Disc. 福田進一×荘村清志 『DUO』

2015年6月24日 CD発売 COCQ-85265

 

久石譲が2012年「第7回 Hakuji ギターフェスタ」のために書き下ろした、ギターデュオのための委嘱作品『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』を初CD化。今年2015年「第10回 Hakuji ギターフェスタ」でも再演予定で、もちろんオリジナル・プレーヤーである2大ギタリストによる録音。

 

 

あたたかな円熟のアンサンブル、自在の境地が生み出す「大人の音楽」!

ギター界を牽引してきた第一人者による珠玉の共演アルバム誕生です。演奏のスタイルも奏でる音色も、それぞれに際立つ個性を持つ二人が、雄弁な自己主張を刻みながら、その個性を競い合うのではなく、互いをリスペクトし引き立て合う演奏は音楽への真摯な姿勢とギターへの愛に満ち溢れています。自在の境地から生み出された円熟のアンサンブルは、まさに「大人の音楽」というに相応しいもので、聴き手の心に深く染み入る、滋味溢れる名演と言えます。二人が共同プロデューサーを努めるHakujuギター・フェスタの第10回を記念したアルバムです。

 

寄稿

音楽を聴いて、演奏家の”人生”に思いを馳せるというのは、些か野暮な話なのかもしれない。しかし、本作《DUO》には、なにかそうした類の感慨を抱かせずにはいない、格別の味わいがある。日本のギター界を、それぞれに違ったかたちで牽引してきた荘村清志、福田進一両氏。その共演は、ギターファンのみならず、このせわしない世の中で、決して消費されることのない豊かな才能に憧れるすべての人々を、束の間、夢見心地にさせることだろう。

音楽そのものであると同時に、音楽についての、言葉を超えた対話。お馴染みの〈ニュー・シネマ・パラダイス〉に始まり、〈スペイン舞曲〉、〈カヴァティーナ〉と、ゆったりとした雰囲気で始まる前半の、そこばくの慎みが心地良い。そこから、次第にエモーショナルな部分に触れていって、〈エディット・ピアフを讃えて〉のような、リリカルでチャーミングな演奏に至る。終盤の三曲の委嘱作品は、さすがの聴き応えで、思わず身を乗り出し、息を呑む。二人の演奏家としての歩みに思いを馳せ、その音の説得力に打たれ、最後は〈星に願いを〉が、静かな挨拶のように、名残を惜しむ私たちを、元の日常世界へとそっと見送ってくれる。

この楽曲の多彩さにして、なんという構成の妙だろう!同時代に、この美しい共演を体験できる私たちは、幸福な音楽ファンだ。

平野啓一郎(小説家)

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

名匠同士、妙味尽きぬ音の対話
話題のギターデュオ、待望のレコーディング

荘村清志と福田進一。共に日本のギター演奏界を代表する2人の名匠が、腕を組んでデュオを聴かせる-なんとも素晴らしい企画だが、実はこの「名匠デュオ」は、もはや10年来、ギター・ファンの心を惹きつけ、満足を与えつづけてきた歴史を持っている。荘村と福田が、株式会社白寿生科学研究所の運営するHakuji Hallの全面的援助を受け、同ホールを舞台に、夏の「ギター・フェスタ」を発足させたのは2006年。これは、かねがね声望高く豊かな人脈を持つ両名匠が、内外から実力者アーティスト(多くはギタリストだが他ジャンルの人びとも)を招いて催す通例3日間の演奏会シリーズだが、その中で、両主宰者によるスーパー・デュオは、ひとつの呼び物であってきたのだ。この2015年、「ギター・フェスタ」が10周年を迎えるに当たり、それを記念するためにも2人のデュオを本格的なCDとして残したい、ということになったのは、当然の成行きではあるものの、極めて喜ばしいことである。レパートリーは、これまでこのデュオが手がけてきた曲目、あるいはここに新しく取り組んだ曲目、いずれにしてもたいへん楽しめる高度な楽曲が並んでいるが、とりわけ注目すべきは、この「フェスタ」から、著名作曲家に特別に委嘱されたオリジナル・ギター・デュオ曲が3篇ほど含まれたことである。「フェスタ」の、国際的にも注目される存在意義を、これらの価値高い委嘱作は、如実に証明すると言えよう。

このたびの録音は、往時の「フェスタ」における録音を再使用するようなことはなく、すべて新規に行われた。それに際しては、このたびもHakuji Hall側の快い協力があり、演奏者たちは、ギターのためには理想的なものである同ホールの個性的でデリケートな音響効果を心ゆくまで活用することができた。演奏者たちは、これに関し、同ホールへの深い感謝の念を表明している。

福田進一の述懐によると、このデュオは「荘村さんと僕という、生い立ちも違えば留学先(スペインとフランス)の音楽的・文化的環境も違い、したがっていわゆる芸風も、ふだんの活動状況も異なっている2人が、両者の個性を互いに生かしたまま、歩み寄って行なった共演」であるというところにユニークな意義を持つ。芸風・音楽性の類似、テクニック上の共通性を基盤とする一般の常設デュオとは、ひとつ別な演奏がここには誕生しており、そこにユニークな価値が生じているとは、確かに言えよう。

いずれにせよ、この非凡なデュオが生み出す奏楽としての奥行き、味わい深さは尋常ではない。名手同士の顔合わせという話題性には終らず、演奏芸術というものの果てしない妙味を満喫させる、これはまたとなく貴重なレコーディングである。

濱田滋郎

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
2012年度の委嘱は、日本の作曲家に対して行われた。「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」ほか、数多くの映画音楽を手がけて知らぬ者もない久石譲(1950-)である。彼はまた「ミニマル・ミュージック」の手法を用いても日本の第一人者と呼ばれる作曲家で、この委嘱作をも、ミニマル的に書き上げている。特筆すべきなのが拍子の独創性で、4分の13拍子(3+3+3+4拍子)をとり、しかも2人の奏者は1小節たりとも同じ動きの拍子を共有しない。そのことが生み出す一種幻覚的な音空間の魅力を味わわれたい。

(【楽曲解説】 CDライナーノーツより)

 

 

曲名 “Shaking anxiety and Dreamy Globe”は、アメリカのシュルレアリスムの詩人、ラッセル=エドソンの詩にある、[生命が生まれる瞬間」を表した一節を引用した造語。ミニマルの手法とフラメンコギターのエッセンスを取り入れた作品。複雑な変拍子と躍動感あふれる久石ならではの技巧的な楽曲。

 

 

公式譜も同時発売されている。

 

 

 

 

DUO

1 モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス (鈴木大介 編曲)
2 ファリャ:スペイン舞曲 ― オペラ「はかなき人生」より (E.プホール 編曲)
3 マイヤース:カヴァティーナ (鈴木大介 編曲)
4 アルビノーニ:アダージョ (A.ラゴヤ 編曲)
5 プーランク:エディット・ピアフを讃えて ― 「15の即興曲」より (福田進一 編曲)
6 グラナドス:オリエンタル ― 「スペイン舞曲集」より (荘村清志 編曲)
7 ディアンス:ハジュ・パルス (2014)
8 ファジル・サイ:リキアの王女 (2009)
9 久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
10 ハーライン:星に願いを (江部賢一 編曲)

★7、8、9:Hakujuギター・フェスタ委嘱作品

【録音】
2015年2月17 -19日、Hakuju Hall、東京

 

Disc. 麻衣 『空みあげて』

2015年4月8日 CD発売 WRCT-1014

 

麻衣のミニアルバム。父・久石譲の出身地でもある長野県中野市イメージソング「空みあげて」などを収録。

 

久石譲作品では、1987年11月に発表されたアルバム『となりのトトロ イメージソング集』に収録された「小さな写真」が本作品に収められている。映画では使われなかったが、後に上条恒彦が「お母さんの写真」としてカバーし、シチューのCMソングに使われ、ジブリファンの間では隠れた人気曲となっている。オリジナル盤では久石譲が歌っていた曲を、麻衣の透き通るような声で朗々と歌い上げる。

今作のジャケットは、元スタジオジブリのアニメーター 百瀬義行による書き下ろし。中野市の自然風景を描いた、どこか懐かしくもあり、優しさに包まれたジャケットとなっている。他にも中部電力のCMソングとして地元では知られた「Dreamland」など、全6曲が収められている。信州の、日本のうたがいっぱい詰まった一枚。

 

 

なお「小さな写真」は本作に先駆けて2014年に配信限定シングルとしてリリースされている。

 

2014年7月9日 配信限定シングル

 

 

 

1.空みあげて (長野県中野市イメージソング)
作詞:麻衣 作曲:松本俊明
2.Dreamland (中部電力CMソング)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
3.ゴンドラの唄
作詞:吉井勇 作曲:中山晋平
4.つなぐ (テレビ信州冬の祭典テーマ)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
5.小さな写真
作詞:宮崎駿 作曲:久石譲
6.故郷
作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一

 

Disc. 久石譲 『Dream More』*Unreleased

2015年3月17日 TVCM放送

 

サントリービール新商品 「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム」
CM曲 『Dream More』 音楽:久石譲

 

 

発表会見にて久石譲は制作秘話を語っている。

「ビールのCMというと、明るい、みんなで乾杯!というような曲をつくることが多いと思うが、このCMでは心にしみるというかノスタルジックな、感傷的な部分も入れた メロディを書こうと思った。試飲をしてすごく美味しかったので、これもふくめて多重奏というかいろんな味わいのある楽曲にしようと思った」

 

 

弦楽とピアノによる上品な楽曲。そこから他の管楽器も加わっていき、厚みや深みのます展開。まさに多重奏、アンサンブルの極みが味わえる作品である。

CM音楽とは別に、プロモーション用のスペシャルムービでは、CM音楽とはまた違ったBGMを書き下ろしている。チェロによる多重奏の刻んだリズムが心地よいものや、ピアノの粒と小編成アンサンブルが流れるように奏でるものなど、決してメロディが展開するのではないが、短いモチーフで少しずつ展開させて空気感を生み出している。

未発売曲、CD化が期待される上質な作品である。

 

 

下記公式サイトよりCMおよびスペシャルムービー試聴可能。

 

2016年3月15日~ 『マスターズドリーム2016篇』O.A.開始
※映像/ナレーションは変更あり、音楽は変更なし。

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム2016』篇 30秒 サントリー CM 

2015年6月14日~ 『お中元篇』O.A.開始
2015年11月8日~ 『お歳暮篇』O.A.開始
※映像/ナレーションは変更あり、音楽は変更なし。

New! 『お歳暮』篇 (2015.11.8現在)

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム』篇 30秒 サントリー CM

ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム『スペシャルムービー』 4分21秒 サントリー

 

 

 

2015.8.14 追記

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」(2015/8/5-13)にて初お披露目されることとなり、同公演のプログラムによって曲名が『Dream More』であることが公となった。

 

Dream More
2015年3月から放送を開始した、サントリービール「ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム(Master’s Dream)」のための委嘱作品。小編成のソリッドなサウンドながらも、夢のビールにふさわしい華やかさと気品に溢れ、心に沁み入るオーケストラ作品として仕上げられた。フルバージョンは今回のコンサートで初披露となる。

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」公式パンフレット 楽曲解説 より)

 

CMでも聴くことのできるあの旋律が、多重奏、いろいろなオーケストラ楽器によって奏でられ、中間部も構成された作品に。気品のあるオシャレで上品な楽曲へ。しっとり聴かせるヴァイオリン・ソロまで、テンポも緩急ありの、キラキラと輝くような色彩豊かな夢見心地。軽やかなんだけれど、軽くはない、やはりメロディの力と構成の巧みさ。心踊るようで、ノスタルジックに酔いしれるような。いろいろな表情をもった楽曲。跳ねるような踊るリズムはオーケストラ奏者にとっては難曲たらしめているだろう。が、それこそがこの楽曲の味となっている。サントリー伊右衛門CM曲「Oriental Wind」につづいて、この楽曲も定着しさらにいろいろなCMバージョンも聴いてみたい逸品。もちろん本コンサート版はぜひCD作品化してほしい、華やかにシンフォニー・ドレスアップされた楽曲。

 

 

2016.7追記

こちらのヴァージョンはLIVE盤として、CD作品『The End of The World』/久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(2016/7/13 Release)に収録されている。

 

The End of the World LP A

 

 

2016.11追記

2016年11月2日~ 『お歳暮(無濾過)』篇」 O.A.開始

ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム『お歳暮(無濾過)』篇 30秒 サントリー CM

ザ・プレミアム・モルツ『マスターズドリーム<山崎原酒樽熟成>』スペシャルムービー 3分36秒 サントリー

 

 

 

Disc. V.A. 『バンド維新 2015』

2015年2月18日 CD発売 UCCS-1173

 

「バンド維新」とは

2008年2月に「音楽のまち・浜松」から新たに発信する芸術文化事業としてスタートしました。 学生たちが日頃の研鑽の成果を披露する場を提供するとともに、若手作曲家の育成、日本の音楽文化の振興、こどもたちが純粋に音楽を楽しめる環境づくりを推進することを目的としています。

作曲家は『吹奏楽』の枠にとらわれないウィンド・アンサンブル作品の可能性に チャレンジし、演奏者は、いわゆる『吹奏楽』曲とはひと味違う世界に触れ、さらに作曲者から直接指導を受ける。 「音楽のまち・浜松」ならではのイベントです。

2015年も日本を代表する8人の作曲家が参加

【委嘱作曲家】
北爪道夫 久石譲 前田憲男 ボブ佐久間 真島俊夫 中川英二郎 三宅一徳 猿谷紀郎

(メーカーインフォメーションより)

 

 

久石譲 「Single Track Music 1」

【楽曲解説】
この作品はとてもシンプルな構造でできています。全編ユニゾンで、その中のある音が高音や低音に配置させることによって別のフレーズが浮かび上がるようになっています。

僕自身はミニマル・ミュージックのスタイルを取っていますが(正確にはその後のポストクラシカルといいますが)そのスタイルではズレが重要になり、2つ以上の声部が必要になるわけですが、あえて単旋律にすることで時間軸上でのズレを考えたわけです。そのフレーズは単音から始まり、24音まで増殖していって一区切りです。また中間部からは和音らしき響きが聞かれますが、これはあくまでフレーズの中の最初と最後の音のサステイン(持続音)であって意図的に作った和音ではない。後半ではそのサステインが単旋律のリズムと同期して分化されているだけです。

全編ユニゾンということはある意味で理解しやすいように思われますが、演奏する側から考えるとピッチやリズムの違いが誰にでもわかることであり案外難しいとも言えます。またリズムのグルーヴ感(例えばロックやジャズのような)もとても大切です。

このような実験をさせていただいて感謝しています。
尚タイトルは鉄道の単線の意味からとっています。

(久石譲)

(楽曲解説:CDライナーノーツより)

 

 

 

 

久石譲による新作書き下ろし委嘱作品。吹奏楽作品としては「Runner of the Spirit」(箱根駅伝テーマ曲)以来の2作品目となる。

 

 

2015.8追記

久石譲オリジナルアルバム『Minima_Rhythm 2 ミニマリズム 2』に、「Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion」として収録された。タイトルとおり[サクソフォン四重奏と打楽器版]での編成として再構成されている。自身のコンサートでもプログラムされ、スコアも販売されている。

 

 

バンド維新2015 ウィンドアンサンブルの現在

01. 前田憲男: 花のワルツ~組曲「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)
02. ボブ佐久間: Selection from“THE EPITOME”for Wind Orchestra
03. 久石譲: Single Track Music 1
04. 猿谷紀郎: Dawn Pink 2
05. 三宅一徳: Dance EGO-lution
06. 北爪道夫: リズムクロス
07. 真島俊夫: 月山 -白き山-
08. 中川英二郎: Field of Clouds

演奏:航空自衛隊 航空中央音楽隊
指揮:水科克夫(4,5,7,8)、前田憲男(1)、ボブ佐久間(2)、北爪道夫(3,6)
ソロ・トロンボーン:中川英一郎(8)
録音:2014年11月26日&27日 ひの煉瓦ホール

 

Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『吹奏楽燦選 / 嗚呼! アフリカン・シンフォニー』

2014年10月22日 CD発売 COCQ-85096

 

吹奏楽の定番と今後の定番化が期待される作品を、日本を代表する名門、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)による最新のセッション録音で拡充してゆく「吹奏楽燦選」シリーズの第3弾。第1作はエバーグリーンとして定番化しつつあり専門誌でも高い評価、すでにロングセラーとなっている。第2作「フェスティーヴォ!」はレコード・アカデミー賞を受賞、チェコ吹奏楽曲の素晴らしさを広く知らしめてる。

今回の第3弾は、吹奏楽初挑戦となるクラシック界の実力派指揮者、関西フィル首席指揮者を務める藤岡幸夫とTKWOとの、実り豊かなチーム・ケミストリーに注目。藤岡は、吹奏楽オリジナル作品にはスケールの大きさと格調の高さをもたらし、ポップな曲には、タルカス等のクロスオーバー曲で吹かせた熱風を送り込んでいる。TKWOレコーディング・プロジェクトならではの委嘱作。今回は、ブリテン:青少年のための管弦楽入門の吹奏楽版といった趣の伊藤康英の意欲作『ラ・フォリア』を収録。TKWOの高い個人技と緊密なアンサンブル力をフルに発揮させる凝った逸品です。演奏会用マーチの定番『アルセナール』の勇壮な音楽、卒業式の定番曲で美しいコラールの『ロマネスク』といった新旧のオリジナルの名作に加え、2014年5月に亡くなった岩井直溥の代表作であり人気定番曲『ボレロ・イン・ポップス』、高校野球応援に必携の『アフリカン・シンフォニー』といった誰もが聞き知っている名曲が目白押し。久石譲初の吹奏楽曲である箱根駅伝の新テーマ曲など、神曲詰まり過ぎの贅沢極まりない一枚。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

本作品に久石譲楽曲が収録されている。

 

「吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》」
Runner of the Spirit  for Symphonic Band
I. オープニング Opening
II. エンディング Ending

 

【楽曲解説】

久石譲 / 吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》

久石譲(1950-)はスタジオ・ジブリの映画音楽などで著名な、言わずと知れた作曲家。そんな久石と吹奏楽の関係は古い。吹奏楽ポップスの歴史を培ってきた「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のシリーズにおいて、1978年から1985年にかけて、全部で13曲のアレンジを手がけている。また、1976年から1980年の間にはバンドジャーナル誌の付録楽譜の編曲も15回担当している(本名の名義によるものも含む)。久石が商業的なデビューを果たしたのが1974年であることを考えると、初期において吹奏楽の占めたウェイトは小さくはない。

1980年代後半から久石本人による吹奏楽のスコアは世に知られていないが、その長い沈黙を破って生まれたのが、この「ランナー・オヴ・ザ・スピリット」である。毎年正月2日と3日にかけて行われる箱根駅伝の、日本テレビによる中継番組のテーマ音楽として作られたもので、2009年の放送以来、毎年使用されている。テレビ番組用だが、最初から吹奏楽編成で作られているのは珍しいケースである。ファンファーレ的な「オープニング」(CM前のジングルとしても使用されている)と、選手の健闘をねぎらい讃えるかのような「エンディング」の2曲からなる。

(CDライナーノーツ 楽曲解説 より)

 

 

本作品に収録されているこの2楽曲は、2009年から箱根駅伝のTV放送で流れている音源ではない。

2009年のオリジナル版も東京佼成ウインドオーケストラによる演奏である。楽曲構成が変わっていたり、改訂されているという意味ではなく、録音時の指揮者と団員奏者の違いによる微細な演奏の変化である。

よって同じオリジナルのスコアを使用しているなかで、指揮者の違いによる楽曲のダイナミクス、テンポ、演奏表現方法、パートごとに前面にフィーチャーされている楽器の違いによる印象と響きの違いと思われる。

それでも2009年発表から現時点(2014年)までに、久石譲名義として作品化されていないだけに、ほぼオリジナル版と言ってもいいくらいのバージョンがCD作品化されたことは、貴重でありうれしい限りである。

 

 

2009年版および以降毎年正月TV放送される際のオリジナル版、指揮は久石譲自らによる。

 

久石譲 箱根駅伝 Runner of the Spirit

 

 

 

東京佼成ウインドオーケストラ

1.音楽祭のプレリュード (アルフレッド・リード)
2.コンサートマーチ《アルセナール》 (ヤン・ヴァンデルロースト)
3.ロマネスク (ジェイムズ・スウェアリンジェン)
4.海の男達の歌 (船乗りと海の歌) (ロバート・W・スミス)
5.マゼランの未知なる大陸への挑戦 (樽屋雅徳)
6.百年祭 (福島弘和) 2012年改訂版
7.嗚呼! (兼田敏)
8.吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》 I. オープニング (久石譲)
9.吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》 II. エンディング (久石譲)
10.ラ・フォリア ~吹奏楽のための小協奏曲 (伊藤康英)
11.ボレロ(イン・ポップス) (モーリス・ラヴェル/岩井直溥 編)
12.アフリカン・シンフォニー (ヴァン・ マッコイ/岩井直溥 編)

演奏:東京佼成ウインドオーケストラ
指揮:藤岡幸夫

録音:2013年9月9~10日、江戸川文化センター(東京) [96kHz/24bit録音]

 

Disc. 久石譲 『スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX』

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX

2014年7月16日 CD-BOX発売 TKCA-74104

 

『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。
久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品の豪華BOXセット。
スタジオジブリ作品サウンドトラックCD12枚+特典CD1枚

 

【商品内容】
<ジャケット>
「風の谷ナウシカ」「天空城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」は発売当時のLPジャケットを縮小し、内封物まで完全再現した紙ジャケット仕様。

<特典CD「魔女の宅急便ミニ・ドラマCD」>
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。

<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲インタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。

<収録CD>

DISC1-12 HQCD (Hi Quality CD)
DISC1,3,4 LP復刻 紙ジャケット&ライナー
DISC2 LP復刻 紙ジャケット&パズーとシータの複製セル画
DISC5-12+特典CD オリジナル紙ジャケット
34ページブックレット付き

紙ジャケット/封入特典:カタログ・ブックレット/特典CD付

 

 

Disc 1 風の谷のナウシカ サウンドトラック盤 はるかな地…
久石譲による宮崎駿監督作品最初のサウンドトラック盤。イメージアルバム「鳥の人…」、シンフォニー「風の伝説」を基に新たに録音された映画用BGMを収録。1984年2月録音。「レクイエム」のヴォールは当時4歳の麻衣が担当している。

4ページカラーグラフ&スコアーつき(風の伝説 メインテーマ / ナウシカのテーマ)

風の谷のナウシカ LP復刻

 

Disc 2 天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎
映画本編で使用されたBGMを収めたサントラ盤。挿入歌「君をのせて」も収録。ラピュタは4chドルビーステレオを初めて採用した宮崎作品であり、音楽もそれにふさわしく壮大なスケールの内容になった。1986年6~7月かけて制作。

天空の城ラピュタ LP 復刻

 

Disc 3 となりのトトロ サウンドトラック集
映画で使用されたBGMを収録したサントラ盤。「ナウシカ」「ラピュタ」とは一味違った、ほのぼのとした温かさをもつ久石音楽が心ゆくまで楽しめる。オープニング主題歌「さんぽ」、エンディグ主題歌「となりのトトロ」収録。 録音は1988年2 ~3月。

となりのトトロ LP 復刻

 

Disc 4 魔女の宅急便 サントラ音楽集
映画本編で使用された全楽曲を収録したサントラ盤。高畑勲が本作では音楽演出を担当している。録音は1989年6~7月ソロアルバムの作業で渡米していた久石の帰国直後に行われた。CDとLPのジャケットは同一。荒井由実の挿入歌2曲も収録。

魔女の宅急便 LP 復刻

 

Disc 5 紅の豚 サウンドトラック 飛ばねぇ豚は、ただのブタだ!
映画本編で使用された楽曲を収録したサントラ盤。アコースティックなサウンドにこだわり、ほぼ70名のフルオーケストラで録音。収録は1992年5~6月に行われた。加藤登紀子の歌2曲も収録。本作から、LPの発売は行われなくなった。

久石譲 『紅の豚 サウンドトラック』

 

Disc 6 もののけ姫 サウンドトラック
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のフルオーケストラによるサントラ盤。録音は1997年5月。映画本編の楽曲を米良美一の主題歌も含め完全収録。本作の主題歌で久石は日本レコード大賞作曲賞を受賞。アルバム自体も企画賞を受賞している。

久石譲 『もののけ姫 サウンドトラック』

 

Disc 7 千と千尋の神隠し サウンドトラック
映画本編の楽曲を収録したサントラ盤。新日本フィルハーモニー交響楽団のフルオーケストラによりサントラでは初めて、コンサートホールでライブ収録された。指揮・ピアノも久石が担当。録音は2001年5月。木村弓の主題歌も収録。

久石譲 『千と千尋の神隠し サウンドトラック』

 

Disc 8 Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~
ディズニーが2003年に北米でリリースした「ラピュタ」の英語吹替版用に久石自らが、ハリウッド映画音楽のオーケストラを率いて壮大なスケールと迫力あるサウンドで再録音したニュー・サントラアルバム。一部書き下ろしの新曲も含まれている。

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

 

Disc 9 ハウルの動く城 サウンドトラック
新たに作曲されたテーマ「人生のメリーゴーランド」を中心に構成された映画本編の楽曲を収録。新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で今回もホールでライブ収録された。指揮・ピアノも久石が担当。録音は2004年6月。倍賞千恵子の主題歌も収録。

ハウルの動く城 サウンドトラック

 

Disc 10 崖の上のポニョ サウンドトラック
映画本編の楽曲を収録。新日フィルハーモニー交響楽団の演奏に加え、本作では栗友会合唱団による大編成のコーラスが加わり“海と生命”をダイナミックに表現している。録音は2008年5月。林正子、藤岡藤巻と大橋のぞみの主題歌も収録。

久石譲 『崖の上のポニョ サウンドトラック』

 

Disc 11 ラ・フォリア / パン種とタマゴ姫 サウンドトラック (ジブリ美術館公開)
三鷹の森ジブリ美術館映画「パン種とタマゴ姫」のサウドトラック。宮崎監督がこの映画を製作している時にずっと聴いてたという、ヴィヴァルディの「ラ・フォリア」という曲を素材に、宮崎監督の映像が与えてくれるインパクトに沿う形で、古典曲を現代的なアプローチで再構築した作品。録音は2010年10月。

久石譲 『ラ・フォリア パン種とタマゴ姫 サウンドトラック』

 

Disc 12 風立ちぬ サウンドトラック
読売日本交響楽団によるフルオーケストラ演奏ほか、バラライカ・マンドリン・バヤン・アコーディオ等の民族楽器での楽曲も印象に残るサウンドトラック。荒井由実の歌う主題「ひこうき雲」も収録。録音は2013年5月。

久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

 

特典Disc 魔女の宅急便 ミニ・ドラマ「元気になれそう」 (詩:宮崎駿/ナレーション:高山みなみ)
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。

魔女の宅急便 元気になれそう

 

定価:¥ 21,600(税込)
品種:CD 13枚組
商品番号:TKCA-74104
発売日:2014/07/16
発売元:(株)徳間ジャパンコミュニケーションズ
JAN:4988008160246

 

 

 

 

 

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラCDBOX

 

Disc. 麻衣 『小さな写真』

2014年7月9日 デジタルリリース

 

やさしさ、なつかしさ、ぬくもり、うたう。あの名曲が時を超えて今ここに生まれ変わる。

宮崎駿作詞、久石譲作曲。

となりのトトロ イメージソング集に収録されたあの名曲が、麻衣のカバーにより発売。忘れかけたなつかしい時を思い出す詞、究極にやさしいメロディ、ぬくもりある麻衣の歌声が見事に調和した最高に素敵な世界観は、ジブリファンならずとも必聴。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

映画「となりのトトロ」公開に先がけ発表されたイメージソング集。「音楽を重視したい」との宮崎駿の思いを受け、本編サウンドトラック制作の前に10曲の歌をつくるという、かつてない企画のもとに完成したアルバムだった。

そこには、「となりのトトロ」主題歌をはじめ「風のとおり道」「さんぽ」など、後に映画を通じて世界中から愛される数々の歌が収録された。「お母さんが小さな女の子だった頃の写真」を通じて、愛情、そして古き良き時代の思い出を唄ったこの曲も、そんな名曲の1つ。映画本編には登場しない、いわば隠れた名曲だ。小さなお母さんの写真という素敵な世界観を、久石譲の娘でもある麻衣が20余年の時を超えて再現した。

アコースティックギター、ピアノ、コントラバス、ドラムのジャズ編成がシンプルで綺麗なサウンドを奏で、麻衣のやさしく素直な声が、心にすっと届く。いつ、どんな時に聴いても心和む。至高の美しさと、どこかに儚い時の流れを感じる。それが麻衣の歌う「小さな写真」だ。そして、ほんのりとした感動を味あわせてくれる。

 

ちなみに同曲のオリジナルは「となりのトトロ イメージソング集」に収録。ここでの歌は、作曲者である久石譲本人である。

また、2003年に発売された宮崎駿プロデュースによる上條恒彦のアルバム『お母さんの写真』にも
「大人が歌える歌」をテーマに、アレンジも新たに収録されている。ここでは曲名が「小さな写真」から『お母さんの写真』へと変更されている。発表当時、ハウス食品『おうちで食べよう。』CMソングにも起用された楽曲である。

 

 

 

配信限定だった本楽曲は、後にCDに収録されている。

2015年4月8日 CD発売 WRCT-1014

 

 

麻衣 小さな写真

1.小さな写真 acoustic version (作詞:宮崎駿 作曲:久石譲)

 

Disc. 久石譲 『Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ』

2014年3月12日 CD発売 UMCK-1473

 

1984年3月11日に公開された「風の谷のナウシカ」から30年。
久石譲が再編曲した名曲達をまとめた初のジブリ・ベストセレクション!

久石譲は当初、レコード会社からの提案に「過去を振り返るのは嫌いなので作りたくなかった」と感じたそうだが、「出来上った盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、納得できた」とコメントしている。ソロアルバム用に録音してきた編曲の中から、ピアノをメインにリアレンジされた楽曲、ロンドン交響楽団が演奏した「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など13曲を収録。

ジブリ映画を彩った名曲達を久石譲が再編曲・プロデュースした作品を集めたベストアルバム! 公開30周年(2014年時)を迎える『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで、初CD化音源も含めた、ジブリ映画音楽の決定盤。

 

 

30年という時間

僕が宮崎さんと一緒に仕事をするようになって、30年という時間が過ぎた。本当は宮崎駿監督とお呼びしなければいけないのだが、彼の明るく飾らない人柄のせいか、周りの人や僕は宮崎さん、あるいはもっと親しい人は宮さんと呼んでいる。

『風の谷のナウシカ』から最新作『風立ちぬ』まで10作品、そのひとつひとつに制作上のドラマがあり、葛藤があり、真の喜びがあった。そのエピソードを語るつもりはない。が、世界中の人たちに観ていただき、音楽を聴いていただいたということは、結果として宮崎さんの作品に少しは貢献できたものとして安堵しているし、心から感謝している。

このアルバムは、その30年間に僕のソロアルバムとして制作してきた中から、宮崎さんの映画のために書いた曲を集めたものである。ピアノを中心に、アルバムごとのコンセプトに即してリアレンジしたものなのでサウンドトラックとは違う。だが、どんな状況でも(オーケストラの演奏でも、ピアノ一台でも、あるいは街を歩いている子供の鼻歌でも)そこには宮崎さんがいて僕がいる。そのような強い楽曲を作れたのはもちろん僕の力だけではなく、多くの関わった人たち、特に鈴木敏夫さんの力がなければできなかったであろう。

過去を振り返るのは嫌いなのでこのようなベストアルバムは作りたくはなかったが、レコード会社の強い要望で(最近ソロアルバムを作っていないので)出すのを了承した。

だが、出来上がった盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、存在していいものだと納得した。多くの関係者に感謝する。彼らがいなかったらこのアルバムは存在しなかった。

そして僕はというと、ピアノの音と音の間の沈黙から30年という時間の流れにのって宮崎さんの満面の笑顔が浮かんでくるのを観てニンマリとしているのである。

久石譲 -ライナーノーツより

 

 

ピアノ、ミニマル、オーケストレーション
宮崎駿監督作における久石譲の音楽について

今から30年前の1984年3月11日に公開された宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』で、久石譲は映画音楽作曲家としての第一歩を踏み出した。それ以前の彼は、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒといったアメリカン・ミニマリズムの作曲家やドイツのクラフトワークに刺激を受けた、彼独自のミニマル・ミュージックの可能性を模索する作曲活動を地道に続けていた。ミニマル・ミュージックとは──『MKWAJU ムクワジュ』(1981)や『INFORMATION』(1982)といった彼の初期のアルバムに聴かれるように──シンプルなリズムパターンを繰り返し、時には拍をずらすことによってパルス(=拍動、脈動)の存在を聴き手に強く意識させる音楽である。アフリカやインドの伝統音楽に見られるような、音楽を最小限(=ミニマル)の構成要素から組み立てていく手法をとるので、フレーズやメロディを中心に発展してきた西洋音楽史全体に挑戦状を叩きつけることに繋がりかねない。そんな過激な姿勢を貫く日本人作曲家は、1980年代初頭の時点で久石以下ごく少数しか存在しなかったし、ましてや、それを劇映画の音楽に応用しようなどと無謀なことを考える作曲家は、世界中見渡してもほとんど存在しなかった。

そんな彼の『INFORMATION』が高畑勲監督と鈴木敏夫プロデューサーの目に留まったことで、久石は『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムを録音することになり、結果として『風の谷のナウシカ』の本編そのものの音楽も手がけることになった。

では、実際に久石は『風の谷のナウシカ』をどのように作り上げたのか?

まず彼は、ピアノという楽器でメインテーマ──《風の伝説》の曲名で知られている──のメロディを導入する。当時の一般的な観客が予想し、期待したであろうヴォーカルを一切用いることなく、である。しかも、そのメロディの冒頭部分は、当時のポップスのトレンドに真っ向から対抗するように、コード進行をほとんど変えず、ストイックに提示される。そして本編の物語が進むにつれ、久石はシタールのようなインドの民族楽器から後期ロマン派風のオーケストラにいたるまで、死力を尽くしてありったけの音色を投入するのだ。実験的なミニマル・ミュージックと商業用の映画音楽という、ある意味で対極的な二項対立の狭間に立たされた久石は、自己のアイデンティティを殺すことなく、ギリギリのところで壮大な音楽ドラマを書き上げてみせた。そうした彼のストイックな音楽的姿勢が、ナウシカというヒロインの壮絶な生きざまに重なって聴こえたのは、著者ひとりだけではないだろう。そして、その後30年にわたって彼が書き続けることになる宮崎作品の音楽の原型が、『風の谷のナウシカ』の中にすべて含まれていると言っても過言ではないのだ。

メロディの導入にあたり、演奏家としての久石の力量が遺憾なく発揮されるピアノ(1)。音楽の構成要素を最小限まで切り詰めていくミニマル的な手法(2)。そして、多種多様な楽器やアンサンブルを駆使していくオーケストレーションの多様性(3)。『風の谷のナウシカ』の音楽を特徴づけるこれら3つの要素は、時には単独の形で、時には三位一体の形で、宮崎作品の重要なエッセンスを表現していくことになる。そのエッセンスが何かと問われれば、おそらく次のように要約することが出来るだろう。

久石自身の演奏楽器である(1)のピアノは、メロディを生み出す母体となることで、物語における叙情的な要素──とりわけ宮崎作品のヒロインたち──を強調する役割を果たす。これに対し(2)のミニマル的な手法は、リズムパターンを剥き出しにする場合に、根源的な生命(力)の存在──『となりのトトロ』の雨中のバス停の場面が有名──を示すことが多い。そして(3)のオーケストレーションの多様性は──フランス印象派を思わせるダイナミックな三管編成を駆使した『崖の上のポニョ』が端的に示しているように──宮崎監督の世界観の確立に貢献する役割を果たす。仮に(1)のピアノを”女性的”な要素、(3)のオーケストレーションを”男性的”な要素、(2)のミニマルを久石自身の”生命”、と読み替えてみるならば、少し飛躍があるかもしれないが、このように結論づけることも出来るだろう。すなわち宮崎作品における久石の音楽は、(1)ピアノという”ヒロイン”の”君をのせて”、(3)オーケストレーション(オーケストラ)という”ヒーロー”が奏でていく、(2)ミニマルという”生命”から生まれたドラマなのだ。

そのドラマにおいて、特にヒロインが恋に落ちる時、彼女たちがピアノのメロディと共に登場するのは決して偶然ではない。謎の少年・ハクに惹かれる『千と千尋の神隠し』の千尋。魔法使いハウルを愛し続ける『ハウルの動く城』のソフィー。身を削って夫・二郎への愛を貫く『風立ちぬ』の菜穂子。彼女たちの存在感が大きくなるにつれ、メロドラマ的な要素が物語に占める割合も大きくなっていく。ここで想起しておきたいのは、そもそもメロドラマという言葉が古代ギリシャ語の「メロス(歌)」と「ドラマ(劇)」を語源としているという点である。そうした根源的な意味において、久石のピアノのメロディは”ヒロイン”という女性的な要素と結びついていると見るべきだ。つまり、宮崎作品におけるメロドラマとは、文字通り「歌(メロディ)による劇(ドラマ)」なのである。

本盤『ジブリ・ベスト ストーリーズ』には、久石が宮崎作品のために書いた楽曲をソロアルバム用にアレンジし直した演奏が収録されているが、サントラのアレンジに比較的近いものもあれば、アルバムのコンセプトに沿って大胆にアレンジし直されたものもある。ここで是非とも確認しておきたいのは、そもそも久石の映画音楽は──映画公開以前に録音されたイメージアルバムの中で表現されているように──先に触れたようなエッセンスを直接的に表現するところから作曲がスタートしているという点だ。個々の場面に後付けする伴奏とは、発想の出発点が根本的に違う。別の言い方をすれば、映像と音楽は協調関係(対位法的な対立関係を含む)を結ぶことはあっても、主従関係に陥ることはない。つまり、音楽が特定の映像に縛られないので、映画が完成した後も、さらに音楽が発展する余地が残されている。と同時に、それらの楽曲が映画とは異なる文脈でアレンジされることで、サントラを聴くだけでは判らなかった潜在的な意味が浮かび上がってくる。だからこそ、彼が宮崎作品の音楽をリアレンジし、演奏する必然性が生まれてくるのだ。

以下の楽曲解説は、そうしたリアレンジの文脈も知っていただきたく、敢えてCDをの収録順とは異なり、出典元となったソロアルバムの録音年代順でお読みいただくことにした。そのほうが、本編とは異なる世界観を表現したオーケストレーションの醍醐味と、アーティストとしての久石が辿った30年の変遷が、明瞭に浮かび上がってくるからである。

 

『Piano Stories』(1988)より
4.The Wind Forest
6.Fantasia (for NAUSICAÄ)

ミニマル作曲家・久石が、旋律作曲家としての自己を強く意識し始めた時期のアルバム。ミニマル風の前奏の後、日本音階のメロディが続く《The Wind Forest》(風のとおり道)は、その意味で極めて象徴的な楽曲と言えるだろう。一方の《Fantasia (for NAUSICAÄ)》は、先に触れた《風の伝説》を幻想曲としてリアレンジしたもの。久石が著者に語ったところによれば、この時期の彼のピアノのタッチは、高校時代から敬愛するジャズ・ピアニスト、マル・ウォルドロンの影響を強く受けていたという。

『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』(1998)より
7.il porco rosso

イタリア・モデナで録音された『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』は、『紅の豚』で描かれたアドリア海の陽光と青空を久石に懐古させる、注目すべき成果をもたらした。イメージアルバムの段階で《マルコとジーナ》というタイトルが付けられていた《il porco rosso》(帰らざる日々)は、後半部分にストリングスを加えることで、原曲以上にノスタルジックなジャズへと生まれ変わり、ホテル・アドリアーノに漂う”大人のロマン”を優雅に演出している。

『WORKS II』(1999)より
11.もののけ姫

宮崎作品のサントラ録音で初めて常設の交響楽団(東京シティ・フィル)を起用した『もののけ姫』以後、久石は大編成を用いた演奏に意欲を燃やし始める(その論理的な帰結が、2000年から始める彼の指揮活動だ)。有名なヴォーカル盤では、ケーナや篳篥といった民族楽器を隠し味として使っていたが、この東京シティ・フィルのライヴではそれらを排除し、伝統的なオーケストラサウンドの枠内で『もののけ姫』の世界観を再現している。

『ENCORE』(2002)より
12.アシタカとサン

久石初の全曲ピアノソロアルバム『ENCORE』は、マイクの設置場所にミリ単位までこだわった入魂作。”破壊された世界の再生”を描く、『もののけ姫』の重要なラストにおいて、久石はそれまで鳴り続けていたオーケストラを止め、シンプルなピアノだけで希望のメロディを奏でてみせた。その意味では《風の伝説》と対をなす楽曲と言えるかもしれない。

『Castle in the Sky』(2002)より
3.Confessions in the Moonlight

『天空の城ラピュタ』の北米版のために、久石が本編全体のスコアをリアレンジ・追加作曲し、シアトルの教会で録音した演奏から。オリジナル版の電子楽器を排除し、豊かなオーケストラサウンドにこだわって宮崎作品の世界観を再構築していくという点では、先に触れた《もののけ姫》の方法論の発展と見ることも可能だ。冒険活劇といえば長調の明るいメインテーマ、というハリウッド的な常識に真っ向から反旗を翻すように、『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《君をのせて》は変ホ短調で書かれている。その表現の奥深さを示した例のひとつが、飛行船の上でシータがパズーに不安を打ち明ける場面の《Confessions in the Moonlight》(月光の雲海)だ。空間の響きを活かした久石のピアノソロが、オリジナル版以上に《君をのせて》の旋律をしっとりと浮かび上がらせている。

『空想美術館』(2003)より
5.谷への道

フルオーケストラとチェロ九重奏の演奏を交互に並べた野心作『空想美術館』収録の《谷への道》は、もともと『風の谷のナウシカ』イメージアルバムのために作曲された楽曲。のちにチェロ独奏を前提とした《ナウシカ組曲》の第5楽章に組み込まれた。独奏部分だけでなく、伴奏部分まですべてチェロの音色に統一するという発想は、作曲家ヴィラ=ロボスの《ブラジル風バッハ第5番》チェロ八重奏の先例を彷彿とさせるだけでなく、ミニマル作曲家ライヒのカウンターポイントシリーズ(チェロ9声部で書かれた《チェロ・カウンターポイント》など)にも通じるところがある。なおかつ、ここでのチェロ九重奏の大らかな響きは、『風の谷のナウシカ』の豊かな世界観と何ら矛盾をきたしていないのだ。

『Piano Stories Best ’88-’08』(2008)より
10.人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-

『ハウルの動く城』は、スコアのほぼすべてをワルツ主題とその変奏だけで押し通す久石の音楽設計が、そのまま宮崎監督の演出意図を表現したユニークな作品。ここに聴かれる演奏では、前半がワルツのテーマ、後半にその変奏を聴くことが出来るが、ヒロインのソフィーも同様に──ハウルへの変わらぬ恋心を抱きながら、18歳から90歳まで年齢が変化し続けるという点で──”主題と変奏”というべきキャラクターなのだ。

『Another Piano Stories ~The End of the World~』(2009)より
8.Ponyo on the Cliff by the Sea

『崖の上のポニョ』公開後にピアノ、チェロ12本、コントラバス、マリンバ、打楽器、ハープ2本という編成によるツアーと連動して録音されたアルバムから。伝統的な管弦楽法からは絶対に思いつかない発想だが、チェロのピツィカートとマリンバの倍音が生み出すユーモラスな響きは、不思議とポニョのイメージに合う。宮崎作品のエッセンスを的確な音色で表現していく、久石のオーケストレーションの凄さが現れた演奏のひとつ。

9.海のおかあさん(CD初収録)

『崖の上のポニョ』本編では1コーラスしか聴くことの出来なかったオープニング主題歌を、今回初めて2コーラスのフルヴァージョンで収録したもの。”母なる大地”ならぬ”母なる大海”と読むことができるグラン・マンマーレは”母性”そのものというべき存在である。それを表現するため、久石はクラシックのソプラノ歌手(林正子)を起用した。彼女が歌うベルカントの豊かな声量は、”母性”の象徴であると同時に、広大な海の象徴でもある。

『Melodyphony』(2010)より
1.One Summer’s Day
2.Kiki’s Delivery Service
13.My Neighbour TOTORO

2009年のアルバム『Minima_Rhythm』に続き、久石がロンドン交響楽団を指揮したアルバムから。《One Summer’s Day》(あの夏へ)と《Kiki’s Delivery Service》(海の見える街)は、それまでの日常と異なる世界──『千と千尋の神隠し』の場合は湯屋の町、『魔女の宅急便』の場合は大都会コリコ──に足を踏み入れようとするヒロインが、そこはかとなく感じる期待と不安を表現しているという点で、対をなす2曲と言えるかもしれない。しかも、《Kiki’s Delivery Service》のリアレンジでは久石のピアノソロがメロディをくっきりと演奏しており、《One Summer’s Day》のニュアンスに富んだピアノソロと見事な対照を生み出している。

そして《My Neighbour TOTORO》(となりのトトロ)は、組曲《オーケストラストーリーズ 「となりのトトロ」》の終曲を演奏したもの。近年はクラシックの古典曲を積極的に指揮している久石にとって、ロンドン響での録音は大きな意味があった。ロンドン響はクラシックの超一流オケである以上に、ライヒやジョン・アダムズといったミニマル作曲家の演奏で比類なき能力を発揮するオケなのだ(つまり、世界で一番ミニマルを理解しているオケ)。《My Neighbour TOTORO》のコーダ部分に聴かれる圧倒的な歓喜の音楽は、ミニマル・ミュージックの作曲家、宮崎作品の作曲家、そしてクラシックの指揮者という久石の3つの側面が統合された、ひとつの到達点なのである。(文中敬称略)

前島 秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター) -ライナーノーツ・楽曲解説より

 

 

 

 

 

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

1. One Summer’s Day (千と千尋の神隠し)
2. Kiki’s Delivery Service (魔女の宅急便)
3. Confessions in the Moonlight (天空の城ラピュタ)
4. The Wind Forest (となりのトトロ)
5. 谷への道 (風の谷のナウシカ)
6. Fantasia (for NAUSICAÄ) (風の谷のナウシカ)
7. il porco rosso (紅の豚)
8. Ponyo on the Cliff by the Sea (崖の上のポニョ)
9. 海のおかあさん 歌 / 林 正子 (崖の上のポニョ) *初CD化
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (ハウルの動く城)
11. もののけ姫 (もののけ姫)
12. アシタカとサン (もののけ姫)
13. My Neighbour TOTORO (となりのトトロ)

■初回プレス分のみ「スリーブケース」仕様

 

Disc. 久石譲 『小さいおうち オリジナル・サウンドトラック』

小さいおうち 久石譲

2014年1月22日 CD発売 UMCK-1472

 

2014年公開 映画「小さいおうち」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:松たか子 他

 

 

インタビュー

-今回の『小さいおうち』は、前回にも増して音楽の曲数が多いと思いました。

久石:
単純に、本編の内容から出てくる違いです。『東京家族』は非常にシリアスな内容の作品でしたので、音楽を少なめにした方がよいという判断がありました。それに対し、『小さいおうち』はラブストーリー的な側面が強い作品ですから、音楽も当然増えてきます。山田監督からも「今回は音楽を多くしたい」という要望をいただきました。それと、「非常に甘みのあるメロディが欲しい」という要望も。

-それが、冒頭の火葬場で流れてくるメインテーマですね。

久石:
本編全体を見てみると、最初はタキの葬儀の場面から始まり、ラストシーンもタキがある重要な役割を果たしています。平成から激動の昭和へ、たとえ物語の時空が自由に飛んだとしても、タキの”目線”だけは変わらない。そのタキの”目線”のテーマ、わかりやすく言えば、タキの”運命のテーマ”です。ただし、そのメインテーマだけだと音楽全体が非常に重くなってしまうので、もう1曲、別のテーマを作曲しました。

-アコーディオンで演奏されるワルツのテーマですね。

久石:
こういう作品にワルツが似合うかどうかはともかく、結果的には、ワルツによって”昭和という時代に対する憧れ”や、”小さいおうちの住人に対する憧れ”を表現できたのでは、と思っています。昭和ロマンに憧れるワルツ、という意味では、松たか子さん演ずる”時子のワルツ”と呼んでよいのかもしれません。その”時子のワルツ”と、メインとなるタキの”運命のテーマ”のデモ2曲を最初に作曲したところ、山田監督から早々にOKをいただきました。

Blog. 映画『小さいおうち』(2014) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「基本的にはメーンとなるテーマ曲は2つなんです。その時代を生きてきたタキのテーマみたいなものと、もうひとつは意表をつくようなワルツ調の曲。深い根拠はないんですが、直感みたいなもので、ある種の軽やかさが出たらいいなと思ったんです。守りに入るよりは、こちらも冒険させてもらったんですが、それが結果的に良い形になればいいなと思っています。」

Info. 2013/08/10 山田洋次監督最新作「小さいおうち」 久石譲音楽レコーディング より抜粋)

 

 

赤い屋根の小さな家で働く女中・タキの目線を通し、昭和から平成へと激動の時代を生き抜いてきたタキの自身のテーマでもある“運命のテーマ”と、アコーディオンの甘美なメロディが印象的な“ワルツのテーマ”を主軸に構成。昭和モダンのノスタルジックな雰囲気が満載のサウンドトラック。

2つのテーマにより構成されたサウンドトラックは、
”運命のテーマ” (1) (2) (3) (5) (8) (10) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21)
”時子のワルツ” (4) (6) (7) (9) (11) (12)

”運命のテーマ”はときにピアノの単音で、ときにフルートやオーボエの木管で、ときに弦楽やピッツィカートで、ギターなども加わりとてもシンプルなアコースティックサウンド。シンプルなというか極限まで削ぎ落としたメロディと言っていい。

”時子のワルツ”はアコーディオンの旋律が特徴的だが、こちらもトラックごとに、ピッツィカートや木管編成、ピアノにより構成されている。

エンドクレジットにあたる(22)は、この主要な2つのテーマが、”運命のテーマ”から”時子のワルツ”へと引き継がれ幕をとじる。その(22)を除く、すべての楽曲が1-2分程度の長さであり、サウンドトラック全体としても30分程の音楽となっている。

ここで注目すべきは、映画本編2時間として音楽が約半分以下の時間しか流れていないということ、まさに山田洋次監督がオーダーした”空気のような音楽”ということである。

久石譲はセリフを重視する山田監督の演出に配慮するため、本編用のスコアでは特徴的な音色を持つ楽器(ダルシマーなど)を効果的に用いている。ハンマー・ダルシマーは「ピアノの先祖」とも言われる楽器である。

しかしながら、主要テーマのどちらもメロディの長さは短くも、とても印象的で、記憶に残らない耳に残らないということは決してない。これこそが久石譲のメロディの強さであり、かつ効果的にモチーフを2つに絞り込んで、あらゆるバリエーションで効果的な楽器編成で配置した結果といえる。

 

この後、久石譲「WORKS IV」にて、フルオーケストラ用にオーケストレーション、メインテーマ(22)は、楽曲構成はほぼ同じとしながらも、ギター、アコーディオン、マンドリンが加わり、サウンドトラックにはないオーケストラの華やかさと優雅さに磨きがかかっている。ひかえめながらも力強い華麗な輪舞曲(ロンド)に仕上がっている。全体の構成は、久石のソロ・ピアノによる序奏に続き、タキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、そして時子が象徴する昭和ロマンを表現した「時子のワルツ」となっている。

 

 

映画「東京家族」につづく山田洋次監督とのタッグは久石譲にも大きな変化をもたらしている。具体的には、別項にて紹介しているが、一部抜き出すと下記とおり。

 

  • オーケストラなどで音楽が主張をすることをひかえたつくり方
  • 空気のような音楽、雰囲気を邪魔しない音楽、芝居や映画と共存する音楽
  • 小編成にシンプルに、おさえるけれど、ただうすいだけにならないつくり方
  • 登場人物や観客の気持ちを煽るような音楽をつけない
  • より映画にコミットするかたちで音楽をつける

“今まではどうしても映画音楽としても主張してしまう自分がいたけれど、その力みがなくなった”といつかのインタビューでも語っている。

 

 

 

 

今後の久石譲映画音楽制作の分岐点になるであろう作品である。

 

 

小さいおうち 久石譲

1. プロローグ
2. 僕のおばあちゃん
3. 上京
4. 赤い屋根のおうち
5. 昭和
6. タキと時子
7. 雨の日も風の日も
8. 南京陥落
9. 師走
10. 正治と恭一
11. 嵐の夜
12. タキの幸せ
13. 本当の所
14. タキの悲しみ
15. 開戦
16. 事件
17. 別れ
18. 手紙
19. B29
20. イタクラ・ショージ記念館
21. 時効
22. 小さいおうち

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (Track 1,11,20)
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute: Hideyo Takakuwa
Oboe & E.Horn: Satoshi SHoji
Clarinet: Kimio Yamane
Bassoon: Masao Osawa
Guitar: Masayoshi Furukawa
Hammered Dulcimer: Keiko Tachieda
Accordion: Hirofumi Mizuno, Patrick Nugier
Percussion: Marie Oishi
Harp: Yuko Taguchi
Piano & Celesta: Ryota Suzuki
Strings: Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Engineer: Suminobu Hamada
Manipulator: Yasuhiro Maeda(Wonder City Inc.)

 

Disc. 久石譲 『長谷川町子物語 ~サザエさんが生まれた日~』 *Unreleased

2013年11月29日 TV放送

 

放送日:2013年11月29日(金)21:00-
フジテレビ開局55周年特別番組 アニメ「サザエさん」放送45周年記念
TVドラマ 『長谷川町子物語~サザエさんが生まれた日~』

監督・プロデューサー:加藤義人 テーマ音楽:久石譲
出演:尾野真千子 長谷川京子 木村文乃 イッセー尾形 松坂慶子 他

 

 

メインテーマと姉妹、創造の音楽を書き下ろしている。全体的に、室内楽、小編成、弦楽四重奏のようなシンプルな響き。

メインテーマはピアノ、弦、チェロなどとともに、ピチカートやバンドネオンも聴かれ、とても優しい上品なメロディーであり、普遍的なそっと寄り添うような旋律。昭和的な、日本的なメロディーというよりも、あまり感情に訴えかけず主張しすぎないという直近の作風となっている。

一連の「ラーメンより大切なもの」 「イザベラ・バードの日本紀行」 「かぐや姫の物語」などがその作風の流れをくんでいる。シンプルであり、小編成であり、唄いすぎない、それでいてしっかりと印象や余韻を残す音楽。

昭和から愛され続けるサザエさんに呼応するかのように、時代に左右されない、時代を選ばない、そんなテーマ音楽になっている。

クラシカルな旋律と響きが印象的な作品。

 

楽曲情報
・MAIN THEME
・FAMILY
・CREATION
・SISTER

 

未発売作品であり未CD化作品。

 

 

長谷川町子物語