Disc. 久石譲 『かぐや姫の物語 サウンドトラック』

かぐや姫の物語 サウンドトラック

2013年11月20日 CD発売 TKCA-74030
2021年4月24日 LP発売 TJJA-10034

 

2013年公開 スタジオジブリ作品 映画「かぐや姫の物語」
監督:高畑勲 音楽:久石譲 主題歌:二階堂和美
演奏:東京交響楽団

 

宮崎駿監督の全10作品の音楽を担当した久石譲が
30年の時を経てついに初タッグとなる高畑勲監督の音楽担当

 

 

特別対談 [監督] 高畑勲 × [音楽] 久石譲
映画と音楽、その”到達点”へ。

高畑:
僕はこれまで久石さんにわざとお願いしてこなかったんです。『風の谷のナウシカ』以来、久石さんは宮崎駿との素晴らしいコンビが成立していましたから、それを大事にしたいと思って。でも今回はぜひ久石さんに、と思ったのですが、諸事情で一度はあきらめかけた。しかし、やはり、どうしても久石さんにお願いしようという気持ちが強くなったんです。

久石:
まずは絵を描くために必要な琴の曲を作るところから始めましたよね。

高畑:
その琴の曲がものすごくよかったんです。大事なテーマとして映画音楽としても使っていますが、初めて聴いたとき、お願いしてよかったと、心から安心したのを覚えています。

久石:
ビギナーズラックみたいなものですよ。大変だったのはそのあと。高畑さんから「登場人物の気持ちを表現してはいけない」「状況につけてはいけない」「観客の気持ちをあおってはいけない」と指示があったんです。

高畑:
久石さんは少しおおげさにおっしゃっています(笑)。でも主人公の悲しみに悲しい音楽というのではなく、観客がどうなるのかと心配しながら観みていく、その気持ちに寄り添ってくれるような音楽がほしいと。久石さんならやっていただけるなと思ったのは『悪人』(李相日監督)の音楽を聴いたからです。本当に感心したんですよ。見事に運命を見守る音楽だったので。

 

高畑:
阿弥陀来迎図という阿弥陀さまがお迎えにきてくれる絵があります。平安時代以来、そういう絵がたくさん残っているんですけれど、その絵の中で楽器を奏しているんですね。ところが描かれている楽器は正倉院あたりにしかないような西域の楽器ばかりで、日本ではほとんど演奏されていない。だから絵を見ても当時の人には音が聞こえてこなかったと思います。でも、打楽器もいっぱい使っているし、天人たちはきっと、悩みのないリズムで愉快に、能天気な音楽を鳴らしながら降りてくるはずだと。最初の発想はサンバでした。

久石:
サンバの話を聞いたときは衝撃的でした。「ああ、この映画どこまでいくんだろう」と(笑)。でも、おかげでスイッチが入っちゃいましたね。映画全体は西洋音楽、オーケストラをベースにしたものなんですけど、天人の音楽だけは選曲ミスと思われてもいいくらいに切り口を替えようと。ただ完全に分離させてしまうのもよくないので、考えた結果、ケルティック・ハープやアフリカの太鼓、南米の弦楽器チャランゴなどをシンプルなフレーズでどんどん入れるアイデアでした。却下されると思って持っていったのですが、高畑さんからは「いいですね」って。

高畑:
むしろ難しかったのは、捨丸とかぐや姫が再会する場面の曲です。それまで出てくる生きる喜びのテーマより、もうひとつ別のテーマが必要だと思ったんです。命を燃やすことの象徴として男女の結びつきを描いているので、幼少期の生きる喜びのテーマとは違う喜びがそこに必要ではないかと。それで別のテーマを依頼して書いていただいたのですが、やっぱり違うと思ってしまった。それで元に戻って、再び生きる喜びのテーマをここで高鳴らした方がいいと久石さんにお伝えしたら「最初からそう言ってましたよ」って(笑)。

久石:
直後に天人の音楽という今までの流れとはまったく違うテーマが出てきますからね。捨丸との再会シーンで切り口を替えちゃうと、ちょっと過剰になるんじゃないかという印象を持っていました。それで元通りでいきましょうということになったら、逆にものすごい勢いの曲が生まれましたよね。

久石:
自分にとって代表作になったということです。作る過程で個人としても課題を課すわけです。これまでフルオーケストラによるアプローチをずいぶんしてきたのが、今年に入って台詞と同居しながら音楽が邪魔にならないためにはどうしたらいいかを模索していて、それがやっと形になりました。

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

 

久石 「2012年の暮れに鈴木(敏夫)さんから「『かぐや姫の物語』の公開が延期されたので、『風立ちぬ』共々ぜひやってほしい」とご依頼をいただきました。そのときはビックリしましたね。まさか高畑さんとご一緒できるとは思ってもいませんでしたから。でも、僕は高畑さんをとても尊敬していましたし、高畑さんとご一緒できるのだったら、ぜひやりたいと、返事をさせていただきました。」

久石 「打ち合わせでは、Mナンバーで53まであったんですよ。53曲もあるということは、裏返せば、音楽が絶えず映像と共存していて、鳴っていることを意識させない書き方をしていかなければいけないということですね。ですから、音楽の組み立て方も大変でした。曲数が多い場合、メロディーを強調したりして音楽が主張し過ぎると、浮いちゃうんですよ。映像もムダをはぶいた省略形ですし、効果音も決して多くない。その意味でも、音楽は極力エッセンスみたいなもので勝負しないと映像との共存ができなくなってしまいますし、全体を引き算的な発想で作っていかないといけませんでした。そして、音もできるだけ薄く書く方法をとりました。もちろん、薄く書くというのは決して中途半端に書くということではありません。逆に、それに見合うメロディーを書かなければなりませんし、和音とか一切なくても成立するものを作らなければいけません。ワンフレーズを聴いただけで特徴が捉えられるようなものを、ですね。ペンタトニックのフリをしているんですけれども、実はコードに関してはかなり高等なことをやっています。」

久石 「高畑さんさんは音楽への造詣が深い方です。前に高畑さんが書かれた映画音楽についての文章を拝読したことがあるんですが、そこでは最終的な映画音楽の理想として「音楽と効果音が全部混ざったような世界」というようなことを書かれていました。なかなかそういうところまで理解する人はいませんし、そういうことも今回はできるという嬉しさを感じましたね。「光の音」についてはピアノを中心に、ハープ、グロッケン、フィンガーシンバル、ウッドブロックなどを掛け合わせて表現しています。今回は弦の特殊奏法も多いです。それは最近、現代音楽も手がけていることも含めた自分のパレットの中で、やれることは全部やろうとした結果ですね。その意味では比較的、自由に書いています。トータルで、今まであまりなかった世界に持ち込めたらいいなというのはありましたね。」

久石 「これは非常に重要なところなんですが、高畑さんから持ち出された注文というのが「一切、登場人物の気持ちを表現しないでほしい」「状況に付けないでほしい」「観客の気持ちを煽らないでほしい」ということでした。つまり、「一切感情に訴えかけてはいけない」というのが高畑さんとの最初の約束だったんです。禁じ手だらけでした(笑)。例えば「”生きる喜び”という曲を書いてほしいが、登場人物の気持ちを表現してはいけない」みないな。ですから、キャラクターの内面ということではなく、むしろそこから引いたところで音楽を付けなければならなかったんですね。俯瞰した位置にある音楽といってもいいです。高畑さんは僕が以前に手がけた『悪人』の音楽を気に入ってくださっていて、「『悪人』のような感じの距離の取り方で」と、ずっとおっしゃっていました。『悪人』も登場人物の気持ちを表現していませんからね。」

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ビジュアルガイドより 抜粋)

 

 

久石:
今回の場合、高畑さんご自身で作詞作曲された”わらべ唄”という曲がすでにありました。それがもう5音音階でつくられてしまっているんです。”わらべ唄”は結構重要なシーンで使われるので、そうすると、それを加味した上でトータルの音楽をどうつくっていくかというふうに考えます。であるならば、必然的にこちらもある程度5音音階を使用したものをつくらないと整合性が取れない。ただ5音音階というのは下手すると本当に陳腐なものになりやすいので難しいですね。全体として日本の音階が主体になっているんですが、それを感じさせないようにするにはどうするかというのがかなり大変でした。例を挙げるとマーラーの “大地の歌” 。あれは李白の詩を使って、出だしから非常に5音音階的なんです。マーラーのような、同じ5音音階を使っても全然別口に聴こえるようなアプローチであるとか、そういうようなものを考えました。あとは、アルヴォ・ペルトという現代の作曲家なんですが、すごくシンプルで単純な和音を使う人のものとか。そういうものを参考にしながら全体を高畑さんが考えられている世界に近づけるようにしていく作業でしたが、それがだんだんと、高畑さんに似てきてしまって。僕も相当論理的に考えるほうなので、思考法が似てる、などと言うと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、ひとつひとつ理詰めでつくっていきました。でも普通なら、今回のように主題歌がついて、大事なところで使われる曲もすでにあったら間違いなく断っています。いろいろなものをくっつけられてしまうと最終的に音楽全部に責任持てないですから。でも高畑さんのことはとても尊敬していたので今回はお引き受けしたんです。

久石:
書いた曲のチェックは、高畑さんは「想像できるのでピアノスケッチで大丈夫です」と言ってくださっていたので、ピアノスケッチを送っていました。だんだんとそれにオーケストラの色をつけたものをまた送る。これを六十数曲ずっと繰り返したわけです。送るたびにバッと修正オーダーが来る。高畑さんの場合は特に多く、「また来たか」みたいな。「またこんなにですか(笑)」とか。ところがある時期を越えたら、台詞とぶつかると音楽が損だからと、台詞とメロディーの入るタイミングをちょっと遅らせて欲しいとか、そういう修正が多くなってきたんです。その辺りから完全に高畑さんとシンクロしましたね。

久石:
例えば、台詞とぶつかると音楽は小さくせざるを得ない。台詞が聞こえないと困るから。だから「音楽が損だから遅らせましょう、そうしたら小さくしないで済む」ということを具体的に言う監督は数えるほどしかいない。これは音楽を大切にしていただいている証拠です。どう考えても映画ですから、何をしゃべっているのか分からないとマズい。だから台詞は聞かせないといけない、でも音楽をそのために小さくするのは忍びない、だから、タイミングを変えて欲しい。という言い方ですから、これはもうほんとうにありがたいですよね。おかげで音楽は変拍子だらけになりましたけど、こんな素晴らしい人はそうそういません。

久石:
今作のような、ああいう絵のタッチは、音楽をつくるのにも完全に影響しましたね。あの絵は引き算の発想ですね。全部写実するより無駄なものを外す、ということは、音楽も同じなんです。効果音もそうですし、要するにすべて、必要最低限にシンプルにつくらなければいけない。つまり、オーケストラでガーンと派手にいくより、エッセンスをどこまで薄くするか。で、最初の打ち合わせでは五十数曲必要と言われたけれど、最終的には40曲ぐらいに落ち着くだろうと思っていた。一応ピアノのスケッチを書くけど、どうせ削られるのであれば、もう異様に薄く書いてしまおうと思って、薄く書いたんですよ。そしたら、全部採用になってしまって。でも考えれば、最初から高畑さんも極力シンプルにするということはおっしゃっていましたし、構築された音楽よりも、非常にシンプルなんだけど、力強いものがいいって。

久石:
いわゆる省略形の、すごく引いたもの。その発想というか思想というか考え方は、音楽にも効果音にもすべてに徹底されるなと思ったので、自分も引き算の発想でつくったんです。そうしないと音楽が浮いてしまう。感情を押し付けて「ここは泣くように」という感じの音楽を「泣きなさい」と書くよりは、その悲しみを受け止めつつも3歩ぐらい引いたところで書くと、観客のほうが自動的に気持ちがそこにいくんですよね。高畑さんは今回それをかなり何度もおっしゃっていて、僕もいちばん気を付けたところですね。

久石:
でも高畑さん、意外にオーケストラの音などにはこだわっていないんです。良けりゃオーケストラでもいいんですという感じでしたね。だから、こちらからもどんどん変えたりもしました。途中でリュート、ルネッサンスのギターみたいなものを使いますと提案したときも、絶対変えたほうが高畑さんは喜ぶと確信していたから。それで実際に変えても、なにも言わないというか「あ、いいです、いいです。これでいいです」だけ。音楽的なことで、今回ものすごく注意したのは、メロディーの楽器をフルートだとか弦などのように音がピーと伸びる楽器を極力少なくしたんです。ピアノやハープだとかチェレスタとか、要するに弾いたら音が全部減衰していく楽器、アタックを抑えたそれらを中心に据えました。そうすると、ポンと鳴るけれども消えていくから、台詞を食い辛いんですよ。もちろん五十数曲と多いので「音楽うるさいな」となると終わってしまうから、うるさくしないための方法なんですが。ただ、そうすると、ピアノ、ハープ、チェレスタ、グロッケンなどと楽器が限られちゃうので、それでもうひとつさっき言ったリュートというのを加えることで、その辺の音色をちょっと増やして、できるだけ台詞と共存できるように組んでいったんです。だから発想としては「リュートの音っていいよね」ではないんです(笑)。感覚的じゃなくて、減衰系の楽器で色が必要だ、と。そういうふうに論理的に決めたんです。高畑さんみたいでしょ?たぶんそこは似てるんだと思います。高畑さんと同じというとおこがましいから、ちょっと似ている程度で(笑)。

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より 抜粋)

 

 

 

鈴木:最高の作品は、運も味方につける
『ナウシカ』と『天空の城ラピュタ』で、宮崎☓久石の名コンビが世間にも認知された。どちらも音楽担当をしていた高畑さんは、「だから自分が映画を制作するときには、久石さんに音楽を頼むことはできない」と話していたんです。ところが、突如『かぐや姫の物語』の音楽は、久石さんにお願いしたいと言い出した。

当初、『風立ちぬ』との同日公開を目論んでいた僕は、困ってしまった。その両作を久石さんがやるのはどうかと。

そこで宮さんがどう思うかと話しに行きました。「久石さんもかぐや姫の音楽をやりたがってるし、高畑さんもお願いしたいと言っている」と。そういうとき、宮さんはすこしキレ気味に、決まってこう言うんです。

「そんなことは、久石さんが決めればいいんだ!俺の知ったこっちゃない」

このときもそう話した途端に、「久石さんやっちゃうよな~。マズイよ、鈴木さん。久石さんを阻止してよ。『風立ちぬ』だけでいいよ!パクさん(高畑勲)は他の人がいっぱいいるじゃん」と言うんですよ。

結局、『かぐや姫』のほうの制作が遅れて、公開が4ヵ月延期されることになり、改めて久石さんにお願いしました。同日公開はできなかったけれど、作品として、これは本当に運が良かった。

Blog. 「オトナの!格言」 鈴木敏夫×久石譲×藤巻直哉 対談内容紹介 より)

 

 

 

 

 

 

2021年発売LP盤には、新しく書き下ろされたライナーノーツが封入された。時間を経てとても具体的で貴重な解説になっている。

 

 

 

 

日本の純音楽、忘れていた日本古来の旋律や楽器の響き。絶妙のさじ加減で古来の伝統音楽と現代の音色が織り重なっている。美しい旋律、独特な日本の美を感じさせる和楽器。

高畑勲監督による約14年ぶり、8年の構想期間を費やしたこの作品は、日本アニメーション界に大きな布石を打つことは間違いない。そしてそれは久石譲によるこの映画音楽も同じだと思う。

この作品には日本の文化が詰まっている。現代人が忘れていたもの、失くしたものが、ここには眩く輝いている。日本人で良かった、日本を誇りに思う、そんな作品。

 

 

 

かぐや姫の物語 サウンドトラック

1.はじまり
2.光り
3.小さき姫
4.生きる喜び
5.芽生え
6.タケノコ
7.生命(いのち)
8.山里
9.衣
10.旅立ち
11.秋の実り
12.なよたけ
13.手習い
14.生命(いのち)の庭
15.宴
16.絶望
17.春のめぐり
18.美しき琴の調べ
19.春のワルツ
20.里への想い
21.高貴なお方の狂騒曲(ラプソディ)
22.真心
23.蜩(ひぐらし)の夜
24.月の不思議
25.悲しみ
26.運命(さだめ)
27.月の都
28.帰郷
29.帰郷
30.天人の音楽Ⅰ
31.別離(わかれ)
32.天人の音楽Ⅱ
33.月
34.いのちの記憶 (唄:二階堂和美)
– – – – – – – – – – – – –
35.琴の調べ
36.わらべ唄 (作曲:高畑勲)
37.天女の歌 (作曲:高畑勲)

作曲・編曲・プロデュース:久石譲

指揮:久石譲
ピアノ:久石譲 (Track 12,31,33)
演奏:東京交響楽団
ゲスト・コンサートマスター:近藤薫
Lute:金子浩 (Track 10,15,26,28)
古箏:姜小青 (Track 18,23,25)

天人の音楽 (Track 30,32)
Whistle,Charango,Guitar,Celtic Harp,Harp,W.Bass,Percussion,篳篥,竜笛

録音:ミューザ川崎シンフォニーホール、Bunkamura Studio
ミキシング:Bunkamura Studio

 

 

【初回プレス限定特典】特典ディスク PSCD-2479
・映画「かぐや姫の物語」音源 (ジャケットと別絵柄の紙ジャケ仕様)
・映画収録曲よりサウンドトラック未収録音源5曲を収録
・紙ジャケット仕様 Discプリントはレコード盤デザイン

かぐや姫の物語 サウンドトラック 特典CD

1. なよ竹のかぐや姫(古筝)
2. 名付け披露(田楽)
3. タカラモノ(古筝)
4. 公卿たち(雅楽)
5. レンゲ草(古筝)

 

The Tale of the Princess Kaguya (Original Soundtrack)

1.Overture
2.Light
3.The Little Princess
4.The Joy of Living
5.The Sprout
6.Li’l Bamboo
7.Life
8.Mountain Hamlet
9.Robe
10.Setting Out
11.Autumn Harvest
12.Supple Bamboo
13.Writing Practice
14.The Garden of Life
15.The Banquet
16.Despair
17.The Coming of Spring
18.Melody of the Beautiful Koto
19.Spring Waltz
20.Memories of the Village
21.The Nobles’ Wild Ride
22.Devotion
23.Cicada Night
24.Mystery of the Moon
25.Sorrow
26.Fate
27.The City of the Moon
28.Going Home
29.Flying
30.The Procession of Celestial Beings I
31.The Parting
32.The Procession of Celestial Beings II
33.Moon
34.When I Remember This Life
35.Koto Melody
36.Nursery Rhyme
37.Song of the Heavenly Maiden

 

가구야공주 이야기 Original Soundtrack
(South Korea, 2013) PCKD-20219

1.시작
2.빛
3.작은 공주
4.삶의 기쁨
5.발아
6.대나무순
7.생명
8.산골
9.옷
10.여행
11.가을의 열매
12어린 대나무
13.연습
14.생활의 정원
15.잔치
16.절망
17.봄의 순례
18.아름다운 현의 연주
19.봄의 왈츠
20.마을에 대한 추억
21고귀한 분의 광소곡
22.진심
23.매미의 밤
24.달의 신비
25.슬픔
26.운명
27.달의 도시
28.귀향
29.비상
30.천인(天人)의 음악 Ⅰ
31.이별
32.천인(天人)의 음악 Ⅱ
33.달
34.생명의 기억
35.현의 연주
36.전래동요
37.선녀의 노래

 

Disc. 久石譲 『スイートハート・チョコレート』 *Unreleased

2013年 中国公開

 

2013年 映画「スイートハート・チョコレート」(原題:甜心巧克力)
監督:篠原哲雄 音楽:久石譲 出演:リン・チーリン 他

2012年制作、日中合作映画である本作品は、日本では2012年10月20日-28日に行われた「第25回東京国際映画祭」にて期間上映された。2013年11月2日、第13回韓国光州国際映画祭で最高賞の審査員大賞を受賞し、中国国内でもメディアの注目度が急上昇している。そんななか中国国内で11月08日から上映開始されることが決定。

 

 

メインテーマは切ないピアノの旋律。1音1音丁寧に、お互いの愛を確かめあうような美しいメロディー。チェロによる主曲もまた悠々としっとりと歌い上げている。哀愁漂う叙情的なメロディーが印象的。他にもギターやピチカートによる軽快でリズミカルな曲も含まれている。

全体的にはシンプルなアコースティックサウンド。隠し味的に使用されているシンセサイザーのバックグラウンドもちょうどいい。映画のとおりハートウォーミングな音楽となっている。

 

日本公開日:2016年3月26日

 

 

甜心巧克力 スイートハートチョコレート

 

 

Disc. 久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

2013年7月17日 CD発売 TKCA-73920
2021年4月24日 LP発売 TJJA-10033

 

2013年公開 スタジオジブリ作品 映画「風立ちぬ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲
演奏:読売日本交響楽団

 

宮崎・久石コンビ最後の長編作品。本作はサントラ盤のみが制作された。映画本編はモノラルだがCDはステレオ収録。

読売日本交響楽団によるフルオーケストラ演奏ほか、バラライカ・マンドリン・バヤン・アコーディオ等の民族楽器での楽曲も印象に残るサウンドトラック。荒井由実の歌う主題「ひこうき雲」も収録。録音は2013年5月。

 

 

「まずは、オーケストラを小さな編成にしたことです。宮崎さんも「大きくない編成が良い」と一貫して言っていました。それから鈴木プロデューサーから出たアイデアで、ロシアのバラライカやバヤンなどの民族楽器や、アコーディオンやギターといった、いわゆるオーケストラ的ではない音をフィーチャーしたことです。それによっても、今までとは違う世界観を作り出せたんじゃないかと思います。」

「オープニング曲は、飛行機が飛び立つまでは、ピアノがちょっと入るくらいで、あとは民族楽器だけです。大作映画では、頭からオーケストラでドンと行きたくなりますけど、それを抑えたのが凄く良かったですね。二郎の夢の中なので、空を飛んだとしても派手なものになるわけではないと、宮崎さんは言っていましたし、僕としても、観る人の心を掴むオープニングに出来たと思っています。この曲があったから、映画全体の音楽が「行ける!」と感じました。」

「モノラルは一カ所から音が出るから、それぞれの楽器の微妙なバランス調整が必要になるんです。通常よりも細かい作業が必要で、不眠不休の状態が続きました。でも左右が無く、遠近だけというところに面白さがあって、上手く行くとパァッと音の空間が広がるんです。やっぱりレコーディングの基本はモノラルにあると思いました。良い経験をすることが出来ました。」

「効果音というのは、普通は人間の生理とは無関係の音なんです。でも、それを人間が口で作ると生理的な音になって、音楽に割り込んで来る。そこは宮崎さんとも話をして、色々調整しました。最終的には効果音も加工が入ってシンプルになり、音楽、セリフと調和して良い感じになったと思います。ここでも、モノラルで音の出どころを一点に集中したことが良かったですね。」

Blog. 久石譲 「風立ちぬ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「自分と映画が同化するくらい真剣になって書くようになったんですよね。音楽家として映画に携わったというスタンスよりも、自分が映画の一員になり、監督の分身になるくらいに入り込む。以前は音楽家としての野心みたいなものも強かったけれど、『悪人』(2010年)以降かな、引くことを覚えた。映画と音楽が一体化したとき、どう観客に訴えかけるか、どう伝えるかを中心に考えるようになったんです。音楽はドレミファソラシドと半音を足して、12個の音の組み合わせでしかない。それにリズムとハーモニーでしょ。しかも映画音楽では調性やメインテーマが求められるわけだし、映像やセリフ、効果音などとのバランスや制約もある。やれる範疇が決まってるんです。非常に限定されているなかでオリジナリティを出すのは、本当に大変な作業なんですよ」

Blog. 久石譲 「風立ちぬ」 インタビュー月刊ピアノ2013年8月号より 抜粋)

 

 

「結構苦しみましたし、大変でした。というのも、今までのファンタジーとは違って、今回は実写に近い。そういう場合、テーマ曲はどうあるべきなのかをつかむまでに時間がかかった」

「宮崎さんの作品は世界中の人が待っていますからね。音楽にも格が必要だと思っていたので、今回もですが、ホール録音が多いんです。でも、『今回は大きくない編成がいいんだ』というので、そのスタイルを切り替えた。これはかなり難しかった。オーケストラにはないものをフィーチャーし、結果的に一番小さい編成になった。今までとは違う世界観を持ち込んだつもり」

「作曲というのは点ではなく線。一つの仕事をすると、必ずやりきれなかったことや反省が出てくる。弦の使い方が良くなかったなとか、ちょっとうるさく書きすぎた、とか。それを次の作品でクリアしていく。クリアしても、次の問題が出てくる。宮崎さんの作品はほぼ4年に1度。オリンピックのようなもの。節目節目でクリアしなければいけない課題が出てくるんです」

Blog. 久石譲 「風立ちぬ」 インタビュー スポーツ報知特別号より 抜粋)

 

 

久石:
あとね、実はドルビー・サラウンドっていうのは劇場の中でも真ん中の数メートル以外関係ないんですよ。(4人だけ、)そこで聴かない限りは完全なサラウンドってわからないんですよ。どちらかによっちゃうから。ところがモノラルって一番隅でも一番前でも後ろでも右でも左でも、まったく同じなんですよ。だからそういう意味でいうと、モノラルっていうのは本来、実は「ナウシカ」がモノラルだったですよね公開、でもそんなの誰も感じない、すごくいいんですよ。ところがその技術がもうなくなっちゃって、モノラルレコーディングを全然体験していない人たちでモノラルを作るわけだから、これ逆に言うと非常に労力がかかる。だってその技術は廃れてなくなってたはずなんだよね、それをあえてモノラルでいくってなると、そのための準備がまたすごくかかった。(効果音には人の声も使った)ちょっと音程があったんで一部直してもらったんですよね。声でやっちゃうとどうしても音程が出ちゃうところがあったんで、直してもらって、それで全体がわりと音楽となじむようにしてもらうっていう経過はあります。

久石:
(バラライカ、バランなどの民族楽器を使ったのは)これは鈴木さんのアイデアなんですよね。「ドクトル・ジバゴ」でしたっけ、ちょっとね全体にああいうロシア的な匂いをさせたらどうかみたいな話があって。僕も、大きい大河ドラマのように動いてる話なんだけど、個人にスポットを当てるような話なので、そこで翻弄されるでもなく、ちゃんと自分を保ってる個人の人間にスポットを当てるっていったときに、音楽はどういうところに焦点絞るかなっていうところで、それはわりと鈴木さんとよく話し合いましたね。で、ちょっとロシア調にしようか、みたいなのはちょっとありました。

鈴木:
宮崎が好きだと思ったんですよ。音色に弱いから(笑)。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

 

2021年発売LP盤には、新しく書き下ろされたライナーノーツが封入された。時間を経てとても具体的で貴重な解説になっている。

 

 

 

2013年7月3日 Digital Single発売

ひこうき雲/荒井由実

 

 

映像特典中「宮崎さんと久石譲さん」チャプターに、久石譲が登場している。さらに、3曲目「カプローニ(設計家の夢)」レコーディング風景が収録されている。

 

 

 

映画本編と映画予告編ではメインテーマ「旅路」が少し異なる。

 

 

いつもの品格あるジブリ音楽であり、これまでとは次元の違う新しい世界観。

「ファンタジーはやらない」と公言していた宮崎駿監督だけに、壮大な二管編成フルオーケストラでファンタジー感を演出するのとは対極に、シンプルな小編成の音楽がリアリズムの演出に功を奏している。

オープニングから流れる印象的なメインテーマ「旅路」は、主人公 二郎のテーマであり、宮崎駿監督の『今回のテーマは「旅」である』という構想をもとにされている。美しいメロディーもさることながら、その旋律を凛と立たせている楽器は、ロシアの代表的な弦楽器である「アルトバラライカ」や同種のマンドリン、同じくロシアのアコーディオン「バヤン」といった民族楽器。

メインテーマ「旅路」はストーリー展開やそのシーンに寄り添うように、時にストリングスに、時に管楽器にと、そのモチーフも色彩豊かに表現されている。同じメロディーでもここまで印象が違うものかと感嘆させられる。昭和の日本の香りがするかと思えば、イタリアの爽やかな風が吹いてくる。まさに魔法の旋律である。

もうひとつのテーマである「菜穂子」では、切なくも美しい清く生きた女性の姿が、ピアノやストリングスで涙腺にふれる。

「カプローニ」では美しい夢をもった者の誇り、時空を超えた対峙が、勇壮な旋律で高揚感ある鼓動が響いている。

「隼班」「紙飛行機」などでは、研ぎ澄まされたミニマル・ミュージックを堪能できる。ピアノとヴァイオリンの高音が緊張感と気品を見事に表現している。ここまでシンプルながらも、相反する張り詰めた躍動感を感じる術はすごい。

まさに至高の映画音楽。上品なバロック音楽、室内楽のようなクラシカルな響きであり、日本とイタリア、夢と現実、男と女、生と死、と言った二極的な世界を、最高のメロディーと最高の楽器編成により表現されている。

久石譲本人は「ひとつの作品にこれだけ長く時間をかけたのは初めてだし、一番苦しんだ作品かもしれない。」とその約2年間にも及んだ制作過程を振り返っている。

また劇中音楽はすべてモノラル音源となっている。「全体にわたって細部のバランスを調整しないといけなくなり、通常よりも細かい作業が大変だった。それがうまくいくと空間が広がっていく。」と久石譲本人も語っているとおり、新しい試みとなっている。

本作品はもちろんステレオ音源だが、【先着購入特典CD】には映画本編で使用されたモノラル音源にて、旅路(夢中飛行) / 菜穂子(めぐりあい) の2曲が特別収録されている。音楽の原点はモノラルというとおり、確かに懐かしさもあり、心地良い音の広がりも感じることができる。1ヶ所からしか鳴っていない音にも関わらず、各楽器や各旋律の広がりや奥ゆきを体感することができる贅沢な特別収録。

また映画「風立ちぬ」では過去のスタジオジブリ作品 宮崎駿監督では恒例となっていたイメージアルバムも制作されていない。

映画同様、音楽も新しい挑戦にして現時点での最骨頂とも言えるのではないだろうか。まさに「風立ちぬ」の音楽世界を堪能するには唯一にて至高の1枚となる。

 

 

 

久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

1. 旅路 (夢中飛行)
2. 流れ星
3. カプローニ (設計家の夢)
4. 旅路 (決意)
5. 菜穂子 (出会い)
6. 避難
7. 恩人
8. カプローニ (幻の巨大機)
9. ときめき
10. 旅路 (妹)
11. 旅路 (初出社)
12. 隼班
13. 隼
14. ユンカース
15. 旅路 (イタリアの風)
16. 旅路 (カプローニの引退)
17. 旅路 (軽井沢の出会い)
18. 菜穂子 (運命)
19. 菜穂子 (虹)
20. カストルプ (魔の山)
21. 風
22. 紙飛行機
23. 菜穂子 (プロポーズ)
24. 八試特偵
25. カストルプ (別れ)
26. 菜穂子 (会いたくて)
27. 菜穂子 (めぐりあい)
28. 旅路 (結婚)
29. 菜穂子 (眼差し)
30. 旅路 (別れ)
31. 旅路 (夢の王国)
32. ひこうき雲 歌:荒井由実

作曲・編曲・プロデュース:久石譲

指揮:久石譲
ピアノ:久石譲 (Track 5,18,27,28,29)
演奏:読売日本交響楽団
バラライカ & マンドリン:青山忠
ギター:千代正行、古川昌義
バヤン & アコーディオン:水野弘文

音楽収録:東京芸術劇場、ビクタースタジオ
ミキシングスタジオ:Bunkamura Studio

 

 

【先着購入特典CD】
サントラCDはステレオ録音商品
「風立ちぬ」の映画音楽はすべてモノラル音源
特典CDは映画で使用されたモノラル音源を特別に収録
収録曲:旅路(夢中飛行)/菜穂子(めぐりあい) 以上2曲
紙ジャケット仕様 Discプリントはレコード盤デザイン

風立ちぬ サウンドトラック 特典CD MONO

1.旅路(夢中飛行)≪MONO≫
2.菜穂子(めぐりあい)≪MONO≫

 

The Wind Rises (Original Soundtrack)

1.A Journey (A Dream of Flight)
2.A Shooting Star
3.Caproni (An Aeronautical Designer’s Dream)
4.A Journey (A Decision)
5.Nahoko (The Encounter)
6.The Refuge
7.The Lifesaver
8.Caproni (A Phantom Giant Aircraft)
9.A Heart Aflutter
10.A Journey (Jiro’s Sister)
11.A Journey (First Day at Work)
12.The Falcon Project
13.The Falcon
14.Junkers
15.A Journey (Italian Winds)
16.A Journey (Caproni Retires)
17.A Journey (An Encounter at Karuizawa)
18.Nahoko (Her Destiny)
19.Nahoko (A Rainbow)
20.Castorp (The Magic Mountain)
21.The Wind
22.Paper Airplane
23.Nahoko (The Proposal)
24.Prototype 8
25.Castorp (A Separation)
26.Nahoko (I Miss You)
27.Nahoko (An Unexpected Meeting)
28.A Journey (The Wedding)
29.Nahoko (Together)
30.A Journey (A Parting)
31.A Journey (A Kingdom of Dreams)

 

바람이 분다 Original Soundtrack
(South Korea, 2013) PCKD-20218

1.여로 (몽중비행)
2.유성
3.카프로니 (설계가의 집)
4.여로 (결의)
5.나호코 (만남)
6.피난
7.은인
8.카프로니 (환상의 거대기)
9.설레임
10.여로 (누이동생)
11.여로 (첫출근)
12.The Falcon Project
13.The Falcon
14.융커스
15.여로 (이탈리아의 바람)
16.여로 (카프로니의 은퇴)
17.여로 (가루이자와의 만남)
18.나호코 (운명)
19.나호코 (무지개)
20.카스트로프 (마법의 산)
21.바람
22.종이비행기
23.나호코 (프로포즈)
24.Prototype 8
25.카스트로프 (이별)
26.나호코 (보고 싶어서)
27.나호코 (우연한 만남)
28.여로 (결혼)
29.나호코 (눈빛)
30.여로 (이별)
31.여로 (꿈의 왕국)
32.비행기 구름

 

Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』

2013年6月26日 CD発売 UMCK-1450

 

NHKスペシャル シリーズ「深海の巨大生物」
2013年1月13日放送 第一部
「NHKスペシャル 世界初撮影!深海の超巨大イカ」

第二部
■第1回「伝説のイカ 宿命の闘い」
放送日時:2013年7月27日(土)午後7時30分~ NHK総合
■第2回「謎の海底サメ王国」
放送日時:2013年7月28日(日)午後9時00分~ NHK総合

音楽:久石譲 演奏:NHK交響楽団 東京ニューシティ管弦楽団

 

 

久石譲さんインタビュー
番組音楽にかけた想い

NHK 深海 1

「深海」は当然のことながら、地上ではない。我々は地上で生きていますから、そこから考えると、とても深いところ、遠い次元になりますよね。音楽的に言うと、実は深海は宇宙の物語、宇宙と同じ空間であるということが大事なんです。

ただ、宇宙と深海の大きな違いは「水」ですから、今回ハープを2台起用して、フランス印象派的な、ドビュッシーやラヴェルのような世界観を持ち込もうというのが最初の狙いでもありましたね。

このハープがさまざまなパッセージを奏でているところに、和音感などの凝った形を取ることで、深海の不思議な感じを出せるのではないかなと考えました。

NHK 深海 2

今回は「ダイオウイカ」に続いて、「サメ」の曲をつくるということで、最初は苦しむのではないか…という嫌な予感がありましたね(笑)。サメと聞けば、あまりにも有名なジョン・ウィリアムズが作曲した映画『ジョーズ』のテーマ曲がありますから、それしか頭に浮かばないのではないかと思っていたんです。

ところが映像を見せてもらうと、メガマウスは想像していたどう猛なサメとはまったく違っていた。プランクトンを食べたり、サクラエビを食べたり、とても草食系な感じを受けたんです。メガマウスの優しい性格と、時間軸を超えたようなゆったりした広がりをその映像から感じ取ったときに、これならできると思って。メガマウスのイメージをつかめた瞬間から、対比としてどう猛なカグラザメには、不協和音を思いっきりぶつけたり、現代音楽的なアプローチを広げることができて、とても取り組みやすくなりました。

NHK 深海 3

さらに今回、プロデューサーの岩崎弘倫さんから、生きものの連鎖、輪廻を表現してほしいという依頼がありました。

話を伺う中で、いろんな生きものが他のものを食べ、それらがまた他のものを食べるという光景が、ある種宗教的、哲学的なテーマに感じましたね。その普遍的なテーマに対して僕自身も興味を持ち、力を入れて書きました。

書き上がったものは、かなりゆっくりした楽曲なのですが、NHK交響楽団の方々が素晴らしい演奏をしてくださり、とても満足できる作品に仕上がっています。 映像と音楽のめぐり逢いを楽しんでいただきたいですね。

NHK 深海 4

(久石譲インタビュー 出典元:NHK 深海プロジェクト 番組にかけた想い より)

 

 

メインテーマ(1)は、神秘的な深海の世界をあますことなく表現している。フルオーケストラの壮大かつ悠々とした広がりのある響きと、各楽器たちが織りなす旋律が、まさに多種多様な深海の生き物たちを、そして未知の世界の不思議さを感じとることができる。

メインテーマにも関わらず、いい意味でつかみどころのない不思議なメロディーが、未だなお解明されていないことの多い深海の世界、つまりは海の宇宙に対してこれからも探究が続いていく世界であることを予感させる。

ミステリーとロマンの大航海を彷彿とさせる(2)「ミステリー&ロマンへの誘い」、変拍子のリズムがまるで生き物のような躍動感を放つ(3)「海の世界」、シンセサイザーの不思議な音色と旋律が深く深く神秘の世界へ誘う(7)「神秘の海中」、悠々としたストリングスがその品格と高貴さを感じる(11)「ダイオウイカのテーマ」、ピアノで美しく優しく語りかけてくる(13)「達成~メインテーマ~」など、深海の魅力がぎっしりとつまっている。

第二部からも、寄せては返す波のように、解明してはまた新しい謎が現れるというくり返し、そんな深海の迷宮をダイナミックに表現した(16)「深まる謎」、どう猛なカグラザメと優しい性格のメガマウスをうまく対比した(18)と(20)、そして生き物の輪廻、生命の尊厳を高らかに讃歌する(21)「輪廻」、と、その魅力は尽きない。

久石譲本人も本作品の制作について、「音楽的に言うと、実は深海は宇宙の物語、ただ宇宙と深海の大きな違いは「水」、今回ハープを2台起用して、フランス印象派的な、ドビュッシーやラヴェルのような世界観を持ち込もうとしたのが狙いでもある。ハープが様々なパッセージを奏でているところに、和音感などの凝ったかたちを取ることで、深海の不思議な感じを出せるのではないかと考えた。」と語っている。

またプロデューサーからの「生き物の連鎖、輪廻を表現してほしい」との依頼からそれに応えるべく「ある種宗教的、哲学的、そして普遍的」なテーマに対して、魅力のある壮大な音楽世界を築きあげている。

世界も大注目のビッグニュースとはいえ、ひとつの番組において、ここまでの音楽的世界観の作り込みとしては贅沢な作品である。

映画「崖の上のポニョ」、映画「海洋天堂」、映画「水の旅人」などもそうだが海や水の世界観の表現は本当にすばらしい。そこにはダイナミックな躍動感と、緻密で精細なオーケストレーションという、ふたつの対極的な要素が見事に融合している。

ダイナミクスな海、宇宙、巨大生物から、ミクロな微生物やプランクトン、得体のしれない未知の生命体、そして化石まで命あるすべてのものが、ひとつひとつの旋律に楽器に宿っている。

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』

第一部
1.NHKスペシャル深海 メインテーマ
2.ミステリー&ロマンへの誘い
3.海のテーマ
4.科学者たち
5.世紀の大調査
6.ダイブ開始
7.神秘の海中
8.初めての発見
9.セカンドコンタクト
10.挑戦
11.ダイオウイカのテーマ
12.深海へ帰る
13.達成~メインテーマ~
第二部
14.海に生きる大きな生物
15.奇跡の大陸ニッポン
16.深まる謎
17.海の生命力
18.深海の強者 カグラザメ
19.科学者たち~愛~
20.メガマウスのテーマ
21.輪廻
22.NHKスペシャル深海 エンディングテーマ

All Music Composed and Produced by Joe Hisaishi

Performed by Tokyo New City Orchestra
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by NHK Symphonic Orchestra (except M-1,8,20,21,22,23,24) 
Conducted by Junichi Hirogami (except M-1,8,20,21,22,23,24) 

Recorded at NHK509Studio , NHK506Studio
Mixed at NHK604Studio

Orchestration:Joe Hisaishi , Junichi Nagao

 

 

クレジット誤植の可能性あり

推測する正しくは

Performed by NHK Symphonic Orchestra (M-1,15,16,17,18,20,21) 
Conducted by Junichi Hirogami (M-1,8,20,21,22,23,24) 

exceptでもない

 

理由

JASRACより(形式:JASRAC番号 – タイトル – ディスク番号)
引用:
M-01 NHKスペシャル深海 メインテーマ (01)
M-02 NHKスペシャル深海 エンディングテーマ (22)
M-03 海のテーマ (03)
M-04
M-05 海に生きる大きな生物 (14)
M-06 ダイブ開始(06)
M-07 神秘の海中 (07)
M-08 海の生命力 (17)
M-09 世紀の大調査 (05)
M-10 挑戦 (10)
M-11 達成~メインテーマ~ (13)
M -12 深海へ帰る (12)
M-13 高温&ロマンへの誘い (02)
M-14 ダイオウイカのテーマ (11)
M-15
M-16 初めての発見 (08)
M-17 セカンドコンタクト (09)
M -18 科学者たち (04)
M-19 科学者たち~愛~ (19)
M-20 輪廻 (21)
M-21 深海の強者カグラザメ (18)
M-22 奇跡の大陸ニッポン (15)
M-23 未知の謎 (16)
M-24 メガマウスのテーマ (20)

 

 

Disc. 久石譲 『奇跡のリンゴ オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『奇跡のリンゴ オリジナル・サウンドトラック』

2013年6月5日 CD発売 UMCK-1449

 

2013年公開 映画「奇跡のリンゴ」
監督:中村義洋 音楽:久石譲 出演:阿部サダヲ 菅野美穂 他

 

 

コンセプトは、”津軽のラテン人”でした。

-今回の音楽設計はどのようになされたのですか。

久石:
台本を読んだら、単なるハートウォーミング路線の映画ではなくて、しっかり人間が描かれていました。そこで、まず全体をつなぐメインテーマとして「リンゴのテーマ」のようなものと、夫婦愛が出てくるので愛のテーマが必要だろうと。それを一旦書いたんですけど、青森ロケを見学させていただいたときに幸か不幸か、木村さんにお会いしちゃいまして(笑)。あの天真爛漫さを出すには、もうひとつ別のテーマを作らなければいけないと思ったんです。そこから結構、悩みました。結果としてたどり着いたコンセプトが「津軽のラテン人」(笑)。オーケストラのほかにマンドリンとウクレレ、口琴(ジューズハープ)を使って、なんとか木村さんの陽気さを出せないかと工夫しました。どちらかというとイタリア的なラテン感覚ですね。そんな感じの明るさが音楽で出せたらいいなと。

 

-ご苦労された部分となると、どのあたりでしょうか。

久石:
夫婦愛やリンゴ栽培の難しさを描く部分と、木村さんのキャラクターをどう両立させるか、ですね。ジューズハープって、一歩間違えると漫画チックになってしまうでしょう。あと、山崎努さん演じる父親のラバウルの話をどれだけきっちり書くか、山へ木村さんが自殺を図りに行くくだりの長いシーンをどうするかという配慮は大変でした。何より、エンターテインメントに落とし込まなければいけない作品ですからね。実は観客が一番シビアにご覧になるジャンルです。中途半端なことをやってしまうと一発で見抜かれます。そういう意味では全力、かつ、できるだけ客観的に臨まないといけない作品でした。エンターテインメントは、しっかりした形で作ろうとすると、意外に手間暇がかかりますし、思うほど簡単ではないんです。この映画は、ちょうど昨年の7月からの3~4ヶ月で映画3本を立て続けにやった時期の最後の作品だったんですが、集中していた分、いいものができたのかなとも思っています。少なくとも、あの時点でできることは100%やったという実感は確実にあります。個人的には結婚式のシーンが好きですね。音楽的にもうまくできたと思いますし、とてもいい感じだなと、完成した作品を観て思いました。

Blog. 映画『奇跡のリンゴ』(2013) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「それはいちばん重要なところです。映画を2時間で構成するとなると、どこに音楽を入れ、どこに音楽を入れない箇所を作るかが重要になります。今回は、冒頭はエンターティメントでいかなければいけません。中盤は、(主人公の状況が悪い方向に)落ちていく。ただ、落ちたときに悲しげな音楽を入れてしまうと、その音が救いになってしまいます。だから音楽は抜くことにしました。普通なら「ここに音楽が入るな」という箇所もありましたが、あえて「抜きましょう」という話になって。そういう設計的な部分の考え方に関しては、中村義洋監督とも一致しました。だから、とてもやりやすかったですね。」

Blog. 「東洋経済オンライン」 久石譲 Webインタビュー内容 より抜粋)

 

 

「驚いたことに、『どこに音楽を入れるべきか』という意見が僕と監督でほとんど完璧に一致したんです。映画音楽を深く理解している監督で、一緒に仕事をするのは楽しかった。だから僕も一所懸命にやってしまいましたよ(笑)」

「まず第一は、リンゴのテーマですね。人類が何千年にもわたって苦労して栽培してきた、普遍的な果物としてのリンゴのテーマ音楽。それからもうひとつはこの映画の主題である愛のテーマ。木村さんと奥さんの夫婦の愛、それを包みこむ愛のテーマが必要です。本来ならこのふたつで行きたかったんですが、映画の撮影現場を訪ねた時に、映画のモデルになった木村秋則さんというとんでもなく個性的な方に会ってしまったんです。それですぐに気づいた。この人にリンゴのテーマだけでは太刀打ちできないなと」

「たどりついたのは『津軽のラテン人』というコンセプトでした。マンドリンとウクレレと口琴というあり得ない編成で、木村さんの天真爛漫で明るい雰囲気を出せないかと考えたんです。それでちょっと奇妙でコミカルなテーマ音楽が生まれた。ただ、雰囲気で決めたわけではない。この映画にはどういう音楽が必要なのかを考え抜き、詰め将棋のように緻密に、必要な音楽を作って組み立てる作業のなかで、あのテーマもできあがっている。映画音楽は大変ですから、1本作り上げようとすると、魂を入れるような作業が必要なんです。だから、あまり本数をやるべきじゃないと思っているんですけど(笑)」

Blog. 「GOETHE ゲーテ 2013年7月号」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

全編において特徴的なのが、その軽快なタッチ。主要な2つのテーマを作曲しながらも、主人公になっている実在の方にお会いしてから、その陽気なキャラクターを表現するために別のテーマ曲も作曲。

コンセプトは「津軽のラテン人」という能天気な明るいイメージから、マンドリン、ウクレレ、口琴などの楽器をオーケストラと合わせる構成になっている。本来ならば「日本 津軽」という舞台にも関わらず、その音楽世界が「異国 南国 ラテン」の香りがするのはそのためだろう。そのギャップが結果として見事に功を奏していると思う。

ちなみに口琴という楽器にだけ触れる。口琴は、原始的な楽器で古くから世界各地に分布。日本では古くから北海道や津軽などでアイヌ民族が好んで用いていた。そのビヨ~ンという独特の音色は、飛び跳ねる動き等を表現する効果音としてもよく使われる。アニメ『ど根性ガエル』の主題歌といえば、一番想像しやすい。

というわけで、マンドリンやウクレレといった「ラテン」を意識しながらもそこに口琴を組み合わせることによって「ラテン+津軽」を、そして「陽気さ 明るい」空気感を演出している妙。いつもの久石メロディーが、よりパッと明るくなっている作品である。

メインテーマ、そしてそれをモチーフとした(1) (6) (9) (13) (21) (23) (25)はまさに自然の音楽。壮大というよりは、空気も水も透きとおるような音楽。日本だけでなくヨーロッパの田園、畑、山脈なども連想できる、心地のよい曲。

モチーフによって、フルート、ホルン、ストリングスなどの楽器が旋律を奏でることからも、そういった連想や世界が広がるのかもしれない。

主人公のテーマ、そしてそれをモチーフとした(2) (4) (10) (12) (14) (27)などは、冒頭に書いた「津軽のラテン人」をコンセプトに、その楽器たちをうまく組み合わせた軽快な曲。マンドリン、ウクレレ、口琴、オーケストラが、モチーフごとにその旋律を軽やかに彩っている。いろんなCMにも使用できそうな、短いメロディーながらもインパクト十分な、陽気な明るい曲。

ラブテーマ、そしてそれをモチーフとした(5) (20) (22)は、ピアノをメインにしたシンプルな旋律。少しメインテーマを垣間みるような音階が特徴的。

そして、最後の(28)にて、ラブテーマ~主人公のテーマ~メインテーマと上の3つのテーマを1曲として繋いで聴くことができる。映画のエンドクレジットに華を添えている、そして余韻が香る。

 

 

 

久石譲 『奇跡のリンゴ オリジナル・サウンドトラック』

1.奇跡のリンゴ
2.運命の始まり
3.母親の言葉
4.東京の空
5.祝言の夜
6.津軽の風物詩
7.安全の代償
8.幸福の訪れ
9.答えへの入口
10.挑戦の始まり
11.試練の訪れ
12.挑戦の決意
13.ラバウルの記憶
14.挑戦の日々
15.悪夢
16.三等分の想い
17.約束の光
18.現実の地獄
19.雛子倒れる
20.薄暮の背中
21.暗闇の出口
22.人間の証
23.挑戦の再開
24.困窮の果て
25.ありがとうの言葉
26.小さな希望
27.挑戦の続き
28.リンゴの軌跡

All Music Compose, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Tokyo New City Orchestra
Madolin:Tadashi Aoyama
Guitar & Ukulele:Mikihiko Matsumiya
Jew’s Harp:Ikuo Kakehashi

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

 

Disc. 久石譲 『女信長 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『女信長 オリジナル・サウンドトラック』

2013年4月3日 CD発売 PCCR-00561

 

2013年4月5日,6日 二夜連続連続放送フジテレビ系ドラマ「女信長」
原作:佐藤賢一 監督:武内英樹 音楽:久石譲 出演:天海祐希 他

 

 

民放のTVドラマの音楽を手がけることも近年珍しいけれど時代劇ものとしても『壬生義士伝』や『天地明察』くらいしかない。

混声合唱や和楽器も使用している。フルートと尺八、ハープと琴など、和楽器と西洋楽器の近い音をうまく組み合わせて織りこんでいるところに、そこまでコテコテの時代劇感を演出しないさじ加減があるのかもしれない。

フルート・尺八・ハープ・琴・ピアノに混声合唱と、高音の楽器、また音域に幅のある楽器を随所にちりばめているところが、信長という重厚感に、今回のキーワードである“女信長”という女性らしさがうかがえる。

印象的なメロディーというよりも、こういった演出が気になった作品。全体的な緊迫感迫る音楽は、『坂の上の雲』の音楽に近いかもしれない。

(4) (31)のメインテーマをモチーフにシーンに合わせてアレンジしたもの、(15) (22) (28) (30)などの女性心をテーマにした曲に加え、(3) (8) (23) (24)など戦国時代ならではの厚みのある曲もならぶ。

1曲1曲が短いのは、TVドラマだからかもしれない。ぜひコンサートなどで、ひとつの絵巻のような組曲として聴いてみたい作品。

 

 

 

久石譲 『女信長 オリジナル・サウンドトラック』

1. イスパニアからの使者
2. 絶体絶命
3. 奇襲
4. 女信長
5. 運命の子
6. 嫡男として
7. 哀れな宿命
8. 暴君
9. 御濃
10. 父の死
11. 信長誕生
12. 野望
13. 合戦
14. 城下町
15. 恋心
16. 京上洛
17. 服部半蔵
18. 奏愛
19. 御市
20. 明智光秀
21. 天命
22. 信長の哀しみ
23. 決戦
24. 地獄絵図
25. 最強の敵~武田軍~
26. 悲壮な決意
27. 信長と光秀
28. 本能寺~愛のテーマ~
29. 家康の初恋
30. 信長からの解放
31. 新しい時代

All Music Composed, and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Tokyo New City Orchestra
Gu-Zheng:Jiang Xioa-Qing
Japanese transverse flute:Kohei Nishikawa
Shakuhachi:Jun Watanabe
Lute:Hiroshi Kaneko
Tin Whistle:Tkashi Yasui

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

Recording & Mixing Engineer: Hiroyuki Akita

Orchestration: Kosuke Yamashita, Sachiko Miyano, Joe Hisaishi

 

Disc. 久石譲 『Ni No Kuni: Wrath of the White Witch - Original Soundtrack』

2013年2月1日 CD発売 WAYO-003~4 ※輸入盤

 

DS版『二ノ国 漆黒の魔導師』につづき、PS3版『二ノ国 白い聖灰の女王』の音楽担当。

 

メインテーマ、シズクのテーマ、バトルなど、DS版サウンドトラックに収められていた主要曲も、スケールアップしたフルオーケストラサウンドで楽しめる。

また本作品用の新録曲は、(5)~(11)となっている。(5)The Horror of Manna に象徴されるように、ミニマル色の強い、シリアスでスリリングな楽曲が並んでいる。

ゲーム世界の様々な場面を彩った、バラエティーに富んだDS版の音楽に比べ、より緊迫感のあるひきしまった冒険サウンドとなっている。とりわけ終盤を迎える(10)The Final Battle Against the White Witch は圧巻である。女王を彷彿とさせるコーラスは麻衣が担当。

ゲームではシンセ曲や本作品未収録曲も使用されているが、あくまでも久石譲作曲およびオーケストラサウンドによるサウンドトラックとなっている。

ゲーム用販促プロモーション映像(PV)にて使用されていたPS3版音楽は、本作品にすべて収録されている。輸入盤のみ2枚組CDで発売され、1枚目収録楽曲は、『二ノ国 漆黒の魔導師 サウンドトラック』と同一。

 

本作品未収録のシンセサイザー楽曲解説については下記参照。

 

 

二ノ国 ninokuni 2 

二ノ国 ninokuni 3

 

二ノ国 ninokuni 4 

二ノ国 ninokuni 5

 

 

二ノ国ninokuni

Disc 1

01. Ni no Kuni: Dominion of the Dark Djinn — Main Theme
02. One Fine Morning
03. Motorville
04. The Accident
05. In Loving Memory of Allie
06. Drippy
07. Magic with Oomph
08. World Map
09. Ding Dong Dell – The Cat King’s Castle
10. Al Mamoon – Court of the Cowlipha
11. Imperial March
12. Crisis
13. Tension
14. Battle
15. Shadar, the Dark Djinn
16. A Battle with Creatures
17. Labyrinth
18. The Lead-Up to the Decisive Battle
19. The Showdown with Shadar
20. Miracle – Reunion
21. Kokoro no Kakera (Japanese Version)

Disc 2

01. Ni no Kuni – Wrath of the White Witch (Main Theme)
02. The Fairyground
03. Mummy’s Tummy
04. Battle II
05. The Horror of Manna
06. Unrest
07. Blithe
08. Sorrow
09. The Zodiarchs
10. The Final Battle Against the White Witch
11. The Wrath of the White Witch
12. Kokoro no Kakera – Pieces of a Broken Heart (English)

Performed by the Tokyo Philharmonic Orchestra
Composed by Joe Hisaishi
Japanese vocals by Mai
English vocals by Archie Buchanan

33 tracks, 2 discs, 20-page booklet

その他ゲスト演奏者/録音はDS版記載に準ずる

 

Disc. 久石譲 『東京家族 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『東京家族 オリジナル・サウンドトラック』

2013年1月16日 CD発売 UMCK-1442

 

2013年公開 映画「東京家族」
山田洋次監督50周年記念作品
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:橋爪功 吉行和子 他

 

 

インタビュー

-これまでの久石さんの映画音楽のアプローチは音と画を拮抗させ、そのぶつかり合いのなかから某かのものを醸し出す方法論が多かったと思いますが、今回は驚くほど奥に引いています。それはある意味、挑戦だったのではないでしょうか?

久石:
そうですね。まず台本を読んだ段階で、今回はあまり音楽を前に出さず、包み込むようなものが良いだろうとは思ったんです。山田監督とお話させていただいた時も「空気のように、劇を邪魔しないものを」という注文がありました。現にラッシュ(撮影済みで未編集のフィルムや映像)を観ても音楽が入る余地が全然ない(笑)。これはもう劇を受け止めるような音楽を書かなければ駄目だなと。

-しかし、少ないながらも入る箇所は的確で、音楽が流れるごとにあの老夫婦の心情と呼応し支え合い、じわじわと相乗効果がもたらされていくのがわかります。

久石:
最終的にはお母さんが亡くなり、お父さんが独り残される。そのことをメインに据えて、そこに至るまでをどう行くかというのが、今回はプランとして非常に大事でした。例えば病院の屋上でお父さんが次男に「母さん、死んだぞ」と言うところまでは、ピアノを一切使ってないんですよ。逆にその後からは、ピアノを自分で弾いています。音楽が少ないからこそ、そのなかで効果的な変化をつけたかったんですね。

-『東京物語』(53)が「人生は無である」と説いた映画だとすれば、『東京家族』は「人生は決して無ではない」と説いている映画だと思います。だからあのお父さんが独りになって終わるラストも、厳しくはあれどこか明るい感触を受けますし、エンドタイトルの高らかな音楽はその後押しとして、観る者まで前向きな気分にさせてくれます。

久石:
そういう風に捉えていただけると嬉しいですね。僕も『東京物語』は大好きな映画なのですが、『東京家族』はそれと同じストーリーラインではありながら、やはり山田監督独自の世界観でしたので、こちらも特に意識することはなかった…と言いますか、先ほど申しましたように意識するどころではないほど大変だったわけです。今回は本当にオーケストラを薄く書いているんですけど、痩せないように書く方法とでもいいますか、その作業も難しかったし、40秒の曲を書くのに普段の3分以上の曲を書くのと同じ労働量を必要としました。でもその代わり、新しい技もいくつか開発しましたので、もう次からは何が来ても怖くない(笑)。何よりも今回は憧れの山田作品に自分の音楽を入れさせていただくことができたわけですから、本当に光栄でした。

Blog. 映画『東京家族』(2013) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

今回、監督作品81作目にして初めて久石譲に音楽を依頼したが「もちろん(久石が担当した)作品は拝見していましたし、ぜひ一度、お仕事させていただきたいと思ってました。映画音楽は映画が好きな人じゃないとダメなんです」と念願かなってのタッグ実現を嬉しそうに振り返った。だが映画監督にとっては音楽家との仕事はなかなか気疲れするもののようで「最終的なイメージは作曲家の中にあるんでね。とても気を使うんです。お見合いのようにドキドキします」と語る。

一方の久石譲は今回の仕事について「苦労しましたよ!」と告白。「普通、2時間の映画にだいたい50分から60分くらい音楽が付くんですが、今回は2時間半くらいの映画で音楽は25分くらい。平均して40秒から50秒くらいの曲が多いんです。短い音楽を書くのは難しいんです」と述懐する。しかも監督からは「空気のような音楽」というリクエストがあったとか。「芝居の邪魔にならずにそれでもどこかで共存するものとして考えました。いかに薄く書くか? でも痩せちゃいけない…。工夫する中で新たな発見がありました」と明かす。

Info. 2013/01/25 山田洋次監督 × 久石譲 スペシャルトークセッション より抜粋)

 

 

「空気のような音楽、雰囲気を邪魔しないような音楽と言われていました。今回はあまりたくさんの音楽を必要としない、芝居を邪魔しないで共存出来る音楽なんだと思いました。」

「今回は2時間半ぐらいの映画なんだけど、曲は全部で25分ぐらいしかないんです。いかにうすく書くか、でもやせすぎちゃいけない…そんな色々な工夫をしていくうちに、こんな技があるんだと、3つぐらい新しい技を発見しました。」

Blog. 映画「東京家族」 山田洋次監督 × 久石譲 スペシャルトークセッション より抜粋)

 

 

 

シンプルで素朴なメロディーのメインテーマ。オーケストレーションも小編成。曲も1-3分程度の短いものが多く、そっと映像に寄り添うような音楽。

メインテーマ(15)、メインテーマをモチーフに編曲した(1) (2) (3) (7) (10) (13)、メインテーマ以外だと(4) (5) (11)など、管楽器、とりわけオーボエやファゴットをうまくメロディーラインに取り込み、それにより、素朴な、温かみのある、空気感を演出している。

特に邦画作品を手がけるときにはよく見られる。音をつめすぎない、余白のある音楽。これにより映像やストーリー、風景、俳優さんの感情や観る人の感情に寄り添うかたちで、かつ、印象的に際立つのかもしれない。

また近年の作品に多いが、変拍子のメロディが増えている。でも、なぜか不思議と変拍子としての違和感がない。そのままきれいにメロディとしてリズムとして流れているので不思議。曲構成として映像のいわゆる細かい尺に合わせるために、タイミングやタイムを要所要所で合わせることはあってもメロディラインとしてここまで変拍子がきれいに成立しているのはすごい。特に今作品のようなシンプルな主題曲だと、シンプル=簡単のように思ってしまうが、いざ譜面を見たら、おそらく聴いた印象よりも標記の多い楽譜になっているはず。

メインテーマをピアノにメロディラインを配置しているあたりがこの作品を象徴しているのかもしれない。しかも、メロディの冒頭は、まさに片手で、数本の指で弾けるくらいの、メロディ旋律のみを大胆にもってきているアレンジ。メロディが凛と立っているからこそ、できる業なのかもしれない。

春に聴けば桜が舞い、夏は木漏れ日、秋は紅葉と秋桜、冬は暖を囲む居間、そんな四季折々の日本家族や日常生活を表現した音楽。

 

 

久石譲 『東京家族 オリジナル・サウンドトラック』

1. プロローグ
2. 初めての東京
3. 夫婦
4. 丘の公園
5. 東京観光
6. うなぎ屋の親子
7. ホテル
8. 観覧車
9. 孤独
10. 若者たちへ
11. 約束
12. 母さんの死
13. 病院の屋上で
14. 紀子へ
15. 東京家族

All Music Compose, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Tokyo New City Orchestra

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio, ABS Recording

Recording & Mixing Engineer: Hiroyuki Akita
Manipulator: Yasuhiro Maeda (Wonder City Inc.)

and more

 

Disc. 久石譲 『天地明察 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『天地明察 オリジナル・サウンドトラック』

2012年9月12日 CD発売 UMCK-1414

 

2012年公開 映画「天地明察」
監督:滝田洋二郎 音楽:久石譲 出演:岡田准一 宮﨑あおい 他

 

 

INTERVIEW

監督との共同作業は、音楽をつくるうえで理想的な環境でした

滝田洋二郎監督とご一緒するのは3作目になります。『壬生義士伝』(02)と『おくりびと』は自分にとっても大事な作品になりましたから、今回のお話をもらったときも、一も二もなくやらせていただきたいと思いました。

通常、音楽は撮影後に制作することが多いのですが、『おくりびと』のときに、主人公の弾くチェロの曲だけは先に必要で撮影前に書いたんです。滝田監督は、先にテーマとなる音楽があると現場で表現できることの幅が広がる、作品を象徴する世界観の全体像を掴むことができる、と喜んでくれて、今回も早い段階から曲づくりに取りかかりました。撮影の途中にピアノだけのサウンドスケッチを1曲つくり、お送りしたのですが、うえを見あげ跳躍するような、シンプルだけどメロディの出だしに特徴のある曲にしました。監督に気に入っていただいて、結局その曲がメインテーマになったんです。

今回は、時代劇というよりも、ひとつの夢を追い続ける人間が夢をかなえていく、青春ドラマの側面に焦点を当てて楽曲をつくりました。もちろんメインテーマのさびの部分には、日本音階的な雰囲気を入れていますが、滝田監督もいかにも時代劇風の音楽は望まれていませんでしたし、僕自身も、これは現代の人に見てもらう映画ですから、時代劇にはこだわらないようにしようと。スケール感や希望を感じさせることを大切にしつつ、オーケストラによって、あたかも全体がひとつのシンフォニーのようになればと思いました。

これまでに、さまざまな監督の作品に参加させていただいてきましたが、滝田監督はとても丁寧な演出をなさるので、僕の音楽がなくともお客さんを魅了できると思うところもあるんです。だから、僕の役割は一歩引いたスタンスから、滝田監督の撮られた映像を包み込む音楽をつけることだと思っています。僕は、芝居がよければ音楽は極力入れないほうがいいと思っているんですよ。芝居で伝えている感情を音楽でなぞる必要はないですから。芝居がよければ、引いた感じの音楽を載せるだけで相乗効果が生まれます。『おくりびと』のときはそれこそ引き算で、どれだけ音楽をつけないかというのが僕にとってのテーマだったりもしたんです。ただ『天地明察』は青春ドラマの要素もあるので、音楽の量は若干増やしましたけど、基本的には画角を支える存在でありたいというスタンスで音楽をつけていきました。

それから今回は、音楽で芝居のリズムに変化をもたらせないかと考えました。具体的に言うと、安井算哲が梅小路を走るシーンでラテン系の音楽が流れるのですが、クライマックスへの導入部分でもある場面なので、物語の句読点、アクセントになればと思い、提案させていただきました。

滝田監督は音楽を知り抜かれていますから、求められるハードルも高いんです。でも、音楽を大切に扱ってくださるからやりがいがあります。特に今回、いままでよりもさらに明確なビジョンを音楽に対しておもちでしたし、僕からも具体的な提案ができました。映画音楽をつくるうえでの共同作業としては、理想的な環境でしたね。

(映画「天地明察」劇場用パンフレット インタビューより)

 

 

 

「前作の『おくりびと』は主人公がチェリストだったこともあり、どうしても曲が先に必要でした。その段階で音があったことによって、滝田監督も思っていた以上に作業を進めやすかったようで、今回も早めに曲が欲しいとおっしゃって。それで、ピアノだけのサウンドスケッチをクランクイン前にお送りしたんです。あまり感情に訴えかけるような曲調ではなかったので、メインテーマになりうるのかな…と思うところもありましたが、青春ドラマを引き立たせるには、ちょうど良かったのではないかと思っています。」

「『天地明察』の音楽を作るにあたって、じつはかなりの冒険をしているんです。それは方法論において、ですけど。普段は「この楽器を使って、こんなメロディでいきます」と提示するんですけど、今回は徹頭徹尾、全シーンほぼピアノスケッチでいったんですね。場合によってはどこか淋しい印象を与えかねないですけど、滝田監督には全幅の信頼を置いていたので、あえてピアノ1台で薄い音の曲をアテていってもらったんです。で、撮影の後半のほうはオーケストレーションが終わった曲を日報のように、毎日監督のもとへお届けしていきました(笑)。滝田監督からも「このシーンではもう少し早めに音楽をフェイドアウトしましょう」といった明確な指示があったので、そんお段階になると話は早かったですね。」

Blog. 「シネマスクエア Vo.46 (2012)」天地明察 滝田洋二郎×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

全編フルオーケストラ。江戸時代という時代背景ながらも、天文学というストーリーからか、天を仰ぎ見るような、澄みきった音楽たち。

メインテーマの(25) (27)、(25)が純粋なフルオーケストラなのに対して、(27)はリズムパーカッションが加わる。そればかりかオーケストレーション・構成・編曲も異なる。メロディーラインを奏でる楽器が違うかと思えば、それに合わせてアレンジも変わっている。

どちらもしっかりと成立した芯のある2曲だけれど、どちらかと言われれば(27)のほうが起伏に富んだダイナミクスな構成にはなっている。少し聴いただけでは(25)と(27)のこまかい違いはわからない。聴き比べると、聴きこむと、そしてなぜ2曲を並べたのか考察するのもおもしろい。

メインテーマをモチーフにした(1) (3) (8) (9) (13) (14)、心温まる美しい旋律のラブテーマともいえる(6) (18) (21)、星空を天体観測しているような高音の旋律がまばゆく輝いている。

またこの作品ならではの佳曲(2) (4) (15)などは、天文学的、数学、そこからミニマル・ミュージックの要素が垣間見える。全面にではなく、アクセント、隠し味くらいのさじ加減。

 

 

久石譲 『天地明察 オリジナル・サウンドトラック』

1. プロローグ
2. 好奇心
3. 初手天元
4. 真剣勝負
5. 予感
6. えん
7. 北極出地-開始-
8. 星の申し子
9. 見事なる誤問
10. 北極出地-不穏-
11. 北極出地-建部-
12. 任命
13. 観測
14. 確信
15. 三暦勝負
16. 襲撃
17. 挫折
18. 祝言
19. 発見
20. 勅使
21. 約束
22. 最終勝負
23. 決断
24. 運命の刻
25. 天地明察
26. フィナーレ
27. TENCHI MEISATSU

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Tokyo New City Orchestra

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

 

Disc. 久石譲 『Overture -序曲-』 *Unreleased

2012月7月21日 初演

 

大阪ひびきの街 スペシャル・コンサートにて初演。「大阪ひびきの街」誕生を記念して作曲され委嘱された「大阪ひびきの街テーマ曲 『Overture -序曲-』」。コンサートの演奏風景はCMとしても放送されている。

 

 

「街区をイメージする曲を依頼された時、単純に誰でも歌える曲、というわけにはいかないなと思いました。街区にはオーケストラも公演できる響きの良いホールがある。ぜひオーケストラ曲で仕上げたいと思った。」

「これから成長していく曲だと思います。気づいたらこの街にこの音楽が響いている、住んでいる人が親しんでいる、そんなふうになってくれたらいい。」

Blog. 「Overture -序曲-」 久石譲 新聞掲載インタビュー より抜粋)

 

 

6分に及ぶ壮大かつ高揚感あるフルオーケストラはまさに序曲。印象的なメロディーがいろいろなモチーフで展開していく。とても生き生きとした力強いメロディライン。16小節程度の短いメロディーラインをここまで壮大に発展させていく流れは圧巻。

そこに暮らす人々が、街に吹く風が、新緑の樹々たちが、エネルギー満ち溢れるすべての生命とそこでの生活を、息づく様を生き生きと表現した曲になっている。まさに街の「序曲」、これからどう成長発展し街が築かれていくか。そのスタートライン、誕生を祝う、記念作品のような品格ある高貴な楽曲。

その後の自身のコンサートでも演奏されているが未発売作品。

ぜひともCD化してほしい作品。

 

 

大阪ひびきの街