Overtone.第65回 「新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 #6」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2022/04/28

4月15,16日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉」です。2020年9月から新日本フィルハーモニー交響楽団 Composer in Residence and Music Partnerに就任した久石譲は、定期演奏会・特別演奏会といろいろなコンサート共演を広げています。「クラシックへの扉」シリーズへの登場は2015年以来です。

今回ご紹介するのは、ふじかさんです。いつもありがとうございます。「展覧会の絵」は原曲となるピアノ版と編曲されたオーケストラ版と、どちらもしっかり聴いて予習していたそうです。「展覧会の絵」も「チェロ協奏曲」も、すべての作品で楽章ごとに構成曲ごとに丁寧にレポート描かれています。それはまるで、ディティールまで解像度の高い、一枚の大きな音楽会の絵を眺めているようです。どうぞお楽しみください。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 #6

[公演期間]  
2022/04/15,16

[公演回数]
2公演
東京・すみだトリフォニーホール

[編成]
指揮:久石譲
チェロ:リーウェイ・キン ◇
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

[曲目]
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番 イ短調 op.33 ◇

—-Soloist encore—-
ジョバンニ・ソッリマ:アローン (4/15,16)
バッハ:無伴奏チェロ組曲 第4番より サラバンド (4/15)
プロコフィエフ:子供のための音楽 op. 65より第10曲 行進曲 (4/16)

—-intermission—-

ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲「展覧会の絵」

—-Orchestra encore—-
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

 

 

久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会
すみだクラシックへの扉 第6回のレポートをさせて頂きます。

2022年4月16日 すみだトリフォニーホール 大ホール 14時開演

 

今回のコンサートは、久石さんの自作曲が一切無い、完全なクラシックの演奏会。近年指揮者としての活動を充実させている久石さんが、「指揮者 久石譲」としての活躍をしっかり見ることができるのもある意味貴重だと思うとともに、以前から生演奏で聴いてみたかった『組曲 展覧会の絵』がプログラムされていたのも手伝って今回のコンサートへ行くことにしました。

チケットもぎりを過ぎ、会場へ入ると、なんとなくいつもの久石さんのコンサートとは異なる雰囲気。久石さんのCD販売が無いからなのか、新日本フィルのファンのお客様が多いのか…?

着席して、ステージを見ると弦は14型の久石さん指揮での鉄板の対向配置。ステージの後ろの方に見えるパーカッションの多さや、ハープなどから近年のオーケストラ編成の印象を強く受けます。

14時過ぎに続々とステージに楽団員の方が登場。今回のコンマスはチェさん。久石さんとの共演は去年の9月以来でしょうか?チューニングののちに、久石さんが登場。いよいよコンサートが始まります。

 

 

・Claude Debussy『牧神の午後への前奏曲』

久石さんが合図をしてから最初のフルートソロの音色が流れるまで、時間としては短かったはずなのに、とても間が長く感じました。ピリッと静まった空気感のある会場に、淡くて夢幻のようなふわふわしたメロディが流れてきました。そこから入ってくるハープと金管の音色。久石さんは指揮棒を持たず、ところどころ「うん、うん」と頷きながら、ゆったりと指揮をされていました。

途中で力強いヴァイオリンのメロディが入ってくるところでは、久石さんが笑顔で1stヴァイオリンを見ながら待ち構えているような仕草を見せるシーンも。旋律が大きく動くところでは大きく身体を動かし、全体で表情豊かにこの美しい曲を表現していきました。

3月の三重公演では、ロマン派での重要な作品とさせるベルリオーズの『幻想交響曲』、そして今回は印象派での重要とされているドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』をそれぞれ今を生きる作曲家の久石さんを通して聴くことができたのはとても有意義でした。

 

演奏が終わり、一通り拍手が終わると、大きく舞台替えへ。次の『チェロ協奏曲』用へとコンパクトなオーケストラへと衣替えとともに、ソリスト用の台が用意されました。その後、久石さんとソリストのリーウェイさんが登場しました。

 

 

・Camille Saint-Saens『チェロ協奏曲第1番 イ短調 op.33』

1楽章 Allegro non Troppo

全体をダン!という大きな和音から始まった直後に、上から下へと駆け巡るようなチェロのソロがなだれ込んできます。リーウェイさんがかなり身長の高い方の為か、チェロが割と小さく見える印象でした。そのチェロから流れる音色は力強く、時には色っぽく、チェロの音域のせいか、まるで男性が歌を歌っているような雰囲気も感じられました。主旋律がフルートに変わるところでは、サッとサブメロディへ移るシーンもスマートでカッコよかったです。

 

2楽章 Allegretto con Moto

1楽章と雰囲気も一変。軽やかなで上品な3拍子の弦楽のメロディとソロチェロの音色が美しく交差していきます。中間部で現れる小さなカデンツァもちらっと超絶技巧も垣間見えて、ワクワクしました。再度主題が現れて、より華やかな雰囲気と次の楽章へ繋がるような少し暗い雰囲気も感じさせながら、3楽章へと向かいました。久石さんはあまり大きな振りをせず、優しく寄り添うような指揮をしていました。

 

3楽章 Molt Allegro

1楽章のメロディが木管で流れたのちに、ソロチェロで演奏。その後、テンポが速くなるところでは大きなうねりを感じさせるようなパワフルな演奏となりました。ですが、途中木管のフレーズが小さく美しく響くところでは、久石さんもオケ全体に抑えて!抑えて!というような指示も。終盤、盛り上がりのあるパートでは、リーウェイさんがコンマスや久石さんと随時アイコンタクトを取り、楽しそうに演奏していました。ワクワクが客席に伝わってくるようなとてもエネルギッシュな演奏!熱気は客席へと十分伝わり、演奏が終わると大きな拍手に包まれました。

 

何度かのカーテンコールのちに、ソリストアンコールへと進みます。

 

・Giovanni Sollima『Alone』

重厚な和音を奏でるともに、弦を指ではじいてピチカートのような音色も同時に出していました。冒頭が終わると、一気に速くて、心地よいビート感のある中間部へ。まるで2人組チェロユニットの2 CELLOSの演奏を聴いているかのような、緊迫感・緊張感。とてもチェロのソロだけで演奏しているとは思えないような、複雑で超絶技巧が光る1曲でした。

 

さらにもう1曲アンコールを披露してくれました!

 

・Sergei Prokofiev『こどものための音楽 Op.65-10 行進曲』(チェロ編曲 ピアティゴルスキー)

今度は雰囲気一転、軽快に大股でずんずん歩いていくような行進曲。途中で聴こえてくるドーシラソーというフレーズが耳に残ります。短い曲でしたが、遊び心のある小品に心が弾みました。

 

 

ー休憩ー

 

 

・Modest Petrovich Mussorgsky(arr.Mrurice Ravel)『組曲 展覧会の絵』

プロムナード

美しく、華やかなトランペットのソロから始まり、全体を包み込むようなホルンやチューバ等の金管の音色が絵画の旅へと誘います。

1.グノームス

雰囲気は一変、低音弦が怪しいメロディを奏でます。今回座っていた座席が1st ヴァイオリン側の前から2列目で、その後ろのコントラバスの音がザクッザクッと刻むと、その音が身体の芯まで揺れるような感じがしました。途中のパチンっという打楽器の音を出す直前には、久石さんも大きな振りを見せてくれました。最後は『DEAD組曲』の1楽章の終わりのような雰囲気で終わります。

プロムナード

続いてのプロムナード、ホルンのふくよかな音色で演奏されます。主旋律に寄り添うオーボエの音色も美しかったです。このプロムナードを演奏しているときの、フルート主席の方が笑顔で聴いていた様子がとても良かったです。

2.古城

哀愁の漂うサックスの音色が印象的な一曲。久石さんは、全体を抑えるような演奏にする時は、ソロリソロリと慎重に。メロディが動いてくると身振りをどんどん大きくしていっていました。

プロムナード

再びトランペットのメロディで再現させるプロムナードですが、チューバやコントラバスなどの低音楽器が力強い伴奏が加わります。

3.チュイルリーの庭

オーボエやフルートのいたずら心溢れる音色が響く、可愛らしい一曲。久石さんもリズミカルな可愛らしい指揮をしていました。

4.ビドロ

牛がノッシノッシと重そうに歩く様子がすぐに目に浮かぶような曲で、チューバの音色がよく響きます。しかし、全体は重たいだけではなく、抑揚も大きくオーケストラのダイナミックレンジの広さを改めて感じます。

プロムナード

いままで3度演奏されてきたプロムナードとは若干雰囲気が変わり、フルートが物悲しくテーマを奏でます。

5.卵の殻をつけた雛の踊り

こちらも『チュイルリーの庭』のように木管の音色が印象的ですが、スピード感もありスリリングな曲でもありました。

6.サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ

この曲の冒頭のチェロ主体のメロディが、久石さんの『坂の上の雲』のサウンドトラック3枚目の『孤影悄然』のような雰囲気があってお気に入りの曲です。中間部のトランペットの連符もかなり耳に残ります。

7.リモージュ・市場

雰囲気は一転、賑やかで華やかな、日常を感じさせます。こちらも久石さんの曲で例えると『二ノ国2』のサウンドトラックから『ネズミ王国の城下町』の感じがします。

8.カタコンベ

一気に重くて暗い、金管による和音が炸裂します。久石さんも深刻そうな顔で指揮していました。

死せる言葉による死者への呼びかけ

冒頭の弦のトレモロに木管のメロディが加わり、いままで4回演奏されてきた『プロムナード』よりさらに物悲しく、重たい雰囲気に。後半に入ってくるハープの音色にどこか光も感じます。

9.鶏の足の上に立つ小屋(バーバ・ヤガー)

久石さんの得意とするミニマル的なアプローチも合っていた楽曲だと思いました。全体の激しく、スピード感ある構成に吠える金管隊。かなりテンポ感も速く、キレッキレでカッコいい演奏でした。曲の最後では、久石さんも屈むような姿勢を取り、次なる楽曲へ向けてパワーを貯めている感じしました。

10.キエフの大門

そして、前曲から途切れることなく、一気に華やかな音色が会場を包み込みます。打楽器が力強く入る部分では、久石さんも左手をヒラヒラとさせてもっと!もっと!というような指示を出していました。中間部のコーラル風の部分は祈りを感じさせるような、荘厳な音色に。終盤の直前に再現される『プロムナード』のメロディが流れると、一気に鳥肌が立ちました。その後は、大音量で壮大に表現される『キエフの大門』。昨今の情勢に、希望と祈りを込めたような、エネルギッシュで叫びのような演奏に思わず目頭が熱くなりました。

 

凄まじい演奏に圧倒されたホール内からは一瞬の静寂後、割れんばかりの拍手が鳴り響きました。久石さんも満面の笑みで拍手に応えます。その後は恒例の楽団メンバー紹介。途中、トロンボーンセクションと一緒にチューバ奏者が立ってしまい、あなたはまだだよ!次だよ!次!というようなジェスチャーを送る久石さんも見ることできました。

 

Encore

・Mrurice Ravel『亡き王女のためのパヴァーヌ』

美しいホルンのソロから入る、オーケストラ版の『亡き王女のためのパヴァーヌ』久石さんは指揮棒を持たず、ゆったりと指揮をしていました。対向配置の為、1stヴァイオリンがメロディを奏でて2ndヴァイオリンがピチカートを鳴らすシーンでは、音色のメリハリがしっかり聴いていてとても楽しめました。レクイエムのようなしっとりとした演奏。最後は希望の光を感じさせるように、静かに輝くように楽曲が終わりました。

 

 

再び割れんばかりの大きな拍手。何度かのカーテンコール後、こちらも恒例となっている久石さんと弦楽の方達との腕合わせ。その後、深々とお辞儀をしてコンサートが終わりました。

1曲も久石さんの楽曲が無いのに、まるでWDOコンサートに来たような満足感でした。『展覧会の絵』は、クラシックの作品ながら、プロムナードがアレンジを施して何度も演奏されるなど、どこかサウンドトラック的な一面も感じます。さらに今回のオーケストラの編成が久石さんのオリジナル曲演奏時の編成に近いものもあり、それらからもWDOの雰囲気を感じたかもしれません。

今後のスケジュールはまだ発表されていませんが、再び久石さん×新日本フィルの定期演奏会を楽しみにしています。

2022年4月25日 ふじか

 

 

そうだそうだ、そんな感じだった。そんなこともあったかな。それは気づかなかったな。というオンパレードで一気読みしました。いつも焼き付けかたがハイスペックだなと感じます。

「展覧会の絵」で「坂の上の雲」がつながるなんて。当日お話しているときに少し話題にあがったので、帰り道にどの曲のことだろうと探したりしていました。さらに「二ノ国」か、なるほど!楽しいですね。久石譲音楽のバックボーンというか影響うけているかもしれないと感じられる。久石さんファンだからこそできるクラシック音楽の聴きかたってありますね。より楽しくなります。

コンサート終わって「よかったですねー!」「よかったですねー!」とお互い言いながら歩いている間に、すぐ隣にある駅に着いてしまいました。瞬間最大共感はあっという間でした。今回もありがごうとございました。

 

 

 

こちらは、公式リハーサル/公演風景写真の紹介もあわせて、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

公演風景(追加分)

from 新日本フィルハーモニー交響楽団公式ツイッター

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
さて、次はみなさんいよいよWDO2022ですね!!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

コメントする/To Comment