Blog. 「久石譲 ジルベスター・コンサート 2014」(大阪) コンサート・レポート

Posted on 2015/1/5

2014年久石譲活動の締めくくりは、2011年以来3年ぶりとなる「ジルベスター・コンサート」でした。

まさに2014年の久石譲集大成といえるプログラム。「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」というスタジオジブリ作品を軸にコンサート活動およびLiveレコーディングによるCD「WORKS IV」の発表。その合間を縫うように、自身のもうひとつの顔である、現代音楽の自作を披露してきた1年間でした。それは久しぶりの作品もあり、まだCD化もされていない、初演および改訂初演を含む貴重な現代音楽自作たち。

このあたりの2014年久石譲総決算については、興味のある方は下記ページをご参照ください。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 新作『WORKS IV』ができるまで -まとめ-
こちら ⇒ Blog. 久石譲 新作『WORKS IV』ができてから -方向性-

 

2014年国内・海外公演をふくめたコンサート活動を経て、ベスト・セレクト的なプログラム演目となった「久石譲 ジルベスター・コンサート 2014 in Festivalhall」です。

 

 

久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall
《WOKS IV》発売記念スペシャル

[公演期間]
2014/12/31

[公演回数]
1公演(大阪 フェスティバルホール)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
バラライカ/マンドリン:青山忠
バヤン/アコーディオン:水野弘文
ギター:千代正行

[曲目]
交響幻想曲 「かぐや姫の物語」
Winter Garden (2014年版) ※改訂初演
****** 休憩 *******
バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲
小さいおうち
水の旅人
Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)
Oriental Wind

—アンコール—-
One Summer’s Day (ピアノ・ソロ)
風の谷のナウシカ

 

 

当日会場で配布された貴重なコンサート・プログラムより各楽曲を紐解いていきましょう。

 

 

交響幻想曲 「かぐや姫の物語」

「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」でプロデューサーを務めた高畑勲監督が、旧知の久石に初めてスコアを依頼した記念すべき作品。今回演奏される曲は、本編の主要曲をかぐや姫の視点で繋げ、オーケストラ作品として書き改めたもの。木管が演奏する「なよたけのテーマ」と高畑監督が作曲した「わらべ唄」を対位法的に扱う〈はじまり〉の後、〈月の不思議〉のセクションをはさみ、東洋的な曲想が特徴的な〈生きる喜び〉の音楽へ。その後、3拍子のピアノが〈春のめぐり〉の音楽を導入するが、曲想が一転し、前衛的な語法を用いた暗い〈絶望〉に変わる。再び木管が「なよたけのテーマ」を演奏すると、オーケストラが〈飛翔〉の音楽を高らかに演奏し、久石エスニックの真骨頂〈天人の音楽〉へと続く。最後の〈月〉では「なよたけのテーマ」「わらべ唄」など主要テーマが再現し、幕となる。
★アルバム「WORKS IV -Dream of W.D.O.」 収録

 

Winter Garden (2014年版) ※改訂初演

2006年にヴァイオリンとピアノのために書き下ろした『Winter Garden』(全2楽章)をベースに、ヴァイオリン・ソロとオーケストラの小協奏曲として2010年に改訂、新たに第3楽章が付け加えられた。今回初演される作品は、2010年版をさらにブラッシュアップし、よりヴァイオリンとオーケストラのコントラストを際立たせつつ、ミニマルの手法になぞらえた作品として改訂したもの。8分の15拍子の軽快なリズムをもった第1楽章、特徴ある変拍子のリズムの継続と官能的なヴァイオリンの旋律による瞑想的な雰囲気を持つ第2楽章。そして第3楽章は、8分の6拍子を基調とし、ソロパートとオーケストラが絶妙に掛け合いながら、後半はヴィルトゥオーゾ的なカデンツァをもって終焉へと向かっていく。本日のヴァイオリン・ソロは、関西フィルハーモニーのコンサートマスター・岩谷祐之の演奏でおくる。
★『Winter Garden』(2006年版) 鈴木理恵子ソロアルバム 『Winter Garden』 収録

 

バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲

太平洋戦争前夜、戦闘機開発に従事する堀越二郎と妻・菜穂子が懸命に生きる姿を描いた、宮崎駿監督作品『風立ちぬ』より。本日演奏される《第2組曲》(今年5月台湾にて世界初演、8月W.D.O.にて日本初演)は、昨年12月に大阪で世界初演された《小組曲》と異なり、ストーリーの流れに縛られることなく主要曲を音楽的に再構成したもの。バラライカ、バヤン(ロシアのアコーディオン)、ギターが主人公の遙かなる旅情を表現した「旅路のテーマ」と、久石のピアノが凛としたヒロインを表現した「菜穂子のテーマ」の2つを中心に据えた、ロンド形式による夫婦愛の組曲と見ることも出来る。全曲の構成は〈旅路(夢中飛行)〉、〈菜穂子(出会い)〉、勇壮な行進曲〈カプローニ(設計家の夢)〉、ミニマル的な推進力に溢れた〈隼班〉と〈隼〉、〈旅路(結婚)〉、関東大震災で逃げ惑う人々を描いた〈避難〉、〈菜穂子(会いたくて)〉、カストルプと共に日支事変を憂う二郎のもとに菜穂子発熱の報が届く場面の〈カストルプ(魔の山)〉、〈菜穂子(めぐりあい)〉、〈旅路(夢の王国)〉となっている。
★アルバム「WORKS IV -Dream of W.D.O.」 収録

 

小さいおうち

「東京家族」に続き、久石が山田洋次監督作のスコアを担当した第2作。激動の昭和を生き抜いた元女中・タキの回想録に綴られた中流家族の奥方・時子の道ならぬ恋と、彼女たちの運命を狂わせた太平洋戦争と東京大空襲の悲劇を描く。本日演奏されるヴァージョンは、ギター、アコーディオン、マンドリンを使用して作品化し、楽器編成的にも時代背景的にも「風立ちぬ」との関連を強調している。前半はタキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、後半は昭和ロマンへの憧れを表現した「時子のワルツ」で構成されている。
★アルバム「WORKS IV -Dream of W.D.O.」 収録

 

水の旅人

一寸法師を思わせる水の精・墨江少名彦と小学生・悟の友情と冒険を描いた、大林宣彦監督のSFX大作。サントラ演奏を担当したロンドン交響楽団を意識して作曲した大編成の勇壮なテーマ曲は、大河の如く滔々と溢れる数々のメロディと相まって、その後の久石の演奏会に欠かせない人気曲のひとつに。
★アルバム「Melodyphony」 収録

 

Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)

魔女の見習い・キキが宅急便で生計を立てながら、逞しく成長していく姿を描いた宮崎駿監督『魔女の宅急便』から、キキが大都会コリコを初めて訪れる場面の音楽〈海の見える街〉を演奏会用に作品化したもの。本日使用される新ヴァージョン(今年1月台湾にて世界初演、8月W.D.O.にて日本初演)は、管弦楽のみの演奏で、メロディを優雅に表現し、よりクラシカルな味わいを深めている。
★アルバム「WORKS IV -Dream of W.D.O.」 収録

 

Oriental Wind

サントリー緑茶・京都福寿園「伊右衛門」CM曲をもとに、作品化したもの。2004年より放送開始し、今やお茶の間でお馴染みとなった美しい旋律は、黄河のような大河の悠々とした流れをイメージしてつくられた。朗々とした格調高い優雅なメロディの裏では、繊細なリズムや激しいパッセージの複雑な内声部が繰り広げられ、より深い味わいを加えている。
★アルバム「Melodyphony」 収録

(「久石譲 ジルベスター・コンサート 2014 in Festivalhall」 コンサート・パンフレット より)

 

 

アンコールで披露されたのは、

One Summer’s Day
映画『千と千尋の神隠し』より「あの夏へ」。舞台の照明を落として久石譲のピアノ・ソロ。アルバム「ENCORE」収録です。

風の谷のナウシカ
映画『風の谷のナウシカ』よりエンディング「鳥の人」。最後は久石譲のピアノと壮大なオーケストラにて。なにかしらのCDに収録されているはずです。(すぐに思い出せずすいません)

終演後は1階席総立ちのスタンディング・オベーション。

 

 

さながら8月に開催された「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ2014」(W.D.O.)に近いプログラムのようです。それでも決定的に違う点があります!

それは2014年に開催された久石譲コンサートのなかで、この「ジルベスター・コンサート 2014」のみ演奏プログラム全楽曲が久石譲作品ということです。

これはとてもとてもうれしい限りだったのではないでしょうか。そこへ、W.D.O.2014 およびそれに付随した『WORKS IV』にもなかった、新たな楽曲「Winter Garden (2014年版)」が改訂初演されています。

つまりみんなに親しまれているスタジオジブリ作品を核として、TVCMでもお馴染みの「Oriental Wind」に、過去の名曲「水の旅人」まで。その中に、久石譲のミニマル・ミュージックという真骨頂を特徴とし、さらに磨きのかかった現代音楽「Winter Garden」の全3楽章披露。

さすがはジルベスター・コンサート、お祭り的選曲、久石譲の今を象徴しているベストセレクションといったところでしょうか。ホール音響も関西フィルの迫力ある演奏も、そしてコンマスのパッセージ溢れたヴァイオリン演奏も、臨場感この上ないCDでは決して味わうことのできない体感。

実際にコンサートに行かれた方は、とても満足されたセットリストだったのではと思います。上記のような経緯を理解していただければ、どれほど貴重な1夜限りの公演となったかが伝わってくるのではと。

またコンサートに行けなかった方も、ほぼ?大丈夫!?

今回のプログラムは、「WORKS IV」と「メロディフォニー」という2CD作品によって、ほぼ堪能することができます。もちろん今コンサート自体が《WORKS IV発売記念スペシャル》ですので、選曲もアレンジも演奏クオリティも、かなり近い状態で体感できると思います。「メロディフォニー」は2010年に発表された、一般からのリクエスト投票を選曲選考にふまえた、久石譲のシンフォニー・ベスト・アルバム作品です。

久石譲 WORKS IV

久石譲 『メロディフォニー』

 

 

2014年の久石譲音楽活動も、「久石譲 ジルベスター・コンサート 2014 in Festivalhall」によって幕をとじました。2015年はどんな音楽活動がくり広げられるのか? 楽しみですね。

久石譲Concertページも2015年を迎え、新しい5年間(2015-2019)のページが更新されました。

ここにどんな歴史が刻まれていくのでしょうか。
ワクワクしています。

久石譲 Concert 2010-

久石譲 Concert 2015-

 

久石譲 ジルベスター・コンサート 2014 レビュー

 

Blog. 2014年一番アクセスが多かった久石譲ページ

Posted on 2015/1/3

2014年当サイト「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」にて一番アクセスされた、一番閲覧の多かったページは?ご丁寧にサービスのほうから統計が届いたので、それをご紹介します。

 

アスセスページTOP5はこのような結果だそうです。

2014年 統計1

 

《2014年アクセスランキングTOP5》

TOP1. Blog. 「かぐや姫の物語」 わらべ唄 / 天女の歌 / いのちの記憶 歌詞紹介

ひそかに認識はしていましたが…各方面で映画『かぐや姫の物語』の主題歌および劇中歌の歌詞を探されている人がとても多かったんですね。

特に高畑勲監督が作曲された「わらべ唄」や「天女の歌」は、サウンドトラックのみの収録および歌詞掲載だったからだと思います。うーん、主題歌も挿入歌も久石譲作曲ではないので、純粋に第1位として喜んでいいのかどうか複雑なところでもあります。

その人気もあってか、年明け早々1月21日に「女声三部合唱のための かぐや姫の物語」として久石譲名義にてシングルCD発売が予定されています。こちらには高畑勲監督作曲の「わらべ唄」「天女の歌」以外にも、久石譲作曲の劇伴曲「なよたけ」を歌曲にした新たな楽曲も収録予定です。

 

TOP.2 Blog. 「ふたたび」「アシタカとサン」歌詞 久石譲 in 武道館 より

こちらも非常に検索が多かったのが「アシタカとサン」の歌詞です。理由や背景はいろいろとあるようですが、この楽曲はもともと映画『もののけ姫』のクライマックスに流れるピアノの美しいメロディが印象的なインストゥルメンタル曲です。そんな「アシタカとサン」を歌詞をつけて歌曲として披露したのが、2008年コンサート「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」です。

おそらく後にも先にも久石譲名義としては披露していないはず、いやありましたね、「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」とその模様をLive収録した「The Best of Cinema Music」CD作品です。

それをふまえても「アシタカとサン -Vocal version-」の歌詞が、公式に掲載されていたのは武道館コンサートの販売パンフレットのみでした。あとは武道館DVDに歌詞テロップがついていたかどうか、です。そういったこともあって、このアクセス人気なのだと思います。

映画『千と千尋の神隠し』のクライマックスで印象的に流れたオーケストラ楽曲「ふたたび」も人気が高いです。こちらは武道館でのフルオーケストラ・ヴォーカル・バージョンと、平原綾香さんがアコースティックにカバーしたシングルCDもあります。

 

TOP3. Info. 2014/12/31 「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」(大阪) 開催決定![10/01 update!]

2014年大晦日、3年ぶりに復活した久石譲シルベスター・コンサート。おそらくこの情報を掲載したのが、久石譲オフィシャルサイトよりも先行も先行。9月頭に情報アップしたと記憶しています。

それからチケット情報やプログラム予定など、解禁される情報ごとに更新、アップデードしていました。いかに、久石譲のコンサートを待ち望んでいる人が多いか、そして1夜限り、1公演限りのシルベスター・コンサートの希少度もあって、このような結果となりました。

情報公開から約4ヶ月間で、年間トータルの第3位ですからその勢いを感じます。当サイトでは、コンサート情報を時系列にて公開しています。開催決定からチケット発売情報、そして終演後のセットリストレポートまで。ちなみにこのページは、facebook いいね! もたくさんいただきました。ありがとうございます。

 

TOP4. Info. 2014/10/12 久石譲 「久石譲&新日本フィル特別公演」(長野) 開催決定!

こちらも人気の高かった久石譲コンサート情報から、10月に開催された長野公演です。

実はランキングに入ったこのページよりも、
Info. 2014/07/05 久石譲&新日本フィル 10月公演(長野) チケット一般発売 [7/5 update!]
Info. 2014/10/12 「久石譲×新日本フィルハーモニー交響楽団」(長野) プログラム変更

などのほうがより詳細情報を公開していたのですが、なぜか一番最初にエントリーしたページがランキングに入りました。おそらく他の媒体などもふくめて情報公開日があまりにも先手だったため、web検索的にも浸透してしまった結果かと。なにはともあれ、いろんな意味で長野公演の関連ページは、総合してアクセスが多かったです。

 

TOP5. Blog. 久石譲 「楽譜紹介ページ」 久石譲監修オリジナル・スコア と 楽譜検索 まとめ

久石譲の楽譜紹介や楽譜の探し方をまとめたページです。なぜ探し方が人気かというと、オフィシャルスコアが少ないこと、また様々な楽器編成に対応した楽譜を探している方が多いこと、これらが背景のようです。

もちろんオフィシャル・スコアを掲載したページ
久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 SCORE

こちらも人気です。ここからスコア委託をしているショット・ミュージックへのリンクも、活用いただいています。ショット・ミュージックは主に管弦楽や吹奏楽の楽譜を販売およびレンタルしている会社です。いろんなシーンで久石譲音楽が演奏されているということですね。おそらくランキングに入った「楽譜紹介ページ」と「オシフャル楽譜」ページ、このふたつのアクセスを合算すると、TOP1かもしれません。

 

 

という2014年アクセス結果となりました。

キーワードとしては、

コンサート情報 楽譜情報 ジブリ音楽

これが久石譲に関する知りたい情報、興味のある情報ということだと思います。もちろん当サイトでの偏った情報(質/量)においてではありますが、あらためて久石譲の音楽を聴きたい方・演奏したい方が多いということ、久石譲音楽が多くの人に愛されているということがわかる結果でした。しかもリアルタイムな情報として。そんな情報手引きのお手伝いが当サイトができているならば、幸いです。これからも更新がんばります。

 

上のランキング結果イメージにも書かれていましたが…

「特に人気のあった投稿には、2014年より前に書かれたものもありました。あなたの文章は長い間読まれているようです ! また同じトピックについて書いてみるのも良いかもしれません。」

たしかに、トップ5中、3つが2013年に公開したページでした。うーん、喜んでいいのか励むべきなのか。

 

《おまけ1》

個人的に「おっ!?」と思ってうれしかったのが、このランキングの下、次の第6位に、このページがランクインしたことです。

Disc. 久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』 *Unreleased

これはもう久石さん、CD化するしかないでしょう!?ほかにも未発売曲のアクセスも多いです。皆さんが求めている証拠ですね。このJAL『明日の翼』が検索されるたびに、「あー、飛行機でどこかへお出かけされたんだなー」とか思っています。

 

《おまけ2》

2014年 統計2

 

当サイトは、なんと日本国内のみならず、世界88ヶ国から見られているよ、という統計ページです。

人気の国:日本、アメリカ、中国

日本は当たり前だとして(おそらく9割以上は占めているはず)。ちょっとわかりにくイメージですが、日本が見えなくなるくらい濃い塗りつぶしです。塗りつぶし濃度によって、アクセス分布となっています。

全世界195ヶ国として、約半分弱の国から1年間のなかで、アクセスいただいたという結果です。これって結構すごいような気がします。もちろんグローバル仕様なサイトには構築していません。

なにがすごいかというと、IT社会のおかげで、どの国でアクセスしても母国語に翻訳して閲覧可能なこと。そういった機能が今のWebブラウザには標準であります。

なにがすごいかというと、世界中の人々が久石譲の音楽、久石譲の活動に興味を持っているという証拠。そして、久石譲の母国であり久石譲活動拠点である、日本からの情報を求めているということではないかと思います。その正確さ、早さ、深さ、広さ、すべてにおいて。

ちなみに、4位以降もせっかくなので紹介しますと、香港、台湾、韓国、オーストラリア、フランス、ブラジル、ドイツ、と続いていました。

2014年は香港コンサートも2回開催されましたしね。なかなかそんな結果見ることもないので、興味深かったです。総合してアジアが上位を占めているという人気の高さはわかりますが、オーストラリア、フランス、ブラジル、…ほんと世界各国なのだなあと実感した次第です。

 

2014年たくさんのアクセスありがとうございました。2015年もどうぞよろしくお願いいたします。

久石譲の活動量に左右されることなく、いい意味でコンスタントに情報を公開していきます。いち早いリアルタイムな情報公開から、過去を紐解く整理まで。

久石譲音楽がこのように広がっていくことを願って。

 

music map

musical map

 

Blog. 久石譲 「モーストリー・クラシック 2015年2月号」 インタビュー内容

Posted on 2014/12/30

12月20日発売 雑誌「モーストリー・クラシック」2015年2月号(vol.213)久石譲のインタビュー記事「若い世代を集める久石譲」が掲載されています。

今号の特集である「進化する!日本のオーケストラ」に絡めた久石譲の近年の指揮・コンサート活動についての挑戦を熱く語っています。掲載記事内容をご紹介します。同時に2015年の久石譲活動の一大発表もあります!

 

 

若い世代をコンサートに集める久石譲

日本の楽団は、特に若い世代の集客に苦労している。そんな状況に一石を投じたのが、作曲家の久石譲の指揮する演奏会だ。2004年から新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)を組織、自作の他にもクラシック作品を自ら指揮している。

さらに近年の活動では、「久石譲クラシック・シリーズ」などにおいてクラシックのプログラムで東京フィル、東響を指揮。他に読売日響なども指揮しているが、通常の定期演奏会とほぼ同額のチケットを購入した若い聴衆が会場を埋め、お目当ての映画音楽ばかりでなく、ブラームスやベートーヴェンの交響曲に熱心に耳を傾けている。

「オーケストラの問題点は明確にあります。2000人収容のホールに演奏家が約100人必要です。ロック・コンサートが、演奏家数人で2万、3万の聴衆を集めることから考えると効率は良くない。そのために需要と供給のバランスをとる必要から、どこも観客となるクラシック・ファンを増やす努力をしています。ただ、観客の年齢層が上がっているので、プログラムの作り方に保守的な傾向が出やすくなっている。さらにそれが進むと古典芸能になってしまい、先がない。未来に繋げていくには、現代の音楽をプログラムに加えていくべきだと思います」

久石指揮のコンサートはクラシックを核とした「オーケストラ・コンサート」の形をとって、W.D.O.や各地の楽団とで、ここ数年、かなりの数が行われている。プログラムはほとんどの場合、クラシックの名作、オリジナルの映画音楽、自作を含めた現代の音楽という3本柱で構成されている。

「1960~80年代は、『既成概念を壊す』ことを、音楽だけでなく、美術、文学、映画、建築などが目指していて新しい表現に活気をもって取り組んでいたのが、社会が疲れていくに従って、それが下火になっていった。ただ、その時代の音楽の最大の問題は、解剖学者の養老孟司さんのいう『脳化社会』のようなもので、多くの作曲家が自分の頭の中で正しいと思って作った音楽を先鋭化させていったため、演奏家・観客からどんどん乖離して、ある種の小さなジャンルになって、いまでは年に数回、現代音楽祭をやっているだけになっている」

「僕は、そういった形ではなく、通常のブラームスやベートーヴェンがメインのコンサートの冒頭に、頭でっかちになった『現代音楽』ではなく、現代に必要な『現代の音楽』を聴衆に届けていく作業をオーケストラには日常的にして頂きたいと思います。僕は『アートメント』(アートとエンターテインメントを組み合わせた造語)という言葉を使います。アートを日常にして行く作業、それが、クラシックのコンサートでも必要なのではないかと考えて、自分のコンサートの時に自作やアダムズ、ペルト、グレツキなどを演奏して、後半にクラシックの曲という形をとっています。僕の映画音楽を目当てに若い人が来てくれて、そこで、現代の音楽やクラシックの魅力を感じてもらえれば素晴らしい」

もう一方で、室内楽編成で現代の音楽を集めた「ミュージック・フューチャー」のプロデューサーを行い、2015年も継続していく予定だ。

「僕の作曲の根本にはミニマルミュージックがありますが、正統派のミニマル・ミュージックの作曲家は、ライリー、ライヒなど4人だけで、あとはポスト・ミニマルやポスト・モダンで、いまポスト・クラシカルというクラシックの範疇にとどまらないミューリーや大作曲家の孫のガブリエル・プロコフィエフといった人達が出ている。そんなミニマルの与えた影響や流れなどは、大きな意味があるのに日本では聴くことができない。それをもっと紹介したいし、自作も書きたいということで始めました。集客は大変ですが、今後も続けていきます」

5月には、W.D.O.として競演する新日本フィルが主催する「新・クラシックへの扉」の特別編「現代の音楽への扉」に登場する。

「定評ある入門シリーズなので、僕のコンサートが入るのは、新しい形の実験だと思います。今回は、調性の崩壊を促した『トリスタン和音』が使われている、ワーグナー『トリスタンとイゾルテ』前奏曲から始まって、シェーンベルクの『浄夜』、そして現代の音楽であるペルトの交響曲第3番というプログラムを組みました」

(MOSTLY CLASSIC 2015.2 vol.213 より)

 

 

2014年の雑誌インタビュー等で語られてきたクラシック音楽への問題提起。課題とそれをふまえた自身の活動への転換。一貫して同じテーマで語られていますので、このインタビュー内容は、その本気度と今後の方向性・指針が見え隠れしています。

そして、すらすら読みながら、最後に重大発表!2015年 久石譲コンサートの一企画の全貌が明らかになったわけです。

2014年からの流れをふまえると、(『現代の音楽』 『アートメント』 『クラシック音楽問題』というキーワード)「W.D.O.コンサート」と「ミュージック・フューチャー シリーズ」は、翌年以降も継続して行われる予感はありましたが、その大きな流れのなかで、『新・クラシックへの扉・特別編 「現代の音楽への扉』コンサートが、指揮:久石譲 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団で開催されることが発表されました。

2015年5月5日 開催です。詳しい情報はインフォメーションにて更新していきます。

 

 

Related page:

 

モーストリー・クラシック

 

Blog. 久石譲 「モーストリー・クラシック 2015年1月号」 インタビュー内容

Posted on 2014/12/29

11月20日発売 雑誌「モーストリー・クラシック」2015年1月号(vol.212)第26回高松宮殿下記念世界文化賞の音楽部門受賞者アルヴォ・ペルト氏と久石譲の面会の様子が取り上げられました。

掲載記事内容をご紹介します。

 

 

第26回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式と記者会見
「栄誉に対し永遠に責任を持たなければいけない」とペルト
「ペルトさんは現代で最も重要な作曲家です」と久石譲

第26回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式が10月15日、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。今年の受賞者は音楽部門のアルヴォ・ペルト(エストニア)をはじめ、マルシャル・レイス(絵画部門、フランス)、ジュゼッペ・ペノーネ(彫刻部門、イタリア)、スティーブン・ホール(建築部門、アメリカ)、アソル・フガード(演劇・映像部門、南アフリカ)。

授賞式に先立って14日、ホテルオークラ(東京・虎ノ門)で合同記者会見と受賞者個別懇談会が行われた。

ペルトは「我々5人が東京に来て、そろって並んで座り、この栄誉に対し感謝を述べること、これは奇跡ではないでしょうか。栄誉とは何でしょうか。最大の栄誉は神に属しています。人が栄誉に浴すことは決して容易なことではありません。栄誉を与えられた者は、栄誉に対し永遠に責任をもたなければなりません」とあいさつした。

ほほからあごにびっしりと生えた白髪まじりのひげが特徴的なペルト。一言一言ゆっくりと英語でスピーチした。記者会見の後、部屋を変えて、個別に質問に答える懇親会が行われた。今度はロシア語の通訳付き。母国語はエストニア語だが、英語よりはずっとなめらかに話し始めた。

記者会見で「バッハは、作品はすべて神の栄誉のために作った、と言っている」と語ったことに関し、「私たちはバッハの子供たちでもあります。音楽家はみんなそうです。ベートーヴェン!私は何者なのでしょうか?口を開けるのもおこがましい。音楽の歴史の中の偉大な人々です。私たちはこの音楽の歴史の中で育ってきました」と補足した。

また自分の作曲の仕方について、「私はゼロから始めます。どこに行くか分からない。気球の砂袋を一つ一つ落として浮き上がるようなものです。作曲できないと、何か悪いことをしたのだろうかと思ってしまいます。一番甘い時間でもありますが、しんどい仕事なのです」と説明した。

15日の授賞式と祝宴の間の短いカクテルの時間に、作曲家の久石譲がペルトに会いに駆けつけた。9月に自作とペルト作品で演奏会をしたばかり。

「自然でとても素晴らしい人ですね、人間として持っている雰囲気が。ペルトさんの音楽は若い頃は、現代音楽的だったのですが、ある時期から普通の三和音に戻りました。おそらく、ペルトさんもこのままでは観客(の感覚)とずれてしまうという危機感をお持ちだったんじゃないでしょうか。とても共感する部分があります。誰でも親しめるスタイルをとりながら、ものすごくロジックがあります。聴くと、一見、癒し系の音楽で聴きやすいのに、見事なぐらいロジカル、なのに理屈っぽいものを聴く方に感じさせない、ペルトさんは現代で最も重要な作曲家です。僕はオーケストラの指揮をやりますので、できるだけペルトさんの曲をやろうと思います。第3交響曲はみんなに絶対聴かせなければいけない。来年か再来年にぜひやろうと計画を立てています」と話した。

(MOSTLY CLASSIC 2015.1 vol.212 より)

 

久石譲 アルヴォ・ペルト

 

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モーストリー・クラシック

 

Blog. 「久石譲 第九スペシャル」 コンサート・パンフレットより

Posted 2014/12/28

いよいよ2014年12月31日大晦日のジルベスター・コンサートに向けてカウントダウンが始まりました。

先日は、前回のジルベスター・コンサートの内容、「ジルベスター・コンサート2011」について詳細を紐解きました。このときから今年2014年は3年ぶりのジルベスター・コンサート開催となります。

さて、今回は、昨年2013年師走にコンサート開催された「久石譲 第九スペシャル」についてです。

 

 

久石譲 第九スペシャル

[公演期間]
2013/12/13,22

[公演回数]
2公演 東京・NHKホール / 大阪 フェスティバルホール

[編成]
(東京)
指揮:久石譲
管弦楽:読売日本交響楽団
ソプラノ:林正子 メゾソプラノ:谷口睦美 テノール:村上敏明 バス:妻屋秀和
オルガン:ジャン=フィリップ・メルカールト
バラライカ/マンドリン:青山忠 バヤン/アコーディオン:水野弘文 ギター:天野清継
合唱:栗友会と一般公募による

(大阪)
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ソプラノ:林正子 メゾソプラノ:谷口睦美 テノール:村上敏明 バス:妻屋秀和
オルガン:土橋薫
ギター:千代正行 バラライカ/マンドリン:和智秀樹 アコーディオン:都丸智栄(ザッハトルテ)
合唱:大阪センチュリー合唱団 大阪音楽大学合唱団 ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団

[曲目]
久石譲:「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための『風立ちぬ』 小組曲
久石譲:『かぐや姫の物語』より 「飛翔」
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

(アンコール曲なし)

 

 

日本では年末に聴かれるクラシック音楽の定番である「第九」。この交響曲最高傑作とも言われる名曲と久石譲の2013年を代表する2作品、そしてベートーヴェン「第九」に捧げる序曲として書かれた自作曲「Orbis」です。

ここでは当日会場で配布されたコンサート・プログラムより、久石譲自身による楽曲解説および楽曲への想いを紹介します。

 

 

久石譲 《第九スペシャル》を語る

「僕の曲より、《第九》なら振りたい」
コンサートの依頼を受けたとき、何気なく言った言葉が、こんな大きな規模で実現し、その反響に驚いています(笑)。心してこのコンサートに臨みますが、その前に、曲の紹介および作曲家として考えたことを、少しお話します。

「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~

曲名はラテン語で”環”や”繋がり”を意味します。2007年の「サントリー1万人の第九」のために作曲した序曲で、サントリーホールのパイプオルガンと大阪城ホールを二元中継で”繋ぐ”という発想から生まれました。祝典序曲的な華やかな性格と、水面に落ちた水滴が波紋の”環”を広げていくようなイメージを意識しながら作曲しています。歌詞に関しては、ベートーヴェンの《第九》と同じように、いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります。言葉として選んだ「レティーシア/歓喜」や「パラディウス/天国」といったラテン語は、結果的にベートーヴェンが《第九》のために選んだ歌詞と近い内容になっていますね。作曲の発想としては、音楽をフレーズごとに組み立てていくのではなく、拍が1拍ずつズレていくミニマル・ミュージックの手法を用いているので、演奏が大変難しい作品です。

「Orbis」ラテン語のキーワード

・Orbis = 環 ・Laetitia = 喜び ・Anima = 魂 ・Sonus, Sonitus =音 ・Paradisus = 天国
・Jubilatio = 歓喜 ・Sol = 太陽 ・Rosa = 薔薇 ・Aqua = 水 ・Caritas, Fraternitatis = 兄弟愛
・Mundus = 世界 ・Victoria = 勝利 ・Amicus = 友人

 

バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための『風立ちぬ』 小組曲

本編で使用されたサウンドトラックを出来るだけ忠実に再現しながら、物語の順序に沿って演奏会用の楽曲として構成し直したものです。オーケストラに加えて、バラライカ、バヤン(ロシカのアコーディオン)、ギターなど、映画で用いた楽器をそのまま使用します。キャッチコピーの「生きねば。」が端的に示しているように、人間は何があっても強く生きていかなければならない、というのが『風立ちぬ』の最も重要なテーマだと思います。

 

『かぐや姫の物語』より 「飛翔」

現在公開中の『かぐや姫の物語』からは、本編の中で重要な「飛翔」の場面の音楽を中心に構成しました。かぐや姫という主人公は、月の世界にいる間は人間的な喜怒哀楽も知らず、完全な幸せの中で暮らしている存在です。その彼女が地上に下り、さまざまな人間の感情を経験し、再び月の世界に戻っていく時に、やはり彼女はそのまま地上にとどまっていたいと感じた。つまり、人間というのは日々悩み、苦しむ存在なのですが、それでもやはり生きるに値する価値がある。そのようなことを『かぐや姫の物語』からは強く感じます。

 

ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

作曲家という視点から楽譜を見ると、《第九》という作品は各楽章で用いられている要素が非常に少ない。つまり、ベートーヴェンは必要最小限の素材だけで作曲しています。しかも、個々の楽章の長さが比較的に長い。その結果、演奏する側も聴く側も、ある程度の”忍耐”を要求する作品となっています。厳選された素材しか音楽に使わない。無駄なものは用いない。聴きやすい音楽を作るというよりは、感情に流されない理想的な音楽の形(フォーム)を追求するという晩年のベートーヴェンの姿勢が、如実に出ています。

まず、第1楽章ほどソナタ形式のあるべき姿、理想的なフォームをこれほど見事に作り上げた楽章は他にないと言ってよいでしょう。冷静に楽譜を読むと、彼がそのフォームの段取りをきっちりと組み立てていった苦労や格闘の跡がはっきりと見えてきます。

第2楽章は、スケルツォ-トリオ-スケルツォという構成になっていて、スケルツォの部分がソナタ形式(提示部-展開部-再現部)の形をとっています。ベートーヴェンは中間部のトリオの後、スケルツォの部分をそっくりそのまま繰り返していますが、それまでの彼の作曲ならば、同じ音楽をダ・カーポのようにそのまま繰り返してしまう手法は採らなかったはずです。その理由が「厳選された素材を用いているのだから、同じことを繰り返してよいのだ」という”遠観”によるものなのか、あるいは別の理由によるものなのか、いろいろなことを私たちに考えさせる音楽です。

第3楽章は、およそ作曲家が到達し得る最高水準の音楽に仕上がっています。冒頭の美しい旋律が何度も分断しながらエコーのようにリフレインし、それが弦楽器から木管楽器へと受け渡されていくことで、単純に”きれいな旋律”だけでは終わらない、非常に内省的な音楽が作り上げられていく。そこに、作曲家としてのベートーヴェンの技法の粋がすべて詰まっています。我々がどんなに試みても絶対に到達できないような”神の領域”に近い音楽。人類が音楽によってここまで到達し得た、という意味も含めて偉大な楽章です。

第4楽章は、これまで彼が作曲してきた交響曲から見てみると、合唱という”声”の導入が明らかに異質です。しかし、先に触れたような、必要最小限の要素だけで音楽を組み立てていくという発想が、実は第4楽章にも受け継がれています。基本的には「Freude, Schoner Gotterfunken 喜び! 神の天国の乙女たち!」という有名な「歓喜の歌」の旋律と、男声合唱が「Seid umschiungen Millionen! 抱き合おう!  幾百万の人々よ!」と歌う旋律と、この2つのメロディだけでどこまで変奏曲を書き上げていくことが出来るか。そうした発想は、実は先行する3つの楽章と同じです。

歌詞を見ると、ベートーヴェンは、シラーの長大な原詩から冒頭の部分だけを抜粋して使っています。つまり、シラーの詩の意味内容を音楽で伝えようとしているのではない。逆に見ると、ベートーヴェンは自分の中に響いてくる言葉だけを、シラーの中から選び取ったということです。おそらくベートーヴェンはオーケストラの楽器だけでは表現できない要素を”声”を導入することによって解決し、《第九》を締め括ろうとしたのではないか。それが、僕の考えです。

ベートーヴェン自身の性格を踏まえて考えると、《第九》は”苦悩から歓喜へ”あるいは”闘争から勝利へ”という、彼らしい図式を持つ作品です。その意味では《運命》と同じなのですが、作曲時の彼の年齢や境遇を考えると、《運命》のような闘争的音楽と見るべきではないし、単なる”歓喜の歌”と捉えるのも違うと思います。

人間が日々感じている喜びは、単純な嬉しさにとどまらない部分があります。「辛かったけれど、努力して続けてきて良かった」と思うような、ジワっと伝わってくる喜びから全身の細胞が波打つような興奮した喜びまで様々です。たとえ”喜び”の大半が”苦しみ”や”辛さ”を占めているのだとしても、それでも人間は生きるに値する。人類に対しての深い愛、それが、おそらく晩年を迎えた老作曲家・ベートーヴェンが《第九》え伝えようとしている”歓喜”の意味ではないか。そこに、日本人が《第九》をこよなく愛する大きな理由のひとつがあると思います。

今晩のコンサートをお聴きいただく皆様が、4曲の演奏を通じて”生きる勇気”のようなものを感じ取っていただければ、と願っております。

聞き手・構成:前島秀国

(「久石譲 第九スペシャル」コンサート・プログラム より)

 

 

コンサート・プログラム(配布)、コンサート・パンフレット(販売)によって、当日演奏される作品の詳細が解説されているのはとても有意義です。しかも作曲家・演奏家・指揮者である久石譲の言葉によって。

もちろん音楽を聴いてそこから伝わってくるものまたはどう受け止めるかは聴き手に委ねられるわけですが、それでも大変貴重な手引きとなります。なぜこの曲を取り上げるのか?どういう解釈でどういう表現方法を試みようとしているのか?などなど、聴き流すにはもったいない気持ちにさせられ、開演前にこれを熟読して臨めば、姿勢を正して聴くモードになるでしょう。

そしてコンサート後はそんな言葉たちを片手に、まだ記憶に新しい会場で感動した音楽たちの余韻にひたることができます。

 

 

久石譲は、ベートーヴェン「第九」に関して、過去のコンサートインタビューや雑誌取材でも語っています。興味のある方はどうぞ。

こちら ⇒ Blog. 「クラシック プレミアム 12 ~モーツァルト3~」(CDマガジン) レビュー

こちら ⇒ Blog. 「考える人 2014年秋号」(新潮社) 久石譲インタビュー内容

 

 

さて、2013年師走の「久石譲 第九スペシャル」から1年。今年のプログラムには、同じ演目ではありますが、1年を経て進化した、『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の一大組曲をそれぞれ聴くことができます。

「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」

こちら ⇒ Info. 2014/12/31 「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」(大阪)

今年は、この2作品を核にしたコンサート活動およびCDリリースだった、と言っても過言ではないでしょう。そのあたりの1年間を総括した経緯と考察は、結構なボリュームでまとめていますので、興味があれば見てください。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 新作『WORKS IV』ができるまで -まとめ-

こちら ⇒ Blog. 久石譲 新作『WORKS IV』ができてから -方向性-

 

 

物事の終わりは、同時に物事の始まりでもあります。2014年の久石譲の集大成は、2015年の久石譲の幕開けです。

第九スペシャル

 

Blog. 久石譲 「ジルベスター・コンサート 2011」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2014/12/27

いよいよ2014年12月31日大晦日のジルベスター・コンサートに向けてカウントダウンが始まりました。2006年から始まった久石譲のジルベスター・コンサートですが、この2011年のジルベスター・コンサートを最後に、今回なんと3年ぶりの開催となります。

前回の「ジルベスター・コンサート 2011」はどんな内容だったのか。当時の貴重なコンサート・パンフレットをもとにプログラムおよび楽曲紹介をしていきます。

 

 

ジルベスタ―コンサート2011

2011/12/31

指揮:ピアノ:久石譲
指揮:金 洪才
ヴォーカル:麻衣
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団

 

第一部 ラ・フォリア

2010年スタジオジブリ制作、宮崎駿監督作品の短編映画『パン種とタマゴ姫』より。ヴィヴァルディの「ラフォリア」を素材に、現代的なアプローチで再構築。ヴィヴァルディが活躍した時代の”バロック音楽”のシステマチックな部分にミニマル・ミュージックの手法を取り入れ、古典的なニュアンスを保ちながらも現代のバロック曲として新たな命が吹き込まれた作品。
*「ラ・フォリア ヴィヴァルディ/久石譲編 『パン種とタマゴ姫』 サウンドトラック」 収録

 

第二部 「坂の上の雲」 第二組曲
・第3部序幕
・少年の国
・真之と季子
・煉獄と浄罪
・絶望の砦 ~二◯三高地ニ起ツ~
・日本海海戦
・終曲
・Stand Alone

司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』が映像化。NHKスペシャルドラマとして2009年11月~12月に第1部。2010年12月に第2部、今年12月に完結編となる第3部が放送されたばかり。明治時代、近代国家として新しく生まれ変わろうとする「日本」。純粋さやひたむきさだけでなく、高み=”坂の上”を目指そうとする人々の強い志と貪欲さが時代を動かす風となっていく。ドラマの枠を超え、壮大なスケールで描かれた作品は日本中に感動と衝撃を与えた。

音楽を担当した久石は、「史実・そこに立ち向かう人々の”凛とした”生き様を描きたかった」という。今回はその作品群の中から第3部を中心に「第3部序幕」「少年の国」「真之と季子」「煉獄と浄罪」「絶望の砦~ニ◯三高地ニ起ツ~」「日本海海戦」「終曲」「Stand Alone」の8曲を選りすぐり、組曲形式に再構築した。第3部のメインテーマ「Stand Alone」を歌うのはヴォーカリスト、麻衣。彼女の透きとおった歌声は、番組プロデューサーの耳に留まり3年目を迎える今年、第3部の歌手として抜擢された。2011年の締めくくりにふさわしい重厚且つ壮大なオーケストレーションが秀逸。
*「NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」オリジナル・サウンドトラック2・3」「Melodyphony」 収録

 

第三部 二ノ国より
・メインテーマ 聖灰の女王
・シズク
・灰の恐怖
・聖灰の女王とのラストバトル
・心のかけら

レベルファイブ企画・制作、アニメーション作画スタジオジブリによる作品、ファンタジーRPG『二ノ国』より。2010年発売のニンテンドーDS用ゲームソフト『二ノ国 ~漆黒の魔導士~』、2011年発表のプレイステーション3用ゲームソフト『二ノ国 ~白き聖灰の女王~』から「メインテーマ ~聖灰の女王~」、ナミダの妖精シズクのテーマ「シズク」、「灰の恐怖」、「聖灰の女王とのラストバトル」、麻衣が歌うエンディングテーマ「心のかけら」の5曲を選曲。フルオーケストラ楽曲による聴き応えのある音楽の数々はゲーム界に大きな衝撃を与え、コンサートの開催を求める声が多数。満を持して今回の発表に至った。現実世界と別の時間軸に存在するもうひとつの現実”二ノ国”の世界をお楽しみいただきたい。
*「二ノ国 漆黒の魔導士 オリジナル・サウンドトラック」 収録

 

第四部 My Favorites

・Prologue ~ Drifting in the City
1992年制作のアルバム「My Lost City」より。1920年代後半から起こった世界大恐慌に破壊的な人生を歩んだ米国の小説家スコット・フィッツジェラルドの悲劇と悲哀を題材に描いたアルバム。収録曲の数々は、オマージュ作品でありながらも、日本のバブル崩壊への警鐘の意も込められ、情熱的かつ悲劇的・感傷的なメロディが特徴。なかでも「Drifting in the City」は、ニューヨークの冷気や心地よい怠惰感、そこに漂う切なさなのか、甘美なメロディが胸に突き刺さるようでもある。オーケストレーションもさることながら、ピアノの魅せる表情も聴きどころである。
*アルバム「My Lost City」「Symphonic Best Selection」 収録

・HANA-BI
1997年公開、北野武監督作品の映画『HANA-BI』より。追われる身の刑事とその妻の逃亡劇を、これまでの北野監督の乾いた視点から一転して、叙情的に描写した作品。ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞。テーマ音楽は非常に叙情的で、映画のエモーショナルな部分を深く表現している。
*アルバム「WORKS II」 収録

・Kids Return
1996年公開、北野武監督作品の映画『Kids Return』より。ボクサーを目指す少年と、ラーメン屋で出会った若頭のもとで極道の世界に入った青年二人が、汚い大人の世界に踏み込み、過酷な現実を味わう模様を描いた作品。このテーマ曲のオーケストラ版は、疾走感のあるリズムと、どことなく悲壮感漂うメロディが印象的な作品。
*アルバム「The Best of Cinema Music」 収録

・Merry-go round
2004年公開、宮崎駿監督作品の映画『ハウルの動く城』より。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの著書「魔法使いハウルと火の悪魔」をもとに、魔法で90歳の老婆に変えられてしまったソフィーと魔法使いのハウルとの恋をとおして、生きる楽しさや愛する歓びを描いた作品。映画では、テーマ曲を様々に変奏してそれぞれの場面に個性的な楽曲が付いている。この曲は映画のテーマ曲を核にして書かれた。
*アルバム「WORKS III」 収録

・One Summer’s Day
2001年公開、宮崎駿監督作品の映画『千と千尋の神隠し』より、「あの夏へ」。神々の住まう不思議な世界に迷い込んでしまった10歳の少女・千尋が、湯屋「油屋」で下働きをしながら次第に生きる力を取り戻していく物語。郷愁をかきたてる美しいメロディと、ピアノをフィーチャーした繊細なオーケストラが秀逸。
*アルバム「Melodyphony」「The Best of Cinema Mucis」 収録

・Orietntal Wind
2004年より放映中の、サントリー京都福寿園「伊右衛門」CM曲より。今や、お茶の間のおなじみとなった美しい旋律は、黄河の悠々とした流れをイメージしてつくられたといわれている。しかし、朗々とした格調高い優雅なメロディの裏には、繊細なリズムや激しいパッセージの連続があり、難易度の高い楽曲でもあるが、それ故、聴く者の心に刻み込まれ、何度も聴きたくなるのであろう。
*アルバム「Melodyphony」 収録

(ジルベスター・コンサート 2011 コンサート・パンフレット より)

 

 

-アンコール-
・Merry-go round
※パンフレットには曲紹介ありますが実際にはアンコールにて演奏

・Madness
映画『紅の豚』より。ダイナミックなフルオーケストラと久石譲のピアノが激しく競演するコンサートでは昔からの定番曲であり、人気のある楽曲です。

・My Neighbour Totoro
映画『となりのトトロ』より。主題歌「となりのトトロ」のフルオーケストラ・バージョン。壮大で弾けるようなトトロのメロディに思わず口ずさんでしまう、子どもから大人まで親しまれている楽曲です。

・夢の星空 (ピアノ・ソロ)
オリジナル・ソロアルバム「ETUDE」より。久石譲のピアノ・ソロ曲。ノンタイアップながら一度聴いたら忘れられないキャッチーで優しく美しいメロディです。

 

と、アンコールの曲解説はさらりと紹介する感じで。

さすがジルベスター・コンサート!お祭りコンサートと言わんばかりの大盤振る舞いなプログラムです。なかなかこのラインナップは昨今拝むことはできません。アンコールの出し惜しみない選曲や曲数もふくめて。

 

そしてこの「ジルベスター・コンサート 2011」で特徴的なことがふたつ。

  • 第1部 ~ 第3部までのプログラムすべてこのコンサート初演
  • 久石譲のピアノ演奏プログラムが多い

 

特に、ピアノ演奏に関しては、指揮者の金 洪才さんがいるため演奏家に専念できたということですね。ここ数年では、ほぼプログラム全楽曲の指揮者は久石譲ですので、指揮をしながら、楽曲によってはピアノを演奏に、また指揮に戻る、という感じで、ピアノに座ったまま1曲通してということも希少なくらいです。だからこそ上記2点をふまえて、この「ジルベスター・コンサート 2011」はとても贅沢な内容だったと思います。

もちろん近年のスタイルとなっている久石譲全曲指揮。久石譲がタクトを振ることで、久石譲作曲の音楽たちは、のびのびと羽ばたき、会場に独特の空気感を響かせます。

 

そしてこのコンサートの終盤に久石譲MCにより「今年をもってジルベスター・コンサートを終わること」「ゆっくりと作曲に専念する時間をつくるため」「ずっと同じままじゃだめ、変わっていかなければ」「また曲をたくさん作って、持ってきます!」といったことが語られたようです。

 

 

あれから3年、2014年大晦日に、ジルベスター・コンサートが帰って来ます。さて、今年は何が起きるのでしょうか?!すでにチケットはSOLD OUTとなっていますが、現時点での演奏予定プログラムはこうなっています。

 

久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団

[曲目] (予定)
久石 譲作曲
交響ファンタジー「かぐや姫の物語」
ウィンター・ガーデン
****** 休憩 *******
「風立ちぬ」第2組曲
「小さいおうち」
「水の旅人」
「魔女の宅急便」より Kiki’s Delivery Service for Orchestra
オリエンタルウィンド
などから演奏予定

こちら ⇒ Info. 2014/12/31 「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」(大阪) 開催決定![10/01 update!]

 

 

3年間という月日で、ここまでコンサート構成も変わってくるのだなあとなんだか感慨深い思いもあります。「ジルベスター・コンサート 2014」を目前にひかえ、「ジルベスター・コンサート 2011」を振り返ってみました。

2006年から2010年までのシルベスター・コンサートプログラムは
こちら ⇒ 久石譲コンサート2005-

 

 

そして、上の久石譲MCもふくめてですが、久石譲オフィシャルサイト内 スタッフブログにて、なんとこの日の模様はとても詳細に記録されています。リハーサルから、本番、久石譲MCなどなど写真もたくさんあります。

ぜひそちらもタイムスリップしてのぞいてみてください。ジルベスター・コンサートに行けても行けなくても、そんな気分にひたりましょう!

公式サイト》》 久石譲オフィシャルサイト スタッフブログ 大阪 ジルベスターコンサート2011

「ジルベスター・コンサート 2014」のレポートも、スタッフブログならではの舞台裏まで!期待したいところですね。

 

ジルベスター・コンサート 2011

久石譲 コンサート 2011

特集》 久石譲 「ナウシカ」から「かぐや姫」まで ジブリ全11作品 インタビュー まとめ -2014年版-

Posted on 2014/12/26

*更新情報 2021.11 更新

 

1984年公開 映画 『風の谷のナウシカ』から
2013年公開 映画 『かぐや姫の物語』まで。

約30年にも及ぶスタジオジブリ作品と久石譲音楽。

 

宮崎駿監督とは長編映画全10作でコンビを組み、高畑勲監督とは最新作で遂に相思相愛の初タッグを果たしました。2013年は宮崎駿監督の長編映画引退発表もあり、同年『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』とジブリ2大巨匠との仕事という、メモリアルイヤーとなりました。

 

ちょうど1年経過した今、総決算まとめです。

ジブリ公式ガイトブックである各映画の「ロマンアルバム」に収められた久石譲インタビューからジブリ映画音楽を振り返ります。ロマンアルバムからを一部抜粋していますので、気になる作品や読み進めたいインタビューを紐解いてください。それぞれ映画ごとロマンアルバム以外での久石譲インタビュー関連を紹介していますので、もっと深く知りたい方には完全に網羅できる内容です。

 

宮崎駿監督 長編映画 全10作
高畑勲監督 長編映画 最新作

この計11本の映画インタビューです。

 

でも、実は久石譲のジブリ関連作品はこれだけではありません。三鷹の森ジブリ美術館でのみ上映されている短編映画(2本)もあります。さらには同美術館でのみ聴くことができる展示室用BGMも手がけています。これに関しては書籍ではなくCD作品などから情報をご紹介します。

好きなあの曲、好きなあの映画、気になっていた音楽、作曲家自身の制作秘話や言葉によって、今まで聴いていたメロディとはまた違った新しい響きがしてくると思います。ジブリ映画、ジブリ音楽、そして久石譲音楽。30年以上にも及ぶジブリ×久石譲の音楽を知るということは、同じく久石譲音楽活動の約半分を知るということにもなります。

 

 

目次は下記のとおりです。

■目次■

-長編映画-
『風の谷のナウシカ』(1984年) 監督:宮崎駿
『天空の城ラピュタ』(1986年) 監督:宮崎駿
『となりのトトロ』(1988年) 監督:宮崎駿
『魔女の宅急便』(1989年) 監督:宮崎駿
『紅の豚』(1992年) 監督:宮崎駿
『もののけ姫』(1997年) 監督:宮崎駿
『千と千尋の神隠し』(2001年) 監督:宮崎駿
『ハウルの動く城』(2004年) 監督:宮崎駿
『崖の上のポニョ』(2008年) 監督:宮崎駿
『風立ちぬ』(2013年) 監督:宮崎駿
『かぐや姫の物語』(2013年) 監督:高畑勲

-短編映画-
『めいとこねこバス』(2002年) 監督:宮崎駿
『パン種とタマゴ姫』(2010年) 監督:宮崎駿
『毛虫のボロ』(2018年) 監督:宮崎駿
『三鷹の森ジブリ美術館 展示室用音楽』(2001年-)

-bonus-
《あれから25年》
ジブリ映画に関するCD/DVD/楽譜 紹介
ジブリ映画に関する音楽賞受賞歴 紹介

音楽:久石譲

 

 

映画 『風の谷のナウシカ』(1984年) 監督:宮崎駿

風の谷のナウシカ ロマンアルバム

”音楽をナウシカの目を通して入れているんです。ナウシカの感情につけるのではなく、ナウシカが見て感じるものに入れていったわけで、そうやってアニメの虚構の状況というものを浮き出させようとしたんです。わりと成功したんじゃないかと思いますよ。”

 

 

映画 『天空の城ラピュタ』(1986年) 監督:宮崎駿

天空の城ラピュタ ロマンアルバム

”基本コンセプトとしては、やはり映画のイメージというものを基礎にして、愛と夢と冒険の感じられる音楽にしようということでした。具体的にいうと、メロディをキチッと聞かせるものにしよう、それも、子どもたちが聞いて、心があたたかくなるようなものにしよう、というのが基本的な考え方ですね。”

 

 

番外編 『風の谷のナウシカ』~『天空の城ラピュタ』まで

風と種子 久石譲の世界 ナウシカ・アリオン・ラピュタ sc1

久石譲・宮崎駿 当時の貴重なロングインタビュー収録

 

 

映画 『となりのトトロ』(1988年) 監督:宮崎駿

となりのトトロ ロマンアルバム

”エスニックなものと普通のオーケストラの曲を両方使うということでは『ナウシカ』以来一貫しているんですよ。ただ今回は、『さんぽ』 『となりのトトロ』という歌をメインテーマにして、ぼくらが”裏テーマ”と呼んでいた『風のとおり道』を木の出てくるシーンに使った。そのへんの構造がうまくいったのでよかったんじゃないかな。”

 

 

映画 『魔女の宅急便』(1989年) 監督:宮崎駿

魔女の宅急便 ロマンアルバム

”架空の国ではあるけれどもヨーロッパ的な雰囲気ということで、いわゆるヨーロッパのエスニック、それも舞曲ふうのものを多用しようということは考えました。たとえばギリシャふうですとか、そういうニュアンスを出したというのはありましてダルシマ(ピアノの原型となった民族楽器)とかギター、アコーディオンというふうにヨーロッパの香りのする楽器をたくさん使ったりしました。”

 

 

映画 『紅の豚』(1992年) 監督:宮崎駿

 

 

映画 『もののけ姫』(1997年) 監督:宮崎駿

もののけ姫 ロマンアルバム

”今回の作品は、今まで自分がやってきた音楽の作り方や考え方ではやり切れないだろうという予感があったので、やり方を全部変えちゃったんです。そうしないと、もう一つ上にいけそうにない気がして…。なんてバカな真似をしたんだろうと思うんですけど(笑)。でも、そのチャレンジがあったから、今までとは違う表現になれたような気がするところがありますね。”

 

 

映画 『千と千尋の神隠し』(2001年) 監督:宮崎駿

千と千尋の神隠し ロマンアルバム

”宮崎さんがさまざまなものを取り入れることであの世界に広がりを与えているように、僕もさまざまな音を取り入れることで、映画を見た人のイマジネーションを広げていきたいと思ったんです。かつてこれほど大胆に、フルオーケストラとエスニックな音を融合させたことはないと思いますよ。今回、コンサートホールを使ってライブ収録をしたのですが、正解だったんじゃないかな。宮崎さんは空気感を大事にする人だし、あの世界の拡がりを表現するためには、やはりオケが必要なんですよ。”

 

 

映画 『ハウルの動く城』(2004年) 監督:宮崎駿

ハウルの動く城 ロマンアルバム

”実際にジブリで自分でピアノを弾いて、宮崎さんと鈴木さんに聞いてもらいました。1曲目は、わりと誰が聴いても「いいね」と思えるオーソドックスなテーマでした。2曲目は、自分としては隠し球として用意していったワルツで。これは採用されないだろうと思って演奏したんですけど、途端に宮崎さんと鈴木さんの表情が変わって、すごく気に入ってくれたんです。それが『人生のメリーゴーランド』で、結局3曲目は演奏せずに終わりました。”

 

 

映画 『崖の上のポニョ』(2008年) 監督:宮崎駿

崖の上のポニョ ロマンアルバム

“最初の打ち合わせの時にもうこのテーマのサビが浮かんできました。あまりにもシンプルで単純なものですから、これはちょっと笑われちゃうかなと思って、2~3ヶ月くらい寝かしたんですけど、やはりそのメロディーが良いなと思って、思い切って宮崎さんに聴いてもらったところ、「このシンプルさが一番いいんじゃないですか」ということで。”

 

 

映画 『風立ちぬ』(2013年) 監督:宮崎駿

風立ちぬ ロマンアルバム

“まずは、オーケストラを小さな編成にしたことです。宮崎さんも「大きくない編成が良い」と一貫して言っていました。それから鈴木プロデューサーから出たアイデアで、ロシアのバラライカやバヤンなどの民族楽器や、アコーディオンやギターといった、いわゆるオーケストラ的ではない音をフィーチャーしたことです。それによっても、今までとは違う世界観を作り出せたんじゃないかと思います。”

 

 

映画 『かぐや姫の物語』(2013年) 監督:高畑勲

かぐや姫の物語 ロマンアルバム

“自分にとって代表作になったということです。作る過程で個人としても課題を課すわけです。これまでフルオーケストラによるアプローチをずいぶんしてきたのが、今年に入って台詞と同居しながら音楽が邪魔にならないためにはどうしたらいいかを模索していて、それがやっと形になりました。”

additional

 

 

 

 

2018.8 Update!!

「風の谷のナウシカ」から「かぐや姫の物語」まで。久石譲が鈴木敏夫プロデューサーらと作品ごとに語った貴重なエピソード。ラジオ番組対談書き起こし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三鷹の森ジブリ美術館 オリジナル短編映画

第3作 『めいとこねこバス』(2002年) 監督:宮崎駿

久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション第3作「めいとこねこバス」(2002年上映開始、原作・脚本・監督:宮崎駿)のサントラ盤。本作は映画「となりのトトロ」の後日談的な短編作品であり、久石が長編と同様に音楽を担当した。録音は2002年8月。

 

 

第8作 『パン種とタマゴ姫』(2010年) 監督:宮崎駿

久石譲 『ラ・フォリア パン種とタマゴ姫 サウンドトラック』

“今回の音楽は、宮崎監督が『パン種とタマゴ姫』を制作している時にずっと聴いていたというヴィヴァルディの『ラ・フォリア』という曲を素材としています。宮崎監督の映像が与えてくれるインパクトに沿う形で、古典曲を現代的なアプローチで再構築してはどうかと考えました。”

 

パン種とタマゴ姫 サウンドトラック sc 2

同美術館のショップ「マンマユート」でのみの販売されている本作サントラ盤は、ジャケットだけでなく内容も一部異なっており、本盤は最終的に映画で使用された構成で収録されている。録音は2010年10月。

 

 

三鷹の森ジブリ美術館 展示室用音楽

三鷹の森ジブリ美術館 サムネイル

同美術館でしか聴くことのできない、CD化もされていない楽曲たち。2001年開館への献呈、その後宮崎駿監督の誕生日プレゼントとして寄与されている。2014年現在、推定約5-7曲。

 

 

and

 

 

 

-bonus-

《あれから25年》

久石譲 in 武道館

上に紹介した各映画「ロマンアルバム」は、映画制作当時のリアルな久石譲インタビューです。ここでは、それから時間が経過し、2008年時点で振り返って映画ごとに語られた貴重なインタビューです。今だからこそ語れる、そんな秘話が満載です。

◇「ナウシカ」音楽で悔やまれること?!
◇「魔女の宅急便」演奏機会が増えた理由?!
◇「ハウル」メインテーマは4拍子が3拍子に?!

 

 

久石譲 in 武道館

”ナウシカの音楽は僕は大すきだ。本当に映画をさらに高めてくれる音楽を彼は書いてくれた。”(宮崎駿)

”思えば、アニメーションファンタジィにとって、このような世界を音楽でしっかりと支えてくれる作曲家の出現こそ、待望久しかったのである。”(高畑勲)

”こうして、ふたりのコンビは進化を続ける。宮崎駿が作り続ける限り、音楽は久石譲さんなのだ。”(鈴木敏夫)

 

 

《あれから30年》

オトナの!格言 久石譲

2014年2月放送 TBSトークバラエティ番組「オトナの!」を書籍化したもの。鈴木敏夫×久石譲×藤巻直哉による談話。ジブリの歴史を振り返るにふさわしい三者による秘話が満載。

”『ナウシカ』と『天空の城ラピュタ』で、宮崎×久石の名コンビが世間にも認知された。どちらも音楽担当をしていた高畑さんは、「だから自分が映画を制作するときには、久石さんに音楽を頼むことはできない」と話していたんです。ところが、突如『かぐや姫の物語』の音楽は、久石さんにお願いしたいと言い出した。”(鈴木)

 

 

 

《ジブリ映画音楽》 CD

他、多数

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX

 

 

《ジブリ映画音楽》 受賞歴

 

久石譲 受賞

 

 

《久石譲》 楽譜

久石譲 楽譜紹介

 

 

この特集は久石譲インタビューをクローズアップしているため、サウンドトラックCDなどの紹介はしていません。また映画作品ごとに絞って語られたインタビューのみを取り上げました。その他コンサート、雑誌、TV、Web媒体などで語られている中に話題が出てくることありますが除外しています(コンサート・パンフレット、CDライナーノーツ含む)。

気になる方は、映画タイトルや曲名でサイト内検索窓にてキーワードを入れてみてください。いろいろな情報や秘話が見つかるかもしれません。

 

 

久石譲 ジブリ インタビュー

※宮﨑駿監督が描き下ろした絵

 

Blog. 「クラシック プレミアム 26 ~[ニューイヤー・コンサート] シュトラウス・ファミリー~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/12/25

クラシックプレミアム第26巻は、ニューイヤー・コンサート特集です。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による元旦恒例の「ニューイヤー・コンサート」。その歴史は1939年に始まり、綺羅星のごとき指揮者が登場して話題に。その名指揮者たちの極め付けの名演ばかりを集めた贅沢なアルバムとなっています。

 

”ウィーン・フィルが新年の贈り物として演奏する「ニューイヤー・コンサート」は、今や世界各国にライブ中継されており、世界遺産的行事と呼ぶにふさわしいものであろう。何よりも素晴らしいのは、ヨハン・シュトラウスII世を核とするウィーンの調べの数々であるし、それを演奏するのがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団という世界最高のオーケストラなのである。しかも、指揮者は世界的な名声を誇る名演奏家なのだ。”

と解説冒頭にあります。

 

【収録曲】
ヨハン・シュトラウスII世
ポルカ《雷鳴と電光》 作品324
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
録音/1987年

《常動曲》 作品257
小澤征爾指揮
録音/2002年

ワルツ《春の声》 作品410 (ヴァーカル・ヴァージョン)
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
録音/1987年

《トリッチ・トラッチ・ポルカ》 作品214 (ヴォーカル・ヴァージョン)
クラウディオ・アバド指揮
ウィーン少年合唱団
録音/1988年

ヨハン・シュトラウスII世&ヨーゼフ・シュトラウス共作
《ピツィカート・ポルカ》
リッカルド・ムーティ指揮
録音/1993年

ヨハン・シュトラウスII世
《チク・タク・ポルカ》 作品365
ヴィリー・ボスコフスキー指揮

ワルツ《ウィーンの森の物語》 作品325
カール・スヴォボダ(ツィター)
ロリン・マゼール指揮
録音/1983年

ポルカ《狩り》 作品373
ヴィリー・ボスコフスキー指揮

ワルツ《皇帝円舞曲》 作品437
クラウディオ・アバド指揮

ワルツ《芸術家の生活》 作品316
小澤征爾指揮

ワルツ《美しき青きドナウ》 作品314
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
録音/1987年

ヨハン・シュトラウスI世
《ラデツキー行進曲》 作品228
ヴィリー・ボスコフスキー指揮
録音/1979年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第25回は、
「ユダヤ人」と芸術表現をめぐって

前号での伏線をはった結びから、いよいよユダヤ人と視覚・聴覚のお題について佳境へと進みます。かなり話が多岐にわたり難しいのですが。

一部抜粋してご紹介します。

 

「前に「視覚と聴覚のズレを埋めるために、人は時空という概念を発生させた」という養老孟司先生の言葉を引用したが、「この視覚と聴覚のズレの問題こそ、ユダヤ教思想の確信なのだ」と内田樹氏は語り、自身の著『私家版・ユダヤ文化論』でさらに詳しく書いている。この本は何度も読み返したのだが(つまにそれほど難しいとも言えるが)まさに眼からうろこ、ユダヤ人を考えることは日本人、あるいは日本という国を考えるひとつの「ものさし」になるのではないかと思う。このことはまた後で触れるが、とにかく前回書いたように多くの音楽家を排出しているのだからクラシック音楽を考える上でも有意義なはずだ。」

「周知のこととして、ユダヤ教では偶像を作ることが禁じられている。偶像というのは空間的な表現なので、ここでは絶対的な禁忌とされるのだが、他方、時間というのはユダヤ教の宗教性の本質とされている。つまり時間的に神が先行していて人間は遅れてやってきた。この時間差が神の神聖性の重要なところで、「神を見てはならない」と言われる所以でもある。だから視覚的な神像を持つと、同一空間に同時的に存在することになるから禁止なのである。」

「このように造形芸術が原理的に禁圧されているから「いきおい信仰の表現が音楽に向かった」と内田氏は述べている。だが、空間的なものに対しての人間の欲求は強い。世界を見たい、経験したいという視覚的な確認は心を安心させるし、「百聞は一見に如かず」のとおり、強いインパクトを持つ。このためユダヤ教徒には強いストレスがあったと推察される。」

「彼らには伝統的に音楽や舞踏のような時間性を含んだ芸術表現は許されている。だからシャガールの絵がユダヤ人世界で許容されえたのは、その表現に時間性があるからではないか?フェルメールのように、と僕は考える。シャガールの絵には音、あるいは音楽が流れている。」

「また映画や演劇、ダンスは視覚芸術なのだが、時間性があるから許容されている。20世紀になって映画産業が急速に成長したとき、雪崩を打って参入したのはユダヤ人たちだった。おそらく伝統的な産業には人種的な壁があり、新規に立ち上がった映画産業が積年の(ユダヤ教としての)欲求不満を含めて解消してくれたのではないか。ハリウッドのメジャー8社のうち7社までがユダヤ人が作った会社なのはその表れである。」

「次に「ユダヤ人」とは誰なのかを考えてみる。第1にユダヤ人というのは国民名ではない。ユダヤ人は単一の国民国家の構成員ではない。第2にユダヤ人は特定の人種ではない。ロシア系、ドイツ系、フランス系など世界のあらゆる人種に混じっていて特定できない。第3にユダヤ人はユダヤ教徒のことではない。キリスト教徒のユダヤ人は欧米ではかなり存在する。それではユダヤ人とは誰なのか?何をもってユダヤ人とするのか?」

「さらに内田氏は「ユダヤ人」の定義について疑問を呈し、「『ユダヤ人』というのは日本語の既存の語彙には対応するものが存在しない概念である」とし、「この概念を理解するためには、私たち自身を骨がらみにしている民族誌的偏見を部分的に解除することが必要である」と説く。」

「つまり日本人の常識では「『国民』というのは、原理的には、地理的に集住し、単一の政治単位に帰属し、同一言語を用い、伝統的文化を共有する成員のこと」であって、「外国に定住する日本人、日本国籍を持たない日本人、日本語を理解せず日本の伝統文化に愛着を示さない日本人、そのようなものを私たちは『日本のフルメンバー』にカウントする習慣を持たない。それは私たちにとっても『自明』である」と。だが、この考え方をユダヤ人に当てはめると「自明」ではなくなる。」

「ユダヤ人というのは国民でもなく、人種でもなく、ユダヤ教徒のことでもない。このあと、内田氏はかなり抽象的な、あるいは哲学的な命題として「ユダヤ人とは誰か」について書いているのだが、中途半端な引用は、かえって誤解を招く怖れがあるので、興味のある人は前述の本を読んでいただきたい。」

「我々日本人は、できるだけ人種や宗教の話を避けているように思う。いや、興味がないともとれる。それは一億総親戚のような国民なのだから、隣の人と肌の色も違い、生活習慣や考え方も違うなかでどう折り合っていくか、を考えなくても済んでいたわけだから、ある意味当然だと言える。つまり平和な国なのである。「言わずもがな、わかるだろう」的な日本人特有の感性が、この風土で生まれたわけだ。しかしユダヤ人は各国に散らばり、各人種と混じりながらホロコーストなど2000年にわたる迫害の中で生き延びた。そしてノーベル賞受賞者の20%は彼らであり、彼らの作った音楽は我々に生きる意味を今でも問うている。僕らはユダヤ人から学ばなければならないことがたくさんある。」

 

 

うーん、部分抜粋だと前後の脈略ふくめ、より理解しずらいため、今回はほぼ書き起こしましたが、それでも難しいですね。さながら、音楽の講義なのか歴史?哲学?宗教?人類論?その範囲がわからなくなってしまいますが、いや、音楽は音楽のみで語るべからず、多角的に広く深く捉えること、知ることが、どの分野でも大切なことですね。

 

クラシックプレミアム 26 ニューイヤー・コンサート

 

Blog. 「クラシック プレミアム 25 ~グレゴリオ聖歌からバロックの始まりまで~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/12/24

クラシックプレミアム第25巻は、グレゴリオ聖歌などです。

音楽の父と言われているバッハよりもさらに前、つまり西洋音楽の起源です。本来音楽とは神に捧げるものとして捉えられていました。のちに宮廷音楽となり自己表現やエンターテイメントとなっていくわけですが、このグレゴリオ聖歌はつまりは宗教色の強い音楽ということになります。

 

【収録曲】
グレゴリオ聖歌
《めでたし、めぐみに満てるマリア》
アンティフォナ《めでたし女王、あわれみ深きみ母》
フーベルト・ドップ指揮
ウィーン・ホーフブルクカペルレ・コーラスコラ

十字軍の音楽
ワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデ:《パレスチナの歌》
獅子心王リチャード:《囚われ人は》
ノートルダム楽派
ペロタン:《地上のすべての国々は》
アルス・アンティクワ

作曲者不詳:《アレルヤもてほめ歌え》 《いま愛は嘆く》
アルス・ノヴァ
マショー:《ダヴィデもホケトゥス》
デイヴィッド・マンロウ指揮
ロンドン古楽コンソート

中世の巡礼の歌 - モンセラート修道院
《星よ、陽の光のように輝いて》 《乙女を称えましょう》
フィリップ・ピケット指揮
ニュー・ロンドン・コンソート

ルネサンスの音楽 - フランドル楽派
オケゲム:《レクイエム》より 〈イントロイトゥス〉 〈キリエ〉
ブルーノ・ターナー指揮
プロ・カンティオーネ・アンティクワ、古い音楽のためのハンブルク管楽アンサンブル
ジョスカン・デ・プレ:《めでたし、マリア、清らかなる乙女》
ポール・マクリーシュ指揮
ガブリエリ・コンソート

バロックの始まり
モンテヴェルディ:歌劇《オルフェオ》より
〈トッカータ〉 〈私は愛するペルメッソの川から〉

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第24回は、
イスラエル・フィルを聴いて思ったこと

自身の演奏会についても語ることの少ない久石譲ですが、今回は自らが観客としてクラシックコンサートに行ったときのことを、作曲者や指揮者としての視点も織り交ぜながらかなり深く深く。クラシック音楽といっても、今日演奏される楽曲、指揮者、楽団などによって、その奥にはいろいろな背景があるのだな、と興味深く読み進めました。

一部抜粋してご紹介します。

 

「先日、ズービン・メータ指揮、イスラエル・フィルを聴きに行った。日曜日の午後、穏やかな日だった。僕自身は作曲の進行がはかばかしくなくて、とても人の演奏など聴く気になれなかったが、高いチケットを無駄にしたくないし、気分転換も兼ねてサントリーホールに出かけた。」

「曲目はヴィヴァルディ「4つのヴァイオリンのための協奏曲」、モーツァルト「交響曲第36番ハ長調《リンツ》」、チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」だった。見ての通り大変クラシカルなプログラムで気乗りがしなかった原因もここにある。」

「さてヴィヴァルディは全員立奏でこれはオープニングとして華やかだったし、寛いだ雰囲気も醸し出していて良かった。続いてのモーツァルトはテンポは遅いが、ヨーロッパの伝統そのものと言いたくなるほど王道を行く演奏だった。モーツァルトは難しい。誰が演奏してもそこそこの音はするが様になることは滅多にない。特に日本のオーケストラでは味気ない演奏に何度か出くわした。」

「イスラエルは、中東のパレスチナに位置していて、第二次世界大戦後の1948年に建国されたユダヤ人中心の国家だ。その国のオーケストラ(1936年にパレスチナ管弦楽団として設立された)がなんでこのようなヨーロッパの王道を行く演奏をするのか?そんな疑問を持ちながら休憩後のチャイコフスキーを聴いた。この「第5番」は僕が指揮者として初めて振ったシンフォニーでもある。だから思い入れもあるし、自分の解釈にこだわっている楽曲でもある。」

「ズービン・メータの指揮は手堅く、オーケストラに自由度を与えながらも締めるところは締め、見事なアンサンブルを引き出した。逆に全体がよく見えるような演奏だったために楽曲の持つ基本的な問題、あるいは作曲者がたぶん最後まで迷った、あるいはやりきれなかったことをあぶり出していた。このことに触れると長くなるが、冒頭にクラリネットで演奏されるホ短調の「循環テーマ」あるいは「運命のテーマ」とも言われている主題(これが何度も出てくる)をどう扱うかで成否が決まると言っていい。特に第4楽章の冒頭に同じテーマが、今度はホ長調で出てくるのだが、多くの演奏では、まるで凱旋するように晴れがましく堂々と演奏してしまう。だがスコアをよく見ると第1楽章の冒頭のテーマが弦に変わったのと若干楽器が増えたりはするが、伴奏などの音の構成、配置は一緒なのだ。マイナーがメジャーに変わっただけ、だからここは我慢してやや晴れがましい程度にしておきたい。確かにスコアにはmaestoso(荘厳に)とは書いてあるがまだ辛抱、徐々に盛り上げ、次に登場する第1主題を際立たせる、逆に言うとそうしないと第4楽章の第1主題が際立たない。おそらくチャイコフスキーが最も悩んだ点であり、初演後も本人が納得しないで悩み続けたのはこの「循環テーマ」の仕様と各楽章の主題との整合性だったのではないかと僕は考えている。」

「ともあれズービン・メータ、イスラエル・フィルはその飾りのない演奏(でも遅くて好みではないが)ゆえにこの楽曲の構造を詳らかにしてしまった。ちなみにズービン・メータはユダヤ人ではないが、大の親ユダヤ派である。実は密かにチャイコフスキーはユダヤ人ではないか?と考えていた。なぜかと言うとあの色濃いメランコリック(でもさめた目線ではないが)はユダヤ人共通のものだから。が、これは全く違っていた。」

「ユダヤ人の音楽家は多い。作曲家だけでもメンデルスゾーン、グスタフ・マーラー、アルノルト・シェーンベルク、ダリウス・ミヨー、アルフレート・シュニトケ、ジョージ・ガーシュウィン、スティーヴ・ライヒ、レナード・バーンスタインなど、まだ書き切れないが古典派から現代まで連なっている。演奏家ではアルトゥール・ルービンシュタイン、ヴラディーミル・ホロヴィッツ、ヴラディーミル・アシュケナージ、ダニエル・バレンボイム、ユーディ・メニューイン、イツァーク・パールマン、ギドン・クレーメル……、いやーこれではクラシックの歴史や今日の音楽界の中枢はほとんどユダヤ人ではないか。少なくともユダヤ人を除いてはクラシックを語ることができない。」

「なるほど、地理的にはヨーロッパの中心ではないイスラエル・フィルだが、ユダヤ人という観点から見ると正しくこのオーケストラはクラシック音楽の中心であり、歴史を作ってきたのは彼らの数世代前の人たちなのだから、彼らが直系なのである。王道の演奏は当然だった。ちなみにこのオーケストラの団員が全員ユダヤ人ではないであろうし、イスラエルという国も人口比で20%がアラブ人ではある。」

「ではユダヤ人の画家はどうか?マルク・シャガールしか思い浮かばない。他にもいるとは思うけれど、僕の知っている範囲では彼だけだ。このバランスの悪さ、星の数ほどいる音楽家とほとんどいない画家の差は一体どこからきているのだろうか?」

「実はここにも視覚と聴覚の問題が絡んでいる。いよいよ本題である。」

 

この結び、次号が楽しみです。

 

クラシックプレミアム 25 グレゴリオ聖歌

 

Blog. 宮崎駿×高畑勲×鈴木敏夫、久石譲音楽を語る 『久石譲 in 武道館』より

Posted on 2014/12/20

2008年に行われた伝説的コンサート「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」そのコンサート・パンフレットは永久保存版です。そのなかの久石譲の8ページにも及ぶインタビューはすでに紹介しています。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より

 

ここでは同パンフレットより、こちらもあまり普段から語られることのない貴重なメッセージ。宮崎駿監督、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーというジブリの3本柱が、総括するコンサート企画だったからこそ、あらためて歴史を思いかえし、久石譲音楽について語った貴重な内容です。

 

 

宮崎駿

風の谷のナウシカの準備室は、ある雑居ビルの潰れたバーのあとだった。たしか1983年6月。客用のテーブルや椅子がそのままの汚れたガラス窓の中で、僕はひとりきりで呻吟していた。自分の原作を映画化するのは想像したよりずっとややこしい作業だった。映画の全体像をつかまえようと焦りながら短い準備時間は刻々とへっていく。そんな時に若い音楽家の訪問をうけた。

30代の久石譲さんだった。

音楽の打合せの時、いまでも途方にくれるのはどんな映画になるのか監督たる自分に判っていないことだ。それなのに久石さんはいつも前向きで、ナウシカの時も僕の描きちらしたスケッチをいくつか眺め、しどろもどろの僕の話に何度もうなずき、その間に、何かひらめいたのかひとみを輝かせていた。

最初の打ち合わせは1時間もかけなかったと思う。

ナウシカの音楽は僕は大すきだ。本当に映画をさらに高めてくれる音楽を彼は書いてくれた。あの準備期間のチリチリする時に、久石さんと出会えたのが映画の運なのだと思う。

あれからもう25年もたった。

久石さん、ずい分永いことおつきあいして下さってありがとう。久石さんに出会えて良かったなあと思っています。

 

 

高畑勲

しあわせな出会い -久石譲と宮崎駿

「風の谷のナウシカ」のイメージレコード、「鳥の人…」。その第一曲「風の伝説」に針をおろす。風音の前奏に幅の広いリズムが打ちこまれ、やがてピアノが途切れがちにうたいだす……。すべてはここからはじまった。このピアノの音型は映画「ナウシカ」の中心テーマとなり、様々な姿をとりながら、久石氏のライトモチーフとして映画「天空の城ラピュタ」の重要なテーマにまで発展していく。

イメージレコード完成の半年後、映画「風の谷のナウシカ」のオールラッシュが行われ、映画音楽の打ち合わせに入った。おそらくこの時点で、宮崎駿の世界と久石譲の音楽がこれほど相性が良いと気付いていた人は誰もいなかっただろう。

無国籍でありながら、何らかの民俗色地方色をもち、とはいえ、土着の闇はなく、いわば都会的な「引用」であり、きわめて重いものを扱っていながら、どこか軽さがあり、現実にはあり得ない世界でありながら、密度濃いリアリティや存在感に支えられる必要があり、どんなにリアルにみえても、やはり人工的につくりあげられた自然や人物であり、自然をうたいながら、メカニックなものやスピードへの愛着もひとしおであり、必要な複雑さに到達しているイメージも、分解すれば、単純明快な要素の組み合わせであり、感情の表出は直接的であるよりは、情況のなかで支えられる必要があり……。

思えば、アニメーションファンタジィにとって、このような世界を音楽でしっかりと支えてくれる作曲家の出現こそ、待望久しかったのである。

『映画を作りながら考えたこと』(徳間書店刊)より「しあわせな出会い -久石譲と宮崎駿」の冒頭部分を抜粋
(初出:アニメージュレコード「久石譲の世界」ライナーノーツ 1987.3.25 徳間ジャパン)

 

 

鈴木敏夫

ふたつの主題歌

「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」で活劇ファンタジーに大きな才能を発揮した久石さんが、次に見せてくれた意外な一面は少女モノに於いてだった。

原田知世主演の「早春物語」。映画の内容はよく覚えていないが、音楽だけはいまも耳に残っている。久石さんは、少女の揺れ動く心を見事に表現した。これが、後の「魔女の宅急便」に生きてくる。

が、「となりのトトロ」のときだけは、勝手が違っていた。映画を作り始めてすぐに、宮さんが、当時、六本木にあった久石さんの事務所へ行こうと僕を誘った。

「子どもたちが大きな声を出して歌える主題歌が欲しい」

久石さんは、「やりましょう」と快諾してくれたが、その後の様子がヘンだった。というのも、中川李枝子さんと宮さんの詩は、どんどん出来あがるのに、肝心の曲が出来てこない。時間だけが、空虚に経過して行く。レコード会社の担当者に詰め寄ると、案の定、久石さんがハタと困り果てているらしい。注文のテーマは、子どもの歌。つまり、童謡のような歌だ。おいそれと簡単に出来るはずがない。

そうこうするうち、久石さんがある行動に出たという話が伝わってきた。有線放送で、子どもの歌のチャンネルを契約し、一日中、かけっぱなしにして、勉強のために数日間聴き続けているというのだ。産みの苦しみで七転八倒する久石さんの姿が目に浮かんだ。

ぼくは、久石さんを励ますために、一計を案じた。

出来上がった詩の中から、宮さんの書いた「小さな写真」を選び、これを久石さん自身が歌ってみないかと持ちかけたのだ。久石さんの疲れた表情に赤味が差した。ぼくと宮さんが事務所を訪ねてから、はや半年以上が過ぎようとしていた。

こうして久石さんは、今や学校の教科書にも載っている名曲「さんぽ」や「となりのトトロ」を書き上げる。久石さんの得意技のひとつに子どもの歌が加わったのだ。天賦の才能だけではない、久石さんの知られざる努力家の一面である。

その後、20年たって宮さんは再び、子どものための作品を手がける。「崖の上のポニョ」だ。宮さんはもう一度「子どもたちのための歌」を久石さんにリクエストする。だが、今回の久石さんは「トトロ」のときとは違っていた。最初の打ち合わせの時、既に、「ポーニョポーニョポニョ~」のメロディが頭に浮かび、その後、一気呵成に曲を仕上げてしまう。今度は宮さんがプレッシャーを受ける番だった。その頃、「ポニョ」の物語はまだ半分しか出来上がっていない。

しかし、宮さんは、この天衣無縫な明るい曲を心の底から気に入り、この曲を映画のエンディングに使うことを決める。「子どもたちが明るい気持ちで家路につくことのできる映画を作ろう」。ひとつの歌が、映画の全体に影響を及ぼした瞬間だ。それからだ、それまで順調に上がっていた絵コンテの筆が突然、滞る。宮さんの苦しみが始まった。どういうストーリーにすれば歌に相応しい結末が作れるのか──。

そして今、宮さんは語っている。「この曲がなかったら、僕はポニョを上手に着地させることができなかった」。20年前とは、すっかり立場が逆転していた。

こうして、ふたりのコンビは進化を続ける。宮崎駿が作り続ける限り、音楽は久石譲さんなのだ。

(「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間」 コンサート・パンフレット より)

 

 

それぞれお三人のキャタクターや人間性も随所に現れた文章と久石譲への思いそれぞれの表現方法だなあとしみじみ思います。これだけスタジオジブリと久石譲は共に歩んできたなかで、半ば身内のような感覚もあるのでしょう。だからこそ身内を良く言い過ぎることがないように、ということと同感覚で、これまでに監督自身があらためて久石譲音楽の功績を語ることはなかったように思います。それだけにここに収めらたメッセージと想いは、とても奥ゆかしく思えます。

 

 

最後に同コンサートパンフレット巻末に収められた久石譲メーッセージを記して。

 

 

宮崎さんの映画に入るとき、緊張のせいか、何故か直接関係のない行動を取ることが多い。

「もののけ姫」では、当時宮崎さんと司馬遼太郎さんの対談集が出版されたこともあり、1年間で『坂の上の雲』他ほぼすべての本を読破した。宮崎さんがこの映画に込めた思考の過程を少しでも知るための参考になれば、と考えたからだ。で、そのことを宮崎さんに話したら「そんなに読まなくてもいいですよ」と苦笑いされた。

「千と千尋の神隠し」では、何故かシトロエンの2CV(ドーシーヴォー)という車をインターネットで購入した。昔、宮崎さんが乗っていた車と同じタイプだ。タイヤの上にエンジンと人が乗っているというシンプルな車で、冷房も何もない。ジブリでの打ち合わせの時、早めについたので雨の中苦手なマニュアル車の練習をしていたら大エンスト。大きくバウンドして停止したところを傘をさした宮崎さんが怪訝な顔で立っていた。さながら「トトロ」のバス停のシーンである。「何してるんですか?」やっぱり宮崎さんがトトロに見えた。と同時に「千と千尋の神隠し」での冒頭で書くべき世界が観えた。

気づいてみれば25年、1作1作を精一杯(チリチリ心が痛む日々だったが)作ってきたのだけれど、すべてが昨日のことのようにも思える。

たしかに大きなハードルだったが、それぞれを乗り越えることで、作曲家として、一人の人間として一回り大きくなれた、と思っている。

その高いハードルを与えてくれた宮崎さん、鈴木さんには心から感謝しています。

人が一生に出会えるかどうかの、貴重な人生の師を神様は与えてくれた。いつまでも宮崎さんに曲を頼まれるような、作曲家でありたいと心から願う。

今でも「風の谷のナウシカ」での出会いを鮮明に覚えている。今回のオープニングで演奏する「ナウシカ」の冒頭のティンパニの連打が瞬時に我々を宮崎ワールドに誘い、会場にいるすべての人の心が一つになることを夢見ている。いつまでも記憶に残ることを願う。

2008年 夏 久石譲

 

 

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久石譲 in 武道館