Posted on 2019/08/20
2019年夏公開映画『二ノ国』関連書籍、映画「二ノ国」公式アートブックより久石譲インタビューです。
インタビュー 音楽 久石譲
ゲーム版のテーマ曲もさりげなく出しています。ゲームファンの方にも楽しんでほしい。
ゲーム「二ノ国」から引き続いて、映画『二ノ国』でも音楽を担当する久石氏。音楽を通して並々ならぬ想いを本作に込める。
ー久石さんはゲーム『二ノ国』から楽曲を担当されていますが、今回映画『二ノ国』の音楽をつくるにあたって、最初にどんなことを考えましたか。
久石:
多くの映画音楽は基本的には状況か、あるいは登場人物の心情に音楽をつけるのですが、僕はあまりそういう方法は取っていないんですよ。それよりも、観客側から客観的に見て、観客の心情を表現する音楽を作っている。だけど映画『二ノ国』はエンターテインメントな映画。こういう映画は、やはり物語の状況や心情に寄り添わないといけない。僕としては久しぶりに、物語に沿った音楽を書きましたね。
ーどのようなプロセスでつくっていったのでしょうか。
久石:
つくるにあたって考えたのは、『二ノ国』の世界観。一ノ国と二ノ国の人間は、命がつながっているというのがこの作品のポイントです。ストーリーにかかわらず、一ノ国と二ノ国で流れる音楽の根っこは一緒。時には同じ曲を両方で使ったほうがいいケースもあるわけですね。まずはできるだけ客観的に分析して、どのシーンにどんな曲を使うかとても考えました。
ー一ノ国で流れる曲と、二ノ国で流れる曲。具体的にはどのような違いがありますか。
久石:
一ノ国というのは私たちが暮らすのと同じような、現実世界。そこで流れる音楽は、室内楽のような小編成での演奏にしています。一方、二ノ国はファンタジーな異世界。ベーシックに、フルオーケストラでの演奏です。一ノ国と二ノ国で流れる音楽をきっぱりと分けるというのが基本。一ノ国と二ノ国で同じメロディを使っている場合もありますが、その場合も違うアレンジをしています。
ー映画だからこそできたこと、チャレンジされたことはありますか。
久石:
見ている方がワクワクするようにできたらいいなと思って、全体的にはパーカッションを使ってリズミックにしています。そこは僕にとってのチャレンジでしたね。ゲーム版のテーマ曲もさりげなく出していますから、ゲームファンの方にも楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。
ーレコーディングはいかがでしたか。
久石:
僕のレコーディングに参加する人たちは、オーケストラでは首席奏者クラスの人たちばかり。ミニマル・ミュージックに慣れている人たちもいて、非常に助かりました。日本のミュージシャンは本当にすばらしいですよ。ちゃんと音楽上でコミュニケーションを取れる人たちと取り組んだので、その場で生み出されたものもあった。楽しくレコーディングができました。
ー久石さんにとって映画音楽をつくるお仕事は、どういう意味合いがありますか。
久石:
エンターテインメントな作品に関わるとたくさんの人とコミュニケーションを取るので、新しい表現が生まれてくる。自分だけではやらないようなこともできたりする。そういう新しい発見があるから楽しいし、やめられないんですよね。映画音楽もコンサートもそれは一緒。僕にとって生きることと同じなんです。
ー久石さんの音楽を楽しみにしている方々にメッセージを音楽します。
久石:
今年の2月にパリでコンサートを行った時、フランスメディアのインタビューを受けましたが、みんな『二ノ国』のことを知っていました。「今度映画化されるんですよね。音楽を担当するんでしょう」と質問された。日本国内のみではなく、海外でも認知されているタイトルが、『二ノ国』。それが映画化されるということで、みんな期待を持っているんだなと感じています。
日本のみならず海外にも、この音楽が映画とともにみんなに聞いてもらえたら、僕にとっては何よりの喜びです。
(映画「二ノ国」公式アートブック より)
補足)
映画『二ノ国』の久石譲インタビューは、雑誌・Webなどいくつかの媒体で発信されています。大枠は同じです。おそらくは、音楽レコーディング時の同一取材をベースにしています。どこを取り上げるか、どういった構成で書くか、という違いによる詳細やニュアンスの差異はあります。ぜひ読み比べてみてください。
追記
「劇場用パンフレット」も久石譲インタビュー掲載。内容はこれらと同旨。「オリジナル・サウンドトラック」CDライナーノーツには掲載なし。
- Info. 2019/07/26 久石譲、音楽は「生きること」 映画『二ノ国』収録現場で語る (Webニュース2種より)
- Blog. 「Men’s PREPPY 2019年9月号」映画『二ノ国』久石譲インタビュー内容
- Info. 2019/08/16 久石譲が語り明かす 映画『二ノ国』楽曲秘話公開(ぴあ より)
また映画制作エピソードとして久石譲に関連するものを抜粋してご紹介します。
インタビュー 製作総指揮/原案・脚本 日野晃博
二ノ国はあたたかみがあって柔らかいひなたぼっこみたいで癒やされる世界であってほしいと思っています。
ゲーム『二ノ国』から、本作をけん引し続けてきた日野氏。当初から想定していたという本作品の映画化に何を思うのか。
ゲームとアニメーションによるストーリーテリングの違い
~中略~
久石譲氏のアドバイスによって大幅に変更されたシナリオ
ー映画用のストーリーをつくるうえでは、どのような点にこだわりましたか?
日野:
最初に書いたシナリオは、いまとはかなり違ったものでした。
ーそれはどういった内容でしたか?
日野:
ほとんど二ノ国だけでストーリーが展開していました。ゲームの「1」(『漆黒の魔道士』『白き聖灰の女王』)のときは一ノ国と二ノ国を行ったり来たりする話を書いたんですけど、「2」の『レヴァナントキングダム』では二ノ国だけのストーリーになっていて、最初はこの映画用のシナリオも同様に、一ノ国がなくてもいいくらいの内容でした。
ー二ノ国のにの、完全なファンタジー作品ですか?
日野:
そうです。僕はファンタジーが大好きで、ジブリ作品にしてもほかの映画作品にしても、もちろんゲームも、架空の世界のお話ならなんでも好きですから、無意識にファンタジーに寄っていったんでしょうね。もちろん、そのシナリオの段階でもワーナー・ブラザーズさんの各部門からはOKをもらっていたんですけど、久石譲さんにお見せしたときに、「一ノ国と二ノ国を行き来するのが『二ノ国』の楽しさなのに、それがなくていいの?」と、ちょっとした挑戦状を突きつけられたんですよ(笑)。
でも、たしかにそのとおりだったのでショックを受けました。『二ノ国』で最初につくったコンセプトのおもしろみは、2つの世界があって、それがつながっているということなんです。いくらファンタジーが好きだからといっても、この企画の本質的な部分が欠落していてはいけない。久石さんからの指摘を受けて、脚本をイチから書き直しました。
ー久石さんからは音楽面のみならず、そういった関わり方もあったんですね。
日野:
そういう大事なことを、いつも最初に久石さんが気づかせてくれるんです。だから久石さんの言うことは聞かなきゃ……と思わされますね(笑)。特に今回の映画のストーリーでは、命のやりとりがあって、2人の男の子が親友同士なのに戦うことになります。「自分の愛する人のために他人を殺せますか?」とか「大切なものを守るためになんでもできますか?」といったショッキングなメッセージを含んでいるので、脚本にも殺伐としたセリフが多かったんです。久石さんはあたたかい作品をつくりたい人だから、あんまり物騒な言葉は使ってほしくない、といった趣旨のことも言われました。だからセリフもだいぶ変更しましたよ(笑)。
『二ノ国』の世界観だからこそ生まれた独自のストーリー展開
~中略~
あたたかくて柔らかい二ノ国
~中略~
ファンタジーとして楽しんでもらいたい『二ノ国』
~中略~
(映画「二ノ国」公式アートブックより 一部抜粋)
補足)
日野氏はセリフの変更についてのエピソードをこのようにも語っています。
―リテイクして出来上がったものは久石さんもいいねと言っていただけたんですか?
日野:はい、新しいコンセプトで作ったものに関しては。ただ、そのあともいろいろとアドバイスを受けました。
今回のテーマ上、命のやり取りがあるので、殺伐とした言葉も多かったんです。久石さんは温かい作品を作りたかったこともあって、「“殺す”っていう言葉が多すぎる!」と言われ、「うーん……」と悩みましたね。
言葉を極力シナリオから減らしていったりと、そういうところを久石さんには気づかせてもらえました。久石さんの言うことは聞かなきゃいけないかなって思っています(笑)。
出典:アニメイトタイムズ|映画『二ノ国』製作総指揮/原案・脚本日野晃博さんインタビュー|夢の『二ノ国』映画化には様々な試練が……! 梶裕貴さんのキャスティング秘話も!? より抜粋
同旨インタビュー
出典:ライブドアニュース|重要なのは「原動力」と「子供心」。『二ノ国』誕生秘話から紐解く、日野晃博の思考術
映画「二ノ国」公式アートブック
映画「二ノ国」製作委員会
【目次】
イントロダクション
映画『二ノ国』ビジュアルストーリー
美術ボード&設定画
キャラクター設定
百瀬義行アートワークス
インタビュー 製作総指揮/原案・脚本 日野晃博
インタビュー 監督 百瀬義行
インタビュー 魔法宰相・ヨキ役 宮野真守
インタビュー 音楽 久石譲
絵コンテ集
映画『二ノ国』を読み解く8つの視点
ゲーム「二ノ国」の世界
定価:本体2,700円+税
発売日:2019年08月16日
ページ数:160ページ
判型・造本・装丁:A4判 軽装 並製カバー装