Overtone.第60回 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2022/02/15

2月9日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサートです。当初予定からの延期公演です。プログラムも新たにアップデートされリアルチケットは完売御礼。さらに、Vol.2,3に引き続いてライブ配信もあり、国内外からリアルタイム&アーカイブで楽しめる機会にも恵まれました。

今回ご紹介するのは、すっかりおなじみふじかさんです。コンサートたっぷり2時間分、そしてかたときも臨場感を失わないレポートをお楽しみいただけると思います。いつもしっかり予習をしてから演奏会に臨むふじかさんだからこそ書ける、そんな解説&感想の絶妙なブレンドで一気に音楽が立ちあがってくるようです。

 

 

久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4

[公演期間]  
2022/02/09

[公演回数]
1公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター/ヴァイオリン・ソロ:近藤薫

[曲目] 
レポ・スメラ:Musica Profana
久石譲:Winter Garden

—-intermission—-

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90

—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番 ニ長調

 

 

JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS VOL.4のレポートをさせて頂きます。

2022年2月9日 東京オペラシティコンサートホール 19時開演

 

FOC演奏会も早いもので4回目。ブラームスの『Symphony No.3』を軸にしたコンサートが開催されました。

開演10分くらい前に客席に入りました。ステージ上は開演ギリギリまで練習する楽団員の姿は無く、19時ちょうどくらいに弦楽隊のメンバーのみが集結しました。チューニングののちに、久石さんが登場。いよいよコンサートが始まります。

 

Lepo Sumera : Musica Profana

弦楽オーケストラのみの編成の楽曲で、チェロとコントラバス以外は立奏で演奏されました。短い序奏ののちに、旋律の躍動と静止を繰り返す力強い演奏が始まります。うねりを感じさせるようなリズミカルな旋律が始まったと思ったら、突如静止。各パートから伝わるリズムが複合的に混ざり合い、心地よいビートを感じさせてくれます。古典とミニマルを融合させたような、どこかクラシカルな装いの本楽曲。中間部ではヴァイオリンが奏でるメロディを後から伴奏が追いかけていきます。久石さんは指揮棒を使わずに、手のみで的確に指示を出していきます。

1997年に書かれた作品なのに、まるで近年の久石さんの作品に似たような雰囲気があり、とても驚きました。旋律・モチーフの躍動と静止は近年での『2 Pieces』、書かれているリズミカルなメロディは『Encounter』を、和声を感じさせない単旋律の動きからは『Chamber Symphony No.2』を連想させます。

後半では冒頭のモチーフをさらに発展させ、疾走感と緊張感を感じさせながらフィナーレへ向かいました。

 

久石さんがステージから一度退場したときに、一旦拍手が途切れてしまい、どぎまぎする久石さんの姿も見られました(笑)

舞台替えののちに、木管・管楽器・打楽器のメンバーたちも集結。再度チューニングのちに、久石さんとコンマスの近藤さんが登場しました。

 

Joe Hisaishi『Winter Garden』

・『1st movement』

2006年のピアノとヴァイオリンのバージョンの音源を持っており、何度も何度も聴いていましたが、オーケストラ版をじっくり聴くのは初めてでした。

冒頭からミニマルとメロディを融合したフレーズが何度も顔を出します。ヴァイオリンがメロディを演奏したのちに、そのメロディを木管が受け継ぎ、ヴァイオリンは別のフレーズへ。オーケストラとソロヴァイオリンの掛け合いが最高に気持ちいいです。

聴いていくうちに、2006年版とは全くの別の作品ということを認識していきます。ただのオーケストラアレンジかと思ったら、完全にオーケストラとソロヴァイオリンの為の協奏曲へ。中盤では『崖の上のポニョ』のイメージアルバム収録の『ポニョ来る』のような雰囲気を感じさせるシーンも。冒頭のフレーズを数度繰り返したのちに、幻想的な和音で1楽章は終わりました。

 

・『2nd movement』

1楽章の幻想的な終わりを受け継ぐように、こちらも幻想的な導入から始まります。まるで冬の日の早朝を連想させる凛とした佇まい。冷たい空気の中にヴァイオリン旋律が響き渡るような感じがします。その後、曲調は少し暗い雰囲気へ。近藤さんのヴァイオリンがとても美しく、フラジオレットを使用したシーンではとても繊細に。

 

・『3rd movement』

そして姿を現す3楽章。こちらは2楽章から雰囲気は一変し、8分の6拍子にて、とても印象的で記憶に残りやすいメロディが奏でられます。その印象的なメロディは1楽章と同じようにチューバやトランペット、オーボエ、フルートなど様々な楽器へ受け継がれていきます。

ソロヴァイオリンからオーケストラへとバトンを渡すシーンでは、近藤さんが一気に久石さんへとコンタクトを取り、次の瞬間にはオーケストラの音色が一気に花開きます。この辺りは終始鳥肌が立っていました。

その後超絶技巧を伴ったソロヴァイオリンのカデンツァへ。このカデンツァは圧巻と興奮の最高のパフォーマンスでした。楽曲のハイライトと超絶技巧がソロヴァイオリンから炸裂します。会場もあまりの驚きの演奏にじっと息を殺して、注視する雰囲気がありました。久石さんも、時折うんうんとうなずきながら熱い演奏を見守ります。圧巻のカデンツァののちに、再度オーケストラの音色が花開き、華やかなフィナーレへ。

20分以上はあった楽曲でしたでしょうか?体感時間は本当に一瞬でした。冬という季節にぴったりであるとともに、世の中の雰囲気には左右されない音の運動性を追求した作品でもありました。こんなに完成度が高い楽曲がいまだに音源化されていないのが残念でなりません。今回の熱演をぜひとも収録してほしい!と強く願いました。

会場も割れんばかりの拍手!久石さんと近藤さんによる何度かのカーテンコール。途中で久石さんが指揮棒を落としてしまうハプニングもありました。

 

ー休憩ー

 

Johannes Brahms『Symphony No.3 in F major Op.90』

ステージは再度舞台替えをしていて、この曲からは近藤さんがコンマスを務めます。

 

『1楽章 Allegro con brio』

長短を感じさせる和音を感じさせる印象的な始まりから、駆け降りるようなメロディが一気になだれ込みます。その後ヴァイオリンの印象的なメロディが始まり、それを次に木管がなぞっていきます。立奏の為、楽団員の皆さんは印象的なフレーズでは大きく身体を揺らしながら、表情豊かに表現していきます。久石さんのクラシック演奏では恒例となった、提示部のリピートも今回もきっちり演奏。全体のテンポ感は少し速めな感じがしました。

提示部の繰り返しに入る部分のオーケストラの迫りくるような盛り上がりには圧倒されました。リピートが終わり、新たな展開が入ってきて、盛り上がる部分ではさらに熱気を感じました。再度、冒頭の提示部が再現されたのち、微妙に変奏しながら、1楽章のフィナーレへ向かいました。

 

『2楽章 Andante』

木管の優しいメロディが印象的な緩徐楽章。クラリネットの音色が会場をゆったりと包み込み、楽団の皆さんにも笑顔が見られました。その後は少し暗さを伴った雰囲気へと展開していきますが、その後に続く弦楽のメロディの美しさに終始うっとり。対向配置の良さを存分に活かし、万華鏡を見ているような音の交差が広がります。メロディが大きくうねりを上げるシーンでは、久石さんも客席へ振り向くくらい大きな身振りを繰り広げていました。再度冒頭のクラリネットが現れて、2楽章は静かに終わります。

 

『3楽章 Poco allegretto』

憂愁を感じさせるメロディが印象的な3楽章。チェロの導入から、ヴァイオリンへとメロディを紡いでいきます。そして木管へ。主題ののちに続く、少し明るめなフレーズとの対称もとても耳に残ります。中間部をへて、冒頭のメロディをホルンにて再現。福川さんのホルンの甘く切ない音色にとても感動しました。終盤はそのメロディをヴァイオリンのオクターブにて演奏したのち、どこかに希望を見出すような雰囲気になり、静かに幕を閉じます。

 

『4楽章 Allegro-Un poco sostenuto』

前楽章とは一転、怪しげな雰囲気から始まり、力強くダイナミックな展開が始まります。その後へ続く、チェロの力強いメロディ。スピード感もあり、手に汗握るような激しい展開が続きます。FOCの得意とするロックのような激しいクラシックがこの4楽章で一気に炸裂したような感じがしました。

盛り上がりのピークを迎え、そのままフィナーレしないのが特徴的な『Symphony No.3』。弦楽によるさざ波のような音型が繰り返されるようになり、1楽章の要素が再度顔を覗かせ、1楽章冒頭の和音を奏でながら、ゆったりと楽曲が終わりました。

 

会場の拍手に包まれる中、久石さんはゆっくりと大きくうなずいた後、お辞儀をしていました。その後は、恒例の楽団メンバーへの拍手タイム。ステージにも笑顔が溢れ、至福の時間となります。

 

Encore

Johannes Brahms『Hungarian Dance No.6』

ブラームス交響曲ツィクルスでのアンコールでは恒例となった『ハンガリー舞曲』今回は6番をセレクト。おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかな雰囲気と情熱的な中間部が印象的でした。シンバルとトライアングルのパーカッションが楽曲に彩りを添えます。打楽器が入る部分は久石さんも腕を大きく振って指示を出していました。

 

その後は久石さんが何度かカーテンコールに応じ、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。楽団員がステージから去った後も、拍手が収まらず、コンマスの近藤さんが久石さんを引き連れて再登場。会場は熱気に包まれました。

今回のFOC公演はプログラム構成も素晴らしく、弦楽オーケストラ、協奏曲、交響曲とオーケストラの魅力を存分に楽しめる構成でした。スペシャルオーケストラのFOC第4回公演、熱気の中終演しました。

2022年2月14日 ふじか

 

 

 

当日会場でお会いすることができました。開演前は最近の久石譲活動について楽しく語り、終演後はもうコンサート一色、これファン交流あるあるですね。立ち話でしたしトータル短い時間ではありますが貴重なコンサート体験のひとピースです。

たぶん5分10分くらいですらすら読めてしまうと思います。そのくらいわかりやすいし楽しく文章が流れていきますね。でも、どう表現したらいいかとかどうしたらうまく伝わるかとか、音楽を言葉にすることもあってとてもとてもエネルギーを使っていただいていると思います。本当にありがとうございます。

ふじかさんが当日会場でリアルタイムに口にしていた感想のひと言ふた言が、ここにはそのまま入っていました。そう言ってたな、と思いながらあの時の光景がよみがえってきます。やっぱり直感や第一印象って大切にしたいですよね。コンサートで感じたこと、ライブ配信で感じたこと、初めて触れた感触はこれからもずっと残ります。

この新鮮さは、また「Winter Garden」がいよいよ音源化されたときに、ブラームス交響曲アルバムがリリースされたときに。僕はまたこのみずみずしいコンサート・レポートをきっと読みます。

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
ふじかさんはマイレポートが書き終わるまでほかの人のは見ません。それよくわかります(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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