Disc. 久石譲 『Mt.Fuji』 *Unreleased

2014年7月18日 オープン

 

富士急ハイランドの新アトラクション「富士飛行社」のために書き下ろされた楽曲『Mt.Fuji』。富士山の大自然の魅力と、四季折々の富士山の美しい映像とともに流れる臨場感のある音楽。フルオーケストラ編成で構成され、壮大で美しい、日本の美を感じることができる大迫力の音楽になっている。

 

公式Youtubeにてダイジェスト映像動画が視聴できる。

 

富士急ハイランド|WEBサイト動画【富士飛行社】

from Fuji-Q Highland Official富士急ハイランド公式 YouTube

 

 

アトラクション所要時間5分20秒のため、同じく5分程度の楽曲に仕上がっている。

富士急ハイランド内の「富士飛行社」アトラクションに搭乗しないと聴くことができない贅沢な音楽になっている。

 

富士急ハイランド 富士飛行社 久石譲

 

 

2016.7 追記

2016年7月14日「Mt. Fuji 2016」

富士飛行社リニューアル。新たな富士山の魅力をお届けするために映像を一新。久石譲が担当したオリジナル曲「Mt. Fuji」も、曲の持つ雰囲気はそのままに、ゴージャスで重厚感あふれる新ヴァージョン「Mt.Fuji 2016」に生まれ変わる。久石譲自ら指揮をとり、演奏されたフルオーケストラが織りなす壮大なオーケストレーションと雄大な富士山の姿を堪能できるアトラクションとなっている。

アトラクション所要時間も7分15秒となり、新映像に合わせて新たなパートも加筆されている。そして従来の旋律もふくめてオーケストレーションを再構成している。

 

 

Disc. 久石譲 『スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX』

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX

2014年7月16日 CD-BOX発売 TKCA-74104

 

『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。
久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品の豪華BOXセット。
スタジオジブリ作品サウンドトラックCD12枚+特典CD1枚

 

【商品内容】
<ジャケット>
「風の谷ナウシカ」「天空城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」は発売当時のLPジャケットを縮小し、内封物まで完全再現した紙ジャケット仕様。

<特典CD「魔女の宅急便ミニ・ドラマCD」>
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。

<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲インタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。

<収録CD>

DISC1-12 HQCD (Hi Quality CD)
DISC1,3,4 LP復刻 紙ジャケット&ライナー
DISC2 LP復刻 紙ジャケット&パズーとシータの複製セル画
DISC5-12+特典CD オリジナル紙ジャケット
34ページブックレット付き

紙ジャケット/封入特典:カタログ・ブックレット/特典CD付

 

 

Disc 1 風の谷のナウシカ サウンドトラック盤 はるかな地…
久石譲による宮崎駿監督作品最初のサウンドトラック盤。イメージアルバム「鳥の人…」、シンフォニー「風の伝説」を基に新たに録音された映画用BGMを収録。1984年2月録音。「レクイエム」のヴォールは当時4歳の麻衣が担当している。

4ページカラーグラフ&スコアーつき(風の伝説 メインテーマ / ナウシカのテーマ)

風の谷のナウシカ LP復刻

 

Disc 2 天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎
映画本編で使用されたBGMを収めたサントラ盤。挿入歌「君をのせて」も収録。ラピュタは4chドルビーステレオを初めて採用した宮崎作品であり、音楽もそれにふさわしく壮大なスケールの内容になった。1986年6~7月かけて制作。

天空の城ラピュタ LP 復刻

 

Disc 3 となりのトトロ サウンドトラック集
映画で使用されたBGMを収録したサントラ盤。「ナウシカ」「ラピュタ」とは一味違った、ほのぼのとした温かさをもつ久石音楽が心ゆくまで楽しめる。オープニング主題歌「さんぽ」、エンディグ主題歌「となりのトトロ」収録。 録音は1988年2 ~3月。

となりのトトロ LP 復刻

 

Disc 4 魔女の宅急便 サントラ音楽集
映画本編で使用された全楽曲を収録したサントラ盤。高畑勲が本作では音楽演出を担当している。録音は1989年6~7月ソロアルバムの作業で渡米していた久石の帰国直後に行われた。CDとLPのジャケットは同一。荒井由実の挿入歌2曲も収録。

魔女の宅急便 LP 復刻

 

Disc 5 紅の豚 サウンドトラック 飛ばねぇ豚は、ただのブタだ!
映画本編で使用された楽曲を収録したサントラ盤。アコースティックなサウンドにこだわり、ほぼ70名のフルオーケストラで録音。収録は1992年5~6月に行われた。加藤登紀子の歌2曲も収録。本作から、LPの発売は行われなくなった。

久石譲 『紅の豚 サウンドトラック』

 

Disc 6 もののけ姫 サウンドトラック
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のフルオーケストラによるサントラ盤。録音は1997年5月。映画本編の楽曲を米良美一の主題歌も含め完全収録。本作の主題歌で久石は日本レコード大賞作曲賞を受賞。アルバム自体も企画賞を受賞している。

久石譲 『もののけ姫 サウンドトラック』

 

Disc 7 千と千尋の神隠し サウンドトラック
映画本編の楽曲を収録したサントラ盤。新日本フィルハーモニー交響楽団のフルオーケストラによりサントラでは初めて、コンサートホールでライブ収録された。指揮・ピアノも久石が担当。録音は2001年5月。木村弓の主題歌も収録。

久石譲 『千と千尋の神隠し サウンドトラック』

 

Disc 8 Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~
ディズニーが2003年に北米でリリースした「ラピュタ」の英語吹替版用に久石自らが、ハリウッド映画音楽のオーケストラを率いて壮大なスケールと迫力あるサウンドで再録音したニュー・サントラアルバム。一部書き下ろしの新曲も含まれている。

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

 

Disc 9 ハウルの動く城 サウンドトラック
新たに作曲されたテーマ「人生のメリーゴーランド」を中心に構成された映画本編の楽曲を収録。新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で今回もホールでライブ収録された。指揮・ピアノも久石が担当。録音は2004年6月。倍賞千恵子の主題歌も収録。

ハウルの動く城 サウンドトラック

 

Disc 10 崖の上のポニョ サウンドトラック
映画本編の楽曲を収録。新日フィルハーモニー交響楽団の演奏に加え、本作では栗友会合唱団による大編成のコーラスが加わり“海と生命”をダイナミックに表現している。録音は2008年5月。林正子、藤岡藤巻と大橋のぞみの主題歌も収録。

久石譲 『崖の上のポニョ サウンドトラック』

 

Disc 11 ラ・フォリア / パン種とタマゴ姫 サウンドトラック (ジブリ美術館公開)
三鷹の森ジブリ美術館映画「パン種とタマゴ姫」のサウドトラック。宮崎監督がこの映画を製作している時にずっと聴いてたという、ヴィヴァルディの「ラ・フォリア」という曲を素材に、宮崎監督の映像が与えてくれるインパクトに沿う形で、古典曲を現代的なアプローチで再構築した作品。録音は2010年10月。

久石譲 『ラ・フォリア パン種とタマゴ姫 サウンドトラック』

 

Disc 12 風立ちぬ サウンドトラック
読売日本交響楽団によるフルオーケストラ演奏ほか、バラライカ・マンドリン・バヤン・アコーディオ等の民族楽器での楽曲も印象に残るサウンドトラック。荒井由実の歌う主題「ひこうき雲」も収録。録音は2013年5月。

久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

 

特典Disc 魔女の宅急便 ミニ・ドラマ「元気になれそう」 (詩:宮崎駿/ナレーション:高山みなみ)
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。

魔女の宅急便 元気になれそう

 

定価:¥ 21,600(税込)
品種:CD 13枚組
商品番号:TKCA-74104
発売日:2014/07/16
発売元:(株)徳間ジャパンコミュニケーションズ
JAN:4988008160246

 

 

 

 

 

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX

スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラCDBOX

 

Disc. 麻衣 『小さな写真』

2014年7月9日 デジタルリリース

 

やさしさ、なつかしさ、ぬくもり、うたう。あの名曲が時を超えて今ここに生まれ変わる。

宮崎駿作詞、久石譲作曲。

となりのトトロ イメージソング集に収録されたあの名曲が、麻衣のカバーにより発売。忘れかけたなつかしい時を思い出す詞、究極にやさしいメロディ、ぬくもりある麻衣の歌声が見事に調和した最高に素敵な世界観は、ジブリファンならずとも必聴。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

映画「となりのトトロ」公開に先がけ発表されたイメージソング集。「音楽を重視したい」との宮崎駿の思いを受け、本編サウンドトラック制作の前に10曲の歌をつくるという、かつてない企画のもとに完成したアルバムだった。

そこには、「となりのトトロ」主題歌をはじめ「風のとおり道」「さんぽ」など、後に映画を通じて世界中から愛される数々の歌が収録された。「お母さんが小さな女の子だった頃の写真」を通じて、愛情、そして古き良き時代の思い出を唄ったこの曲も、そんな名曲の1つ。映画本編には登場しない、いわば隠れた名曲だ。小さなお母さんの写真という素敵な世界観を、久石譲の娘でもある麻衣が20余年の時を超えて再現した。

アコースティックギター、ピアノ、コントラバス、ドラムのジャズ編成がシンプルで綺麗なサウンドを奏で、麻衣のやさしく素直な声が、心にすっと届く。いつ、どんな時に聴いても心和む。至高の美しさと、どこかに儚い時の流れを感じる。それが麻衣の歌う「小さな写真」だ。そして、ほんのりとした感動を味あわせてくれる。

 

ちなみに同曲のオリジナルは「となりのトトロ イメージソング集」に収録。ここでの歌は、作曲者である久石譲本人である。

また、2003年に発売された宮崎駿プロデュースによる上條恒彦のアルバム『お母さんの写真』にも
「大人が歌える歌」をテーマに、アレンジも新たに収録されている。ここでは曲名が「小さな写真」から『お母さんの写真』へと変更されている。発表当時、ハウス食品『おうちで食べよう。』CMソングにも起用された楽曲である。

 

 

 

配信限定だった本楽曲は、後にCDに収録されている。

2015年4月8日 CD発売 WRCT-1014

 

 

麻衣 小さな写真

1.小さな写真 acoustic version (作詞:宮崎駿 作曲:久石譲)

 

Disc. 『夢と狂気の王国』

2014年5月21日 DVD/Blu-ray発売

 

2013年公開映画「夢と狂気の王国」
監督:砂田麻美

 

ジブリのドキュメンタリーと称する作品は数々あったが、ジブリを題材に映画を作る、そう考えた人はだれもいなかった。今回、そう目論んだのが、砂田麻美。『エンディングノート』で、一躍脚光を浴びた若き女性監督が描く光と影の物語。

2013年、東京・小金井。碧々とした緑に身を隠すようにして、国民的アニメーションスタジオの”スタジオジブリ”は存在する。宮崎駿、彼の先輩であり師匠である高畑勲、そしてふたりの間を猛獣使いのごとく奔走するプロデューサー、鈴木敏夫。観客のみならず、世界の映画関係者やアニメーションの担い手たちにも多大な影響を与え続けてきたジブリの功績は、この天才たちによって紡がれ続けている。彼らの平均年齢は71歳。「風の谷のナウシカ」制作よりはるか以前、今から約50年前に高畑と宮崎は出会い、鈴木が合流したのが30数年前。かくも長期に亘り苦楽を共にしてきた彼らの愛憎、そして創作の現場として日本に残された最後の桃源郷”スタジオジブリ”の夢と狂気に満ちた姿とは…。

「風立ちぬ」(宮崎駿監督)と「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)を制作中のジブリに広がる光と影に満ちた日常を通じて、些細な表情までを捉え、スタジオの”今”を映し出した、砂田麻美監督。前作で数々の新人監督賞を受賞した彼女が伸びやかに描く、唯一無二のスタジオジブリの新たな物語。

(DVD/Blu-rayジャケット より)

 

 

映像特典中「宮崎さんと久石譲さん」チャプターに、久石譲が登場している。

スタジオで宮崎駿監督・鈴木敏夫プロデューサーと一緒に、映像を見ながら音楽打ち合わせをしている風景。ちょうど「二郎とカプローニの出会い」のシーンのところで、宮崎駿監督は『二郎のカプローニへの思いは、尊敬と友情です。時空を超えた。』『明るく、高揚感のある感じでもいいんじゃないかなー。』などと端的に会話をしている様子、隣に座る久石譲がそんな会話をキーワードとしてメモをとっているシーンが収められている。おそらく音楽制作の序盤にあたると時期だと推測される。

そして時間は経過し、その本編シーンのレコーディング風景も収録されている。「風立ちぬ サウンドトラック」3曲目「カプローニ(設計家の夢)」。二郎とカプローニがはじめて夢の中で出会うシーン。この音源がまるまる1曲、レコーディング風景として収録されている貴重な映像。

また久石譲が宮崎駿監督の誕生日(1月6日)にスタジオを訪問し、ケーキを囲むなごやかなシーンも数十秒という短いカットながら収録されている。

 

 

<本編>
約118分

<映像特典>
未公開映像集「ウシコは見た! “ちょっと”夢と狂気の王国」(約32分)
●ウシコからのご挨拶
●宮崎さんとラセターさん
●映画の為なら猫の手も
●宮崎さんと久石譲さん
●ライカリールの夜
●「かぐや姫の物語」プロデューサーの想い
●「風立ちぬ」ができるまで
●ずっと夢のなか
ダイジェストショートフィルム (約2分)
劇場予告編

<初回限定>
・スリーブケース/リーフレット付

DVD/Blu-ray収録内容同一

 

Disc. 久石譲 『Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ』

2014年3月12日 CD発売 UMCK-1473

 

1984年3月11日に公開された「風の谷のナウシカ」から30年。
久石譲が再編曲した名曲達をまとめた初のジブリ・ベストセレクション!

久石譲は当初、レコード会社からの提案に「過去を振り返るのは嫌いなので作りたくなかった」と感じたそうだが、「出来上った盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、納得できた」とコメントしている。ソロアルバム用に録音してきた編曲の中から、ピアノをメインにリアレンジされた楽曲、ロンドン交響楽団が演奏した「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など13曲を収録。

ジブリ映画を彩った名曲達を久石譲が再編曲・プロデュースした作品を集めたベストアルバム! 公開30周年(2014年時)を迎える『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで、初CD化音源も含めた、ジブリ映画音楽の決定盤。

 

 

30年という時間

僕が宮崎さんと一緒に仕事をするようになって、30年という時間が過ぎた。本当は宮崎駿監督とお呼びしなければいけないのだが、彼の明るく飾らない人柄のせいか、周りの人や僕は宮崎さん、あるいはもっと親しい人は宮さんと呼んでいる。

『風の谷のナウシカ』から最新作『風立ちぬ』まで10作品、そのひとつひとつに制作上のドラマがあり、葛藤があり、真の喜びがあった。そのエピソードを語るつもりはない。が、世界中の人たちに観ていただき、音楽を聴いていただいたということは、結果として宮崎さんの作品に少しは貢献できたものとして安堵しているし、心から感謝している。

このアルバムは、その30年間に僕のソロアルバムとして制作してきた中から、宮崎さんの映画のために書いた曲を集めたものである。ピアノを中心に、アルバムごとのコンセプトに即してリアレンジしたものなのでサウンドトラックとは違う。だが、どんな状況でも(オーケストラの演奏でも、ピアノ一台でも、あるいは街を歩いている子供の鼻歌でも)そこには宮崎さんがいて僕がいる。そのような強い楽曲を作れたのはもちろん僕の力だけではなく、多くの関わった人たち、特に鈴木敏夫さんの力がなければできなかったであろう。

過去を振り返るのは嫌いなのでこのようなベストアルバムは作りたくはなかったが、レコード会社の強い要望で(最近ソロアルバムを作っていないので)出すのを了承した。

だが、出来上がった盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、存在していいものだと納得した。多くの関係者に感謝する。彼らがいなかったらこのアルバムは存在しなかった。

そして僕はというと、ピアノの音と音の間の沈黙から30年という時間の流れにのって宮崎さんの満面の笑顔が浮かんでくるのを観てニンマリとしているのである。

久石譲 -ライナーノーツより

 

 

ピアノ、ミニマル、オーケストレーション
宮崎駿監督作における久石譲の音楽について

今から30年前の1984年3月11日に公開された宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』で、久石譲は映画音楽作曲家としての第一歩を踏み出した。それ以前の彼は、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒといったアメリカン・ミニマリズムの作曲家やドイツのクラフトワークに刺激を受けた、彼独自のミニマル・ミュージックの可能性を模索する作曲活動を地道に続けていた。ミニマル・ミュージックとは──『MKWAJU ムクワジュ』(1981)や『INFORMATION』(1982)といった彼の初期のアルバムに聴かれるように──シンプルなリズムパターンを繰り返し、時には拍をずらすことによってパルス(=拍動、脈動)の存在を聴き手に強く意識させる音楽である。アフリカやインドの伝統音楽に見られるような、音楽を最小限(=ミニマル)の構成要素から組み立てていく手法をとるので、フレーズやメロディを中心に発展してきた西洋音楽史全体に挑戦状を叩きつけることに繋がりかねない。そんな過激な姿勢を貫く日本人作曲家は、1980年代初頭の時点で久石以下ごく少数しか存在しなかったし、ましてや、それを劇映画の音楽に応用しようなどと無謀なことを考える作曲家は、世界中見渡してもほとんど存在しなかった。

そんな彼の『INFORMATION』が高畑勲監督と鈴木敏夫プロデューサーの目に留まったことで、久石は『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムを録音することになり、結果として『風の谷のナウシカ』の本編そのものの音楽も手がけることになった。

では、実際に久石は『風の谷のナウシカ』をどのように作り上げたのか?

まず彼は、ピアノという楽器でメインテーマ──《風の伝説》の曲名で知られている──のメロディを導入する。当時の一般的な観客が予想し、期待したであろうヴォーカルを一切用いることなく、である。しかも、そのメロディの冒頭部分は、当時のポップスのトレンドに真っ向から対抗するように、コード進行をほとんど変えず、ストイックに提示される。そして本編の物語が進むにつれ、久石はシタールのようなインドの民族楽器から後期ロマン派風のオーケストラにいたるまで、死力を尽くしてありったけの音色を投入するのだ。実験的なミニマル・ミュージックと商業用の映画音楽という、ある意味で対極的な二項対立の狭間に立たされた久石は、自己のアイデンティティを殺すことなく、ギリギリのところで壮大な音楽ドラマを書き上げてみせた。そうした彼のストイックな音楽的姿勢が、ナウシカというヒロインの壮絶な生きざまに重なって聴こえたのは、著者ひとりだけではないだろう。そして、その後30年にわたって彼が書き続けることになる宮崎作品の音楽の原型が、『風の谷のナウシカ』の中にすべて含まれていると言っても過言ではないのだ。

メロディの導入にあたり、演奏家としての久石の力量が遺憾なく発揮されるピアノ(1)。音楽の構成要素を最小限まで切り詰めていくミニマル的な手法(2)。そして、多種多様な楽器やアンサンブルを駆使していくオーケストレーションの多様性(3)。『風の谷のナウシカ』の音楽を特徴づけるこれら3つの要素は、時には単独の形で、時には三位一体の形で、宮崎作品の重要なエッセンスを表現していくことになる。そのエッセンスが何かと問われれば、おそらく次のように要約することが出来るだろう。

久石自身の演奏楽器である(1)のピアノは、メロディを生み出す母体となることで、物語における叙情的な要素──とりわけ宮崎作品のヒロインたち──を強調する役割を果たす。これに対し(2)のミニマル的な手法は、リズムパターンを剥き出しにする場合に、根源的な生命(力)の存在──『となりのトトロ』の雨中のバス停の場面が有名──を示すことが多い。そして(3)のオーケストレーションの多様性は──フランス印象派を思わせるダイナミックな三管編成を駆使した『崖の上のポニョ』が端的に示しているように──宮崎監督の世界観の確立に貢献する役割を果たす。仮に(1)のピアノを”女性的”な要素、(3)のオーケストレーションを”男性的”な要素、(2)のミニマルを久石自身の”生命”、と読み替えてみるならば、少し飛躍があるかもしれないが、このように結論づけることも出来るだろう。すなわち宮崎作品における久石の音楽は、(1)ピアノという”ヒロイン”の”君をのせて”、(3)オーケストレーション(オーケストラ)という”ヒーロー”が奏でていく、(2)ミニマルという”生命”から生まれたドラマなのだ。

そのドラマにおいて、特にヒロインが恋に落ちる時、彼女たちがピアノのメロディと共に登場するのは決して偶然ではない。謎の少年・ハクに惹かれる『千と千尋の神隠し』の千尋。魔法使いハウルを愛し続ける『ハウルの動く城』のソフィー。身を削って夫・二郎への愛を貫く『風立ちぬ』の菜穂子。彼女たちの存在感が大きくなるにつれ、メロドラマ的な要素が物語に占める割合も大きくなっていく。ここで想起しておきたいのは、そもそもメロドラマという言葉が古代ギリシャ語の「メロス(歌)」と「ドラマ(劇)」を語源としているという点である。そうした根源的な意味において、久石のピアノのメロディは”ヒロイン”という女性的な要素と結びついていると見るべきだ。つまり、宮崎作品におけるメロドラマとは、文字通り「歌(メロディ)による劇(ドラマ)」なのである。

本盤『ジブリ・ベスト ストーリーズ』には、久石が宮崎作品のために書いた楽曲をソロアルバム用にアレンジし直した演奏が収録されているが、サントラのアレンジに比較的近いものもあれば、アルバムのコンセプトに沿って大胆にアレンジし直されたものもある。ここで是非とも確認しておきたいのは、そもそも久石の映画音楽は──映画公開以前に録音されたイメージアルバムの中で表現されているように──先に触れたようなエッセンスを直接的に表現するところから作曲がスタートしているという点だ。個々の場面に後付けする伴奏とは、発想の出発点が根本的に違う。別の言い方をすれば、映像と音楽は協調関係(対位法的な対立関係を含む)を結ぶことはあっても、主従関係に陥ることはない。つまり、音楽が特定の映像に縛られないので、映画が完成した後も、さらに音楽が発展する余地が残されている。と同時に、それらの楽曲が映画とは異なる文脈でアレンジされることで、サントラを聴くだけでは判らなかった潜在的な意味が浮かび上がってくる。だからこそ、彼が宮崎作品の音楽をリアレンジし、演奏する必然性が生まれてくるのだ。

以下の楽曲解説は、そうしたリアレンジの文脈も知っていただきたく、敢えてCDをの収録順とは異なり、出典元となったソロアルバムの録音年代順でお読みいただくことにした。そのほうが、本編とは異なる世界観を表現したオーケストレーションの醍醐味と、アーティストとしての久石が辿った30年の変遷が、明瞭に浮かび上がってくるからである。

 

『Piano Stories』(1988)より
4.The Wind Forest
6.Fantasia (for NAUSICAÄ)

ミニマル作曲家・久石が、旋律作曲家としての自己を強く意識し始めた時期のアルバム。ミニマル風の前奏の後、日本音階のメロディが続く《The Wind Forest》(風のとおり道)は、その意味で極めて象徴的な楽曲と言えるだろう。一方の《Fantasia (for NAUSICAÄ)》は、先に触れた《風の伝説》を幻想曲としてリアレンジしたもの。久石が著者に語ったところによれば、この時期の彼のピアノのタッチは、高校時代から敬愛するジャズ・ピアニスト、マル・ウォルドロンの影響を強く受けていたという。

『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』(1998)より
7.il porco rosso

イタリア・モデナで録音された『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』は、『紅の豚』で描かれたアドリア海の陽光と青空を久石に懐古させる、注目すべき成果をもたらした。イメージアルバムの段階で《マルコとジーナ》というタイトルが付けられていた《il porco rosso》(帰らざる日々)は、後半部分にストリングスを加えることで、原曲以上にノスタルジックなジャズへと生まれ変わり、ホテル・アドリアーノに漂う”大人のロマン”を優雅に演出している。

『WORKS II』(1999)より
11.もののけ姫

宮崎作品のサントラ録音で初めて常設の交響楽団(東京シティ・フィル)を起用した『もののけ姫』以後、久石は大編成を用いた演奏に意欲を燃やし始める(その論理的な帰結が、2000年から始める彼の指揮活動だ)。有名なヴォーカル盤では、ケーナや篳篥といった民族楽器を隠し味として使っていたが、この東京シティ・フィルのライヴではそれらを排除し、伝統的なオーケストラサウンドの枠内で『もののけ姫』の世界観を再現している。

『ENCORE』(2002)より
12.アシタカとサン

久石初の全曲ピアノソロアルバム『ENCORE』は、マイクの設置場所にミリ単位までこだわった入魂作。”破壊された世界の再生”を描く、『もののけ姫』の重要なラストにおいて、久石はそれまで鳴り続けていたオーケストラを止め、シンプルなピアノだけで希望のメロディを奏でてみせた。その意味では《風の伝説》と対をなす楽曲と言えるかもしれない。

『Castle in the Sky』(2002)より
3.Confessions in the Moonlight

『天空の城ラピュタ』の北米版のために、久石が本編全体のスコアをリアレンジ・追加作曲し、シアトルの教会で録音した演奏から。オリジナル版の電子楽器を排除し、豊かなオーケストラサウンドにこだわって宮崎作品の世界観を再構築していくという点では、先に触れた《もののけ姫》の方法論の発展と見ることも可能だ。冒険活劇といえば長調の明るいメインテーマ、というハリウッド的な常識に真っ向から反旗を翻すように、『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《君をのせて》は変ホ短調で書かれている。その表現の奥深さを示した例のひとつが、飛行船の上でシータがパズーに不安を打ち明ける場面の《Confessions in the Moonlight》(月光の雲海)だ。空間の響きを活かした久石のピアノソロが、オリジナル版以上に《君をのせて》の旋律をしっとりと浮かび上がらせている。

『空想美術館』(2003)より
5.谷への道

フルオーケストラとチェロ九重奏の演奏を交互に並べた野心作『空想美術館』収録の《谷への道》は、もともと『風の谷のナウシカ』イメージアルバムのために作曲された楽曲。のちにチェロ独奏を前提とした《ナウシカ組曲》の第5楽章に組み込まれた。独奏部分だけでなく、伴奏部分まですべてチェロの音色に統一するという発想は、作曲家ヴィラ=ロボスの《ブラジル風バッハ第5番》チェロ八重奏の先例を彷彿とさせるだけでなく、ミニマル作曲家ライヒのカウンターポイントシリーズ(チェロ9声部で書かれた《チェロ・カウンターポイント》など)にも通じるところがある。なおかつ、ここでのチェロ九重奏の大らかな響きは、『風の谷のナウシカ』の豊かな世界観と何ら矛盾をきたしていないのだ。

『Piano Stories Best ’88-’08』(2008)より
10.人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-

『ハウルの動く城』は、スコアのほぼすべてをワルツ主題とその変奏だけで押し通す久石の音楽設計が、そのまま宮崎監督の演出意図を表現したユニークな作品。ここに聴かれる演奏では、前半がワルツのテーマ、後半にその変奏を聴くことが出来るが、ヒロインのソフィーも同様に──ハウルへの変わらぬ恋心を抱きながら、18歳から90歳まで年齢が変化し続けるという点で──”主題と変奏”というべきキャラクターなのだ。

『Another Piano Stories ~The End of the World~』(2009)より
8.Ponyo on the Cliff by the Sea

『崖の上のポニョ』公開後にピアノ、チェロ12本、コントラバス、マリンバ、打楽器、ハープ2本という編成によるツアーと連動して録音されたアルバムから。伝統的な管弦楽法からは絶対に思いつかない発想だが、チェロのピツィカートとマリンバの倍音が生み出すユーモラスな響きは、不思議とポニョのイメージに合う。宮崎作品のエッセンスを的確な音色で表現していく、久石のオーケストレーションの凄さが現れた演奏のひとつ。

9.海のおかあさん(CD初収録)

『崖の上のポニョ』本編では1コーラスしか聴くことの出来なかったオープニング主題歌を、今回初めて2コーラスのフルヴァージョンで収録したもの。”母なる大地”ならぬ”母なる大海”と読むことができるグラン・マンマーレは”母性”そのものというべき存在である。それを表現するため、久石はクラシックのソプラノ歌手(林正子)を起用した。彼女が歌うベルカントの豊かな声量は、”母性”の象徴であると同時に、広大な海の象徴でもある。

『Melodyphony』(2010)より
1.One Summer’s Day
2.Kiki’s Delivery Service
13.My Neighbour TOTORO

2009年のアルバム『Minima_Rhythm』に続き、久石がロンドン交響楽団を指揮したアルバムから。《One Summer’s Day》(あの夏へ)と《Kiki’s Delivery Service》(海の見える街)は、それまでの日常と異なる世界──『千と千尋の神隠し』の場合は湯屋の町、『魔女の宅急便』の場合は大都会コリコ──に足を踏み入れようとするヒロインが、そこはかとなく感じる期待と不安を表現しているという点で、対をなす2曲と言えるかもしれない。しかも、《Kiki’s Delivery Service》のリアレンジでは久石のピアノソロがメロディをくっきりと演奏しており、《One Summer’s Day》のニュアンスに富んだピアノソロと見事な対照を生み出している。

そして《My Neighbour TOTORO》(となりのトトロ)は、組曲《オーケストラストーリーズ 「となりのトトロ」》の終曲を演奏したもの。近年はクラシックの古典曲を積極的に指揮している久石にとって、ロンドン響での録音は大きな意味があった。ロンドン響はクラシックの超一流オケである以上に、ライヒやジョン・アダムズといったミニマル作曲家の演奏で比類なき能力を発揮するオケなのだ(つまり、世界で一番ミニマルを理解しているオケ)。《My Neighbour TOTORO》のコーダ部分に聴かれる圧倒的な歓喜の音楽は、ミニマル・ミュージックの作曲家、宮崎作品の作曲家、そしてクラシックの指揮者という久石の3つの側面が統合された、ひとつの到達点なのである。(文中敬称略)

前島 秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター) -ライナーノーツ・楽曲解説より

 

 

 

 

 

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

1. One Summer’s Day (千と千尋の神隠し)
2. Kiki’s Delivery Service (魔女の宅急便)
3. Confessions in the Moonlight (天空の城ラピュタ)
4. The Wind Forest (となりのトトロ)
5. 谷への道 (風の谷のナウシカ)
6. Fantasia (for NAUSICAÄ) (風の谷のナウシカ)
7. il porco rosso (紅の豚)
8. Ponyo on the Cliff by the Sea (崖の上のポニョ)
9. 海のおかあさん 歌 / 林 正子 (崖の上のポニョ) *初CD化
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (ハウルの動く城)
11. もののけ姫 (もののけ姫)
12. アシタカとサン (もののけ姫)
13. My Neighbour TOTORO (となりのトトロ)

■初回プレス分のみ「スリーブケース」仕様

 

Disc. 久石譲 『小さいおうち オリジナル・サウンドトラック』

小さいおうち 久石譲

2014年1月22日 CD発売 UMCK-1472

 

2014年公開 映画「小さいおうち」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:松たか子 他

 

 

インタビュー

-今回の『小さいおうち』は、前回にも増して音楽の曲数が多いと思いました。

久石:
単純に、本編の内容から出てくる違いです。『東京家族』は非常にシリアスな内容の作品でしたので、音楽を少なめにした方がよいという判断がありました。それに対し、『小さいおうち』はラブストーリー的な側面が強い作品ですから、音楽も当然増えてきます。山田監督からも「今回は音楽を多くしたい」という要望をいただきました。それと、「非常に甘みのあるメロディが欲しい」という要望も。

-それが、冒頭の火葬場で流れてくるメインテーマですね。

久石:
本編全体を見てみると、最初はタキの葬儀の場面から始まり、ラストシーンもタキがある重要な役割を果たしています。平成から激動の昭和へ、たとえ物語の時空が自由に飛んだとしても、タキの”目線”だけは変わらない。そのタキの”目線”のテーマ、わかりやすく言えば、タキの”運命のテーマ”です。ただし、そのメインテーマだけだと音楽全体が非常に重くなってしまうので、もう1曲、別のテーマを作曲しました。

-アコーディオンで演奏されるワルツのテーマですね。

久石:
こういう作品にワルツが似合うかどうかはともかく、結果的には、ワルツによって”昭和という時代に対する憧れ”や、”小さいおうちの住人に対する憧れ”を表現できたのでは、と思っています。昭和ロマンに憧れるワルツ、という意味では、松たか子さん演ずる”時子のワルツ”と呼んでよいのかもしれません。その”時子のワルツ”と、メインとなるタキの”運命のテーマ”のデモ2曲を最初に作曲したところ、山田監督から早々にOKをいただきました。

Blog. 映画『小さいおうち』(2014) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「基本的にはメーンとなるテーマ曲は2つなんです。その時代を生きてきたタキのテーマみたいなものと、もうひとつは意表をつくようなワルツ調の曲。深い根拠はないんですが、直感みたいなもので、ある種の軽やかさが出たらいいなと思ったんです。守りに入るよりは、こちらも冒険させてもらったんですが、それが結果的に良い形になればいいなと思っています。」

Info. 2013/08/10 山田洋次監督最新作「小さいおうち」 久石譲音楽レコーディング より抜粋)

 

 

赤い屋根の小さな家で働く女中・タキの目線を通し、昭和から平成へと激動の時代を生き抜いてきたタキの自身のテーマでもある“運命のテーマ”と、アコーディオンの甘美なメロディが印象的な“ワルツのテーマ”を主軸に構成。昭和モダンのノスタルジックな雰囲気が満載のサウンドトラック。

2つのテーマにより構成されたサウンドトラックは、
”運命のテーマ” (1) (2) (3) (5) (8) (10) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21)
”時子のワルツ” (4) (6) (7) (9) (11) (12)

”運命のテーマ”はときにピアノの単音で、ときにフルートやオーボエの木管で、ときに弦楽やピッツィカートで、ギターなども加わりとてもシンプルなアコースティックサウンド。シンプルなというか極限まで削ぎ落としたメロディと言っていい。

”時子のワルツ”はアコーディオンの旋律が特徴的だが、こちらもトラックごとに、ピッツィカートや木管編成、ピアノにより構成されている。

エンドクレジットにあたる(22)は、この主要な2つのテーマが、”運命のテーマ”から”時子のワルツ”へと引き継がれ幕をとじる。その(22)を除く、すべての楽曲が1-2分程度の長さであり、サウンドトラック全体としても30分程の音楽となっている。

ここで注目すべきは、映画本編2時間として音楽が約半分以下の時間しか流れていないということ、まさに山田洋次監督がオーダーした”空気のような音楽”ということである。

久石譲はセリフを重視する山田監督の演出に配慮するため、本編用のスコアでは特徴的な音色を持つ楽器(ダルシマーなど)を効果的に用いている。ハンマー・ダルシマーは「ピアノの先祖」とも言われる楽器である。

しかしながら、主要テーマのどちらもメロディの長さは短くも、とても印象的で、記憶に残らない耳に残らないということは決してない。これこそが久石譲のメロディの強さであり、かつ効果的にモチーフを2つに絞り込んで、あらゆるバリエーションで効果的な楽器編成で配置した結果といえる。

 

この後、久石譲「WORKS IV」にて、フルオーケストラ用にオーケストレーション、メインテーマ(22)は、楽曲構成はほぼ同じとしながらも、ギター、アコーディオン、マンドリンが加わり、サウンドトラックにはないオーケストラの華やかさと優雅さに磨きがかかっている。ひかえめながらも力強い華麗な輪舞曲(ロンド)に仕上がっている。全体の構成は、久石のソロ・ピアノによる序奏に続き、タキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、そして時子が象徴する昭和ロマンを表現した「時子のワルツ」となっている。

 

 

映画「東京家族」につづく山田洋次監督とのタッグは久石譲にも大きな変化をもたらしている。具体的には、別項にて紹介しているが、一部抜き出すと下記とおり。

 

  • オーケストラなどで音楽が主張をすることをひかえたつくり方
  • 空気のような音楽、雰囲気を邪魔しない音楽、芝居や映画と共存する音楽
  • 小編成にシンプルに、おさえるけれど、ただうすいだけにならないつくり方
  • 登場人物や観客の気持ちを煽るような音楽をつけない
  • より映画にコミットするかたちで音楽をつける

“今まではどうしても映画音楽としても主張してしまう自分がいたけれど、その力みがなくなった”といつかのインタビューでも語っている。

 

 

 

 

今後の久石譲映画音楽制作の分岐点になるであろう作品である。

 

 

小さいおうち 久石譲

1. プロローグ
2. 僕のおばあちゃん
3. 上京
4. 赤い屋根のおうち
5. 昭和
6. タキと時子
7. 雨の日も風の日も
8. 南京陥落
9. 師走
10. 正治と恭一
11. 嵐の夜
12. タキの幸せ
13. 本当の所
14. タキの悲しみ
15. 開戦
16. 事件
17. 別れ
18. 手紙
19. B29
20. イタクラ・ショージ記念館
21. 時効
22. 小さいおうち

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (Track 1,11,20)
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute: Hideyo Takakuwa
Oboe & E.Horn: Satoshi SHoji
Clarinet: Kimio Yamane
Bassoon: Masao Osawa
Guitar: Masayoshi Furukawa
Hammered Dulcimer: Keiko Tachieda
Accordion: Hirofumi Mizuno, Patrick Nugier
Percussion: Marie Oishi
Harp: Yuko Taguchi
Piano & Celesta: Ryota Suzuki
Strings: Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Engineer: Suminobu Hamada
Manipulator: Yasuhiro Maeda(Wonder City Inc.)

 

Disc. DAISHI DANCE 『the ジブリ set 2』

2013年12月18日 CD発売 DDCB-18002

 

札幌を拠点に活動するハウスDJ/プロデューサー DAISHI DANCE
大ヒット・アルバムとなった前作『the ジブリ set』の続編『the ジブリ set 2』

往年のジブリの名曲に新たな息吹が吹き込まれる。流麗かつ壮大なダンスミュージックにアレンジされた「ジブリ楽曲」たち。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

2008年リリースの「the ジブリ set」から5年。同じく2008年はスタジオジブリ作品 宮崎駿監督 映画「崖の上のポニョ」が公開。それから5年。2013年は宮崎駿監督 映画「風立ちぬ」、そして高畑勲監督 映画「かぐや姫の物語」が同年公開。

今作ではオリジナル楽曲を歌っていたアーティストも多数参加の豪華アルバム。DAISHI DANCE自身、アーティストとして活動する以前からジブリ作品の大ファンであり、同時に音楽を手掛ける久石譲の楽曲に大きな影響を受けていたと語っている。

いわばDAISHI DANCEの原点と言えるジブリ・サウンドを自らのフィールドであるダンスミュージックと、原曲、そしてジブリ作品の世界観を損なう事無く融合させる。

”前作から5年、進化するジブリ作品を見、久石譲の新曲を聞いている内に、前作では収録しきれなかった名曲、また新曲の数々を、今だからこそ出来る、新たな「the ジブリ set 2」を制作したい”と思う様になったと。

「the ジブリ set 2」はメロディアスでドラマティックな定番のスタイル、現在進行形のダンスミュージックのトレンドを意識した“今らしさ”、そして 新たにメロウなビート構成と、3つの音楽性を織り交ぜる事でさらなる魅力を生み出す事に成功。

同時に前作で収録しきれなかった楽曲に加え前作で収録されていた楽曲も新たにリアレンジしコンパイル。さらには今回オリジナルのアーティストも参加するなど大幅にパワーアップ。

 

 

ジブリ set 2

1. 君をのせて (JPN ver.) feat.麻衣 (天空の城ラピュタ)
2. やさしさに包まれたなら feat.GILLE (魔女の宅急便)
3. カントリー・ロード (JPN ver.) feat.本名陽子 (耳をすませば)
4. 風のとおり道 feat.吉田兄弟 (となりのトトロ)
5. アシタカとサン (もののけ姫)
6. Arrietty’s Song feat.Cecile Corbel (借りぐらしのアリエッティ)
7. 帰らざる日々 (Mellow mix) (紅の豚)
8. 時には昔の話を feat.COLDFEET (紅の豚)
9. ひこうき雲 feat.arvin homa aya (風立ちぬ)
10. あの夏へ (Mellow mix) (千と千尋の神隠し)
11. さよならの夏~コクリコ坂から~ feat.Lori Fine(COLDFEET) (コクリコ坂から)
12. Take Me Home, Country Roads feat.arvin homa aya, SHINJI TAKEDA (Re-Visited SAX mix)  (耳をすませば)

 

Disc. 久石譲 『長谷川町子物語 ~サザエさんが生まれた日~』 *Unreleased

2013年11月29日 TV放送

 

放送日:2013年11月29日(金)21:00-
フジテレビ開局55周年特別番組 アニメ「サザエさん」放送45周年記念
TVドラマ 『長谷川町子物語~サザエさんが生まれた日~』

監督・プロデューサー:加藤義人 テーマ音楽:久石譲
出演:尾野真千子 長谷川京子 木村文乃 イッセー尾形 松坂慶子 他

 

 

メインテーマと姉妹、創造の音楽を書き下ろしている。全体的に、室内楽、小編成、弦楽四重奏のようなシンプルな響き。

メインテーマはピアノ、弦、チェロなどとともに、ピチカートやバンドネオンも聴かれ、とても優しい上品なメロディーであり、普遍的なそっと寄り添うような旋律。昭和的な、日本的なメロディーというよりも、あまり感情に訴えかけず主張しすぎないという直近の作風となっている。

一連の「ラーメンより大切なもの」 「イザベラ・バードの日本紀行」 「かぐや姫の物語」などがその作風の流れをくんでいる。シンプルであり、小編成であり、唄いすぎない、それでいてしっかりと印象や余韻を残す音楽。

昭和から愛され続けるサザエさんに呼応するかのように、時代に左右されない、時代を選ばない、そんなテーマ音楽になっている。

クラシカルな旋律と響きが印象的な作品。

 

楽曲情報
・MAIN THEME
・FAMILY
・CREATION
・SISTER

 

未発売作品であり未CD化作品。

 

 

長谷川町子物語

 

Disc. 久石譲 『かぐや姫の物語 サウンドトラック』

かぐや姫の物語 サウンドトラック

2013年11月20日 CD発売 TKCA-74030
2021年4月24日 LP発売 TJJA-10034

 

2013年公開 スタジオジブリ作品 映画「かぐや姫の物語」
監督:高畑勲 音楽:久石譲 主題歌:二階堂和美
演奏:東京交響楽団

 

宮崎駿監督の全10作品の音楽を担当した久石譲が
30年の時を経てついに初タッグとなる高畑勲監督の音楽担当

 

 

特別対談 [監督] 高畑勲 × [音楽] 久石譲
映画と音楽、その”到達点”へ。

高畑:
僕はこれまで久石さんにわざとお願いしてこなかったんです。『風の谷のナウシカ』以来、久石さんは宮崎駿との素晴らしいコンビが成立していましたから、それを大事にしたいと思って。でも今回はぜひ久石さんに、と思ったのですが、諸事情で一度はあきらめかけた。しかし、やはり、どうしても久石さんにお願いしようという気持ちが強くなったんです。

久石:
まずは絵を描くために必要な琴の曲を作るところから始めましたよね。

高畑:
その琴の曲がものすごくよかったんです。大事なテーマとして映画音楽としても使っていますが、初めて聴いたとき、お願いしてよかったと、心から安心したのを覚えています。

久石:
ビギナーズラックみたいなものですよ。大変だったのはそのあと。高畑さんから「登場人物の気持ちを表現してはいけない」「状況につけてはいけない」「観客の気持ちをあおってはいけない」と指示があったんです。

高畑:
久石さんは少しおおげさにおっしゃっています(笑)。でも主人公の悲しみに悲しい音楽というのではなく、観客がどうなるのかと心配しながら観みていく、その気持ちに寄り添ってくれるような音楽がほしいと。久石さんならやっていただけるなと思ったのは『悪人』(李相日監督)の音楽を聴いたからです。本当に感心したんですよ。見事に運命を見守る音楽だったので。

 

高畑:
阿弥陀来迎図という阿弥陀さまがお迎えにきてくれる絵があります。平安時代以来、そういう絵がたくさん残っているんですけれど、その絵の中で楽器を奏しているんですね。ところが描かれている楽器は正倉院あたりにしかないような西域の楽器ばかりで、日本ではほとんど演奏されていない。だから絵を見ても当時の人には音が聞こえてこなかったと思います。でも、打楽器もいっぱい使っているし、天人たちはきっと、悩みのないリズムで愉快に、能天気な音楽を鳴らしながら降りてくるはずだと。最初の発想はサンバでした。

久石:
サンバの話を聞いたときは衝撃的でした。「ああ、この映画どこまでいくんだろう」と(笑)。でも、おかげでスイッチが入っちゃいましたね。映画全体は西洋音楽、オーケストラをベースにしたものなんですけど、天人の音楽だけは選曲ミスと思われてもいいくらいに切り口を替えようと。ただ完全に分離させてしまうのもよくないので、考えた結果、ケルティック・ハープやアフリカの太鼓、南米の弦楽器チャランゴなどをシンプルなフレーズでどんどん入れるアイデアでした。却下されると思って持っていったのですが、高畑さんからは「いいですね」って。

高畑:
むしろ難しかったのは、捨丸とかぐや姫が再会する場面の曲です。それまで出てくる生きる喜びのテーマより、もうひとつ別のテーマが必要だと思ったんです。命を燃やすことの象徴として男女の結びつきを描いているので、幼少期の生きる喜びのテーマとは違う喜びがそこに必要ではないかと。それで別のテーマを依頼して書いていただいたのですが、やっぱり違うと思ってしまった。それで元に戻って、再び生きる喜びのテーマをここで高鳴らした方がいいと久石さんにお伝えしたら「最初からそう言ってましたよ」って(笑)。

久石:
直後に天人の音楽という今までの流れとはまったく違うテーマが出てきますからね。捨丸との再会シーンで切り口を替えちゃうと、ちょっと過剰になるんじゃないかという印象を持っていました。それで元通りでいきましょうということになったら、逆にものすごい勢いの曲が生まれましたよね。

久石:
自分にとって代表作になったということです。作る過程で個人としても課題を課すわけです。これまでフルオーケストラによるアプローチをずいぶんしてきたのが、今年に入って台詞と同居しながら音楽が邪魔にならないためにはどうしたらいいかを模索していて、それがやっと形になりました。

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

 

久石 「2012年の暮れに鈴木(敏夫)さんから「『かぐや姫の物語』の公開が延期されたので、『風立ちぬ』共々ぜひやってほしい」とご依頼をいただきました。そのときはビックリしましたね。まさか高畑さんとご一緒できるとは思ってもいませんでしたから。でも、僕は高畑さんをとても尊敬していましたし、高畑さんとご一緒できるのだったら、ぜひやりたいと、返事をさせていただきました。」

久石 「打ち合わせでは、Mナンバーで53まであったんですよ。53曲もあるということは、裏返せば、音楽が絶えず映像と共存していて、鳴っていることを意識させない書き方をしていかなければいけないということですね。ですから、音楽の組み立て方も大変でした。曲数が多い場合、メロディーを強調したりして音楽が主張し過ぎると、浮いちゃうんですよ。映像もムダをはぶいた省略形ですし、効果音も決して多くない。その意味でも、音楽は極力エッセンスみたいなもので勝負しないと映像との共存ができなくなってしまいますし、全体を引き算的な発想で作っていかないといけませんでした。そして、音もできるだけ薄く書く方法をとりました。もちろん、薄く書くというのは決して中途半端に書くということではありません。逆に、それに見合うメロディーを書かなければなりませんし、和音とか一切なくても成立するものを作らなければいけません。ワンフレーズを聴いただけで特徴が捉えられるようなものを、ですね。ペンタトニックのフリをしているんですけれども、実はコードに関してはかなり高等なことをやっています。」

久石 「高畑さんさんは音楽への造詣が深い方です。前に高畑さんが書かれた映画音楽についての文章を拝読したことがあるんですが、そこでは最終的な映画音楽の理想として「音楽と効果音が全部混ざったような世界」というようなことを書かれていました。なかなかそういうところまで理解する人はいませんし、そういうことも今回はできるという嬉しさを感じましたね。「光の音」についてはピアノを中心に、ハープ、グロッケン、フィンガーシンバル、ウッドブロックなどを掛け合わせて表現しています。今回は弦の特殊奏法も多いです。それは最近、現代音楽も手がけていることも含めた自分のパレットの中で、やれることは全部やろうとした結果ですね。その意味では比較的、自由に書いています。トータルで、今まであまりなかった世界に持ち込めたらいいなというのはありましたね。」

久石 「これは非常に重要なところなんですが、高畑さんから持ち出された注文というのが「一切、登場人物の気持ちを表現しないでほしい」「状況に付けないでほしい」「観客の気持ちを煽らないでほしい」ということでした。つまり、「一切感情に訴えかけてはいけない」というのが高畑さんとの最初の約束だったんです。禁じ手だらけでした(笑)。例えば「”生きる喜び”という曲を書いてほしいが、登場人物の気持ちを表現してはいけない」みないな。ですから、キャラクターの内面ということではなく、むしろそこから引いたところで音楽を付けなければならなかったんですね。俯瞰した位置にある音楽といってもいいです。高畑さんは僕が以前に手がけた『悪人』の音楽を気に入ってくださっていて、「『悪人』のような感じの距離の取り方で」と、ずっとおっしゃっていました。『悪人』も登場人物の気持ちを表現していませんからね。」

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ビジュアルガイドより 抜粋)

 

 

久石:
今回の場合、高畑さんご自身で作詞作曲された”わらべ唄”という曲がすでにありました。それがもう5音音階でつくられてしまっているんです。”わらべ唄”は結構重要なシーンで使われるので、そうすると、それを加味した上でトータルの音楽をどうつくっていくかというふうに考えます。であるならば、必然的にこちらもある程度5音音階を使用したものをつくらないと整合性が取れない。ただ5音音階というのは下手すると本当に陳腐なものになりやすいので難しいですね。全体として日本の音階が主体になっているんですが、それを感じさせないようにするにはどうするかというのがかなり大変でした。例を挙げるとマーラーの “大地の歌” 。あれは李白の詩を使って、出だしから非常に5音音階的なんです。マーラーのような、同じ5音音階を使っても全然別口に聴こえるようなアプローチであるとか、そういうようなものを考えました。あとは、アルヴォ・ペルトという現代の作曲家なんですが、すごくシンプルで単純な和音を使う人のものとか。そういうものを参考にしながら全体を高畑さんが考えられている世界に近づけるようにしていく作業でしたが、それがだんだんと、高畑さんに似てきてしまって。僕も相当論理的に考えるほうなので、思考法が似てる、などと言うと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、ひとつひとつ理詰めでつくっていきました。でも普通なら、今回のように主題歌がついて、大事なところで使われる曲もすでにあったら間違いなく断っています。いろいろなものをくっつけられてしまうと最終的に音楽全部に責任持てないですから。でも高畑さんのことはとても尊敬していたので今回はお引き受けしたんです。

久石:
書いた曲のチェックは、高畑さんは「想像できるのでピアノスケッチで大丈夫です」と言ってくださっていたので、ピアノスケッチを送っていました。だんだんとそれにオーケストラの色をつけたものをまた送る。これを六十数曲ずっと繰り返したわけです。送るたびにバッと修正オーダーが来る。高畑さんの場合は特に多く、「また来たか」みたいな。「またこんなにですか(笑)」とか。ところがある時期を越えたら、台詞とぶつかると音楽が損だからと、台詞とメロディーの入るタイミングをちょっと遅らせて欲しいとか、そういう修正が多くなってきたんです。その辺りから完全に高畑さんとシンクロしましたね。

久石:
例えば、台詞とぶつかると音楽は小さくせざるを得ない。台詞が聞こえないと困るから。だから「音楽が損だから遅らせましょう、そうしたら小さくしないで済む」ということを具体的に言う監督は数えるほどしかいない。これは音楽を大切にしていただいている証拠です。どう考えても映画ですから、何をしゃべっているのか分からないとマズい。だから台詞は聞かせないといけない、でも音楽をそのために小さくするのは忍びない、だから、タイミングを変えて欲しい。という言い方ですから、これはもうほんとうにありがたいですよね。おかげで音楽は変拍子だらけになりましたけど、こんな素晴らしい人はそうそういません。

久石:
今作のような、ああいう絵のタッチは、音楽をつくるのにも完全に影響しましたね。あの絵は引き算の発想ですね。全部写実するより無駄なものを外す、ということは、音楽も同じなんです。効果音もそうですし、要するにすべて、必要最低限にシンプルにつくらなければいけない。つまり、オーケストラでガーンと派手にいくより、エッセンスをどこまで薄くするか。で、最初の打ち合わせでは五十数曲必要と言われたけれど、最終的には40曲ぐらいに落ち着くだろうと思っていた。一応ピアノのスケッチを書くけど、どうせ削られるのであれば、もう異様に薄く書いてしまおうと思って、薄く書いたんですよ。そしたら、全部採用になってしまって。でも考えれば、最初から高畑さんも極力シンプルにするということはおっしゃっていましたし、構築された音楽よりも、非常にシンプルなんだけど、力強いものがいいって。

久石:
いわゆる省略形の、すごく引いたもの。その発想というか思想というか考え方は、音楽にも効果音にもすべてに徹底されるなと思ったので、自分も引き算の発想でつくったんです。そうしないと音楽が浮いてしまう。感情を押し付けて「ここは泣くように」という感じの音楽を「泣きなさい」と書くよりは、その悲しみを受け止めつつも3歩ぐらい引いたところで書くと、観客のほうが自動的に気持ちがそこにいくんですよね。高畑さんは今回それをかなり何度もおっしゃっていて、僕もいちばん気を付けたところですね。

久石:
でも高畑さん、意外にオーケストラの音などにはこだわっていないんです。良けりゃオーケストラでもいいんですという感じでしたね。だから、こちらからもどんどん変えたりもしました。途中でリュート、ルネッサンスのギターみたいなものを使いますと提案したときも、絶対変えたほうが高畑さんは喜ぶと確信していたから。それで実際に変えても、なにも言わないというか「あ、いいです、いいです。これでいいです」だけ。音楽的なことで、今回ものすごく注意したのは、メロディーの楽器をフルートだとか弦などのように音がピーと伸びる楽器を極力少なくしたんです。ピアノやハープだとかチェレスタとか、要するに弾いたら音が全部減衰していく楽器、アタックを抑えたそれらを中心に据えました。そうすると、ポンと鳴るけれども消えていくから、台詞を食い辛いんですよ。もちろん五十数曲と多いので「音楽うるさいな」となると終わってしまうから、うるさくしないための方法なんですが。ただ、そうすると、ピアノ、ハープ、チェレスタ、グロッケンなどと楽器が限られちゃうので、それでもうひとつさっき言ったリュートというのを加えることで、その辺の音色をちょっと増やして、できるだけ台詞と共存できるように組んでいったんです。だから発想としては「リュートの音っていいよね」ではないんです(笑)。感覚的じゃなくて、減衰系の楽器で色が必要だ、と。そういうふうに論理的に決めたんです。高畑さんみたいでしょ?たぶんそこは似てるんだと思います。高畑さんと同じというとおこがましいから、ちょっと似ている程度で(笑)。

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より 抜粋)

 

 

 

鈴木:最高の作品は、運も味方につける
『ナウシカ』と『天空の城ラピュタ』で、宮崎☓久石の名コンビが世間にも認知された。どちらも音楽担当をしていた高畑さんは、「だから自分が映画を制作するときには、久石さんに音楽を頼むことはできない」と話していたんです。ところが、突如『かぐや姫の物語』の音楽は、久石さんにお願いしたいと言い出した。

当初、『風立ちぬ』との同日公開を目論んでいた僕は、困ってしまった。その両作を久石さんがやるのはどうかと。

そこで宮さんがどう思うかと話しに行きました。「久石さんもかぐや姫の音楽をやりたがってるし、高畑さんもお願いしたいと言っている」と。そういうとき、宮さんはすこしキレ気味に、決まってこう言うんです。

「そんなことは、久石さんが決めればいいんだ!俺の知ったこっちゃない」

このときもそう話した途端に、「久石さんやっちゃうよな~。マズイよ、鈴木さん。久石さんを阻止してよ。『風立ちぬ』だけでいいよ!パクさん(高畑勲)は他の人がいっぱいいるじゃん」と言うんですよ。

結局、『かぐや姫』のほうの制作が遅れて、公開が4ヵ月延期されることになり、改めて久石さんにお願いしました。同日公開はできなかったけれど、作品として、これは本当に運が良かった。

Blog. 「オトナの!格言」 鈴木敏夫×久石譲×藤巻直哉 対談内容紹介 より)

 

 

 

 

 

 

2021年発売LP盤には、新しく書き下ろされたライナーノーツが封入された。時間を経てとても具体的で貴重な解説になっている。

 

 

 

 

日本の純音楽、忘れていた日本古来の旋律や楽器の響き。絶妙のさじ加減で古来の伝統音楽と現代の音色が織り重なっている。美しい旋律、独特な日本の美を感じさせる和楽器。

高畑勲監督による約14年ぶり、8年の構想期間を費やしたこの作品は、日本アニメーション界に大きな布石を打つことは間違いない。そしてそれは久石譲によるこの映画音楽も同じだと思う。

この作品には日本の文化が詰まっている。現代人が忘れていたもの、失くしたものが、ここには眩く輝いている。日本人で良かった、日本を誇りに思う、そんな作品。

 

 

 

かぐや姫の物語 サウンドトラック

1.はじまり
2.光り
3.小さき姫
4.生きる喜び
5.芽生え
6.タケノコ
7.生命(いのち)
8.山里
9.衣
10.旅立ち
11.秋の実り
12.なよたけ
13.手習い
14.生命(いのち)の庭
15.宴
16.絶望
17.春のめぐり
18.美しき琴の調べ
19.春のワルツ
20.里への想い
21.高貴なお方の狂騒曲(ラプソディ)
22.真心
23.蜩(ひぐらし)の夜
24.月の不思議
25.悲しみ
26.運命(さだめ)
27.月の都
28.帰郷
29.帰郷
30.天人の音楽Ⅰ
31.別離(わかれ)
32.天人の音楽Ⅱ
33.月
34.いのちの記憶 (唄:二階堂和美)
– – – – – – – – – – – – –
35.琴の調べ
36.わらべ唄 (作曲:高畑勲)
37.天女の歌 (作曲:高畑勲)

作曲・編曲・プロデュース:久石譲

指揮:久石譲
ピアノ:久石譲 (Track 12,31,33)
演奏:東京交響楽団
ゲスト・コンサートマスター:近藤薫
Lute:金子浩 (Track 10,15,26,28)
古箏:姜小青 (Track 18,23,25)

天人の音楽 (Track 30,32)
Whistle,Charango,Guitar,Celtic Harp,Harp,W.Bass,Percussion,篳篥,竜笛

録音:ミューザ川崎シンフォニーホール、Bunkamura Studio
ミキシング:Bunkamura Studio

 

 

【初回プレス限定特典】特典ディスク PSCD-2479
・映画「かぐや姫の物語」音源 (ジャケットと別絵柄の紙ジャケ仕様)
・映画収録曲よりサウンドトラック未収録音源5曲を収録
・紙ジャケット仕様 Discプリントはレコード盤デザイン

かぐや姫の物語 サウンドトラック 特典CD

1. なよ竹のかぐや姫(古筝)
2. 名付け披露(田楽)
3. タカラモノ(古筝)
4. 公卿たち(雅楽)
5. レンゲ草(古筝)

 

The Tale of the Princess Kaguya (Original Soundtrack)

1.Overture
2.Light
3.The Little Princess
4.The Joy of Living
5.The Sprout
6.Li’l Bamboo
7.Life
8.Mountain Hamlet
9.Robe
10.Setting Out
11.Autumn Harvest
12.Supple Bamboo
13.Writing Practice
14.The Garden of Life
15.The Banquet
16.Despair
17.The Coming of Spring
18.Melody of the Beautiful Koto
19.Spring Waltz
20.Memories of the Village
21.The Nobles’ Wild Ride
22.Devotion
23.Cicada Night
24.Mystery of the Moon
25.Sorrow
26.Fate
27.The City of the Moon
28.Going Home
29.Flying
30.The Procession of Celestial Beings I
31.The Parting
32.The Procession of Celestial Beings II
33.Moon
34.When I Remember This Life
35.Koto Melody
36.Nursery Rhyme
37.Song of the Heavenly Maiden

 

가구야공주 이야기 Original Soundtrack
(South Korea, 2013) PCKD-20219

1.시작
2.빛
3.작은 공주
4.삶의 기쁨
5.발아
6.대나무순
7.생명
8.산골
9.옷
10.여행
11.가을의 열매
12어린 대나무
13.연습
14.생활의 정원
15.잔치
16.절망
17.봄의 순례
18.아름다운 현의 연주
19.봄의 왈츠
20.마을에 대한 추억
21고귀한 분의 광소곡
22.진심
23.매미의 밤
24.달의 신비
25.슬픔
26.운명
27.달의 도시
28.귀향
29.비상
30.천인(天人)의 음악 Ⅰ
31.이별
32.천인(天人)의 음악 Ⅱ
33.달
34.생명의 기억
35.현의 연주
36.전래동요
37.선녀의 노래

 

Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』

EXILE ATUSHI & 久石譲 懺悔 DVD付

2013年10月16日 CDS発売
CD+DVD RZCD-59456/B
CD RZCD-59457

 

日本テレビ開局60年 特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」
東京国立博物館 平成館 特別展示室 2013年10月8日(火) ~ 2013年12月1日(日)

テーマソング「懺悔」 作詞/歌:EXILE ATSUSHI 作曲/編曲:久石譲

 

 

新しい試みとして「弦楽四重奏がふたつ」という編成。コントラバスを中央にその両サイドに弦楽四重奏が対を成すように配置、低音を中心に高音楽器へ広がっていくという扇型、ふたつの弦楽四重奏を混在させるという試み。

第一ヴァイオリン(左)、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス(中央)、チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリン、第一ヴァイオリン(右)。この楽器編成で、中央のコントラバスを要に扇型にアーチを描いた配置。

「それぞれの弦楽四重奏だけでも音楽ができ、またそのふたつを対立されることで別の要素が生まれたり、というのがこの「弦楽四重奏がふたつ」という試みの狙い」と久石譲も語っている。そのふたつの弦楽四重奏をつなぐように、久石譲のピアノとハープが音楽世界に深みを持たせている。

時代を超えた芸術、日本の美を感じることができる、美しくも儚さの漂う叙情的な楽曲。ふたつの弦楽四重奏によるアコスティックな澄んだ音色と、呼吸しあうかのようなかけいあい。まるで「あうんの呼吸」という日本文化を象徴しているようでもあり、光と闇、希望と狂気、善と悪、過去と未来、西洋と東洋、文化と文明、対極する世界をものみ込んでいく。

官能的な旋律はクライマックスへと昇天していく。「太王四神記」や「女信長」にもある異国時代劇のような世界。

西洋の楽器を使い、古典・バロックより定着している楽器編成 弦楽四重奏、一方で日本古来の楽器、和楽器は登場しない。にもかかわらずその響きに「日本の和」を感じさせるのは弦の巧みな響き。

 

プロモーションビデオでは、京都の「東福寺 三解脱門」「大覚寺 石舞台」「伏見稲荷大社」など歴史的に貴重が場所での撮影が行われている。

 

 

2019.4.26 追記

『TRADITIONAL BEST / EXILE ATSUSHI』CDライナーノーツより

Word:ATSUSHI
Music, Arranged & Produced by Joe Hisaishi

Piano & Conducted by Joe Hisaishi
Performed by
1st Quartet:Yu Manabe, Masahiko Todo, Amiko Watabe, Masutami Endo
2nd Quartet:Tomomi Tokunaga, Naomi Urushibara, Hyojin Kim, Tomoki Tai
Contrabass:Jun Saito
Harp:Tomoyuki Asakawa
Instruments Recording & Mixing Engineer:Hiroyuki Akita
Vocal Recorded by Naoki Kakuta at avex studio
Manipulator:Yasuhiro Maeda (Wonder City Inc.)
Instruments Recorded & Mixed at Bunkamura Studio

 

(Music Video)

Special Thanks:
アンジェリカ・ノートルダム
大仙公園 日本庭園
大本山 東福寺
旧嵯峨御所 大覚寺門跡
伏見稲荷大社

 

 

 

EXILE ATUSHI & 久石譲 懺悔 DVD付

 

EXILE ATSUSHI 久石譲 懺悔 通常盤

1. 懺悔
2. 赤とんぼ
3. 懺悔 (Instrumental)
4. 赤とんぼ (Instrumental)

【CD+DVD盤のみ】 Disc.2 PV DVD
1. 懺悔 (Video Clip)

「懺悔」
Music, Arranged & Produced by Joe Hisaishi
Piano & Conducted by Joe Hisaishi
Performed by 1st Quartet/2nd Quartete/Contrabass/Harp
Instruments Recorded & Mixed at Bunkamura Studio