者もやらなければならないので、とてもハードなスタイルでもあります。作曲家の久石譲さんは演奏家にとても厳しいので、ピアニストとしてはいつも大変です(笑)。

今回はハープともう一台のピアノ、パーカッションを入れました。「Woman」「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Les Aventuriers」の3曲とも「Another Piano Stories」というアルバムに入っていた曲です。12人のチェロとピアノ、ハープとパーカッションという特殊な編成のバージョンをベースにしながら、今回のツアーのために書き直ししました。”

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート より抜粋)

 

 

コンサートで披露した楽曲の多くは、過去「ピアノ・ストーリーズ」シリーズにも収録されています。楽曲構成(パート・時間)の大枠は変わない。けれども、すべての曲でピアノ&ストリングスのための新たなオーケストレーションが施されています。CD収録の原曲はどんな楽器編成なのか、どのあたりが違うのか、細かいことは各コンサート・レポートに記しています。興味あったら、ぜひ見てみてください。

 

弾き振りの一体感
久石譲コメントにもあったので、雰囲気は伝わるでしょうか。指揮者と演奏者をかねたプレイングマネージャーのポジションで、ぐいぐい全体をリードしていきます。時に身振り手振りでオーケストラを導き、ピアノ演奏中は目配せでお互いの呼吸をつかみあう。ピアノと弦楽器が融合し溶けあうことで生まれる一体感、それはコミュニケーションだけでなく演奏にもたしかに現れています。直球で言うと、より久石譲ピアノの表現に近づいたオーケストラ、久石譲ストリングスのような感覚のもの、”弾き振り”にはそれがあります。

 

新しいオーケストレーション
ピアノとストリングス。ストリングスとは、フルオーケストラ(管弦楽)から管楽器のいない弦楽オーケストラです。カラフルさは劣るはずなのに、楽曲ごとに色彩豊かに表情豊かに多種多彩な世界観を演出してくれています。弦のリズムの刻み方、ヴァイオリン・ソロ、主旋律から伴奏音型まで入れ替わり立ち替わる高低弦楽器たち。さらに、曲によっては、久石譲ミニマル・エッセンスに欠かせないマリンバやハープなどの打楽器群も色を添えている。こういった特殊な楽器編成だけをみても、古典クラシックにはないポップスにもない、先鋭的な現代作曲家久石譲が浮かび上がってきます。

やっぱり大きいのは、クラシックから現代音楽まで熟知している、モダンなオーケストレーションとアプローチでしょうか。対旋律やハーモニーが生みだす複雑な響き、不協和音すらも心地よい現代的な響きです。アップテンポからスローテンポまで、いかなる曲も決して失われることのない呼吸する現代的リズム。いかんなく発揮するソリッドなアプローチと、弾き振りによって緩急自在なピアノ&ストリングスの表現は、今の久石譲だからこそです。

久石メロディに、モダンなハーモニーとリズムでアップトゥデートです。セレクトされた楽曲たちは、メロディを強く打ち出したもの、メロディにこだわったもの、メロディを歌わせるものが並んでいます。そこへ施された新しいオーケストレーションは、エンターテインメント音楽として登場した原曲とは一線を画する、芸術性の息吹が芽生えています。

いま唯一、音源化されている「Woman」「Ponyo on the Cliff by the Sea」「Les Aventuriers」この3曲だけでも、聴いてもらえたらなんとなく感じてもらえることあると思います(^^)♪

 

 

 

ピアノの円熟味
「ピアノ・ストーリーズ」シリーズを第1作から聴きかえしてみると、久石譲ピアノも変化していると気づくことできます。

久石譲にしか出せないピアノの音ってあるんです。やっぱりいい、としか言いようがないんです。それはテクニックや技術といったものを超えたところにある、魔法の音です。もし仮に目をつぶって聴いていたとしても、久石譲が弾いているピアノだとわかる。あっ、いま久石譲の音が鳴っているなあと。誰でも指tと触れれば鳴るピアノ。それなのに、音を聴いただけで誰が弾いているかわかるピアニストって日本に世界にどのくらいいるだろう? と思ったりします。

論理的に説明しようとすれば、それは作曲家自らによる演奏だから。でもそれだけじゃ到底説明することができないなにかがありますよね。特に、最近の久石さんの手から紡ぎだされるピアノの音色は円熟味を感じます。とてもやわらかい、凛と立った、ピュアで無邪気な、悟ったような慈しみ、優しくて強い、儚く切ない、芯の強さ、ぬくもり、いくつもの裏と表な表現が浮かびます。でもそれが多面的に音をつくっている。ピアニスト久石譲にしか出せない富んだニュアンスがある。熟成されたお酒のように、奥ゆかしい深みでいろいろな味わいを包んでくれます。今だからこそ録音してほしい音、封じ込めてほしい音がそこにはあるんです。

 

(ピアノの円熟味項は、これまでコンサート・レポートなんかで書き散らかしたものを引っ張りだして加えながら整えました。なんとなく気持ち的なもので…臨場感的なもので…。)

 

 

空想は止まらない。

もし、これからもコンサートで「ピアノ&ストリングス」コーナーがつづくなら。新しく選ばれる曲もきっとあるでしょう。北野武監督の初期作品から「Silent Love」「Sonatine」もぜひ聴いてみたいです。フルオーケストラ版はある二楽曲ですが、室内楽の響きもピカイチだろうなあと空想は止まりません。思いつくかぎり、White Night、EVE、太王四神記、おくりびと、この世界の片隅に、イザベラ・バードの日本紀行、海獣の子供、銀河鉄道の夜、遠い街から、、と個人的趣味のオンパレードになっていきます。ああ、この曲あの曲がピアノ&ストリングスのかたちになったらなんて素敵だろう。

人それぞれに、思い描く「ピアノ・ストーリーズ」がきっとありますよね。それは、わたしが・あなたが、久石譲ファンとして歩んできたストーリーそのものであるように。いい音楽は何度でも甦る、いつでも命をふきかえす。思い出と一緒に輝くエバーグリーンな名曲たちも、また新しい思い出を一緒につくってくれるために、装い新たに輝き変えて出会える日がくるかもしれない。

 

 

「ピアノ・ストーリーズ」、それは「WORKS」や「ミニマリズム」と同じくらい大切なシリーズだと思っています。新しいピアノ・ストーリーズのかたち。弾き振り、オーケストレーション、ピアノの3つで進めてきました。進化をつづける現代の先鋭性と、深化をつづける久石譲ピアノ。新しい久石譲の物語です。時代ごとに聴いてきた名曲たちが、今の久石譲によって語りはじめられたとき。それは、私たちにとっても、とっておきのマイ・ストーリーになる。そんな未来を楽しみにしています。

新しいピアノ・ストーリーズの候補曲たち(2016-)です。ちょっと売れすぎて困ってしまいそう。ぜひ、アップトゥデートしたものを届けるところまでいってほしい!

 

 

……

そう書きすすめていたところの新情報でした。

コンサートから2曲が初音源化されることに!

 

”日本の巨匠・久石譲が本格的に世界リリース!Deccaリリース第2弾となるベスト作品。海外での認知度も高い映画音楽を中心に、彼の音楽人生を代表する名曲ばかり。北野武映画曲 “Kids Return” “HANA-BI” の新規録音を含む、全28曲。2枚組みアルバム。”

 

 

 

久石譲が語ったこと

”映画のテーマを集めてはいるんですけど、その映画を見た人がああこの音楽はあの映画で見た時が懐かしかったね、と思うために作っているのではなくて、逆に映画で扱われた事を全然無視して、聞いた人が新たにストーリーを再構成するといいますか、新たに架空のサウンド・トラックみたいな感じでとらえて欲しい、ということで『Piano Stories』としたんです。”

”メロディこそが、送り手と聴き手の橋渡しになってくれるんです。どんなに複雑なアレンジの曲でも、しっかりしたメロディがあれば、それは人の心に残る。それはメロディが、時間軸と空間軸上の記憶回路だからなんですね。だから今はしっかりしたメロディを作ることを根本にしています。いいメロディさえあれば、バックがたとえどんなにアバンギャルドであっても許されると思うんです”

(『Piano Stories』CDライナーノーツより 抜粋)

 

 

 

New Piano Stories ~ My Story~
Music by Joe Hisaishi

【Hope】for Piano and Strings
1.View of Silence
2.Two of Us
3.Asian Dream Song

【mládí】for Piano and Strings
4.Summer 
5.HANA-BI **初音源化
6.Kids Return **初音源化

7.The Path of the Wind

[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings *CD収録
8.Woman
9.Ponyo on the Cliff by the Sea
10.Les Aventuriers

ほか

 

 

 

……

このかたちで収録してみてバカ売れしてみてほしかった(^^) まだまだ、いろいろなかたちで収録してほしいコンプリートしてほしい希望は捨てていません。珠玉の名曲たちが、こぼれ落ちてしまうことなく、私たちの手元に大切に持っておける宝石箱のなかで、輝きつづけられる日がきますように。

久石譲人気を揺るぎないものにしたシリーズ、時代ごとにファンをぎゅっとつかんできたシリーズ、「ピアノ・ストーリーズ」です。そして、僕らは出口のない魅力へ彷徨する物語の登場人物です。

 

それではまた。

 

reverb.
記したい区切りがひとつつきました♪(下書きは春頃でした)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Blog. 「音楽の友 2021年8月号」久石譲&石川滋&福川伸陽 鼎談内容

Posted on 2021/08/16

クラシック音楽誌「音楽の友 2021年8月号」に掲載された、久石譲『Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4』の発売にあわせた鼎談です。

 

 

特別記事

〈鼎談〉久石譲&石川滋&福川伸陽
久石によるコントラバス&ホルン協奏曲を語る

取材・文=小室敬幸

久石譲が作曲したコントラバスとホルンの協奏曲を収めたCD『ミニマリズム4』のソリストを務めるのは、コントラバスの石川滋とホルンの福川伸陽。二人は、久石の呼びかけで2019年に誕生したフューチャー・オーケストラ・クラシックスのメンバーでもある。アルバム発売に合わせ、久石、石川、福川の3人による鼎談が実現した。

 

長きにわたり映画音楽などエンタテインメントの領域で世界的名声を得てきた作曲家の久石譲。この10年あまりは、本籍地をクラシックに戻し、作曲だけではなく指揮活動も本腰を入れて取り組んできたことは、本誌読者であればすでにご存知であろう。

クラシック、現代音楽の流れに位置する作品も数多く手がけてきた久石だが、意外なことにソリストの付随する管弦楽作品はあっても、「協奏曲 Concerto」と題された楽曲は非常に少ない。久石作品としては珍しい二つの協奏曲──「コントラバス協奏曲」(2015)と、「3本のホルンとオーケストラのための協奏曲《The Border》」(2020)を収めた新譜がリリースされるにあたり、ソリストを務めたコントラバスの石川滋とホルンの福川伸陽、そして久石による鼎談をお届けしよう。

 

名手二人をも唸らせた難曲

久石:
「ある楽器のために曲を書くとなると、その楽器を買う癖があるんです。ギターの曲を書いたときも福田進一さんに選んでもらった高いギターを買いましたし(笑)。今回もコントラバスは石川さんに選んでいただいた楽器を買って、ホルンは福川さんに相談したら空いている楽器があるとのことでお借りしました」

福川:
「ビックリしましたよ(笑)。今まで作曲家さんたちの前でデモンストレーションすることはありましたけど、ホルンを貸してくれとか、吹いてみたいというかたはいらっしゃらなかったですから」

久石:
「それから僕の場合、演奏者と打ち合わせしていくと妥協してしまうから嫌なんだよね。そうすると作品が弱くなちゃう。だからほとんどの場合、完成して楽譜を送ってから、弾けない箇所があれば直すという流れが多いんです」

福川:
「できたよって連絡をいただき、ワクワクして譜面を開いてみると、めちゃくちゃ難しい!絶望のあまり、楽譜をすぐ閉じましたもん(爆笑)。テンポが108ぐらいと書いてあるのに、最初は60まで落としても吹けなかったんですから。なので、それから毎日1刻みでテンポを上げていきながら練習を重ねましたよ」

石川:
「まったく同じ(笑)。弾けないと、またテンポを落としたりして……。でも、コンピュータによる参考音源もいただいていたので、それを聴くとめちゃくちゃ格好いいんです。どんなに難しくても、とにかく弾きたいって思わせてくれましたね」

 

こんなに機動力の求められるコントラバス曲はない

ー作曲する上での問題意識はどこにあったのでしょう。

久石:
「どちらの楽器も、アンサンブルで他の人と演奏したときに能力を発揮する楽器なんですよ。例えば弦楽合奏にコントラバスがなければ、響かなくて音量が半分ぐらいに減りますし、ホルンのないオーケストラって想像できますか? でも今回はソロなので楽器をむき出しにして、この楽器の何が魅力なんだということを真剣に考え直したわけです。コントラバスは、ソロ楽器としてならやはりジャズのウォーキングベースが魅力的ですよね。それはなぜかといえば弦が長くて響くから。……ということはハーモニクスもきっちり使えば良い武器になるはず。でも、それらを十分に活用した楽曲はまだないんですよ。だから、どうやったらその部分が発揮できるのかを考えながら書きました」

石川:
「音域一つとっても高音から最低音まで激しい移動がしょっちゅうあって、こんなに機動力が求められるコントラバスの曲は他にありません(笑)。自分自身にとっては技術的に新しい挑戦をさせていただきましたし、聴いてくださるかたがたにとっても新鮮な作品だと思います」

 

複数のホルンという発想から浮かんできたアイディア

ー一方、ホルンの協奏曲はどのように生まれたのですか。

久石:
「ナガノ・チェンバー・オーケストラのリハーサルのときに、福川さんからホルンの曲を書いてくださいと頼まれたんです。それからホルンの譜面をいろいろ送ってもらいながらアイディアを練っていたんですけど、どうしてもソロ楽器として考えたときにヨーロッパ的な前衛音楽のスタイルしか頭に浮かばなくて……。それで、ソロではなくホルンを複数にすれば、違うものが書けるのではないかと気づいたのですが、この答えが出るまでに2年(笑)」

福川:
「その2年間、久石さんの前で良い演奏をし続けなきゃいけないと思って、プレッシャーでしたよ(笑)」

久石:
「こちらもずっと意識してました(笑)。そのあとミュージック・フューチャー Vol.6(2019年10月25日)の前日か当日に、協奏曲のアイディアが急に浮かんだんですよ。パルスを刻んでいるところに、下から駆け上がってるラインと、逆に上から下へのラインが絶えずクロスしていく。ただそれだけしかない曲を書きたいと。それで2019年2月から構想を練り、およそ1年がかりで作曲しました。主要モティーフを頭に提示したら、それ以外の要素を使わないでロジカルに作ることを徹底した作品になったことで、ミニマル・ミュージックの原点に戻ってきたように聴こえるかもしれないですけど、そうでもないんです。この作品は個人的にとても大事なものになりましたが、それはいわゆる感性や感情、あるいは作曲家の個性に頼らないスタイルができたからです。第2楽章はフレーズのスケールが大きな福川さんだからこそできる音楽になっています」

 

今後は、他の奏者との演奏やピアノリダクション版も視野に

ーこれらの作品が、広く演奏されていくためには何が必要なのでしょう。

福川:
「僕らが演奏を重ね、たくさん聴いてもらって、この曲を演奏したいと思ってくれる奏者を増やすことが第一かなと思っています。これまで僕が委嘱した作品に対して、アメリカやドイツとか海外からメッセージで問い合わせがくることは割とあるんですよ。ホルン3人のコンチェルトって珍しいですけど、僕がどこかのオーケストラに行って、そこの首席奏者と一緒に演奏しようよって提案しやすい曲だとも思っているんです。だから、いろんな所に提案していきたいですし、ありがたい曲ですね」

石川:
「このCDが賞を獲ることですね(笑)。あとは譜面を出版すること。ピアノリダクション版があればリサイタルで弾いちゃおうかなと思ってます」

久石:
「今度出版するんですけど、リダクションのことは考えてなかったなあ。聞けてよかったです」

(「音楽の友 2021年8月号」より)

 

 

 

 

 

Blog. 「무비위크 Movie Week 147호」(韓国)久石譲インタビュー内容

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

Posted on 2021/08/09

韓国の映画週刊誌「무비위크 Movie Week 147호(ムービーウィーク 147号)」に掲載された久石譲インタビューです。映画『トンマッコルへようこそ』(2005)の仕事で韓国を訪れたときの取材になっています。

原文に忠実であるために、オリジナルテキストそのままをご紹介します。ウェブ翻訳などでお楽しみください。

 

 

<웰컴 투 동막골> 음악감독 히사이시 조
“한국에서의 첫 작업, 영광이다”

미야자키 하야오의 애니메이션 세계에서 빼놓을 수 없는 히사이시조.
이미 <하울의 움직이는 성>을 통해 국내 휴대폰 업계를 휩쓸어 그 명성을 확인시킨 영화음악계의 거장이다.
일본 영화를 제외하고 아시아영화로는 처음 <웰컴 투 동막골> 음악을 맡아 화제를 모은 그가 내한했다.

한국에서의 작업 소감은.
한국영화는 처음 담당했는데, 영광이다.
이 영화는 전쟁 소재 영화이면서도 우정, 인간애 등 휴머니즘 요소가 물씬 느껴져 그 부분에 중점을 두고 작업에 임했다.

어떻게 <웰컴 투 동막골>의 음악을 맡게 되었나.
이은하 PD가 보낸 편지를 읽었는데, “기다리고 있겠습니다”라는 대목이 인상적이었다.
작업하기 좋은 최상의 조건과 환경을 갖추겠노라는, 비록 페이는 적겠지만 성의와 열의는 세계 어디에서도 찾아볼 수 없을 것이라는 말에 끌렸다.

영화를 보고 나서 어땠나.
실은 입국하고 바로 여기에 도착해서 아직 영화를 못 봤다.
저녁에 관람하겠지만, 박광현 감독님이 워낙 음악을 마음에 들어 해서 만족하고 있다. 다행이다.

출연한 배우들 중 누가 제일 빛난다고 생각하나.
아직 영화를 안 봤지만 강혜정 씨라고 말하고 싶다.
나는 남자이고 강혜정 씨는 유일한 여배우 아닌가. (웃음)

<웰컴 투 동막골>의 작업 컨셉트는?
전쟁 소개 영화라고 해서 흔히 상상할 법한 웅장한 음악은 피했다.
주로 스코틀랜드와 아시아의 음악을 사용했다.
인물들의 생각이 많이 나타나도록 감성 위주로 음악을 만들었다.
‘동막골’이라는 유토피아를 다루므로 따뜻한 음악이 어울린 것이라 판단했다.

이번 오프닝곡 허밍도 딸인 후지사와 마이가 함께 했다고 들었는데.
딸아이가 어렸을 때 <바람계곡의 나우시카>에서 첫 허밍을 했다.
이번이 두번째 작업이다.
그리고 딸아이는 현재 내 매니저이기도 하다.

한국영화에 대해 어떻게 생각하나.
<쉬리>를 처음 봤을 때, 한국영화가 일본영화를 앞질렀다고 생각했다.
한국영화에선 작품에 대한 무한한 열정과 힘이 느껴진다.
너무 멋진 영화로 한국에서의 첫 작품을 시작하게 되어 정말 기쁘다.
스태프 모두 정열을 갖고 대해줬고, 배우들의 언면도 훌륭해서 나로선 굉장히 영광이다.

앞으로의 계획은.
올해 11월쯤 한국에서 내 영화음악 콘서트를 열 계획이 있다.

글 정수진 기자.

 

 

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

 

 

インタビュー最後にあるとおり、同年11月に韓国公演が実現しています。

 

Joe Hisaishi Concert with Korean Symphony

[公演期間]
2005/11/03

[公演回数]
1公演
韓国・Seongnam Arts Center

[編成]
Korean Symphony Orchestra

[曲目]
Water Traveller
For You (Theme)
DEAD 1st mov.
DEAD 2nd mov.
DEAD 3rd mov.
DEAD 4th mov.
Magical Change the World Tour
Moving Castle
Sophie
The Boy-Castle
Sky Fight
Cave of Mind
Merry-go-round
『Welcome to Dongmakgol』 M1
『Welcome to Dongmakgol』 M2
『Welcome to Dongmakgol』 M3

—–アンコール—–
NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF WIND
Last Summer〜Spirited Away (# One Summer’s Day)
My Neighbor TOTORO

#補足

 

 

Info. 2021/08/06 「World Dreams」W.D.O.2021 Date April 24 より 特別配信

Posted on 2021/08/06

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・ツアーから、アンコール「World Dreams」が特別配信されました。4月の緊急事態を受けて翌日以降4/25,27の公演中止を余儀なくされた、4/24公演最後の一曲です。ぜひご覧ください。 “Info. 2021/08/06 「World Dreams」W.D.O.2021 Date April 24 より 特別配信” の続きを読む

Info. 2021/07/07 久石譲「ミニマリズム 4」秘蔵インタビュー映像 公開!! 【8/6 Update!!】

Posted on 2021/07/07

待望のミニマリズム・シリーズ第4弾!! 久石譲のソロアルバム「ミニマリズム4」が、7月7日に発売。「コントラバス協奏曲」と「The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra」を豪華に収録した本作の発売に合わせ、ソロを務めたコントラバス奏者の石川滋氏とホルン奏者の福川伸陽氏、そして久石譲の3人による鼎談が実現しました。貴重なインタビューの模様をギュッと約10分の映像にまとめてお届けいたします。 “Info. 2021/07/07 久石譲「ミニマリズム 4」秘蔵インタビュー映像 公開!! 【8/6 Update!!】” の続きを読む

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・レポート

Posted on 2021/07/31

4月21~24日開催、7月25~26日振替開催、国内3都市5公演と世界各地ライブ配信も実現した「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサートツアーです。4月の緊急事態宣言を受けツアー途中で中止となってしまいましたが、それから間を置かず7月振替公演を叶えてくれました。W.D.O.2021完走してくれたこと、尽力いただいた皆さまへ感謝の気持ちでいっぱいです。

 

❝久石譲と新日本フィルによるワールド・ドリーム・オーケストラ、2年ぶりの公演決定&[ライブ配信決定]*!待望のシンフォニーNo.2がいよいよ完成するほか、交響組曲「もののけ姫」完全版を披露します。どうぞご期待ください!❞ 

*[additional information]

 

アナウンスとキラーコピーが駆け抜けた3月、一喜一憂した4月、再び希望の光に導かれた7月。いかなる現状であっても少しでも閉塞感を打破したい!決して負けない!止めてしまってはいけない! コンサートを準備する人たちと、コンサートを待ち望む人たち、その希求する方向は同じです。それでもなお事情や葛藤を抱えながらコンサートへ行けない人もいます。いろいろな思いを日々のエネルギーにして、遠くまでのびる光のように、また次の楽しみを目標にしていきたいですね。

 

 

 

久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021
JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2021

[公演期間]  
2021/04/21,22,24
2021/07/25,26

[公演回数]
5公演
4/21 京都・京都コンサートホール 大ホール
4/22 兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
4/24 東京・すみだトリフォニーホール

*緊急事態宣言を受け2公演とライブ配信 中止
4/25 東京・すみだトリフォニーホール
4/27 東京芸術劇場 コンサートホール
4/27 ライブ配信(日本・海外)

*振替公演
7/25 東京芸術劇場 コンサートホール
7/26 東京・すみだトリフォニーホール
7/25 ライブ配信(日本・海外)

[編成]
指揮:久石譲
ソプラノ:林正子(4/21,22,24) 安井陽子(7/25,26)
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
コンサートマスター:豊嶋泰嗣

[曲目]
久石譲:交響曲 第2番 *世界初演
    Symphony No.2 (World Premiere)
    Mov.1 What the world is now?
    Mov.2 Variation 14
    Mov.3 Nursery rhyme

—-intermission—-

久石譲:Asian Works 2020 *世界初演
    I. Will be the wind
    II. Yinglian
    III. Xpark

久石譲:交響組曲「もののけ姫」2021
    Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021

—–encore—-
久石譲:World Dreams

 

 

 

さて、個人的な感想はひとまず置いておいて、会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

皆さんこんにちは、久石譲です。
2021年のワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)は明るく元気に行きたいと思います。
色々あるけど、それでも行ってよかった!
そう思えるコンサートになるように我々一同ベストを尽くします。楽しいひと時をお過ごしください。

 

1. Symphony No.2  (World Premiere)
2020年9月にパリとストラスブールで初演し、その後世界各地で演奏する予定だったが、パリは2022年4月、その他の都市も2022年以降に延期された。僕としては出来上がった曲の演奏を来年まで待てないので今回W.D.O.で世界初演することに決めた。

2020年の4~5月にかけて、東京から離れた仕事場で一気に作曲し、大方のオーケストレーションも施した。が、コンサートが延期になり香港映画などで忙しくなったこともあり、そのまま今日まで放置していた。当初は全4楽章を想定していたが、3楽章で完結していることを今回の仕上げの作業中に確信した。

この時期だからこそ重くないものを書きたかった。つまり純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した。36分くらいの作品になった。

Mov.1  What the world is now?
チェロより始まるフレーズが全体の単一モチーフであり、それのヴァリエーションによって構成した。またリズムの変化が音楽の表情を変える大きな要素でもある。

Mov.2  Variation 14
「Variation 14」として昨年のMUSIC FUTURE Vol.7において小編成で演奏した。テーマと14のヴァリエーション、それとコーダでできている。とてもリズミックな楽曲に仕上がった。ネット配信で観た海外の音楽関係者からも好評を得た。

Mov.3  Nursery rhyme
日本のわらべ歌をもとにミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である。途中から変拍子のアップテンポになるがここもわらべ歌のヴァリエーションでできている。より日本的であることがむしろグローバルである!そんなことを意識して作曲した。約15分かかる大掛かりな曲になった。

 

2. Asian Works 2020  (World Premiere)
2020年のエンターテインメント音楽として作曲した曲の中から、アジアから依頼されたものを選んだ曲集だ。それぞれの楽曲は中国、香港、台湾と何やら緊張する地名が並んでいるが、政治的意図は全くありません(笑)

I. Will be the wind
LEXUS CHINAの委嘱で作曲、疾走感を重視した。

II. Yinglian
2020年の香港映画「Soul Snatcher」で使用したラブテーマ。クラリネットのソロが印象的な小曲だ。

III. Xpark
台湾の水族館のために作曲した。いわば環境音楽のように観に来ていただいた人々に寄り添う音楽を書いたが、この曲はExitの音楽として観客の皆さんが楽しい気分で帰って欲しい、と思い作曲した。

 

3. Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021
1997年のアニメーション映画「もののけ姫」に書いた音楽をもとに交響組曲として再構成した。数年前にW.D.O.で取り上げたのだが、何かしっくり来なかったので、今回再チャレンジした。

大きく変えた箇所は新たに世界の崩壊のクライマックスを入れたこと、それとスタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入したことなどである。再構成したことでより宮崎さんが目指した世界に近づけたように思え、僕は満足している。

 

最後に本当に来ていただいてありがとうございます。
楽しんでいただけたら幸いです。

久石譲

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・パンフレット より)

 

*パンフレットは4月開催分と7月開催分で[公演日程]と[久石譲 楽曲解説]が一部修正されています。楽曲解説の一~ニ文が添削されています。ここでは7月開催分を掲載しています。

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

見たいのは『もののけ姫』のところだけかもしれない。いろいろ言われてもピンとこないかもしれない。長くて読むにツライかもしれない。……それでも、書ききりたい!いま思ったことを刻々と書ききってしまいたい!……そう思ってプログラム順です。『もののけ姫』だけ見たい人は豪快にスクロールしてください。一気に読むのは忍耐かもしれませんが、少しずつでも楽しく読みすすめていただけたらうれしいです。

 

 

交響曲 第2番
Symphony No.2
Mov.1 What the world is now?
Mov.2 Variation 14
Mov.3 Nursery rhyme

待望のシンフォニーNo.2世界初演です。全3楽章、各楽章10分以上、トータル約36分の大作です。まず触れたくなるのは作品名のことです。これまでの流れからみたときに、新作交響曲は《第2交響曲(2番目の交響曲)》であり、タイトルは《○○○○ SYMPHONY》などというようになるのかと思っていました。今回は純粋なる作品番号《交響曲 第2番》として現れました。

 

以前、久石譲はこんなことを語っています。

”これはすごく悩みます。シンフォニーって最も自分のピュアなものを出したいなあっていう思いと、もう片方に、いやいやもともと1,2,3,4楽章とかあって、それで速い楽章遅い楽章それから軽いスケルツォ的なところがあって終楽章があると。考えたらこれごった煮でいいんじゃないかと。だから、あんまり技法を突き詰めて突き詰めて「これがシンフォニーです」って言うべきなのか、それとも今思ってるものをもう全部吐き出して作ればいいんじゃないかっていうね、いつもこのふたつで揺れてて。この『THE EAST LAND SYMPHONY』もシンフォニー第1番としなかった理由は、なんかどこかでまだ非常にピュアなシンフォニー1番から何番までみたいなものを作りたいという思いがあったんで、あえて番号は外しちゃったんですね。”

Blog. NHK FM「現代の音楽 21世紀の様相 ▽作曲家・久石譲を迎えて」 番組内容 より抜粋)

 

『THE EAST LAND SYMPHONY』は、標題音楽(音楽外の想念や心象風景を聴き手に喚起させることを意図して、情景やイメージ、気分や雰囲気といったものを描写した器楽曲のことをいう from ウィキペディア)的側面もあります。

『交響曲 第2番』は、絶対音楽・純音楽に近い、久石譲楽曲解説でいう ”つまり純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した” 作品ということになります。最新インタビューでも、タイトルを付けることをやめた理由について語っています。そこで持ち上がってくるファンの心の声「第1番はどれ?過去のシンフォニー作品たちは?」、そのあたりのこともあわせて別頁で探求しています。よかったらご覧ください。

 

 

楽章ごとには副題が付与されているおもしろさにも注目したいです。

 

Mov.1  What the world is now?
きれいな翻訳が見つけられなかったのですが、僕の解釈です【世界は今どうですか?/世界は今どうなっていますか?/世界は今何が起こっていますか?/世界は今どんな状況ですか?】、こんなニュアンスや意味合いなのかなと思います。世界中を覆っているCovid-19という今を如実に反映したものであると言えます。また、これから先いかなる時もいかなる瞬間も、ふと立ち止まって考えたい問題提起や警鐘のようなもの、と思っています。

荘厳な導入部です。上から下へ連なる2音がくり返す弦楽は、古典クラシック作品にもみられる崇高さあります。最小に切りつめられたモチーフが、ヴァリエーション(変奏)で展開していきます。中間部や終部に聴かれるパーカッションの炸裂も強烈です。急降下する旋律、下からせり上がってくる旋律、うねり旋回する旋律、それらの合間にアタックする最強音たち。単一モチーフ[レ・ファ・ド](D-F-C)および[レ・ファ・ド・ミ](D-F-C-E)の旋律とそこからくるハーモニーは、第3楽章の構成と響きにもつながっていくようです。

 

Mov.2  Variation 14
久石譲楽曲解説にあるとおり、交響曲の第2楽章として書き上げたものを、先に小編成版で披露していた曲です。MFコンサートの16奏者による小編成版も好感触、遂にオリジナル・フルオーケストラが初披露されたというおもしろい登場順番です。全体構成は同じですが、楽器編成の拡大縮小によるパートや旋律の増減はあるのかもしれません。

次の第3楽章とはまた異なる、こちらもわらべ歌のようなテーマ(メロディ)とそのヴァリエーション(変奏)から構成された曲です。メロディがリズミカルになったり、付点リズムになったり、パーカッションや楽器群の出し入れの妙で楽しいリズミックおもちゃ箱のようです。遊び歌のようでもあり、お祭り音頭のようでもあります。日本津々浦々で聴けそうでもあり、海を渡って世界各地の風習や郷愁にもシンパシー感じそうでもあります。子どもたちが集まって遊びのなかで歌う歌、それがわらべ歌です。おはじきのような遊びも、世界各地で石をぶつけて同じように遊ぶものあったり、お祭りのようなリズム感は世界各地の祭事やカーニバルのような躍動感あります。

ひとつのテーマ(メロディ)が、歴史や伝承によって歌い継がれる時間のなかでの変化、あるいは土地や環境によって節回しやリズム感が異なるという空間のなかでの変化。そんな時間軸と空間軸によるヴァリエーション(変奏)という見方をしてみるのもおもしろいなと思います。そこには、人・歴史・記憶・思いといったものが重層的に響きあうように思うからです。

また、近年久石譲が推しすすめている単旋律の手法を連想させます。厳密に言うと、単旋律になっている箇所はないと思うのですが。単旋律の手法で使っていた同じ音を複数の楽器で重ねることで、音の厚みを瞬間的に持たせたり、重ねる楽器をカラフルにすることで色彩感を演出する。そういったことが随所に施されていますが、部分的にも単旋律で押しきっている箇所はないと思います。それでも、楽章をとおして極力ハーモニー感をおさえた書きかたがされています。ハーモニーからくるエモーショナルじゃない、リズミックからくるエモーショナルで貫きたい、たとえばそんな印象です。

 

About “Variation 14 for MFB” and “Single Track Music”

MFヴァージョンは、コンサート動画特別配信もされています。単旋律についてもあります。

 

 

Mov.3  Nursery rhyme
タイトルそのまま日本語で”わらべ歌”です。12~13小節からなる五音音階メロディラインが次々とフーガのように織りかさなっていきます。久石譲楽曲解説にあるとおり、”途中から変拍子のアップテンポになるがここもわらべ歌のヴァリエーションでできている。” なるほどたしかにわかりやすくなります。

久石譲のいう “日本のわらべ歌をもとに” というのが、特定の歌をさしているのかわかりませんが、日本人なら誰しも聴いてすぐに「かごめかごめ」をイメージすると思います。うーん、悩む。ベースとなっているのは「かごめかごめ」でもいいとは思うんです。けれども、例えば変拍子のアップテンポになるヴァリエーションなど聴きすすめていくと、また別のわらべ歌を連想する人もいると思います。聴いた人それぞれが生まれ育った土地にある歌に結びつきやすい。わらべ歌は五音音階の似た旋律が多くみられます。つまり、総合的なわらべ歌のイメージが、この第3楽章の基本モチーフになっているとみることもできるような気がします。「かごめかごめ」の楽曲的背景を暗喩としてどこまで持ち込みたいとしているか、このあたりにも付随してくることだと思うので、一旦「この曲から引用」とは断定しないでおきたい今の心境です。

”ミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である”、久石譲の楽曲解説からです。ここからはテーマ(メロディ)だけに注目して楽章冒頭を紐解いていきます。コントラバス第1群がD音から13小節のテーマを奏します。2巡目以降は12小節のテーマになります。本来は1コーラス=12小節のテーマでできていて、1巡目に1小節分だけ頭に加えているかたちです。「レーレレ/レーレミ、レーレーレー」(13小節版)、「レーレミ、レーレーレー」(12小節版)というように。なぜ、こうしているのかというと、かえるの歌の輪唱とは違うからです。かえるの歌はメロディ1小節ごとに、次の歌い出しが加わっていきますよね。なので、ズレて始まって、そのままズレズレて終わっていきます。

コントラバス第1群が2巡目に入るとき、同じ歌い出しの頭から、コントラバス第2群がA音から13小節のテーマを奏します。同じく2巡目以降は12小節のテーマになります。この手法によってズレていくんです、すごい!12小節のテーマだけなら、同じ歌い出しの頭から次が加わっていくと、メロディをハモるように重なりあってズレることはありません。でも、なんらかの意図と理由で、歌い出しの頭を統一しながらもズラしたい。だからすべて1巡目だけ13小節で、2巡目以降は12小節なんだと思います、すごい!テーマは低音域から高音域へとループしたまま引き継がれていきます。つづけて、チェロはE音から、ヴィオラはC音から、第2ヴァイオリンはG音から、第1ヴァイオリン第1群はB音から、最後に第1ヴァイオリン第2群はD音からと、壮大な太陽系を描くように紡いでいきます。そして全7巡回したころには、壮大なズレによる重厚なうねりを生みだしていることになります。対向配置なので、きれいにコントラバスから第1ヴァイオリンまで時計回りに一周する音響になることにも注目したい。さらに言うと、コントラバス第1群のD音に始まり、最終の第1ヴァイオリン第2群もD音で巡ってくるわけですが、このとき響きが短調ではないと思います。メロディの一音が替わっているからです。あれ? なんで同じD音からなのにヴァイオリンのときは抜けた広がりがあるんだろう、暗いイメージがない。ここからくるようです。

(余談)「わらべ唄」と「天女の歌」(両作曲:高畑勲)でも同じような関係性と響きをみることができますね。快活に歌われるメロディと、暗い影をおとすメロディ。同じ旋律をもとにしながら響きや印象をがらっと変える。わらべ歌というものがそういったことをしやすいのか、五音音階のライン上で動かすことに効果を発揮するのか、とても興味深いところです。(余談おわり)

登場順からは少し入れ替えますが、ピアノなどで低い順に[レ・ラ・ド・ミ・ソ・シ](D-A-C-E-G-B)と同時に鳴らすと美しい和音になることがわかります。7巡する旋律からくる基音6音(D-A-C-E-G-B)ですが、再現部にコントラバスのF音から始まります。これを加えると基音7音(D-F-A-C-E-G-B)で、ピアノを指で押さえた状態を見ると3度ずつ均等に離れた音が、両手を使って2オクターブできれいに響いていると思います。また、ここで第1楽章の単一モチーフを思い出してみます。単一モチーフ[レ・ファ・ド・ミ](D-F-C-E)の旋律とそこからくるハーモニーと、第3楽章のテーマの基本7音[レ・ファ・ラ・ド・ミ・ソ・シ](D-F-A-C-E-G-B)は、同じようなハーモニーを響かせていることに気づきます。わらべ歌の五音音階のメロディからくる日本的響きと、セブンスコードのようなモダンな響きによる深いブレンド。それから、かえるの歌のようにまったく同じメロディが重なっていくのではない、メロディの音をそっと一音替えることで明暗をつくりだす。基本テーマも中間部ヴァリエーションも終盤の再現部も、同じような響きの変化を聴くことができます。重層的な旋律とそこから生まれるハーモニーの整合性をとっているように思えます。……わかったようなことを言ってはいけない、失礼しました、終わります。

再現部のクライマックス(楽章終盤)、コントラバスやチューバのどっしりしたテーマに支えられた管弦楽の大謳歌は『ムソルグスキー:展覧会の絵』終曲「キエフの大門」を彷彿とさせるほどの荘厳さを感じます。いや、黄金の国ジパングか!? 終結部のソロ・コントラバスはE音から12小節のテーマを奏して幕をとじます。コントラバスという低弦楽器に始まり、そして終わる。とても土着的なイメージをあたえてくれます。そこに根づいているということ、あるいはちゃんと根を張ることの象徴のようにも感じます。

 

高畑勲監督が聴いたら喜んだんじゃないかな、満面の笑みで楽しんだんじゃないかな。そんなこともまた思いました。あるいは、この作品をベースに映像をつけさせてほしい、なんていう逆オーダーもありそうなほど気に入ったかもしれない。そんなこともまた思いました。なんとはなしに、目頭の熱くなってくる作品です。

 

総評して。

まず驚きます。何に驚くかって、この作品の初演が海外オーケストラとの共演で予定されていたということです。これだけ日本的な旋律や響きの色濃い作品であれば、普通なら日本のオーケストラと初演や共演を重ねて地盤と自信を固めたいとならないのかな。それをフランスのオーケストラが初演!?、なんとも野心的だと思います。

でも、ここにこそ、久石譲のみなぎる自信があるように感じてきたりもします。つまり、日本的な旋律を使いながら、全楽章とおして縦のラインがそろっている。タタッ、タタッ、と縦わりで、ターラッとこぶしをつけたくなるような旋律も、一切の節回しを排除して、リズミックに徹しています。たぶん、リズムものってきてテーマを歌おうとしたら「タ~ラッ」ってなってしまいそうなところも、「タッタッ」と一貫してきちんとそろえてアプローチしています。だからこそ、海外オーケストラでも、この交響曲を同じクオリティと求める表現でパフォーマンスできる。作品の持ち味と現代的なアプローチをいかんなく発揮できる。そう踏んだじゃないかと思うほど。勝手に震える。

『THE EAST LAND SYMPHONY』と『交響曲 第2番』で確信したこと。久石譲にしかつくれない交響曲がある。そこには大きな3つの要素があります。古典のクラシック手法、現代のミニマル手法、そして伝統の日本的なもの。この3つの要素と音楽の三要素(メロディ・ハーモニー・リズム)の壮大なる自乗によって、オリジナル性満ち溢れた久石譲交響曲は君臨しています。これは誰にもマネできるものではありません。言い換えると、今の時代の×日本の誇る×世界に発信する 現代作曲家、ということになりますよね! We want to listen to your Symphonies. そんな海外オファーも増えてくるんじゃないかな。いつか久石譲ご本人による、音楽専門家らによる音楽的作品解説にも期待したいです。

『交響曲 第2番』にフォーカスすると、正統的な番号付け作品として初めて登場しながら、構成や形式は必ずしも正統的ではありません。ソナタ形式、緩徐楽章などといった一般的な交響曲のかたちではない。全楽章が変奏形式(ヴァリエーション)で構成されているという、とんでもなく個性的です。久石譲のミニマル×ヴァリエーションの手法がとても相性がいい、いやいや強力な武器であることに気づかされるほどです。聴く人ひとりひとりの豊かな感受性によって、この交響曲はより一層イマジネーション豊かに響きわたっていきそうです。

これからも久石譲交響曲は作品番号を重ねていくでしょう。そして、重ねれば重ねるほど私たちは実感していくことになると思います。交響曲は、現代作曲家 久石譲としての最終形態であり到達点であるということに。ジブリの曲は知ってる、映画音楽やCM音楽は聴きやすい、ミニマル曲こそおもしろい、現代作品の先鋭さかっこいい。そんなすみ分けや境界線すら吹き飛ばしてくれる交響曲たち、それは《総合的な久石譲音楽のかたち》です。

 

 

Asian Works 2020

多くの人が初めて聴いた曲も多いだろうなか、SNSコンサート感想などでも人気の高かったコーナーです。そして、きれいに人気を等分していたのも印象的でした。エンターテインメントで発表された楽曲たちがすぐにコンサートで聴けるというのも、近年では珍しいかもしれません。音源化の有無なんかもふくめてリアルタイムに追いかけているファンにもうれしいラインナップとなりました。

 

I. Will be the wind
先に公開されたオリジナル音源と楽曲構成はほぼ同じだと思います。

”叙情的でミニマルなピアノの旋律と室内オーケストラ編成で構成されている。ミニマルなモチーフのくり返しを基調とし、奏でる楽器を置き換えたり、モチーフを変形(変奏)させたり、転調を行き来しながら、めまぐるしく映り変わるカットシーンのように進んでいく。

後半はミニマルなピアノモチーフの上に、弦楽の大きな旋律が弧を描き、エモーショナルを増幅しながら展開していく。かたちをもたない風、安定して吹きつづける風、一瞬襲う強い風、淡い風、遠くにのびる風。決して止むことのない風、それは常に変化している、それは常にひとつの場所にとどまらない。ミニマルとメロディアスをかけあわせた、スマートでハイブリットな楽曲。”

Disc. 久石譲 『Will be the wind』 *Unreleased レビューより抜粋)

 

たとえば、世界中から日本を訪れる人たち。飛行機が滑走路へ降り立つ機内で、日本を紹介するビデオと一緒にこの音楽が流れる。なんと美しいウェルカム音楽だろうと思います。そして、これから旅する日本への高鳴る気持ちを運んでくる。つつましさと、風流さ舞うなおもてなし。

 

II. Yinglian
ぜひサントラ盤も聴いてみてください。この曲はTrack.17「英蓮 / Yinglian」です。

”愛のテーマ。主要キャラクターの一人、女性が登場するシーンで多く聴かれる楽曲。お香のような、ゆらゆらと、ふわっとした、無軌道な和音ですすむ。ゆるやかな独奏、メロディとアドリブのあいだのような、動きまわりすぎない加減の無軌道な旋律がのる。魅惑的で妖艶な曲想は、これまでの久石譲には珍しい。クラリネット、ピアノ、フリューゲルホルン、フルート、ストリングス。登場するたびにメロディを奏でる楽器たちを変え、まるで衣装替えに見惚れるように、つややかに彩る。(Track.17,20,25,27)”

Disc. 久石譲 『赤狐書生 (Soul Snatcher) オリジナル・サウンドトラック』 レビューより抜粋)

 

III. Xpark
明るく軽やかな曲です。音符の粒の細かいメロディがつながってラインになって、楽しそうに転げているようです。そして広がりのある曲です。ありそうでなかった!そんな久石譲曲です。番組音楽に使わせてください!そんな久石譲曲です。後半のソロ・ヴァイオリンの旋律も耳奪われる演出です。ホンキートンク・ピアノのように、ちょっとチューニングの狂った調子っぱずれのニュアンスで、小躍りするほど浮足立った弾みを表現しているようにも聴こえてきます。してやったりなコンマスと指揮者の目配せに笑みこぼれます。こんな音楽でおでかけの楽しい一日が締めくくれたらなんて素敵だろう。

映画『海獣の子供』公開時、コラボレーション企画として国内いくつかの水族館で、この映画音楽を使ったショータイムが開催されました。撮影OK!拡散Welcome!ということもあって、よくSNSで動画見かけました。それを目にしてのオファーだったのかはわかりません。でも、久石譲のミニマル・オーケストレーションは、ほんと海や宇宙のミクロマクロな世界観と抜群Good!なことはわかります。

 

 

Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021

待った甲斐あったスケールアップ!2021年版は楽曲構成も追加され、いよいよその全貌を現しました。

<構成楽曲>
1.アシタカせっ記 (交響組曲 第一章 アシタカせっ記)
2.タタリ神
3.旅立ち -西へ-
7.コダマ達
4.呪われた力 *
8.神の森 (交響組曲 第五章 シシ神の森)
20.もののけ姫 ヴォーカル (交響組曲 第四章 もののけ姫)
28.黄泉の世界 *
29.黄泉の世界 II *
30.死と生のアダージョ II *
31.アシタカとサン (交響組曲 第八章 アシタカとサン)

ナンバー/曲名『もののけ姫 サウンドトラック』に準ずる
(曲名『交響組曲 もののけ姫 CD版』に準ずる)

*新規追加楽曲

 

《Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE》2016年版
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
c) 旅立ち
d) コダマ達
e) シシ神の森
f) もののけ姫 (vo)
g) レクイエム
h) アシタカとサン (pf/vo)

 

 

『もののけ姫』の作品世界もあいまって、語彙豊かな感情豊かなコンサート感想がSNSには溢れていました。一人一人がこの作品と共に歩んできた証なのかもしれません。そこには到底敵わない。なので、事実確認として報告いたします!…なるべくわかりやすく箇条書きで書いていきます。

 

1.2016年版と2021年版では構成楽曲が新たに入れ替わっています。

2.2016年版「レクイエム」が除外され、2021年版「黄泉の世界I,II~生と死のアダージョII」が新規追加されています。「レクイエム」は『交響組曲 もののけ姫 CD版』独自の楽曲構成からとなっていました。

3.交響組曲作品『千と千尋の神隠し』や『魔女の宅急便』のあり方にならって、映画本編で使用した音楽を中心に、サウンドトラック盤ベースに楽曲構成するというコンセプトに大きく軌道修正したように思います。一方では、楽曲によって『交響組曲 もののけ姫 CD版』のオーケストレーションを活かしているところもあります。上記〈構成楽曲〉で( )表記しています。

4.『交響組曲 もののけ姫 CD版』にしかなかった独自のメロディやパートは極力除外したということになります。「神の森」は「交響組曲 第五章 シシ神の森」の楽曲構成に近いですが、イメージアルバム「シシ神の森」の楽曲構成と世界観から取り込んでいるとするのが、正しいに近いと思います。風の谷のナウシカの交響組曲もイメージアルバムから「谷への道」を導入したように。初期の構想からすでに生まれていたけれど映画本編には使われなかった曲。

 

…と2016版と2021版の大枠の変化を記したうえで、《交響組曲 もののけ姫 2021版》を構成する楽曲をそれぞれ見ていきましょう。

 

5.「アシタカせっ記」、太鼓たちの轟きで一瞬にして『もののけ姫』の世界へ。この確固たるメインテーマが聴けただけで満足感いっぱいになりますが、我に返ってまだまだ一曲目です。

6.「タタリ神」、荒れ狂うような速いパッセージの弦楽器に管楽器、そして通奏するパーカッション群。重く獰猛に進んできそうなメロディは、これまでにはない革新的な日本製マーチ(行進曲)の誕生だったとすら感じます。

7.「旅立ち -西へ-」、この曲好きな人とっても多いと思うんです。交響組曲に登場したこと感無量な人とっても多いと思うんです。

8.「コダマ達」、サウンドトラックのみに収録されていた楽曲(オーケストラ+シンセサイザー)で、2016版から交響組曲に盛り込まれました。ピッツィカート・木管・鍵盤打楽器、そして木柾やウッドブロックなどの小ぶりなパーカッションたちが、コダマたちを巧みに表現しています。

9.「呪われた力」、2016年版「レクイエム」パート中にもありましたが、前半に単曲で新規追加されました。細かくいうとアレンジは交響組曲CD中のもの、およびサントラ盤「23.呪われた力 II」に近いです。物語にそった組曲を目指したこと、呪われた力の凶暴性を出すことで、のちのシシ神の森のシーンや終盤の黄泉の世界までしっかりとつながっていきます。

10.「神の森」、『交響組曲 もののけ姫 CD版』に近い楽曲構成になっています。ただし、4.にも記しましたが、遡ればイメージアルバム「シシ神の森」にもすでにありました。映画本編では未使用となったもの、音楽作品として極めるためにはあってしかりですね。

11.「もののけ姫」(vo)、ソプラノによって歌われます。序盤の伴奏もピアノではなく、ハープなどで静な深い森を演出しているようです。(vo)についてはのちほど…。

12.「黄泉の世界I,II~生と死のアダージョII」、久石譲楽曲解説に ”新たに世界の崩壊のクライマックスを入れた” とあたります。シシ神殺しのパートをダイレクトに入れ込むことで、破壊と再生、生と死、『もののけ姫』作品世界の内在する二極を表現しています。そして前半の「呪われた力」にあった、決して消えることのない痣、いつ濃くなり蝕むかわからない痣を思い起こさせます。それは、決して簡単に答えの出ない世界で生きていく私たちへと、しっかりと刻み込まれる思いがします。

13.「黄泉の世界I,II~生と死のアダージョII」、サントラ盤ではシンセサイザーの唸るような音色が、ここでは見事にコントラバスのグリッサンドで表現されています。うん、再現という以上の効果を発揮しています。圧巻です。こんなことできるんだと鳥肌ものでした。ここまでできたらもう怖いものないんじゃないかなというくらい(どんなシンセ曲でもオケ曲にできる、の意)。

14.「黄泉の世界I,II~生と死のアダージョII」、たしかにと納得してしまいます。これぞ入って『もののけ姫』の世界と強く膝を打ちたくなります。そうして、それでもしっかりと生きていかなければいけない私たちへと迫り浴びせられる地割れのする管弦楽の轟きの後、希望と再生へとつながっていきます。

15.「アシタカとサン」(vn/vo)、やっぱり導入は僕がエスコートしないと(幻の声)、1コーラス目は久石譲ピアノが迎え入れたソロ・ヴァイオリンが美しいメロディを奏でます。2コーラス目にソプラノによって丁寧に歌われることもあって、豊嶋泰嗣さんのフェイク(メロディラインの持つ雰囲気は残しつつも、ある程度装飾的な要素を加えつつ崩して演奏すること)が光っています。

16.「アシタカとサン」(vn/vo)、2コーラス目はソプラノによって歌われます。「信じて~」からの天からやさしく降りそそぐ光ようなストリングス(武道館verから)、チューブラーベルの希望の鐘が高らかに、やさしい余韻へと。(vo)についてはのちほど…。

17.久石譲楽曲解説に ”スタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入した” とあります。『久石譲 in パリ』のTV音源を聴いていても、僕には見つけることできませんでした。アンコール「アシタカとサン」はTV放送されていない。とても精緻なオーケストレーションのところなのかな…?

 

 

浅はかでした。ごめんなさい。

壮大なお詫びをしたいと思います。以前に、『交響組曲 もののけ姫 2016年版』だけがCD化されないことについて、うだうだつらつら書いたことがあります。そこでは「ああ、歌の部分に納得してないのかなあ」ということを中心に掘りさげていました。だったら歌なし版でもいいのかも……ちょっとだけそんな書いていたかもしれません…。

今回の久石譲楽曲解説に、”数年前にW.D.O.で取り上げたのだが、何かしっくり来なかったので、今回再チャレンジした。” とあります。ただ、そのつづきを読んだらわかるとおり、楽曲構成において主に修正がかかっています。

……

2021年版を聴いて「歌は必要なんだ!」と強く思いました。『もののけ姫』という作品において、歌(言葉)による精神性の表現というのは大切なことなのかもしれません。世界ツアー版で「もののけ姫」はソプラノによる日本語歌唱、「アシタカとサン」はコーラスによる英語で歌われています。でも、だから2021年版もやっぱり歌で、と言っているわけじゃないんです。

それは、「日本語による歌唱」です。ここに強くこだわっているように思えてきました。世界ツアー版とは異なり、これから先《Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021》が海外公演されるときは、現地オーケストラと現地ソリストによる共演になります。そして、きっと「日本語による歌唱」です。これはたぶん揺るがない。

ディズニー映画『アナと雪の女王』の主題歌「Let It Go」。映画プロモーション企画で、25ヶ国語で歌いつながれた主題歌動画が公開されたとき、話題となったのは日本語で歌われていたサビ「ありのままの~」の部分です。音符ひとつひとつに、言葉ひとつひとつを乗せた日本語に「キュート!美しい!」と世界の人たちが反応しました。日本人だけはピンとこないのか、そうなの?、何をそんなに騒いでいるのかわからない、温度差を感じるほど、世界はその瞬間たしかに日本語に熱狂しました。

これです。《Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021》でめざしたのは、『もののけ姫』の世界を音楽で表現すること、日本的なメロディ・ハーモニー・リズムを余すことなく表現すること、そのなかに日本語の美しさを表現することも含まれる。そう強く思いました。オペラなどと同じように、純正の日本語でしっかりとした作品をのこす。「日本語っていいね、きれいな響きだね」と言われるものをつくる。

「もののけ姫」(作詞:宮崎駿)も、「アシタカとサン」(作詞:麻衣)も、文字数にすると少ない日本語で作られています。久石譲が作曲した音符の数とほぼイコールになります。言葉ひとつひとつに、音符ひとつひとつがのる。もうひとつ、久石譲は歌詞にメロディをつけるときに、言葉のアクセントやイントネーションには逆らいません。発声と同じように自然なメロディをつけます。♪ポニョ~も♪トトロ~も、そうですよね。そのふたつの手法こそ、久石譲がポリシーとしてずっとやってきたことです。あるとき「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」現象と突如パッとつながったんです。そういうことか!そういうことか?!ちっ違いますか…? と。

スタジオジブリ作品交響組曲プロジェクト、2015年以降『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『千と千尋の神隠し』『魔女の宅急便』『もののけ姫』とここまできました。そして、ジブリ作品が日本を代表する象徴であるように、交響組曲でも初めて純正の日本語でしっかりと作品をのこす『もののけ姫』が2021年版として堂々完成することになった。このことは、海外で演奏される近い未来にとっても、日本文化として残ってほしい遠い未来にとっても、大きな意味と価値をもっていくだろう、そう強く思っています。

……

17の箇条書きと壮大なお詫び、けっこうなボリュームになってしまいました。最後に一文で。物語にそった音楽構成と日本語の美しさで『交響組曲 もののけ姫』完全版ここに極まる。

 

 

World Dreams

「9.11」から20年の今年。このことだけでも重みのある一曲です。そして「Covid-19」の渦中にある今。どんな時でも必ず演奏される曲。こんな一面も、4月24日無念さを残しながら、それでも今できることをかみしめるように演奏したWDOオーケストラメンバーのSNSの声も印象的でした。観客だけじゃなく、楽団員にとっても大きな一曲は、中断を経て新しい完走地点の7月25,26日いろいろな想い駆け巡りながら、会場に響きわたりました。

 

 

東日本大震災から5年後の2016年にシンフォニーNo.1「THE EAST LAND SYMPHONY」と「交響組曲もののけ姫2016」。そして10年後の2021年にシンフォニーNo.2「交響曲 第2番」と「交響組曲 もののけ姫 2021」。まさかのアクシデントを乗り越えて完走したW.D.O.2021は、10年前に思い描いていた未来ではない、新しい試練の真っ只中となりました。

そんななかでも、全公演完売御礼となったWDOコンサートはやっぱりすごい。今回もオール久石譲プログラムでしたが、WDO史上最も久石譲らしい作品たちが並んだようにも思います。日本やアジア色の強い作品たちが、待望の新作交響曲と熱望のエンタメ作品が、日本人作曲家としての久石譲の魅力が、リタルタイムで世界各地にライブ配信されたということもきっと大きいと思います。

 

 

コンサート・パンフレットは販売による密集を回避するためか、観客全員に配布されるものとなっていました。各会場特設販売コーナーでは、最新ベストアルバムCDや最新スコアなどが並んでいました。

いつもなら全公演とも一瞬でスタンディングオベーションが起こります。今回も気持ちはそう!したかった!…遠慮や躊躇があります見られます。席を立つことで、大きく拍手することで、ウィルスを舞わせてしまうんじゃないかと危惧するように、科学的根拠はたぶんないけれど心理的なもの…ここが日本人らしいんです。海外ファンの配信視聴した皆さんは不思議だったかもしれないから、ひと言添えておきたい。気持ちはオール・スタンディングオベーション!

MCのない久石譲コンサートですが、アンコール終わっても鳴り止まない拍手に、何回も登壇する久石譲は、拍手をやさしく制して「今日はありがとうございます」「気をつけて帰ってくださいね」「また会いましょう」などと各会場でひとこと挨拶してくれました。

 

 

 

みんなの”WDO2021”コンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

リハーサル風景

from 新日本フィルハーモニー交響楽団 団員SNS

 

 

記念撮影

from 豊嶋泰嗣 SNS

 

from 二期会21 公式ツイッター
@nikikai21

 

公演風景

4/24 東京公演

 

7/26 東京公演

 

 

2021.08.06 追記

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

Overtone.第47回 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/07/30

4月21~24日開催、7月25~26日振替開催、国内3都市5公演と世界各地ライブ配信も実現した「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサートツアーです。4月の緊急事態宣言を受けツアー途中で中止となってしまいましたが、それから間を置かず7月振替公演を叶えてくれました。W.D.O.2021完走してくれたこと、尽力いただいた皆さまへ感謝の気持ちでいっぱいです。

今回ご紹介するのは、WDOだけでも3回連続(2018/2019/2021)でレポートしてくれる、ふじかさんです。さすが久石譲音楽を広く深く愛してやまない、ふじかさんです。過去作品たちから新作につながっているもの、そして未来の新作たちへつながるかもしれないもの。久石譲曲の点と点が線になっていて理解をやさしく助けてくれるレポートです。

 

 

久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021
JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2021

[公演期間]  
2021/04/21,22,24
2021/07/25,26

[公演回数]
5公演
4/21 京都・京都コンサートホール 大ホール
4/22 兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
4/24 東京・すみだトリフォニーホール

*緊急事態宣言を受け2公演とライブ配信 中止
4/25 東京・すみだトリフォニーホール
4/27 東京芸術劇場 コンサートホール
4/27 ライブ配信(日本・海外)

*振替公演
7/25 東京芸術劇場 コンサートホール
7/26 東京・すみだトリフォニーホール
7/25 ライブ配信(日本・海外)

[編成]
指揮:久石譲
ソプラノ:林正子(4/21,22,24) 安井陽子(7/25,26)
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
コンサートマスター:豊嶋泰嗣

[曲目]
久石譲:交響曲 第2番 *世界初演
    Symphony No.2 (World Premiere)
    Mov.1 What the world is now?
    Mov.2 Variation 14
    Mov.3 Nursery rhyme

—-intermission—-

久石譲:Asian Works 2020 *世界初演
    I. Will be the wind
    II. Yinglian
    III. Xpark

久石譲:交響組曲「もののけ姫」2021
    Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021

—–encore—-
久石譲:World Dreams

 

 

WDO2021東京芸術劇場公演の様子をレポートさせて頂きます。

2021年7月25日 東京芸術劇場 15:00開演

今回のWDO公演は新型コロナウイルスによる情勢の変化で大きく振り回されるツアーとなってしまいました。本来は4月末に開催予定でしたが、3度目の緊急事態宣言により公演は中止。およそ3か月遅れ、再度公演が設定されましたが、またしても4度目の緊急事態宣言が発令され、そのような状況下での開催となりました。ちょうど、東京オリンピックの開催とも重なり、会場では消毒・検温のほか、手荷物検査も実施されていました。個人的には2019年の静岡公演以来、約2年ぶりのWDOとなりました。

今回の目玉はコロナ禍で書き上げられた『Symphony No.2』。前作の交響曲となる『The East Land Symphony』からは早くも5年となり、待望の最新作の交響曲となりました。そして同時に演奏される『もののけ姫組曲』は2016年WDO公演にもプログラムされており、破壊と再生をキーワードにどんな世界観が構築されるのか本当に楽しみにしていました。

 

会場に入ると、ほぼ満席の客席。しかし、会話は少なく、いつもよりは静かな印象を受けました。

15時すぎに楽団員の登壇に続き、コンサートマスターの豊嶋さんが登場。チューニングののちにしばしの沈黙。ほどなくして、久石さんが登場。前回のFOC Vol.3と同様、コンマスとの握手はせず会釈のみで、指揮台へと上がります。

 

 

Joe Hisaishi 『Symphony No.2』

『1楽章 What the world is now?』

前作の交響曲『The East Land Symphony』では再生と東日本大震災以降の日本を軸に構成されていて、楽曲の始まりから重々しい雰囲気で導入されるのが印象的でしたが、今回の『No.2』ではプログラムにて「純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した」との記載がありました。

早速、導入部では前作のような重々しい和音ではなく、どこか浮遊感のある和音にストリングスが散発的に2音の音を折り重ねていくような展開から始まりました。同時にチェロによるモチーフが提示され、そのモチーフが木管へと引き継がれていきます。その後はストリングスが細かいパッセージを構成しながら、打楽器隊のパワフルな演奏が加わります。雰囲気としては先日のFOC Vol.3で披露されたレポ・スメラの『Symphony No.2』を彷彿とさせるものもありました。

テンポもリズムも大きく変わっていきますが、軸となるのは冒頭で提示されたチェロによるフレーズで、それらを取り込み、変容しながらフィナーレへと一気に駆け上がっていきました。息つく間もなく、次々と曲の構成が変わっていく様子はまさしくタイトルにもあるように、今日のコロナ禍での世界の様子を暗示させるものも感じました。

演奏後、一瞬拍手が入りそうになりましたが、間一髪で鳴りませんでした…

 

『2楽章 Variation 14』

去年のMusic Future Vol.7にて小さい編成での試演がされましたが、いよいよ完全版での披露となります。『1楽章』の雰囲気とは一気に変わり、どこか陽気でリズミックなモチーフが提示され、次々と変奏されていきます。このどこか陽気でリズミックなモチーフはまるで『Encounter』のようなユーモアも感じます。様々な音色とアレンジで受け継がれゆくモチーフは聴いていて本当に楽しく、後半にゆくにつれて体を揺らしていきたくなるようなわくわく感に包まれます。終盤は冒頭のモチーフが華やかなパーカッションとスピード感ある演奏により、スリル満点になります。その後、ストリングの短いフレーズを繰り返しながら、チェロの音色で終わります。

 

『3楽章 Nursery rhyme』

プログラムには「日本のわらべ歌をもとにミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるのかの実験作である」と記載がありました。

わらべ歌のモチーフがコントラバスから始まり、チェロ、ヴィオラ、2ndヴァイオリンと受け継がれていきます。冒頭がコントラバスから始まることにびっくりしましたが、ある意味マーラーの『Symphony No.1 3楽章』のフランス民謡(日本語歌詞では「グーチョキパーでなにつくろう」)というモチーフを引用したような部分と共通のものも感じました。

わらべ歌モチーフがミニマル的なアプローチで発展をしていく様子は、以前『なよたけのかぐや姫(女声三部合唱のための)』にて実践してきた部分も取り入れられたような部分もあり、いままでの作品にて実験・実践してきた部分も活用し、今回の楽曲へ応用して取り組まれていった様子も感じることができ、それらを踏まえると前作の『The East Land Symphony』とはうって変わって、純粋に音の運動性を追求した作品であると改めて意識することができました。

ミニマルアプローチでの盛り上がりがピークに達したところ、一瞬演奏が途切れます。この瞬間に一瞬拍手がなるハプニングもありました。その後は、再度冒頭のコントラバスによるモチーフの再提示がありますが、副旋律も加わりより重厚な演奏になります。このモチーフを再度発展させていき、再び盛り上がりのピークへ。最終盤は、コントラバスソロによりモチーフを歌い上げ、静かに終わります。

 

 

今回の『Symphony No.2』から感じられたことは、ここ近年のミニマル作品にて取り入れてきた部分を様々な形で活用し、構成していった部分でした。各楽章ともそれぞれ、モチーフを提示し、アレンジさせ発展していきます。そしてただズレていくためだけのミニマルではなく、ミニマルもエッセンスの一つとして構成されています。

近年の『Single Track Music 1』『Chamber Symphony No.2』『I Want to Talk to You』『Encounter』『2 Pieces』などなど単旋律の追求、モチーフの発展の仕方など、様々な方法を実験し、行きついた作品が今回の交響曲であると感じました。そして、日本の作曲家だからこそできた西洋楽器と東洋のメロディ・モチーフとの融合。

今後、この楽曲は世界での演奏会でも数多く予定されていており、日本のエンターテインメント性をも訴えることができる作品だと思います。いずれは、日本を代表する交響曲のスタンダードとしてラインナップされるとファンとしてはうれしい限りです。もし、FOCなどでの少し小さい編成でのオーケストラにて演奏した場合、どのような表情へ変わるのか…音を運動性を追求した作品だけあって、今後の様々な発展も期待できる作品となりました。

 

 

Joe Hisaishi『Asian Works 2020』

2020年に発表されたエンターテインメント作品をピックアップしたコーナー。近年のエンタメ作品は発表のみでコンサートでの披露や音源化されることなく埋もれてしまうことが多かったですが、今回のコンサートでは一挙に3曲もコンサートのピースとして披露されました。本当にうれしい限りです。

 

『Ⅰ.Will be the wind』

ミニマルテイストを感じさせるピアノのフレーズを軸に、次々と様々な楽器が折り重なるように演奏されていきます。要所要所に入ってくるミニマル特有のズレが聴いていてなんともクセになります。後半に入るにつれ、加わってくる弦楽器の少し切なげなメロディとミニマルの交差から久石さんのエンターテインメント性が光ります。最後は力強く、バンっ!とフィニッシュです。

 

『Ⅱ.Yinglian』

香港映画の『赤狐書生オリジナルサウンドトラック』から『英蓮』がセレクト。ピアノの刻みから展開されるクラリネットから聴こえてくる、浮遊感のあり、掴みどころがないようなフワフワとしたメロディ。近年のエンタメ作品で実施されている引いた音楽がここでも実践されている気がしました。

 

『Ⅲ.Xpark』

最後は台湾の水族館のための音楽からセレクト。フルートの明るく楽しいミニマルを感じさせるメロディから始まり、木管の演奏へと続きます。ミニマル素材と海や深海などのテーマとの相性は抜群。水の流れを感じさせる雄大な弦の調べや、光を感じさせる伴奏のリズム。久石さん自身も楽しそうに体を揺らしながら指揮をしていたのが、印象的でした。最後は水の気泡が弾けるようなピチカートでポンッ!と終わりました。

 

近年のエンタメ作品では、ミニマルの要素が随所に取り込まれていて作品のクオリティが一段と高められています。納品先で流れて終わりではなく、コンサートで取り上げても作品として成立する完成度。この3曲を聴くと、いままで発表されコンサート等でのお披露目がまだの作品も今後の演奏があるのでは…!と期待のできるコーナーでもありました。

 

 

Joe Hisaishi『Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021』

今回のコンサートのもう一つの目玉、『もののけ姫組曲』が満を持して登場です。ちなみに私自身、2016年版演奏時はプログラムされていないほうの公演(Bプロ)を聴いたため、この組曲はいまだに聴いたことがありませんでした。今回ようやく初鑑賞です。

 

『アシタカせっ記』

久石さんの大きな振りとともに轟く大太鼓の音色。一気に物語の世界観へといざないます。メロディの入口にはパーカッションも加わり、より壮大な印象へ。

『TA・TA・RI・神』

再び、久石さんの大きな振りとともに轟く大太鼓とさらに和太鼓の音色。緊張感あふれるメロディと吠える金管、炸裂するパーカッション。会場が揺れるような演奏の迫力に会場全体も圧倒されたような雰囲気を感じました。

『旅立ち~西へ~』

先ほどの緊張感からはうって変わり、『もののけ姫』のメロディを軸に楽曲が展開されていきます。後半での壮大なパートではメロディの美しさとアレンジの力強さが見事に伝わってきます。

『コダマ』

コダマの首を回す音は打楽器にて見事に表現。原曲でのシンセの音は木管や金管の息の長い音色で再現。コミカルで不思議な雰囲気のこの楽曲もオーケストラにて完全に構築されていました。

『呪われた力~神の森』

劇中にてアシタカが敵から襲われるスリリングなこの曲も取り込まれ、そのままシシ神のテーマへ。木管から紡がれる怪しい雰囲気から混沌を感じさせる激しいパートへ。

『もののけ姫』

ゲストソプラノが登場し、有名な主題歌を披露。途中から転調し、ソプラノの美しさがより感じられる場面では、生演奏だからこそ伝わってくる気迫も感じられ鳥肌が立ちました。

『黄泉の世界~死と生のアダージョ』

終盤に向けて組み込まれた世界崩壊のクライマックス。手に汗握るようなスリリングな楽曲に時折顔をのぞかせる『もののけ姫』のテーマ。

『アシタカとサン』

組曲の終盤を飾るのは、物語では再生のテーマとして流れた本楽曲。今回のアレンジでは豊嶋さんのヴァイオリンソロを堪能できるバージョンへと進化しており、久石さんも短いながら、ピアノの伴奏として参加します。後半ではソプラノが加わり、希望の歌詞を豊かに歌い上げ、希望の鐘も響きながら美しく幕を閉じました。

 

 

会場からは割れんばかりの惜しみない拍手。

何度かのカーテンコールののちにアンコールへと進みます。

 

Encore

Joe Hisaishi『World Dreams』

いままで、何度も聴いてきた本楽曲でここまで泣きそうになってしまったのは初めてでした。コロナ禍で日常はもちろん音楽を楽しむ状況まで一変し、いままでとはまったく違う世の中になってしまいました。今の世界の夢ははやく日常を取り戻すこと。そこへ向かいたいというエネルギーがこの楽曲に凝縮されていて、改めて元気と活力をもらうことができました。

「哀しみにつまずけば 自由がみえる 歓びの灯が消えても ともに歩き続けよう」

 

演奏が終わると再び、拍手喝さい。

なかなか鳴りやまない拍手の中、大盛況で振替公演1日目は幕を閉じました。

 

2021年7月28日 ふじか

 

 

 

純粋に読んでいて楽しいです。リラックスしていて力まずにすっと読みやすいというかなあ、自分のと比べるとなおさら(苦笑)。今回も共感できるところ、新しい発見なところ、おもしろい表現なところ、とマーカーを引いていったら、なんとカラフルになるだろう! そんな感想です。いつも素敵なレポートありがとうございます。

 

いつも楽しいツイートもチェックです。好きな音楽ジャンルでFFつながりたくなるかも(^^)

ふじかさん
@fujica_30k

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
レポート多いと感想や感動が立体的になってきてうれしいです(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第46回 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2021/07/29

4月21~24日開催、7月25~26日振替開催、国内3都市5公演と世界各地ライブ配信も実現した「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサートツアーです。4月の緊急事態宣言を受けツアー途中で中止となってしまいましたが、それから間を置かず7月振替公演を叶えてくれました。W.D.O.2021完走してくれたこと、尽力いただいた皆さまへ感謝の気持ちでいっぱいです。

今回ご紹介するのは、韓国からライブ・ストリーミング・レポートです。感嘆すると思います、日本ファン顔負けの精通ぶりに。もし僕が海外作曲家にお気に入りがいたとして、ここまでリアルタイムに正確に音楽活動を追っかけられるかな。時差なし!誤差なし!すごいですっ!

 

 

久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021
JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2021

[公演期間]  
2021/04/21,22,24
2021/07/25,26

[公演回数]
5公演
4/21 京都・京都コンサートホール 大ホール
4/22 兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
4/24 東京・すみだトリフォニーホール

*緊急事態宣言を受け2公演とライブ配信 中止
4/25 東京・すみだトリフォニーホール
4/27 東京芸術劇場 コンサートホール
4/27 ライブ配信(日本・海外)

*振替公演
7/25 東京芸術劇場 コンサートホール
7/26 東京・すみだトリフォニーホール
7/25 ライブ配信(日本・海外)

[編成]
指揮:久石譲
ソプラノ:林正子(4/21,22,24) 安井陽子(7/25,26)
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
コンサートマスター:豊嶋泰嗣

[曲目]
久石譲:交響曲 第2番 *世界初演
    Symphony No.2 (World Premiere)
    Mov.1 What the world is now?
    Mov.2 Variation 14
    Mov.3 Nursery rhyme

—-intermission—-

久石譲:Asian Works 2020 *世界初演
    I. Will be the wind
    II. Yinglian
    III. Xpark

久石譲:交響組曲「もののけ姫」2021
    Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021

—–encore—-
久石譲:World Dreams

 

 

はじめに

久石譲のアルバムは、多くの曲をTENDOWORKで扱ってきたが、いざジブリ曲は扱ったことがない。ジブリ曲はあえて私が説明しなくても広く知られていることもあるし、たくさん聴かれていることもあるからだ。また、久石譲が最終的に作曲家として追求したミニマル音楽をより応援したいこともあった。

それにもかかわらず、今回のコンサートは、久石譲の第二交響曲が演奏される歴史的なコンサートなのでしっかりレビューみたいという思いがした。

 

W.D.O.の紹介

W.D.O.は久石譲の代表的なコンサートシリーズだ。それほど歴史も深い。韓国にも来韓して素晴らしい演奏を披露したことがある(WDO2017)。特に2008年の「久石譲 in 武道館」公演をはじめ、数多くの公演を行い、2015年から、新しいプロジェクトとしてスタジオジブリ・アニメーション音楽の交響組曲に取り組んでいる。

 

紆余曲折の多かったコンサート

今回のコンサートは本当にいろいろな情報が何度も出入りした。それだけ紆余曲折が多かった。2019年を最後に再準備期間に突入したW.D.O.が、2年ぶりにW.D.O.2021に戻るというびっくりするニュースが流れてきた。2020年だけスキップして、1年ぶりに帰ってきたも同然だった。さらに、予想もしなかった4月の公演日程だった。(ほとんどW.D.O.公演は8月頃の夏に行われる。)次いでライブストリーミング公演の計画発表。しかし、「ワールド・ドリーム・オーケストラ」ツアーの途中、日本の緊急事態宣言でキャンセルされてしまう。

後に振替公演の知らせが聞こえてきたが、再び緊急事態宣言のニュースも聞こえてきてパニックに陥った。それにもかかわらず、結果的に公演が行われた。だからこそ、感慨深いコンサートではなかっただろうか。

 

これからしっかりコンサートのレビューを始める。

 

Joe Hisaishi:Symphony No.2

久石譲の第二交響曲だ。「久石譲の交響曲第1番は何か」というささやかな議論になるがパスしよう。

 

Mov.1 What the world is now?

 

第1楽章は、現在のパンデミックをはじめとする世界各国の悲劇を意識したようなタイトルの「What the world is now?」 悲壮な雰囲気が逸品だった。少し難しく感じられるミニマル曲だ。

 

 

久石譲の曲には、ウッドブロックが本当にたくさん入る。交響曲第2番の第1楽章からウッドブロックが登場する。チクトクチクトクする効果音を響かせた。(このコンサートでウッドブロックのすごい活用度を知ることができるだろう。)

このウッドブロックの音が鳴り止む頃にものすごく曲が激しくなるが、この時、登場するフレーズでフィリップ・グラスのGlassworksの素早く繰り返されるフレーズが思い浮かんだ。「The Border」では、だんだん低い音に下がっていくような印象的な部分があるが、今回の曲では似たような形だが、むしろだんだん高い音に上がっていくようなフレーズがあった。(これを狙ったのかもしれない。)

 

Mov.2 Variation 14

 

第二楽章の「Variarion14」は「MUSIC FUTURE VOL.7」でより小さな規模で演奏されたことがあった。リズム感とウィットに富んだ曲だ。名前にふさわしく、変奏曲形式である。久石譲の”Single Track Music”の手法が少し連想される面があり印象的だった。これはなんの和音もなく曲が成り立つ手法であるが、不協和音などに依存する現代音楽の限界を克服しようとする試みの一種であるように見えた。演奏されるメロディのいくつかの箇所で、他の楽器が同じ音に短く重ねて演奏する部分があり、リズム感もキープし雰囲気もアップする感じだった。(ただし、これによる演奏難易度は非常に上昇するものと予想された。)しかし、この曲は厳然として見れば”Single Track Music”ではない。中間部分からセクションが互いにすれ違いからだ。

 

 

最後の頃にはとても静かになり、グロッケンシュピールとヴィブラフォンが演奏される場面があるが、すぐに続く激しいトゥッティ演奏がハイライトだ。この部分は、僕のお気に入りの部分だ。”Single Track Music”の限界を振り切ってすっきりと演奏されるフレーズと、各楽器の激しい演奏が逸品だ。最後のチェロの締めも素晴らしい。

 

Mov.3 Nursery rhyme

 

最初コントラバスが奏でる童謡がテーマになる。なのでタイトルも「Nursery rhyme」。これは日本の童謡で、日本人のツイッターの反応を見ると、「かごめかごめ」という曲の少しの変形だと多く言われている。

静かで落ち着いた曲のように思えるが、すぐに拍子が速くなりテーマになるメロディも複雑になる。主題となるメロディがシンプルな童謡だったので、それでも比較的聴きやすかった。 (コロナ以降の楽めるコンサートが目標になっているため、第2、3楽章はわざとシンプルに書いた感じがする。)

このような強烈な速さで進行された後クライマックスに入る。この部分では、多くの人々が音楽が終わった感じることもあったようだ。しかし、クライマックスの後つかの間の静寂に続いて、再び重く荘重に変奏主題が演奏された後、コントラバスが静かにソロで演奏されて終わる。とても劇的な構成だ。

 

だから結論的に、久石譲の交響曲第2番は、全体的に変奏曲の形式で成り立っていて、ある意味退屈になりうる危険な構造だったかもしれないが、悩みと研究を重ねて交響曲まで成立させた大作とすることができるようだ。

 

 

Joe Hisaishi:Asian Works 2020

I. Will be the wind

 

中国で公開されたLEXUSテーマ曲「Will be the wind」だ。とても洗練された雰囲気の曲だ。典型的なメロディ+ミニマルな感じの曲。風が吹くような感じのモチーフが様々に変化し、心を揺さぶる。単純なモチーフの繰り返しではない、無意識の何かを引き出す不思議な魔法を使う曲だ。ピアノの旋律もとても印象的だ。また、久石譲の武器であるマリンバも欠かせない。最後までよどみなく吹き荒れる素敵な曲だ。

 

II. Yinglian

 

いよいよTENDOWORKでレビューしていた曲が登場した。(https://tendowork.tistory.com/66)「Yinglian」は『赤狐書生』という香港映画のラブテーマに当たる曲だ。とても魅惑的なメロディが印象的だ。特異な点は、「MUSIC FUTURE Vol.7」でも演奏されたジョン・アダムズの「Gnarly Buttons:Movement III – Put Your Loving Arms Around Me」ととても似た雰囲気の曲ということである。これは久石譲の意図なのか?聴き比べてみるのもおもしろいだろう。クラリネットのソロ演奏は本当に素晴らしかった。

 

III. Xpark

 

祭り的な雰囲気のとても明るい曲だ。Xparkの館内展示音楽として久石譲が作曲した曲は全7曲だが、このうち1曲がW.D.O.で演奏されたものである。YouTubeでXparkに関する動画を見ながらいくつかの曲の一部を聴いてみると、すべて美しく素晴らしい曲ばかりだ。海外に出て行くことができないため、実際に聴くことができない貴重な音源である。コンサートでこういう形でも1曲ちゃんと聴けてうれしい。

 

 

豊嶋泰嗣さんのヴァイオリン・ソロ部分でこんなに明るい笑顔を見せてくれる久石譲さん…!!!

 

 

Joe Hisaishi:Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021

 

W.D.O.2016で演奏された交響組曲が完全版に進化した。2016年に演奏された「Symphonic Suite “Princess Mononoke”」は音源発売もされず、コンサートの映像化もされなかった。だからファンたちがとても熱望した曲だが、この機会にアルバム発売にもつながってほしい。やはりもののけ姫の曲は胸を鳴らし、耳を清めるような感じだった。

 

 

ウッドブロックをたたきながらコダマを表現した。(大太鼓の横の楽器もウッドブロックだろうか。 鉄製の感じがするんだけど… マレットの違いかも…)この曲は、1998年にアルバムとして発売された「交響組曲もののけ姫」になかった追加された部分だ。

 

 

ソプラノ安井陽子さんが「もののけ姫」を素敵に歌ってくれた。クライマックスの部分はいつ聴いても身の毛がよだつほどいい。

 

 

いまにも終わりそうだった交響組曲は、世界の崩壊を表現した楽曲が演奏され、再び緊張が高まる。コントラバスを下から上へ上から下へと演奏される技法が印象的だ。この部分が追加されることでもののけ姫の物語世界が完成されて、音楽的にもより完成された感じだ。

 

 

最後の曲「アシタカとサン」。個人的にもののけ姫で一番好きな曲だ。久石譲のピアノ演奏とコンサートマスター豊嶋泰嗣さんの素敵なヴァイオリン・ソロ演奏。久石譲のピアノは概ね伴奏にとどまりヴァイオリン・ソロがとても華やかだった。久石譲のピアノ演奏はいつ聴いてもいいが、「アシタカとサン」ピアノ・ソロとして多く演奏されてきたので、ヴァイオリン・ソロ演奏で聴くととても新鮮だった。特に今回のコンサートのために変形されたフレーズが心をつかんだ。次いでソプラノ安井陽子さんのボーカルバージョンが引き継がれた。 武道館の合唱バージョンはもうおなじみだったからソプラノバージョンもとても良かった。原曲のカウンターテナーともまた違った感じだ。

今回のコンサートでは、久石譲がコンサートの出演者紹介で「Conductor, Piano」ではなく、「Conductor」としてだけ紹介された。指の負傷の影響もあったはず、それでも指揮台からメインピアノに移動してピアノ演奏を披露するサプライズ演出を見せた。たとえ短い演奏でも、こんなファンサービスに感動した!!

 

World Dreams

 

コンサートのアンコール曲は「World Dreams」で終わる。W.D.O.の象徴になってしまった曲だ。2019年以降、「World Dreams」が終わるとマリンバの音が幻聴で聞こえてくる後遺症があるが、どうしようもない。

 

 

久石譲の今回の「ワールド・ドリーム・オーケストラ・2021」コンサートは、2016年のコンサートと似ている面がある。久石譲の「The East Land Symphony」と「もののけ姫交響組曲」が演奏された2016年、そして久石譲の「交響曲第2番」と「もののけ姫交響組曲2021」が演奏された2021年。本当に素晴らしい組み合わせだ。 2016年のコンサートが映像化されていないことが残念でならない。

また、リアルタイムストリーミングの利点は、彼のコンサートをリアルタイムで見て、感じた点を、日本の観客とすぐに共有することができるし、今すぐ映像と録音に残ったコンサートを何回も繰り返すことができるということだ。テレビやブルーレイとは異なり、編集の心配もなく、公演開始前の楽器のチューニング、舞台セッティングの過程などを生き生きと見ることができるのもいい。

これからもリアルタイムのストリーミングが慣行として残ってほしいという願いをもって終了。

 

2021年7月27日 tendo

 

出典:TENDOWORKS|久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2021 コンサート・レビュー
https://tendowork.tistory.com/70

 

 

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https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

”2019年以降、「World Dreams」が終わるとマリンバの音が幻聴で聞こえてくる後遺症があるが、どうしようもない。”

ここは、組曲「World Dreams」I.World Dreamsの終わり、ストリングの響きをのこしたまま II.Driving to Futureのマリンバへとつながっていく。組曲版が染みついてしまってるからの幻聴ですね♪ もしこの部分を見て、「それわかるっ! おなじくそうなるっ!」って思った人、tendoさんと楽しく仲良くなれると思います。ぜひツイッターでFFつながってください(^^)

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reverb.
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