Overtone.第43回 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/07/14

7月8,10日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサートです。

今回ご紹介するのは、久石譲ファンの一人、ふじかさんのコンサート・レポートです。東京公演(8日)、見ているだけでワクワク楽しいです。とてもわかりやすくて音がイメージが伝わってきます。そして深い。いろいろな音楽を聴きながら取り込みながら、自分のなかに消化している絡みあっている。ふじかさんの濃密な私的体験を、読んでいるだけなのにたしかに感じることができます。

 

 

久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3

[公演期間]  
2021/07/08,10

[公演回数]
2公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール
長野・長野市芸術館 メインホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター:近藤薫

[曲目] 
レポ・スメラ:交響曲 第2番
久石譲:I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~

—-intermission—-

ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op. 73

—-encore—-

ブラームス:ハンガリー舞曲 第17番

 

 

JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS VOL.3の東京公演のレポートをさせて頂きます。

2021年7月8日 東京オペラシティコンサートホール 19時開演

2020年夏の開催から2度の延期を経て、ようやく開催された本公演。ブラームスの交響曲2番を軸にしたコンサートがようやく開催されました。

 

18:50ごろに会場に到着しました。

コロナ禍のため、入場の様子は様変わりしており、検温と手の消毒はもちろん、チケットは係員に見てもらったのち、もぎりは自分で行い、半券は箱の中に入れるという流れに変わっていました。

会場へ入ると、「コロナ感染症への対策へご協力ください。」というアナウンスが流れており、平常時ではないコンサートという雰囲気を感じられました。

 

19:00すぎに楽団員がステージに集結し、改めてメンバーを見ると、各オーケストラの首席レベルの奏者が次々と登壇し、スペシャルなオーケストラであると改めて認識しました。

チューニングが終わるとともに、黒いマスクをした久石さんが登場。お辞儀をし、しばしの沈黙ののち、コンサートが始まります。

 

1,Lepo Sumera 『Symphony No.2』

日本初演となった本楽曲。パンフレットには作曲者本人より解説も寄稿されていました。

『1楽章 Moderato tranquillo attaca』
ストリングスの序章から始まり、ステージ中央に設置された2台のハープよりモチーフの提示が行われます。通常のオーケストラだと、ハープの音色はステージ後方より音色が聞こえてきますが、今回は指揮者の目の前に設置されたことにより、より近くに感じられるとともに、より立体的な響きの印象を感じました。ミニマルミュージックのエッセンスを感じれる冒頭のモチーフを、音型とリズムを微妙に変容させながら、様々な形で提示していきます。音の増減の様子はフィリップ・グラスの『Two Pages』を連想させます。ハープのモチーフとともに、打楽器・金管群の演奏が加わっていきます。ハープのモチーフをなぞるように木管、弦楽器と音色が広がっていきます。中盤から後半にかけて入ってくるチューブラーベルズの音色が『The End of the World』のような警告の鐘のような雰囲気を感じ、今現在の世界の様子を表しているような印象を受けました。

『2楽章 Interludium』
ハープの前奏に続き、弦楽器がモチーフを繰り返していきます。途中で入ってくるフルート、オーボエの掛け合いのようなモチーフに浮遊感と不安定感を感じさせます。

『3楽章 Spirituoso』
1楽章の弦のモチーフの提示とともに、ハープが軸となる音型を奏でていきます。弦楽器による細かく、息の長いパッセージが全体を構成していくなか、金管・打楽器隊による力強い音がより強烈に印象を残していきます。個人的には日本人作曲家佐藤直紀さんの映画『永遠の0』のメインテーマのような雰囲気を感じました。終盤に行くにつれ、さらに力強くなってゆく金管・打楽器隊の音色には圧倒されました。フィニッシュは再度ハープ2台による演奏ののち、静かに幕を閉じていきました。

 

パンフレットには「アルヴォ・ペルトが静なら、スメラは動である」という久石さんからのコメントがありました。まさしくその通りで、さらには丁度コンサートの前後で発表になった4度目の緊急事態宣言に対する情勢の緊張・不安感を感じさせ、強く現状とを結びつける印象を受けました。

 

ステージの舞台替えが行われたのち、2曲目が始まります。

 

2、Joe Hisaishi『I Want to Talk to You~for string quartet,percussion and strings~』

3月の日本センチュリー交響楽団との初演で演奏された本楽曲が、今回のFOCのセットリストにも組み込まれました。本来は合唱編成で、2曲からなる構成ですが、今回はパンフレットから1曲のみの演奏と記載がありました。

冒頭、1st ヴァイオリンソロの「レラレラー、レラーシ♭」という短いモチーフが提示されます。それに答えるように2nd ヴァイオリンソロが同じモチーフを演奏します。このモチーフはミニマルミュージックのエッセンスを含んでいるため、徐々に音の増減が行われるとともに、音域が変化し、ヴィオラ、チェロも演奏に加わっていきます。音型の提示が進むとストリングスも演奏に加わり、全体を俯瞰していくような構成が組まれていきます。

その後、再びカルテットによる新たな音型の提示をします。このカルテットによるモチーフはなかなかユニゾンにならなかったり、ハーモニーとなって表現されていくことがあまり無く、その様子はまるで携帯電話ツールのコミュニケーションにより、直接顔を合わせずに事が進んでいく様子に警告を表しているような印象を感じ取ることができました。

中盤から後半にかけては大太鼓などのパーカッションも加わることによって、よりスリリングな緊張感を味わうことができ、『死の巡礼』のような弦楽による焦燥感を感じられます。終盤はカルテットにより、序盤のモチーフが再現されたのち、静かに幕を閉じます。

 

演奏後、カルテットメンバーと久石さんの何度かのカーテンコールが行われました。

 

休憩

 

3、Johannes Brahms『Symphony No.2 in D major Op.73』

『1楽章 Allegro non troppo』
序盤のチェロによる「レド♯レー」の提示から、「あっ、これがFOCなのか!」という印象を受けました。わずか3音ですが、早く、キレのある音色。力強く、優美な音に早速感動してしまいました。

(ちなみに補足ですが、この主音から半音さがり主音に戻るという音の流れは耳に残りやすいため、久石さんの楽曲でもメロディの冒頭に現れることがあり、映画『ウルルの森の物語』より『おかあさん』のテーマ(in D)、映画『おくりびと』より『KIZUNA』(in C)、映画『となりのトトロ』より『となりのトトロ』(in F)など様々あります) 

有名な『ブラームスの子守歌』のメロディが紡がれる部分は、序盤と同じくチェロの音色から始まりますが、まるで男性が歌を歌っているような色っぽい雰囲気を感じさせてくれました。その後の激しいパッセージからはキレの良さが伝わってきて、わくわくが止まりませんでした。弦楽による『子守歌』のメロディを彩るフルートによる副旋律は遊び心と華やかな雰囲気が伝わってきます。通常省略されることの多い、提示部の繰り返しですが、FOCではきっちりと再現。1度目とはまったく音色が異なり、より輪郭をしっかりと感じれるとともに、主題の再認識と1回目で気になった部分を改めて復習することできました。終盤にはピチカートによる演奏も出てきますが、久石さんによるピチカートのアプローチはなぜかジブリの雰囲気をとても感じさせ、同じような印象はベートヴェンの『Symphony No.9』の『第3楽章』の途中でも感じられたことがありました。楽章の切れ間に拍手が入ってしまうハプニング(?)も本公演ではありました。

『2楽章 Adagio non troppo』
『1楽章』と同じように提示されるメロディはチェロの導入より始まります。事前インタビュー動画でも久石さん本人が述べられていましたが、今回のブラームスでは「歌う」ということを意識されていました。『2楽章』では特に感じられ、奏者からの身振りより伝わってきて、感情を揺さぶれる熱い楽曲ということを改めて認識しました。後半で演奏される暗い雰囲気を感じさせる部分も熱情的で重々しくなく、ある種清涼感すら覚えました。

『3楽章 Allegretto grazioso(Quasi andatino)』
オーボエによるキャッチャーなメロディから始まり、そのメロディが変奏されていきます。変奏の過程で大きくテンポが変わる部分がありますが、この部分は生で聴いていて本当に驚きました。まるで映画『ハリーポッターとアズガバンの囚人』の冒頭に出てくるロンドンバスのような印象をうけ、止まっているとき(ゆったりとした演奏)は優雅に、発進するともにキレッキレのスピード感。緩急のあるテンポ設定にスリルと高揚感を感じ、病みつきになっていました。世界初演の時にアンコールにて『3楽章』が披露されたのもわかる気がしました。冒頭で提示されたメロディが違和感なく短調へ変身する部分も自然で、ブラームスのオーケストレーションの巧さも際立って聴くことができました。

『4楽章 Allegro con spirito』
序盤から始まる激しいリズムとアップテンポで力強いメロディに圧倒されます。しかし、要所要所で奏でられる快活さ溢れるメロディはヴァイオリン奏者も身を乗り出すようような演奏に楽しさを覚えます。事前インタビューにて久石さんが、「我々はスポーツカー」という発言はしておられましたが、この楽章での最終盤でははまさしくスポーツカーの様子を感じさせてくれました。休符が現れる箇所ではまさしくバンクを高速で超えてジャンプしてゆくスポーツカーのよう!疾走感と爽快感と一気に感動のフィナーレへと向かいました。

前半の重いプログラムからは一転、優美で力強く、希望を感じさせるようなブラームスのメロディと構成。現在の情勢に一筋の希望の光を与えるような交響曲に終始感動してしまいました。そしてFOCというスーパーオーケストラの演奏はとても病みつきになります。

 

何度かのカーテンコールとともにアンコールへと進みます。

 

Encore

Johannes Brahms『Hungarian Dance No.17』

前回でのVol.2では『4番』が披露されましたが、今回は『17番』をセレクト。オーケストラ版ハンガリー舞曲はより緩急がはっきり目立つとともに、より華やかな雰囲気になります。中盤のいかにも踊りだしたくなるようなパートから、終盤の悲しげで力強いフィナーレまで。短い曲でありながら、ブラームスという作曲家の作曲のすばらしさとオーケストラという世界の奥深さを感じられました。

 

拍手喝采のなか、カーテンコールが行われ、弦楽のソリストと肘を合わせる久石さん。1年半ぶりのFOC第三回公演は感動と熱狂的な渦のなか、無事に開催を終了しました。

 

2021年7月13日 ふじか

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

当サイトでは、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

今回、このふじかさんのコンサート・レポートが送られてきたとき、「はあ、こんなの見せられたら、もっといろんな人に書いてほしいな」ってまっさきにそう思いました。うん、そのくらいうれしかったし(突然送られてきたし)、すばらしいなって思いました。コンサートの感動をわかちあえる、コンサートの感想を共有しあえる、そんな日がまたこれから、少しずつふえていきますように。

 

過去2回のふじかさんコンサート・レポートもぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
コンサート会場で楽しく話せる日がきますように(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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