Disc. 久石譲 『Nightmare』 *Unreleased

2016年6月22日 GAME発売

 

タイトル:シノビナイトメア
ジャンル:ダンジョン探索型 大河 RPG
価格:基本無料(一部アプリ内課金あり)
プラットフォーム:iOS/Android

曲名:Nightmare

 

フルオーケストラにパーカッションを盛り込んだ壮大なメインテーマ。和の要素もありながらファンタジー要素も兼ね備えた作品になっている。変拍子による旋律と緊張感を高める展開が何度聴いても飽きさせない構成となっている。躍動感やスリリングさもありながら、ゲーム世界観の女性らしい優雅さや妖艶を表現している。

未発売楽曲であるが、下記公式サイト予告編動画にて、楽曲フルサイズ約3分を視聴可能となっている。
(2016年6月現在)

「シノビナイトメア」公式予告編動画

 

 

2018.8 追記

「ドラマCD シノビナイトメア コンプリートBOX」に楽曲収録される。

 

 

 

Disc. 航空自衛隊航空中央音楽隊 『究極の吹奏楽 ~ジブリ編 vol.2』

2016年4月20日 CD発売 POCS-1421

 

世界に発信できる高い音楽性と高品質な録音が特徴な『究極の吹奏楽シリーズ』第7作目は好評を博したジブリ編の続編。

 

 

1.ジブリ・メドレー【空編】
ハトと少年(天空の城ラピュタ)~ふたたび(千と千尋の神隠し)~旅路(風立ちぬ)~時代の風(紅の豚)~月夜の飛行(となりのトトロ)~鳥の人(風の谷のナウシカ)

2.「崖の上のポニョ」Highlights
深海牧場~ポニョの飛行~母の愛~いもうと達の活躍~母と海の讃歌~崖の上のポニョ

10.「紅の豚」Highlights
セピア色の写真~セリビア行進曲~ピッコロの女たち~遠き時代を求めて~荒野の一目惚れ~時代の風-人が人でいられた時-~Porco e Bella~Ending~

12.ジブリ・メドレー【森編】
あの夏へ(千と千尋の神隠し)~Arrietty’s Song(借りぐらしのアリエッティ)~ねこバス(となりのトトロ)~テルーの唄(ゲド戦記)~アシタカせっ記(もののけ姫)

 

 

 

1.ジブリ・メドレー【空編】
2.「崖の上のポニョ」Highlights
3.人生のメリーゴーランド (「ハウルの動く城」より)
4.「ルージュの伝言」 (「魔女の宅急便」より)
5. 「やさしさに包まれたなら」 (「魔女の宅急便」より)
6.「アシタカとサン」 (「もののけ姫」より)
7.「アシタカとせっき」 (「もののけ姫」より)
8.「ハトと少年」 (「天空の城ラピュタ」より)
9.「平成狸合戦ポンポコ」Highlights
10.「紅の豚」Highlights
11. 「風になる」 (「猫の恩返し」より)
12.ジブリ・メドレー【森編】
13.「カリオストロの城」Highlights  (Bonus Track)

Composed by:
Joe Hisaishi (01~03, 06~08, 10)
Yumi Arai (04, 05)
Yoko Ino, Kouryuu, Manto Watanobe (09)
Ayano Tsuji (11)
Joe Hisaishi , Simon Caby, Cecile Corbel, Hiroko Taniyama (12)
Yuji Ohno (13)

Arranged by:
Hideaki Miura (01, 10)
Hiroki Takahashi (02)
Masahiko Yamada [山田 雅彦] (03, 08)
Tsutomu Tajima [田嶋 勉] (04, 05, 11)
Takamasa Sakai (06, 07)
Tohru Kanayama (09)
Takashi Hoshide (12)
Naohiko Hatano [波田野 直彦] (13)

Performed by:
Japan Air Self-Defense Force Central Band

Conducted by:
Katsuo Mizushina [水科 克夫]

 

Disc. 久石譲 『三井ホーム』 *Unreleased

2016年4月16日 TVCM放送

 

三井ホーム「TOP OF DESING」
音楽:久石譲 曲名:三井ホーム

 

・「TOP OF DESIGN」 美しさが育つ家篇 (京都) 15秒
・「TOP OF DESIGN」 美しさが育つ家篇 (仙台) 15秒
・「TOP OF DESIGN」 人生を築く家篇 (15秒)
・「TOP OF DESIGN」 人生を築く家篇 (30秒)

CMは、三井ホーム公式サイト内「広告ライブラリー」にて閲覧可能
(※2016年4月現在)

三井ホーム「広告ライブラリー」

 

同ホームページにて視聴できるのは、上の4本すべてである。

また久石譲コメントも一緒に掲載されている。

「三井ホーム、およびCM制作のみなさまの厚い理解により、恐らく日本初の本格的なミニマル音楽でのCMが完成しました。アート性と高級感、それに親しみやすさが感じられるように作曲しました。楽しんで頂けると幸いです。」

(三井ホーム 広告ライブラリーより)

 

 

久石譲本人のコメントにもあるとおり、ミニマル・ミュージックによる刺激的で鮮烈な印象が残る音楽になっている。

麻衣のヴォイスと、弦楽、マリンバ、木管など小編成のアンサンブルにて、小刻みに弾けるようなアコースティック・グルーヴを堪能することができる。

CD作品でいうならば「ミニマリズム2 Minima_Rhythm 2」(2015)、さらに言うなれば2014年から新たなコンサート企画として始動した「ミュージック・フューチャー シリーズ」(毎年1回開催)。これらの活動の延長線上、はたまたその進化系として新たに生まれた久石譲の”今旬な”カタチでのミニマル・ミュージックとなっている。

上質で心地よい、ミニマル・ミュージックだからこそ、15秒や30秒ではもちろん足らず、エンドレスで聴き浸りたい音楽であり、転調やズレなど、さらなる楽想としての発展も興味深い作品である。

 

未発売曲、CD化が期待される上質な作品である。

 

 

 

2016.10追記
三井ホーム「広告ライブラリー」(上記紹介)にて、WEB限定動画が配信される。そのなかでCMでは15秒版・30秒版でしか聴くことができなかった同曲が、約1分間視聴可能となった。楽曲の展開の先が少し垣間見れる貴重な動画である。

「震度7に60回耐えた家。」研究員篇 (15秒)
「震度7に60回耐えた家。」インタビュー篇 (15秒)
「震度7に60回耐えた家。」WEB限定動画 (約2分)
菅野美穂 WEB限定インタビュー動画 (約1分)

CMテーマ音楽を約1分間視聴できた動画は、「菅野美穂 WEB限定インタビュー動画 (約1分)」である。

 

 

 

もうひとつが2016年一番新しいCM音楽として発表された『三井ホームCM音楽』。ソリッドに研ぎ澄まされたミニマル・ミュージック全開で、CM音楽におけるインパクトとしては抜群ですが、キャッチーさを求めるならば真逆な作品といえます。

最初聴いたときに「えらく(ミニマルサイドに)振り切った作品だな」とびっくりしたのを覚えています。ただ、これまた考察をもとにすると違う発見があります。マリンバ・ピアノのミニマル伴奏にコーラスが旋律として構成されたこの作品。随所にピッコロとグロッケンシュピールによる装飾が出てくると思います。そしてピッコロはとてもシャープな強く息を吹きかける奏法になっています。

…これがなかったとしたときに?

ミニマル・ミュージックの躍動感は維持されますが、一見すごく耳あたりのいいサウンドともなります。心地よいグルーヴ感と優美なコーラス・メロディ。本来ならば、これだけのミニマル音楽がテレビから流れてきただけでもひっかかりは強いですね。普段聴き慣れない音楽としてインパクト充分です。がしかし、やはりあの高音域装飾(ピッコロ・グロッケン)が、強烈すぎるアクセントになっている。あのフレースがあった時点で、久石譲の勝ちだな、と思ってしまうくらいの凄み。

従来の久石譲アンサンブル手法からだった場合、おそらくあのパートはピアノ、サックス、ハープなどの楽器で別の装飾モチーフとして奏でられていた、かもしれません。それが、今の久石譲の手にかかるとあの完成形となるわけで。ない場合、従来手法の場合、そしてお茶の間に響いた楽曲。イメージするだけでも響きの違いは雲泥の差。15秒・30秒の音楽を聴いて、久石譲という作曲家の感性と論理性をまざまざと魅せつけられた思いです。

もっとマニアックな見解をさせてください。

弦楽器や管楽器は持続音です。弾いている・吹いている間、一定の音が鳴り続けます。一方で、ピアノやマリンバ・シロフォン(木琴の種)・グロッケンシュピール(鉄琴の種)などは減衰音です。叩いたときに音が発せられそのあとは減衰していきます。

さて、ここで減衰音のグロッケンと、持続音のピッコロをブレンドして編成する。かつピッコロの奏法を息を強く吹きかける、つまりは音の立ち上がりを強くすることで、フッと息をするようにシャープになり減衰音と同じような音の減衰を期待できます。そうすることで、メロディという主旋律の邪魔をすることなく、もちろんナレーションやセリフの邪魔をすることもなく、かつ瞬間的に強烈なインパクトを印象づけることができる。ほんと久石譲という人が末恐ろしくなってくる数十秒間です。

一連のピッコロ、シロフォン、グロッケンシュピール、トライアングルという高音域楽器をブレンドした妙技は、『コントラバス協奏曲』でもいかんなく発揮されています。またこのことは、”余白のある音楽・そぎ落とした構成”と表現した同作品にもつながります。持続音を減らすことで音厚になりすぎず、減衰音と同じ効果を期待できるパーカッションをふくめ巧みにオーケストレーションしているからです。

Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2 より抜粋)

 

 

2019.1.9追記
三井ホーム「広告ライブラリー」(上記紹介)にて新しい動画公開。同じ曲が使用されている。

「TOP OF DESIGN」 人生を築く家 湖畔篇 (30秒)
「TOP OF DESIGN」 人生を築く家 湖畔篇 (15秒)

 

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『家族はつらいよ オリジナル・サウンドトラック』

2016年3月9日 CD発売 UMCK-1538

 

2016年公開 映画「家族はつらいよ」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:橋爪功 吉行和子 他

 

 

国民的映画 『男はつらいよ』から『家族はつらいよ』

「男はつらいよ」シリーズは、1969年から1995年まで計48作品にわたって公開された、国民的シリーズ映画。観客動員数はのべ8000万人以上、時代が変わっても色あせない永遠の喜劇として、現在も多くの人に愛され続けています。本作は、その「男はつらいよ」の生みの親である山田洋次監督が、新たに取り組んだ喜劇作品。日本中に笑顔と感動を届け続けた”寅さん”に通じる家族の物語が、ついに到来します!

 

映画「東京家族」(2013)のキャスト8人が再結集。「この最高のアンサンブルで、今度は現代の家族を”喜劇”で描きたい」という山田洋次監督の強い想いの下に、新たに豪華キャストも加わり、このメンバーでしか紡ぎ出せない最高の喜劇が完成。

 

 

コメント

今までコミカルな場面の音楽を作曲することは多々ありましたが、本格的な喜劇は初めてでした。喜劇映画の音楽は、どうしても伴奏音楽になりがちです。テーマ曲やその他の旋律がしっかりと劇に絡み、単なる伴奏ではなくきちんと映画と融合する音楽を目指しました。ホンキートンク・ピアノ(※)を使ったところ、山田監督も気に入られ、結果、その音が本作の色にもなったのがとても嬉しかったです。喜劇というのは、ある意味、悲劇の裏返しだと思います。ドタバタの中でも人間の哀しみが滲み出るような、俯瞰で見る神のような視点も必要。その点でもうまくいったと思います。

※1930~40年代頃のジャズの前身の頃によく使われ、少しチューニングが狂ったような調子っぱずれの音色を出す。

(コメント ~映画「家族はつらいよ」劇場用パンフレット内 久石譲コメントより)

 

家族はつらいよ パンフレット

(パンフレット)

 

 

山田洋次×久石譲のタッグは、「東京家族」(2013)、「小さいおうち」(2014)に続いての3作目。山田洋次監督の20年ぶりの喜劇に対して、久石譲にとっても本格的な喜劇映画の音楽担当は初となる。

楽器編成のクレジットにもあるとおり、ホンキートンク・ピアノやパーカッションを効果的に使用した、小編成かつ短いモチーフの楽曲構成となっている。

 

 

補足

豪華俳優陣は『東京家族』(2013)と同キャストの再集結であり、久石譲の音楽担当も『東京家族』『小さいおうち』に続いて3作目となる。なお撮影は2014年9月から11月に行われている。また第28回東京国際映画祭(2015年10月開催)にて上映されている。

このことからも久石譲音楽制作は2015年前半もしくは2014年にはすでに完成していることになる。いよいよそれを聴くことができるのが2016年3月ということである。

 

 

家族はつらいよ オリジナル・サウンドトラック 久石譲

1. はじまり はじまり
2. 家族はつらいよ オープニング
3. なんだこれ
4. 憲子さん
5. 八つ当たり
6. ご帰宅
7. ラブ・ストーリー
8. ヒガイシャ
9. 夫婦になりたい
10. 探偵事務所
11. 心配
12. こりゃどうも
13. 哀れな父さん
14. 潜入調査
15. ま・さ・かの再会
16. 級友
17. 本気なのよ
18. やけ酒
19. 家族会議
20. 富子の告白
21. サラリーマン
22. 髪結いの亭主
23. これが目に入らぬか!
24. ためらい
25. もしものとき
26. 孫
27. 「ハーイ」
28. 空っぽの部屋
29. 義父へ
30. 周造の告白
31. 家族はつらいよ

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute & Piccolo:Yuna Okubo
Clarinet:Masashi Togame
Bassoon:Mina Higashi
Trumpet:Sho Okumura
Trombone:Kanade Shishiuchi
Percussion:Marie Oishi
Guitar:Akira Okubo
Bass & Contrabass:Jun Saito
Drums:Yuichi Togashiki
Piano & Honky Tonk Piano:Febian Reza Pane
Strings:Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

 

Disc. 久石譲 『Orbis for Chorus, Organ and Orchestra』 *Unreleased

2015年12月11日 世界初演

 

Orbis for Chorus, Organ and Orchestra 
I. Orbis ~環 / II. Dum fāta sinunt ~運命が許す間は / III. Mundus et Victoria ~世界と勝利
初演:2015年12月11日 東京芸術劇場
演奏:久石譲(指揮)、読売日本交響楽団

 

 

「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」(2007)

/////////////////////////////////////
「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
曲名はラテン語で”環”や”繋がり”を意味します。2007年の「サントリー1万人の第九」のために作曲した序曲で、サントリーホールのパイプオルガンと大阪城ホールを二元中継で”繋ぐ”という発想から生まれました。祝典序曲的な華やかな性格と、水面に落ちた水滴が波紋の”環”を広げていくようなイメージを意識しながら作曲しています。歌詞に関しては、ベートーヴェンの《第九》と同じように、いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります。言葉として選んだ「レティーシア/歓喜」や「パラディウス/天国」といったラテン語は、結果的にベートーヴェンが《第九》のために選んだ歌詞と近い内容になっていますね。作曲の発想としては、音楽をフレーズごとに組み立てていくのではなく、拍が1拍ずつズレていくミニマル・ミュージックの手法を用いているので、演奏が大変難しい作品です。

「Orbis」ラテン語のキーワード

・Orbis = 環 ・Laetitia = 喜び ・Anima = 魂 ・Sonus, Sonitus =音 ・Paradisus = 天国
・Jubilatio = 歓喜 ・Sol = 太陽 ・Rosa = 薔薇 ・Aqua = 水 ・Caritas, Fraternitatis = 兄弟愛
・Mundus = 世界 ・Victoria = 勝利 ・Amicus = 友人

Blog. 「久石譲 第九スペシャル」(2013) コンサート・プログラムより
/////////////////////////////////////

 

 

CD作品としては「メロディフォニー」(2010)にてロンドン交響楽団演奏でレコーディングされている。

 

久石譲 『メロディフォニー』

 

 

 

「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」(2015)

Orbis for Chorus, Organ and Orchestra
オルビス ~混声合唱、オルガン、オーケストラのための
I. Orbis ~環
II. Dum fata sinunt ~運命が許す間は
III. Mundus et Victoria ~世界と勝利

作詞:久石譲

 

/////////////////////////////////////
新版「Orbis」について
2007年に「サントリー1万人の第九」のための序曲として委嘱されて作った「Orbis」は、ラテン語で「環」や「つながり」を意味しています。約10分の長さですが、11/8拍子の速いパートもあり、難易度はかなり高いものがあります。ですが演奏の度にもっと長く聴きたいという要望もあり、僕も内容を充実させたいという思いがあったので、今回全3楽章、約25分の作品として仕上げました。

しかし、8年前の楽曲と対になる曲を今作るという作業は難航しました。当然ですが、8年前の自分と今の自分は違う、作曲の方法も違っています。万物流転です。けれども元「Orbis」があるので、それと大幅にスタイルが違う方法をとるわけにはいかない。それではまとまりがなくなる。

あれこれ思い倦ねていたある日の昼下がり、ニュースでフランスのテロ事件を知りました。絶望的な気持ち、「世界はどこに行くのだろうか?」と考えながら仕事場に入ったのですが、その日の夜、第2楽章は、ほぼ完成してしまった。たった数時間です。その後、ラテン語の事諺(ことわざ)で「運命が許す間は(あなたたちは)幸せに生きるがよい。(私たちは)生きているあいだ、生きようではないか」という言葉に出会い、この楽曲が成立したことを確信しました。だから第2楽章のタイトルは日本語で「運命が許す間は」にしたわけです。何故こんな悲惨な事件をきっかけに曲を書いたのか? このことは養老孟司先生と僕の対談本『耳で考える』の中で、先生が「インテンショナリティ=志向性」とはっきり語っている。つまり外部からの情報が言語化され脳を刺激するとそれが運動(作曲)という反射に直結した。ちょっと難しいですが、詳しく知りたい方は本を読んでください。

それにしても不思議なものです。楽しいことや幸せを感じたときに曲を書いた記憶がありません。おそらく自分が満ち足りてしまったら、曲を書いて何かを訴える必要がなくなるのかもしれません。

第3楽章は「Orbis」のあとに作った「Prime of Youth」をベースに合唱を加えて全面的に改作しました。この楽曲も11/8拍子です。

ベートーヴェンの「第九」と一緒に演奏することは、とても畏れ多いことなのですが、作曲家として皆さんに聴いていただけることを、とても楽しみにしています。

平成27年12月6日 久石譲

(「久石譲 第九スペシャル 2015」コンサートパンフレットより)
/////////////////////////////////////

 

※同パンフレットには、久石譲作詞による全3楽章の歌詞も掲載されている。ラテン語による原詞と日本語訳詞が併記されている。現時点(2015.12現在)での掲載は差し控えている。

 

 

ここからは初演感想・補足などを含むレビューである。

第1楽章、オリジナル版「Orbis」(2007)がこの楽章にあたる。新版「Orbis」(2015)には、細かな手直しは施されているが、楽曲構成は従来を継承している。一聴してわかるのはテンポが遅くなっていること、チューブラーベルが編成に加えられたことだろう。祝典序曲としての単楽曲ではなくなり、ファンファーレのように躍動感で一気に駆け抜けるところから、楽章のはじまりとしての役割に変化した。全3楽章という作品構成ゆえと、第2・第3楽章までつづくコーラスの役割に従来以上の重きをおいた結果、テンポをおさえるとこになったのではないか。実際、この第1楽章で散り放たれたキーワードたちが、後の楽章において結晶化してつながりをもってくる。そう捉えると、ここで言葉をしっかりと響かせることは必然性を帯びてくる。

第2楽章、通奏低音のようにオルガンが楽章を通してゆっくりとしたミニマルなアルペジオ旋律を奏でる。同じ動きで弦楽オーケストラが織り重なる。そこにコーラスがさとすように語りかけてくる。あえてキャッチーなメロディとしての旋律を持たせていない。混声合唱のハーモニーが厚く深く包みこむ内なる楽章。チューブラーベルの鐘の響きは静かな余韻と残響をもたらしている。

第3楽章、幻の名曲「Prime of Youth」(2010・Unreleased)が「Orbis」の楽章のひとつとして組み込まれたことが衝撃だった。強烈なミニマル・モチーフ、リズム動機を備えていた同楽曲が、コーラスを迎え後ろにひかえ従(対旋律)にまわったのである。もし「Prime of Youth」という作品をコンサートで聴いたことのある人がいるならば(おそらくほとんどいない、2010年東京・大阪2公演のみである)、これはまさにカオスである。オリジナル版が持つファンファーレのように高らかに鳴り響く冒頭から、怒涛のようにシンフォニック・ミニマルが押し寄せてくる。コーラスを配置したことでさらに魂の叫びのごとく巨大な渦をまく。中間部では第1楽章Orbisの旋律が顔をのぞかせる。時を越えてPrimeとOrbisが融合した瞬間だった。かくもここまで勇壮で威厳に満ちた久石譲オリジナル・ソロ作品があったであろうか。クライマックスのかき鳴らす弦、金管、木管は圧巻であり、高揚感を最高潮にコーラスとともに高く高く昇っていく。おさまりきれない、なにか巨大なものがその姿を現した、そんな衝撃的な閃光を象徴する楽章となったことは確かである。

歌詞について、「いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります」(元「Oribis」および新版 第1楽章) この久石譲の言葉を借りるならば、新版「Orbis」第2楽章・第3楽章は明らかに異なる。ひとかたまりのセンテンス、つまり言葉に意味をもたせたのである。これは興味深い。あえて自らの作家性として作品にメッセージ性を持たせない氏が、ここでは発声による言葉の響きから、歌詞による言葉の想いを届ける手法で新たな楽章を書き下ろした。同時にこのことは、コーラスを楽器の1パートに据えるところから一気に飛躍させたことになる。これをもって管弦楽と声楽は少なくとも対等、5:5の比重を分け合うことになったのである。

 

総じて、初演一聴だけでは語ることのできない拡がりと深さがこの作品にはある。中途半端な断片的感想は未聴者に余計な先入観を与えかねず、一聴のみで作品を掌握したように語ることは作家への冒涜にもつながりかねない。それでもあえて書き記したのには理由がある。

この作品は大傑作である。久石譲が芸術性を追求した作品群にはこれまで「The End of the World」「Sinfonia」など数多く存在する。楽章構成とミニマル色を強く打ち出すという点でも共通点はある。だがしかし、「新版Orbis」はその次元を超えた。延長線上、集大成、結晶化、新境地、さまざまな言い回しがありもちろんそういった意味合いも持っている。それらをおさえてあえて言葉を選ぶならば、「そこは別世界・別次元だった」。

ひとつだけ断言できることがある。ここに「ジブリ音楽:久石譲」の代名詞は必要ない。この作品を聴いてジブリのような映像やイメージが浮かぶというなら、それはまやかしである。一線を画して聴衆は対峙しなければいけない、無心で。そうして初めて出逢えるのは、心に入ってくる音楽、魂に響く音楽、本能に直接訴えかけてくる音楽、である。なにが言いたいのか。もしかしたら遠い未来の人たちが久石譲を語るとき、真っ先にジブリ音楽でもないCM音楽でもない、「Orbis」が代名詞となっているかもしれない。

 

 

万全を期ししたレコーディング、作曲家の意思を介したトラックダウンが行われた完成版を聴く日までは、この作品の真髄はわからないだろう。混声合唱、オルガンとオーケストラ、三位一体となった”環”がその巨大な姿を現す日を待つ。今初演において未完、まだ発展や進化の余地があるのかもしれず、完全版としてのCDパッケージ化は時間がかかるのかもしれない。ただ待つのみである。

もしも叶うとするならば、未完でもいい、その時にふれた「Orbis」をかたちに残してもいいではないか。「Orbis」、「新版Orbis」、新たな新版や改訂版が連なってもいい。そもそも作品自体が暗示している。”環”はどんどん”つながり”、魂をもって創造をつづける。そこに終わりはない、永遠。

 

息をあげて主観でレビューを書くことに冷ややかな反応があることは覚悟している。だからこそ、1日でも早く、ひとりでも多くの人に「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」新版を聴いてもらえる日が来ることを切に願う。そうして少しでも共感してもらえたり、わかち合えるなにかが生まれることこそ、聴衆たちにもたらされる喜びである。

 

 

2018.12 追記

オリジナル版「Orbis」だが久しぶりのプログラムとなった感想を。

 

 

Disc. V.A. 『スタジオジブリの歌 増補盤』

2015年11月25日 CD発売 TKCA-10171

 

スタジオジブリ設立30周年記念!
これ一枚でスタジオジブリの全てが分かる!

スタジオジブリ設立から30年を記念して、
ジブリ映画の楽曲を網羅した究極のアニバーサリー盤が登場!

2008年リリース、「崖の上のポニョ」までのスタジオジブリ代表作の主題歌・挿入歌を網羅したオムニバス「スタジオジブリの歌」。このアルバムに「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコ坂から」「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」の5作品を追加した、ファンには嬉しいアニバーサリー盤が高音質のHQCDとして登場。全ての世代に愛されるスタジオジブリの永久保存版として一家に一枚。

全楽曲同内容のオルゴール盤『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤-』も同時発売された。

 

早期購入特典:スタジオジブリ特製ポスター (全作品を1枚ポスターとして特製)

スタジオジブリの歌 特典 1

 

早期同時購入特典:スタジオジブリ復刻チラシ21枚セット(全作品劇場公開時)
(『スタジオジブリの歌-増補盤-』+『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤』同時購入)

24作品中「On Your Mark」のチラシは制作されておらず、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」、「猫の恩返し」と「ギブリーズ episode2」 は公開時にそれぞれ2本立てだったため2作を1枚で制作のため、21枚セットとなっている。

スタジオジブリの歌 特典 2

 

 

 

 

 

 

スタジオジブリの歌 増補版

[DISC.1]
01. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ) 安田成美
02. 君をのせて(天空の城ラピュタ) 井上あずみ
03. さんぽ(となりのトトロ) 井上あずみ
04. となりのトトロ(となりのトトロ) 井上あずみ
05. はにゅうの宿(火垂るの墓) アメリータ・ガリ=クルチ
06. ルージュの伝言(魔女の宅急便) 荒井由実
07. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便) 荒井由実
08. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ) 都はるみ
09. さくらんぼの実る頃(紅の豚) 加藤登紀子
10. 時には昔の話を(紅の豚) 加藤登紀子
11. 海になれたら(海がきこえる) 坂本洋子
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
14. カントリー・ロード(耳をすませば) 本名陽子
15. On Your Mark (On Your Mark) CHAGE and ASKA
16. もののけ姫(もののけ姫) 米良美一
17. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョとなりの山田くん)山田家の人々ほか
18. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョとなりの山田くん) 矢野顕子

[DISC.2]
01. いつも何度でも(千と千尋の神隠し) 木村弓
02. 風になる(猫の恩返し) つじあやの
03. No.Woman, No Cry (ギブリーズepisode2) Tina
04. 世界の約束(ハウルの動く城) 倍賞千恵子
05. テルーの唄(ゲド戦記) 手嶌葵
06. 時の歌(ゲド戦記) 手嶌葵
07. 海のおかあさん(崖の上のポニョ) 林昌子
08. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ) 藤岡藤巻と大橋のぞみ
09. The Neglected Garden [荒れた庭](借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
10. Arrietty’s Song (借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
11. 夜明け~朝ごはんの歌(コクリコ坂から) 手嶌葵
12. 上を向いて歩こう(コクリコ坂から) 坂本九
13. さよならの夏~コクリコ坂から~ (コクリコ坂から) 手嶌葵
14. ひこうき雲(風立ちぬ) 荒井由実
15. いのちの記憶(かぐや姫の物語) 二階堂和美
16. わらべ唄(かぐや姫の物語)
17. 天女の歌(かぐや姫の物語)
18. Fine On The Outside (思い出のマーニー) プリシラ・アーン

HQCDリマスター音源

全56ページオールカラーブックレットつき
<ブックレット内容>全映画の●作品データ●公開当時ポスター絵柄●全曲歌詞

 

Disc. V.A. 『スタジオジブリの歌オルゴール 増補盤』

2015年11月25日 CD発売 TKCA-74303

 

スタジオジブリ設立30年を記念したアニバーサリー盤が登場。誰もが知ってる、口ずさめるスタジオジブリの数々の名曲を癒しのオルゴールの音色で。

2008年発売『スタジオジブリの歌 オルゴール』に、『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『思い出のマーニー』の5作品を追加収録。

全楽曲同内容のオリジナル歌唱盤『スタジオジブリの歌 -増補盤-』も同時発売された。

 

早期購入特典:スタジオジブリ特製ポスター (全作品を1枚ポスターとして特製)

スタジオジブリの歌 特典 1

 

早期同時購入特典:スタジオジブリ復刻チラシ21枚セット(全作品劇場公開時)
(『スタジオジブリの歌-増補盤-』+『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤』同時購入)

24作品中「On Your Mark」のチラシは制作されておらず、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」、「猫の恩返し」と「ギブリーズ episode2」 は公開時にそれぞれ2本立てだったため2作を1枚で制作のため、21枚セットとなっている。

スタジオジブリの歌 特典 2

 

 

スタジオジブリの歌 オルゴール 増補版

[DISC.1]
01. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ)
02. 君をのせて(天空の城ラピュタ)
03. さんぽ(となりのトトロ)
04. となりのトトロ(となりのトトロ)
05. はにゅうの宿(火垂るの墓)
06. ルージュの伝言(魔女の宅急便)
07. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便)
08. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ)
09. さくらんぼの実る頃(紅の豚)
10. 時には昔の話を(紅の豚)
11. 海になれたら(海がきこえる)
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ)
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ)
14. カントリー・ロード(耳をすませば)
15. On Your Mark (On Your Mark)
16. もののけ姫(もののけ姫)
17. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョとなりの山田くん)
18. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョとなりの山田くん)

[DISC.2]
01. いつも何度でも(千と千尋の紙隠し)
02. 風になる(猫の恩返し)
03. No.Woman, No Cry (ギブリーズepisode2)
04. 世界の約束(ハウルの動く城)
05. テルーの唄(ゲド戦記)
06. 時の歌(ゲド戦記)
07. 海のおかあさん(崖の上のポニョ)
08. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ)
09. The Neglected Garden [荒れた庭](借りぐらしのアリエッティ)
10. Arrietty’s Song (借りぐらしのアリエッティ)
11. 夜明け~朝ごはんの歌(コクリコ坂から)
12. 上を向いて歩こう(コクリコ坂から)
13. さよならの夏~コクリコ坂から~ (コクリコ坂から)
14. ひこうき雲(風立ちぬ)
15. いのちの記憶(かぐや姫の物語)
16. わらべ唄(かぐや姫の物語)
17. 天女の歌(かぐや姫の物語)
18. Fine On The Outside (思い出のマーニー)

全56ページオールカラーブックレットつき

 

Disc. 久石譲 『栃木市民の歌 -明日(あす)への希望-』 *Unreleased

2015年11月13日 発表

 

市歌「栃木市民の歌 ~明日(あす)への希望~」
作曲:久石譲 作詞:麻衣

 

栃木市市制5周年記念式典にて発表。麻衣の歌唱により初披露、小学生との合唱も披露された。

 

麻衣は、太平山を何度も訪れたことがあったという。市歌の制作が決まってからはさらに構想を練るため、渡良瀬遊水地や市中心部の巴波川など市を3度訪問。「父とたくさん話し合い、栃木の人たちの地元への思いを表現した」と語る。

市長は市歌について「地元を離れた人の郷愁を誘う曲になるとうれしい」と期待を寄せている。

 

市歌はCDを市図書館などで貸し出すほか、市ホームページで試聴もできる。
https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/8/121.html

 

栃木市ホームページによって視聴・ダウンロードできるのは下記4項目である。

  • 栃木市民の歌~明日への希望~(歌:麻衣)
  • 栃木市民の歌~明日への希望~(ピアノ伴奏)
  • 譜面(メロディ譜)
  • 譜面(ピアノ伴奏)
  • 譜面(混声四部合唱)
  • 歌詞カード

 

 

老若男女が歌えるシンプルで清らかな歌曲である。

楽譜にも「Giocoso」と明記されているが、《陽気に、楽しく》という音楽用語であり、市民みんなで楽しく歌いあってほしいという表れであろう。

また珍しい点といえば、シンプルな旋律ながら付点8分音符が多く見られ、このことがリズミカルで快活な歌曲/合唱曲への一役を担っているといえる。(8分音符の連続の場合”タタタタ”となり、付点8分音符の連続の場合は”タータタータッ”となる)

これから先市民の歌として愛されるなかで、同市で久石譲コンサートなどが企画された際には、オーケストラと合唱での共演などの可能性もあるかもしれない。

 

 

 

2018.3 追記

 

 

 

栃木市

 

栃木市民の歌 アスへの希望 ジャケット 2

 

Disc. 久石譲 『東北電力』 *Unreleased

2015年10月29日 TVCM放送(東北6県+新潟県)

 

東北電力企業広告「より、そう、ちから。」
音楽:久石譲 曲名:東北電力(仮)*
*JASRAC登録名

 

CMは、東北電力「CMギャラリー」でも閲覧可能。
(※2015年10月現在)

東北電力 | CMギャラリー

同ホームページにて視聴できるのは、
・CM本編(30秒)
・メイキング映像(2分30秒)

なおメイキング映像では本楽曲のフル・バージョンを聴くことができる。

 

 

小編成オーケストラで構成された楽曲は、木管楽器が旋律を奏で、弦楽器がリズミカルに刻む、清潔感のある明るい曲調である。

メイキング映像でのフル・バージョンでは、さらにその全貌をうかがうことができる。シンプルなメロディですぐに覚えて口ずさんでしまえそうな魅力はさすが匠の技である。さらに、その裏では緻密なオーケストレーションによって管弦楽が構成されており、メロディも木管楽器、弦楽器、金管楽器へと奏で継がれていく。

同年手がけた『みずほフィナンシャルグループ みずほの丘』CM音楽にも通じる気品のある作品である。

曲名不明、未発売曲、CD作品化が期待される上質な作品である。

 

 

2017.1 追記

2017年1月4日よりニュー・ヴァージョンO.A開始。ピアノを基調としたきれいな調べ。

「よりそう地域とともに」篇 30秒

【それ以前のCM一覧】
「スローガン宣言」篇 30秒
「新料金プランはじまりました」篇 30秒
「よりそう松山さん(料金プラン)」篇 30秒

*上記3本CM音楽はオリジナル版

東北電力 | CMギャラリー にて視聴可能 (※2017.1現在)
https://www.tohoku-epco.co.jp/brand/#cm-gallery

 

 

東北電力 久石譲

東北電力 ロゴ

 

Disc. 久石譲 『Untitled Music』 *Unreleased

2015年10月4日 TV初演

 

曲名:「Untitled Music」
作曲:久石譲
指揮:久石譲
ヴァイオリン:五嶋龍
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

 

 

世界一長寿のクラシック音楽番組『題名のない音楽会』(テレビ朝日系)。2015年秋、若き天才ヴァイオリニスト・五嶋龍さんを司会に迎え大胆リニューアルした。それにともない新テーマ曲「Untitled Music」を久石譲が書き下ろしている。

7月15日東京オペラシティでの公開収録にて、新司会者の五嶋龍による「題名のない音楽会」の初公開収録が行われ、作曲者である久石譲自らが指揮し日本フィルハーモニー交響楽団にて演奏された。記念すべきリニューアル第1回目(10月4日)にて放送。

番組内インタビューにて久石譲は、「伝統のあるクラシックの番組として、一番新しい才能の五嶋龍くんの強力な個性と、そのふたつを念頭において一生懸命書きました。」とコメントしている。

また演奏中のテロップ表示にて、【曲名は番組名から「題名のない音楽」。音楽会に向かうワクワク感を表現。】と紹介されている。

 

 

冒頭から華やかなオーケストラ・サウンドにて幕をあけ、ヴァイオリンの音色が心躍るように流れていく。クラシック音楽番組にふさわしい気品のある凛とした構成に、ヴァイオリンもバリエーションある奏法を駆使し、表情豊かな音色と響きで魅せる。

久石譲のミニマル・ミュージックをベースとした芸術性と、エンターテイメントで培われた大衆性、その両極性を凝縮させたような結晶化された作品である。近年の指揮活動によってさらに磨きかかったオーケストレーションと構成力によって、ヴァイオリンをいかに際立たせるか、そしてヴァイオリンという楽器の可能性を最大限に追求かつ表現した楽曲となっている。

高音域楽器のピッコロ、グロッケンシュピール、トライアングルなどを巧みにブレンドすることにより、キラキラと輝いた印象を受ける。高音域楽器の対比として、金管楽器をファンファーレ的に配置することで、格調高い華やかさがあり、ヴァイオリンの音域をとてもうまく浮き立たせている。と、個人的には感じます。また緻密でありながら余白のある音楽、主役を際立たせる巧みなオーケストレーションである。

いつもとは違うちょっとフォーマルな音楽会。いつもとは違うちょっとオシャレもして、今まで聴いたことがない音楽との出会いと体験に胸を踊らせて会場へと向かう。そんな心持ちを表現したような作品になっている。

テーマ曲としては約3分半の小品として完成されているが、ここからさらにヴァイオリン・コンチェルトとして発展させていってもおもしろそうな、そんな可能性を秘めた作品である。

 

番組オープニングでは、「Untitled Music」オープニング・パートが、番組エンディングでは同楽曲エンディング・パートがそれぞれ使用されている。これから番組の案内役として浸透していき、TVの向こう側の日常を華やかにしてくれるだろう。

披露された「Untitle Music」が久石譲コンサートで聴ける日はくるのか、久石譲 × 五嶋龍という夢のコラボレーションがCD化される日はくるのか、時間とともにこれからさらなる変化と進化を遂げていくであろうこの作品を、楽しみにその成長を見ていきたい。

 

 

2015.12 追記

久石:
「年によって比重が変わります。今年はどちらかというと、自分の作品が多いですね。でも、CMやゲーム音楽も作っていますね。あとは五嶋龍君が司会になった『題名のない音楽会』の新テーマ曲も書かせてもらいました。この「Untitled Music」という曲は自分でもすごく気に入っています。テーマ曲というだけでなく、作品としても聴いていただけると思うのですが、リズムが相当難しくて、絶対に自分では振りたくないなぁ(笑)と思ったくらい(実際は初回放送時に五嶋と共演)。でも、あの曲を書いたことで一つ吹っ切れたところがありました。」

Blog. 「月刊ぴあの 2015年12月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

2016.1 追記

2016年1月24日(日) 9:00-9:30 テレビ朝日系
「題名のない音楽会 -五嶋龍の音楽会-」

2015年10月番組リニューアル第1回にて発表された久石譲作曲「Untitle Music」も再びフルサイズにて放送される。

 

[五嶋龍 番組内インタビュー]

「(久石譲が)現代音楽というレッテルを貼って欲しくない、枠に入れて欲しくないとおっしゃっていた。リズムとハーモニー、そして音の並び方というのが非常にエッジー(流行の最先端)な音楽。前に進むような、音楽を過去から未来へ押していくようなイメージだと思います。」

 

[五嶋龍が語る「Untitled Music」 (演奏中画面テロップ表示)]

「冒頭からリズムが小節ごとに変わり、色々な進化を広げていくのがこの曲の特徴」

「『Untitled Music』とは『題名のない音楽』。これは無限の可能性があるというイメージにピッタリ」

「今 我々が新しい流行や新しい音楽を作っていると実感させてくれる楽曲」

「パターン化された音を繰り返す「ミニマルミュージック」も取り入れている」

 

題名のない音楽会 untitled music

 

 

2016.3 追記

2016年3月開催「久石譲&五嶋龍 シンフォニー・コンサート in 北京 / 上海」コンサート・ツアーにて、久石譲指揮、五嶋龍Vnによる「Untitled Music」が、中国にて5公演披露されている。

 

 

2016.6 追記

2016年6月5日TV番組「題名のない音楽会」にて、久石譲指揮、五嶋龍Vn、新日本フィルハーモニー交響楽団演奏にて、披露されている。リニューアル初回時の東京フィルハーモニー管弦楽団とはまた趣が異なり、ダイナミックで抑揚豊かな演奏となっている。「題名のない音楽会 久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち 前編/後編」というテーマで、2週連続でプログラムされた後編で披露されている。公開収録は4月25日。公開収録時には「Untitled Music」を録り直し、1回目の演奏に久石譲・五嶋龍のいずれかが満足できなかったのか、演奏後の短い会話を経て、その場ですぐに2回目の演奏となった。

 

(演奏中テロップ表示)

「ミニマルミュージックをヴァイオリン協奏曲のスタイルで表現した曲。」

 

 

2017.4 追記

五嶋龍から新司会者交代にともない、番組テーマ曲「Untitled Music」も3月をもって終了。今後は久石譲作品として発展していくのか、コンサートでプログラムされる機会が訪れるのか、五嶋龍との日本公演は実現するのか、いろいろな楽しみと可能性を秘めた作品であることに変わりはない。

 

 

題名のない音楽会 TOP