Blog. 「音楽の友 2023年8月号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2023/08/14

クラシック音楽誌「音楽の友 2023年8月号」(7月18日発売)に掲載された久石譲インタビューです。巻頭カラーページにて。本号では表紙も飾っています。

 

 

[Interview] Starring Artist 久石譲(作曲、指揮)
「未来」を見据え続ける創造性(山崎浩太郎)

作曲家がお客さんを意識して、きちんと聴いてもらえる曲を書く環境、文化を定着させていきたいと思います

久石譲

 

最新作と古典を対比し、つなぐ「未来」を見据え続ける創造性

取材・文=山崎浩太郎

映画音楽の作曲家として圧倒的な人気を誇る久石譲は、クラシック音楽の作曲と指揮により、新たな聴衆層の開拓にも力を注いでいる。ドイツ・グラモフォンと録音契約を結び、さらなる世界的な活動も期待されるなか、日本では「Music Parter」をつとめる新日本フィルハーモニー交響楽団と早くから信頼関係に結ばれ、共演を重ねてきた。今年9月と来年2月に予定されるコンサートなどについて、お話をうかがった。

 

作曲家として、演奏家として
新日本フィルとの歩み

ー2004年に新日本フィルハーモニー交響楽団と結成された「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の音楽監督に就任されてから、20年近く指揮をされているのですね。

久石:
新日本フィルさんとは指揮をするよりもっと以前から、自分がピアノを弾くツアーなどで共演を重ねていたのです。その延長線上で、指揮者として共演するようになった。最初にクラシックのコンサートを指揮したのも新日本フィルです。チャイコフスキー「交響曲第5番」とベートーヴェン「交響曲第5番《運命》」の2曲でした。

 

ー新日本フィルというオーケストラには、どのような印象をお持ちですか?

久石:
長い付き合いだから言いづらいところもありますが(笑)、最初からわかっていたのは、上品さですね。育ちのよさというか。その質感、体質が合っていた。指揮者としての自分の原点でもありますね。

 

ーいまは「Music Parter」として、定期演奏会なども指揮されるようになりました。クラシックの名曲と、ご自身の作品を組み合わせるスタイルですね。

久石:
名称が長いので現在は「Music Parter」だけにしてもらいましたが、当初は「Composer in Residence and Music Partner」としていました。欧米では、3つとか4つのオーケストラがお金を出しあって、作曲家に新作を委嘱する文化がある。お客さんも新曲があることを楽しみにされている。だけど、日本にはその文化がないのです。作曲家がお客さんのほうを向いて、きちんと聴いてもらえる曲を書く環境を作りたい。自分は作曲家、指揮もちょっとさせていただいている作曲家だと思うから、できるだけそういう文化を定着させていきたいと思います。

なぜかというと、東京のオーケストラがお客さんの喜ぶ曲を演奏しようとすると、曲目が似てしまうのですよ。あまり変わらないと、結局はクラシック離れが起こる。前半だけでも現代曲、それもきちんとお客さんを意識した曲があって、後半にチャイコフスキーがある、というような形なら、プログラムに変化がつくじゃないですか。それを自分が率先して実行するということですね。

そういう形をより広げていく。自分の作品だけではなくて、いまあの作曲家がいいから、オーケストラが共同で委嘱しようという形になっていくのがいちばんです。そのなかで自分が選ばれるのだとしたらもっといい、そうしたスタンスなのです。

 

ー新日本フィルがそういうことを得意とする、特長をもつオーケストラになっていったら素敵ですね。

久石:
長い間「ワールド・ドリーム・オーケストラ」の公演を開催してきて、そこでは前半にミニマル・ミュージックの作品をたくさん演奏しているのです。そういう系統の、リズムを中心にした現代の音楽を新日本フィルは得意としているはずなので、それを長所にして前面に出したいと思っています。

 

 

マーラー、ストラヴィンスキー
その論理的構造にメスを入れる

ーさて、9月の定期演奏会ではマーラー「交響曲第5番」の前に新作を予定されています。どのような曲になりそうですか。

久石:
一緒に演奏するマーラー「第5番」は、やはり〈アダージェット〉(第4楽章)なのですよね。その〈アダージェット〉と一緒に演奏しておかしくない、弦楽オーケストラのための曲を書きたいと思っています。マーラーが長大ですから、その前の曲はあまり長いものをやる必要はない。導入のように静かな曲にするつもりです。

 

ーマーラー「第5番」については、どのような印象をお持ちですか。

久石:
マーラーはユダヤ人でした。ユダヤ人の音楽家は大勢います。おもしろいことに、ミニマル・ミュージックの作曲家にもユダヤ人が圧倒的に多いのです。スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、僕が尊敬しているデイヴィッド・ラングなど。彼らはとても論理的な思考をします。ベースに民族的な感情はあったとしても、優れた論理構造をしっかり持っているのです。

その観点から、客観的にマーラーを見たい。論理的構造、同時にそのベースにある悲しみの世界。そういう意味で、「第5番」は最も好きな曲の一つなのです。

 

ーさらに来年2月には、「すみだクラシックへの扉」で、ご自身の作《I Want to Talk to You》、モーツァルト「交響曲第41番《ジュピター》」、ストラヴィンスキー「バレエ《春の祭典》」を演奏されます。

久石:
前々から、《春の祭典》と《ジュピター》を組み合わせてみたかったのです。神が宿ったっとしか思えないような第4楽章をもつ《ジュピター》の世界観と、20世紀に音楽を大きく変えた《春の祭典》。

ロシア民謡のメロディがあることから、後期ロマン派的に《春の祭典》を演奏する指揮者もいるけれど、リズム構造に注目して、20世紀音楽の始まりという捉えかたでアプローチする指揮者もいる。ピエール・ブーレーズに始まる方法ですね。僕も作曲家ですからね、未来への可能性のあるものにしか興味がない。

ブーレーズの分析は、あのリズムを細分化して、もう一度組み立てていく、という方法でした。リズムの構造分析は、いまの自分が取っているスタイルでもあります。

 

ー2曲がどのように対比されるのかが楽しみです。新日本フィルとは今後どのような作品を取り上げていくのでしょうか。

久石:
曲目はまだ発表できませんが、どんどんクリエイティヴに展開して、新日本フィルのレパートリーの幅をもっと広げたいと思っています。

ー若い聴衆が増える効果も期待できそうですね。お忙しいなかありがとうございました。

(「音楽の友 2023年8月号」より)

 

 

オフショット from SNS

 

 

本誌に使われている写真は、もっともっとクオリティの高いアーティスティックなショットが収められています。

 

 

 

音楽の友 2023年8月号

内容紹介
【特集】
●ジョン・ウィリアムズ考 ―ハリウッド音楽からひもとく「音の匠」
(山崎浩太郎/東端哲也/小室敬幸/中村伸子/片桐卓也/ダニエル・フロシャウアー/渋谷ゆう子/水谷 晃)
今年91歳となった作曲家で指揮者のジョン・ウィリアムズ。これまで『スター・ウォーズ』、『ハリー・ポッター』、『インディ・ジョーンズ』など、アメリカの世界的大ヒット映画の音楽を手がけ、映画音楽をジャンルとして見事に復活させたのみならず、1980年から93年までボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者を務め、みずから指揮して世界中に伝導した「音の匠」だ。今年9月に30年ぶりに来日するJ・ウィリアムズの生涯や音楽をここでふりかえってご紹介しよう。

【カラー】
●[Interview]Starring Artist 久石 譲(作曲、指揮)「未来」を見据え続ける創造性(山崎浩太郎)
●[Interview]庄司紗矢香(vn)×平田オリザ(演出)(岡部真一郎)
●[Report]ウィーン・フィルのサマーナイトコンサート2023(平野玲音)
●[連載]和音の本音(36) ―ラフマニノフという巨人Ⅳ(清水和音/青澤隆明)
●[連載]宮田 大 Dai-alogue~音楽を語ろう(15) ゲスト:山中惇史(p)(山崎浩太郎)
●[連載]マリアージュなこの1本~お酒と音楽の美味しいおはなし(36)/口福レシピ(15) ―〈ゲスト〉平野 和(伊熊よし子)
●[連載]山田和樹「指揮者のココロ得」(15)(山田和樹)
●[特別対談]日野皓正(tp)×古澤 巖(vn)(編集部)

【対談】
●キース・ロックハート(指揮)×角野隼斗(p) ボストン・ポップス・オーケストラ来日公演で共演!(堀江昭朗)
●藤木大地(C-T)×反田恭平(p)~横浜みなとみらいホールのプロデューサーとして、それぞれの挑戦(山崎浩太郎)

【特別記事】
●[Interview]ローム・ミュージックファンデーション「スカラシップコンサート」
―石井希衣(fl)、東 亮汰(vn)、石原悠企(vn・va)、佐山裕樹(vc)(桒田 萌)
●[Report]《子どものためのオペラ『アトランティス・コード』》に注目!(木名瀬高嗣)
●[Report]いまを描く/聴く―サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ(白石美雪)
●[Interview]傘寿記念 作曲家・池辺晋一郎の「現在地」Part1(松平 敬)
●[Report]CMGエリアス弦楽四重奏団のベートーヴェン・サイクル(萩谷由喜子)
●[Interview]川崎洋介(vn)&ヘンリック・ホッホシルト(vn) ―アフィニス夏の音楽祭(後藤菜穂子)

【連載】
●[隔月連載]耳鼻科医から見たアーティストと演奏 (18) ゲスト:堀ちえみ(歌手)(竹田数章/道下京子)
●オペラ MenuとRecipe(3)(山田治生)
●河原忠之 歌好きのためのピアノ手帖 (20)(河野典子)
●猪居亜美のGuitar’s CROSS ROAD(5)MIYAVI(猪居亜美)
●池辺晋一郎エッセイ先人の影を踏みなおす(41)太地喜和子(池辺晋一郎)
●ClaTech―クラシック×テクノロジー(4)映画音楽×シネオケ®(片桐卓也)
●いまどきのクラシックの聴きかた (11)~もっとステキにいい音で(生形三郎/飯田有抄)
●クラシックを撃て! 第28回 一条ゆかり『プライド』(長井進之介)
●音楽家の本棚(5)特別篇 小町 碧(vn)

【Artists Lounge】
●フレッシュ・アーティスト・ファイル Vol.50 矢部優典(vc)
●ミケーレ・マリオッティ(指揮)(石戸谷結子)
●ロベルト・フロンターリ(Br)(河野典子)
●舘野 泉(p)(伊熊よし子)
●石上真由子(vn)(桒田 萌)
●TOKI弦楽四重奏団 平山真紀子(vn) &鈴木康浩(va)(渡辺 和)
●エルモネラ・ヤオ(S)(岸純信)
●桐山建志(vn)(片桐卓也)
●パノス・カラン(指揮)/澤田まゆみ(p)(小倉多美子/道下京子)

【Reviews & Reports】
●巻末Concert Reviews 演奏会批評
●〈海外レポート〉今月の注目公演 ブダペスト・ワーグナー・デイズ(新野見卓也)
イギリス(秋島百合子)/フランス(三光 洋)/イタリア(野田和哉)/オーストリア(平野玲音)/ドイツ①(中村真人)/ドイツ②(来住千保美)/スイス(中 東生)/ロシア(浅松啓介)/アメリカ(小林伸太郎)
●〈イヴェント・レポート〉New Classic by 4 Conductors(山田治生)

【Rondo】
●ヒラリー・ハーン(vn)、待望の来日公演/エマーソン弦楽四重奏団、最後の世界ツアー(渡辺和)/江口 玲(p)、ラフマニノフ&ホロヴィッツのピアノを弾く(上田弘子)

【News & Information】
●スクランブル・ショット・エクストラ 2023年度 武満徹作曲賞(伊藤制子)/ 外山雄三&PPT公演(池田卓夫)/ ショパン国際ピリオド楽器コンクール記者会見/第九のきせき/ワルター・バリリ追悼イヴェント(長谷川京介)
●スクランブル・ショット+音楽の友ホールだより
●ディスク・スペース(真嶋雄大/満津岡信育)
●アート・スペース(映画:中村千晶/舞台:横溝幸子/展覧会:花田志織/書籍:小沼純一、布施砂丘彦)
●クラシック音楽番組表
●読者のページ
●編集部だより(次号予告/編集後記/広告案内)

【表紙の人】
久石 譲(作曲家・指揮者) (c)ヒダキトモコ
国立音楽大学在学中からミニマル・ミュージックに興味を持ち、現代音楽の作曲家として出発。1984年の映画『風の谷のナウシカ』以降、宮崎駿監督全作品の音楽を担当するほか、数多くの映画音楽を手がけ、日本アカデミー賞最優秀音楽賞や紫綬褒章受章など国内外の賞を多数受賞。演奏活動においては、2004年「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の音楽監督に就任。また、2014年から自身のプロデュースによるコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」を始動。さらに2019年、「Future Orchestra Classics」をスタートし、昨年ブラームス・ツィクルスを成功させた。

【別冊付録】
●コンサート・ガイド&チケット・インフォメーション
観どころ聴きどころ(戸部 亮&室田尚子)

 

 

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