Disc. 久石譲指揮 東京交響楽団 『ストラヴィンスキー:「春の祭典」』

2020年2月19日 CD発売

久石譲が読み解くリズムとハーモニー。

新たなアプローチによる演奏が注目を集めている久石譲の指揮によるクラシック音楽、本盤は当代随一の実力を誇る東京交響楽団との共演ライヴ録音です。ストラヴィンスキーの複雑なリズムとハーモニーを、作曲家である久石ならではの視点で緻密に解析、オーケストラも正確無比なテクニックでタクトに応え、音楽的に充実度の高い演奏となっています。世界に誇るべき、新しい「春の祭典」の誕生! ぜひお聴きください。

(CD帯より)

 

 

熟成した音楽家としての発露が響く《春の祭典》
小味渕 彦之

久石譲がストラヴィンスキーの《バレエ音楽「春の祭典」》を指揮したディスク。2019年6月3日と4日にサントリーホールで行われた東京交響楽団とのライブ録音が収められた。

かつての久石の活動からは想像もできなかったが、近年の指揮者としての充実した活動は、この稀有な音楽家に対する認識を変えさせるに充分すぎるほどのインパクトを持っている。2016年から3年がかりで完成させたフューチャー・オーケストラ・クラシックス(旧ナガノ・チェンバー・オーケストラ)とのベートーヴェン「交響曲全集」は、「ベートーヴェンは、ロックだ!」をコピーとして、新時代を切り拓く演奏という位置づけだったが、そこに繰り広げられた音楽には、ロックという言葉から連想される激しいビート感だけでなく、血となり肉となるハーモニーの構築を含めた、西洋音楽のエッセンスが余すところなく表現されていたのだ。決してエキセントリックなものではなく、真っ向勝負で正攻法の音楽創りからは、古典作品と向き合う誠実な音楽家の取り組みが浮かび上がってくる。

この《春の祭典》もまさに、その延長線上にあるもの。ベートーヴェンに対して述べた言葉がそのまま当てはまる。20世紀に生まれたオーケストラ曲で最も重要な作品の一つに位置付けられるこの傑作を前に、久石は殊更に細部を強調するわけでもなく、あるがままの響きを連ねていく。組み合わされるパーツごとの押し出しは激烈なれども、流れるように奏でられる音楽を聴いていると、100年と少し前にこの作品がパリで初演された時の拒絶反応が信じられないほど、「さらり」と奏でられることに気がついた。別の言い方をすると、どんなに精妙な部分でも、どんなに獰猛に叫ぶ場面でも、リズムが揺るぎなく刻まれているのだ。冷静さと熱狂が同居すると言っても良い。これを、ミニマル・ミュージックにルーツを持つ久石の作曲家としての視点が投影されたとするのは簡単だが、それ以前に、熟成した音楽家としての発露がこうした演奏に繋がっていると受け止めたい。

(こみぶち・ひろゆき)

(CDライナーノーツより)

 

曲目解説
諸石幸生

ストラヴィンスキー
バレエ音楽「春の祭典」

ただ単にストラヴィンスキー(1882~1971)の名声を確立しただけでなく、20世紀初頭の楽壇を震撼させた問題作である。初演は1913年5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場でピエール・モントゥーの指揮で行われたが、最初、モントゥーはストラヴィンスキーからスコアを見せられた時、「一音符も理解できなかった」と告白しているし、さらに「この狂気のロシア人の作品は音楽などではない。私にとってはベートーヴェンとブラームスの交響曲だけが音楽なのだ、と心に決めた」というから衝撃のほどがしのばれる。

しかしモントゥーはロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフの強い説得に折れ、1912年の一冬を費やしてスコアを研究、春になるとオーケストラ練習を始め初演に臨んでいる。

初演はシャンゼリゼ劇場の開場祝いをかねた公演であったが、赤いビロードと金の花模様で飾られた豪華な会場は、演奏が始まるや、聴衆が罵りあう大混乱の場となり、事態収拾のため憲兵までが導入されるスキャンダルになっている。こうした騒動は、ただ単にストラヴィンスキーの音楽の大胆さによるものではなく、ニジンスキーの振り付けやN・K・レーリヒによる衣装や美術が不評をかったためでもあったが、ニジンスキーは舞台の袖から踊り手たちに拍子を大声でがなりたて、なんとか先へ進めたといわれている。

当のストラヴィンスキーも(この時31才の若さだった)、はじめは聴衆の一人として客席に座っていたが、数小節たったところで笑い声が起こったのに腹をたて座席を立ったという。そんなショックが災いしたのか、ストラヴィンスキーは初演後チフスにかかり、6週間も入院している。

「春の祭典」の構想は「ペトルーシュカ」(1911年作曲)以前から温められており、乙女がいけにえとして捧げられる異教徒たちの祭典がストラヴィンスキーの脳裏にあったというが、その根底には長い閉ざされた冬からの解放、春への賛歌、新たなる生命の息吹、人類の再生への願いといったものがあることは言うまでもないであろう。第一部は「大地礼賛」と題されており、序奏のあと「春のきざしー乙女たちの踊り」となり、さらに「誘拐」「春の踊り」「敵の都の人々の戯れ」「長老の行列」と続く。そして「大地への口づけ」「大地の踊り」に至る構成である。第二部の「いけにえ」は序奏のあと「乙女たちの神秘的な集い」「選ばれしいけにえの賛美」「祖先の呼び出し」「祖先の儀式」へと続き、最後に熱狂的な「いけにえの踊り」となって、興奮の中で閉じられる。

(もろいし・さちお)

(CDライナーノーツより)

 

 

 

 

ストラヴィンスキー(1882-1971)
バレエ音楽「春の祭典」

第1部:大地礼賛
1. 序奏
2. 春のきざし – 乙女たちの踊り
3. 誘拐
4. 春の踊り
5. 敵の都の人々の戯れ
6. 長老の行列
7. 大地への口づけ
8. 大地の踊り
第2部:いけにえ
9. 序奏
10. 乙女たちの神秘的な集い
11. 選ばれしいけにえの賛美
12. 祖先の呼び出し
13. 祖先の儀式
14. いけにえの踊り

TOTAL TIME 34:42

久石譲(指揮)
東京交響楽団

2019年6月3-4日 東京・サントリーホール にてライヴ収録

高音質 DSD11.2MHz録音 [Hybrid Layer Disc]

 

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